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卓上型エネルギー分散蛍光 X 線分析装置 による 岩石試料の分析精度

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秋 田大学工学資源学部研究報告,第26号,2005年 10月

資 料

卓上型エネルギー分散蛍光 X 線分析装置 による 岩石試料の分析精度

高島 勲☆・エデ ィ スチ ブタ☆☆・ミン ス‑**

Ac c ur a c yofChe mi c a lA n a l ys i sofRoc kSa mpl e sbyPor t a bl eEne r gyDi s pe r s i ve X‑ r a yFl uor e s c e nc eSpe c t r ome t e r

l s a oTa ka s h i ma * ,I . G. B. Ed d ySu c i p t a **a n dMy i ntSoe * *

Abs t r ac t

Ma j ora n dt r a c eel e me n t so fr o c ks a mpl e swe r ea na l y z e dbyEne r gyDi s pe r s i v eX‑ r a yFl uo r e s c e n c eSpe c t r o me t e r ( EDXRF) ・A na l y s i si sdo nebywhol er ∝kp o wde rme t ho da ndc a l i br a t i onc u r vet e c hni q uei sa ppl i e df ♭ rde t e r mi na t i o no f pr e c i s ec o nt e nto fe l e me nt s ・I nt e ns i t yofX‑ r a ys l gna lf orc a l i br a t i o nc u r v ei sac o nt e n twhi c hc a l c ul a t e dbyf unda me nt a l pa r a me t e rme t ho d・Us i n g1 5s t a n da r ds a mp l e s ,C a l i br a t i o nc ur ve sa r edr o wni nt heO・ 998 7t oO・ 942 70fc o e f f i c i e nto f de t e r m ina t i on( R

2)

f o r8ma j o rel e me n t s , Si

O 2

,

A

1

2

0 , ,Ca O ,K2 0 ,Na

2

0,Ti

O 2

,MnO,Fe

2

0, , a nd 1 0t r a c ee l e me n t s ,V , Cr,Ni ,Cu,Zn,Rb,Sr ,Y ,Zr ,Nb

Thet o t a le r r or sa r e 2‑ 8 % f orma j o rel e me nt sa n d1 0‑ 20% f o rt r a c ee l e me n t s , r e s pe c t i v e l y ・

1 .は じめに

化学分析 は,物質を扱 う各種研究において最 も基 礎的なデー タを提供 するものであ り,多 くの方法が 適用されている.蛍光 X 線 ( ⅩRF) によるものは, 最 も簡単で精度良 く結果が得 られ る手法の一つ とし て広 く用い られている. しか し, ⅩRF にも波長分散 型 とエネルギー分散型 ( 以下 EDXRF と記す)の大 きく2 種類 があ り,岩石試料の精密分析 には前者を 用い,試料 を融剤 とともに高温で融解 したガラス ビ ー ドを測定 するのが普通である (

1)(2)

.そのための準 備作業 に時間 と手間を要 すること,ガラスビー ドの 使用期限が数 ヶ月 と短い こと,装置が高価であ るこ とな どは高精度の測定のための対価 といえる.それ に対 して,後者は卓上 ・簡易型 という位置付けで ( 3 ) , 野外での現場分析等の特殊用途や製品管理 といった 半定量分析のための装置 と考え られ,その分析精度 について一部予察的な報告がある ( 4 )ちのの,ほ とん ど議論されてない.また,結果も自動的に出力され,

2005 年 7 月 1 9日受理

☆秋 田大学工学資源学部素材 資源 システ ム研 究施 設 . Re s e a r c hI ns t i t ut eo fMa t e r i a l sa n dRe s our c e s , Fa c ul t yofEn gi n e e r l n ga ndRe s our c eSc i e nc e , Aki t a Uni v e r s l t y ・

☆☆秋 田大学大学院工学資源学研 究科 . Gr a dua t eSc h o olo f En gi ne e r l nga ndRe s o ur c eSc i e nc e , Aki t aUni ve r s l t y ・

29

途中経過の検討を要 しない "ブラ ックボ ックス "と いう性格 を持 つことか ら,得 られたデータの誤差や 信頼性 を別途評価 してお くことも重要である.

EDXRF は,簡易型 とされるだけに,操作 ,装置価 格等の面で優位性 がある.従 って ,対象 とする試料 ( 今回は岩石 )についての分析精度のデータを知 る ことによって ,その精度 内での分析データで 目的を 達成で きる研 究等 には積極 的に使用することが望 ま れる.

