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州責任および学校制度の制定・維持に関する規定

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(1)

201

アメリカ現行州憲法における教育振興の目的・

州責任および学校制度の制定・維持に関する規定

教育学研究室 上 原 貞 雄

化した。そのうち,1642年の法律(Massachuset一

1 公立学校制度の起源と州政府による教育規       ts Lawof 1642)は,親および親方に対して,職

制 教育振興への先例      業技術において,また特に「宗教の諸原理と国の基本的

アメリカの学校制度に澄いて中核的位置を占める公立  諸法律とを読み・かつ理解させること」において・その

学校(P。bli。。ch。。1)は,その発達の当初から,子弟を教育す礒務を課するものであ端5)また,

がいして,ヨーロッパ諸国のそれが施与としての貧民救  1647年の法律(MassachusettsLaw of1647)

済もしくは慈善の意味での努力と強く結びついておこっ  は・(1)聖書の知識から隔絶し・少なくとも原典の意味が たのとは違って住民自らの税金によってまかなわれ,か  くもらされることのないようにするために・50家族を有 つ住民の全子弟に解放されるコモン・スクール(com一  する各タウン(town)が特に読み・書きを教える1名の

mon school),つまり万人共同・共通の学校の理  教師をただちに任命し・かつタウンの決定する方法でそ

想を実現するものとして斌ってきたといわれる。1) の賃金を提供すべきこと,(2)大学進学を希望する子弟の

その起源は,すでに初期植民地時代に診いて看取され, 準備のために・100家族を有する各タウンがグラマー・

がんらいカルヴィニズム(Calvinism)の立場から, スクール(grammar school)を提供すべきこと・

聖書を中心とした宗教的知識の住民一般への普及を特に  (3)該当タウンに吾いてこれらのことができない場合には

重視するピューリタン(Puritans)の移民したニュ  5ポンドの罰金が課せられること・このようなことを規

一.

Cングランド地方,とりわけマサチユセ。ツ概地定していた.6)なお,・68・年までには,同じくニユー・

においてみられた。たとえば,ボストンでは,早くも  イングランド地方に属する他のほとんどの植民地におい

1635年にラテン語学校(latin school)を設置  ても・これらの法律を範として義務教育および公立学校 し,数ドーチェスター.タウンでは,1639年に税金鞭の規定がなされる臨たった.7)

によりまかなわれる無償学校(free school)を設   もっとも・このニュー・イングランド植民地の場合・

置したといわれる。2)なお,この間に,牧師ジョン・ハ  ピューリタンたちは主に宗教的動機から教育を重視した

一ヴァード(J.Harvard)の遺言と遺贈図書・資金  のであって・教育の主要目的が聖書を中心とした宗教的

をもとに,マサチュセッツ植民地政府もこれに追加出資 知識の普及にあったことは明らかである。また・そのた して,この国最古の大学たるハーヴァード・カレッジ  めに,タウンにより設置された公立学校がタウンの行政委員

(Harva【d College)の創設(1636)に関与した  (selectmen)により運営されていたとはいえ・そ ことも忘れられてはなら鯛3)     の実際の監督都牧師であったことも聯である.8)し

ところで,初等・中等教育段階でのマサチュセッツ植  かし・ここで,そのこと以上に重視されなければならな 民地政府の関与は,同植民地議会が1641年に「長老は  いのは・特にマサチュセッツ植民地の1642年澄よび1647 宗教の立場において青少年教育のために教義問答を授け  年の法律により・その子弟のために親に対して教育義務

るべきこと」を要求したときに嬬るとされるがρこれ を賦課するとともに一カバリー〈E・P・Cubber1・y)

に続いて1642年澄よび1647年には,この国最初の教育  の指摘するように一 これを実効あらしめるためにタ

法規とみられる一連の法律の制定によって,それは本格  ウンに対して初等・中等段階の公立学校の設置を命じ・

(2)

202       茨城大学教育学部紀要 第27号

かつこのことを拒否する場合には罰金の支払いを要求す  2 教育振興の目的・州責任に関する州憲法規 る権限を植民地政府が有するとの宣言がなされたことで   定の制定

ある。9)

       現行州憲法に澄ける教育振興の目的およびその目的達もちろん,18世紀以降に澄いては,ニュー・イングラ

       成のための州もしくは州政府の責任に関する規定の内容ンド地方から辺:境への移住がようやく活発になるにつれ

       は,後述するごとく,確かに州によってさまざまであるて,タウンは地理的にいちだんと拡大し,そのためにタ

       が,その最も基本的な二つの型は,独立当初から19世紀ウンの中央の学校を解消して,その細分化された独立の

       中葉の頃までに制定された若干州憲法の教育規定のうち学校区としてのディストリクト(district)におい

       にすでに看取することができる。てそれぞれごく小規模かつ施設・設備のきわめて不十分

な学校をもつのやむなきにいたったこと,加うるに,が

      (1)教育振興の目的を規定し,かつその州責任を規定んらい同地方における義務教育および公立学校制度普及

       する州憲法の主要な原動力であったピューリタンたちの宗教的熱意

      ヵバリーによれば,独立後の初期諸州憲法のうち,二も時代の経過とともに次第に冷却していったことがあげ

       ユー・イングランド地方に位置するマサチュセッツ,こ 轤黷驕Bまた,その一方,ニュー・イングランド以外の

       ユー・ハンプシャー,ヴァーモント,メインの4州憲法地方では,がいして,教育は私事として家庭に澄いて行       診よび北西部領地より誕生したオハイオ,インディァナ

なわれるか,あるいは他の若干のプロテスタント(Pro一

@      の2州憲法は,「学問・徳行の奨励および学校団体の保

testants) や 力トリック(Catholics)により       護・奨励を指示する,すぐれた条節」をもつものとして

その子弟たちのために教会学校(・h・・ch・ch・・1)分類されている.11)特にこれらの州憲法には,教育振

が維持されるか,あるいは貧児や孤児を対象として親方       興の目的診よびその州責任に関する規定のしかたについ のもとでの徒弟教育が強制されたほか,例外的に教会も       て,ほぼ共通した一つの型が見いだされるようである。

しくは植民地政府の経費で慈善もしくは施与としての貧       たとえば,ニュー・イングランド地方の場合を代表す

民学校(paup・・sch・・1)が維持されるかといつ るものとみられるマサチユセ。ツ州憲法(、78。)12)では,

た程度にすぎなかったことも事実である。       「英知・知識および徳行が州民の間に一般的に普及され しかし,それはそれとして,初期植民地時代において,       ることは権利と自由との保持のために必要であり,この ニュー・イングランド地方に限られたとはいえ,すでに       ことは州の各地方に,また州民の各層の間に教育の機会 州政府の前身としての植民地政府の法的規制のもとにタ       、と利益とを普及することいかんにかかっているので,文学

