長野工業高等専門学校紀要 ・第
2 4
号( 1 9 9
1)2 5
テイラー渦流れの2次元画像解析
戸谷順信 平林利裕
Two‑Dimentional Digital Image Processing System f o r T a y l o r V o r t e x F l o w
Yorinobu TOYA and Toshihiro HIRABAYASHI
Two ‑ di me n t i o na ldi gi t a li ma g epr o c e s s i n gs y s t e mwa sd e ve l o pe df o rt hea n a l y s i sof Ta yl o rVo r t e xf lo w.Th eTay l o rVo r t e xf l o wbe t we e nc o n c e n t r icc y l i n d e r ,i nn e rc y l i n‑
de rr o t a t i n ga n do u t e ro ne丘xe di svi s ual i z e dwi t hs o mes ma l l pa r t i c l e sa sat r a c e r . The t wo ‑ di me n t i o n a 1月o w点e l dl i g ht e dbyt hes l i t t e dl i g htwa st a ke nt h epi c t u r ef o ri ma ge da t a . Thel i g hto fl o c uso fp a r t i c l ei nt hep h o t o gr a p hs ho wst h ev e l o c i t yo ft he月o w. The i ma geda t aa r ei n p u t t e dt ot hec o mp u t e rwi t ht hebi na r yda t abyt hei ma g es c a n ne r , a nd t he ya r ep r o c e s s e dwi t hbi n ar i z a t i o n,t hi n ni n g,l a be l l i n g,a n ds oo n ,t oa na l i z ef o rt he f
lo w.Co n c e q u e n t l y ,i twa sc l e a r e dt ha tf o rac e l lno w o ft h eTa y l o rvo r t e xf lo w,t he ve l o c i t yi nt h ei n ne rc y l i n d e rs i d ewa shi g ha n dt h eve l o c i t yi nt hec e n t e ro fc e l l wa sz e r o a n da ga i nbe c a met obehi g hi nt h es i d eo ft h eo u t e rc y l i n de r . An dt h i st wo ‑ di me nt i o nal di g it ali ma gep r o c e s s i n gs y s t e mwa su s e f u lt oa na li z et heTa y l o rvo r t e xf lo w.
1
.
緒 言内円筒が回転 し外円管が静止 している同軸二重円筒間におけるティラ‑渦流れは 1 9 2 3 年の GエTayl or 以来,長期 にわたって非常 に多 くの研究が行われてきてお り,中で も現在 は流 れの遷移過程,流れの分岐関係等の研究が注目されている.特に流れの非一意性,流れの分 岐関係は流体工学ばか りでな く,数学の分野か らも関数解析 によるアプローチがなされてお り( 1 ) I ( 2 ) ,数値計算の分野において もホモ トビパラメ‑タの考 えを導入 した継続法 によるシ ミ ュレーシ ョンが行われている ( 3 ) .流体工学に関 して言 えば,テイラー渦流れはその閉 じた系 であることか ら実験がし易い反面,その流れの速度分布,圧力分布等の定量的特性 について はレーザ ドップラ流速計による測定結果( 4 ) の研究があるが,あま り報告がなされていない よ うである.その原因は流れを測定す るために流れ場へセンサーを挿入す ることによ り,流れ 場を乱 して正確 な結果が得 られない こと,そのためには非接触で測定を行 う必要があ り,そ のための測定装置は高価であることによると思われる. また,熱線流速計による測定結果が 報告 されているが
(5)I ( 6 ㌧ 微少擾乱 に対 して変化 しやすい流れ場 の検討 には問題 があ ると思わ れる.筆者の一人 は,従来 よ りテイラー渦を可視化す ることによ りテイラー渦 における流れ 1 9 9 1
年3 月 1 4
日 日本機械学会第2 0
回北陸信越学生員卒業研究発表講演会で発表●機械工学科 講師
= ㈱三協精機製作所 電子第
2
事業部 技術1 グループ
の発生過程 と構造による分類,動的パ ラメータであるレイノルズ数 と幾何学的パ ラメータで あ るアスペ ク ト比 の変化 に よる不安定性, さ らに分岐 関係 等 の定性 的研 究 を行 って き た
(7),(8)・(9)・ ( 1 0 ) . しか しテイラー渦流れについて速度分布等の定量的解析 を行 うことは,さらに 今後の流れの特徴を明 らかにす るための研究 に重要なことであると思われる.