本報告では,岩石試料 についてあま り手間をかけ ない範囲で最良の分析結果が得 られる方法について 検討 した.具体的には,全岩粉末試料 をペ レッ ト化 し, EDXRF の基本パラメーター補正法 と標準試料に よる検量線 を組み合わせた手法 を導入 し,分析可能 主要 ・微量元素の誤差等を評価 した.

2. 使用装置 と試料処理

測定 に使 用 した装 置 は ,セイ コー電子工業㈱ の

S E2 01 0 型 EDXRF であ り ( Fi g . 1 ),検出器は S i ( L i ) 半導体 , Ⅹ 線管球は Rh ,高圧電源は 1 5 及び 5 0kV

で,基本パ ラメータ補正法 によるデュアル定量等の

ソフ トが組み込 まれた半 自動コンピュータ処理が行

われている.軽元素測定 のための真空装置も付属 し

ている.

(2)

3 0

高島勲 ・エデ ィ スチブ タ ・ミン ス‑

岩石試料は,通常の分析 と同様 ,風化部分を除いて乾 燥後,粉末 とした.粒度は 2 0 0 メッシュ ( 75/ ∠m) 以下 で,自動乳鉢で 1 5 分程度す りつぶすことで達成できる.

この粉末約 1g を内径 1 6mm の試料ホルダーに取 り,プ レスで 1 5t/ c m

2

の圧でペ レットとし,測定 に使用 した.

なお,この試料ホルダーには市販のアル ミではな く,水 道配管等に使われる塩 ビ管 ( 商品名 vp1 6) を 5mm 厚 でカ ットしたものを用いた.このホルダーは,価格面で の優位性 とともに,岩石粉末 との相性が良 く,全 く失敗 な くペ レットが作成できる ( Fi g . 2) .

なお,検量線作成のために準備 した標準試料も全 く同 じ手順でペ レッ トを作成 した.標準試料の含有量の範囲 は,適切な検量線 を描 くのに適 していない場合があるた め,後述の試薬を使用 した.その秤量は 0. 1 mg までの 精度 を確保 し,標準試料 との混合はボール ミルによる回 転撹拝を半 日以上行った.

EDXRF による測定の利点の一つは,これ らのペ レッ トが安定なことで,デシケーターに保管すれば 3 年以上

Fi g・ 1 E D X FRs pe c t r o me t e rf o rc h e m iC a la n a l y s i s ・

Fi g・ 2 Ho l d e rf orr o c kp o wd

e

rma d ebyv iny l c h l o r id e

t

u t xGe 且)a n dp o wd e rp el l e t( r ig ht ) .

安定 して標準試料として使用可能である.

3. 測定手法

EDXR F の一般的な使用方法は,装置に付属するソフ トを使用 した定量である. しか し,主要元素について行 った化学分析値既知の標準試料の測定結果は,元素によ り異なるが 1 0 ・ 3 0% の誤差があ り,精度の面でやや問題 がある.そこで,標準試料を用いた検量線法による定量 を試みた.使用 した標準試料は ,J G・ 1 ,J G・ 2,J A・ 1 ,J Al 2 , J

B

・ 1 , J

B

1 2 , J

B

・ 3 , JGb・ 1, J

H

・ 1 ,JSy・ 1 の 1 0 試料

に加え ,J G・ 1, J

B

・ 3 に Si

O 2

及び

Al 2

0

3

試薬を添加 した もの ,Si

O2

・ Fe

2

0

3

試薬混合物の 1 5 個である. Si

O 2

,

Al 2

0 及び Fe

2

0

3

はいずれも特級試薬で,純度は 9 90 / o 以上であ

る.

X 線測定は,各標準試料を真空条件下で同一の X 線出 力 ( 1 5kV,5 0/ J A) で 1 00 0 秒行い,その 3 回の平均 値を測定強度 とした.測定対象 とした 1 0 元素の測定ス ペク トルの例 として ,J G・ 1 についての結果を Fi g.3 に 示 した.これ ら 1 0 元素のピークはすべて Kα 線であ り, 同定 していないピークはそれ らの元素の Kβ 線やコンプ'

トン散乱等である.この測定データは,装置付属の基本 パラメータ法補正 した結果 として Ta bl e lのような形で 出力される.今回の測定では,この表の濃度を補正強度 とし,標準試料の既知濃度 との間で検量線を作成 した.

なお, Fi g.3 で明瞭など‑クを示さなかった Na , Mg , P の 3 元素については, Ta bl elの濃度ではな く,表示 されるピーク強度のカウン ト数を直接読み取 った.その

1・0

2

.0 3.0 4.0

En e r g y( k e ¶

5.0 6.0

Fi g・ 3 X‑ r a y 甲 e C t r af orma j o re l e me n t a na ly s i s .

