風川学院短期大学教育実践研究紀要第10号
第3類
「国語科教育法」における取り組みと課題
三木麻子
MIKIAsako
本稿では、本学(夙川学院短期大学)児董教育学科の講義「国語科教育法」を受講する学生 の意識の変化とそれに応じて変化させた授業のあり方を報告する。そして、より実践力を求め るようになった近年の学生に対し、いかにして教育実習での学びに対応してゆける力をつけて ゆくのか、具体的には指導案を作成し、国語の授業を組み立てるために学生自身がどのような 点に留意してゆけばよいのか、という観点から行った稿者の授業とそれに対する学生の取り組 みと課題について考察する。
キ—ワ—ド:国語力、指導案、模擬授業、 能動的な授業参加(能動的学修)
1.はじめに
本学、児童教育学科では、保育士資格•幼稚園教諭 :種免許•小学校教諭二種免許の三種の資格■免許が 取得できる。学生は入学時に希望する資格-免許に応 じて授業を選択し、資格•免許取得に必要な科自を履 修してゆく。実習も同様であるが、幼稚園•小学校の 教育実習に関しては、いずれかの実習先を選択すれば よいので、就職先として希窒する校種への実晋を選択 するよう指導される。っまり、幼稚園であるのか、小 学校であるのか、その実習先によって入学当初の学生 の希望する就職先が判明することになる。
当初と述べたのは、小学校での実習を行った学生が、
保育実習を通じ、保育園への就職を望むようになる塌- 合もあるからである。
また、保育士や幼稚園教諭を目指す学生は、就職後 の必要性を鑑みて、保育士資格•幼稚園教諭二種免許 の両方を取得することを指導されるので、就職先を幼 稚園か、保育園かで迷うようになる場合もある。
その場合でも、幼児教育を中心に、先生として人と 関わる仕事に就きたいという明確な志望を持って入学 する学生は、単位の取得状況などにより希望を変更せ ざるを得ない攝合も含め、三種の資格•免許のいずれ かを生かした専門就職をする。
保育園,幼稚園のいずれにせよ、幼児教育を志す学 生が大字であるので、小学校での実習を希望する学生 の数は入学者(定員170名)の1割以下である。
しかし、意欲のある学生は幼児教育に隣接する小学 校での学ぴを理角^するために、小学校教請j免許取得に 必要な科自を履修してゆく。そして、実習先が幼稚園 であっても小学校教諭二種免許の取得は可能であるの で、三種の資格■免許を取得して卒業する学生も確実 に存在する。
また一方で、小学校教諭二種免許取得に的を絞って 勉強し、教a採用試験合格までをめざしている学生も 祖加している。
ちなみに、かって児童教育学科は、幼稚園教諭二種 免許を二年間で取得し、卒業後、一年間の専攻科(保 育専攻。2013年3月廃止)に進学して保育士資格を取 得する制度であった。コースとしては、「幼児教育コー ス」の他に、「初等教育コース」が設けられていた。「初 等教育コースJは、二年間で幼稚園教諭と小学校教諭 の二種免許の両方を取得することができるコースであ ったが、40名前後入学していた「初等教育コース」の 学生たちも、三年吕に専攻科に進学し、保育士資格を 取得した後は保育士への道を進む者が多かった。「初等 教育コース」があった時よりも、特にコース分けをし ていない現在の方が逆に、S剣に小学校教諭を希望す る学生が漸増している印象がある。
21
2013年4月専攻科がなくなり、二年間で保育士 •幼 稚囡教誦•小学校教諭の資格が取得できるようになっ た年度がスタートしたが、この年から本学は男女共学 にもなっている。そのため、2013年度は、他の職業経 験があったり、四年制大学を卒業し、中学校•高等学 校の教員免許や他の資格を持っていたりしても、小学 校での教育を志し、小学校教員免許を取得するために 入学する男女の社会人学生がでてきた最初の年でもあ った。その社会人入学生の意識の高さが他の学生によ い刺激と影饗を与えた結果、一般の学生にも小学校教 員に興味を持つものがでてきたと思われるからである。
