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東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要

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(1)

東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要

43

2008  17 

南オーストラリア州における幼児教育制度・政策 及び日本における幼保一元化に関する比較制度的研究

A S t u d y  on t h e  C h i l d h o o d  E d u c a t i o n  System a n d  P o l i c y   i n  t h e  S t a t e  o f  S o u t h  A u s t r a l i a  a n d  t h e  C o m p a r a t i v e  R e s e a r c h  

on t h e  I n t e g r a t i o n  o f  K i n d e r g a r t e n  a n d  C h i l d  C a r e  C e n t r e  

古川

はじめに

現在、東京女子体育短期大学児童教育学科にお いては、海外における教育実習プログラムとして

「幼児教育国際比較」を実施している。このプログ ラムは、実習先をそれまでの米国コロラド州から、

2006

(平成

18)

年度には豪州南オーストラリ ア州アデレード市近郊地域に変更させ、その第一 回海外教育実習が

2007

(平成

19)

2

月に終 了している。

オーストラリアの中でも特に実習先の南オース トラリア州は、旧宗主国であるイギリスの影響が 非常に強い地域として知られており、その意味で はこれまで海外教育実習を実施してきた米国の教 育制度とはかなり異なることから、同朴

1

における 教育制度・政策等の研究がかねてより懸案事項で あった。そして、実際に南オーストラリア州での 第一回プログラムの引率を経験した結果、より実 りある海外実習を実施していくためには、国内の 事前教育において実習先の幼児教育制度及び幼児 教育政策等を、学生により深く理解させる必要性 があることを痛感すると同時に、事前教育用の詳 細なテキスト・参考資料の作成が不可欠であるこ

とを認識するに至った。

そのため本研究は、「幼児教育国際比較」におけ る、事前教育用のテキスト・資料の必要性が、直接 的な研究動機になっている。しかしながら、単に これに留まらず、日本の幼児教育との制度比較と いう視点を持った場合、比較項としてクローズア ップされてくるのは、「幼保一元化」(いという問

和 人

題であると考えられる。つまり、具体的には

2006

(平成

18)

10

月から実施されている幼保一体 化施設である「認定こども園」の運営に関する事 項が、現在の日本の幼児教育において最も研究二 ーズが高いのではないかとの問題認識によるもの である。

以上のことから、本研究は、「幼保一元化」とい う問題の日豪制度比較を通じて、日本の幼児教育 制度における今後の研究課題を設定していく際の 研究ノートとさせていくことを目的としている。

第一章 南オーストラリア州における 幼児教育制度・政策の概要

2006

(平成

18)

年度の南オーストラリア州

における第一回海外教育実習では、アデレード到

着後翌日に実習引受機関である州政府教育・幼児

サービス局の会議室において、現地の学校教育制

度及び幼児教育政策に関する研修が、国際教育課

主催によって実施されている。そこで、第一章に

おいては、この研修において配布された資料

(Lisa Davis Chris Christensen,  International Education  Services,  Department of Education and Children's  Services,  7)

を基にして、南オーストラリア

州における学校教育制度及び幼児教育政策の概要

を記述していくことにする。ただし、ここで幼児

教育・保育における類似概念に関しては、「

1985

年幼児サービス法

(Children'sServices Act  1 5,  Version : 1. 4. 2 7)

」における定義に従った。

(2)

第一節 南 オ ー ス ト ラ リ ア 州 に お け る 学 校 教 育 制 度

(1) 南オーストラリア州における教育行政の概要 ォ ー ス ト ラ リ ア は 連邦制を採用しており、憲法 に お い て教育に関する責任と権限は

J

1

にあると規 定 さ れ て い る 。 そ の た め 、 教 育 は 地方分権化され て お り 、 南 オ ー ス ト ラ リア州では州政府教育・幼 児 サ ー ビ ス 局

(DECS: Department of Education  and Children's Services)

が、公立の就学前教育及び 初等中等教育を管轄している。

教 育 ・ 児 童 サ ー ビ ス 局 は 、 州 内の初等中等教育

621

校 、 就 学 前 教 育

419

機 関 、 保 育 所 ・ 託 児 所

36

プ ロ グ ラ ム を 所 管 し て お り 、 就 学 前 教 育 で 約

18,  2 00

人、初等教育が約

111, 0 0

人、中等教 育には約

65,  0 0

人の在学者があり、常勤・非常 勤を含めて

37,  000

人以上の教職員を抱え、

16

億 オ ー ス ト ラ リ ア ・ ド ル 以 上 の 予算を計上してい る組織である。

教 育 行 政 と し て は 、 例 え ば アデレード市北部に 位置する

Barossa

学区や東部にある

HillsMurraylands 

学区のように、

J

廿内には

16

の学区が設定されてお

り、各学区には学区教育事務所が配置されている。

た だ し 、 州 都 で あ る ア デ レ ー ド 市 は 、 ア デ レ ー ド・メトロ

(AdelaideMetro)

