(1) 信用割当理論とわが国の銀行行動
吉 尾 匡
Ⅰ 序
信用割当て(credit rationing)とは,銀行貸付市場に.おいて商業貸付利率が 資金の需給を完全には調整せず,超過需要が存在するままで,貸手が借手把・資
(2) 金を部り当てる状況のととである。通常次のように説明される。商業貸付利率
が制度的要因ないし競争条件などに.よって,均衡利子率(欝1図のβ1点)以 第 1 図
A2 AIB2 Bl
貸付額 下の水準,例えばれで硬喧的であれば,Alβ1の超過需要が存在する。いま金(1)本稿ほ昭和48年度文部省科学研究費に.よる研究の−・部である。また昭和49年度金融 学会秋季大会において報告の際,・一・橋大学山下邦男教授ならびに中央大学三宅武雄教 授より有益なコ.メソトを腸った。ここに.深く謝意を表する。
(2)Credit rationingの訳としてほ,「信用制限」があてられることもある(例えば,川 口弘〔12〕)。Credit rationingは,借手に信用を供与するという側面よりも,むしろ 制限するという側面の方に力点が置かれているから,「信用制限」の方が意図を正確に
伝えるかも知れないが,「鰐用割当て」という訳が山般的虹なっているので,ここでは 大勢濫.したがうこととした。
信用割当理論とわが国の銀行行動
・−J55−
439
融引締が強化され,供給曲線が∫15 1からぶ2∫2に,需要曲線がβ1エ)1からか2ヱ)望 にシフトした場合,貸付利率は若干上昇するかも知れないが(れ・→r・望),超過需 要はA2β2となり,信用割当ては強まることになろう。このよう\に信用割当て
の現象は,制度的要因とか市場の不完全性などによって,むしろ非合理的なも のとして説明されてきた。
(3)
信用割当ての現象それ自体ほ.,かなり古くから指摘されているのであるが,
これが理論体系の中で然るべき位置を与えられたのは,アブ=イラビリデイ一 理論以来のことである。貸手分析でほ,利子率が直接,借手(投資者)に.影響 を及ばさないとしても,貸手(銀行)のアグェイラビリデイ・一には影恕するか ら,信用割当てを通じて事実上投資嵐を左右することができると考える。つま り,投資が利子非弾力的な状況のもとで,信用割当てほ.金融政策の有効性を確
(4)
認するための1つの鍵に.なったのである。その後,D.R.Hodgman〔2。〕〔3〕
〔4〕,H.E.Ryder,Jr・.〔9〕,M.H.Miller〔8〕,M.Freimer&M.J.
Gordon〔1〕,D.M.Jaffee&F.Modigliani〔■5〕などに.よって−信用割当てに 関する理論的展開が行なわれた(〔〕の番号ほ稿末「参考文献」の番号)。本稿でほ まずJaffee〔6〕の信用割当理論の概要を述べ,次いでわが国銀行の信用割当 て行動を検討することにしよう。
ⅠIJaffeeの信用割当理論
Jaffeeは.信用割当ての問題を,銀行組織ないし1銀行全体の問題としてとら えるのでなく,個別の借手と銀行との間の相対取引の問題としてとらえる。し たがって需要曲線というのは銀行貸付に対する1企業の需要曲線であり,供給 曲線も当該1企業に対するものである。記号を次のように・定める。
(3)イギリスでは既に.19世紀始めの地金論争・通貨論争において信用割当てに・言及され ているし,ケインズ『−貨幣論.』に.おいても「満足せざる借手の部分」として扱われて いる(Keynes(二7〕Chap.37)。
(4)アグェイラビリティー一理論は,金融政策に・貸手が敏感に反応して信用のアグェイラ ビリティーが変化する点にポイントがあり,信用由当てと必然的に結びつくものでは ない。ただ,投資に大きな影響を与える貸手の行動の1つのパタ−ンとして,信用割 当てが重要な意味をもつことを強調しておきたい。
辣47巻 箆4・5・6弓
ニ∴砧眉−
440β名・・‥州第∠企業の銀行貸付需要額 ri……・〝 〝 に課せられる貸付利子率
点i…‥…〝 〝 〝
〝 利子要素,月忌=1+グ・i ん………〝 〝 への貸付額/<ヽ ん…‥・・〝 〝 への最適貸付額
