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横 山 佳 充

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(1)

マクロ計量モデルによる経済環境・政策 変化が各経済主体分配へ与える影響分析

横 山 佳 充

は じ め に

大型計量モデルによる経済分析は経済学の理論的側面を重視し,科学的方法 に立脚したものとして用いられ多くのモデルが作成されたが,最近においては 時系列的側面の重視,計量モデルの予想力の低下, ミクロ的な理論的欠如,ひ いてはモデルの開発と維持にかかる資源や労力の大きさなどにより,計量モデ ル体系に基づいたモデル分析は従来ほど盛んではなくなってきており,時系列 的な統計的側面を重視したモデル分析が経済理論を重視したモデルに対しその 比重を増加させている。とはいえ,経済構造を理論的な側面から記述し,その 変動を分析する意味ではマクロ計量モデルは経済分析を行う上で重要なー側面 を担っていると考えられる。そうした意味で経済を一定の論理に基づいて影響 等の分析を行うことは過去の研究の蓄積の上にたって理論的な考察を可能とす

ることであり,無視することはできないと考えられる。

そうした意味も含めて乗数効果の時系列推移を追ってみると,乗数効果の推 移は年とともに低下する傾向があると報じられており,公共政策等の支出拡大 による経済効果も疑問視されるにいたっている。このことは財政的な側面にか かわらず,金融面に関しても現在の日銀のゼロ金利政策による景気への波及効 果についても従来ほど金融政策が機能していないのではないかという印象を拭 い去れない。また,こうした政策の変化は国民生活に影響を与えることは自明 であるが,政策の実施によって各種経済主体に対し利益をもたらすばかりでは なく,場合によっては不利益をもたらすことも容易に想像できる。従来の研究

(2)

‑102‑ 香川大学経済論叢 222  においては政策の変化が生産や物価等に関しての変化を示すことはあっても,

各経済主体における所得分配の変化に関する考察はあまり行われてこなかっ た 。 本 稿 に お い て は こ う し た 傾 向 を 踏 ま え , 日 本 経 済 全 体 の モ デ ル を 作 成

1 9 9 0

年代における従来の乗数効果等を再検証するとともに,経済環境の 変化や政策の実施によって生じた変化が,経済主体へ与えるマクロ的な影響に 関して考察を行っている。

本稿においては 2節において全体のモデルの構成について示した上で, 3 においてはモデル全体のシミュレーション結果および基準解のパフォーマンス について結果を表す。

4

節は基準解を基にして各種のシナリオを想定したシナ リオ解との乖離を導出することで,経済波及効果などの影響について考察す る。最後に 5節においてまとめとして結果および展望を示す。なお,変数表や 本文中に挿入すると煩雑になると考えられる図表に関しては付録として本文末

に与えている。

モデルの構成

2 .   1 

モデルおよびデータの構成

データは

1 9 7 5

年から

1 9 9 8

年までの年次データであり,モデルは以下の部分 にて構成されている。実質経済部門,名目経済部門,価格・ デフレータ一部門,

労働・金融部門そして経済主体の所得部門に分かれている。この各経済主体の 所得部門は民間非営利団体,金融,非金融民間,一般政府,家計について詳細 にモデルを構成している。分析の対象は各経済主体の所得分配面に関してであ り,各経済主体の支払および受取の変化を詳しく検討するために年次データを 用いている。なお名目経済部門の構成について一部マクロ的な所得分配を定義 しているが,各詳細な分配項目については各経済主体における部分で定義を 行っている。推計にあたっては内生変数の数が

1 6 4

個,外生変数の数が

4 2

であり,中規模のモデルに相当する。変数については表5および表6に示して いる。

モデル全体の構成にあたっては財市場における需要面によって支出等が決定

(3)

される。その際供給面に関しては

GNP

の潜在成長率を計算する手法もあるが ここでは採用していない。供給面に関する制約は賃金と労働生産性との比を用 い,卸売物価などの変動を通して影響を与えるように構成されている。労働面 においてはこうした需給の相違が賃金と生産性のギャップを形成することで有 効求人倍率に反映し,最終的に失業率に影響を与えると想定している。金融市 場においては基本的に利子率が経済水準と公定歩合によって決定されるとして いる。

2 . 2  

モデルの推定方法

モデルの推定にあたっては操作変数法を用いている。本稿においては外生変 数の個数が推定期間のデータ数を上回り,直接二段階最小自乗法が適用できな い。そこで外生変数の中から操作変数を選択し推定を行った。推定にあたって,

ダービン・ワトソン比が小さく誤差項に系列相関があると想定されるものにつ いてはコクラン・オーカット法を用いて修正を行っている。推定結果は「付録:

モデル」において示している。推定結果が示すところでは,ほとんどの内生変 数 の 推 定 に お い て 決 定 係 数 が

0 . 9

を 超 え て お り , 個 々 の モ デ ル の 中 で 最 も

フィットが悪いものは

JP

であり,その決定係数は

0 . 7

程度である。なお本稿 において示してはいないが,

OLSを用いても推定を行った。その結果は各係

数に関して若干異なるが,ここでは示さない。

2 .   3 

主要な構造方程式の構成および推定結果

2 .  3 .   1 

実質経済部門

実質経済部門は

GNE(GNP)

を支出面において各支出項目について展開し,

各々について構造方程式を求めている。

GNP

定義式は

GNP  =  CP  +  CG IH IP JG JP JG EX  ‑M 

で表される。

(4)

‑104‑ 香川大学経済論叢

2 2 4  

民間最終消費支出

CP =  f 

(

, l CP  (‑1),  p

PI)