という一つの大学区 で あ り 、 こ の 中 に

2006

(平成

18)

年 度 の 実 習 先である

NorthEast

学区をはじめとした

8

つの小学 区に分かれている。

(2) 南オーストラリア州における学校教育体系 オ ー ス ト ラ リアの学校教育体系は、日本の

6‑

‑ 3

制 と は 異 な り 、 州によって

6‑ 4 ‑ 2

制や

‑3 ‑2

制 で あ る 。南オーストラリア 1 ' 1 ' 1 の 場 合 は、図ー

1

で 示 さ れ る よ う に 就 学 前 教 育

1

年間、

図 ー

1

南オーストラリア州の学校教育体系

子 年

年 齢 16  21  15  20  14  19  13  18  12  17  11  16  1

, 

0  1154  

8  13  7  12 

1 1  

10 

, 

3  8 

大 学 院

大 学 教 育 4

(Tertiary Education) 

高 等 職 業 専 門 学 校

(TAFE: Technical  and Further 

Education)  3年 中 等 教 育

(Secondary Education) 

5

初 等 教 育

(Primary Education) 

7

初等教育移行期間 ( R e c e p t i o n )

‑ ‑ ‑ ‑ _  

就 学 前 教 育 (Pre

忍西盃「面 i 盃 孟 ふ 盃 ― ‑ ‑ i 丁 ― ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

保 育 セ ン タ ー

□ 

│ 

出典:

LisaDavis (2007),  Children's Services Act 1985 (Version:1.4.2007),  Education  Act 1972 (Version:1.4.2007)

を 参 考 に 筆 者 が 作 成

(3)

東京女子

1

本育大学・東京女子体育短期大学紀要

43

2008  19 

初等教育

7

年間、中等教育

5

年間、覇等職業専門 学校

(TAFE: Technical and Further Education) 

3年 間、または大学教育

4

年間といった教育段階にな っている。

就学義務期間は、

6

歳から

16

歳までの初等教育

7

年間・中等教育

4

年間の計

11

年間であり、

5

歳 になると就学前教育から初等教育への移行期間で あるレセプション

(Reception)

に在籍することが できるようになっている。

(3)

南オーストラリア州における公立学校の 種類とその概要

南オーストラリア州における公立学校・保育施 設 の 種 類 と し て は 、 保 育 セ ン タ ー

(ChildCare  Centre)

、 幼 稚 園

(Preschool)

、 前 期 初 等 学 校

(Junior Primary)

、初等学校

(PrimarySchool)

、中等 学校

(SecondarySchool)

、成人教室

(AdultReentry)

、 郡部地域学校

(CountryArea School)

、アボリジニ 学 校

(AboriginalSchool)

、盲.聾・養護の特別支 援 学 校

(SpecialSchool : Disabilities)

、 病 院 学 校

(Hospital School)

、遠隔教育

(DistanceEducation)

、 特 別 コ ー ス 設 置 校

(SpecialistSchool)

、国際学校

(International School)

に区分されている。

一般的な公立学校の設置形態としては、通常は レセプションから

7

年生までの在籍する初等学校 と

8

年生から

12

年生までが在籍する中等学校の二 種類である。しかし、学校によってはレセプショ ンから

12

年生までの初等・中等学校の併設校、

6

年生から

12

年生または 7年生から

12

年生が在籍 する初等高学年・中等学校の併設校、及び

11

年生 と

12

年 生 の み が 在 籍 す る 後 期 中 等 学 校 も 存 在 す る。また、一般的な設置形態の初等・中等学校の 中には、音楽・

IT

・言語・スポーツ、農業・水産 養 殖 ・ ブ ド ウ 栽 培 ・ 英 オ 教 育

(SHIP:Student  with High Intellectual Potential)

の領域に特化した特 別焦点化校

(SpecialFocus School)

もある。

2006

(平成

18)

年 度 の 実 習 先 で あ っ た ア デ レード・メトロ

(AdelaideMetro)北東 (North East)

学区を例に挙げると、保育施設の種類とその 施設数は、保育センター

(ChildCare Centres)  2 

カ所、統合保育センター

(IntegratedCentres)  2

カ 所、臨時託児所

(OccasionalCare)  3

カ所、早期学 習プログラム

(EarlyLearning Programs)  1

プログ ラム、遊戯施設

(Playcentres) 1

カ所である

(2)

。 また学校教育機関は、就学前教育機関

(Preschools) 28

校、初等学校

(PrimaryEducation) 