ウンやディストリクトにより初等・中等の公立学校が設      知よび科学の関心や,それらのためのあらゆるセミナリ 置・維持されていたことは,この際,特筆されるべきで       一(seminary),特にケンブリッジにある大学,タ

あろう。というのも,このことが重要な先例もしくは礎       ウンにある公立学校澄よびグラマー・スクー一ルを奨励す 石となり,やがて合衆国の独立以後,初期諸州憲法の制       ること,州の農業・学芸・商業・貿易・製造工業澄よび 定を経て,各州政府が公立学校を中心に教育の振興をは       博物の促進のために褒賞と課税免除とによって私立団体 かるというアメリカ教育行政上主要な一つの基本原則が       澄よび公立機関を振興すること,………これらのことは,

確立されるにいたったからである。試みに一例をあげれ       州の将来を通じて州議会澄よび知事の責務でなければな ぱ,ニュー・イングランド地方に診ける他のほとんどの       らない。」(Pt.HCh.VS.2)と規定している。

州憲法を含めてかなり多くの州憲法に少なくとも教育規       しかも,ケンブリッジにあるハーヴァード・カレッジに 定に関する限り強い影響を与えたとみられる,1780年制       ついては,そこでの「学芸澄よぴあらゆるよい文学の振 定のマサチュセッツ州憲法に澄いては,「タウンにある       興が神の栄誉,キリスト教の利益およびアメリカ合衆国 公立学校澄よびグラマー・スクールを奨励すること」は       のこの州およびその他の諸州の大きな利益に資するもの

1騰獲豫慧晶瓢嬬㌫豊難饗離1溝韓倉讐ξ孚)

としている。マサチュセッツ州憲法におけるこれらの教

(3)

上原:アメリカ現行州憲法における教育振興の目的・州責任および学校制度の制定・維持に関する規定 203

育規定は,ワシントン(G.Washington)やジェフ  インディアナを含む諸州の憲法においては,この条令の アソン(T.Jefferson)らとともにアメリカ建国期  教育規定ないしは前述したニュー・イングランド諸州憲

のすぐれた指導的政治家の一人であったジョン・アダム 法の教育規定が何らかの形でとりいれられている。たと

ズ(J.Ad。m,)の起草眩るものといわれるが,1% えぱ,オー材州憲法(・8・2)では,北西部領地条令の

れはともかぐとして,同州憲法の教育規定は,州民の権  教育規定をほぼそのまま受けて,「宗教・道徳および知 利と自由とを保障するに必要な英知・知識および徳行を  識はよい政府澄よび人類の幸福のために本質的に必要で 普及するために,広く州民の間に教育の機会と利益とを  あるので,学校澄よび教育手段が良心の権利に矛盾しな 拡充することを教育振興の目的とし,かつそのためにタ  いように州議会の措置により不断に振興されなければな

ウンのグラマースクールを含めての公立学校や,バー  らない。」(Alt.V皿S.3)とし,かつ「学校,ア

ヴァード・カレッジ澄よびその他の私立教育機関を奨励  カデミーおよび大学の門戸が………いかなる差別もしく

することを州政府の責任としている。もちろん,こうし は優先もすることなく各段階の生徒・学生・教師のため

た教育規定は,それががんらい同州に診いてピューリタ  に開放されていなければならない・」(Art・V[IIS・

ンたちにより久しく培われてきた蝋育の伝統を基礎と 25)と規定している。18)また,インデ・アナ州憲法

して成立したものとみるべきであり,特にハーヴァード・ (1816)では,「地域社会を通じて一般的に普及される カレッジに関する部分に澄いては明らかに宗教と一体の  知識寿よび学問は自由政府の保持のために必須なもので 関係において教育振興の目的が示されている点も見逃が  あり・かつこの州の各地域を通じて教育の機会と利益と してはならないと思う。ついでながら,同じくニュー・ を普及することはこの目的のために高度に役立つ」(Art・

イングランド地方に位置するニュー・ハンプシャー州の  D(S・1)ので,「早急に無償でひとしくすべての者に

憲法(1784,1792)においても,その大学に関する部  解放されるところの・タウンシップ・スクール(town願 分を除いては,上記マサチュセッツ州のものとほとんど  ship school)から州立大学までの正規の階梯にお 同様の教育規定が設けられていることがあげられる。15)いて上昇する普通の教育制度を規定することは洲議会

ところで,ニュー・イングランド諸州に捨ける公教育  の責務でなければならない。」(Art・D(S・2)とし

の伝統や,それぞれの憲法上のすぐれ轍育規定は洞 ている.19)ここでは溺らかに前音β分の規定幽いてマ

地方からの移住者の多かった旧北西部領地諸州の憲法の  サチュセッツないしはニュー・ハンプシャー州憲法の教 それに少なからぬ影響を与えたであろうことが指摘され  育規定にみられる文言がとりいれられているといえる。

る。独立戦争後,国有領土となったこの北西部領地   このように,マサチュセッツをはじめとするニュー・

(Northwe8t Territory)一ミシシッピー川とオハ  イングランド地方のほとんどの諸州の憲法や・オハイオ・

イオ川とにより囲まれるほぼ三角状の地域一に対して  インディアナなどの旧北西部領地諸州の憲法においては・

は,がんらい公教育に強い熱意をもっていたニュー・イ  がいして州民の権利と自由とを保障し,よい政府と人類 ングランド住民の移住を誘致する連合政府の方策として, の幸福とを実現するに必要な基礎として,広く州民の間

1785年の土地条令(Land Ordinance of1785) に知識や道徳を一ただし,マサチュセッツ・オハイオ

により将来その地方に州が成立したときに公立学校や大  の場合,宗教も含めて一普及することを教育振興の目 学のために一定量の国有地を交付されることが約束され, 的とし,かつその達成のために公立学校および大学を含

かつ1787年の北西部領地条令(NorthwestOrdi一 む学校制度を制定もしくは奨励することを州政府の責任

11ance of 1787)により「宗教・道徳および知識は  とすることが明示されている。特にオハイオ,インディ よい政府と人類の幸福とのために必要であるので・学校  アナの両州憲法では,一歩進んで,公立学校制度が「い および教育手段が不断に振興されなければならない・」  かなる差別もしくは優先もすることなく解放され」,あ

こと碇められた. 6)特に北西部領地条令の教育規定は,るいは「ひとしくすべての都解放される」べきことと モンロー(P・Monτoe)によれば,広く西部諸州にお  規定され,そこには確かに州政府のもとでの教育の機会

