麟幽育繍
基礎教育科目である地域科学論1における授業内容及び
成績評価の改善への試み
一オムニバス型授業の特性と学生の反応を踏まえて一
池本 敦,石黒純一,長沼誠子,西川竜二,天野恵美子
Improvement of Course Content and Evaluation Method for Leaming Result in Regional Stud.ies I Class as General Education
Atsushi IKEMOTO,Junichi ISHIKURO,Seiko NAGANUMA,Ryoji NISHIKAWA,and Emiko AMANO
要約
教育文化学部共通の基礎教育科目である地域科学論1の授業内容と成績評価の改善効果を検証するため に,試験やレポートによる成績結果を分析し,授業評価とアンケート調査を行った。授業計画を見直し,
試験とレポートの併用と総合討論による評価を行った結果,それぞれの項目の特性が明らかになった。
試験の成績は出席率と相関し,「普段の学生の努力」を反映していた。一方で,レポートの成績は,試験 の成績や出席率とは相関しておらず,受講効果を反映した学生の達成度を判定するのには不十分である ことがわかった。本授業は5名の教員による5分野を扱ったオムニバス型授業であるが,学生の興味・関 心は各分野に大きな偏りが見られた。これらは概ね当該分野に対して学生が感じた意義と相関していた。
しかし,複数の分野を扱うオムニバス型形式自体は支持されており,多様な分野を学習する意義は学生 に理解されていた。また本授業は,地域科学課程よりも人間環境課程所属の学生の指向に合致している ようであった。これらの学生の指向・特性を踏まえて,教育文化学部・基礎教育科目のカリキュラムの 改革を検討していく必要がある。
1.はじめに
教育文化学部の教養基礎教育のカリキュラムに おいて,地域科学論1は基礎教育科目の学部共通 科目である人間・文化理解科目群に位置づけられ ている選択必修科目である。人間・文化理解科目 群は,教育学部から教育文化学部への改組に当た って,教員志望の有無に関わりなく,教育文化学 部所属の学生として共通に持っていることが必要 であると考えられる基礎知識,問題意識,技術・
方法論を身につけることを目的として開講された 経緯がある。4つの群から構成され,A群(人間 教育・人間形成への幅広い理解),B群(地域社 会が抱えている課題への認識),C群(国際化,
異文化理解のあり方),D群(自然との共生,環
境問題)の中で,地域科学論1はB群に位置づけ られる。教育文化学部所属学生のうち,学校教育 課程以外の3課程では,少なくとも各4群の中で,
それぞれ1科目2単位以上を履修することが義務 付けられている。
このような背景から,学部1学年の過半数を越 える150名以上の受講者が地域科学論1を毎年受 講しており,本授業の受講生を対象にした調査は,
教育文化学部学生の全体像をある程度反映したも のになると考えられる。平成17年度の受講生は 158名(放棄した学生を除く)であり,各課程・
学年(入学年度)の構成は表1の通りであった。
平成17年度入学生では,学校教育課程では8%,
地域科学課程では100%,国際言語文化課程では
32%,人間環境課程では83%の学生が受講してい た。地域科学課程及び人間環境課程の学生は高い 割合で本授業を履修していたことになる。
全学・学部の中期目標・中期計画の中で,学習 者主体を目指した授業カリキュラムの改革が計画 されているが,そのためには現在行われている授 業の現状を把握することが重要である。特に,人 間・文化理解科目群は,教育文化学部のアイデン
ティティーの基礎をなす科目であり,改革の必要 性が指摘されているにも関わらず,その意義や授 業内容の妥当性,学生の達成度などの実態を把握 する基礎データに乏しいのが現状である。以上の ような観点から,本論文では,地域科学論1の授 業内容及び成績評価の改善を試み,それらに対す る学生の反応や特性を調査したので,結果を報告