1

校、初 等 ・ 中 等 併 設 校

(Primary/Secondary Combined) 

1

校、中等学校

(SecondaryEducation)  6

校、特別 焦点化校

(SpecialEducation)  1

校、盲.聾・養護 の特別支援施設

(SpecialistFacilities)  5

カ所であ る 。 こ の 他 に 学 童 保 育 所

(Outof School Hours  Care)

34

カ所ある。

(4) 南オーストラリア州における学校経営 南オーストラリア州における学校組織としては、

校 長

(Principal)

、副校長

(DeputyPrincipal)

、教頭

(Assistant Principal)

、主幹

(Coordinator)

、指導教 諭

(AdvancedSkills Teachers Level  1 2)

、教諭

(Teacher)

、職員

(SchoolServices Officers)

で構成 されている。表ー

1

は州内の学校における典型的 な時間割の例であるが、その特徴としては

3

時限 目終了後の

11

時過ぎに中休みがあることから、お 昼 休 み が

13

時 過 ぎ と 遅 め に な っ て い る こ と であ る 。

表 ー

1

時間割の例

8:30 

始業時間

8:40 ‑ 9:00 

ホーム・ルーム

9:00 ‑ 9:45  1

時限目

9;45 ‑ 10:30 

2時限目

10:30 ‑ 11:15  3

時限目

11:15 ‑ 11:40 

中休み

11:40 ‑ 12:20 

4時限目

12:20 ‑ 13:05 

5時限目

13:05 ‑ 13:45 

昼 食

13:45 ‑ 14:40  6

時限目

14:40 ‑ 15:15 

7時限目

15:30 ‑ 16:30 

ミィーティング

出 典 : 現 地 研 修 配 布 資 料 よ り

(4)

(5) 南オーストラリア州における カリキュラムの概要

現在、南オーストラリア州の公立学校及び保育 サービス施設においては、

'TheSouth Australian  Curriculum,  Standards and Accountability  (SACSA)  Framework 

がカリキュラム・フレームワークとし て実施されている。この

SACSA

の最大の特徴とし ては、誕生から

12

年生までの全ての発達段階を一 つのフレームワークで網羅しており、各段階ごと に

4

つのカリキュラムが策定されている。つまり、

誕 生 か ら

2

年 生 ま で を 対 象 と し た

EarlyYears  Band

3

年 生 か ら

5

年 生 ま で の

PrimaryYears  Band

6

年生から

9

年生までの

MiddleYears Band

10

年生から

12

年生までの

SeniorYears Band

、以 上

4

つのカリキュラムで構成されている。そして、

Early Years Band

は、更に①誕生から

3

歳、②

3

歳 から 5 歳、③レセプションから 2 年生、以上の三 段階の発達区分に分けられているい。

第 二 節 南 オ ー ス ト ラ リ ア 州 に お け る 幼 児 教 育 政 策

(1) 幼児教育政策の立案・決定・実施機構 南オーストラリア州の幼児教育に対する政策的 取 り 組 み に お い て は 、 幼 児 教 育 政 策 を 一 元 的 に 立 案・決定・実施する機構が存在する。つまり、州 政府首脳レベルにおいては、「幼児教育に関する州 政府閣僚間調整委員会

(InterMinisterial Committee  on Child Development)

」があり、局長レベルでは

「 幼 児 教 育 に 関 す る 局 長 間 調 整 委 員 会

(Chief Executive  Coordinating  Committee  on  Child  Development)

」 が 、 ま た 実 務 責 任 者 レ ベ ル で は

「幼児教育戦略及び幼児・児童の保護に関する上級 幹部会議

(SeniorOfficer Groups on Early Childhood  Strategy and Child Protection)

」が設置されている。

ただし、このような分野横断的な政策調整委員 会の存在は、単に南オーストラリア州政府レベル のみならず、連邦政府レベルにおいても幼児教育 に 関 す る 連 邦 政 府 閣 僚 間 調 整 委 員 会

(Cross Ministerial Committees)

が設置されており、国家保

育基準

(NationalStandards for Child Care)

をはじめ とする国家レベルでの幼児教育政策の調整機関と して機能している。

(2) 南オーストラリア州政府の 幼児教育重視政策とその根拠

教育・幼児サービス局は現在、乳幼児期におけ る発達及び学習に高い優先順位を置いた政策を推 進 し て い る 。 そ の 理 由 と し て は 、 乳 幼 児 期 は 学 校 教 育 や 生 涯 学 習 に 適 応 し て い く た め の 重 要 な 基 礎 を確立する時期であると考えられているからであ る。つまり、誕生してからの