凸帖…〝 〝 への貸付けからの銀行の期待利潤
ノ…・…
銀行の機会費用率′… 〝 機会費用要素,∫=1十ブ
需要関数から始めよう。穿=企業ほ銀行貸付額紅左右されない固定額の投盤 討画をもっているとする。この投資のためにかi仇の外部資金が必要であるが,
たとえ.利子率がゼロ(れ=0,属名=1)であってもβ名m以上は必要としない。
銀行が第g企業紅課する貸付利子率(′・どしたがっで孔)が高まるに.つれて,
銀行以外の資金に.依存するから,右下りの需要曲線をもつこ.とに.なる。
次紅1供給関数を考察しよう。欝省企業の投資計画がもたらすであろう第豆企 業の収入額のとり得る値.方に対して,銀行ほ主観的確率./■£〔Jけを与え,銀行の 期待利潤且を計算する0./■才〔・∬〕は連続で少なくとも1垣埠微分可能であると する。また.ガくゐ乞および.ガ≧だ£においてほ./■宜〔.方〕=0となるようなあおよび だそが存在すると仮定する。つまり.方ほゑ宜以下紅なる可能性はなく,まただ£以 上になる可能性もないと銀行が評価するものとする。したがって累積密度関数
A
をダ宜〔串†仙〕ゐと定義すれば,・芳・≦れの範酢?丸か0であり,
た豆
∬≧。桁においてはダ乞〔.方〕=1となる。
ところで,第去■企業の投資計画の成果・方が約定元利合計(熟ん)以上申場合 にほ,点止豆の嘩済が行なわれ,・方く丘ふの場合紅は・方だけが返済されるものと する。そこで銀行の期待利潤ほ次の式で示される。
g豆 月名工乞
P宜=P〔凡ム〕=砧ト仙〕机†妨〔抽−〃ィ…岬……
Riム官 た豆
(1)
(1)式の右辺第1項ほ・尤が約定元利合計以上になる場合の親待返群額であり,
信用割当理論とわが国の銀行行動
−∫57−
441
第2項は方が熟んに達しない場合のそれである。(1)式ほ次のように書き替 えることができる。
RzLz
狩り.!
P〔軋〕=(忍乞−′)い†描抽一助仁拙抽
たi 烏官
.柁電工官
Fも〔.%■〕血
如=(凡一わエ£−
次に.(2)式をエ£で偏微分するこ.とに.より,任意のガ乞のもとでの最適貸付額
(銀行の期待利潤を極大化する貸付額)の条件が得られる。
∂P〔凡ム〕 乞L 〒孔(l・ユダf〔&ム〕)−′=0‥・‥
・‥・・(3)
∂ん したがって.
釣〔孔ム〕=1−
かくして次の最適貸付供給曲線(Optimalloan offeICurVe)の条件が得られ る。
ノ\
(i)エg=O
for点乞くJ(ii)0妹 fo沌=′
/\ (iii)虎電エ£≦だ宜 for−all虎名
一\ (iv)1imん=0
月宜→CO
/\/\ これより,貸付利子率の関数として最適貸付供給曲線ん=ん〔属官〕を描くことが
できる。この曲線は第2図に示すように,ある点より右下りに転ずる供給曲線(5)
である。こ.れ特借手粧課する貸付利子率が余りに高くなると,貸倒れの危険が
(5).丁為ffee、畔最終的な結果だけしか示していないが,参考までに,極大条件式(4)か ら最適貸付供給曲線を導く過程をグラフで示してみよう。貨3図①のダ豆(.足正木曲線
ほ(4)式左辺の累積簡便関数であり,⑧のg=1一孟曲線は(4)式右辺のグラフであ
る。①⑧の横座標を−・致させることによって,極大条件が達せられるから,⑨に・ほ最
/\ 通貨付額が貸付けられた場合の元利合計点慮エ£が点乞の関数として示される。かくし
−J5β−
第47巻 第4・5・6弓 第 2 図442
. さ ̄
Ⅰ,Ri
/\ て最適貸付額王官は⑧の居宅エ名曲線上の対応する点と原点とを結ぶ直線が横軸となす
/\/\
角のtangentとして示されることになり,④のLi=Li(LRi〕が得られる。
このグラフについては香川大学の大薮和雄助教授の衛教示に負うところが大きい。
ここに.深く謝意を表する。
第 3 区Ⅰ
信用割当理論とわが国の銀行行動
ーヱ59−
443
増大するから,貸付けが抑制されることを示している。
ごの最適供給曲線の性質をもう少し検討しておこう。(2)(3)式より,ゑ名く
/\ dP〔風ム〕
/\/\ =エ£(1−ダ官〔.凡ん〕)■>0が得られる。これ
