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少子化に対する政府施策の検証

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(1)

人口・労働・社会保障研究会

少子化に対する政府施策の検証

──出産意図・ライフステージの観点から──

佐 藤 晴 彦

本研究は,少子化対策のあり方について,より体系的でバランスの取れた施策を目標に に置き,(前年度投稿文に続いて)考察した。具体的には,2016年度と2018年度施策の進 展度,ライフ・イベントごとに見た場合のバランス度,その他,内面性と外面性のバラン スについてである。バランス度を別の角度,省庁の関与数と無効数・金額面からも検証 し,施策案のあり方を探った。

① その結果,いくつかの省庁から提供された施策には,少子化と何ら関係無い施策も 存在していた。逆に,つの省が担当し,そこで少子化対策の全体案を作成した後,他省 庁との連携で法案化へ進めることができれば,施策はより体系的,順序を付けて案を練る ことができる。その省の案作成の段階では重要性と達成計画を検証できるため,依頼や協 力関係を結ぶ省庁数はかなり絞られ,効率化できよう。その場合,重複項目も検証可能と なり,施策案に上位項目,それに続く,下位項目の区別もつけることができよう。

② 「少子化対策」案は,事前の策として少子化につながるものとすべきなのか,それ とも事後的な処置としての医療・福祉部門で取り扱うべきかなのかを問い直す必要がある。

後者の場合,出生率回復というよりは疾病の治癒(医療)や福祉部門として対応すべきだ ろう。そうしなければ,厖大化する社会保障負担部分を少子化対策でも担うことになる。

は じ め に

わが国の出生率は,過去最低の合計特殊出生率を記録した2005年の1.26を脱したものの,

長期的には減少傾向にある。

わが国の少子化対策は,子ども・子育て支援,待機児童の解消,放課後児童クラブの充 実,経済的基盤の充実,長時間労働の是正,ワーク・ライフ・バランスの推進などに取り組 んできた。

本研究は,そのあり方について,より体系的でバランスの取れた施策を念頭に置き考察し たい。具体的には,2016年度と2018年度施策の進展度,ライフ・イベントごとに見た場合の

(2)

バランス度,その他,内面性と外面性のバランス,無駄の有無について例を挙げながら検証 する。バランス度を見る場合,省庁の関与数と無効数・金額面からも検証したい。

.政府の少子化対策にまつわる先行研究

少子化対策が有効となるのは,総合的な対策となる場合であり,つつの対策が連携さ れる場合である(兼清:2005,山口:2006,佐々井:2007)。池本(2015)は,政府の施策 に対して「出生数を増やすことに重点が置かれ,生活の質向上に向けた検討が弱いこと」

「財源の制約のもとで公的投資の効果を最大化する工夫が足りないこと」を挙げ,子どもの 数を増やすだけではなく,精神的な幸福度を上げること,政府施策が効果的に使われている のかどうかについて,公的投資の正当性をチェックすべきだと指摘した(佐藤:2018)。

先行研究を探した結果,政府の少子化施策項目を直に上げて,検証したものは見当たらな かった。佐藤(2018)は,政府の少子化に対する2016年度施策が体系的であり,つつが 真に有効であるかを検証した。特に,少子化に対する対応策や社会保障制度改善策に向け て,施策の効率性ならびにその打開策を検討した。その結果,政府の少子化施策は無効性が 少なく,重複額も小さかった。しかし,全体的なバランスという点では,外面性(夫婦の共 有時間,保育,家計収入)からも内面性(結婚の価値観,夫婦関係,子供を持つことの価値 観)からも,体系性に欠けており,この意味では効率が悪い施策だという結果を報告した。

社会保障対策については,少子・高齢化の進行や非正規社員増加問題,女性のワーク・ラ イフ・バランス,高齢者の就業問題と多岐にわたっており,これらに対応した改革は,一筋 縄で進めることはできないということを報告した。

本研究では,前回に続き省庁の関与数,無効性,重複度を検証し,体系的かつバランスの 観点から施策案のあり方を目ざす。

.本研究の分析方法

結婚後の出生の数は,夫婦による意図が主な要因となる1)(山口:2005,2006)。また,

池本(2015)が挙げたように政府施策には,精神的な幸福度を上げる取り組みがなされなけ れば,効果がないと思われる(佐藤:2018)。本研究は,佐藤(2016,2018)に続き,出産 意図の分類に,幸福度を得た結果,出産に結び付くことを念頭に置いて,内面性(結婚の価 値観,夫婦関係,子供を持つことの価値観)を含めて考察する。

出産意図の分類について,本研究では,佐藤(2018)と同様,以下のように仮定する。夫 婦は一緒に過ごす時問があってこそ夫婦の営みができるのであり,子供を持つことができる

1) できちゃった婚を除く。

(3)

(表 2-1 の a)。子供を養育するためには,親あるいは保育士・幼稚園の先生など,保護者が 根本かつ責任のある役割を果たすことになる(表 2-1 の b)。また,生まれた子供には,養 育費用に見合った収入が必要である(表 2-1 の c)。最後に養育の場所・スペース(表 2-1 の d)を備えて,子供を持つ意図を持てるのである。