「2. _斗教育法の選択」で、その実態を見てゆきた
2.教科教育法の選択
さて、国語科教育法が含まれる「各教科の指導法」
は、音楽科教育法、図T科教青法、体育科教育法のう ち2科目を含んだ上で、9科目のうち、いずれか6科 _が免許取得のための必修となる。つまり、国語科教 育法は、音楽,図工,体音を除いた、国語科•社会科•
算数科■理科•生活科•家庭科の6教科の教背法の中 から、3〜4科目選択される中の1科目となっている。
選択必修の科目ではあるが、小学校校教論を志す学 生は、全ての科目を選択する場合が多い。
二年間で三つの資格•免許が取得できるようになっ た2013年4月より、国語科教育法を履修した学生の数 と最後まで授業に出席し、模擬授業を経験し、レポー 卜を提出して爭位取得できた学生の数を比較してみる と、次の衷1のようになる。
(表1)年度別登録者数と畢位取得者数
年度 2013 2014 2015 2016
登録者数 32 13 31 48 単位取輔数 31 11 30 35
コース制がなくなったにもかかわらず、国語科教育 法を選択する学生数にあまり変化はない。2014年度は 減少しているが、単位を取得した学生は、毎年授業の 中心となって積極的に参加する、三っの資格まで取得 する学生がほとんどであった。そして、2015年度から は、幼児教育を志す上で追加的な学びとして小学校免 許に関わる科目を選択する学生を含んでの受講者数に 戻っている。その中でも2016年度はその数が増え、授 業の中心となる学生も增加していると思われるが、こ
れは卒業時まで結果は見えない。
一方で、本学では、幼稚園教諭免許を希望する学生 にも「国語」「算数」「生活jの3科gから1科0を選 択することを必修としている。国語に関して言えば、
一回生の前期に国語(教科)を履修した後、国語科教 育法は、後期に履修するよう配置されている。
その中で、3科Bから1教科の選択をする際、全て の教科を学ぶために必要な基礎が国語力であるという 理解が行き届いているためか、また、教科のうちで国 語は取り組みやすいと感じる学生が多いためか、国語 を受講する学生は少なくない。
しかし、逆に、選択必修科目の1つであるために、
前期に国語を履修していない学生が、国語科教育法の みを受講する場介もあり、教科の国語から国語科教育 法へとの段階を踏んだ学びが必ずしもできているわけ ではない。
そして、先述のように、教科教育法を受講する学生 の中にも、小学校での実習を行う学生とそうでない学 生が存在する。
どこで教育実習を行うかによって、授業参加への意 欲が左右されるものではないが、2016年度の場合、48 名登録した学生の中に温度差があったことは事実であ
る。入学時に資格はできるだけ取得しておいた方が就 職に有利かもしれない、という判断をして履修登録を した学生も、本来、白らが進みたい方向が見えてきて、
小学校教論免許取得を選択しないこともある。国語科 教育法で最終的にレポート提出まで終えた者は3S名に なった。
同様の現象は、教貝採用試験合椿に不安を持って、
私立園での採用が多い保育士を志していた学生が、小 学按に教育実晋に行ったことで、あえて就職には闲難 な小学校教員への道を志すこともあって、学生が志望 を自ら決定したときの力は計り知れないものがある。
このように、就職希错先も、取得する資格や免許の 希望も多様な学生たちが受講する国語科教育法をどの
ように指導すればよいだろうか 胜1>。
3.授業計画
今年度のシラバスでは、次のような授業計両を展開 しているc
1-国語科教育とは 2. 国語科教育の歴史 3. 国語の中の古典
