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論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文内容の要旨

視野検査は、眼科の基本的検査であり、眼疾患、頭蓋内疾患の診断や経過観察に欠かせない視機能 検査の一つである。Goldmann視野計(GP)は、被検者に合わせて検査をすすめられるとともに視 野全体を測定できる利便性から現在に至っても多く使用されている。

ただし被検者の自覚的応答により結果が導き出されることから、検者の多様な視野異常についての知 識と検査技術が結果に影響するといわれる。しかしながら、そのような知識と技術の向上は、ともに 個々の臨床経験に頼っているのが現状である。

経験の少ない検者が確実な検査技術を臨床において習得できる指導法が必要であるが、視野検査技術 指導について研究した報告は今までにない。視能訓練士が正確な視野を測ることができるように検査 技術を習得できるための教育、つまりGoldmann視野検査による視野検査技術指導の方法論の確立が 求められていた。

そこで予備研究として、技術教育においては検査技術の習得度にあわせた指導を行うことが重要で あるため、現状把握を行った。まず、学生の動的視野計測に対する理解度の把握に向けて、GPの検査 用紙に正常視野と緑内障性視野異常視野を描かせることから検査の基本操作と疾患の知識の実態をと らえた。学生は正常視野を狭くとらえているだけでなく、典型的な緑内障性視野異常をイメージでき ないものが多く、GPの操作といった基本技術の再確認も必要であった(副論文1)。

次に、臨地実習指導予定者である視能訓練士に対しても同様の方法で動的視野計測についての理解 度をとらえた。臨地実習指導予定者である視能訓練士は、緑内障性視野異常の特徴である鼻側欠損と ビエルム領域の暗点をほほ全員が記載しており、視能訓練士が緑内障に臨床で多くかかわることで緑 内障性視野異常の理解を深め、実測できていることの表れであると考えられた。しかし、測定におい ては自己流になりやすく、学生と同様に正常視野の範囲および基本技術を再確認しておく必要がある と考えられた。同時に指導者として指導の内容を確認するためにも、基本的操作方法を具体的な項目 として整理しておく必要性が明らかになり、検査のポイントを表現できることが指導力につながると いうことが示唆された(副論文2)。

これらのことから、動的視野計測技術の到達度と課題について指導内容の標準化をめざし検討して 1

小林 昭子

博士の専攻分野の名称  博士(保健科学)

学 位 授 与 の 日 付   2018年 920

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第2項該当

学 位 論 文 題 目   Goldmann 視野計シミュレーションシステムを用いた検査技術指導の検討

論 文 審 員 主   教授   鬼塚 信 

副    教授  園田 徹  副    教授  竹澤 真吾

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きた結果を「GPテクニカルチェックシート」に整理した。このシートを使用してグループでの問題 解決型学習を行ったところ、検査の到達点を確認することができた。また、なぜ器械の操作に気をつ けなければならないのかを問われたり、実測しているところを見学し自分の技術を振り返ったりする ことで、自ら考え振り返ることから学ぶ学習の機会をつくることができた(副論文3)。

以上の予備研究により検査練習を繰り返すことの大切さは明白となったが、学生や新人視能訓練士は バリエーションの広い様々な視野異常を知る経験が不足しているのが現状である。また、机上で出来 上がった結果を検討するだけでは、視標の移動速度など実際のGP操作についての検証が困難という 問題点が残り、検査手技を実技として指導する方法が課題となった。

そこで、我々は練習用視野の作成と、それに対する実際の視野検査を被検者無しに行うことができ るようにプログラミングしたGP練習装置を開発した。これは、タブレット入力機器をGPの検査用紙 の後ろに入れることで、プロットと検査中のレジスタリングアームの動きに伴う視標の軌跡をパーソ ナルコンピュータに記録することを可能にしている。

本研究では、このGP練習用シミュレーションシステムを用い、視野検査のすすめ方の一つである 視標の動かし方の違いをとらえ、その違いからGPの検査技術指導について検討した。対象である視 能訓練士養成校の学生6名と経験年数5年以上で十分な視野検査技術を持っていることを確認した視能 訓練士6名が行った緑内障性視野異常の結果から、検査経験の有無による周辺視野の視標Ⅴ/4e、