+  +  + 

で推定した結果を用いた。推定過程においては家計の金融資産を説明変数に挿 入し,金融資産の影響を考慮する試みを行った。金融資産自体が可処分所得と の相関が大きいため,説明変数として金融資産と他の項を同時に推定すると,

結果は有意とならなかったので推定式からは削除した。以下において,金融資 産も考慮した推定結果を示す。

CP= ‑1410.6716  +54.6943 YDH/PC +0.3181 CP(‑1)  +28313.8226 PLAND/PC ‑1430.7862 INTB  (‑0.1061)  **(2.9771)  (1.9558)  *(2.1716)  (‑2.0574) 

R2:  0.9990 AdjR2:  0.9988 S.E.  :  1672.9369 DW:  2.3291 RHO:  0.6547 

民間企業設備投資 民間企業設備投資については

IP=  f  (IP  (‑1)  GNP (‑1) 

'KPST (‑1)' 

INTB (‑1)) 

+ +  

によって推定を行った。直接的には

INTB

の当期における利子率の影響が投資 に影響を与えることが期待されるが,最終的な推定式においては当期の利子率 は直接含まれず,一期遅れの利子が影響を受けるとしている。理由としては基 本的に投資の決定にあたってはその計画立案から実行にいたるまでおおよそー 期程度のラグが存在するとして差し支えない。さらに,近年の低金利の影響に より投資自体が利子率に敏感に影響を及ぽさないようになったことがあげられ る。もちろん急激な公定歩合等の変化は銀行約定金利等の変化を引き起こし,

特に民間設備投資に大きく影響を与えると考察されるが,現時点でこうした公 定歩合等の上昇を含む変化は,高度成長期のように金利の変化等が単に国内の 投資増加を引き起こすのではなく,海外の投資機会の増加等より金利の変化の みで国内の民間設備投資が反応を示さなくなってきている可能性も考えられ る。当期の利子率のみを説明変数に用いた推定結果を示すと,

(5)

IP= 471715.3914  +2655.8698 INTB  (0.1890)•(2.1380)

R2:  0.9576 AdjR2:  0.9536 S.E.  : 4618.1086 DW:  1.1364 RHO:  0.9933 

であり,

INTB自体は有意を示すが,符号条件を満たしていない。

民間住宅投資 最終的な推定式は

IH=  f 

(雰吟竺

KHST, I

+ +  

で,計算した。民間住宅投資に関しては民間設備投資と比べてフローである可 処分所得ばかりでなく,家計の金融資産が有意を示した。また既存の住宅ストッ

クに関しても同様に有意となった。ただし,銀行約定金利は符号条件は満たす ものの,有意な結果を示さなかった。これに関しては民間設備投資と同様金利 が従来ほど影響をあたえなくなってきたとともに,住宅購入等に強い結びつき があると考えられる長期金利ではなく銀行約定金利自体の金利が用いられてい ることにも原因があると考えられる。これは民間住宅投資がそうした短期的な 利子率に左右されるのではなく,期待形成をも含めたより長期的な視点によっ

て説明されることが示唆される。

民間在庫投資

JP=  I  ( f f   KIPS:(

1 ) ,

民間在庫投資に関しては現在までの在庫ストックおよび,総需要に占める消 費の割合によって決定されるとして推定を行っている。また一部調整項も含ん でいる。在庫投資の決定係数は

0 . 6 9

と本論における推定式の決定係数の中で もっとも小さな値を示す。このことは年次の在庫に関するデータが年間におい て集計されたもので,一年という長いスパンの中で在庫のデータは細かな変動

(6)

‑106‑ 香川大学経済論叢

2 2 6  

を描写しきれていないことが考えられる。ただし在庫調整部分は四半期のモデ ルと異なり,年次のモデルについてはその変動が大きく他に影響を及ぽさない こと,またその

GNP

等 に 占 め る 割 合 も 年 度 に よ っ て 変 動 す る が , お お よ そ

0.5%

を占めるのにすぎないので,在庫投資の変化は全体に影響は与えない。

財貨・サービスの輸出

EX=  f  (EX (̲  l )   PEX X EXR 

'PEX  (‑1)  X EXR  (‑1)) 

 

国内の輸出競争力および外国為替相場の変動を用いて定式化を行っている。

その他の説明変数としては輸出の継続性を勘案する意味で

1

期前のラグを用い ている。この部分に関しては国外経済,特にアメリカ合衆国への依存度が高いの でそれらの変数を導入することが考えられるが,本稿においては行っていない。

財貨・サービスの輸入

M =  f  (GNP, PM, M  (‑1),  EXR

OIL)

+ — +

国内の生産,輸入価格および原油価格などが影響を与える形になっている。

原油価格の変動による輸入額への影響は石油輸入の価格弾力性がいかに作用す るかによって変化しうるので事前には不明である。結果的にこの項の係数は正 に作用し,石油は必需品として価格の上昇にも拘らず,輸入価格の増大に作用 する。

各種ストック 設備投資および住宅資本のストック定義式は

KPST = KPST(‑1) +IP‑DP 

KHST= KHST(‑1) + IH‑DH 

(7)

マクロ計量モデルによる経済環境・

2 2 7  

政策変化が各経済主体分配へ与える影響分析

で表され,民間と公的な在庫ストックはそれぞれ

KJPST  =  KJPST  (‑1) +JP+  AP  /PJP  *  1 0 0   KJGST  =  KJGST (‑1) +JG+  AG/PJG  *  1 0 0  

で表される。

2 .  3 .  2 

名目経済部門

‑/07‑

名目経済部門はデフレータを用い,実質経済部門と連結を図る部門である。

また各経済主体の支出項目を連結し,経済全体の財産所得,租税合計額,国民 所得,在庫品評価調整額によって構成されている。本来は定義式である式も統 計上不突合が存在することより,一部は推定式の形で処理している。以下構造 方程式として推定した家計金融資産のみ取り上げる。