本来,テイラー渦 は 3 次元のスパイラル流れであ り , 3 次元速度場 を知 る必要がある. し か し,半径方向,方位角方向,軸方向成分の三つの速度場を一度 に測定す ることは困難であ る. よって,本研究では流れ場 に軸方向に平行なス リット光 を照射することにより , 3 次元 流れ場を 2 次元化 し,半径方向 と軸方向の流れの速度場を画像処理を使 って解析 した.
コソピュークによるデ ィジタル画像処理 は工学 に限 らず,その応用分野は自然科学,医学 など幅広い. さらに最近の コンピュータと周辺機器の発達 により個人的にも手軽に画像処理 がで きるようになってきている.流体力学の分野で も TV カメラか らの画像処理を行い;逮 度分布 を求め るシステムの研究
(ll
)も行われてい る.本研究では比較的安価 に手 に入れやす い情報機器を使 って簡単 に画像処理で きるシステムを考案 した.そ してその画像処理 システ
ムを使 ってテイラー渦流れの速度分布 の解析 を行い,本 システムの有効性を検討 した.
2.
テイラー渦流れの実験装置 と方法本研究で使用 した実験装置を図 1 に示す.内円筒はステンレス鋼で半径が 4 0 mm でで きて お り,サーボモータとベル トで伝動され,回転す るようになっている.回転 は直流電圧で制 御 されている.外円管は流れの状態が観察できるように透
明 なアク リル樹脂でできてお り内半径が 6 0 mm になってい る. よって内外円管の隙間は 2 0 mm であ り, この隙間に作 動流体が入 る.作動流体 は水 とグ リセ リンの混合液で体積 比 がほぼ 1:1 の割合になっている. また流れの可視化の ために トレーサ としてポ リスチ レンビーズを少量混入 させ ている.
テイラー渦流れは実際には 3 次元のスパイラル流れであ り, この流れの速度分布を求め ることは一度 にはで きない.
よって,まず半径方向 と軸方向の速度成分を求め るために 内円筒の回転軸 を含む面の方向に 5 0 0 W のスライ ドプロジ ェクタによるス リット光 を照射 し ,2 次元流れ場 を写真撮 影 した.今回の適正 な撮影条件 はシ ャッタース ピー ドは
1/ 6 0 秒で絞 りは 4 であった. 図 1 実験装置
流れを制御す るパ ラメータは二つある.一つ は動的パ ラメータであ るレイノルズ数 ,Re で( 1) 式で表わせ られ る.
Re‑uRl d /z J ( 1 )
ここで,G Jは内円筒の角速度 ,R l は内円筒の半径 ,d は内外円筒の隙間,Z Jは作動流体 の動 粘度を表す. もう一つは幾何学的′ ミラメータであるアスペク ト比 , I lで(2) 式で表わせ られ
る.r‑L/d ( 2)
テイラー渦流れの
2次元画像解析2 7 ここで ,L は作動流体 の軸方向高 さである.
作動流体の動粘度はあらか じめ作動流体 の各温度 における動粘度を求めてお き,実験中は 作動流体の温度を測定することにより動粘度 とした. よって直接の レイノルズ数の制御 は内 円筒 の回転角速度であ り,直流電圧で変化 させた. アスペク ト比 は作動流体 の軸方向の高 さ を読み取 り顕微鏡で測定 して求めた.
3.