上で念頭に置いたように,結婚(の価値)(e),(夫婦の価値観を含んだ)夫婦関係(f),

子供を持つこと(の価値観を含む)(g),心理的負担の存在(h),上記以外の社会的支援

(i)を加えて考察する。

【分析の基準】

分析の基準を具体的に表 2-1 に示す。出産意図に影響を与える主要因を,分類+分類 化(分類に当てはまらない政府施策)を第列に a〜i とし,第行にはライフ・ステー ジの時期 A,B,C を表示した。また,内面性・外面性をチェックするために,内面性は

,外面性はとして第行〜列に表示した。実際のチェックマークは a〜i にこの数

値を付して示した(第列から列目)。この表によって,政府施策が出産意図(a〜i)ご とにバランスが取れているかどうか,またこの出産意図分類の観点から見た無意味性(無 駄)があるかどうか(a〜i からかけ離れていること)を検証する。これらはライフ・ステ ージのどの時期への施策なのかをも検証する。

表 2-1 出産意図の分類ならびにライフ・ステージ区分

(注) 列〜列目の,の数値は,内面性を,外面性をと置いたものである。

(出所) 佐藤(2016,2018)表,表 1-2 を一部修正の上引用。

c2B. c2C.

b2A. b2B. b2C.

a2A. a2B. a2C.

A.出産意図を持つ B.子供を産む C.子供を育てる

d2:外面性 2

d;スペース(部屋数等)

a;夫婦が共有する時間

2

e1A.

e1,2:両面性 2

1 b;保護者の存在

c2:外面性 b2:外面性 a2:外面性

e;結婚(価値観の推進含む)

d2C.

d2B.

d2A.

c2A.

f1C.

f1B.

f1A.

内面,外面性の区分

f1,2:両面性 2

2

1 f;夫婦関係

e1C.

e1B.

i;上記(a〜h)枠を超えた社会的 1 支援

h1C.

h1B.

h1A.

h1:内面性 1

h;心理的負担の存在

g1C.

g1B.

g1A.

g1,2:両面性 2

1 g;子供を持つこと

i1:内面性 i(1) 心理的負担軽減のための施 1

i2C.

i2B.

i2A.

i2:外面性 2

i1C.

i1B.

i1A.

i1:内面性

i2(3)B.

i2(3)A.

i2:外面性 2

i(3) 企業への取り組み

i2(2)C.

i2(2)B.

i2(2)A.

i2:外面性 i(2) (出生率回復のための)医 2

療・福祉からの支援

i1(1)C.

i1(1)B.

i1(1)A.

i2(4)C.

i2(4)B.

i2(4)A.

i2:外面性 2

2 i(4) 各種対策の連携,総合対策

i2(3)C.

c;家計収入 2

(4)

【政府施策項目の検証手順─出産意図分類別】

政府施策が出産意図分類にはどのように当てはまるのかについては,表 2-2 のような方法 から行った。表中列目の a から i に該当する政府施策を,「要因に当てはまる施策名」

(第列目)とその「概要名」(第列目)の枠に記入した。

表 2-2 出産意図に当てはまる施策

(資料) 内閣府(2018)「平成30年度少子化対策関係予算」。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる)

(重点課題(4)男女の働き方改革を進める)

d)夫婦一緒の時間

・道徳教育の抜本的改善・充実

・地域の産科医療を担う産科医の確保事業(きめ細か な少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出産,子育 ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》③子育 て)

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

③子育て)

・結婚に伴う新生活の支援を行う自治体支援事業

(重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる)

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

b)内的な夫婦関係 ①結婚)

g)住むスペースが十分(間取 り)

少子化対策関係予算の概要名

e)保護者または保育者として養 育可能

a)結婚(して)

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

③子育て)

・住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業

・住宅金融支援機構の証券化支援事業

・企業主導型保育事業 c1)子供を持つことの価値観(子

供を持ちたい,かわいいと思 っている,持つことに価値観 を見出している)

・産科医療機関確保事業(きめ細かな少子化対策の推 進《(1)結婚,妊娠・出産,子育ての各段階に応じ,

一人ひとりを支援する》②妊娠・出産)

・子ども・子育て支援対策推進調査研究事業

・結婚支援者等による連携会議の開催等経費 要因に当てはまる施策名

・保育士修学資金貸付等事業

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

③子育て)

(重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる)

・長時間労働の抑制と年次有給休暇の取得促進に向け た自主的取組への技術的な支援等

(重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる)

・子供・若者支援地域ネットワーク強化推進事業 i-2)医療的立場からの支援

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

③子育て)

・婦人相談員活動強化費

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

③子育て)文部科学省

・家庭教育支援推進事業(子供から大人までの生活習 慣づくり応援事業を統合)

i-1)精神的・肉体的負担軽減・

克服

(重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる)

児童手当制度 出産意図要因

・安心して働き続けられる職場環境整備推進事業

(きめ細かな少子化対策の推進《(1)結婚,妊娠・出 産,子育ての各段階に応じ,一人ひとりを支援する》

・結婚に伴う新生活の支援を行う自治体支援事業 ①結婚)

h)養育費用ならびにそれを賄う 家計収入

重点課題(1)子育て支援施策を一層充実させる

・子育て支援のための拠点施設整備事業

(きめ細かな少子化対策の推進《(2)社会全体で行動 し,少子化対策を推進する。①結婚,妊娠,子供・子 育てに温かい社会づくり)