/′\ 凡ん<軋の範囲紅おいて
仇私
は最適供給曲線上でほ,期待利潤は属官が増大するにつれて大となることを示
\ す。また所与の風のもとでほ,んがんより多くても少なくても期待利潤ほ減
少する。これより欝4図の点線のように等利潤曲線(iso−prOfit curve)を描く(8)
ことができる。PoくPl<P姦くP8 であり,Po=0である。
さてこ.のよう紅して得られた 需要曲線か£〔属!〕と供給曲線
/ヽ
ム〔忍£〕を用いて,信用割当ての 問題を考察しよう。銀行が欝ざ 企業に対して差別的独占者とし て行動することができ,したが っていかなる貸付利子率(利子 要素)をも課すこ.とができると すれば,その銀行に.とってほ信 用割当ては有利でほない。なぜ
第 4 図
ならば,銀行の期待利潤を極大ならしめる利子安東風*のもとでほ,超過需要 は存在しないからである。
銀行にとってノ信用割当てが有利となるのほ,ある顧客グループに対して共通 の利子率を適用しなければならない場合である。その共通利子率を銀行は自由 に.選択できるものとしよう。そうすると銀行ほ,当該グループ全体からの期待 利潤を極大ならしめるような利子要素点*を最適共通利子要素として選ぶと.と になろう。虎*ほ銀行が差別的独占として行動する場合にグル−プ内の各顧客
−エ乞(1−ダi)
(6)期待利潤関数(2)を金微分してd照血〕=0と暦くと竃 が得
皮乞(1−・j㌔)−イ
られる。これは等利潤曲線の勾配であって,最適供給曲線より上では正,下では負紅 なる(Jaffee〔6〕p′.39)。
ーヱ6クー
第47巻 第4・5・6号444
に・課するであろう最適利子温素風*のうち,最高のものと最低のも申との間に ある。グル十プ内のある顧客に.対してほ信用割当て:をすることほ有利ではない が,他の顧客に対しては信用割当てが有利となる場合がある。このことを2人 の顧客に共通利子率を適用する場合に.ついて確かめよう。
第 5 図 第1企業の需要曲線と最適供
Di,Li
給曲線との交点に対応する利子要素を瓦,第2企業のそれを岳 としよう。点1くだ2であり また 月1*く忍2*であるとしよう。屈1*
≦二月*く忍2*であるから,欝1企 業については.高く凪*≦尺* と なって,銀行は信用割当て(信 用制限)を行なわない。欝2企 業についてほ,高さ通*く点2*で
あって,虎*<応となる可能性 もある。この場合に.は信用割当 て−を行なうのが銀行にとって有利である。第5図のような場合紅ほ.,第2企業
紅対して信用割当てが行なわれることに.なろう。なお,差別的独占としての銀 行でも,共通利子率を適用する場合でも,無危険顧客(risk十fr ee CuStOmer)
紅対してほ信用割当てを行なわない。
ⅠⅠIJaffee理論の問題点
従来,信用割当て−は制度的要因とか市場の不完全性などに.よって,むしろ非 合理的なものとt/て説明されて小たが,Jaffeeは利潤極大を求める合理的な選 択の結果としての信用割当て−を示したわけで,すぐれた分析と言えよう。しか
しJaffeeの分析紅は次のような問題点のあることを指摘することができよう。
(A)銀行の行動原理として期待利潤の極大だけを考え.ている。しかし,右ゐ ような行動原理のもつ問題点は既紅St.Petersburg Paradoxで明らか紅
信用割当理論とわが国の銀行行動
445 −ヱ6J−
れている。もし期待効用極大を考えるとすれば,期待利潤Pぇのはか何らか の危険要素(例え.ば分散ないし標準偏差など)を導入する必要があるのでは なかろうか。
(B)Jaffeeの分析で,貸付けと預金との関連が鹿祝されているのほ問題であ る。銀行からの資金の借手ほ,同時に預金者である場合がはとんどである。
したがって資金源泉としての預金は貸付けから独立.のものでほなく,貸付け の仕方いかんが預金紅影響するほずである。