夙川学院短期大学教育実践研究紀要第10号
教科#を使った「読む』授業 教科書を使った「ことば!の授業 国語科学習指導案の形式と書き方実例1 国語科学荷指導案の形式と書き方 実例2 教科書研究一教材を選ぼう
学習指導案を書いてみよう 学習指導案を書いてみよう 模樹受業
模擬授業 模擬授業 模擬授業の反省
言葉の遊びを授業に生かそう
これは、例えば、教科導法シリーズとして出版 されている『小学校指導法 国語』<注2>が、
I国語科教育の理論と方法
第1聿 国語科教育の意義と役割...1 第2章国語教育の目標と内容...1 第3章学習指導要領に基づいた学習指導計画 第4聿 国語教育の指導法と評価
a国語科教育の実践
第5章話すこと+間くことの指導...△ 第6章書くことの指導...A 第7車 読むこと一説明的文章の指導,,,■ 4 第8章 読むこと一文学的文章の指導* * * ■ 4 第9章読書指導
第10章 伝統的な言語■文{ヒの指導...3 第11車 国語の特質に関する指導...5 第12章 言語活動の充実を目指した実践---15
と章立てて示す国語科指導法に必要な事項を最低限取 り入れつつ(シラバスの授業冋数を右に入れた)、学生 にとって重要と思われる模擬授業までいれようとする 計画である。しかし、当然網羅できていない内容(A で示した)もある。「話すこと•聞くことの指導」「書 くことの指導」(△印)、そして、稿者がもっと充実さ せたいと考えている「読むこと」の指導は学生が模擬 授業に探り上げた具体的な教材の中で説明することと した。本来は、講義であらかじめ指導方法を示し、実 践へと段階を踏みたいところである。
ただ、受講生が30人を超えるクラスで、一度でも学 生を黑板の前に立たせようとすれば、講義部分をコン パクトにせざるを得ないし、また、模擬授業も複数名
によるグルーブ分担になる。これは、あくまで45分の 授業実践を学生に経験させるための措置である。
本学の学生は、大人の予想のっかない反応をする子 どもたちと関わる際に必要な、現場での対応力に優れ た者が多く、そうでない学生も、実技系科目を履修す る屮でその力を培ってきている。しかし、資料の周到 な読み込みなどを苦手とする学生も多く、その指導が 必要となってくる。それには、9〇分の講義に慣れた学 生に小学校の1校時の長さ(短さ)を実感させ、それ を埋めてそこにやるべき課題を配膣してゆく難しさを 体験させることが有効である。授業準備があってこそ の応用であることへの学生の気づきに繋がると思われ
るのである。
4.授業実態
ここでは、模擬授業をするために、学生が能動的に 関わらざるをえない内容にっいて述べる。理論や説明 だけでは理解が困難な学生も、実際に自分が教壇に立 っことを前提とすると真剣さが増してくるのであるが、
指導案を書いていく中で、でてきた課題の一っが学習 指導案の中の「活動計|面』である。
4-1)活動計画
学生には、ある小学校の研究授業で使われた模範的 な学習指導計晒を配付した。小学校教諭が作られた「あ りの行列」の授業案をもとに、教材を読んで、1時間 の模擬授業をなぞっていくのだが、その前提として「単 元の指導の過程」を考えることを指導する。
それは1っの教材をどういう流れで指導するか、と いう活動計画を立てることである。そして、模擬授業 をする1峙間の授業が、全体の流れの中でどのように 機能するかという视点を持っことでもあるが、数時間 をかけて1つの教材に取り組んだことのない学生にと っては全体の通しが立てにくい。
今年度、学生が使用するテキストは、光村図書の3 年生用 _ 書「国語 下 あおぞら」を指定しており、
学生は模擬授業をするための教材をここから自由に選 択した。
光村図書が出している「学預指導書jを参考にさせ た楊合でも、「ちいちゃんのかげおくり」という「読む」
