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編 集 後 記

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Academic year: 2021

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編 集 後 記

大江志乃夫教授はこの3月に定年退官された。16年にわたって教鞭をとられた東京教育大学 の廃学にともない、1976年に茨城大学人文学部教授として赴任されて以来17年になる。当学部 では先生は社会科学科社会構造教室に所属され「社会史」の授業、ゼミナールを担当された。

この間、先生は引き続きご専門の日本近代史を中心とする幅広いお仕事に精力的に取り組ま れ、いわば当学部、学科を代表する研究者のおひとりとして広くご活躍されたのである。日露 戦争をはじめとする軍事史的研究が学界において高く評価されているのはつとに知られるとこ

ろである。また、一般向けの著作や家永教科書裁判での活動などによって、学会においてだけ でなく一般からも広く支持をえてこられた。とくに忘れられないのは、その該博な歴史研究に 裏打ちされた歴史小説『凧の時』の大仏賞受賞である。その報道に接した時には、私たちも同

じ職場に籍を置くものとして胸のふくらむ思いをしたものである。

それと当時に、先生は熱心な教育者でもあった。あるとき私は、大江先生から卒業論文の書 き方を箇条書きで数枚にまとめたものを見せていただいたことがある。原稿用紙の使い方から 歴史資料、統計資料などの論文のなかでの使い方、表記のしかた、注の付け方などを丁寧に整 理したもので、先生ご自身が作成され、卒業論文を書く予定のゼミ生に手渡しているというこ

とであった。以来、私も先生にならって同じようなものを作ろうと考えているが、いまだに果 たせないでいる。また、「今年はこれこれこんな所に目を付けていい論文をまとめた学生がいる んだよ」とよくうれしそうにおっしゃっていた。おそらく当の学生に対しては、卒業論文のレ ベルをさらに引き上げさせるべく最後まで指導教官としての厳しい顔を崩さなかったにちがい

ない。

人文学部大学院設置検討委員会、社会科学科大学院設置検討委員会の中心メンバーとしてこ 活躍されたことも忘れることはできない。大江先生ご自身は、「大学院のない大学で研究に専念

したいと考えていたのに、この大学で大学院づくりを手掛けることになるとは思わなかった」

ともらしておられた。学界をはじめ学内外でのご活躍、東京教育大学で大学院学生の指導にあ たってこられたご経験があることなどを考えると、先生にはどうしても大学院設置に携わって いただかなくてはならない、単に携わるだけでなくリードしていただかなくてはならない、と いうのが学科の一致した見方であった。かくして先生には退官間際までたいへんなご苦労をお 願いすることになった。ひとたび大学院設置の検討が始まると、先生は終始、今後地方国立大 学の人文社会科学系の学部がそのレゾンデートルを高め発展するためには大学院の設置が不可 欠であることを説かれ、退官前年に同委員を退くまで、委員会のメンバーとともにしばしば夜 遅くまで大学院の構想づくりにあたられた。

大学院設置はさまざまな曲折をへて、1991年に人文系専攻がまず開設され、現在、社会科学 系2専攻新設の可能性がかなり高くなるところまでこぎつけている。構想をねりまた設置にい たる実務的な段取りの検討において、大江先生のこ発言はつねに重きをなしたと聞いている。

それを考えるにつけても、先生のご在職中に大学院社会科学系専攻の開設にいたらなかったこ

とは、われわれにとっても、まことに残念であったが、1日も早く開設にこぎつけ、またそれ

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をきっかけとして当学科の教育研究のいっそうの充実に努めることが、先生のお骨折りにお応 えすることだと考えている。

さてこれまでの例からみると、政経学会雑誌退官記念号は退官教官所属教室のメンバーが論 文を寄せるのが普通になっている。しかし、もっぱら社会学を専門とし、現在を対象としてい るわれわれ社会構造教室のメンバーが論文を持ち寄るよりも、当学部で大江先生のご専門に近 い日本やアジアの近・現代史分野をご専門とされる方々にご寄稿をお願することにした。また、

東学部長には大江先生の「茨大時代の」お仕事を振り返っていただくというテーマでお願した。

快くお引き受けいただき論文をお寄せいただいた先生方にこころよりお礼申し上げたい。

この大江先生退官記念号は、本来ならば遅くともこの3月、先生のご在職中に刊行されてい なければならないところであった。3ケ月余の遅れとなり、大江先生には本当に申し訳のない ことになってしまいお詫びの申し上げようもない。ひたすらご寛恕をお願するのみである。

こうして大学内で先生にお目にかからない日々をしばらく過してみると、わずらわしい学務 から離れていっそう精力的に新しい研究に取り組まれている先生のご様子が、かえって眼に浮 んでくる。新しいご著作によってまた私たち眼を啓いてくださることをお願い申し上げ、変ら ぬご活躍をお祈りしたい。

編集委員 神 谷 拓 平

参照

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