Dunkl Processes and Intertwining Operators
物理学専攻 アンドラウス ロバジョ・セルヒオ アンドレス Department of Physics Sergio Andrés Andraus Robayo
1 Introduction
Dunkl processes とは Dunkl によって導⼊された Dunkl operators [1]から定義される確率過程のこ とである。 Dunkl operators(DO)とは、次の式で与えられる差分微分演算⼦のことであり、
T
jf (x) = ∂
∂x
jf (x) + ∑
α∈R+
k(α) f (x) − f (σ
αx)
h α, x i α
j,
(1)ルート系
R
と重複度関数k
に依存しているが、偏微分と同様な特徴を持っている。 特に、 DO は可換 であり[1]、 偏微分の代りに⽤いることにより新しい熱⽅程式、 波動⽅程式などが定義できる。 そこ で、 ブラウン運動と熱⽅程式と同様な関係を考えると、 DO を使った熱⽅程式から Dunkl processes(DP) が定義できる。 DP はブラウン運動と同様に拡散過程であるが、 ルート系の要素に直交する超 平⾯からの反発⼒を受け、 その超平⾯を超え、不連続にジャンプする過程でもある。
Dunkl の熱⽅程式を解くのに Intertwining operator (IO) と呼ばれる演算⼦の具体形を知る必要 がある。 IO とは DO と偏微分を次の式で結びつける演算⼦
V
k のことである。T
jV
kf (x) = V
k∂
∂x
jf (x)
(2)IO の存在は証明されている [2] が、その具体形は知られていない。
DP はルート系と初期条件をうまく選ぶことにより、Dysonのブラウン運動模型 (DBMM) と等価に なる。本研究では、 DP の性質を調べ、 DBMM の推移確率分布を利⽤し、 IO の具体形を求める。
2 Dunkl Processes
2.1 ⼀般理論
確率過程の典型的な例であるブラウン運動は熱⽅程式と深く関わっている。N次元上の熱⽅程式は次の 式で与えられる。
( ∂
∂t − 1 2 ∆
)
p(t, y | x) = 0; ∆ =
∑
Nj=1
∂
2∂x
2j;
グリーン関数:p(t, y | x) = e
−x2 +y2 2t
(2πt)
N/2e
hx,yit (3) そのグリーン関数はブラウン運動の推移確率分布でもある。 また、 熱⽅程式はブラウン運動の Back- ward Kolmogorov ⽅程式 (BKE) であることもいえる。上と同様に、 Dunkl の熱⽅程式は次の式のよ うになり、IO を利⽤することにより DP のグリーン関数は次のようになる。( ∂
∂t − 1 2 ∆
k)
Γ
k(t, x, y) = 0; ∆
k=
∑
Nj=1
T
j2; Γ
k(t, x, y) = e
−x2 +y2 2t
c
kt
γ+N/2E
k( x
√ t , y
√ t )
(4)
1
但し、γ
= ∑
α∈R+
k(α)、c
k= ∫
RN
e
−|x|2/2w
k(x)dxとw
k(x) = ∏
α∈R
|h α, x i|
k(α) で与えられる。p
とΓ
k は同じ構造を持っているが、p
の右辺の指数関数はΓ
k のE
k(
√x t,
√yt
)
= V
ke
hx,yit と対応している。Γ
k はw
k(x)
に対して規格化されているので、 推移確率分布にならないが、次の式で与えられているp
k は すべての推移確率分布の性質を持つので、 DP の推移確率分布の意味がつけられる。p
k(t, y | x) = Γ
k(t, x, y)w
k(y)
(5) その BKE は Dunklの熱⽅程式である。∂
∂t p
k(t, y | x) = 1
2 ∆
(x)p
k(t, y | x) + ∑
α∈R+
k(α) ∂
α(x)p
k(t, y | x) h α, x i − ∑
α∈R+