する。
表1.地域科学論1(平成17年度)を受講する学生の構成(放棄した学生を除く)
課程 学校教育地域科学国際言語人間環境合計
1年次(H17入学者)
2・3年次(Hl6以前入学者)
合計
81 69 21 0 35
9 71 25 53
148 10 158
2.授業の概要
地域科学論1の授業は,教育文化学部地域科学 課程生活者科学講座に所属する5名の教員による オムニバス形式で行われた。その概要は,表2に 示した通りである。本授業の目的は,地域社会の 今後の方向性を考えるために,地域の諸問題を
「生活者」の視点から捉え,地域での生活を科学 的に理解することである。したがって,本授業は 生活者科学の概論及び生活上の諸問題と地域社会 との関係を扱う内容となっている。オムニバス形 式の授業の問題点として,授業全体としての目的 や系統論理の組み立てが希薄になることが指摘さ れている(1)。そこで,本授業では,表2のよう に15回の授業のうち最初の1,2回目と後半の14 回目に総論的内容を配置し,その間に各論を挟む ような構成とした。
各論は,5名の担当教員がそれぞれ衣,食,住,
健康,消費の5分野を担当し,講義形式でそれぞ れ2回,合計10回行った。それに先だって,学生 の問題意識を授業に反映させるために,初回の授 業で受講学生が普段考えている「生活上の問題点」
に関する調査を行った。調査では,各自が考える 問題点をそれぞれ5分野に分類して回答してもら った。各論の講義では,調査で明らかになった学 生提起の「生活上の問題点」に触れながら各分野 を概説していく形をとり,学生の意見を反映させ ながら授業を進めていくように配慮した。
本授業は,地域における身近な日常生活を科学 的に見つめ直す態度をもち,生活に密接した課題
げを発見できること,さらに問題解決のための斬新 な発想や論理的な思考に基づく提案・発表,そし て討論ができることを到達目標としている。これ らの目標を学生が達成したかどうかを評価するの は画一的な方法では難しいことから,レポー・ト,
試験,発表討論会の3つの方法により複合的に評 価を行った。レポートは,各分野の教員が複数の 課題を設定し,その中から学生が最も興味をもっ た課題を1つ選択するという形式で行った。レポ ート課題は12回目の授業終了後に提示し,13回目 の試験の開始前に提出してもらった。レポートの 内容は,問題点の発見及びそれを調査する能力,
論理的な思考及びそれに基づいた文章の作成能力 について評価した。試験は13回目の授業で行い,
これまでの総論・各論で得た基礎知識や考え方が 身に付いたかどうかを見ることに主眼を置いた。
教員は1週間でレポート及び試験の採点を行い,
14回目の授業で採点結果の講評及び内容の解説を 行った。大学の授業では,この部分が省略される 場合が多いが,試験・レポートの評価後にその解 説を行うことは,学生の理解が不十分であった点 を適切に補うという点で,学習内容の達成度の向 上には非常に重要である。秋田大学の学生からも,
試験やレポートの事後フォローが学習過程におい て必要であるとの意見か出されている(2)。
最終回の15回目の授業はレポート内容に関する 発表討論会を行い,提案・発表に関するプレゼン テーション能力を評価した。時間的制約から,
158名の受講者全員にプレゼンテーションを課す
ことは不可能なので,特にレポートが優秀であっ た学生を各分野からそれぞれ指名して行った。発 表者以外の学生については,積極的に討論に参加
する姿勢や適切な発言であったかどうか等を評価
した。
表2.地域科学論1の授業の概要
授業回数担当教員 分類 授業内容 その他
1 池本 総論 授業ガイダンス 学生が考える生活上の問題点を調査
2 全教員 総論 生活者科学とは何か?