家計金融資産

FAH  =  f  (FAH (‑1),  TOPIX) 

+ +  

金融資産の形成は当初上記のように定式化した。説明変数は過去の金融資産 と経済状況である。家計の収入,銀行約定利子率および土地の地価も推定の過 程においては導入したが,有意な結果は示さなかった。金融資産は

1 9 7 5

年よ

り次第に増加し蓄積されているが,その増加の程度が

1 9 9 0

年を境に減少して いる。単純に推定を行った結果をみると,

1 9 9 0

年 を 境 に 残 差 が 大 き く な っ て いることが観察され,かつ実績値に関しても,増加傾向が変化している可能性 がある。そこでこれを勘案し最終的に推定結果は

FAH/SEFAH= 1.7958  +0.9869 FAH(‑1)/SEFAH +47.0313 TOPIX/SEFAH ‑56.6350 D9000•TOPIX/SEFAH

•(2.3245) **(30.8905)  **(5.4205)  **(‑6.8842) 

R2:  0.9985 AdjR2:  0.9983 S.E.  : 0.9543 DW:  2.5779 

を採用している。詳細は付録参照。

(8)

‑108‑ 香川大学経済論叢 228 

2 .  3 .  3 

価格・デフレータ部門

価格・デフレータ部門は実質および名目を結びつけるためのデフレータの導 出や物価を構成しており,賃金等についてもここで考察している。

GNP

デフレー タと資本減耗引当デフレータは次のようにインプリシットに定義されている。

PGNP = GNPN  /  GNP X 1 0 0   PD=  DN/DALL  X  1 0 0  

卸売物価指数

WP!=  f  (PM, 

TIND  (‑1)  GNP/L'GNPN(‑1)) 

+  +  + 

輸入価格,賃金と労働生産性の関係および間接税が影響を与えると仮定して 推定を行っている。以下に推定結果を示すが,推定自体はフィットもよく決定 係数も

1

に極めて近くなっており,いずれの係数も符号条件を満たしている。

この変数は他の物価およびデフレータの決定に中心的な影響を与える。

一人あたり雇用者賃金

W =   /(PC(‑1),  W(‑1), GNP/L) 

+  +  + 

一人あたり雇用者賃金は物価(ここでは民間最終消費のデフレータ),過去 の賃金,労働生産性を用いている。雇用者賃金は基本的に増加傾向にあるもの

1 9 9 0

1 9 9 1

年において賃金の増加率は減少している。

各種デフレータ 各デフレータは基本的に卸売物価を説明変数にし,各デフレ ータの特徴によりその他の説明変数を選択している。

(9)

2 .  3 .  4 

労働金融部門

労 働 金 融 部 門 に お い て は 労 働 市 場 の 動 向 を 人 数 を 用 い て 表 現 し て い る 。 ま た,代表的な利子率は銀行貸出約定金利を用い,基本的に公定歩合によって決 定されるとしている。

失業者数

u =   f  (u(‑1), ER,  GNP  IP)  GNP(‑1)'GJiP 

+ 

失業者数は有効求人倍率,

GNP

お よ び 過 去 の ラ グ か ら 計 算 さ れ る も の と し ている。失業者数は

1 9 9 1

年以降大幅に拡大している。

有 効 求 人 倍 率

ER=  f  (NL,  G

IL' I I P )  

+  +  + 

有効求人倍率は市場における労働力人口,賃金と生産性の関係,生産水準等 で決定されるとしている。推定結果は符号条件を満たしている。

銀 行 貸 出 約 定 金 利

INTB =  f  (INTOR,  INTB (‑1 ) ,   GNP) 

+  + 

+ 

銀行貸出約定金利はすでに述べたとおり,金利が基本的に公定歩合により影 響を受ける形になっている。金利に関しては短期,長期のものを含めて整合的 にモデルを組み立てる必要があるが,本論においては市場において決定される 金利をこれのみとしている。基本的に銀行約定金利は公定歩合の変動と連動す るが,銀行の不良債権の処理のために政策的に利鞘を確保することなどを配慮 すると,必ずしも市場においてのみで約定金利が決定するわけではない可能性

(10)

‑110‑ 香川大学経済論叢 230  があるので,今後モデルの作成にはこうした考察を検討する必要がある。ただ

し,ここでは利鞘が第

2

次石油危機およびバブル経済期などに縮小したことを 指摘し,有意にならないが生産面からの影響を考慮し

GNP

を説明変数として 挿入している。また実際の推定にあたっては

1 9 7 9

年についてダミー変数を導 入している。

マネーサプライ マネーサプライに関してはこの式において金融市場の貨幣の 需要と供給の均衡が表されているとして表現している。生産の拡大に応じて貨 幣需要が増加し,結果的にマネーサプライを増大させると考えられる。一方,

利子率の低下によっても貨幣需要が増大し結果的にマネーサプライが増大す る。したがって,関数の関係は

M  2  CD=  f  (GNP,  INTB (‑1)) 

+ 

となり,推定結果は符号条件を支持する。

2 .  3 .  5 

非金融民間所得部門

本稿において詳細にモデル化を行った各経済主体の所得における変数の関係 は表

7

に示している。以下,各経済主体内のモデルについて解説する。

非金融法人(支払)財産所得•利子 利子の支払に関しては基本的に利子,所 得の規模に依存するとし,以下のように想定している。

YREIP =  f  (/NTB ,  PC,  YPNB) 

+  +  + 

推定結果は符号条件を満たしている。

非金融法人(支払)財産所得・配当 配当は営業余剰に依存するとしている。

(11)

YREDP  =  f  (YRUP,  YREDP (‑1)) 