k(α) h α, α i 2
p
k(t, y | x) − p
k(t, y | σ
αx) h α, x i
2 (6) 上の式から DP の性質が読み取れる:右辺の1項⽬は通常のラプラシアンであり、拡散の項である。 2 項⽬はドリフトの項であり、h α, x i
−1が掛けられているため、 ルート系の要素に直交する超平⾯からの 反発⼒を意味し、 最後の項はx
からα
による反射σ
αx
へのジャンプを意味する。2.2 具体例
2.2.1 ⼀次元上、1粒⼦の Dunkl Process
⼀次元上の1粒⼦系における、
± xから ∓ xへのジャンプする DP を考える。この場合の IO は次の式で与
えられる。V
kx
n= (
12
)
bn+12 c
( k +
12)
bn+12 c
x
n (7)これを⽤いると、 DP の推移確率分布は
p
k(t, y | x) = e
−(x2+y2)/2t2t
| y |
2k(xy)
k−1/2[ I
k−1/2(xy/t) + I
k+1/2(xy/t) ]
(8) となる。但し、
I
ν は変形されたベッセル関数である。Figure 1 から拡散過程であること、原点からの 反発⼒が存在すること、xから− x
に移動するのに原点を通らずジャンプを⾏うという DP の性質が確 認できる。-3 -2 -1 0 1 2 3 y
1 2 3 4 5
p
kHt,yÈ1L
(a)t= 0.001
-3 -2 -1 0 1 2 3 y
1 2 3 4 5
p
kHt,yÈ1L
(b)t= 0.01
-3 -2 -1 0 1 2 3 y
1 2 3 4 5
p
kHt,yÈ1L
(c)t= 0.1
Figure 1: 1粒⼦系推移確率分布。
k = 5
、x = 1。
2
2.2.2 ⼀次元上、2粒⼦の Dunkl Process
今回、 ⼀次元上の⾃発的に位置を交換する 2個のブラウン粒⼦系を考える。 1粒⼦の場合と同様に、
ジャンプの⾏い⽅が⼆つのみであり、 1粒⼦のIOが⽤いられる。 その推移確率分布は
p
k(t, y | x) = e
−(y1−x1 )2 +(y1−x2 )2 +(y2−x1 )2 +(y2−x2 )2
4t
| y
2− y
1|
2k√ 2π(2t)
32(x
2− x
1)
k−12(y
2− y
1)
k−12× [
I
k−1 2( (x
2− x
1)(y
2− y
1) 2t
) + I
k+12
( (x
2− x
1)(y
2− y
1) 2t
)]
(9) であり、そのグラフは Figure 2 となる。
y
1= y
2 に沿う⽅向に注⽬すると、 今の DP は通常のブラpkHt,yÈxL
-1 0
y1 1 -1
0 1
y2
(a)t= 0.035
pkHt,yÈxL
-1 0
y1 1 -1
0 1
y2
(b)t= 0.070
pkHt,yÈxL
-1 0
1 y1
-1 0
y2 1
(c)t= 0.035
pkHt,yÈxL
-1 0
1 y1
-1 0
y2 1
(d)t= 0.070
Figure 2: 2粒⼦系推移確率分布。
k = 1、 (x
1, x
2) = ( − 0.2, 0.2)。
ウン運動の振る舞いをしているように⾒えるが、その直交⽅向に注⽬すると1粒⼦の DP と同じ特徴を 持っていることが明らかである。
3 ⾮衝突ブラウン運動のIntertwining Operator
3.1 Dysonのブラウン運動模型との関係
Dysonのブラウン運動模型 (DBMM) とは⼀次元上の多粒⼦確率過程のことであり、⾼分⼦、界⾯な どでの応⽤を持っている。 物理的に考えると、⼀次元空間における、斥⼒相互作⽤を物
N
個のブラウ ン粒⼦系の模型であり、 次の BKE に従う。∂
∂t p
β(t, y | x) = 1
2 ∆
(x)p
β(t, y | x) + β 2
∑
Ni=1
∑
Nj=1 j6=i
1 x
i− x
j∂
∂x
ip
β(t, y | x)