ける公教育制度の発展に理念的支柱を与えたものとして  均等の保障への含意もみとめられるのである。

高く評価されているがゆ同領地よ艇生したオーイオ, 鶴時代はか勧下って南北戦争後臨u定されたノ

(4)

204      茨城大学教育学部紀要 第27号

一ス・カロライナ州憲法(1868)では,その「教育」に  する規定が明らかに欠落しているが,しかし同州の「学 関する一条節(Art.D(S・1)に診いて前記北西部領  校基金と呼ばれる資金は恒久基金となり,その利子が州 地条令の教育規定がまったくそのまま診りこまれている  全域の公立学校もしくはコモン・スクールの財政的保障

ことはともかく,さらにこれに加えて「権利宣言」(de一 診よび奨励のために,かつその全州民の平等な利益のた

claration of rights)に凄いて「州民は教育  めに,失費されることなく支出されなければならな瑠

の特権への権利(aright to the privilege of   (AIt. Eighth S.2)として,間接的にではあれ,

education)を有し,かつこの権利を守り細寺することは本州  教育財政の面から公立学校振興のために州政府に対して

の責務である。」(Art.I S 27)と規定されている。20)実  一定の責任が規定されているといえる。しかも,この場

際,同州憲法のかかる規定は,その後制定されたワィォ  合,「全州民の平等な利益のため」の支出という表現の ミング洲憲法(1889)の同じく「権利宣言」に澄ける  もとに,財政面からの教育の機会均等の保障への含意の

「市民の教育の機会への権利」(the right tO op一 あることもうかがえるのである。もっとも,近年改正さ

portunities for education)を認める規定21)  れた同州憲法(1965)では,「本州には不断に無償の公

(Art.IS.23)とともに,基本的人権の一つとして  立初等・中等学校が存しなければならない。州議会は,

いわゆる「教育を受ける権利」(aright toed一 適切な立法によりこの原則を履行しなければならな%祭)

ucation)を明記し・かつその保障を州政府に課した  (AIt.Eighth S.1)として,州政府による教育

点において・特筆されるべきであろう。        振興の責任を一層明確にするにいたっている。

また,1848年に制定されたウィスコンシン州憲法に澄

(2)教育振興の目的を規定せず・ただその州責任のみ  いても,最初のコネティカット州憲法の場合とほぼ同様

を規定する州憲法       趣意の規定がみられるほか,1859年および1864年にそ

教育振興の目的澄よびその州責任に関する憲法規定の  れそれ制定されたオレゴンおよびメアリランド州憲法な 今一つの型に属するものとしては・マサチュセッツとと  どでも,教育振興の目的に言及しないまま,コモン・ス

もに同じく子ユー・イングランド地方に位置しながらも・ クールないしは無償公立学校制度の制定を州議会に要求

ひとり独立後かなりの期間・植民地時代以来の「基本法」 する規定がなされている。なお,がいして19世紀末葉

(Fundamental Orders ofConnecticut・  以後に制定された多くの州憲法では,教育振興の目的規

1638−39)を保持して憲法を制定することの澄そかった  定が設けられず,むしろ公立学校を中心とする学校制度

コネティカット州の場合がまずあげられる・最初のコネ  に対する州もしくは州政府の責任を明確にすることに重

ティカット州憲法(1818)では・教育振興の目的に関  点がおかれているようである。

(5)

上原:アメリカ現行州憲法における教育振興の目的・州責任訟よび学校制度の制定・維持に関する規定 205

第1表 現行50州憲法における教育振興の目的・州責任に関する規定の要約

現 行 州 憲 法

教育振興の目的・州責任に関する規定

ア  ラ バ  マ (1901) 州議会は,7−21才の子弟のため全州を通じての公立学校制度を制定・

Ar t.XIV S.256

組織・維持せねばならない。

ア  ラ ス  カ (1956)

州議会は,州の全子弟に解放される公立学校制度を一般法により制定・

Art.VH S.1

維持せねばならず,かつその他の公教育機関を規定することができる。

ア  リ ゾ ナ (1912)

州議会は,幼稚園,コモン・スクール,ハイ・スクール,師範学校,大

Art.XIS.1

学を含む普通の統一的な公立学校制度の制定・維持を規定する法律を制定 し,また盲・ろう唖者の教育・養護を規定する法律を制定せねばならない。

アーカンソー (1874) 知性・徳行は自由の防壁であり,自由かつよい政府のとりでであるので,

Art.XWS.1 州は州内の6−21才のすべての者が無料の教育を受けることができる普

通の有効な無償学校制度を常に維持せねばならない。

知識・知性の一般的普及は州民の権利・自由の保持のため必須であるの で,州議会は,あらゆる適切な手段により知性・科学・道徳・農業の改善

カリフォルニァ (1879)

を奨励せねばならない。州議会は,各学校区で無償学校が維持かつまかな

Aπt.D(s.1,5,6

われるコモン・スクール制度を規定せねばならない。公立学校制度は,法

律により設置された幼稚園・初等学校・中等学校・工業学校・州立カレッ ジに加えて,これらの学校維持のため権限を与えられた学校区,その他の 諸機関を含むものとする。

コ  ロ  ラ  ド (1876) 州議会は,6−21才の州の全住民が無料で教育されるように全州を通

カての完全かつ統一的な無償公立学校制度の制定・維持を速かに規定せね

Art.D(S.2

ぱならない。

コネティカット (1965)

@Art・EighthS1,2

 本州には不断に無償初等・中等公立学校が存せねばならない。州議会は,

K切な立法によりこの原則を履行せねばならない。州は,コネティカット 蜉wを含む高等教育制度を維持せねばならない。

デラ ウ ェァ (1897)

州議会は,普通の有効な無償公立学校制渡の制定・維持を規定しなければな 轤ネい。そして,心身障害のない全児童が,他の手段により教育されない

Art.XS.1 場合には公立学校に就学すべきことを法律により要求することができる。

フ  ロ  リ  ダ  (1885)

統一的な無償公立学校制度や,高等教育制度の制定・維持・運営や州の 必要とする他の公共教育プログラムのため法律により規定がなされねばな

Art.D(S.1

らない。

ジ ョ ー ジ ァ (1945)

市民のため適切な教育を規定することは州の第一の責務であり,その経

AIt.V皿S.1

費は課税により提供されねばならない。

ハ    ワ    イ  (1959)

州は,全州的な公立学校制度・州立大学・公立図書館澄よび望ましい他

A【t.D(S.1 の教育機関の制定・財政的保障・支配について規定せねばならない。

ア  イ ダ  ホ (1890)

共和的政府形態の安定は主に州民の知性いかんによるので,普通の統一

的かつ完全な公立無償コモン・スクール制度を制定・維持することは,州

AIt.D【S.1

議会の責務でなければならない。

イ   リ  ノ   イ  (1970)