+ +  

非金融法人(支払)財産所得・賃貸料 賃貸料は地価に依存すると考えられる。

YRERP  =  f  (PLAND,  YRERP (‑1)) 

+ +  

非金融法人(支払)財産所得・直接税・所得税 所得税に関しては営業余剰等 に依存すると考えられるが,経済状況等も考慮に入れたため東証株価指数を挿 入している。

TOYP  =  f  (YRUP,  YRRP,  TOPJX) 

+  +  + 

非金融法人(支払)財産所得・直接税• その他 所得税以外の直接税に関して は,企業の所得を経済規模の程度を示す代理変数として使用している。

YRERP  =  f  (YPNB,  TDOP (‑1)) 

+ +  

非金融法人(受取)財産所得・配当 配当の受取は経済状況を示す東証株価指 数を用いた。営業所得に関しては有意な結果を示さなかった。

YRRDP  =  f  (TOPIX,  YRRDP (‑1)) 

+ +  

実際には

1 9 8 8

年を境に受取額に変化がみられ,ダミー変数を用いて定数項 変化が起こったとして推定を行っている。

非金融法人(受取)財産所得•利子 財産所得の利子の受取は基本的に利子率 が影響を与え,推定結果でも有意を示した。

(12)

‑112‑

香川大学経済論叢

2 3 2  

YRRIP  =  f  (INTB,  YRUP,  YREIP) 

+  +  + 

非金融法人(受取)財産所得・賃貸料 賃貸料の受取も支払と同様地価の価格 が有意を示す。

YRRRP  =  f  (PLAND,  YRRRP (‑1)) 

非金融法人(支払)財産所得 定 義 式 財 産 所 得 の 支 払 は 利 子 , 配 当 お よ び 賃 貸料から構成されている。

YREP  =  YREIP  +  YREDP  +  YRERP 

非 金 融 法 人 ( 支 払 ) 直 接 税 定 義 式 直接税は所得税およびその他から構成さ れている。

TDP  =  TDYP  +  TDOP 

非 金 融 法 人 ( 支 払 ) 貯 蓄 定 義 式 貯 蓄 は 受 取 所 得 の 合 計 か ら 支 払 を 除 い た も ので構成されている。

SA  VP  =  YPNB ‑ YREP ‑ /SEP ‑ TDP ‑ YPP ‑ SSSUEP ‑ TREP 

家計(受取)財産所得 定義式財産所得の受取も支払同様に利子,配当およ び賃貸料から構成されている。

YRRP  =  YRRIP  +  YRRDP  +  ISRP  +  YRRRP 

非金融法人制度部門別所得支出定義式 受取は主に営業余剰,財産所得に分か れるが,その他損害保険金の受取,雇用者福祉給付の受取が存在する。

YRNB  =  YRUP  +  YRRP  +  ISRP  +  SSSURP 

(13)

2 .  3 .  6 

一般政府所得部門

一般政府(支払)財産所得•利子 政府の利子支払は利子率に依存するとして いる。

YREIOG  =  f  (/NTB,  YREIOG (‑1)) 

+ +  

一般政府(支払)財産所得・賃貸料 政府の賃貸料支払に関しても地価が有意 を示した。

YRERG  =  f  (PLAND,  YRERG (‑1)) 

一般政府(受取)財産所得 政府の財産所得の受取に関しては利子,配当およ び賃貸料に細分化されていない。利子の受取に関しては利子率が正に影響する と考えられ,配当については負に影響すると考えられる。これを総合した財産 所得の受取に関して事前の効果は不明である。

YRRG  =  f  (/NTB,  PLAND) 

結果は利子率については負をとり,地価に対しては正を示した。

一般政府(支払)財産所得 政府の財産所得の支払に関しては利子の支払と賃 貸料を加えたもので定義されている。

YREG  =  YREIOG  +  YRERG 

一般政府(支払)貯蓄 政府の貯蓄に関しては政府の受取によって定義された 所得から支払を控除することにより定義される。

(14)

‑]]4‑ 香川大学経済論叢

SA  VG  =  YG ‑ CGN  ‑ YREG ‑ ISEG ‑ SUB ‑ SSEG 

‑ SSHEG ‑ TRNOG ‑ SSSUEG ‑ TREOG 

234 

一般政府(受取)間接税 政府の主要な受取項目に税収があるが,そのうちの 間接税は輸入関税および消費税をはじめとする細かな間接税の項目によって構 成されている。

TIND  =  TINDM 

TINDO 

一般政府(受取)直接税・所得税 政府の所得税の受取は民間企業,銀行およ び家計によって構成されている。

TD/RI  =  TDYP  +  TDYB  +  TDYH 

一般政府(受取)直接税• その他 政府の所得税以外の直接税に関しても,受 取は民間企業,銀行および家計によって構成されている。

TDIRO  =  TDOP  +  TDOB  +  TYOH 

一般政府(受取)直接税 政府の直接税は所得税およびその他で構成されてい

TDIR  =  TD/RI  +  TD/RO 

一般政府所得 一般政府の所得を受取面から定義した。

YG  =  YRRG  +  ISRG  +  TIND  +  TDIR 

+  TPG  +  SSRG  +  SSSURG  +  TRRG 

2 .  3 .  7 

家計所得部門

家計(支払)財産所得・消費者負債利子 事業以外の借入に対する利子の支 払。利子率および家計の所得拡大が影響を与えると想定している。

(15)

YREIH  =  f  ( I N T B ,   PC,  YH ‑ SAVH) 

+  +  + 

家計(支払)財産所得• その他の利子 利子率のみばかりでなく事業の水準が 影響を与えるので,経済状況を示す変数を説明変数として導入した。

YREIOH  =  f  (YREIOH (‑1),  INTB,  YH ‑ SAVH,  FAH,  TOPIX) 