5

年間、特に

3

歳ま でに子どもは、脳の基本的構造を確立して機能的 能力を獲得し、一生で最も速い進度で成長・学習 するような重要な時期が乳幼児期である、という 認 識 に 基 づ い て い る 。 そ し て 、 質 の 高 い 幼 児 教 育

プログラムに参加した子どもは、参加しなかった 子 ど も よ り 高 い 言 語 的 ・ 知 的 発 達 を 示 し 、 社 会 的・情緒的により高い能力を獲得することになる ことから、就学後により高い確率で成功する傾向 にあることを、近年の幼児教育研究は立証してい る

(4)0 

このように教育・児童サービス局が幼児教育を 童視し、就学前教育へ多くの資源を投資する際の 理 論 的 根 拠 と し て 挙 げ て い る の が 、 世 界 銀 行 も 途 上国において幼児教育を重視した融資政策を取る 際に依拠としている、「幼児教育への投資は、職業 訓練や学校教育へ投資するよりも収益率が高い」

(Heckman and Carneiro 2 3)

という理論である

(5)0 

この理論は、乳幼児期における健全な認知及び情

緒 的 な 発 達 は 、 目 に 見 え る 形 で 経 済 的 収 益 率 に 影

響 を 与 え る と い う も の で あ る 。 こ の よ う な 教 育 経

済学的理論に加えて、世界銀行は乳幼児の発達に

関する研究成果を援用して、乳幼児期における脳

の発達の重要性、特に健康や栄養の必要性を指摘

すると同時に、幼児プログラムは就学後の留年の

可能性を減少させ、子どもに学校教育への準備を

させることになることから、教育プログラム全体

のパフォーマンスを改善することになるとしてい

る。この点に関しても教育・幼児サービス局は、

(5)

東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第 43 号 2008 

21 

同様の認識により幼児プログラムにおいて健康と 栄養のサービスを統合した包括的な政策を提言し ている。

(3) 南オーストラリア州における 幼児教育政策の概要

教育・幼児サービス局 (DECS) は 、 2005年か ら 2010年 ま で の 中 期 計 画 (DECSStatement of  D i r e c t i o n s   2  0  0  5  ‑ 2  0  1  0) において八つの方針を 設定しており、その第一番目として「全ての子ど もに力強い一歩を」と題した幼児教育政策を提示 すると同時に、「 2010年までに統合された幼児サ ービス受益者数を増加させる」や「 2010年まで に国家保育基準のレベルに合致する、若しくは国 家保育基準のレベル以上になる」等の幼児教育施 策 10項目の具体的な到達目標を掲げている

(6)

この第一の方針である幼児教育政策においては、

「幼児サービスの強化・統合」、「幼児サービスの量 的・質的改善」、「学習及び発達において成功経験 のある就学前幼児数の増加」の三つを柱としてい る。この中期計画における主要事項は、以下の通

りである。

│.幼児サービスの強化・統合

・有効な什

I

政府間機構、ガバナンス、リーダーシ ップ、及び運営戦略の確立を通じ統合された幼 児サービスの立案および調整を支援する

・変化する幼児及び家庭のニーズに応えるため幼 児サービスの収容能力を拡大させる

・誕生から

8

歳 ま で の子どもにとってサービス継 続への障壁を軽減する

I

I

.幼児サービスの量的・質的改善

・保育における健康及び安全基準を改善する

・幼児期スタッフの定着率の上昇

・保育者のための専門性向上プログラムヘのアク セスの上昇

・様々な幼児サービス間の専門性及び系統的接続 性の向上

・保育スタッフのリーダーシップ能力の開発を継

続する

・幼児サービスにおける SACSAフレームワークの 使用を増進・保持する

・有効な識字プログラムの構築における教員の知 識及び技術の向上

│││.学習及び発達において成功経験のある就学前 幼児数の増加

・複合的な障壁を経験している子どもと家庭のた めの幼児サービスヘのアクセスと参加の改善

・子どもとその家族の学習と発達を支援する統合 されたユニバーサル・サービスの確立を継続さ せる

•前期初等学校のクラス規模を縮小し続ける

・早期特定と介入プロセスを改善し続ける

・リスクのある子どもと家族を支援する保育者の 能力を強化する

(4) 南オーストラリア州における 保育サービスの概要

① 幼 児 教 育 及 び 保 育 サ ー ビ ス (EarlyChildhood  Education and Care) の概要

南オーストラリア州において幼児教育及び保育 サ ービスは、教育・幼児サービス局が一元的に許 認可を与え、支援を行っている。これらのサービ スは、

0

歳児から就学前の幼児が利用可能である が、これに加えて就学児童を対象とした学童保育

も教育・幼児サービス局が提供している

(7)0

教育・幼児サービス局は、保育サービスにおけ る質を維持するために規則を適用させて、保育セ ンター及び託児施設に対して許認可を与えている。

これに加え、連邦政府の質的改善・認可システム は、保育サービスにおける高い品質の確保に寄与 している。また、保育サービス料に対する支援が 必要な家族に対しては、財政的援助が可能となっ ている