・子育て支援パスポート事業の全国共通展開のための 広報啓発費

i-4)各種対策の連携,総合対策

きめ細かな少子化対策の推進,企業への取り組み

・両立支援に関する雇用管理改善事業(「男性の育児 休業取得促進事業」および「仕事と介護の両立支援 事業」を除く)

重点課題((1)子育て支援施策を一層充実させる

・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業

重点課題((1)子育て支援施策を一層充実させる

・企業主導型保育事業 i-3)企業への取り組み

重点課題(5)地域の実情に即した取組を強化する

・地域少子化対策重点推進交付金

重点課題(4)男女の働き方改革を進める

・出産・子育て・介護支援制度(戦略的創造研究推進 事業(新技術シーズ創出))

c2)子供を持つための医療機関へ の施策

(5)

【政府施策項目の検証手順─ライフ・ステージ別】

さらにライフ・ステージ別に捉えたい。成長期間別に大きくつのライフ・ステージに捉 えたものを,さらに詳しくライフ・イベントとして(表 2-3 ),第・第行に示した。す なわち,政府施策は,どの A1(出会い),A2(結婚),B(出産),C1(保育園児,幼稚園 時),C2(小学生時),C3(中学生時),C4(高校生時),C5(大学・専門学校)のどこに,

どの程度の額が当てはまるのかについてチェックする。その一部を表 2-3 に示した。

上表のチェック(丸印)部分を金額で示し,各施策を総計したのが後掲図 3-2 である。表 2-3 は一部のみ示したが,図 3-2 では施策全体を表した。

なお,本研究での政府施策の合計は付録参考表で示した。その資料元である内閣府

(2018)178-193ページの合計とは異なる部分がある。その理由は,施策が a〜i(4)の中で,

つに分類できる場合はそのつの行に記述したが,a〜i(4)の複数にまたがって当てはま

ると見なせる場合は,複数にわたって(重複して)カウントしたからである。したがって,

縦の合計額は複数重複した分だけ多くなっている2)

.研 究 結 果

3-1 政府施策を内面性と外面性から見た分析

政府施策を内面的観点と外面的観点から考察した結果,施策は概して,外面的側面の施策 がほとんどである(図 3-1 )。その詳細を表 3-1 で見てみよう。表 3-1 の各項目は,表 2-1

2) 施策が a〜i(4)に,複数当てはまれば,複数に記述した。また,「内数」として表記された数

値については正確には把握できないため除外している。

表 2-3 政府施策を出産意図別,ライフ・イベント別に表記した例

(資料) 内閣府(2018)「平成30年度少子化対策関係予算」。

(出所) 佐藤(2018)をもとに筆者作成。

B;出産意図

b;保護者の存在

C;子供を育てる

C5-1 C5-2

a;夫婦が共有する時間

長時間労働の抑制と 年次有給休暇の取得 促進に向けた自主的 取組への技術的な支 援等

少子化対策関係予算施策名

A;出産意図を持つ

保育所等整備交付金

保育園時・

幼稚園時 小学生時 中学生時 高校生時 大学生時 専門学校 1 2 A1 A2 B C1 C2 C3 C4

内面性 外面性 出会い 結婚 出産

(6)

によって以下のように見るべきであろう。

(ア)外面的側面から支援されるべきものとして,「a;夫婦が共有する時間」「b;保護者 の存在」「c;家計収入」「d;スペース(部屋数等)」「i(2)(出生率回復のための)医療・福 祉からの支援」「i(3)企業への取り組み」,

(イ)両面的側面から支援されるべきものとして,「e;結婚(価値観の推進含む)」「f;夫 婦関係」「g;子供を持つこと」「i(4)各種対策の連携,総合対策」,

(ウ)内面的側面から支援されるべきものとして,「h;心理的負担の存在」「i(1)心理的負 担軽減のための施策」が挙げられる。この観点から詳しく(ア)(イ)(ウ)を見ていこう。

(ア)外面的側面からの考察

「a;夫婦が共有する時間」「b;保護者の存在」「c;家計収入」については,外面的に施 策されている。しかし,「a;夫婦が共有する時間」では,相対的にその額が少なく,夫婦で 一緒に過ごす時間が少なければ,図 3-1 で見たように,出産率回復にはつながらないと思わ れる。「d;スペース(部屋数等)」では皆無であり,夫婦で同じスペースで過ごせなけれ ば,出産率に回復の影響は与えられない。

(イ)両面的側面からの考察

「e;結婚(価値観の推進含む)」「f;夫婦関係」「g;子供を持つこと」「i(4)各種対策の連 携,総合対策」については,両面から施策されるべき項目である。しかし「e;結婚(価値

図 3-1 内面・外面にかかる施策額

0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000

予算時   決算時

 

(施策額,百万円) 

予算・決算時

  内面性   外面性 

(資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(7)

観の推進含む)」「f;夫婦関係」については,非常に少なく,「g;子供を持つこと」に偏っ ている。表 3-1 から見てもこの「e;結婚(価値観の推進含む)」への施策額では,結婚率を 上げるには不十分である。

(ウ)内面的側面からの考察

「h;心理的負担の存在」「i(1)心理的負担軽減のための施策」は内面から支援されるべき であったが皆無であり,コミュニケーションや心理的負担への取り組みはかなり薄いと言え よう。