教材の指導計面には、
「物語の感想を書き、交流する」(I案)
「音読劇の発表会をする」(n案)
という2つの案が示されている。そのため、学生には
4 5 6 7 8 9 1011
12 13 14 15
どちらを選べばよいのかという混乱が生じるのである。
ここでは、最終的に児童が物語内容を理解し、何かを
「感じる」ための手立てとしての「学習活動」であり、
「指導」であることの脚摔が必要となる。
しかし、この部分は、学習指導書を参考に書き写す、
という形にしかならない場合が多い。この点はいくつ かの教材や授業を経験する中で創意エ失ができるよう になると思われるので、他の学生の模擬授業を通じて 学ばせることとした。
しかし,それを巧まずして乗り越えた例がある。そ れは教材を「きせつの言葉4 冬の楽しみ」や「漢字 の意味jという「伝統的な言語文化と国語の特質に関 する事項」から教材を選択した場合である。1〜2時
間で学ぶ単元は学生にとって取り組みやすいものであ るので、今後は短い単元から段階的に「読む」「書く」
「聞く •話す」単元へと進むように、教材を分けて経 験させることが必要であるだろう。
4-2)本時の設定と展開
次に、指導計画のなかで、もう一っの大きな要点が
「本時(模擬授業を行う時問)の計画」となる。
表2は、学生がどのように「本時」を設定したかの 一覚である。
(表2)模擬授業の「本時」
単 元 数
組 単元名 日程
本 時 の 設 定
全活 動時 間
1
1 季節の言葉 11月25日 1 2
2 12月2日 1 1
2 3 漢字の意味 12月2日 1 2
4 12月9日 1 2
3
5 ちいちゃんのか げおくり
12月9日 1 12
6 12月16日 3 12
7 12月15日 3 7
4 8
すがたをかえる 大豆
12月23日 4 10
9 12月23日 3 7
10 1月13日 1 7
11 1月13日 3 7
12 1月20日 6 6
13 1月20日 1 8
5
14 三年とうげ 1月27日 1 4
15 1月27日 2 6
* r本時.|の設定とは4 -1)にあげたr活動計画jの中で、
何時間目を模擬授業とするかを決めることである。
基本的に、グループ分けも学生の意思に■(壬せ、教材 は学生たちが自曲にテキストから選ぶようにしたので、
4—1)で述べた翻-の他iこ「物語」「説明文」『昔話」
などの教材が選ばれた。
また1組は1人から3人の学生で構成されるが、1
人グループは1組だけで、あとは参加をやめた学生も いる中で随時グループを編成し直して2人で担当した
組が多かった。
ここで間題になるのが、本時の設定である。教材全 体を指導する活動計画の中で、何時問の授業を模擬 授業の時問に充てるか、という選択で、導人の時間で ある1時問目を選んだ組が多かった。導入の時間で、
著者にっいて関連作品を示す、全体を読んで、初発の 感想を問う、新出漢字を学習する、という比較的授業
しやすいところを選んだ感がある。
「すがたをかえる大豆」で各組が設定した「本時」
は(表2)の単元4、8-13組を見ると分かるように、
4時間0、3時間目、1時閒0、6時間目と見かけ上 は異なっているが、後述するように実際の模擬授業で は、拡大した写真•図版を用い(インターネットから 採取したため、手書きを用いた組以外は、複数の組が 同じ写真を使用している)、すがたをかえた大豆の加工 品を示してその多彩さを知らせてゆくという展開を見 せた。
1時閒gに写真•図版を見せて内容に入っていくの は。予想される展開であるので、次に、一■例として、
単元4「すがたをかえる大豆」の8組と12組の指導案 を掲げてみよう。
(8組)
「活動計画」の記述(抜粋) 2次4〜5時の学習活動
•①〜②段落を読み、大豆が色々な食品に姿を変えて いることが多いので、気づかれないことを読みとる。