+  +  + 

+  + 

家計(支払)財産所得・賃貸料 賃貸料に関しては地価を説明変数に入れてい る。当期の地価のみではラグが存在するためか有意にならなかった。

YRERH  =  f  (PLAND  +  PLAND (‑1),  YRERH (‑1)) 

+  + 

家計(支払)直接税・所得税 家計の所得税支払に関して雇用者所得が有意に なると考えられるが,

5%

水準で有意にならなかった。しかしながら符号条件 は満たしているため推定式からは除外しなかった。

TDYH  =  f  (YW,  YRUH,  YRRH) 

+  +  + 

家計(支払)直接税• その他 直接税のうち所得税以外については資産などの 増減が影響していると考え,金融資産を説明変数に導入している。

TYOH  =  f  (TYOH (‑1),  FAH) 

+ +  

家計(受取)財産所得・配当 家計の配当の受取は企業および銀行の配当の総 額とそれらの営業余剰に基づくとしている。

(16)

‑116‑ 香川大学経済論叢 236 

YRRDH  =  f  (YRRDH (‑1),  YRUP,  YRUB,  YREDP  +  YREDB) 

+  +  +  + 

家計(受取)財産所得•利子 利子所得は経済全体の利子支払の総額および利 子率に依存するとした。

YRRIH  =  f  (INTB , YRRIH (‑1) , YRALL) 

+  +  + 

ただし,

YRALL  =  YREIP  +  YREIB  +  YREIOG  +  YREIOH  +  YREIH 

である。

家計(受取)財産所得・賃貸料 賃貸料は地価に影響されるとしているのはこ こでも同様である。

YRRRH  =  f  (PLAND,  YRRRH (‑1)) 

家計(受取)営業余剰 家計の営業余剰は主として経済状況に依存するとして いる。

YRUH  =  f  ( / I P ,   GNPN) 

+ +  

家計(支払)財産所得 定 義 式 家 計 の 財 産 所 得 の 支 払 は 利 子 と 賃 貸 料 か ら な ると定義している。

YREH  =  YREIH  +  YREIOH  +  YRERH 

家 計 ( 支 払 ) 直 接 税 定 義 式 直接税は所得税とその他から構成されている。

TDH  =  TDYH 

TYOH 

(17)

家計(受取)財産所得 定義式財産所得の受取は利子,配当および賃貸料の 和によって定義できる。

YRRH = YRRIH + YRRDH + YRRRH 

家計制度部門別所得合計 定義式 家計の所得は受取の合計によって定義され る。ここでは雇用者所得が大きなウェイトを占める。

YH= YWALL+ YRUH+ YRRH+ ISRH  + SSRH+ SSHRH+ SSSURH+ TRRH 

家 計 ( 支 払 ) 貯 蓄 定 義 式 貯 蓄 は 可 処 分 所 得 か ら 家 計 に お け る 消 費 を 控 除 し たもので定義される。他の部門と異なる定義をしているが,

YDHと CH

の定 義に戻ると,他の貯蓄の定義と同じく受取項目の所得総額から支払項目を控除

したものになる。

SAVH = YDH ‑ CH 

家計貯蓄率定義式 貯蓄率を可処分所得における貯蓄の割合として定義した。

SAVH 

SRATE =  X  1 0 0   YDH 

個人企業所得定義式 個人企業所得は営業余剰の受取から,事業における利子 と賃貸料を控除した。

YU=  YRUH‑YREIOH‑YRERH 

2 .  3 .  8 

その他の所得部門

対象となる経済主体は

5

部門あり,民間非営利団体,非金融民間部門,金融 部門,一般政府部門そして家計部門に分かれる。これについては表 7に示す。

民間非営利団体については経済規模が小さいこと,金融機関については主に経 済主体間の資金の循環の媒体の役割をすることから分析からは除外している。

(18)

‑118‑ 香川大学経済論叢 238 

シミュレーションテスト

前節において示したモデルに関して,モデル全体の動きをこの節において再 評価する。モデルの評価にあたっては

MAPE

およびタイルの不一致係数

TU

(1) 

を用いた。

MAPE

による結果は表

l

TU

による結果は表

2

に示している。また変数 全体の結果について,

MAPE

の結果については

5 0

以下の値に関して,同じく

TU

に関しては極端に値が大きい

SHNO

を除いて図

l

においてヒストグラムに 表している。

1

と表

2

を見る限り,

MARP

において内生変数

1 6 4

個の中で,

100%

以上 の変動を示すものは

6

個であり,その内訳は大きい順に

JP, AU, AN, JPN,  AD, AP

であり,

TU

について

1

を超えるものは

1 4

個,最大の値を示すもの

SHNO

でありこれに関してはその値も 70台と他の変数の係数に比べて著 しく悪い。これは貯蓄を受取から定義された所得から主要な支払項目を控除し た差で定義しており,加えて非営利民間企業自体の大きさが他の経済主体に比 べて著しく小さく,各種の経済変数の変化により受取部分と支出部門が大きく 変化し,貯蓄がその変化を忠実に追いきれていない結果である。ただし,非営 利部門は前述のとおりウェイトは大きくないので全体には影響を与えない。以 下,大きな順に

JPN, AP, AC, AN

と続く。総合的に判断して在庫調整に関 係する部分は当てはまりが悪い。その他としては

AC,AN, AP, ER, JP, SA  VH, 

(1)  MAPE

またはタイルの不一致係数は,

MAPE= ―こ

Y1‑Y1 

1‑1  Yt 

TU= 紅]に(△飢ー位)

IT 

✓区 i=1△ 

y f / T  

と定義される。

..  ‑.. 