3 石黒 各論 衣生活に関わる課題1
4 石黒 各論 衣生活に関わる課題2
5 長沼 各論 食生活に関わる課題1
6 長沼 各論 食生活に関わる課題2
7 西川 各論 住生活に関わる課題1
8 西川 各論 住生活に関わる課題2 授業評価(形成的評価)実施
9 池本 各論 健康生活に関わる課題1
10 池本 各論 健康生活に関わる課題2
11 天野 各論 消費生活に関わる課題1
12 天野 各論 消費生活に関わる課題2 レポート課題の提示
13 池本 試験 講義内容に関する試験 レポートの提出、アンケート調査の実施
14 全教員 総論 レポートと試験結果の講評と討論 レポート発表学生の指名
15 全教員 討論会 学生によるレポートの発表討論会 授業評価(総括的評価)実施
3.試験による成績評価
受講者が多いこと及び採点期間が短いことか ら,試験は全問選択式で行い,5分野各4問(各 1点)で20点満点とした。大学入試センター試験 をモデルとした形式で出題し,正しい理解が得ら れている場合のみ正解となるように問題文・選択 肢を工夫して行った。試験の総得点の分布パター ンを図1に示した。受験生158名の平均点は10.2点
(得点率52%),最高点16点(得点率80%,2人),
最低点5点(得点率25%,1人)であった。分布 パターンは正規分布の形を示し,全体としては試 験の形式は妥当であったと考えられる。しかし,
出題に当たっては,平均点が7割程度になるよう に想定して問題を作成しており,結果は想定より も低いものであった。毎回の授業で提出を義務づ けている出席票を兼ねたコミュニケーションペー パーからは,授業内容を学生が十分に理解してい ることがうかがわれていたが,このような学生が 記述した感想と実際に試験を行って評価した達成 度とは,あまり一致しなかった。
試験の問題別正解率を図2に示した。各分野の 平均正解率は,衣生活(A)17.9%,食生活(B)
57.8%,住生活(C)33.2%,健康生活(D)82.6%,
消費生活(E)68.4%であり,分野によって大きな
差が見られた。各論の授業はAからEの順番で行 っており,総じて授業後の時間経過が長い科目ほ ど正解率が低い傾向にあり,学生の感想からも,
「学習後時間が経っているものほど,記憶が薄れ ている」との指摘があった。各問題の正解率では,
A1が1.9%,C1が10.8%,と極端に低かった。
A1は着衣の「clo値」の意味を問う出題,C1は 住宅の造りや秋田県の延べ床面積や持ち家率を問
う問題であり,それぞれ専門的知識が要求される 出題であった。一方で,D2が94.3%,E1が 92.4%と9割を越える高い正解率であった。D2 は健康と食品の情報に関する問題,E1は企業の マーケティング・ミックスと消費者に関する問題 であり,いずれも専門的知識よりも常識程度の知 識を用いて考察すれば正解に辿り着くような出題 であった。全体的に専門的知識はあまり定着して いないが,既存の知識を用いた身近な生活事象に 対する考察力は身に付いていたことが伺える結果
であった。
各分野の得点分布を図3に示した。衣生活分野 は0点が71人と全体の44.9%に該当する人数であ った。また,1点が63人であり,0点と合わせる と144人と91.1%に該当する人数であったことか ら,難易度が非常に高かった,あるいは学習達成
度が低かったといえる。一方で,健康生活分野は 全問正解の4点が80人と全体の50.6%に達したこ とから,難易度が低かった,あるいは学習達成度 が高かったことがわかる。学習達成度を正確に測 定するには,問題の難易度が適切であることが重
要であるが,これらは各教員の主観に委ねられて いる。こうした点をどのように設定するのかが課 題であるが,このような分析を今後も続けていく
ことが重要であると考えられ為。
図1.試験の総得点の分布(20問・各1点の配点で20点満点)
35 30 25
蕪20
く15
10
5 0
4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
得点
図2.試験の間題別正解率(点線は各分野の平均正解率)
︵ま︶辮膿固
100
80
60
40
20
Al A2A3A4Bl B2B3B4Cl C2C3C4Dl D2D3D4El E2E3E4 衣生活 食生活 住生活 健康生活 消費生活
0
一 一 一 一 甲 願 需
口 一 一 一 一 一 一
印 一 曹 騨 一 騨 P
一 一 一 一 一
o o 一 甲 一
図3.各分野の得点分布(各分野4問・各1点の配点)
A.衣生活分野 B.食生活分野 C,住生活分野 80
60懸 一く40
20
0 0 2得 点 3 4
80
60麟
・く40
20
D,健康生活分野
4
得 2点 3 0
E,消費生活分野