•普段の盘事では、どんな食材が多く使われているか 調べる。
指導上の留意点
-食生活に興味が持てるようにする
「本時の展開」の記述(抜粋) 4時の学習活動
•食べ物クイズを通して、身近な食材に興味を持つ。
夙川学院短期大学教育実践砑究紀要第10号
4時の学習への支援と指導上の留意点
•クイズを通して、食に興味をもてるようにし、どう いった加工の仕方で、みんなが知っている姿に変わ っているかを、わかりやすく簡潔に説明する。
沖略)
•大豆を持参し、生徒に見せ、触らせたりし、関心を もたせるようにする。
(12 組)
「活動計画」の記述(抜粋) 2次6時の学習活動
-⑦〜⑧段落を読み大豆がいろいろな食べ方をされる 理由を読みとる。
「本時の展開」の記述(抜粋) 6時の学習jS動
•前時までの学習をふりかえる。
6時の学習への支援と指導.hの留意点
•これまで学習したことを想起させる。
•大豆の食べ方のくふうで、最初は大豆をそのままい ったり、にたりしているが、徐々に粉にするなど、
工程が複雑で峙問もかかるよラになっていることに 着目させる。
☆①〜⑦段落の内容を覚えているか
•⑧段落を読み、大豆はなぜ、多くの食べ方が工夫さ れてきたのか理解させる。
4組は①〜②段落、12組は①〜⑦、⑧段落を极おう とし、明らかに一方は内容の導入、もう 方は振り返 りを意図してるのに、理解を深めようとする工夫が、
同じような写真や現物の提示になってしまっているの である。
ただ、12組の展開は、写真,図版を並べるだけに終 わらず、大豆加工品の写真を並べ替えて、加工「工程 が複雑で時間もかかるようになっていること」まで気 づ力世る工夫があったので、優れた模擬授業になって いた。
さて、同じ教材を選んだ組のなかで、本時の設定が
■■定の時間や展開方法に集中することへの対応策とし ては、稿者が教材を決めて、学習に必要な数時間数を 学生の各組に割り振ってゆく方法がある。1時問klと 中間の時間、まとめの時問のどこを担当するかで授業 の難易度に差が出るが、全体の流れはクラスに示すこ
とができる。
ただ、この方法を指定した場合、模擬授業以前に担
当者全員が展開をしっかり把樨して、各組の展開内容 (やるべき範囲)を厳密に守る必要がある。これは初 めての模擬授業に取り組む学生たちには難度が高いだ ろう。
ちなみに(注1)であげた山本康治氏の報告では、
教材「ごんぎつね」を決めて、教員が「指導計画」や
「指導過程」のモデルを提示された後で、学生に『場 面」を選ばせて「学習指導案Jを審かせていられる。
S分の模擬授業に対する措導案であるので、学生には 取り組みやすい方法であろう。
本授業では、基本的に教材選定に際し、各組の自由 な選択を尊重している。それは、教材選択の過程で、
教科書の中のさまざまな教材を吟味し、どれが模擬授 業教材として適切かを考えさせるためであり、教材選 択には、その狙いは生かされていると思われる。
そして、その上で、文章全体の構成や段落内容を押 さえる国語の授業としての「要」となる時問に取り組 んで欲しいとの稿者の思いもあるのだが、自由選択に した楊合、「本時」の決定において、導入の時問を選ぶ 組が多かったことは、結果的には学生には易きに流れ たことになる。しかし、一方で本能的に「授業のしや すい筒所」、「教員の自由な創意工夫が生かせるところ」
を選択しているところは、本学の学生の特性を発揮し ているといえるだろう。
さて、全体の流れを掴み、その上で「本時」の杲た す役割を把握するためには、対応策が優れているが、
その難度のために失敗する可肖團生を考えると、学生に とってどちらが有効であるかは、判断がつきにくいと ころである。今後は、稿者の講義のなかで、読み解く (兒童に読み解力せる)おもしろさを伝えてゆく工夫 をする必要があると感じている、