@Art.XS.1

 州民の基本目標は,すべての者の能力の限界までの開発である。州は,

nソの公教育機関・サーヴィスの有効な制度を規定せねばならない。州は,

公教育制度の財政に責任を有するものとする。

地域社会に一般的に普及される知識・学問は自由政府の保持のため必要

インデイァナ (1851) である。あらゆる手段により道徳・知性・科学・農業を奨励し,かつ法律

(6)

206 茨城大学教育学部紀要 第27号

現 行 州 憲 法

教育振興の目的・州責任に関する規定

Art.8 S.1

により授業料負担なくすべての者に解放される普通の統一的なコモン・ス クール制度を規定することは,州議会の責務でなければならない。

ア  イ  オ  ワ (1857)

@AIt.D(S.1

(育翻藩磁驚鰹禦本州備的利益酬教)

カ ン サ ス (1861)

 州議会は,コモン・スクールや,師範学校,カレッジ,大学を含む高等 i階の学校の統一的制度を規定することにより知性・道徳・科学・農業の

Art.6 S.2

改善を奨励せねばならない。

ケンタ ッキー (1891)

州議会は,全州を通じての有効なコモン・スクール制度を適切な立法に S.183

より規定せねばならない。

ル イ ジアナ (1921)

 州議会は,本州学童の教育のため,そして公立学校や州機関により運営 ウれるすべての教育機関を含む教育制度のため,規定する完全な権限を有

Art。X皿S.1

するものとする。

教育の利益の一般的普及は州民の権利℃自由の保持のため必須であるの で,タウンが自らの経費で公立学校の財政的保障・維持のため適切に規定

メ   イ   ン (1820)

するよう要求するのは,州議会の権限であり,かつ責任でなければならな

Art.V皿

い。さらに,不断に州内のすべてのアカデミー,カレッジ,セミナリー・オ ブ・ラーニングを奨励し,これらに適切な基本財産を与えることは,州議 会の責務でなければならない。

メアリランド (1867) 本憲法採択後第1回会期に,州議会は,全州にわたる完全かつ有効な無

AIt.V皿S.1

償公立学校制度を法律により制定せねばならない。

英知・知識・徳行の州民間の一般的普及は権利・自由の保持のため必要 であり,このことは州の各地方に,また州民の各層に教育の機会・利益を 普及することいかんによるので,文学・科学の関心や,あらゆるセミナリー,

マサチュセッツ (1780)

特にケンブリッジの大学,タウンの公立学校,グラマー・スクールを奨励

Pt.皿Ch.VS2

し,州の農業・学芸・商業・貿易・製造工業・博物の促進のため褒賞・免 税により私立団体・公立機関を振興することは,州の将来を通じて州議会・

知事の責務でなければならない。

ミ シ  ガ  ン (1964)

 宗教・道徳・知識はよい政府と人類の幸福のため必要であるので,学校・

ウ育手段が不断に奨励されねばならない。州議会は,法律により明示され

Art.V【HS.1

る無償の公立初等・中等学校制度を維持かつ財政的に保障せねばならない。

ミ ネ  ソ  タ (1857)

共和的政府形態の安定は主に州民の知性いかんによるので,普通の統一

Art.V皿S.1

的な公立学校制度を制定することは,州議会の責務でなければならない。

ミ シシッピー (1890)

州議会は,その裁量において課税,その他により,かつ州議会の規定す Art.8S.1(1934,

る諸段階をもって,6−21才の全子弟のための無償公立学校の制定・維

1960修正) 持を規定せねばならなし〜

ミ ズ  リ ー (1945)

̀rt.D(S.1(a),

@       9(b)

 知識・知性の一般的普及は州民の権利・自由の保持のため必須であるの

ナ,州議会は,法律の定めにより本州のセ1才を越えないすべての者の無

ソ教育のため無償公立学校を制定・維持せねばならない。州議会は,州立 蜉wやその他の教育機関を適切に維持せねばならない。

モ  ン タ ナ (1889)

普通の統一的かつ完全な公立無償コモン・スクー弄制度を制定・維持す

驍アとは,州議会の責務でなければならない。州の公立無償学校は6−21

Art.XI S.1,8

才の全児童・青年に解放されねばならない。

(7)

上原:アメリカ現行州憲法における教育振興の目的・州責任および学校制度の制定・維持に関する規定 207

現 行 州 憲 法

教育振興の目的・州責任に関する規定

宗教・道徳・知識はよい政府のため必須であるので,学校・教育手段を

ネ ブラス カ (1875)

奨励するために適当な法律を制定することは,州議会の責務でなければな

Art. I S.4

らない。

Art.V皿S.6 州議会は,5−21才のすべての者の本州コモン・スクールにおける無

償教育を規定せねばならない。

州議会は,あらゆる適切な手段により知性・文学・科学・鉱業・機械・農

ネ  ヴ  ァ ダ (1864)

業・道徳の改善を奨励せねばならない。州議会は,各学校区において学校

AIt。11 S.1(1956 が維持される統一的なコモン・スクール制度を規定せねばならない。州議

修正),2(1938修正),

会は,師範学校や,その裁量により初等部門から大学に詮よぶ諸種の段階

4.5 の学校を制定する権限を有するものとする。

地域社会に一般的に普及される知識・学問は自由政府の保持のため必須 ニュー・ハンプシャー であり,かつ本州の各地域に教育の機会・利益を普及することはこの目的

(1784)

を推進するため高度に役立つので,本州政府の将来の時期を通じて文学・

AIt.83

科学の関心とあらゆるセミナリーや公立学校を奨励することは,州議会・知 事の責務でなければならない。

ニュー・ジヤージー

州議会は,5−18才の本州の全子弟の教育のため完全かつ有効な無償

(1947)

公立学校制度を規定せねばならない。

Ar t.V皿S. IV

本州に於いて学令全子弟の教育のため十分な,かつかかる全子弟に解放

ニュー・ <Lシコ (1912)

される統一的な無償公立学校制度が制定・維持されねばならない。本憲法

Art。X旺S.1,3

の規定する学校・カレッジ・大学・その他の教育機関は,州の独占的支配

下におかれる。

ニニL−@。 ヨーク  (1895)

州議会は,本州の全子弟が教育される無償コモン・スクール制度の制定・

Art.XI S.1 財政的保障を規定せねばならない。

州民は教育の特権への権利を有し,かつその権利を保障・維持すること ノース・カロライナ

は州の責務である。

(1868)

宗教・道徳・知識はよい政府と人類の幸福のため必要であるので,学校・

(1971修正) 図書館・教育手段が不断に奨励されねばならない。州議会は,全生徒に均 Art. I S.15 等な機会が与えられる普通の統一的な無償公立学校制度を課税,その他に