(C)Jaffee理論でほ最適貸付供給曲線と宗要曲線とが必ず交差するように暗 黙のうちに前提されているが,実際には交点をもつとほ限らない。企業の業 績紅対する銅行の低評価の故に・,供給曲線は非常に低い位置まで押し ̄Fげら れ,需要曲線と交わらない場合が考えられる。こ.の場合は,銀行に最大の期 待利潤をもたらす最適利子率は確定され・ず,制度的な利子率の上限などが車 実上適用されることにならざるを得ないであろう。この場合ほ勿論,信用割 当てが行なわれる。
ⅠⅤ わが国の銀行行動
それでほ.,わが国の銀行は信用割当てに・関して,いかなる行動をとっている のであろうか。この問題を考察するため紅ほ.,まず貸付資金市場がどのような 特徴をもっているかを明らかにしておかなければならない。
わが国の貸付資金市場は次のような特徴をもっていると考えられる。
1.企業の自己金融力が乏しく,貸付資金琴要が旺盛である0
2.貸付利子率は比較的低い水準に・固定されているので,信用割当て−の行な われる可能性が大きい。
3.金融の二重橋造。借手の側には大企業と中小企業という二層構造があ り,とれに対応して貸手の側に・も都市琴行を中心とする大企業向け金融機 関と地方銀行・相互銀行・信用金庫等からなる中小企業向け金融機関とが あって,日本的状況が形成されている。
4.貸付けと預金との閑適について既に述べたように・,銀行からの資金需要
一∵砧∵−
第47巻 発4・5・6弓446
者は同時に預金者として資金供給者でもある。したがって銀行が貸付けを 行なう場合,それの預金へのほね返りを当然考慮するはずである。ことに わが国のように銀行に対する評価が,そ・の預金景に.よって−左右されるよう
(7) な場合にほ,預金との関係を無視するような貸付けほ考えられない。
以上のような日本の状況をふま.え,特に預金との関係を重視する場合,貸出 実効金利に港目するのが有効と思われる。いま礫=企業への約定貸出金利を
㌢■慮,派生的預金の平均金利を㌢・d,派生的預金の歩どまり率をあ,預金支払準備
/\ 率をpとすれば,第よ■企業への貸出しに.よる実効金利㌢・£ほ
〈
7・乞…γ・d烏£ ㌢■£=二二
丁く手扇面
/\ である。貸出実効金利れを大ならしめるためにほ,グdとpを−・定とすれは,7・恵
が大であるか烏名が大であることが要求される。′・£についてほ臨時金利調整法/\ ないし全国銀行協会連合会による自主規制によって上限が設けられでおり,㌢・£
を増大するため紅ほあの増大しか方法がない。
ところで,ゑ£ほ銀行の意思に.よって決定されるものであろうか。派生的預金 の中にはいわゆる雨建預金も含まれているであろう。この部分についてはある
程度,銀行がこれを操作し得るかも知れない。しかし,それ以外の派生的預金
の部分については,預金通貨の流通過程に‥おいて自然に銀行紅滞留するもので あって−,銀行の意思によって決定されるものでほない。それほ,貸出先企業の 系列関係・業種・経営内容などに・よると共に,貸出し銀行が全国的営業基盤を 有するか否か,大企業との取引関係いかんなどに依存すると考えられる。いず
れにせよ,−貸出先企業にはそれぞれ固有の預金歩どまり率(ゑ豆)があると考え
るべきであろう。この場合の預金歩どまり率ほ,貸出しを受けた企業自体の預金として歩どまる部分のみならず,その企業から支払いを受けた企業申それを 同一戯行に預け入れる部分をも含んで考療するものとする。したがって,あは
第よ企業に・貸出しを行なった場合に.銀行が期待し得る歩どまり率であって,必
(7)こと紅昭和30年代には貸出しのための預金というよりも,預金ジュアの維持ないし 拡大のためにこそ貸出・しを行なうというような行動さえも見られた程である。(斉藤健
〔14〕38−9ぺ−ジ 。経済企画庁〔13〕38−40ぺ一汐。)
信用割当理論とわが国の銀行行動
ーヱ6β−
447
ずしも,第ま企業自体の歩どまり率を意味すろものでほない。このように考え ると,−・般に系列企業程あほ大になる傾向があろう。また,全国的営業基盤
(8)
を葡する大銀行程,ゐjの平均値が高くなる傾向があるであろう。