''

' '   Yt ‑Y,‑1 

△ Yt 

Y t ‑ 1 '  

△飢= Yt ‑Y,‑1 Yt‑1  である。

(19)

SRATE, SA  VB ,  YREIHと在庫調整以外では一部各経済主体の貯蓄部分がフィッ

トがよくない。

以上がモデルの構成であるが,主要な変数に関するファイナルテストの結果 は図

2

に示してある。また,その他の変数に関するファイナルテスト結果は図

3

から図

1 0

に示してある。

経済環境の変化および政策による影響

4 .  1 

公定歩合の変化

公定歩合の変化は市場金利の変化を通して実質経済においても変化を与える 構造となっている。シミュレーションにおいては公定歩合を

1%

上昇させるこ

(2) 

とで経済における変化を計算したが,これをシナリオ

l

としている。結果は主 要変数について図 11と表 8に示している。主要な変数の変化については生産 をはじめ基本的に減少していき,経済は不況に向かう。賃金も低下するが,生 産の下落に対して賃金の下落が小さいので,結果的に物価は若干ながら上昇し

(3) 

ている。また国民所得も減少する。

所得面に関しては貯蓄の変化は図

1 7

に所得の変化については図

1 8

に,各経 済主体の所得変化については図

1 9

に,最後に各所得の基準解からの変化率は

(4) 

表 9に示している。所得面においては公定歩合の上昇により銀行約定金利が上 昇し,利子に関する受取,支払とともに上昇する。特に金融機関においてその 影響が顕著にみられ受取としての所得としては拡大するが,同時に支払も拡大

し,貯蓄には反映しない。

主要な経済主体に関して考察を加えると,民間企業は受取面においては財産 (2)  シナリオ lにおいては 1993年から外生変数の値を変化させた。以下,他のシナリオ

でも開始年度は 1993年である。

(3) 

ここで,図

1 1

から図

1 6

の実線は各シナリオに対応したシミュレーション結果で右目 盛,破線は各シナリオと基準解の差を示しており左目盛が対応している。また,表8 各シナリオに関して基準解の差と基準解の比をパーセント表示したもの。すなわち,基 準解yo,i番目のシナリオ解y,とすると, (y1‑yo) /yo X 

1 0 0

である。

(4)  ここで,図 17と図 18, 19から図24は寄与度を用いて表している。また,表9 ら表

1 1

は表

8

同様各シナリオに関して基準解の差と基準解の比をパーセント表示した ものである。

(20)

‑120‑ 香川大学経済論叢

2 4 0  

1 MAPEによる結果

Cumulative  Cumulative  Value  Count  P e r c e n t   Count  P e r c e n t   [ O ,   5 )   7 0   4 2 . 6 8   70  4 2 . 6 8   [ 5 ,   1 0 )   5 3   3 2 . 3 2   1 2 3   7 5 . 0 0   [ 1 0 ,   1 5 )   1 9   1 1 . 5 9   1 4 2   8 6 . 5 9   [ 1 5 ,   2 0 )   1 0   6 . 1 0   1 5 2   9 2 . 6 8   [ 2 0 ,  2 5 )   2  1 . 2 2   1 5 4   9 3 . 9 0   [ 3 0 ,   3 5 )   1  0 . 6 1   1 5 5   9 4 . 5 1   [ 5 0 ,   1 0 0 )   3  1 . 8 3   1 5 8   9 6 . 3 4   [ 1 0 0 ,  2 0 0 )   5  3 . 0 5   1 6 3   9 9 . 3 9   [ 3 0 0 ,  4 0 0 )   1  0 . 6 1   1 6 4   1 0 0 . 0 0  

2

タイトルの不一致係数の結果

Cumulative  Cumulative  Value  Count  P e r c e n t   Count  P e r c e n t   [ O ,   0 . 5 )   6 6   4 0 . 2 4   66  4 0 . 2 4   [ 0 . 5 ,   1 )   8 4   5 1 . 2 2   1 5 0   9 1 . 4 6   [ 1 ,   1 . 5 )   1 2   7 . 3 2   1 6 2   9 8 . 7 8   [ 1 . 5 ,  2 )   1  0 . 6 1   1 6 3   9 9 . 3 9   [ 7 1 ,   7 1 . 5 )   1  0 . 6 1   1 6 4   1 0 0 . 0 0  

1 モデルの結果

(a)  MAPEによる結果(%表示) (b)  タイルの不一致係数の結果 24 

20  16  12 

゜ ゜

10  15  20  25  30 

14  12  10 

0.00  0.25  0.50  0.75  1.00  1.25  1.50 

(21)

2 主要内生変数のファイナルテスト結果

CP  EX 

"'"'"'  ""

"""' 

/' 

70000 

. . . .  

"""' 

‑ ‑ r ‑

GNP  IH 

H"'I  ・ 而

- • • 雌J ~ """ 

・→畑 ~

""'"" 

二 ︱

旧'"" ' "

‑ ‑ ‑

I /   , / 

<,  / 

"""' 

12

  " 

00

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0

,

01,

  ロ

,

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.

,, ,,

.

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.

...  .. .I  20000  , .,  ..  " , ........ 筐...." 

1‑...... c.,..,1  I‑心..,̲ ̲ 区 ( 珈,1

IP  JP 

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貨石

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筐 . . . .