3-2 社会的支援,あり方の考察

ここでは表 3-1 中の社会的支援 i,すなわち i(1)〜i(4)について考察する。社会的支援 i は,表 3-1 と図 3-1 より,(出産意図要因にかかる施策に関して)内面性に関わる施策と 住居・間取り等スペースに関わる支援を重視すべきだろう。表 3-1 では,施策は外面的な

「i(3)企業への取り組み」「i(4)各種対策の連携」に偏っており,「i(1)心理的側面からのケ ア」へは少ない。このことから,例えば「出会い」「結婚」への施策は少ないため重点化す

表 3-1 出産意図別,内面性・外面性別に集計した平成28年度施策額(決算)

(百万円)

(資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

213 2,099 e;結婚(価値観の推進含む)

31

2,134,523 c;家計収入

39.6

1,143,433 450,793 a;夫婦が共有する時間

外面性

h;心理的負担の存在

平成28年度決算

f;夫婦関係

内・外面 出産意図要因

i;上記(a〜h)枠を超えた社会的支援

6 62 b;保護者の存在

673,702

内面性 平成28年度決算

668,719

6 670,802 g;子供を持つこと

65

47,585 5,003

i(4) 各種対策の連携,総合対策

82,439 0

i(3) 企業への取り組み

11,705 0

i(2) (出生率回復のための)医療・福祉からの支援

i(1) 心理的負担軽減のための施策

d;スペース(部屋数等)

(8)

べきだろう。「i(3)企業への取り組み」については,(内面的に)インセンティブを上げる,

勤務時間における早期退社,休暇の取りやすさ等を後押しする支援が必要である。働き方改 革に見られるように,就業時間を家族に合わせたものとなっているのかについて就業規則を 見直す必要があろう。

3-3 ライフ・イベントごとに見た施策の検証

政府施策をライフ・イベントごとに捉え,その各総額を表したのが図 3-2 である。施策は 保育園・幼稚園時に集中している。ライフ・イベントの初めから見ると,A1(出会い),

A2(結婚),B(出産)までの政府施策額は,かなり低い。反対に,C1(保育園児,幼稚園 時)ではかなり実施されている。C2(小学生時),C3(中学生時),C4(高校生時)に,続 いて,C5(大学生時)に対しても政府は実施してきた。

図 3-2 から,さらに以下の点に気づかされる。少子化問題全体の観点から,今,結婚率が 上がることが期待されている。それにも拘らず,現少子化政策は「保育園・幼稚園時」以降 に集中している。

上で見たようにライフ・イベントごとの政府施策は,額面において極めてアンバランスで あった(図 3-2 )。ライフ・ステージで早い段階(「出会い」「結婚」「出産」時期)の施策 は,結婚率・出産率が上がるようにするために重要である。本来,各ライフ・イベント時に は(表 2-1 ),それに見合った出産意図項目(a〜i)での施策が関わっているべきである。

これらつのライフ・イベント時の施策を出産意図要因からどのように支援されたのかを 図 3-2 ライフ・イベントごとの施策額

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 (施策額,百万円)

各ライフ・イベント

出会い 結婚 出産 保育園時・

幼稚園時 小学生時 中学生時 高校生時 大学生時 専門学校

予算時 37,891 38,309 14,489 2,206,867 805,208 805,208 657,497 429,281 154 決算時 16,887 22,279 18,832 2,051,515 789,303 789,303 661,694 411,901 43

(資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018),佐藤(2016,2018)をもとに筆者作成。

(9)

見てみよう(図 3-3 〜図 3-6 )。すなわち出産意図要因のどの部分でこれらを支援したの かを見る。

また,比較のために,「子どもを育てる(保育園時・幼稚園)時期」についても見ておこ う。

「出会い」

図 3-2 で「出会い」(図内表第行第列目)に対応する施策は,「保育園時・幼稚園時」

の%にも満たなくアンバランスであった。

図 3-3 の出会いにかかる施策額から,「出会い」への支援は「家計収入」「(政府施策によ る)各種対策の連携,総合対策」によるものと取れる。

「出会い」は「e;結婚の価値観」「f;内面的な夫婦関係」に繫がることから,これらへの 支援がより一層望まれる。

また,「図 3-3 の代表例」に挙げたように「出会い」の名に直接見合った施策は皆無であ る為,これにかかる施策が望まれる。

図 3-3 の代表例 (百万円)

(出所) 内閣府(2018)「少子化対策関係予算」の一部を引用。

図 3-3 出会いにかかる施策額

a;夫婦 が共有す る時間   

b;保護 者の存在c;家計

収入      d;ス   ペース 

(部屋数 等)     

e;結婚

(価値観 の推進含 む)       

f;夫婦 関係     

g;子供 を持つこ と         

h;心理 的負担の 存在      

i(1)      

心理的負 担軽減の ための施 策         

i(2)      

(出生率   回復の  ための)

医療・福 祉からの 支援      

i(3)      

企業への 取り組み

i(4)    

各種対策 の連携, 

総合対策

決算 145 749 6,566 0 8 0 0 0 0 0 0 9,419

予算 186 971 25,019 0 8 0 0 0 0 0 0 11,707

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000

(施策額,百万円)

各ライフイベント (資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

210 194 3,838 3,443 予算額(当初) 決算額 若者職業的自立支援推進事業

長時間労働抑制のための重点的な監督指導等の

実施 厚生労働省

厚生労働省 所管府省 施策・事業名

(10)

