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誼素酸カリウム系盈類の衝撃感度
工業化学教室 亀 石 正 之
Impact sensitivities of potassium chlorates
Masayuki KAMEISHI
The impact sensitivities of KC102, KCIO3 and KC104 were observed.
The order of theh三sensitivities are KC102>KCIO3>KC104 and especially KC102 shows remarkables.
The mixed systems KC103−KCI and KC103−KCIO4 were more sensible than KC103 alon巳 Specia11y, each salts shows remarkable sensitivities by the addition of sulfur and Kα02 reacted violently only by with sulfuL
Asystem KCIO3−S shows the maximum sensitivity for the range of the perf㏄t oxidation reaction and its sensitivity is more increased with heating
〔序〕 図1落槌感度試験器 図2 落球感度試験器
塩素酸カリウム系塩類の化学工業に於ける用途
は広いが,特に火薬工業では爆薬,火工品,その 他の製造には不可訣である。然し乍らこれらの塩 類を原料として煙火或いは爆薬を製造する過程に 於て,屡々爆発による災害を生じており,特に硫
黄との混合物は危険視されている。これらに就い 電磁后 ては従来種々の研究がなされているが,衝撃によ
る爆発性に就いての報告はみられない。本実験は これらの塩類を取扱う観点から,塩素酸カリウム 系塩類の単体,製造申に含有し易いと思われる副
白 生成物と塩素酸塩の混合物系及び硫黄を添加した
系に就いて各々の衝撃による爆発感度を測定した
この結果より,今まで塩素酸カリウム或いは過塩 試料台 素酸カリウムは単体に於て,衝撃による爆発は不
明確であったが,本実験によって衝撃に対しては
鋭感であり,1 チに塩素酸カリウム製造中或いは貯
(1)落槌感度 蔵中に生成される可能性のある亜塩素酸カリウム
火薬類感度試験法に基いて行った。即ち試料
(KCI°・)は特に鋭感で・その願1まピクリン醐 2。mgを錫箔(↓ 。。mm厚,2・・×2・・mm)砲み
した。
充分注意を要することが明確になった。
(2) 加熱落球感度
〔実験方法〕 起爆薬落球感度試験器を利用した。金床を改造
試料は凡て再結晶を行い,衝撃感度は粒度によ し試料を加熱できるようにして,50つ,75つ,及
って可成りの影響を受けるので,150#〜200#の び100°Cで3分間加熱した後2209重の鋼球を落
範囲のものを採用した。 下させて,各落高に於ける爆発率を以て示した。
50 一亀石正之一
〔実験結果及び考察〕 は鈍感であることがわかる。
そこで,いまKCIO3及びKCIO4に就て,示差
(DKQ°・・KCI°・及びKCI°・の各単体に 熱分析及び力嚥、よる藤発彊の追鵬行って 於ける鯉感度 みた.KCIO,では図4のようになる。
亜塩素酸カリウム(KC102),塩素酸カリウム 即ちKC103では370つCより吸熱が始まり,
(KC103)及び過塩素酸カリウム(KCIO4)の各単 410°Cで最大となるが,この吸熱は熔融分解によ 体での落槌感度を測定した。 るものであり,420つCで徐々に発熱に移行する。
図3 塩素酸塩類の落槌感度 この発熱はKCIO3の分解によるもので,分解の進
/随
発7
率
85
:
2
三
鯉% ロソ職 醐 砲 行と共に発熱も大となり・520°C附近から分解に 1 よる酸素の発生は次第に活溌となって,580・Cに
1 至ってその発熱量は最大となりその後減少する。
/ KCI°・の分解反応は次式のようになるものと考え
/ られる。
ノ
/ KC103−→KC1十%02
ノ
/ , (∠H1《) )o=−11.27kca1,4GI oo《)=−42.26kcaI ゜ ° ⑳ 和 蜘 5° 6° 駕高鵠一望→槍◆ 即ち衝撃による塩素酸塩粒子間に包蔵されてい KC102は極く最近に於て製造され始めたもので る空気泡の断熱圧縮による温度の上昇に伴い,塩
化学的性状も明らかではないが,潮解性の物質で 内の熱点生成が行われ,又衝撃による運動エネル ある。従ってその落槌感度は湿度により大巾に変 ギーの授受によって爆発核の生成が容易となり,
化するので満足な結果を得ることができなかった 部分的分解が行われ〜ば,その際の分解発熱によ が,KC102は2cmの落高でも爆発し得る。KC102 る塩の自己加熱によって爆発が生ずることは明ら の分解反応は次のように考えられる。 かである。