Art.D(S.1,2(1),

より提供せねばならない。州議会は,ノース・カロライナ大学や州議会が

8

賢明と認める他の高等教育機関を含む公立高等教育制度を維持せねばなら

なし(。

州民による政府における各投票者の高度な知性・愛国心・誠実・道徳性 はその政府の維持と州民の繁栄・幸福とのため必要であるので,州議会は

ノース・ダコタ (1889)

州の全子弟に解放される公立学校制度の制定・維持を規定せねばならない。

Art.V皿S.147, 州議会は,本憲法採択後第1回会期に,初等から師範・カレッジ課程まで 148 の全段階にわたる全州を通じての統一的な無償公立学校制度を規定せねば

ならない。

オ ハ  イ ォ (1851)

宗教・道徳・知識はよい政府のため必須であるので,学校・教育手段を

AIt. I S。7 奨励することは州議会の責務でなければならない。

AIt.VI S.3 公費によりまかなわれる州公立学校制度の組織・行政・支配について法

(1912修正) 律により規定がなされねばならない。

一1一

(8)

208

茨城大学教育学部紀要 第27号

オ ク ラ ホマ (1907)

本州の全子弟に解放される公立学校制度の制定・維持について規定がな

されねばならない。

A∫t.I S.5

Art.xm s.1

州議会は,本州の全子弟が教育される無償公立学校制度を制定・維持せ

ねばならない。

オ  レ ゴ ン (1859)

州議会は,統一的な普通のコモン・スクール制度の制定を法律により規

AIt.V皿S.3 定せねばならない。

ペンシルヴェニア (1968)

州議会は,本州の必要に資するため完全かつ有効な公教育制度の維持・

Ad.皿S.14 財政的傑障を規定せねばならない。

ロード・アイランド 州民間の知識・徳行の普及は権利・自由の保持のため必須であるので,

(1843)

公立学校を振興し,州民に教育の利益・機会を保障するに必要かつ適当な

Art.X且S.1

あらゆる措置をとることは,州議会の責務でなければならない。

サウス・カロライナ (公教育の監督権は,州教育長に賦与されるものとする。)

(1895)

Art.XI S.1

共和的政府形態の安定は州民の道徳・知性いかんによるもので,授業料

サウス・ダコタ (1889)

負担なしにすべての者に解放される普通の統一的な公立学校制度を制定・

Art.V皿S。1

維持することや,州民に教育の利益・機会を保障するためあらゆる適当な 措置をとることは,州議会の責務でなければならない。

知識・学問・徳行は共和的諸制度の保持のため必須であるので,かつ本

テ ネ シ ー (1870)

州の諸地方に教育の機会・利益を普及することはこの目的の推進のため高

AIt.XIS.12

度に役立つので,文学・科学を育成することは本州の将来のあらゆる時期 に知ける州議会の責務でなければならない。

知識の一般的普及は州民の自由・権利の保持のため必須であるので,有

テ キ サ ス (1876)

@AIt.V腹S1,10

効な無償公立学校制度を制定し,かつその財政的保障・維持のため適切な K定をすることは州議会の責務でなければならない。州議会は,「テキサ ス大学」と称する第1級の大学の維持・財政的保障・指揮を速かに制定・

組織・規定せねばならない。

州議会は,本州の全子弟に解放される統一的公立学校制度の制定・維持

ユ       タ  (1896)

を規定せねばならない。公立学校制度は,幼稚園や,初等・グラマー課程 Art.10 S。1,2 から成るコモン・スクールや,ハイ・スクール,農科カレッジ,州立大学

や,州議会が制定する他の学校を含むものとする。コモン・スクールは無

償とする。

ヴァーモント (1793) 徳行の奨励,悪徳の防止のため法律が不断に制定され,かつ適正な執行

Ch.丑S.64

がなされねばならない。

州議会は,本州を通じて学令全子弟のため無償の公立初等・中等学校制 ヴァージニァ (1971) 度を規定し,かつ高質の教育プログラムの制定・その不断の維持を保障す

Art.V皿S.1,9

るよう努めねばならない。州議会は,本州民の知性・文化・職業発展のた

め望ましい何らかの教育機関の制定・維持・運営を規定することができる。

その境界内に居住する全子弟の教育のため人種・体色・カスト・性のゆ

ワ シ ン ト ン (1889)

えの差別もしくは優先をすることなく豊かな規定をすることは,州の第一

Art.D(S.1,2

の義務でなければならない。州議会は,普通の統一的な公立学校制度を規 定せねばならない。公立学校制度は,コモン・スクールや,今後制定でき

きるハイ・スクール,師範学校,テクニカル・スクールを含むものとする。

(9)

上原:アメリカ現行州憲法に澄ける教育振興の目的・州責任於よび学校制度の制定・維持に関する規定

209

現 行 州 憲 法

教育振興の目的・州責任に関する規定

州議会は,一般法により完全かつ有効な無償学校制度を規定せねばなら ウェスト・ヴァージニァ ない。州議会は,道徳・知性・科学・農業の改善を促進・奨励せねばなら

(1872)

ない。州議会は,実行可能な場合,州内の盲者・ろう者・精神異常者のた

Art.X旺S1,12

め,かつ本州に壽ける普通教育の最良の利益が必要とするような学問教授

のため適切な規定をせねばならない。

州議会は,実行可能な限りほぼ統一的なディストリクト・スクールの制

ウィスコンシン (1848) 定を法律により規定せねばならない。かかる学校は,4−20才の全子弟

ArしXS.3,6 に対して無償かつ授業料負担なしでなければならない。州政府所在地もし くはその近くにおける州立大学の設置のため法律により規定がなされなけ

ればならない。

教育の機会への市民の権利は実際に承認されねぱならない。州議会は,

ワイオミング (1889) 学芸振興のため企図された手段・機関を適正に奨励せねばならない。

Art. I S.23 州議会は,各種・各学年の無償初等学校や,公共善が必要とし,かつ州

Art.V旺S.1

の資力が許す限りの技術的・専門的部門をもつ大学や,必要な他の教育機 関を含む完全かつ統一的な公教育制度の制定・維持を規定せねばならない。

注 本表は,S.S。Abrahamsoned.;Constitutions of the United

States,National and State,2vols.,1962を主要な資料として作成した。現

行州憲法はアルファベット順に列挙し,また憲法の条節表記に際しては次の略号を使用した。

Art.=Article(条)  S。=Section(節)  Pt.=Part(部)

Ch.ニChapter(章)

5 教育振興の目的・州責任に関する現行州憲  間接に規定している州憲法(25州憲法)