「結婚」

図 3-4 では「結婚」にかかる施策額を検証した。この図では「結婚」へは「c;家計収入」

「i(4)(政府施策による)各種対策の連携,総合対策」「e;結婚(価値観の推進含む)」によ る支援ととれる。実際,「e;結婚(価値観の推進含む)」への施策額はかなり少なく,「c;

家計収入」と「i(4)(政府施策による)各種対策の連携,総合対策」にかかる施策によって いる。「e;結婚(価値観の推進含む)」にかかる施策をより増額すべきである。

「図 3-4 の代表例」では,「結婚に伴う新生活の支援を行う自治体支援事業」が実施されて いるが,図 3-4 より額面的に微少すぎる。

「出産」

「出産」にかかる施策額(図 3-5 )(は,「e;結婚価値観の推進含む)」ならびに「i(2)

(出生率回復のための)医療・福祉からの支援」によって支援されたととれる。前者から

「出産」への支援額は,相対的にかなり少なく,「医療・福祉からの支援」に頼っている。

出産は子供を持つことであり,その前に子供を持つ価値とはどのようなことなのかは考え ておく必要がある。そのために,子どもを持つための教育や子供に接する体験といった施策

図 3-4 の代表例 (百万円)

(出所) 内閣府(2018)「少子化対策関係予算」の一部を引用。

図 3-4 結婚にかかる施策額

a;夫婦 が共有す る時間   

b;保護 者の存在 c;家計

収入      d;ス   ペース 

(部屋数 等)     

e;結婚

(価値観 の推進含 む)       

f;夫婦 関係     

g;子供 を持つこ

h;心理 的負担の 存在

i(1)

心理的負 担軽減の ための施

i(2)

(出生率 回復のた めの)

医療・福 祉からの 支援

i(3)

企業への 取り組み

i(4)

各種 対策の連 携,総合 対策

決算 41 41 6,534 0 2,164 22 0 0 0 0 0 13,477

予算 42 59 24,966 0 519 22 0 0 0 0 0 12,701

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 (施策額,百万円)

各ライフ・イベント (資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

61

12 16

予算額(当初) 決算額 仕事と生活の調和調査研究等経費

結婚に伴う新生活の支援を行う自治体支援事業 内閣府 内閣府 所管府省 施策・事業名

(11)

が望まれる。

「子どもを育てる(保育園時・幼稚園)時期」

図 3-2 の「ライフ・イベントごとの施策額」で「子どもを育てる(保育園時・幼稚園)時 期」への施策は,図 3-6 より「a;夫婦が共有する時間」「b;保護者の存在」「c;家計収 入」「g;子供を持つこと」「i(3)企業への取り組み」にかかる施策によって支援されたと言 えよう。特に,「c;家計収入」が目立っており,「b;保護者の存在」「g;子供を持つこと」

「i(3)企業への取り組み」は相対的に少ない。バランス的に,家計収入中心の支援から,「保 護者の存在」,内面的には「g;子供を持つこと」を重視した施策とすべきである。

「図 3-6 の代表例」からも,保育事業や財政支援などの施策が多く,内面的な施策が望ま れる。

図 3-5 の代表例 (百万円)

(出所) 内閣府(2018)「少子化対策関係予算」の一部を引用。

図 3-5 出産にかかる施策額

a;夫婦 が共有 する時間

b;保護 者の存

c;家計 収入

d;ス ペース

(部屋数 等)

e;結婚

(価値観 の推進 含む)

f;夫 婦関係

g;子供 を持つこ

h;心理 的負担 の存在

i(1)

心理的 負担軽 減のため の施策

i

(2)

(出生率 回復の ための)

医療・福 祉からの 支援

i(3)

企業への 取り組み

i(4)

各種対策 の連携,

総合対

決算 55 25 0 0 2,038 1 0 0 0 11,705 940 4,068

予算 59 25 0 0 507 1 0 0 0 11,716 1,175 1,006

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 (施策額,百万円) 

各ライフイベント (資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

2,083 2,083

12 11

予算額(当初) 決算額

11,280 11,280

厚生労働省 出産手当金

さんきゅうパパプロジェクトの促進事業(男性 の配偶者の出産直後の休暇取得の促進事業)

出産育児一時金 厚生労働省

内閣府 所管府省 施策・事業名

(12)

3-4 政府施策数のアンバランスと無効性について

出産意図分類(表 3-1 )ならびにライフステージ(図 3-2 )の観点から,少子化に対する 政府施策はアンバランスであることが確認できた。ここでは,体系的な施策案のあり方を目 指すために,施策の数においてはどの省庁から施策が出たのか,逆に無駄な施策は複数のど の省庁から出されたのかを検証する。

施策担当省庁の状況

図 3-7 による出産意図区分への施策数は先に見た額面(表 3-1 )と同様アンバランスであ る。これらつつの出産意図区分にかかる複数の施策は,どの省庁から提出されたのかを 見てみよう。特に出産意図区分内の,「保護者の存在」(図 3-7 では「保護者または保育者と して養育を可能とするための施策」と表記)にかかる施策数は,厚生労働省から67,内閣府

図 3-6 の代表例 (百万円)