I —心— -u 匹-叫|—心—-w 曲-•I

収入の拡大,その一方で営業余剰の縮小が生じる。支払面に関しては同様に利 子を含む財産所得の増大を生み,結果的に企業の貯蓄は減少する。政府は受取 面において民間企業の財産所得等の拡大等により直接税部分が若干増加する。

支払面においては財産収入におけるものが拡大はするが,支払以上に受取が拡 大するので結果的に貯蓄が増大する。家計面においては影響は複雑で,受取面 において財産所得の拡大が生じるが,その反面,個人企業の営業余剰また雇用 者所得は利子率の増加による景気の低迷を受けてそれらの受取が次第に減少す る。支払面に関しては財産所得面での支払は拡大し,最終消費支出は減少する が,受取において雇用者所得が減少しているのにも拘らず,財産所得が拡大し ているので,それに対応し直接税の支払が増大する。結果的に家計においては 若干の貯蓄の拡大がみられる。

全体的に公定歩合の変化は銀行約定金利の上昇を通して財産所得の受取およ び支払を拡大させるので,所得面においては各経済主体の所得を拡大させる形

(22)

‑122‑

香川大学経済論叢

2 4 2  

となるが,金融機関は他の経済主体間の取引の媒体となり利益を享受しない。

民間企業はこの点公定歩合の上昇により不利益を受け家計が利益を享受する形 になる。しかしながら,家計の受取において雇用者所得および個人企業の営業 余剰が縮小し,財産所得が拡大することはマクロ的な側面では家計の所得が拡 大するが,家計に所属する財産収入を持たない層に関しては単に受取面の縮小 を意味するのみであり,財産所得を持つ層との間に格差がよりいっそう明確に なると考えられる。

4 . 2  

為替レートの変化

シミュレーションにおいては為替レートが従来に比べて

10%

減価したと想 定して分析を行っている。これをシナリオ

2

とし,計算結果は主要変数につい て図

1 2

と表

8

に示している。分析結果によれば国際競争力の上昇に伴い輸出 の増大,一方輸入の減少が引き起こされ,生産は拡大方向に向かい,賃金は上 昇する。くわえて,輸入価格の高騰により次第に物価は上昇し民間需要は落ち 込みの傾向を見せ,当初の生産の拡大は次第に縮小方向に向かう。

所得面に関しては貯蓄の変化は図

1 7 ,

所得の変化については図

1 8

に示し た。各経済主体の所得変化については図

2 0

に,各所得の基準解からの変化率 は表

9

に示した。

各経済主体の所得に関しては金融機関を除いて各経済主体の所得規模は拡大 し,特に第

1

期後の民間企業の所得の拡大はその他の経済主体に比べ顕著であ る。同様に民間企業ではその貯蓄も拡大し,政府に関しても同じく貯蓄が増加 する。

各経済主体の内容について詳細に考察していくと,民間企業に関しては輸出 の増大により受取面での営業余剰の増加,派生的には財産所得の増加が生じる が,支払面に関しては第

1

期には営業余剰の大きな拡大によって財産所得,直 接税等上昇する。ただし,これらの営業余剰の増加は第

2

期以降は継続せず,

貯蓄を形成するには困難な状況が生じる。政府に関しては生産の拡大により若 干ではあるが,直接税,間接税共に増加する。支払面においては政府消費が一

(23)

部増大するもののその他顕著な変化はみられず,貯蓄が拡大する形になる。家 計については受取において雇用者所得と営業余剰が増加し,最終消費支出は増 加するものの貯蓄には大きく影響を与えない。

4 .  3 

石油価格の変化

ここにおいては石油価格が 20%上昇した場合について考察を行っており,

シナリオ

3

としている。主要変数は図

1 3

と表

8

からもわかるとおり,石油価 格の上昇は日本経済において基本的に悪い影響をもたらす。主要な経済変数に 関する影響は

GNPをはじめ生産が落ち込み,在庫が大きく拡大を示す。物価

も石油価格が高騰することでコストプッシュされ,卸売物価指数,消費者物価 指数のいずれも上昇する。特に卸売物価指数は直接影響を受ける形で 2 %程度

も上昇し,その上昇を受けて消費者物価も継続的に上昇を続ける。

貯蓄の変化は図

1 7

に所得の変化については図

1 8

に,各経済主体の所得変化 については図

2 1

に,最後に各所得の基準解からの変化率は表

1 0

に示してい る。各経済主体のいずれもが所得および貯蓄に関して減少を余儀なくされてい

各経済主体に関して細かくみてみると,民間企業において営業余剰の減少,

派生的に財産所得の減少をももたらす。政府の支払としては大きく変化するも のはなく,結果的に受取の減少分だけ貯蓄が減少する。家計の受取は賃金が次 第に上昇傾向を示すために全体的には拡大していくが,営業余剰での減収に加 えて,支払面で最終消費支出の増加により貯蓄が減少する。

4 . 4  

公共投資および乗数効果

マクロ計量モデルに関して考慮される乗数効果について本稿のモデルに関し て検討を行う。はじめにいくつかの先行研究においてマクロ計量モデルが示す 乗数効果について検討する。過去の研究例を示すが,総じて

1 9 8 0

年代の研究 に比べて

1 9 9 0

年代の乗数効果は減少してきている。特に従来の経済企画庁モ デルは(現在は内閣府・経済社会総合研究所)は四半期のデータを用いて検証

(24)

‑124‑

香川大学経済論叢

2 4 4  

を行っているが,その乗数効果は

1

年目で 1.

2 1 ,   2

年目において 1.

3 1 ,   3

(5) 

1.