(8)

②保育サービス ( C h i l dCare Services) の概要

教 育 ・幼児サービス局は、各家庭のニーズに応

じて、①保育センター ( c h i l dc a r e  c e n t r e ) 、あるい

(6)

はファミリー用の託児所

(familyday care home)

に おける保育サービス、②乳児、よちょち歩きの幼 児、そして就学前教育相当の幼児に対する保育サ ービス、③小学生の始業前・放課後•長期休業期 間の学童保育サービス、④偶発的・追加的なニー ズを持った子どもに対するパート・タイム、緊急 的な保育サービス、以上のように様々な保育形態 を用意することで各家庭の保育ニーズに対応して いる。

③保育センター

(ChildCare Centres)

の概要 南オーストラリアナト

1

において保育センターとは、

「保護者の手を離れて

4

人以上の乳幼児を金銭的目 的または他の目的のため保育する、住宅用ではな いあらゆる場所あるいは施設である。

[1985

年幼 児 サ ー ビ ス 法 ・ 第 1 部 3.(1) (b) ]」と定義さ れている。全ての保育センターは州政府の許認可 を必要とし、かつ施設.設備及び保育サービスの 質を確保するために、「国家保育基準」をクリアー することが要求されている。このような保育セン ターは、設置形態が州立による施設だけではなく、

保 護 者 達 及 び 他 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー ・ メ ン バ ー の 任 意設定の委員会により設置・管理されるコミュニ ティー協同立の施設や営利事業を目的とした私立 保育センターも存在する。

通常、保育センターは、

6

歳 未 満 の 乳 幼 児 を 対 象 と し た 終 日 ま た は 一 部 時 間 の 保 育 サ ー ビ ス を 提 供する施設であり、大多数のセンターは、

1

日当 たり最低

8

時間、週

5

日、年間

48

週の利用が可能 となっている。利用料金は、終日保育の場合

1

週 間で$

200‑$280

と設定されているが、家計 所 得 に 基 づ い た 育 児 助 成 制 度 が あ る こ と か ら 、 実 際は各センターによる設定金額と育児助成比率に より、各家庭で異なっているのが普通である

(9)0 

南オーストラリア州には、

2007

年現在で州立に よる保育センターが

15

カ所あるが、これを

2011

年までに 24カ所に拡大させるという計画がある。

第二章 南オーストラリア州及び日本に おける幼保一元化の現状

第 一 節 南 オ ー ス ト ラ リ ア 州 に お け る 幼 保 一 元 化 の 現 状

前 述 の よ う に 南 オ ー ス ト ラ リ ア

J

1

においては、

幼 保 の 分 け 隔 て な く 教 育 ・ 幼 児 サ ー ビ ス 局 が 、 一 元的に幼児教育を所管している。そして、これに 留まらず南オーストラリア州においては、教育・

幼児サービス局だけではなく、保健局

(Department of Health)

及び家族・コミュニティー局

(Depart ment for Families and Communities)

が共同で、幼児 教育プログラムに関する

EarlyChildhood Connec‑

tions"

という広報誌を、州政府として発行してい る 。

このような広報誌の存在からも分かるように、

南オーストラリア州においては幼児教育に関する 行政機構が完全に一元化されているだけではなく、

縦割り行政を超えて前述のように幼児教育関連の 包 括 的 な 政 策 の 策 定 を 可 能 に す べ く 、 州 政 府 閣 僚 レベル、局長レベル、上級幹部レベル等において 横 新 的 な 政 策 調 整 を 可 能 と す る よ う な 政 策 調 整 委 員会も存在していることは、日本とは大きな違い であると指摘できる。

第 二 節 8 本 に お け る 幼 保 一 元 化 の 経 緯 と 現 状

①幼保一元化の経緯

それでは振り返って、ここでは日本の状況を確 認してみることにする。これまでの日本における 幼保一元化の経緯を概観してみると、日本におけ る幼保一元化論議は、ある意味では古くて新しい 問題であることに気がつく。

元 来 、 日 本 の 幼 稚 園 と 保 育 所 は 、 歴 史 的 に は 全

く異なる道を辿ってきた。つまり、戦前において

幼稚園は、都市の中流以上の家庭の幼児を対象と

した教育機関であったのに対し、保育所の前身で

ある託児所は、大都市の低所得・貧民階層の幼児

(7)

東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要 第

43

2008  23 

を 対 象として、幼児の保護と婦人労働力の確保を 目的としていた施設であった

(10)