(10)この BKE の右辺の1項⽬は拡散の項であり、 粒⼦がブラウン運動を⾏うことを意味する。 2項⽬はド リフトの項であり、 粒⼦間の強い反発⼒を意味する。 DBMM は盛んに研究されているが、 その推移 確率分布
p
β が⼀般的に知られていない。 ところが、パラメーターβ = 2
の場合、p
β=2 は Karlin- McGregor ⾏列式のh-変換で与えられることが知られている。⼀次元上の衝突しない条件がつけられたN
ブラウン粒⼦系の推移確率分布もpβ=2で与えられるため、 DBMMのβ = 2
の場合は⾮衝突ブラウン 運動と呼ばれる。3
他⽅、⼀次元上の⾃発的に位置を交換する
N
個のブラウン粒⼦系の DP の IO は知られていない が、その BKE は∂
∂t p
k(t, y | x) = 1
2 ∆
(x)p
k(t, y | x) +
∑
Ni=1
∑
Nj=1 j6=i
k x
i− x
j∂
∂x
ip
k(t, y | x) − 2k ∑
1≤i<j≤N
Oddαji,x
p
k(t, y | x) (x
j− x
i)
2 (11)となる。(10) 式と (11) はほぼ同じ形を持っている。特に、 DP に完全に対称な初期条件を課すと、
(11) 式の右辺の3項⽬がなくなり、
β = 2k
とすると (10) 式と (11) 式が等価になる。 したがって、以上の条件を満たす DP と DBMM の推移確率分布も等価である、すなわち、
p
β=2(t, y | x) = ∑
ρ∈SN
p
k=1(t, y | ρx).
(12)3.2 ⾏列表式
(12) 式から
V
k=1を対称多項式の理論を⽤いることにより[3]、⾏列での表現が求められる。 Schur 多 項式s
λ の基底で表すと[V
k=1]
λµ= ∑
ρ≤min(λ,µ)
K
λρN ! l
1ρ! . . . l
ρR!
∏
Nj=1
ρ
j!(N − j)!
(µ
j+ N − j)!
η(ρ,µ)
∑
a=0
[( − C ˜ )
a]
ρµ
.
(13)になる。但し、KλµはKostkaの⾏列であり、すべてのギリシャ語の添字は⾃然数の分割である。η(λ, µ) は、λ と
µ
の間にある分割の数プラス1であり (η(λ, λ) = 0)、C ˜ = C − I
で定義され、[C]
λµ=
∑
+τ∈SNsgn(τ
)
である。∑
+τ∈SN は
µ = (λ + δ − τ (δ))
+と⾔う条件を満たすτについての和である。δ と は、δ = (N − 1, N − 2, . . . , 1, 0)で定義され、(ν )
+とは任意整数ベクトルν
の成分を最⼤から最⼩への 順番に置き換えるオペレータのことである[3]。4 結論・今後の展望
本研究では、⾮衝突ブラウン運動の推移確率分布を利⽤することにより Intertwining operator
V
k を 求めることができた。今後の展望としては、本研究の結果をよりシンプルに表現することと、k > 0
の 場合への⼀般化を求め、それは Schur 多項式の⼀般化となる Jack 多項式と関係があるのかを試みると いうことが挙げられる。References
[1] Charles F. Dunkl. Differential-difference operators associated to reflection groups.
Trans- actions of the American Mathematical Society, 311(1):167–183, 1989.
[2] Piotr Graczyk, Margit Rösler, and Marc Yor.
Harmonic & stochastic analysis of Dunkl pro- cesses. HERMANN Mathématiques, 2008.
[3] Ian G. Macdonald.
Symmetric Functions and Hall Polynomials. Oxford University Press,
1995.4