(出所) 内閣府(2018)「少子化対策関係予算」の一部を引用。

図 3-6 子育て期(保育園時・幼稚園時)の施策額

a;夫婦 が共有す る時間

b;保護 者の存在 c;家計

収入 d;ス ペース

(部屋数 等)

e;結婚

(価値観 の推進含 む)

;夫婦 関係

g;子供 を持つこ

h;心理 的負担の 存在

i(1)

心理的負 担軽減の ための施

i(2)

(出生率 回復の ための)

医療・福 祉からの 支援

i(3)

企業への 取り組み

i(4)

各種 対策の連 携,総合 対策 平成28年度決算 450614 226,124 1,128,302 0 2,030 46 133,882 2 0 7 81,486 29,022 平成28年度予算 503724 224,054 1,210,366 0 499 130 130,236 3 0 10 84,108 53,737

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 (施策額,百万円) 

各ライフステージ (資料) 内閣府(2018)。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

5,136 4,923 79,653 79,305 予算額(当初) 決算額

1,835 4,061

厚生労働省 両立支援等助成金の内「事業所内保育施設コー

企業主導型保育事業

認定こども園等への財政支援 文部科学省

内閣府 所管府省 施策・事業名

(13)

から38,文部科学省から35だけではなく,金融庁から,警察庁からなど,さまざまな省 庁によって提出されている。

予算に乗せるため,施策案は各省庁によって作成されるが,他の関係する省庁との意見の 調整,必要な場合は審議会に対する諮問または公聴会にかけなければならない。従ってスム ーズに採択されるかどうかは分らず,国民に必要な施策案がすべて法案化されるとは限らな い。

施策の有効性・無効性

ここでは,諸施策のバランスではなく,有効性・無効性について検証した。図 3-8 は,出 産意図分類に当てはまる施策の額ならびに当てはまらない施策について「無駄な施策額」

「下位項目等とすべき施策額」として表した。

無駄な施策額は,平成28年度予算で有効な施策額の6.6%,平成28年度決算で7.6%にもな ると想定される。

図 3-7 出産意図分類別,省庁の施策数

内閣府 5 3 0 3 2 38 11 11 2

厚生労働省 3 0 16 6 67 35 21 29

文部科学省 2 8 0 9 4 35 24 9 2

総務省 0 0 0 0 2 3 1 1 2

国土交通省 1 10 4

農林水産業 13 4 4

環境省 5

消費者庁 4

消費者庁 4

金融庁 1

警察庁 3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 施策数

内閣府 厚生労働省

文部科学省 総務省 国土交通省 農林水産業

環境省 消費者庁

消費者庁 金融庁

警察庁

医療機関を 通した,精 神的・肉体 的負担軽 減・克服の ために施策  精神的・肉

体的負担軽 減・克服の ための施策 養育費用な らびにそれ を賄う家計 収入のため の施策 住むスペー スのための 施策  保護者また は保育者と して養育を 可能とする ための施策  医療機関を

通した,子 供を持つこ とに対する 施策  子どもを持 つことの価 値観 内的な夫婦 関係のため の施策 結婚のため の施策数 

夫婦共有時 間のための 施策

(注) ゼロは名目に挙げられているが,額面がゼロまたは無記入を示す。

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(14)

次に省庁ごとに無効な施策数を出産意図分類の観点から見てみた。出産意図区分のどれに 関わって無駄となったのかを検証した(表 3-2 )。図 3-7 に関連付けて見ると,有効施策が 多い省庁(厚生労働省,文部科学省等)についてはやはり無駄な施策数も多いことが分か る。

またその無効な額についても同様であることが分かる(図 3-9 )。ここで示した無駄な施 策の例を挙げてみよう(表 3-3 )。表 3-3 のから行目「b;親・保護者の存在への施策」

の「非行少年を生まない社会づくりの推進」「放課後児童クラブにおける ICT 化の推進」は

(保護者と関連付けても)出生率回復に向かう施策とは思えない。表 3-3 の10〜12行目「g;

子供を持つことへの施策」の「たばこ対策促進事業」「伝統文化親子教室事業」「地域食文化 魅力再発見食育推進事業」も(子供を持つことに関連して)出生率回復に向かう施策とは到 底思えない。

行目「i(1);心理的負担軽減の施策」の「パンフレット・合意書のひな形の離婚届書と

の同時交付」と16と17行目「i(2);医療・福祉等からの支援」の「児童虐待への対応におけ る取り組みの強化」「発達障害研修等事業」は,出生率回復には関係なく,前者は法的部門 で,後者は福祉部門で取り扱うべきだろう。

図 3-8 出産意図に係る施策と無駄などの施策

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 3,500,000 4,000,000 4,500,000 5,000,000

a 〜 i(4)までの有効な施策額 無駄な施策額 「下位項目等」とすべき施策額

平成28年度予算 4,747,781 315,328 4,904

平成28年度決算 4,555,192 348,444 4,491

4,747,781

315,328 348,444

(施策額,百万円)

施策の有効・無効分類 4,555,192

4,555,192

4,904 4,904 4,4914,491

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(15)

表 3-2 (出産意図の観点から)省庁別に見た無効施策数(平成28年度)