法規定の分析      また,特に教育振興の目的規定の表現に着目して,こ

      れらを細分類すれば,下記のとおりである。独立以後に澄ける諸州憲法の制定を通じて,教育振興       ・

       (1)「州民の権利と自由との保持」のための基礎としての目的およびその州責任に関するそれらの規定には,一

       州民に教育を普及することを教育振興の目的として規定応二つの基本的な型がみられたことはすでに述べたとお

       している州憲法(6州憲法)  カリフォルニア,メイリであるが,現行の各州憲法におけるこうした規定も,

       ン,マサチュセッツ,ミズリー,ロード・アイランド,その具体的表現にさまざまな違いはあるにしても,ほぼ

これらの型に即して分類することができる。ただし,こ

テキサス

      (2)「自由政府」,「州民による政府」,「共和的政府」こでは,アブラハムソン編集の『合衆国の憲法一国と

       もしくは「共和的諸制度」,「よい政府」もしくは「よ州との一』 (S.S. Abrahamson e己;Cons一

      い政府と人類の幸福」の保持の基礎として州民に教育をtitutions of the United States,Na一

      普及することを教育振興の目的として規定している州憲tional and State, 2vols., 1962, and

      法(12洲憲法) アーカンソー,アイダホ,インディAdditional Supplements.)に収録された現

       アナ,ミシガン,ミネソタ,ネブラスカ,ニュー・ハン

s各州憲法の関係規定を要約して作成した一覧表〔第1

       プシャー,ノース・カロライナ,ノース・ダコタ,オハ

¥〕を手がかりとしながら,それらにおける教育振興の

イオ,サウス・ダコタ,テネシー 目的およびその州責任に関する規定について,そのなか

       (3)「権利と自由との保持」,「自由政府」もしくはでも特に教育振興の目的に関する規定の表現に注目して,

       「共和的政府」の保持のためといった政治目的と関連さ次のような分類をまず行なってみた。

       せずに,ただ「知性・科学・道徳の改善」ないしは「能A 教育振興の目的を規定し,かつその州責任を直接・

(10)

210       茨城大学教育学部紀要 第27号

力の開発」などを教育振興の目的として規定している州  の憲法であるが,これらの州憲法のほとんどがほぼ1890 憲法(6州憲法)  アラバマタ4)イリノイ,カンサス, 年以後に制定されたものであること・そしてこれらの場 ネヴァダ,ヴァーモント,ウエスト・ヴァージニァ   合・教育振興の重要性ないしは目的については当然のこ

(4)特に「州民の教育を受ける権利」を保障する趣意に  ととしてあらためて記さず・むしろそのための州もしく おいて教育振興の目的を規定している州憲法(2州憲法) は州政府の責任を規定することの方に重点が吾かれてい ノ_ス.ヵロライナ35)ワイオミング       ることが指摘される。確かに,そこには今世紀における B 教育振興の目的を規定せず,ただその州責任のみを  州憲法制定の際の教育規定の取扱いについて一つの動向

直接・間接に規定している州憲法(25州憲法) アラ  をうかがうことができると思う・な為今世紀第二四半

スヵ,アリゾナ,コロラド,コネティカット,デラウェ  期を通じての諸州憲法の短文簡略化への運動に吾いて最 ア,フロリダ,ジョ_ジァ,ハワイ,アイォワ,ヶンタ  も中核的役割をはたしてきたといわれる「全国都市連盟」

ッキ_,ルイジァナ,メァリランド,ミシシッピ_,モ  (National Municipal League)の作成し

〃ナ,二_・ジャージーニュー・メキシコ,ニュ た「模範州憲法」(M・d・1St・t・C・n・tit・ti・n)

一. ?[ク,オクラホマ,オレゴン,ペンシルヴェニァ, の第6版(Sixth Edition・1963)に訊(ても・教育

サウス.カロライナ,ユタ,ヴァージニア,ワシントン, 振興の目的に関する規定はなく・もっぱら「州の全子弟

ウィスコンシン      に解放される無償の公立学校制度の維持とその財政的保

このように分類し,かつこれをもとの第1表とあわせ  障とを規定し・かつ公立の高等教育機関を含めて・望ま

費野鷺篇議雛宴雛籠叢雲禦蟷嚢瓢輩類差L轄灘駐

ようど半数にあたる25州の憲法であるが,そのうちわ  医S・9・01)といったぐあいである。

ずかにミズリー,ミシガン,イリノイを除く22州の憲   さらに第三には・ A・B両グループのいずれに属す

法が1890年以前に制定されたものであること,そして  るにせよ,ほとんどの州憲法に澄いて教育振興に関する それらに澄いてはがいして「州民の権利と自由との保持」 州もしくは州政府の責任が明記されており・しかもこの のため,あるいは「自由政府」,「州民による政府」,  ような明文規定を欠くアイオワおよびサウス カロライ

「共和的政府」,「よい政府」の保持のために,言葉を  ナの2州憲法の場合でも・「コモン・スクール・その他 かえていえぱ,州民の民主的社会および政治の保持・安  の教育機関」の運営もしくは「公教育の監督」に関する 定の基礎として,教育振興の目的・重要性が強調される  権限を州教育委員会もしくは州教育長に賦与する規定が

とともに,その責任が各州もしくは各州政府に課せられ  澄かれていることがあげられる。いうまでもなく・合衆

ていることがあげられる.もちろん,わずかにノース.鴎法慨第1・条28)(C・n・tituti・n・f th・

ヵロラィナ澄よびワイオミング州憲法の場合,一歩進ん  United States・Amendment X・1791)により・一

で,「権利宣言」のなかで州民の教育を受ける権利を保  般に教育に関する事項は「それぞれ各州もしくは各州民 障する趣意において教育振興の目的が規定されるまでに  に留保される」権限の一つと解されているが・これに対 いたっていることは,すでに指摘したと澄りである。ま  応して各州憲法に診いても教育に関する事項が州の責任 た,これらAグループの州憲法のうちわずかな例外に属  であることを直接・間接に規定しているわけであり・こ するとはいえ,タサチュセッッρ6)オハイオ,ネブラス  こにアメリカ教育行政の基本構造の一端をうかがうこと カ,ノース・カロライナ,ミシガンの若干州憲法では,  ができると思う。

「宗教・道徳および知識の普及」のために教育の振興が   なお・第四に・州民の教育の機会に関する規定につい 奨励されなければならないとされ,明らかに宗教の普及  て付言すれば・ほぼ半数に近い州憲法が何らかの表現で が教育振興の目的の一つにあげられていることも,注目  もってこれに言及している。たとえば・マサチュセッッ・

されるところであろう。      ニュー・ハンプシャー・テネシーの3州の場合には・州

第二には,Bグループとして教育振興の目的を規定し 民の間に「教育の機会と利益とを普及すること」とあり・

ていないのはAグループ同様ちょうど半数にあたる25州  また・アラスカ・アーカンソー・デラウエア・ミシシツ

(11)