(3)

卓上型エネルギー分散蛍光Ⅹ線分析装置による岩石試料の分析精度

Ta bl e1 Da t as he e tf o rma j o re l e me nta na ly s i s ・

* * * * * * *

エレメントモニター

St ミ A‑2010 * * * * * * *

元 素 滅 度 (%) 強 度

(eps)

変 動

(cps)

Na20

MgO

A12∩3 SiO2 K20

CaO

TiO2

MnO

Fe203

2.4914 R.746 0.2025 2.1116 37.254 0.2826 14.6172 351.178 ( ).7098 70.5806 2053.708 1.6738 4.4744 290.003 ( ).6596 2.3297 199.257 0.5610 0.3060 27.017 0.2933 0.1453 25.421 0.3011 2.9437 513.408 0.8701

値について,エネルギーが重なる Kβ 線の補正を行った カウン ト数を用いて標準試料の濃度 との間で検量線を作 成 した.

微量元素についても同様な手順で測定及び検量線作成 を行っている.但 し , Ⅹ線出力は 5 0kV,8/ J A である.

使用 した機器の性能上,岩石試料の微量成分で測定可能 な元素は,Ⅴ, Cr , Ni , Cu ,Zn, Rb , Sr ,Y ,Zr , Nb の 1 0 元素である.また,標準試料は,前記の JG ・ 1 等の

1 0 個に加え ,JG・ 2 に Cr

O 3

, Ni O ,Z n O ,Y

2

0

3

, Zr

O 2

, N

b2

0

5

の各試薬 (

ずれも純度 9 9 % 以上)を適量混合 し

たもの 2 個の合計 1 2 個である.

4. 測定結果と考察

主要 1 0 元素の検量線を Fi g .4 に示 した.縦軸は標準 試料濃度 ,横軸は基本パラメータ補正を行 った濃度で, 測定試料の Ⅹ線強度に相当する.前述のように ,Na

2

0 , M g O, P

2

0

5

の 3 元素の横軸は基本パラメータ補正な し の表示カウン ト数 ( ェネルギーが重なる Kβ 線の補正を 行った)である.これ ら 1 0 元素の検量線は概ね良い直 線性を示 し, 決定係数 ( R

2)

値は最も悪い M g Oで 0 . 9 6 6 5 3, 最も良い Ca O で 0 . 9 9 8 4 となっている.

今回は未知試料の測定は行 っていないが,各元素につ いて 1 5 試料の内,最も検量線か らずれが大きいものが 誤差最大 と評価される.そのような方針で,各元素の誤 差を評価すれば,最も悪いデータは M g Oのもので 1 9 % ,

P2 05 で 1 2 % と計算される.このように大 きな誤差を含 む元素は,今回の基本パラメーター補正 と検量線の組み 合わせで排除できない要素を含むか,標準試料の精度に 問題があると考えられる.後者の標準試料の精度につい ては,後藤 ・巽

(5)

が議論を行 ってお り,推奨含有量の 信頼性に疑問を投げかけている。本報告では,その点に まで踏み込んだ精度追求を目的としていないので , Mg O と P

2

0

5

の 2 元素については半定量分析 という評価 とし てお く.このような元素は, M g O 以外に P

2

0

5

が該当す

31

る.それ以外の元素では ,Si

O 2

,

Al 2

0

3

, Ca O, K

2

0 , Na

2

0

の 5 元素が 2 ‑ 5 % , Ⅵ0

2

, M nO,Fe

2

0

3

の 3 元素が 5 ・ 8 %

の誤差で測定可能である.統計的な誤差や正確度等の評 価

(5)

については,予察的な段階のため,省略 した.

微量成分について測定結果は Fi g.5 に示される.その 評価も主要成分 と同様に行 うことができ, R

2

が最も悪い

Z nで 0 . 9 4 2 7 ,最も良い Y で 0 . 9 9 8 7 となっている.検 量線から大きくずれるデータが存在する Zn, Cr , Ni の 3 元素は,主要元素の M g O, P

2

0

5

と同じ理由で、半定 量 と評価 される.その他の 7 元素は, 1 0 ・ 2 0% 程度の誤 差で定量可能である.

基本パラメータ法を加味 した検量線法は理論的な厳密 性には欠けるが,岩石試料 という今回の試料に限ってい えば,多 くの主要,微量元素について十分利用できる分 析精度が確保されている.