画像処理システム3. 1 システムのハー ドウエア
画像処理 システムの/ 、‑ ドウエア部分についてその全体を図 2 に示す.画像入力装置 はイ コンピュータ
̲ ∴
∴ ,丁
図 2 ‑‑ドウエア
メークスキ ャナ ( NEC 製 ,PC‑ i n5 0 3 ) を使用す る. この装置 は平 面走査方式でデータは RS・ 23 2 C で 2 倍化 されて コンピュータに送 られ る.画像出力装置 はプ リソタ ( NEC 製 ,NM・ 9 9 5 0 Ⅰ Ⅰ)を使用 し,逐次,画像処理 された画像 を出力する.画像 は ドッ ト出力 の絵 画的表現 と 2 倍化データの形の出力ができる. また,解析 された渦 中心か らの距離 と速度値 はプ リンタに出力 される.ベク トル線図, 速度分布図の結果 はプロッタ (グラフテ ック製 ,MP4 200 ) に出力 され る. コンピュータ ( NEC 製 ,PC‑ 9 801 RX) は周辺装置の制御 と画像処理演算,解析演算を行 う.
3. 2 システムのソフ トウエア
画 像 処 理 手順 を図 3 に示す.画像 処 理範 囲指 定 ( Pr oces s i ng Ar i aSe t ) は入力 された画像データにおいて画像処理で きるデータ
はコンピュータのメモ リ量の関係で制限されるため,入力画像 の中 か ら画像処理に適する範囲を指定す ることである.本解析 は流れの 軌 跡 か ら速 度 を 求 め る の で 線 の 幅 は 必 要 な い.細 線 化 ( Thi nni ng)
(12)は入力 された画像をその画素の連結性を失 うことな く線幅 1 の線図形 まで細めることをい う. ラベル化 ( Label l i ng)
(12)は線図形の一つ‑つを区別す るために通常 は 1 と0で表わ され るデ ータを 1 以上の値で名前を付けて区別するものである.以上 の処理 が画像処理であ り, この処理により画像解析が可能 なデータが用意 される.ベク トル線図は入力画像か ら画像処理 された画像 データを
I .:;.I. r ≡ ≡
≡F I
図 3 画像処理フロー
チャー ト
線図化 して 7‑ロツタに出力 され る.ベ ク トルの長 さは ラベル化 された一つ 一 つ の松那 t t T
Bl=
軒 の始点 と終点の距離 とす る.長 さを求め るには画素 の数の総数を長 さとす るノ )杖 とE
lf.仰値か ら 2 点間の距離 とす る方法 とがあ るが,本解析では二つの方法 を比較 した結果
,l刑州..の高い 2 点の座標値 か ら距離 を求め る方法を採用 した.速度分布 の解析については, このベ ク トル線図か ら流れの渦の仮想中心,流れの方向を使用者が入力す ることによって中心か ら の距離 における速度が求め られ る.那合上,中心 を通 る半径方向の軸 に対 してベク トルが上 向 きの ものは速度の大 きさを正 とし,下向 きの ものは負 と表現 した. このシステムにおけ る 一連 の画像処理,解析,及び周辺機器 の制御 のプログラムは C 言語 を使用 した.
4. 結 果 4. 1 画像処理
流れの断面写真 を図 4 に示す.凶は渦の中心 付 近 を取 り出 している. 1 枚だけの写真 では データ数が少 な くなるため同 じ粂1 1の もの を 1枚は川 して合成す る. この ときの条件 は Re がほ ( , ま1 7 3 0 で r lは 1 であ る. この共
作におけ るテイ ラー渦のセル数 は 1セルであ る.写真 について右側 は内円筒であ り,左側 は外円背であ る.流
jJJ ‑ 向 は反時計方向になってい るこ とがわか っている. 白い線 はポ リスチ レンピースの軌跡であ り,流跡を示 してい る. この流 跡が一定時間における流れの郎恥 を' 7 7 , ‑しているので , 郎恥 を求め ることで速度 とす る. この 写真が入力画像 となる.