5.優れた取り組みと改善点
ここでは、学生の模擬授業のなかの創意と改善点に ついて報吿する。
本授業では、学生の作成した指導案をその他の学生 たちに配付し、そこに、よかったところ、改善点、感 想の三項自を書き込んで、まとめて担当者に渡すよう
にしている。毎冋S他の担当者を批評する観点からみ ることで、担当しない時間も、自らの授業への反省と 今後の授業への気づきを促すようにしたかったためで ある。
全員の模擬授業終了後、その批評を読んで、反省点
を生かした「本時の授業」の訂正案とその説明、「4奠擬
授業を経験した感想」をレポートとして提出させた。
また、各自がもらった全員の意見•感想を書いた書き 込み指導案も提出させて、学生一人一人の毎時の気づ きも成績評価の材料とした。
同時に、稿者も学生と同じように批評を書き込んだ 指導案を担当者に渡すようにしている。模擬授業終了 後、学生金体にとって有益であると判断した改善点の 指摘は、学生全体の前で行っている。しかし、担当者 の改良すべき点を細部にわたりあげっらう形になるこ
とは、稿者にとっても避けたいところであるので、指 導案への書き込み指導が有効であった。
その感想のなかでも多くの学生が支持したものを屮 心にあげてゆきたい。
5-1)創意点
<児童に自ら考える意欲を引き出す工夫>
① クイズ形式を取る。
•「すがたをかえる大豆]を极う中で、大豆加工品を一 覧した後、その加工法を考えさせるクイズ
-大豆加工品の鋤を持参してみせるクイズ
*接続の言葉を考えさせるクイズ
‘「三年とうげ」に出てくる植物の名前から写真を当て させ、さらに、その花言葉を問うクイズ
など、いろいろなアイディアが登場した。児童役の 学生も本気になって考えることができた
② 給食献立表を用意して、大豆加工品を探す。
-児童に身近なところにある糸&食から考えて行く工夫 献立表はインターネットで探してきた
③ 季語を紹介した後に、グループで徘句を作らせる。
④ 自作の言葉遊びの詩を用意する。
-自分のアイディアで言葉遊びの詩を作って披露した ので、児童役の学生も同じような詩を作るという活 動を促していた
<児童に積極的に参加させる工夫>
① 澳字を空に一緒に書いてゆく。
② 本読みの順を分かりやすく 指示する。
•句点読みをさせると、自由に着席している模擬授業 の児童(学生)は自分の順番が分かりにくい点を克 服している
<導入の工夫>
①「ちいちやんのかげおくり」がS頭の作品であるの
で、教科書の扉の詩から読んでいった。
‘「扉、目次をみて下巻の国語の学習を見通すJという 指導書に従い、指導の系統に配慮できていた
② 作者についての情報や著作物を紹介する。
•まどみちお氏の有名な詩を紹介して、親近感を持た せた
-「ちいちゃんのかげおくり」の{乍者、あまんきみこ氏 の«話作品を、絵本を持参して紹介し評価された
•「三年とうげ」の作者、李錦玉(リクムオギ)氏が 大阪生まれであることを伝え、親近感を持たせる渤 果があったのだが、説明がそれだけであったのが惜
しまれた
③ 国語に対する垣分の思いを述べる。
•教師役の学生が自ら考えていることは児童役の学生 の興味を引く。これは実際の児童に対しても同じこ
とで先生が自らを開いて見せることは重要である
<準備の周到さ>
①囡版■表を用意する。
•新出漢字を大きく張り出す
•板書をあらかじめ模憑氏に書いて用意する -大きなサイズでカラー写真を用意する
•物語に出てくる花の絵を用意して、物語の描く風景 の美しさを理解させる
•教科書の挿絵を大きくコビーした紙を貼り、物語の 展開が馬板1面で見えるようにする
■ワークシートを作る(閣1.)一児童一人ひとりに配 付できるよう作成した
(図1)「漢字の意味jを学ぶためIこ作成したワークシート
<その他>
①教師が音読してみせる。