Ⅰ/4e、Ⅰ/3eの動きの差について分析した。

その結果、どの視標も視能訓練士の方が平均プロット数は多く、部位別で視野異常のある下鼻側の プロット数が特に多かった。視標別の平均プロット数はⅤ/4eとⅠ/4e、部位別は上鼻側のⅤ/4e、下 鼻側のⅤ/4e、Ⅰ/4e、Ⅰ/3eで学生と視能訓練士の間に統計的有意差がみられた。各プロットの平均 視標速度は学生と視能訓練士ともに約5°/sec.と差はなかった。しかし、プロットまでの視標速度の 変化をみると、プロット直前は速度が約2°/sec.になっていたものの、学生ではどの視標でもプロッ ト1秒前に減速していくまでは一定の速度を保っていたが、視能訓練士はプロットに近づくほど減速 していた。Ⅴ/4e、Ⅰ/4e、Ⅰ/3eと刺激が小さくなるほどその傾向が強く、Ⅰ/4eとⅠ/3eはプロット までの時間と検査経験により視標速度の変化に差があった。部位ごとを視標別にみると、Ⅴ/4eの 上・下耳側でゆっくり動かす傾向があり、下耳側はプロットまでの時間に差が認められた。視野が広 い部位でありレジスタンスアームを最大稼動域から動かさなければならないため、経験にかかわらず 慎重に動かしていることを反映していた。Ⅰ/4eはレジスタンスアームを動かしやすい上鼻側と上耳 側でプロットまでの時間で差があり、下耳側と視野異常がある下鼻側では学生と視能訓練士に差がみ られた。Ⅰ/3eになると上耳側では学生と視能訓練士の間に差があり、下鼻側と下耳側では検査経験 だけでなくプロットまでの時間の影響が認められた。

GPシミュレーションシステムを用いることにより、プロットするまで学生は視標を一定の速度で 動かしていたのに対し、視能訓練士は徐々に減速していたことを初めて明らかにすることができた。

見えないところは速く、応答がありそうなところはゆっくり視標を動かしていることから、視能訓練 士は検査の際に視野を想定しながら検査を進めていると考えられた。

このシミュレーションソフトは任意に視野結果を取り込むことが可能であるため様々な視野の検査を 行うことができる。視野を学ぶために検査練習を行うことは多種にわたる視野結果を知る機会となり、

検査経験を補うものとして活用できる。

また、レジスタリングアームの動きを反映できるようにしたことにより、自己の検査経過を詳細に 確認することが可能となった。この確認は、測定が不足している部位を理解し、効率よく検査を行う

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にはどうすればよいのかを考えていくことにつながる。もちろん、GPチェックシートにあげた検査 ポイントを確認することも可能であり、基礎的な検査手順を学習することもできる。

今までこのシミュレーションソフトのようにGPの練習を目的に開発されたものはない。これからの GPの検査技術指導の一端を担えるものと考えている。

公表論文:

・小林昭子,生方北斗,前田史篤,川野純一,可児一孝:ゴールドマン視野計練習用シミュレーショ ンシステムによる視標軌跡の検討、視覚の科学(2018.05)[主論文]

・小林昭子, 深井小久子:視能訓練士教育におけるGoldmann視野計による動的視野計測の実態、日 本視能訓練士協会誌38巻321-328(2009.11)[副論文1]

・小林昭子, 深井小久子:臨地実習におけるGoldmann視野計実技指導の課題、日本視能訓練士協会 誌39巻197-206(2010.12)[副論文2]

・小林昭子:Goldmann視野計テクニカルチェックシートを用いた動的視野検査の技術指導法、日本 視能訓練士協会誌41221-227(2013.01)[副論文3]

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論文審査結果の要旨

1.総論

本研究は、ゴールドマン視野計におけるシュミレーションシステムを開発し、これを用いて検査技 術指導に応用するという、世界初の画期的研究である。ゴールドマン視野計による測定は、検者の多 くの臨床経験が必要で、このため、多くの症例数が必要であった。本、シュミレーションソフトは、

多くの症例データを活用し、シュミレーションすることで、患者、披検者が存在しない状況でも、バ ーチャルに多くの臨床経験を得ることが可能となり、これによりゴールドマン視野計による検査のス キルアップが見込まれるという点で画期的である。本シュミレーションシステムは、視能訓練士、医 師、学生等の教育、熟練、症例の共通理解、診断など様々な場合において有益であると考える。

ゴールドマン視野計における検査を新開発したシュミレーションシステムを用いて解析する試みは、

独創的であり、非常に新規性があるので、今後の更なる発展性や、社会的貢献が大いに大いに期待で きる新しい分野であると考える。

2.論文評価

 博士論文としては、目的、方法、結果、考察いずれも文献を交え、独創性、新規性もあり、且つ理 路整然と記述されており、査読付き原著論文として公開されているので、博士論文としては、問題は 無く、博士号授与に十分に値するものである。

3.口頭発表ならびに質疑応答の評価

本審査時に使用されたスライドは予備審査時と比較し要点が集約され、明瞭なものであった。

発表時間も、時間内で、かつ、明確、明瞭であり、口頭での発表に際し、熟練されていることが伺わ れた。質問に対しても、的確かつ明確に応答し得ており、研究内容を熟知していることが伺われた。

4.審査結果

発表後の無記名投票の結果、可13票、否1票の賛成多数で小林昭子氏の学位(博士号)取得認定 が可決承認された。

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参照

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