本報告では,Rh管球で高圧が 1 5 k V 及び 5 0 k V の 2

段階固定 ,フィルターな しという条件で分析可能な元素 の分析精度を示 した.しか し,管球 を W , Pd などに変 え,高圧 を任意に設定 し,適切なフィルターを使用する ことで,主要元素の検出感度が向上 し,分析可能な微量 元素の種類が飛躍的に増加することが報告されている

(3).

5. まとめ

卓上型の EDXRF では,岩石試料の主要元素 8 成分, 微量元素 7成分の定量が可能である.誤差は,主要元素 が 2 ‑ 8 % 程度 ,微量元素が 1 0 ‑ 2 0 % 程度である.試料は 全岩粉末ペレット法を採用 した.

今回の測定は岩石試料についてのもので,基本パラメ ータ法を加味 した検量線法は理論的な厳密性 には欠ける が,誤差は予想外に小さ く,かな りの応用範囲が期待で きる.また,操作の簡便さを生か して,土壌や産業廃棄 物焼却灰等の分析にも広 く利用され得るもの と考えられ る.その場合には,対象試料に近い物性の標準試料を準 備 し,本報告で示 した手法を導入することで,精度が高 く,誤差の評価 も含んだ分析結果を得ることが可能 とな るであろう.また,管球 ,高圧 ,フィルターを任意に選 択で きる機器の導入によ り,本報告では分析できなかっ た多 くの微量元素が測定可能 とな り, EDXR F の応用範 囲はますます広がることが期待される.

謝辞

試料の粉末ペ レット作成では,本学部素材資源シ女テ

ム研究施設の佐々木恭治氏の技術的協力を受け,機械工

学科の加藤隆一氏に塩 ビ試料ホルダー試作でお世話にな

った.また,匿名の査読者の方か らは有益なご指摘を頂

いた.記 して深謝の意を表 します.

(4)

高島勲 ・エデ ィ スチブ タ ・ミン ス‑

Fi g.4 Ca l i br a t i onc ur vesf or1 0ma j ore l e me nt s .Hor i z ont a la xe sa r ec ol l e c t e dc ont e nt s ( %) a ndve r t i c a la xe sa r ec ont e nt s

ofs t a nda r ds a mpl e s ( %) . Hor iz ont a la xe sf orMgO,Na 2 0a ndP2 05 a r eC Ol l e c t e dc o unt s( e ps )( s e et e x

t

)

(5)

卓上型エネルギー分散蛍光Ⅹ線分析装置 による岩石試料の分析精度

3 3

Fig・5 Calibrationcurvesf♭r10traceelements・H

or i z ont a l

axesarecollectedcontents(ppm)andvert

i ca la xe sa r ec o n t e nt s

ofstandardsamples(ppm)

(6)

3 4

高島勲 ・エデ ィ スチブ タ ・ミン ス‑

参考文献

( 1 )後藤晶子 ・堀江太一郎 ・大場 司 ・藤巻宏和 ( 2 0 0 2):

珪酸塩岩か ら炭酸塩岩 までの広範囲の組成 における主成 分元素お よび微 量成分元素の ⅩR F 低希釈率ガラス ビー

ド分析 .岩石鉱物科学 ,31 巻 ,p p. 1 6 2 ・ 7 3 .

( 2)山田康治郎 ・ 河野久征 ・ 白木敬一 ・ 永尾隆志 ・ 角縁 進 ・ 大場 司 ・川手新一 ・村 田 守 ( 1 9 9 8): 和1 / Ⅳ デ ュア ル X 線管 を用いた低希釈率ガラス ビー ド法による岩石 中 の主成分 ,微量成分お よび希土類の分析 .X 線分析の進 歩 ,2 9 巻 ,p p . 4 7 ‑ 7 0 .

( 3 ) 丸茂克美 ・白鳥寿一 ・菊地達也 ・友 口 勝 ( 2 0 0 3 ):

小型蛍光 Ⅹ 線分析装置 を用いた土壌の重金属分析 一発展 の目覚 しい小型蛍光 Ⅹ 線分析技術の現状 と展望 ‑.地質 ニュース ,5 8 7 号 ,p p. 1 2 ・ 2 5 .

( 4) 丸茂克美 ( 1 9 9 4 ) :卓上型蛍光 Ⅹ 線分析装置を用い た地質試料の化学分析 .資源地質 ,4 4 巻 ,p p. 51 ‑ 6 4 .

( 5 ) 後藤 篤 ・巽 好幸 ( 1 9 9 1 ):蛍光 Ⅹ 線分析装置に よる岩石試料の定量分析 (Ⅰ).理学電機ジャーナル ,2 2

i ,p p . 2 8 ‑ 4 4 .

参照

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