24という値が報告されている。その原因としては GDP

を構成する各変数 の中で民間在庫投資が短期的に大きく負に転じ,民間消費や民間投資の弱含み の反応とあいまって民間需要の変化を在庫調整で大きく相殺してしまう形に なっている。一年を通してみればこのモデルは当初在庫の調整で乗り切ってい たものが民間投資を若干誘発する形になってはいるが,その大きさは従来,特 に高度成長期のモデルと比べるときわめて小さいといえる。

表 3 乗数効果の比較

OBS  s c e n a r i o 4   s c e n a r i o 5   s c e n a r i o 6   1 9 9 3   1 . 1 5   1 . 1 5   0 . 5 8   1 9 9 4   1 . 1 7   1 . 1 7   0 . 6 9   1 9 9 5   1 . 1 8   1 . 1 8   0 . 7 3   1 9 9 6   1 . 1 9   1 . 1 9   0 . 7 5   1 9 9 7   1 . 2 0   1 . 2 0   0 . 7 6   1 9 9 8   1 . 2 0   1 . 2 0   0 . 7 7  

ここでの公共投資は

GNP

1 %

を公共投資に投入したとして考察を行って おり,シナリオ

4とシナリオ 5に示されている。シナリオ 4は CGを変化させ

たもの,シナリオ

5

JGを変化させたものである。シミュレーションはほぼ

同一の結果を示すが,この二つの変数による変化の差異は基本的に政府の所得 面での変化に影響する。

CGの変化は政府所得の受取 CGNに影響するが, JG

(6) 

は政府所得の受取に影響しない。

政府投資による乗数の計算結果は表

3

に表されている。シナリオ

4

とシナリ

5

について,主要変数のシミュレーション結果は図

1 4

および図

1 5

と表

8

示されている。その結果はシナリオ

4

とシナリオ

5

では変わることなく,経済 規模拡大方向に推移している。主要な支出項目の増大ばかりでなく,賃金は上 昇するものの,労働市場も改善する。乗数の値は 1.

2

程度と,政府等から発表

(5) 

一方,木下• 山 田 [

]では乗数の値は

1 .9

という計算結果を示している。

(6)  これは投資の増大を政府の投資の増加とみるか消費の増加としてみるかで政府の内部 的な支出項目の増減に影響を与えるが,外部的な変数については影響はほとんど同じで ある。

(25)

される値より若干低い大きさになっている。

貯蓄の変化は図

1 7

に所得の変化については図

1 8

に,各経済主体の所得変化 についてはシナリオ

4

について図

2 2

に,シナリオ

5

について図

2 3

に示され,

各所得の基準解からの変化率は表

1 0

と表

1 1

に示している。これらの結果は政 府支出に関しては支出項目が投資であるか支出であるかで会計上変動が生じる が,他の経済主体に限って言えば,所得は拡大し,貯蓄も拡大することになる。

特に民間企業が利益を受ける形になると結論付けられる。

最後の各経済主体の詳細な所得項目の変動はシナリオ 4が図

2 2

に,シナリ

5

が図

2 3

に示されているが,シナリオ

4, 5

のとき,政府の支払を除けば,

民間企業において営業利益の拡大によって,家計においても営業余剰と,生産 拡大により雇用者所得の拡大が生じ,政府の受取としては直接税,間接税の受 取が若干上昇する。

4 .  5 

滅税の効果

減税に関しては政府が

GNP

1%

規模の減税を継続的に行うことで,経済 の主要変数がどのように変化するのかを検証した。これをシナリオ

6

として表 記し,乗数に関する計算結果は表

3

に,主要変数のシミュレーション結果は図

1 6

と表

8

に示されている。表

3

においては減税の効果が基本的には政府支出 の増大と同じ景気浮揚効果をもたらすため,変数の動きはシナリオ 4とシナリ

5

と比べて大きさの点を除いては影響は低く作用するものの,民間在庫投資

( J P )

を除いて基本的に同じ方向に動く。

各経済主体の所得の変化を詳細に検証していく。貯蓄の変化は図

1 7

に所得 の変化については図

1 8

に,各経済主体の所得変化については図

2 4

に各所得の 基準解からの変化率は表

1 1

に示している。減税の効果は同程度の政府支出の 増大と比べその効果は若干弱いものの,民間消費を高め,経済浮揚に伴う物価 上昇に関しても政府支出の増大の場合と比較して小さい。減税による各経済主 体の変化は政府の所得面および貯蓄面の減少によって他の経済主体である家計 および民間企業へ所得の移転を行う。

(26)

‑126‑ 香川大学経済論叢 246  最後に各経済主体の所得の構成を詳細に検討する。減税による各経済主体の 影響は,公共政策(シナリオ 4CGの変化,シナリオ 5JGの変化)にお けるケースと民間企業の所得において影響の程度が公共政策のケースと比べて 半分程度であることを除くと基本的に同じ様に変化するが,政府については受 取面で直接税が減少し,その減税の効果による経済浮揚効果により,間接税に よる受取が若干増加するものの,結果的には減税による税収のほとんどが回収 できない形になり,支払面の項目では大きな変化がないことより政府の貯蓄が 減少する。家計については受取面においての変化パターンは公共政策の場合と

同じであるが,支払面においては政府の直接税支払が減少し,結果的に家計貯 蓄が増大し,減税の効果を家計が享受する形になる。

お わ り に

この分析においてはマクロモデルを作成し,経済主体における支出項目を詳 細にモデル化して分析をおこなうことで経済動向の変化について考察を加え

た。本稿において得られた結論および問題点は以下のとおりである。

•石湘等の燃料資源の価格上昇は,こうした資源を輸入に頼っている日本経 済を停滞方向に向かわせる。各経済主体にとって利益はほとんどない。

●円の減価は交易条件の改善を通して民間企業を中心に利益を与える。

●公定歩合の引上げは銀行約定金利を上昇させ,それにより経済に悪影響を 与える点においては理論的考察および従来の研究と変わる点はないが,利 子率の上昇による一方での効果として財産所得を上昇させる形で所得の分 配が行われる。これにより,民間企業が不利益を受け,家計が財産所得の 増加によって利益を受けるが,個人間所得の分配においては所得格差を拡 大する可能性が高い。

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