かくして,預金歩どまり率の高い有力企業ないし系列企業向け貸出しは,た とえ約定金利が低くても貸出実効金利ほかなり高くなり得る。したがって銀行 は主としてあの値に注目し,それが大になり得ない企業ほ貸出しの対象とは しないであろう。こ.のようにあの大きい企業に対して優先的に貸出しを行な うことは,銀行の預金量を高めると共に,貸出実効金利を高めるという二つの 効果を同時にもつこ.とになる。
ここでJaffeeのグラフを借用して,わが国銀行の行動を考えて見よ う。こ
/\/\ の場合,横軸には利子要素点=こ代え.て貸出実効金利要素屈i=1+㌢− を測るこ
ととし,機会費用要素′には1+コ−ル・レートがそ・れ紅.当るとしよう。この
/へヽ ように読み替えるとしても.Jaffeeのそれとほぼ同様の最適貸付供給曲線(エ£=
/\.(9) エ沃私〕)を得ることができるであろう。なお,貸出先企業の投資の成果に画す
る銀行の主観的評価を示す密度関数ほ,単に当該投資の成果のみならず,そ の企業の担保能力等から生ずる契約不履行の程度をも反映するものと考える。
このように.して描かれた最適供給曲線は,弱小企業の場合には需要曲線β宜=βi
/ヽ 〔私〕より下方に.位置するこ.とが多いであろう。またそのような企業は代替の資
金源を充分紅は利用し難いことから,その需要曲線ほ,利子率に対してかなり 非弾力的であると考えられる。
こ.のような場合には,供給曲線と需要曲線だけからほ銀行に・最大の期待利潤 をもたらす最適利子率ほ.確定されず,結局,各企業別に.与えられる貸出実効金
(8)貸出総額匿対する−・般法人預金の比率を々乞の平均値とみなすことができるとすれ
ば,昭和40−49年(各6月末残高)の平均値ほ都市銀行64%,地方銀行49%である。(9)他企東に移転した預金をも含めてあが推定され,これを基礎に.貸出実効金利を井 出するとすれば,実効金利の高さは必ずしも当該企業の事実上の金利負担を示すもの ではない。しかしゐ電が各企業紀聞有のもので−・定であるとすれば,約定金利の高さ が実効金利に反映される。それ故,実効金利が高くなる程,各企業の金利負担は増大 し,貸倒れの危険も増大すること紅なろう。したがって実効金利がある値より高くな れば,最適供給曲線は右下りに転ずること紅なろう。
第47巻 第4・5・6弓
−∫64− 448
雄 6 図 利によって貸出額したがって信用割当て
(信用制限)が決定されることになる
(簡6図参照)。もし実効金利が低下すれ ば,信用制限が次第に.拡大し,それがコ
−ル・レート以下にまで押し下げられる 場合は,その企業に対する貸出しほ完全 に停止され,資金ほコ−ル・ロ−ソに回 されることになろう。金融引締めで金利 が上昇する場合には,供給曲線は右下に
(10)
シフトするであろう。この場合,γ£は上 昇するがあはむしろ低下する傾向をも
Diヱi
つであろう。したがって実効金利は余り上昇せず,これがイ言用割当て(制限)
を増大せしめることになろう。
以上ほ銀行が与えられた状況のもとで,最適貸出額を決定し,それが実現す る場合の信用割当てであるが,わが国のように日本銀行の窓口指導が強力に.行
なわれる場合には,貸出額が銀行に.とっての最適額よりも更に腐少されること
\
になる。このような信用割当ては大企業に対しても適用される可能性があろ う。
Ⅴ 結 語
以上でわが国の銀行の信用割当て行動に.関する試論を終る。それはJaffee が展開したような期待利潤極大という合理的説明でほなく,制度的・慣習的に 当え.られる実効金利の天井といういわば非合理的な説明に.逆戻りしたものであ る。しかし日本の敢行行動を見る場合,むしろこの方が説得力をもつように考 えられるのである。
(10)金融引締めによって市場利子率が上昇すれば機会費用要素も高まる。これが第6図
Ⅰの位置を右にシフトさせると同時に.最適供給曲線は全面的に下方濫シフトせしめら れる。(Jaffee〔、6〕pp.50〜52参照)
信用割当理論とわが国の銀行行動
ーヱ6■5−
449