上原:アメリカ現行州憲法に澄ける教育振興の目的・州責任および学校制度の制定・維i持に関する規定 211

ピー,ミズリーモンタナなどを含むほぼ20州の場合  (3)「無償公立学校」(fIee public school)制度

には,「すべての者」(alLOI all pelsons)・「す  を制定(規定)ないしは維持することを州もしくは州政 べての子弟」(all children・or every child)に  府の主要な責務としている州憲法(16州憲法)  コロ 教育もしくは学校制度が提供もしくは解放されるべきこ  ラド,コネティカット,デラウェア,フロリダ,メアリ

とを定めている。これに対して,Aグループに属する州  ランド,ミシガン,ミシシッピー,ミズリー,ニュー・

のうち,わずかながらインディアナ変よびサウス・ダコ  ジャージー,ニュー・メキシコ,ノース・カロライナ,

タ州の場合には,「すべての者にひとしく解放される」  ノース・ダコタ,オクラホマ,サウス・ダコタ,テキサ

(equally open to all)コモン・スクールもしく  ス,ヴァージニァ

は公立学校制度を制定すべきこととし・特にノース・カ  (4)「無償学校」(free school)制度を規定ないし

・ライナ州の場合には,「すべての生徒に均等な機会   は維持することを州もしくは州政府の主要な責務として

(epual oPPortunities for all students)が  いる州憲法(2州憲法)  アーカンソー,ウェスト・

与えられる」公立学校制度を提供すべきこととしている。 ヴァージニァ

このノース・カ・ライナ州肋ける教育の機会鱒の原 (5)「コモン・スクール」(co㎜on school)制 則を一層明文化した規定は・ごく近年の1971年に修正  度を制定(規定)することを州政府の主要な責務として

追加されたものであるが・今後その他州憲法への影響も  いる州憲法(5州憲法)  カンサス,ケンタッキー,

十分予想されよう。       ネヴァダ,オレゴン,ワシントジ29)

4学校制度の制定・繍に関する現1ラIllll憲法 (6)「無償コモン゜スクーノレ」(f・ee co㎜n schoo1)

@      州憲法) カリフォルニァρ゜)インデ,アナ,ネブラ 現行各州憲法において教育振興のための州もしくは州  スヵ,ニュ_.ヨ_ク,ユタ31)

政府の責任が直接・間接に規定されていることについて  (7)「公立無償コモン・スクール」(public free

は・すでに述べた。そこで・次にはそのようなll1もしく co㎜on schoo1)制度を規定することを州政府の

は州政府の責任に関する具体的な規定内容が問題となつ  責務としている州憲法(2州憲法)  アイダホ,モン てくるが,それは,第1表からもただちに見てとること  タナ

ができるように・州によってきわめて多様である。しか  (8)「無償ディストリクト・スクール」(free dis一

し・同表に澄ける各州憲法の規定内容について・特に州  trict school)制度を規定することを州政府の主要

もしくは州政府の教育振興に関する責任の具体的表現の  な責務としている州憲法(1州憲法) ウィスコンシン ちがいに注目してみれば・やはりこれらをいくつかのグ  ⑨ 学校制度の制定・維持について言及することをさけ,

ループに分類整理することができる。たとえば・下記の  これを抽象的な表現で,もしくは間接的に州もしくは州

ように分類してみることも・十分便宜であろう。    政府の責務としている州憲法(5州憲法)  ジョージ

(1)「公立学校」(public school)制度を制定(規  ア,テネシー,ヴァーモント,齢よびアイオワ,サウス.

定)ないしは維持すること・あるいは奨励・振興するこ  ヵロライナ

とを州もしくは州政府の主要な責務としている州憲法    このように,全50州憲法のうち,実に45州憲法(上

(・4州憲法)アラバマ・アラスカ・ア ゾナ・カリ 記(1)から(8)まで)32)が「公立学校」,「公教育」,「無 フオルニア・ハワイ・ルイジアナ・メイン・マサチユセ  償公立学校」,「無償学校」,「コモン・スクール」,

ッツ・ミネソタ・ニュー ハンプシャー・オハイオ・ロ  「無償コモン・スクール」,「公立無償コモン・スクー

一ド アイランド・ユタ・ワシントン         ル」,「無償ディストリクト・スクール」の制度を制定

(2)「公教育」(public education)制度を規定す  (規定)ないしは維持,あるいは奨励・振興することを

ることを州もしくは州政府の主要な責務としている州憲  州もしくは州政府の主要な責務として明記している。

法(3州憲法)  イリノイ・ワイオミング・ペンシル   もちろん,もとの第1表にかえって参照すればわかる ヴェニア      ように,それぞれの州憲法規定において,かかる州もし

(12)

212       茨城大学教育学部紀要 第27号

くは州政府の責務の対象とされるこれらの学校制度の範  あるが,これについては,第1表にみられるハワイ・イ 囲はかならずしも一様ではないし,またこれら以外の学  リノイ,ミシガン,ニュー・ヨーク・ペンシルヴェニァ・

校制度や教育活動への言及も少なからずみとめられる。  テキサスの場合を含めて,ほとんどの州憲法が関係規定 たとえばマサチュセッツ州憲法では,「公立学校」は単  を有している。さらに,アリゾナ,ウェスト・ヴァージ に初等段階のもののみをさすにすぎないが,同時にグラ  ニアなど若干の州憲法において,盲者・ろう者・唖者な マー・スグールやハーヴァード・カレッジに加えて,学  いしは心身障害者に対する特殊教育に言及していること 芸促進のためにその他の私立団体(学校)を奨励・振興  や,ハワイ,ノース・カロライナのほか,第1表には表 することも州政府の責務としている。なお,同じニュー・ 示できなかったが,ミズリー,ミシガンなどの州憲法に

イングランド地方に位置するメインおよびニュー・ハン  澄いて,「公立図書館」(public libraIies)制度

ブシャーの2州憲法の場含にも,ほぼ類似の規定がみら  の制定・奨励を規定していることも,あわせて付記して れる。これに対して,コネティカット,ミシガン,ヴァ  澄きたい。

一ジニアの3州憲法における「無償公立学校」は明らか   な於,最後(9)に列挙した,残る5州憲法も,抽象的な に初等・中等段階のものをさし,かつ特にコネティカッ  がら「市民のために適切な教育」を規定すること,もし

ト州の場合には,そのほかにコネティカット大学     くは「文学診よび科学を育成すること」,もしくは「徳

(University of Connecticut)を含む高  行の奨励と悪徳の防止とのために」法律を制定および執

等教育制度を維持することも州政府の責務としている。  行することを州政府の責務とし,あるいは「コモン・ス また,アラバマ州憲法に澄ける「公立学校」は7才から  クール,その他の教育機関」の運営や,「公教育」の監