•この方法を取ったのは1組だけであったが、初回授 業で、段落を区切り、教師役の学生が大きな声でゆ っくりと読んでいくことは物語の内容を伝えるの
U
A
E
夙川学院短期大学教育実践研究紀要第10号
に有効であった
②声の大きさに気を配る。
-はっきりとわかりやすく話したり、ゆっくり話した り、声が後ろまで届いているかを確認しつつ授業を する余裕があった
改善点にっいても、学生の記入からあげてゆく。創 意点と同様に周到に用意したにも関わらず、それがう まく行かなかった例もある。
5-2)改善点
•板書の字が小さい
•板書のバランスが悪い(右に詰まり、左が空く) -板害が見える立ち位置がわからず、奔いた部分をか
くしてしまっていた
•声が小さい
• 2〜3人の組で教師役の分担の片よりや連携の悪さ (一人だけが多く負担している組も見受けられた)
•準備した図版や文字の見えにくさ
-誤った冋答への指導の方法...*1
■事前に調べたことが消化できていないので、メモば かりに気を取られた
•小学生では習わない読みなどを書いてしまった
•自分たちが分からないことは飛ばしていった -児童全員に目が配れず、授業に参加できていない児
蜜(学生)がいた
•板書の漢字の書き順を間違った
-指導.案に書いた内容の通りにできていなかった
•指導案の内容で行ったが、時間が半分で終わってし まった
などがあげられている。
このうち、*1「誤った回答への指導の方法Jにつ
いては、児竜の答え、発表をすべて板書していく例が あった。児童役の学生の誤りを正すことに非常に気を 使っているのは現代の若者気Kであるのか、教師役の 学生が予想しなかった回答に対処しきれていないのか、
気になったところである。
また、逆にクイズ形式で行った問題の解答が2通り
あることが授業中にわかった例もある。この時の担当 者は社会経験が豊富な学生であったため、両方の解答 が成立することを落ち着いて説明できていた。事前準 備の際に気づくべきことではあったが、それを乗り越 える力は現場対応力でもある。
教師役の学生自身の国語力を高めて欲しいと思う改 善点は、漢宇そのものや、書き順の正確さにもあった。
また、経験不足からくる課題としては、新出漢字の 学習の際に、常用漠'ギ表外音訓まで示してしまったこ とがある。各学年に配当される澳字と読みには、段階 的な配盧があることに気づいていないためである。教 科書の後ろにあげられる「これまでに習った漢字」「こ の本で習う漢字」を示してこれに配慮するよう指導し たが、「小学校学習指導要領 第1皋 総則」に「学校
の教育活動を進めるに当たっては"++"児童の発達の段 階を考慮して、児童の言語活動を充実するJとあるこ
との意味を深く捉えなければいけないだろう。各学年 における吕標を押さえ、「系統指導」の考え方にまで繫 げてゆきたい独3>。
また、「ちいちゃんのかげおくり」は戦争を扱った作 品であるが、学生自身が深い知識を持たず.、「怖い」「ち いちやんがかわいそう」という程度の意識で授業に臨 んでいた,作品の社会的背景や、作者の創作意図まで 考えて読みを深める習慣を持ってほしいと思う。
全体において模擬授業では、児童役が学生であるた め、それまでに「晋っていないこと」に対する配慮が 欠けてしまう。児童役が常識の範囲で答えてしまうこ とも多々あり、小学校での榄擬授業では成立しない授 業ができてしまうのである。今後の講義ではもっと認 識を強めておきたい。
学生の評個'は、「声の大きさ」「先生らしさ」「明るさ」
「親しみやすさ」などについて触れ、「(ちょっと難し いけれど頑張ろうなどの)ポジティブな発言がよいJ
というような印象批評が多かった。しかし、模擬授業 を終えた学生は、着目点が_の丁寧さにまで多岐に わたり、自身の反省から、よいところを学ぼうとする 意欲が兄えたのが幸いである。