ととろで,信用割当てが現実に行なわれてし、るか否かをマクロ的に雁諾する こ/とは,かなり困難な問題であるが,最後にこの問題紅・簡単に触れておこう0 信用割当てと関連をもつと考えられる事項として,少額の貸出しと多額の貸出 しとの比,標準金利以下での貸出し割合,市トロ貸出し金利と公定歩合との差,そ の他をあげることができるょしかしここでは単純紅中小企業向け■貸出し比率に ょって,日本における信用割当ての存在を推定することにしよう。資本金5,000
第 7 図
中小企業向け貸出し比率
=」−1)
小小れ動伸・‖貸出し比率
(享)を糾棚裾引こ よって則蔓1。
Ⅰ_S中小企業向け貸出 し戦局
J一仝1葦上】iし弼高
(注2)
■l−小企業は資本金5,000 万円以下(即小兄業・
サ−ヒス※は栗本企 1,000万円以下)の企業
(個人を含も)。
(資料)
日本銀行r絶i斉統計月報j
万円以下(卸・小売業・サービス業は資本金1,000万円以下)の企業(個人を含 α)軋対する貸出しの仝貸出し(当座貸越を除く)に・対する比率を,昭和39年 より亜年に至る間で計算した結果,金融引締めが行なわれlると,中小企業向け
貸出し比率が低下し始めることが明らかとなった(第7図参照)0銀行の流動 性ポジションの高いうちほ,中小企業向け貸出しカミ比較的多いが,流動性が枯
渇し始挙ると,中小企業が先ず厳しい信用制限を受けることを物語っている0
このこ、とから日本において信用割当てが存在すると推論できるのでほなかろう
か。
第47巻 第4・5・6弓
450 ーJ66−
参 考 文 献
〔−1〕Freimer,M。&M.J.Gordon,以Why Bankers Ration Gredit, Quarterly ル卯〝αJq/■ガα偶の如c.ざ,Volh79,No小3,Aug.1965
(2.)Hodgman,D R., Credit Risk and Credit Ratibning, QuarteYl.yJournal
〃./βc〃〝♂∽よc.S,Vol.74,Noい 2,May1960
輔Credit Risk and Credit Rationing:Reply, QuaYteYlyJour−
〝αJo./月払用例椚cィS,Vol 75,No.2,May1961
パCredit Risk ar)d Credit Rationing:Reply, Quarter l.yJour−
〝αJ〃ノ■Ec卯肋融c.5,Vol..76,No.3,Aug.1962
〔 5〕Jaffee,D.M.&F..Modigliani,以A Theoryand Test of Credit Rationing,
A椚雨cα〝βcの鋸用扇c属玖山♂紺,Vo159,No..5,Dec.1969
〔 6〕Jaffee,D.M.,CYedit Rationing and the CommercialLoan MaYket,John Wiley&Sdns,1971.
〔7.〕Keynes,J.Mい,A Treatiseon Mone.y,Macmi11an,1930.鬼頭仁三郎訳『ケイ ンズ貨幣論刀同文館,1933(1953)
〔8〕Miller,M.H巾,以Further Comment,〃QuarterlyJournalofEconomicS,Vol.
76,No.3,Aug.1962.
し9〕Ryder,H.E.,Jr., CreditRiskandCreditRatidning:Comment, Quarterl.y
/〃α㌢−〝αJげβco乃0∽≠c一S,Vol.76,No.3,Aug.1962.
〔 10〕貝塚啓明「信用割り当て一について」『日本経済新聞』(やさしい経済学)1973・7 28−8.3
〔11〕且塚啓明・小野寺弘夫「信用割当について」『経済研究』Vol.25,No.1,.Tan・
1974.
〔12、1川口弘『金融論』く経済学全集17>・筑摩書房,1966・
(、13〕経済企画庁経済研究所『わが国銀行の行動分析−・一都市銀行を中心として−』く経 済企画庁経済研究所・研究レリ−ズ第13弓>・1964年2月。
〔14〕斉藤健「わが国銀行の貸出行動について一都市銀行を中心として−・」経済企画 庁経済研究所『経済分析』第12号,1963年9月。