21才までの青少年を対象とし,コロラド,ミシシッピー, 督の権限を州教育委員会もしくは州教育長に賦与するこ ミズリー,ニュー・ジャージーの4州憲法に澄ける「無  とを通じて,間接的ながら,同様な州政府の責務を黙示

償公立学校」は,それぞれ6才から21才まで,21才を  していると解することができる。

越えない年令まで,5才から18才までの青少年を対象   このようにみてくると,現行各州憲法では,がいして

とし,ネブラスカ州憲法に於ける「無償コモン・スクー  州もしくは州政府が公立学校もしくはコモン・スクール ル」澄よびウィスコンシン州憲法に齢ける「無償ディス  を中心にそれぞれの学校制度を制定(規定)し・かつこ

トリクト・スクール」は,それぞれ5才から21才まで, れを維持もしくは奨励する責任を負うことを・その財政

4才から20才までの青少年を対象としているが,これ  的配慮も含めて,規定していることが確かに指摘される。

らは中等段階にまでまたがる就学年令をさすものと解さ      5 結   語

れる。特にミズリー於よびウィスコンシンの両州憲法で

は,そのほかに州立大学などの維持あるいはその設置に   アメリカでは,早くも初期植民地時代に,特にビュー 関する規定を設けることも州政府の責務としている。さ  リタンたちの移住したニュー・イングランド地方におい らに,これに対して,アリゾナ,カリフォルニア,ユタ  て,主にかれらの固有な宗教的立場から全住民への教育 の3州憲法における「公立学校」,ワイオミング州憲法  の普及が重視され,そのために植民地政府による法的規 における「公教育」,ノース・ダコタ州憲法における   制のもとに義務教育および公立学校制度が維持されるよ

「無償公立学校」は,初等から高等までの全段階にわた  うになった。しかも,これが先例になって・独立以後・

る公立学校をさし,その制定や維持に関する規定を設け  それぞれの州憲法の制定を通じて,新たな民主的政治な

ることを州政府の責務としている。      いしは民主的社会の保持・安定をはかるためには広く知

ついでながら若干付言すれば,全50州憲法のうち半  識や道徳を普及しなければならないという・主に政治的・

数をやや上まわる州憲法が無償の公立学校もしくはコモ  社会的立場から,基本的には州もしくは州政府が教育振 ン・スクール制度を明確に規定している。また,そのよ  興の責任を負うとする,アメリカ教育行政上の重要な一        ㌦

、な無償規定の有無は別としても,公立学校ないしはコ  つの原則が確立されるにいたった。現行州憲法では,そ

モン.スクールを中心とする学校制度の制定・維持は当  のような意味に澄いて,州もしくは州政府が公立学校も

然にその財政的保障をともなわなければならないわけで  しくはコモン・スクールを中心に学校制度を制定(規定)

(13)

上原:アメリカ現行州憲法における教育振興の目的・州責任および学校制度の制定・維持に関する規定 213

・維持もしくは振興・奨励する責任を有することを直接・ 10)RNThorpe ed。;The Federaland 間接に規定している。したがって,かかる憲法規定にも   State Constitutions,Colonial

とづき,各州は諸種の関係法規を制定して,それぞれ独   Charters,and Other OrganicLaws 自の学校制度を保持しているのである。         of the States,Territories,and

もっとも,かなり多くの州憲法では,上記のような学   Colonies,now−or−heretofore 校制度の制定・維持もしくは振興・奨励を州もしくは州   FLorming the United States of

政府の責任とする原則規定を澄くだけにとどまらず,そ   America,1909, vo1.3, P.1907.な澄,州憲 の組織や運営に関する若干の重要な諸事項,たとえば学   法の条節略号については,第1表の注を参照された 校設置・就学・教育内容・教育行政および財政などにつ   い。以下,この略号による。

いて,具体的に何らかの言及をしていることも事実であ  11)E.P. Cubberley;PublicEducation る。な澄,これらのうち,教育行政の場合に関しては,   in the United States,revised 州および地方の教育委員会制度に関するものを中心にす   and enlarged ed.,1947,P.95.

でにとりあげので,その他の諸事項の場合に関しても, 12)マサチュセッツ州憲法の制定年次を示す。以下,

機会をあらためて順次とりあげ検討していきたい。     このように略記する。

13) F・NThorpe;oP・cit・, voL 3,

〔注澄よび引用・参考文献〕       pp.1907−08.

1) R.LEbel e(工; Encyclopedia of    14) H G.Good;AHistory of American Educational Research,4th ed.,       Education,2nd ed., 1962, p.89。

1969,P.420.      15)現行ニュー・ハンプシャー州憲法のものと同一で 2)E・P.Cubberley;Readings inPublic   あるので,第1表の該当欄を参照されたい。

Education in the United States,  16)1785年の土地条令および1787年の北西部領地条

1934,p.12.ただし,カバリーの指摘するように,   令の詳細については,拙著『アメリカ教育行政の研

ドーチェスター・タウンのものがアメリカ最初の無償   究一その中央集権化の傾向一』18−22ページを

公立学校であるということについては,疑問の余地が   参照されたい。

ないわけではない。       17)P.Monloe;Founding of American 3)E.P. Cubberley;PubIic Education   Public School System,1940,p.196。

in the United States, Ievised and  18) RN. Thorpe;op. cit., vo1.5,p2910。

enlalged ed.,1947,P.15.      19) ibid.;voL 2,PP.1068−69。

4)川崎源著 ホレース・マン研究  アメリカ公立学  20)ibid.;voL5,p.2802.

校発達史  昭34 11ページ。      21)ibid.;vol.7,P.4119.

5) E.P. Cubberley;Readings in Public  22) ibid.;vol.1,p.545.

Education『in the United States,  23)S. S.Abrahamson ed.;Constitutu一 4th ed.,1934,PP.16−17.       tions of the United States,

6) ibid.;pp.18−19.       National and State,1962, vo1.1,

7) E.P.Cubberley;Public Education     Constitution of Connecticut,p18。

in the United States, revisedand    (Additional Supplement,1969.)

enlarged ed.,1947,pp.19鴎20.      24)第1表には表示しなかったが,1956年のアラバ 8)川崎源 前掲書 16ページo       マ州憲法修正によリムmendment CXIにおいて 9)E.P. Cubberlev, PublicEducation in  「個々の生徒の意欲と能力とを育成・振興すること the United States, revised and en豆arged   は,アラバマ州の政策である。」という規定が増補

ed・・1947・PP・19−20・       されている。

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