80
60蕪 醐く40
20
0 0 量 2
得点
﹂− 13
80
60 無
<40 20
0 0 得2 点 3 4
80
60懸
・く40
20
0 0 得2 点 3 4
4.レポートの評価と発表討論会を加味した総合 成績評価
レポートは,各分野の教員が複数の課題を設定 し,その中から学生が最も興味をもった課題を1 つ選択するという形式で行った。各分野における
レポート提出数及びレポートの成績評価の結果を 表3に示した。レポート提出数は各分野によって 大きな偏りが見られた。健康生活分野の課題は92 名(58。2%)の学生が選択した。健康生活分野の
レポートのA評価は77名で,77。2%の割合を占め た。これは他分野のA評価の割合と比較して高い 値であった。学生が抱く興味・関心だけでなく,
健康生活分野のレポート課題が作成しやすかった ために提出数が集中した可能性が考えられる。
表3.各分野におけるレポート提出数と成績評価
分野 衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活 合計 提出人 37 15 4 92 10 158
成績 価
A B C D 15(405) 5(333) 1(25,0) 71(77.2) 2(20.0)
7(45,9)9(60,0) 3(75.0)18(19.6)8(80.0)
(13.5) 1(6.7) 0 3(33) 0(0)
(0) 0(0) 0(0) 0(0) 0(0)
94(595)
5(34。8)
(5.7)
0(0)
()内は割合(%)を表す
総合成績評価は以下のように行い,100点満点 で行った。出席が3分の2以下,試験の不受験,
レポート未提出の3項目のいずれかに該当する学 生は評価の対象外とし,授業放棄と見なした。
・出席点 30点(15回×2点)
・試験 20点
・レポート40点(A=40点,B=30点,
C=20、点,D=10、点)
・発表討論会,受講態度 10点
最終成績は総合得点について,A≧83>B≧68>
C≧58>Dの基準で評価し,各課程別の成績は表
4のようになった。学校教育課程及び地域科学課 程の学生の成績が比較的良く,国際言語文化課程 の学生の成績が最も低かった。全体では,A63名
(39,9%),B73名(46.2%),C20名(12.7%),D 2名(1.3%)となり,妥当な分布となった。
表4、総合成績評価
評価 学校教育地域科学国際言語人間環境 合計
A B C D
5(55、6) 30(42.3) 9(36.0) 19(35。8)
(33.3)33(46,4)10(40。0)27(50.9)
(1L1) 8(11.3) 5(20.0) 6(11.3)
(0) 0(0) 1(4.0) 1(1。9)
63(39,9)
3(46.2)
0(12.7)
(1.3)
合計 9 71 25 53 158 o内は各課程または合計の中での割合(%)、を表す
試験とレポートの得点と出席回数との関係を図 4に示した。試験の得点とレポートの得点との関 係を見たところ(図4A),試験の得点が10〜11 点である群が最もレポートの成績の平均点が高か った。学生全体の試験の平均点が10.2点であるの で,試験の成績が平均的な群のレポートの評価が 高かったことになる。以上のように,試験の得点 とレポートの得点は,ほとんど相関しなかった。
出席回数と試験の成績との関係では(図4B),出 席回数が最も多い群が最も試験の平均点が高く,
出席回数が最も少ない群が最も試験の平均点が低 かった。このように,出席回数と試験の成績は,
ある程度相関することが分かった。一方で,出席 回数とレポートの成績の間には,ほとんど相関は 見られなかった(図4C)。これらのことから,試 験とレポートの評価は,かなり異なった成績評価 尺度であるといえる。授業によっては,試験だけ を課す場合やレポートのみで評価する場合もある ので,これらが異なった学生の能力を捉えている ことに留意する必要がある。
40
5 0 5つ﹂ 3 2貿降e屈︑嘩e凶1薫ム
20
A
図4.試験とレポートの得点と出席回数の関係 40 11
5〜7 8〜9 10〜11 12〜13 監4〜16
(19) (32) (59) (39) (13)
試験の得点[()内は人数]
0 凸ソ便降e髪嘩e麟寵
10〜11 12 13 14 15
(6) (9) (15) (39) (89)
出席回数[()内は人数]
5 0 ︷﹂ ヨ 硬降e艇嘩eムー賢ム
20
10〜11 12 13 14 15
(6) (9) (15) (39) (89)
出席回数[()内は人数〕
5.授業評価及びアンケート調査により明らかに なった学生の反応
秋田大学教育推進総合センターの規定に従い,
第8回目と最終回の第15回目に授業評価を行った