。そのため、戦前 に お い て も 既 に 幼保一元化は問題とされ、戦後に お い て も 多 く の 論 者 に よ っ て 早 く か ら そ の 必 要 性 が説かれてきた

(11)

。しかしながら戦後、幼稚園は 文 部 省 所 管 の 「 学 校 」 と し て 、 ま た 保 育 所 は 厚 生 省 所 管 の 「 児 童 福 祉 施 設 」 と し て 、 別 々 に 発 展 し てきたという経緯がある。

こ の よ う な 性 格 の 全 く 違 う 機 関 の 一 元 化 が叫ば れ る よ う に な っ た の は 、 幼 稚 園 ・ 保 育 所 の 整 備 が 進 み 、 多 く の 幼 児 が い ず れ か の 施 設 に 入 る よ うに なった

1960

年代頃からであると言われている。

こ の 時 期 、 同 じ 年 齢 の 幼 児 を預かる施設が、一方 で 幼 稚 園 、 他 方 で保育所というのはおかしいと、

保 育 学 者 や 一 部 の 関 係 者 が 指 摘 し 、 論 議 が 盛 ん に な っ た 。 そ の 背 景 に は 、 両 施 設 に お け る格差、幼 児 の 数 の 推 移 ・ 幼 児 の 獲 得 競 争 、 施 設 の 偏 在 ・ 整 備 の 不 均 衡 、 国 の 財 政 援 助 や 保 育 料 の 算 定 方 式 の ち が い 、 関 係 団 体 の 意 見 の 相 違 等 の 諸 々 の 事 情 が あった

(12)

1963 

(昭和

38)

年 、 文 部 ・ 厚 生 両 省 は 共 同 通 達 を 出 し 、 保 育 所 に お い て も 幼 稚 園 該 当 幼 児に は 「 幼 稚 圏 教 育 要 領 」 に 準 じ た 教 育 を 行う旨を通 知 し た 。 し か し 、 同 時 に 幼 稚 園 は 幼 児 の た め の 教 育 を 行 う 学 校 、 保 育 所 は 「 保 育 に 欠 け る 」 乳 幼 児 を保育する児童福祉施設として、両者を区分する 現 体 制 の 維 持 を 明 確 に し て い る 。 そ し て 、 文 部 省 は、幼稚園教育振興計画

(1964‑70

年)、その 第

2

次 計 画

(1972‑81

年 ) を 策 定 し て

4 ・ 

歳 児 の 就 園 を 助 長 し 、 さ ら に 幼 稚 園 教 育 振 興 計 画 要項

(1991‑2000

年)において

3

歳児の就園 を 奨 励 し て き た 。 同 時 に 、 厚 生 省 もまた保育所緊 急 整 備

5

カ年計画

(196 7

〈昭和

42

〉年、第

2

1971

〈昭和

46

〉年)、乳幼児保育特別対策

(1969

〈昭和

44

〉年)、障害児保育事業実施要 綱

(1974

〈昭和

49

〉 年 ) 等 を 通 じ て 保 育 所 へ の 入 所 を 促 進 し て き た と い う 経 緯 もあり、幼保は 縦割り行政の下、別々の道を歩んできた

(13)

その後、文部・厚生両省は、

1975

(昭和

50) 

年 に 行 政 管 理 庁 の 勧 告 を 受 け て 幼 保 一 元 化 を 念 頭

に 「 幼 稚 園 及 び 保 育 所 に 関 す る 懇 談会」を設置し たが、結局

1981

(昭和

56)

年 に 出 さ れ た 報 告 書においては、「簡単に一元化が実現できるような 状 況 で な い 」 と の 結 論 を 示 し て い る 。 ま た 、 就 学 前 教 育 制 度 ・ 行 政 の 抜 本 的 な 改 革 構 想 を 期 待 さ れ た臨時教育審議会も、「幼稚園・保育所は、その目 的 ・ 機 能 は 異 な る が 、 幼 児 教 育 に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た し て お り 、 就 園 希 望 、 保 育 = ー ズ に 適 切 に 対 応 で き る よ う 、 そ れ ぞ れ の 制 度 の 中 で 整 備充 実を進め、両施設の運用の弾力化をはかる」(第

3

次答申)として、

1987

(昭和

62)

年 の 最 終 答

申でも、現状維持が確認されている。

②近年における幼保一元化の動向

臨 教 審 に お い て は 、 幼 保 二 元 体 制 と い う 現 状 維 持 が 確 認 さ れ た 訳 で あ る が 、 こ れ が

1990

年 代 以 降 に な る と 急 激 な 行 政 環 境 の 変 化

(I

い か ら 、 文 部 ・ 厚 生 の 両 省 の 動 き よ り も 先 に 、 地 方 公 共 団 体 が 幼 稚 園 と 保 育 所 を 接 近 さ せ 幼 保 の 一 体 的 運 営を