5-3)課題の克服
この改善点にあげられた多くのポイントは、一度は 人の前に立って実際の授業を行ってみないとわからな いことではある。つまり、失敗をしたことが大きな収 穫になるといえるだろう。その意味で、そのK省を記 すレポートを課題としたが、本当はもう一度模擬授業
をすることが大切であったと思われる。そこで、1回 0の反省をどれだけ克服し、他の学生の見習うべき点 を取り込めるかを試すことができるだろう。限られた 時間ではなかなか困難なことではあるが、教えるべき 内容を深く知るという意味で、国語(科!^)の講義か
らもっと有機的に国語科教育法へと連携できるように、 _語の講義内容を改善し、国語科教育法へと繋げてゆ きたい。
6.おわりに
先に、本学の学生が現場対応力に優れた点があるこ とを述べたが、それは、本来考える力を基にして発揮 される。主体的に考えることを身につける方法として 近年いわれているのが、能動的学修である。
大学の授業に対して出された、2012年8月の中央教 育審議会答申の「学生が主体的に問題を発見し解を見 いだしていく能動的学修(アクティブ•ラーニング) への転換が必要である」という観点から、今、求めら れている小学校におけるrアクティブ.ラーニング」
姓4 >は「ある事柄に対する知識の伝達だけに偏らず、
学ぶことと社会のつながりをより意識した教育を行 い」、(子供たちがそうした教育のプロセスを通じて)
「自ら課題を発見し、その解決に向けて主体的•協同 的に探求」するための学習と捉えられている。
青山兩糸2氏は「アクティブ*ラーニングを生かした 国語の授業づくり」<注5>の屮で、「<アクティブ>と は表面的な活動ではなく、内的な活動、言い換えると
「額に汗するJのではなく M苗に汗をかく」ことなの である。自指すは、個に教科の本質に即した力や、思 考力、認識力(汎用的な力)を身につけさせることで ある」と述べられる。こういった指導を受けてこなか った学生たちが、自ら課題を発見し、解決策を見出せ るようになるにはどうすればよいのか。「アクティブ。
ラーニング」という言葉だけにとらわれずに、自ら脳 に汗をかいて、現場で話し合いにきちんと介入する「指 導力」を身につけるために、「考える力」を深める方法 をさらに考えてゆきたい。それは学生たちが、教員と なった時に、次の世代の子どもたちに求めるものにな るはずであるからである。
読みの系統指導で読む力を育てる』(東洋館出版 社■ 2016年2月初版)
4. 「初等中等教育における教育課程の基準等の在り 方について(諮問)」(2014年11月)
5. 『「資質•能力」を育成する国語科授業モデル』
(学事出版,2017年1月)
ピアスーパーバイザーからのコメント 本論文は、木学における「国語科教育法」の授業の 取り組みと課題についてのものである。論文中には、
国語の模擬授業を行う学生の優れた取り組みが創意点 として紹介されている。本学学生の模擬授業をI夫し て実践している姿が伝わる。
一方、改善点についての記述もある。これらの改善点 を、クリアしていくための「国語科教育法1の授業内 容はどのようなものかについて、さらなる分析をして いくことで、学生自身が、国語の授業をよりよく展開 できることにつながっていくと思う。
(担浩:林幹士)
<注>
1. この課題に関しては、本学同様、幼稚園免許と保 育士資格取得を主な目標とする学生が殆どであ る短期大学で「国語科教育法」を担当される山本 康治氏の実践報告の先例がある。「小学校教員養 成課程『国語科教育法』実践報告」(『東海大学短 期大学部(静岡)児童教育学科研究資料集』13 • 2005 年)
2. 植松雅美編著-玉J!i大学出版部(2011年2月初版、
20M年1月初版第3刷)
3. 筑波大学附属小学技国語教育研究部編『筑波発