(表5)。第8回目に行った形成的評価では,授業 評価に関する7つの項目の全てが3以上であっ た。第15回目に行った総括的評価では,これらの 項目全ての平均点数が上昇していた。特に「授業 はよく準備されていましたか」,「授業に対する教 員の熱意が感じられましたか」の項目は4.0を越え
ており,教員の授業改善に対する取り組みが評価 されたといえる。一方で,「授業の内容が十分に 身に付きましたか」の項目は最も低かった。これ は授業の達成度が不十分であったことを意味する が,教員の授業実施に関する努力はある程度評価 されているので,受講学生自身の予習・復習など の自助努力が必要であると考えられる。今後,こ れらを促すような教員の指示や工夫を強化する必
要がある。
表5.授業評価の結果
項 目 形成的評価(第8回実施)総括的評価(第15回実施)
授業の目的や目標が明確に説明されていましたか 授業はよく準備されていましたか
授業に対する教員の熱意が感じられましたか 授業の内容や進め方は興味深いものでしたか 説明は十分にわかりやすいものでしたか
授業は学生の理解度に配慮した形で進められたと思いますか 授業の内容が十分に身に付きましたか
3.63 3.95 3.67 3.24 3.26 3.22 3。12
3.96 4.15 4.02 3.81 3.68 3.58 3.52
(そう思う:5、どちらかといえばそう思う:4、どちらともいえない:3、どちらかといえばそう思わない:2、そう思わない:1)
本授業独自に設定した質問項目についてのアン ケート調査を第13回目の授業で行った(図5,6)。
質問1は受講前に最も関心の高かった分野を問う ものであるが,分野によって大きな差があり,健 康生活分野の関心が最も高く,住生活分野の関心 が最も低かった(図5A)。もっとも,学生の興 味・関心にはマスメディアの影響が大きく,本授 業が現在テレビ・新聞等をにぎわせている「マン ションの耐震設計偽造問題」の事件発覚後であれ ば,異なる結果になっていたかもしれない。質問 2では,受講後にどの分野に関心がわいたかを問 うたが,質問1と同様,健康生活分野の授業内容 の興味・関心が最も高かった(図5B)。健康生活 分野は,栄養学を中心として取り扱ったので,食 生活分野のトピックを含んだものである。また,
消費生活分野の授業内容の興味・関心は,受講前 と比較して著しく上昇した(図5A,B)。最初は あまり認識されていなかった消費生活分野の興 味・関心を授業によって高めることに成功したと いえ,授業効果が高かったことがうかがえる。質 問3は,どの分野が有意義であったかを問うもの であるが,これは質間2と同様に,健康生活分野 と消費生活分野の評価が高かった(図5C)。質問 2と3を比較すると,興味・関心と有意義性が非
図5、アンケート調査の結果(質問1〜3)
40
ハ
邑
くロ
羅20
10
0
40
ハ 邑
くロ
醸20
10
0
A。質問1
地域科学論1を受講する前に、
・どの分野に最も関心がありましたか
衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活
B.質問2
地域科学論1の授業内容で、
どの分野に最も興味・関心が わきましたか
衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活
40C。質問3
地域科学論1の授業内容で、
(30 どの分野が最も有意義でしたか 邑
くロ20
麗
10
0 衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活
常に相関していることが分かる(図5B,C)。つ まり,学生の興味・関心を惹くには,当該分野及
び授業で扱う事項の意義を十分に学生に認識させ ることが必要であるといえる。
図6.アンケート調査の結果(質問4,5)
質問4
地域科学論1の授業はオムニハ ス形式で進められ ましたが、これについて、どのように思いましたか。
ア.多分野(個別分野、各論)の話がきけてよい イ.パラハラでよくない
ウ.1人の教員が担当した方がよい
エ.総論は授業前半と後半にあるので、その間は 今の各論的内容でよい
オ.各論より総論的内容重視がよい
カ,今の生活者科学の分野の講義内容でよい キ,生活者科学の分野以外の内容を扱って欲しい
質問5
地域科学論1は、あなたがこれまで受講した他の オムニバス形式の授業と比較して、どうでしたか。
ア.担当教員の連携がとれていてよい
イ.担当教員の連携がとれていないのでよくない ウ.同じような程度である
エ.一概には判断できない オ.わからない
80
60 パ琶
くロ40、
郵 20
0
40
A
ア イ ウ エ オ カ キ
30 パ§
〈ロ20
羅 10
0
オ