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

経済産 業省

0 国土交 通省

2 環境省

4

内閣府 財務省

16 1 文部科 学省

55 7 1 厚生労 働省

4 農林水 産省

0 外務省

7 0 各省庁計

1 b;親・保護者の存在

0 a;夫婦が共有時間

警察庁 防衛省

3 3 i(4);各種対応の連携,総合対策

3 消費者

1 総務省

2 法務省

0 i(3);企業への取り組み

1 1

i(2);医療・福祉等からの支援

1 i(1);心理的負担軽減の施策

2 1

8 h;心理的負担の存在

9 1

1 g;子供を持つこと

f;夫婦関係

3 1

2 28 1 1

e;結婚(価値を含む)

1 d;スペース

2 9 5 c;家計収入

図 3-9 出産意図から見た省庁別無駄な施策額

内閣府 消費者

総務省 法務省 外務省 財務省 文部科 学省

厚生労 働省

農林水 産省

経済産 業省

国土交

通省 環境省 防衛省 警察庁 各合計

i(4);各種対応の連携 , 総合対策 53 0 56 0 109

i(3);企業への取り組み 0

i(2);医療・福祉などの立場からの支援 83 4,244 0 4,327

i(1);心理的負担軽減のための施策 0 0

h;心理的負担の存在

g;子供を持つこと 100 16 11,140 177,538 141 6 0 188,941

f;夫婦関係 0

e;結婚(価値観含) 0

d;スペース 2,248 2,248

c;家計収入 2,244 34,931 109 37,284

b(親・保護者の存在) 7,330 0 7,330

a(夫婦が共有時間) 1,117 0 1,117

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

(施策額,百万円)

a(夫婦が共有時間) b(親・保育人の存在) c;家計収入

e;結婚(価値観含) f;夫婦関係 g;子供を持つこと

i(1);心理的負担軽減のための施策 i(2);医療・福祉等の立場からの支援 i(3);企業への取り組み

d;スペース h;心理的負担の存在 i(4);各種対応の連携 , 総合対策

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(16)

表 3-3 無駄な施策の例

(百万円)

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

31

1,008 1,088

文部科学省 ダイバーシティ研究環境

実現イニシアティブ

1,117

199 決算額(28年度)

215 厚生労働省

ポジティブ・アクション 周知啓発事業

c;家計収入 a;夫婦が共有時間

警察庁

7の内数 6

法務省 パンフレット・合意書の ひな形の離婚届書との同 時交付

b;親・保護者の存在

55 1,202 予算額(28年度)

e;結婚(価値の推進含 む)

109 110

農林水産省 輝く女性農業経営者育成

事業

1,202 文部科学省

伝統文化親子教室事業 放課後児童クラブにおけ る ICT 化の推進 非行少年を生まない社会 づくりの推進

所管府省 伝統文化親子教室事業

施策・事業名

40 文部科学省

40 厚生労働省

たばこ対策促進事業

g;子供を持つこと

7の内数 6

法務省 パンフレット・合意書の ひな形の離婚届書との同 時交付

i(1);心理的負担軽減の 施策

18

児童虐待への対応におけ 警視庁 る取組の強化

45 109

農林水産省 地域食文化魅力再発見食

育推進事業

1,117

9 10

内閣府 子育て支援パスポート事 業の全国共通展開のため の広報啓発費

i(4);各種対応の連携, 総合対策

7 8

厚生労働省 発達障害研修等事業

18

児童虐待への対応におけ 警視庁 る取り組みの強化 i(2);医療・福祉等から

の支援

0 12

消費者庁 子どもの不慮の事故防止

厚生労働省

(17)

.出産意図ごとに見た予算施策の動向

決算ではなく,予算においてどのような方向性をもって計画したのかを見てみよう。

図 4-1 から予算における取り組みでも,「内的な夫婦関係」「子供を持つことの価値観」

「夫婦一緒の時間を持てるように」「間取り」についての施策は極端に低かった。また,「結 婚」においては,平成28年年度施策に比べ,平成29年度,平成30年度の施策は,急激に低く なっている。近年,少子化問題にまつわる研究には,いかに結婚率が上がるように取り組む べきかという論点も大きくクローズアップされてきている。しかし,この結婚にかかる施策 は徐々に増大したのではなくその逆を行く方向となっているのである。

.結

少子化に関する政府施策についてバランス度が(内面性と外面性に,各ライフ・イベント に,出産意図要因に)あったかどうか,無効性,重複があったかどうかを検証した。その 結果,佐藤(2016,2018)で見たように,無効性ならびに,重複額は相対的に少なかった

(図 3-8 )。しかし,全体的にバランスには欠けていた。ライフコースの観点から見ても(図 3-2 ),出産意図分類別の観点から見ても(表 3-1 ),バランスはとれておらず順序らしきも のも発見できなかった。内面性・外面性の観点からは,夫婦関係や子供を持つことについ

図 4-1 年度別予算に見た出産意図ごと支援の動向

結婚

内的な 夫婦関 係

子供を 持つこと の価値 観

出産の ための 医療機 関事業

夫婦一 緒の時 間を持て るように

保護者 または保 育者とし ての養 育を可 能に

間取り数 が十分と なるよう に

家計収 入で養 育費用 を賄える

精神的・

肉体的 負担を 克服

(両親の ケアのた めの)医 療機関 事業

公共財

28 年度 2,572,58 1,325 0 2,236 2,853 1,920,97 30 2,680,83 514,946 25,561 65 29 年度 535,190 101 0 1,142 3,737 2,182,44 35 2,689,50 546,475 26,110 71 30 年度 580,463 90 0 1,145 4,679 2,434,15 40 2,721,56 597,971 24,521 67