KC102−一†KC1+02 一方1(C104では図5のような熱分解を行う。
蒜㌫跳隠し漂憲農㌶ 図・KCI・・の示差熱曲線
対して可成り鋭感なものであることが明らかとな 険亮
った.即ちKC10。に於ては,不爆点41。m,完爆 流 熱 83cm, KC104では不爆点50cm,完爆点106cm 誓゜
_ 撮プ吸
を示した。又KC103の感度曲線がKC104のそれ れ 熱 5憂
と比較して傾斜が大であることは・噸囲に鋭感 才 1覧
であることを示すものであるが,ピクリン酸より 遺
図4KCIo。の示差熱曲線 、酸糎量 1
500 400 500 60◎
弘度ζ c)一一→
検,: 即ち34°⊃Cで転移による嚥を行い・65°℃に於
流 て熔融分解による吸熱が起り,その後発熱分解に
をロ6.吸 熱 移って670°Cで最大となり酸素の発生も530°C
㌧熱 毒 から急激に増加する。KCIO4の分解反応は次のよ 弓 うに行われるものと考えられる。
ハ
; KC10。−KC1+20。
2盈
㈱,珪一 / (4H・…=−1・13k・記・∠G・…一一21・7kca1)
@眺KC1°・砒竺すれ1まその発鰭も締・程
識友(・c,一→ 度であって,これは示差熱曲線の発熱領域を比較
一塩素酸カリウム系塩類の衝撃感度一 51
すると明らかであり,又その落槌による感度曲線 即ちKC175%以上の添加では爆発には至らな の傾斜が小さいことからも自己加熱効果は比較的 いが,KC1を添加すればKC103単体の感度より 小さいことも明らかである。又KC103より強い 大で爆発し易くなることがわかる。
衝撃を加えなければ爆発反応が行われ難いことは そこで,KC103−KCIを3:1,1:1,及び1:3(各 発熱を始める前に転移及び熔融による吸熱があり 々mo1比)の割合で混合したものに就いて,示差 また発熱反応を生起する温度が比較的高く,分解 図8 KCI添加に於ける示差熱曲線
反霊㌶襟㌫㌶讃㌶《三 幽輪
十 は,KC1に附加する酸素数の少い程衝撃による感
受性は大で,KCIO2>KC103>KC104の1頃に鋭 o 感であることは明らかで,このことは自由エネル ー ギーの計算値からも推定出来る。
(2)KCIO3−KCI及びKCIO3−KCIO41混合
系の衝撃感度
KCIO3はKC1の電解酸化により製造されるの で,KC1の溶解度の方がKC103より極めて大で あるから,KC103結晶中にKCIが含まれること
十
〇
は殆んどなく,又KCIO3が更に酸化が進んで, 十 KC104に変化する量も僅かであるとは思われるが o これらのものがKCIO3の製造中に含有されると 一
仮定して,KC103にKCI及びKCIO4を添加したもの〜落槌感度を求めた。KC1及びKC104をそ
れぞれ25〜10重量%添加した場合の感度曲線を 十
_ o
図6及び図7に不す。
図6 KCIOf膓のKCI添加による感度変化
↑
鷲
考::
↑
爆 発π 率6 859
痴
㏄
1
0
5彩κα添加
タ 75%ノ(α添加
十
o
κα05一κα
3 :
κα(占一κα 1 : 1
κ(鴻一κ〜
1 : ヨ
κα軍体
0 100 200 500 400 500 ω0 η㊨0 (φd)
熱分析の結果は図8のようになる。 即ちKC103
°2△5°ゆ5°6°m
テ㈱9二 °° @単体と同様に融点で吸熱の後発熱、移り,580・C 図7KCIO3のKCIO4添加による感度 で最大となる。然し乍ら,発熱の頂点の高さは単 の変化 体の場合のそれより低く,更に1:1及び1:3と,
KC1の増加に伴ってその値は小さくなっている。
誰、zi7 瓢鷺聯㌶曇鷲1緊諮
ヨ
⇒繧 ・ 蜘鮮 く・Bowden(1)の云うように・系内に融点の高い
。。ず㍗ ものを導入することにより,系内のKC1に接触し
ク曽多
た部分の温度が局部的に上昇することになり,爆
o Q 鍋 ヨ◎ 4◎ 50 60
わ 8。g。 、。。 発を生起することは容易になろう。即ち爆発に要
蕗高@り一→ @ する最小のエネルギーは低くなる。然し乍ら,同
52 一亀石正之一
一落高に於てKC1の添加と共に爆発率が低下する KC102は硫黄の混入により,極く僅かな圧縮に のは,系全体への爆発の伝播をKCIのような不活 よっても急激に反応して発火する。またKC102一 性体が混入することにより抑制する結果であるこ Sとを混合して数分間放置すると爆発反応が起る。
がと明らかである。 即ちSとKC102との界面反応が自動的に進行する KC103−KC104系では一定の関係は認め難い ので,これらの反応には何等エネルギーを与える が,少量のKC104の添加で落槌感度は増加する傾 ことなく爆発反応が進行することが明らかである 向を示している。これも前述のように,KC103系 KC103−S混合系の落槌感度を図10に示す。
内にKC103の融点以上の熱点を多数導入した為 即ち1(C103:Sが90:10から20:80迄の混合範囲 の結果である。然しKC104自身爆発し得るので
図lo KCIO3−S系の落槌感度 KC104の添加量が多くなれば, KC104単体の感