B
ア イ ウ 工
図6の質問4と5は本授業で行ったオムニバス 形式についての評価を問うものであるが,「多分 野の話がきけてよい」という肯定的な評価を受け,
オムニバス形式を否定する意見は少なかった(図 6A)。地域科学論1で扱った生活者科学分野に ついても肯定的意見の方が多かった。本授業は,
生活者科学選修の概論的な内容であるが,学生の 興味・関心を引きつけ,その意義も十分に伝わっ ており,学部共通科目の人間・文化理解科目とし ても役割を十分に果たしていると考えられる。質 問5はオムニバス形式の授業の欠点となる担当教 員の連携などについて本授業と他授業を比較した 感想を問うものであるが,教員の連携については
肯定的な評価の方が多かった(図6B)。また,
他のオムニバス型授業との比較については,一概 には判断できないという意見が多かった。1年次 が受講する初年次ゼミなどのオムニバス形式の授 業では,本授業とは開催形式が異なっており,比 較出来ないとの意見が自由記述欄に見られた。
6.授業効果や意義の分析と課程問の学生の比較 図7Aは質問1「受講前の関心」に対する質問
2「受講後の興味・関心」及び質問3「授業内容 の有意義性」の比率を見たものである。このよう な計算により導き出される指標は,授業の効果を 反映していると考えられる。いずれも消費生活分 図7.アンケート調査の結果を利用した授業効果や意義の分析
3︐02.52.01.51.00.5
0
A. □質問2/1の比率 ■質問3/1の比率
甲
, 一 一 ⇔ ,
衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活 L2
1.00︐80︐60︐40︐2
0
衣生活 食生活 住生活 健康生活消費生活
野の値が最も高く,最も授業効果が高かったこと がわかる。健康生活分野はいずれも値も1を少し 越える程度であるが,受講前の関心も高かったこ
とから,受講後もそれが維持されたといえる。な お,これらの指標は,分野間を比較した相対的な ものであり,1.0を下回ったとしても,絶対評価と しての当該分野の授業効果を否定するものではな い。図7Bは質問2「受講後の興味・関心」に対 する質問3「授業内容の有意義性」の比率を見た
ものである。衣生活及び食生活分野は授業内容に
2︐01︐5
LO
0.50︐0
興味・関心はあったが,それに比して意義は感じ られなかったといえる。住生活及び健康分野は,
興味・関心と意義が同程度であった。消費生活分 野は興味・関心よりも意義に対する評価が高かっ
た。
本授業は地域科学課程の100%及び人間環境課 程の83%の1年次が受講しており,アンケート調 査結果の比較は,両課程に所属する学生の特性を 比較するのに非常に有効である。図8は,質問1
と2の回答について,地域科学課程の割合に対す 図8.アンケート調査の結果の人間環境課程と地域科学課程の比較(質問1,2)
2,0
衣生活 食生活 住生活 健康生活 消費生活
る人問環境課程の割合の比率を計算した結果であ る。質問1は受講前に最も関心の高かった分野を 問うものであるが,健康生活分野の関心は人問環 境課程所属の学生の方が高い一方で,消費生活分 野への関心は地域科学課程所属の学生の方が高か ったことがわかる。このように,興味・関心のあ る分野は課程によって大きく異なっていた。健康 生活分野は化学・生物学を基盤とした理系分野も 内容に含まれ,消費生活分野は商学・経済学を基 盤にした人文社会分野を扱っている。地域科学課 程は文系色が強く,人間環境課程は理系指向の学 生が在籍することから・,図8Aの結果はこれらの 学生の特性を反映したものであると考えられる 。
L5
1.00︐50.0
B.質問2の
人間環境/地域科学の比率
衣生活 食生活 住生活 健康生活 消費生活
図8Bに示した質問2「受講後の興味・関心」に ついても同様に人間環境課程の学生は,健康生活 分野の授業内容に最も興味を惹かれたことがわか る。一方で,地域科学課程の学生は,消費生活分 野の授業内容の興味・関心が高かったといえる。
以上のように,授業内容に対する興味・関心など の学生の感想・反応は,学生が本来持っている特 性や指向(理系,人文系など)により大きく異な ることがわかった。授業内容を評価する場合には,
この点についても十分に考慮する必要がある。
図9A,Bは生活者科学の分野に対する両課程 に所属する学生の指向を比較したものである。生 活者科学の分野については,人間環境課程の学生 図9.アンケート調査の結果の人問環境課程と地域科学課程の比較(質問4)
1650
40
ぷ30 ロくロ
諦20
10
0
A。質問4カ.
今の生活者科学の 分野の講義内容で よい
地域科学 人間環境
12
︵ぷ︶Φ郵
4 0
B.質問4キ.