させるという独自の施策を打ち出してくる。

そして、

1996

(平成

8)

年 に 地 方 分 権 推 進 委 員 会 は 、 幼 稚 園 と 保 育 所 の 連 携 強 化 ・ 施 設 の 総 合 化 ・ 共 用 化 の 方 向 で 弾 力 的 運 用 を 提 言 し た の を 契 機として、

1997

(平成

9)

年文部省は「預かり 保 育 推 進 事 業 実 施 要 項 」 を 策 定 さ せ 、 同 年 厚 生 省

は 児 童 福 祉 法 を 改 正 さ せ て 地 域 住 民 に 対する子育 て支援の役割を規定

(48

条の

2)

するとともに、

1998

(平成

10)

年 に は 、 文 部 ・ 厚 生 両 省 が

「幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針」

を 発 表 し て い る 。 ま た 、 同 年 に は 「 幼 稚 園 教 育要 領 」 が 改 訂 さ れ て 、 幼 稚 園 が 地 域 の 幼 児 教 育 セ ン ターとしての役割を担うことを期待され「預かり 保 育 」 を 行 う こ と が 一 般 的 に な っ て き た 。 こ れ に 加えて、文部省は、

2001

(平成

13)

年 幼 稚 園 の 子 育 て 支 援 機 能 の 充 実 を 目 指 し て 「 幼 稚 園 教 育 振 興 プ ロ グ ラ ム 」 を 策 定 す る と 同 時 に 、 同 年 厚 生 省 は 児 童 福 祉 法 を 改 正 し て 公 設 民 営 保 育 所 を 推 進 させる条件整備を行っている(児童福祉法

56

条の

7)

これを受けて

2002

(平成

14)

年に品川区は、

(8)

定員割れした幼稚園に保育所を併設して、区独自 の一体施設を開設させ、同区は2005 (平成17) 年ついに区役所内の保育所と幼稚園の担当窓口を 一本化させている (15)0 

③幼保一元化をめぐる政治的動向

2005 (平成 17)年衆院総選挙においては、

郵政民営化が最大の争点となったが、その陰に隠 れて幼児教育政策において自民党と民主党は、政 権公約であるマニフェストを通じて対照的な政策 を掲げている。自民党は「幼児教育重視の国家戦 略」を展開するとし、保育所・幼稚園の幼児教育 機能の充実を図るとともに、幼児教育の無償化を 目指し、子どもの人間力向上のため児童福祉政策、

教育政策、労働政策の間の連携を一層進めるとし ている (16)0 

これに対して、民主党のマニフェストにおいて は、「保育所は厚生労働省」、「幼稚園は文部科学省」

という縦割り行政を是正し、「子ども園(仮称)」

を創設して、幼稚園と保育所の一体化を推進する としている (I7)。また、「子どもや家庭に係わる問 題については、文部科学省や厚生労働省、法務省、

さらに警察庁など多くの省庁にまたがり、縦割り 行政の弊害が見られます。民主党は政権獲得後す みやかに、子どもや家庭の問題について、一元的 に政策立案・遂行する『子ども家庭省(仮称)』の 設置に着手します。」 (I8)と、幼児教育政策の一元 的な立案・実施機構の設立を具体的に提言してい

結局、この総選挙においては自民党が圧勝した ことから、就学前教育を一元化するという民主党 の「子ども家庭省」構想は実現することはなかっ た。しかしこれ以降、幼稚園と保育所を一元化す るのでなく、新たに就学前児童の「総合施設」を 設けるという構想が加速され、 2006 (平成 18) 2月「就学前の子どもに関する教育、保育等の 総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法 律第77号)」の公布により、同年 10月から「認 定こども園」制度が発足することになる。

ただし、この幼稚園と保育所の総合施設構想は、

実は 2003 (平成 15)6月の「経済財政運営 と構造改革に関する基本方針」、いわゆる「骨太の 方針2003」において既に閣議決定されていた政 策であり、同年 12月の総合規制改革会議による

「規制改革に関する第3次答申」では、 2004 16)年度中に基本的な考えをとりまとめた上で、

2005 (平成 17)年度からモデル事業を実施し、

必要な法整備定行うことも含め様々な準備を行い、

2006 (平成 18)年度から本格実施を行う、と のロード・マップが示されていた。その意味では、

0 5 (平成 17)年衆院総選挙で幼稚園・保育 所の総合施設構想が減速・後退されることなく、

当初の計画通り「認定こども園」制度が発足した、

と表記したほうが正確であろう。

④幼保一体化施設の実現とその現状

文 部 科 学 省 と 厚 生 労 働 省 は 2004 (平成 16)  5月以降、「総合施設に関する合同検討会議」を 三回ほど開催して総合施設の内容を調整し、縦割 り行政を超えた省際的教育政策 (19)を形成してい った。そして、「認定こども園」制度発足以降は、