度に幾らか近付くが,その曲線の傾斜はKC103の
8◎
図9 KCIO4添加に於ける示差熱曲線
. 呼二岬 些5
㎝ o
地姥一κ£06
/ : / 50 十 、
0
20
十
〇
καぬ4草体
完爆 1
−一…一一 s爆 1
κα03∫00 90 80 70 60 50 40 50 20 10
S o 0 20 30 40 50 60 70 80 90 Oo1・。2。。5。。⑩5。。伽吻㈹ ・昆合夏釦ヒ
場合と大差がない。KC103−KCIO4系で,各々 に於ては,爆発限界は混合比による大差は認めら の混合比が3:1及び1:1(各mol比)の場合の示 れない。この事は, KC103に極く少量のSを添加 差熱曲線を図9に示すと, 350°C附近の吸熱は すれば,感度は単体の場合よりも激増するが,こ KC103の転移により,410°CではKC103の熔融 の際Sの熔融潜熱によるエネルギーの吸収は問題 による吸熱がある。然し乍らKCIO4単体の場合 ではなく,主として系内でKC103−Sの接触点に に現われた熔融による吸熱は認められず,610つC 於いて数箇の並列反応が同時に行われるために,
附近で発熱を行っている。これは明らかにKC104 爆発が容易になることとを示すものであり,Sが の添加によってKCIO3の発熱分解を促進してい 80%以上になると衝撃エネルギーが多量のSの るためであろう。 熔融に消費され,従って爆発を起す迄には到らな (3)KCIO2−S, KCIO3及びKCIO4−S混合 いと考えられる。
系の衝撃感度 次にこの系で行った加熱落球感度の変化を図11
一一 桝f酸カリウム系塩類の衝撃感度一 53
図ll KCIO3−S系の加熱落球感度 KC103−S系は極めて爆発し易いことは明らかで ある。
二蝶 KC10。_S系では落槌感度はKC10。_Sの場合
ち◎℃ ワ5℃ ・。℃ と類似しているが(図12),広い領域に亘って不
落 亮4
噸〔㌔ oo ら0 5° O」oo 与o o S O 60 剖oo o 50 ル゜ρ 50 oo ラ是合主量比
爆点と完爆点との範囲の差が等しく,又同じ配合
図12 KCIO4−S系の落槌感度ド
60
完秦
一一…一
恃噤@ 1に示す.各蹴噛合,何れも7・(KCI・。)、3・(S) 高
附近で感度は逐次増加しており,又常温に於ける 隅o 落槌感度とも合せ考えて(図10),温度の上昇に
伴い夫々の混合物での感度は増している。即ち加
熱により,硫黄の熔融に費す衝撃エネ・レギーは少 ろ゜1 ,
1
1蕊㌶⊇雛㌶三芝 2.1 /
ヘ ノ
よって容易になる。叉次式で示されるように,化 \ ,/
学量論的配合に近いもの程感度が大であることは Io \㌔..一_一_一_一 / 系内に於ける完全な酸化反応が行われることによ
るものであろう。また加熱を行った際に,何れも
. O
此の配合比に於て最も爆発し易いのも・上述の完 κ(晒 oo go 80ワ060504)5020」o o
全酸化により反応伝播が容易になるものと考えら S O 020304050607◎8090 00れる。 擢合重量比
2K隠㌘=2KC1+3S砺 に於てKC1』飽差力×きいのは・KC1竺
撃を与えた際は,測定したスケール上では殆んど 差が認められないが,例えば図10に於て不爆域
と完爆域との範囲が,Sの量が増加する(即ち 〔結 論〕
KC103の量が減少する)に従って大きくなること 以上の結果から次のような結論が得られる。
からみて,KC103が多量の場合,感度は極めて鋭 (1) 塩素酸カリウム系塩類は,強い衝撃を与え 感であって,これはKCIO3とSとの部分的な発熱 れば単独で爆発反応を行う性質を有し,その衝撃 反応が爆発核となり,KC103単体の爆発反応をも 感度はKC102>KC103>KCIO4の順で大きい。
促進する結果であり,Sの量の増加と共に範囲が (2) 塩素酸カリウム系塩類の分解反応は発熱分 大きくなるのは,Sの熔融潜熱の吸収が爆発反応 解であるが, KC1に附加する酸素数の少いもの程 生起の大きな因子であることを意味する。何れに 同一温度では発熱量は大であり,この発生熱量と
しても,比較的強いエネルギーを与えた場合は, 衝撃感度とは平行性があるようである。
54 一亀石正之一
(3) KC103とKC104とのSに対する反応性は 最後に上記の研究に関して,種々御指導を頂い KC103の方が著しく,KCIO3に少量のSを添加す た,本学吉田,中森,長田教官並びに本実験に協 れば弱い衝撃によって容易に爆発する。 力下さった研究生松本寛郎君に深甚の謝意を表す
(4) KCIO3−S系を加熱すれば,感度は常温よ る。
りも極めて鋭感となり・SとKC103との配合が 〔文 献〕
完全酸化反応の領域に近付くに従って爆発は激し (1)Bowden&Yoff:Initiation and growth く爆発反応の伝播も極めて容易となる。 of Explosion
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