0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 3,000,000 (施策額,百万円)

出産意図別

28年度 29年度 30年度

(出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。

(18)

て,精神的に幸福度を上げるという観点からも両面の立場から取り組むべきことが示唆され た。

次に,① バランスと効率性からつの省の創設が考え出される。また,② 施策の無効性 を検証した結果,少子化対策は「事前の策」であるべきで,「事後的な策」はそれ相応の部 門,例えば医療,福祉部門で取り上げるべきだと提言したい。

① 少子化にまつわる施策は複数の省庁にまたがり過ぎていた(図 3-7 )。案として,つ の省を創設し,そこで施策(案)を作成し,法案化に持ち込むべきだろう。少子化対策に 関し,他省庁が関与して施策案を作成することになれば,図 3-7 の状況から,法案化への 道筋は難しくなる可能性がある。また,「3-4-(2) 施策の有効性・無効性」で見たよう に,いくつかの省庁からの施策には,少子化と何ら関係無い施策も存在していた。今後も そのようなことが起こり得よう。

つの省を創設すれば,施策案はより体系的で,法案化は一層スムーズになり得る。例

えば,つの項目(出産意図分類の中のスペース《部屋数や間取り》)を考えてみよう。

つの省で進めるなら,達成すべき施策案を体系的にかつ順序をつけて作成できる。関連

する案を他の省庁に依頼することもできる。その場合,体系的,順序付けて案を練ること ができるため,依頼したり,関与したりする省庁数はかなり絞られ,効率化できよう。重 複項目も検証することになり,施策案に上位項目,それに続く,下位項目の区別もつける ことができるだろう。

② 「少子化対策」は,夫婦生活の「事前」への対応なのか,あるいは「事後的」対応なの か,見直す必要がある。例えば出産意図分類中の「i(2)(出生率回復のための)医療・福 祉からの支援」について,政府の施策案は少子化につながるものなのか,それとも事後的 な処置としての医療・福祉部門で取り扱うべきかを問い直す必要がある。後者の場合,出 生率回復というよりは疾病の治癒(医療)や福祉部門として対応すべきだろう。そうしな ければ,厖大化する社会保障負担部分を少子化対策でも担うことになろう。

追記;本稿は,平成30年度平成国際大学共同研究「健全なる子育てのための養育,公的支援,民法・

児童福祉法の改正および子ども子育て支援法関係」の研究結果の一部です。ここに記して感謝の 意を表します。

参 考 文 献

池本美香(2015)「少子化対策の課題」『特集 少子化対策と経済的支援』12-22ページ(https://www.

jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/8559.pdf)。

神尾真知子(2004)「少子化対策の展開と論点」『総合調査,少子化高齢化とその対策』23-43ページ

(https://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/document/2005/200502/1.pdf)。

(19)

兼清弘之(2005)「少子化と総合政策」大渕寛・阿藤誠編著『人口学ライブラリー 少子化の政策学』

原書房,237-255ページ。

佐々井司(2007)「自治体における少子化対策の効果と課題」駒村康平編「次世代のための家族政策の 確立に向けて」社会経済生産性本部,13-39ページ。

佐藤晴彦(2016)「出産率回復に向けた政府施策の検証」(『経済学論纂(中央大学)』第56巻第・合 併号)103-119ページ。

───(2018)「少子化・社会保障対策の不効率性とその打開案─家族省の設立─」(『中央大学経済研 究所年報』第50号)293-314ページ。

内閣府(2018)「参考 平成30年度少子化対策関係予算」『平成30年版 少子化社会対策白書』日経印刷株 式会社,178-230ページ。

山口一男(2005)「少子化の決定要因と対策について:夫の役割,職場の役割,政府の役割,社会の役 割」REI TI Discussion Paper Series, 04-J-045,1-33ページ。

───(2006)「夫婦関係満足度とワーク・ライフ・バランス:少子化対策の欠かせない視点」REITI Discussion Paper Series, 06-J-054,1-38ページ。

表 3-2 (出産意図の観点から)省庁別に見た無効施策数(平成28年度) (出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。 経済産業省 0 国土交通省 2 環境省4内閣府財務省161文部科学省5571厚生労働省4農林水産省0外務省 70各省庁計1b;親・保護者の存在0a;夫婦が共有時間 警察庁防衛省33i(4);各種対応の連携,総合対策3消費者省1総務省2法務省0i(3);企業への取り組み11i(2);医療・福祉等からの支援1i(1);心理的負担軽減の施策218h;心理的負担の存在911g;子供を持つことf;
表 3-3 無駄な施策の例 (百万円) (出所) 内閣府(2018)をもとに筆者作成。 311,0081,088─文部科学省ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ1,117199 決算額(28年度)215厚生労働省ポジティブ・アクション周知啓発事業c;家計収入a;夫婦が共有時間警察庁7の内数6法務省パンフレット・合意書のひな形の離婚届書との同時交付b;親・保護者の存在─551,202予算額(28年度)e;結婚(価値の推進含む)109110農林水産省輝く女性農業経営者育成事業1,202文部科学省伝統文化親子

参照

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