両省による幼保連携推進室を設置して、「認定こど も園」制度の実施を始めとする幼保連携を推進す べく環境・条件整備を、都道府県や市町村の幼保 連携担当部局と協力して取り組んでいる (20)

法令において「認定こども園」は、地域の実情 に応じた選択が可能となるよう四つの類型が認め られている (21)。つまり、①認可幼稚園と認可保育 所とが連携して、一体的な運営を行うことにより、

認定こども園としての機能を果たすタイプである 幼保連携型、②認可幼稚園が、保育に欠ける子ど ものための保育時間を確保するなど、保育所的な 機能を備えて認定こども園としての機能を果たす タイプである幼稚園型、③認可保育所が、保育に 欠ける子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼 稚園的な機能を備えることで認定こども園として の 機 能 を 果 た す タ イ プ で あ る 保 育 所 型 、 ④ 幼 稚 園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育 施設が、認定こども園として必要な機能を果たす タイプである地方裁量型、以上の四類型である (22)

(9)

東京女子体育大学・東京女子体育短期大学紀要

43

2008 

25 

表ー2 「認定こども園」認定件数及び」申請見込件数 (2007 [平成19]41日現在)

件 数

訳)

幼保連携型 幼稚園型 保育所型 地方裁量型 不明 認定こども園の認定件数 94  45  32  13 

平成19年度中の申請見込件数 542  185  177  61  100  19  平成20年度以降の申請見込件数(注) 1,460  351  483  301  160  165 

合 計

2,096  581  692  375  264  184  出典:厚生労働省平成19810日発表資料 http:1/www.mhlw.go.ip/houdou/2007/08/h08104.html 

(注)「申請時期未定」の件数も含む

表ー 2 2007 (平成19)41日現在で の「認定こども園」の各類型毎による認定件数、

及び申請見込件数を示しており、この表から全国 における「認定こども園」の現状をうかがい知る ことができる。

第三章 日本における幼保一元化概念の 確認と南オーストラリア州の制 度からの示唆

第 一 節

H

本 に お け る 幼 保 一 元 化 概 念 の 確 認

「認定こども園」制度が発足することによって、

果たして幼稚園と保育所は一元化されたと言える のであろうか。「認定こども園」は、厳密に言うと 幼稚園と保育所が一元化されたものではなく、新 たに就学前児童の「総合施設」を設ける構想の中 から出てぎた、幼保が一体化された第三の施設で ある。その意味では、幼保一元化どころか、むし ろ「認定こども圃」により幼保が三元化してしま ったとも理解できる。

それでは、なぜ「認定こども園」が、このよう な第三の施設になってしまったかについては、こ の政策の課題設定過程にその理由を求めることが できる。つまり、今回の幼保一元化政策は、前述 のように 2003 (平成15)6月の小泉内閣に よる「骨太の方針2003」において、三位一体改 革の一環として保育所への補助金を一般財源化さ

せることを目的としたものであり、かつ規制緩和 政策の柱の一つでもあったという事情による。そ の際、内閣府内では文部科学省と厚生労働省との 担当部署を統合して「こども庁」を創設する構想 が浮上したこともあったが、結局は財務省などの 抵抗で、この構想は立ち消えとなっている (23)。こ のように、「認定こども園」は、結果的に政治・経 済的な妥協の産物として幼保の一体化施設という 位置づけで実現した経緯がある。もちろん当時、

子ども不在、国民不在の議論に対して全国保育団 体連絡会は、深い憂慮の念を表明している (24)0 

ところで、幼保一体化と幼保一元化では、明確 にその概念のどこがどのように違うのであろうか。

地方公共団体における見解を参考にすると、幼保 一体化とは、幼稚園と保育所が同一敷地内にあり、

現行の法制度の基で、一貰した幼児教育カリキュ ラムを作成して、職員の交流や幼児の交流、施設 の相互活用等、教育的観点から幼児の教育と保育 を進めていくことである (25)。これに対して、幼保 一元化は、幼稚園と保育所が同一敷地内にあり、幼 稚園・保育所の根拠法、設置運営基準、教育・保育 の内容基準等が改正された基で、幼児の教育と保育 を進めていくことであると定義されている (26)

第 二 節 南 オ ー ス ト ラ リ ア 州 の 制 度 か ら の 示 唆

上記のように現在の日本における幼保一元化は、

根拠法、設置運営基準、教育・保育内容基準等が

参照

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