図 5 は入力画像 をパ ソコンに入力 した 一 1枚の うちの 1枚の拭く 紺 虫である.入力画像 はポ リ スチ レソの軌跡が白いため入力 した実際の原
i叫如 ま軌跡の線 は, Wiくなる. ここで画像 データ 上で白い色 とは 0であ り,黒い色 とは 1の値 を意味 している. 図 6 は原か 酎象を細線化 した も
図4 流れの断面写真
テイラー渦流れの
2次元画像解析のである.細線化において一つの線か らの分岐線が発 生 したものは消去す る. この段階において入力 された 流跡線 は 1 本 1 本が区別 された幅 1 の線 となってデー
タになっている.
4. 2 画像解析
画像処理 されたデータか ら速度分布 を求めるために ベク トル線図を求める.図 7 はベク トル線図である.
このベク トル線図は 4 枚の写真 を画像処理 した結果 を 合成 してある.流れの方向を示すために終点に ・印を 付けてある.流れの方向は写真か らは判定できないた め,あらか じめ写真撮影の段階で確認 しておき,解析 者が回転方向を入力 した.本 システムはベク トル線が 4 枚 の写真の うちのどのデータであるか色別に判断で きるようになっているが,今回は不要のためこの図か らは不明である.
図 8 はベク トル線図か ら求めた速度分布 を示す. グ ラフの横軸 は渦中心か らの距離であ り,中心か ら右方 向は二重円筒の内円筒方向で,左方向は外円筒方向で ある.縦軸 は速度の大 きさを示す.渦中心 は仮想の中 心であ り,解析者が任意に決めたものである.
表 1 は速度の大 きさと中心か らの足 巨離を表わ してい る.‑の記号がついているのは半径の欄においてはグ
I/
. r ・ ‑
2 9
̲ ■ ■ ヽ
l l
L = コ 7 . 1
㌔・ \ ー
図 5
原画像′/
/ ー 一
一 ヽ
J. ヽ′
J
l 一
′
\■ \
図 6 細線化処理
ラフの第 2, 3 象限にベク トル線がある場合であ り,速度の欄の場合はベク トル線図上で下 向きのものを表わす.
以上の結果か ら,一つの渦流れの速度分布は内円筒側において大 きく,また外円筒側 も大 きい.渦中心は速度 は 0となる領域が存在するように思われ る.本結果 は今尾 らが熱線流速 計で測定 した結果( 5 ) ,及び小林 らのピ トー管による測定結果( 6 ) と定性的に類似 しているよう
に思われる.
5. 結 論
同軸回転二重円筒間の粘性流体の流れ,すなわちテイラー渦流れにおける半径方向 と軸方 向の速度分布を解析す るために,流れの可視化法か ら写真撮影 を行い,それを画像 データと
して コンピュータによ り画像処理を行 ない解析す るシステムを開発 した.その結果,内円筒 側における速度 は大 きく,渦中心では速度 は0になる. さらに外円筒側 における速度 は外円 筒に向かって大 きくなる.
本 システムは流れの画像処理,解析 を行 うのに有効であることがわかった.
最後 に,本研究を行 うにあた り本校機械工学科教授,坂 口正雄先生 よ りイメージスキ ャナ を借用 しました. ここに謝意を表 します. また,本 システムのプログラムを作成す るにあた
り有益 な助言をいただいた本校機械工学科助手,小野伸幸先生に謝意を表 します.
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図
7
ベ ク トル線図n
R
参 考 文 献
( 1 ) Be nj ami n,T . B . ,Pr oc . R.Soc.London ,
表 1
速度 データ1
バ ン メno
′、ソ ケ イ1 ‑5 4 2 1 6
3 58
4 3 9 2
バ ン メno
ハ ソ ケ イ1 3 9 2 ‑4 3 3 ‑1 0 4 ‑4 7
5 29
6 4 5 7 3 2 8 1 6 3
バ ン メno
ハ ソ ケ イ1 2 2 2 3 2 3 ‑44 4 ‑4 3 5 ‑1 3 6 ‑2 3 7 ‑4 3
8 41
9 3 4
ヽノ
no 1 2 3 4 5 6 7 8 9
メソ●ヽノ
4
ソ ケ イ
1 0 1 8
‑21
‑4 2 41 20 4 9 4 7 2 8
"