生活者科学の分野 以外の内容を扱って 欲しい
地域科学 人間環境
の方が支持が高いことがわかる。生活者科学を扱 った地域科学論1は,人間・文化理解科目のB群
(地域社会が抱えている課題への認識)の中では 最も理系色が強いので,人間環境課程所属の学生 の支持を集めたと考えられる。
7.おわりに
現在,教育文化学部では,各種委員会などで授 業カリキュラムの改革が行われている。その中で,
基礎教育科目である人間・文化理解科目群の実施 体制や授業内容・意義が再点検されている。地域 科学論1は,授業の目的やカリキュラムにおける 位置づけが地域科学課程の教育目標と合致してい ることや,初年次ゼミで受講を推奨していること
もあり,当該課程所属の1年次の履修率は100%で ある。一方で,国際言語文化課程及び人間環境課 程所属の学生にとっては,同一履修条件の選択必 修科目であるにも関わらず,履修率はそれぞれ 32%,83%と大きな差がある。このような傾向は 毎年見られるものであり,授業内容による学生の 指向の差を表していると考えられる。実際に図9 のデータから見てもわかる通り,授業内容は人問 環境課程所属学生の支持を集めている。カリキュ ラム改革案では,人間・文化理解科目群を学部共 通科目から課程共通科目へ変更することが計画さ れている。そうした場合,地域科学論1は地域科 学課程所属学生専用の科目となり,人間環境課程 所属学生の受講率は著しく低下することが想定さ れる。カリキュラムの再編は,授業担当者の所属 や科目群といった形式のみで判断されるのではな く,授業内容や学生の指向を十分に把握した上で 考えていく必要がある。
人間・文化理解科目群が4課程所属の教員のそ れぞれ縦割りでA〜Dの群に分かれていることも あり,本当に教育文化学部の共通科目としても機 能を果たしているのか,実施体制は現行の方法で 良いのかなどを総括する必要がある。生活者科学 選修所属全教員によるオムニバス形式で開催され ている本授業は,授業評価やアンケート調査の結 果を見る限りでは,十分に学生に受け入れられて いるといえる。図6Aのデータからもわかる通り,
1人の教員で担当するよりも現行の複数の教員で 担当する方が多分野の話が聞けてよいという評価 であった。学生の興味は,図5に示されたように
非常に分野で偏っていたが,それでも多分野に触 れる意義を学生が十分に認識していることがうか
がえる。
授業評価やアンケート調査からは,授業に対す る学生の満足度を把握することができるが,授業 目標の達成度を把握するには厳密な成績評価が必 要である。満足度と達成度のいずれも高い授業が 良いと考えられるが,「学生を教育する」という 観点や「必要な知識や考え方を身につけさせる」
という大学本来の社会的使命を考えると,満足度 よりも達成度が重要となる。一方で,厳密・厳正 な成績評価を求めすぎることは教育上問題がある ことが指摘されている(3)。地域科学論1の成績 評価では,「普段の学生の努力」が反映され,透 明性・公平性・客観性を保った上で,「学生の授 業に対する姿勢」や「討論,発言」などの評価し にくいような項目も対象とするように努力した。
「普段の学生の努力」を評価するためには出席点 の割合を高めれば良いが,ただその場にいて座っ ているだけでは意味が薄い。実際に私語がひどい 場合や居眠りをしている学生も散見される。そう した場合,授業に対する集中度や予習・復習など の自習を評価するのには,基礎知識を問うような 試験を行うことが有効である。実際,今回の評価 項目の中では,試験の成績のみが出席率と相関し ており,「普段の学生の努力」の評価には,やは
り試験を行うことが必要であるといえる。
一方で,試験だけでは「学生の自由な発想力」,
「得られた知識による応用力」に対する評価が不 十分であるので,それを補うためにレポートによ る評価を行った。レポートの成績は試験の成績や 出席率とは全く相関していなかった(図4A,C)。
本授業では,レポートによる評価は,「普段の学 生の努力」や「知識や考え方」が身に付いたかど うかを判定するのには不十分であったといえる。
レポートのみで成績を評価する授業の場合は,こ の点を留意する必要がある。もっとも,レポート の課題設定に問題があった可能性もあり,受講に より得られた学生の達成度をより反映できるよう な課題設定や評価法を行うように工夫・努力して いかなければならない。
参考文献
1)宇佐美寛,「大学の授業」,東信堂(1999)
2)秋田大学教養基礎教育調査・研究委員会編,「特集 わたしはこんな成績評価を望む」,秋田大学教養基礎 教育フォーラム,第11号(2003)
3)川東雅樹,「厳正な試験,厳密な評価…」,pp4−5.秋 田大学教養基礎教育フォーラム,第12号(2004)