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送電用鉄塔の基礎不同変位に対する 耐荷力評価と改修に関する研究

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(1)

2015 年度博士論文

送電用鉄塔の基礎不同変位に対する 耐荷力評価と改修に関する研究

2015 年 9 月

山崎 智之

(2)

- i -

送電用鉄塔の基礎不同変位に対する 耐荷力評価と改修に関する研究

目 次

第1章 序論

1-1 本研究の背景と目的 ... 1

1-2 送電用鉄塔の概要 ... 3

1-2-1 鉄塔形状による分類 ... 6

1-2-2 支持形式による分類 ... 7

1-2-3 骨組結構の種類 ...

8

1-2-4 構成材料による分類 ...

9

1-2-5 送電用鉄塔の基礎 ...

13

1-3 送電用鉄塔設計の概要 ...

14

1-3-1 荷重 ... 14

1-3-2 使用鋼材 ... 18

1-3-3 基礎設計 ... 22

1-4 基礎の不同変位に関する既往の研究 ... 23

1-5 基礎に不同変位を生じた鉄塔の課題 ...

26

1-6 本論文の構成 ...

27

第 1 章の参考文献 ...

29

第2章 基礎に不同変位を有する送電用鉄塔の実態 2-1 はじめに ... 31

2-2 基礎の不同変位量の定義 ... 31

2-3 基礎不同変位の発生状況 ... 33

2-4 基礎不同変位の鉄塔への影響 ...

38

2-5 まとめ ...

44

第 2 章の参考文献 ...

44

第3章 基礎変位鉄塔の応力測定値との整合に留意した耐荷力解析法 3-1 はじめに ... 45

(3)

- ii -

3-2 鉄塔構造部材のモデル化 ... 47

3-3 耐荷力解析の手順 ... 50

3-4 基礎変位鉄塔の部材応力測定 ...

54

3-4-1 応力解放法による部材応力測定 ...

54

3-4-2 可動トルク法による部材応力測定 ...

56

3-4-3 部材応力測定の計測精度と測定値の有用性 ...

58

3-5 提案する耐荷力解析法の検証 ... 60

3-5-1 ボルト滑りを考慮しない場合と提案する手法の条件比較 ... 60

3-5-2 解析値と実測値の比較 ... 66

3-5-3 詳細法の適切な活用に関する考察 ... 72

3-6 詳細法の予測精度に関する考察 ...

73

3-7 まとめ ...

80

第 3 章の参考文献 ...

81

第4章 直接反復法の適用による耐荷力解析法の実用性向上の検討 4-1 はじめに ... 83

4-2 ボルト滑りを考慮した直接反復解析および 最適なボルト滑り条件を見出すためのパラメータ解析 ... 84

4-2-1 ボルト滑りを生じる鉄塔構造部材のモデル化 ...

84

4-2-2 直接反復解析の手順と収束性について ...

86

4-2-3 ボルト滑り条件を定めるためのパラメータ解析 ...

93

4-3 提案する耐荷力解析法の検証 ...

94

4-3-1 ボルト滑りを考慮しない場合と提案する手法の条件比較 ... 94

4-3-2 解析値と実測値の比較 ... 94

4-3-3 簡便法の予測精度に関する考察 ... 101

4-4 まとめ ... 107

第 4 章の参考文献 ...

107

第5章 風向別設計手法の導入による耐荷力評価法の合理化 5-1 はじめに ...

109

5-2 風向別基本風速の再現期間に関する検討 ... 111

5-2-1 風荷重効果を考慮した再現期間の考え方 ... 111

(4)

- iii -

5-2-2 風向別風速の再現期間の算出手順 ... 114

5-2-3 風向別風速の再現期間の検討条件と検討結果 ... 117

5-2-4 風向別基本風速の上限値の設定 ...

121

5-3 官署位置における風向別基本風速の算定 ...

123

5-3-1 風向別基本風速算定の考え方と算定手順 ...

123

5-3-2 官署における風観測データの処理方法 ...

126

5-3-3 台風シミュレーションによる風向別再現期間風速の算定 ... 129

5-3-4 官署位置における風向別風速算定結果と考察 ... 135

5-4 風向別設計手法の適用方法と改修の優先順位 ... 137

5-5 まとめ ... 141

第 5 章の参考文献 ...

142

第6章 基礎変位鉄塔の残留変形および残留応力低減のための部材交換手順に関する検討 6-1 はじめに ...

143

6-2 基礎変位鉄塔の部材交換の概要 ... 145

6-3 基礎変位鉄塔の部材交換過程を解析する方法 ... 147

6-3-1 本解析に必要な機能と解析コードについて ... 147

6-3-2 解析手順について ... 148

6-3-3 ボルト滑りの考慮 ...

150

6-4 解析モデル,解析条件と解析ケース ...

152

6-5 解析結果 ...

156

6-6 部材交換時の鉄塔挙動特性に関する考察 ...

160

6-7 まとめ ... 170

第 6 章の参考文献 ... 171

第7章 結論 ... 173

謝辞 ...

177

研究業績 ...

179

(5)

- 1 -

第1章 序論

1-1 本研究の背景と目的

我が国では,発電所から需要家に至るまでの電力輸送システムが構築されており,送電線(図

1.1)は,発電所と変電所間,または変電所相互間を結び,大量かつ良質な電力を輸送する役割を

担っている.送電用鉄塔は,送電線の重要な構成要素のひとつを成し,電力輸送を担う電線を支 持するための構造物である.送電用鉄塔の建設は既に

100

年余りの歴史を有し,日本全国で約

25

万基が供用されている.送電用鉄塔は,鋼材で構成された骨組構造からなり,建築構造物や土木 構造物に代表されるコンクリート構造物と比較して軽量な構造物であるとともに,可撓性のある 架渉線を支持していることから,構造上,風荷重が支配的荷重となることが多い.

近年,高度経済成長期に集中的に整備された社会資本の老朽化に伴う維持管理が,社会的な問 題として大きく取り上げられているが,送電用鉄塔もまた例外ではない.送電用鉄塔の経年によ り耐力上懸念される問題として,部材の腐食ならびに基礎の不同変位が挙げられる.まず腐食に 関しては,経年による部材表面の亜鉛めっきの減耗や腐食の進行に伴い,劣化診断を行った上で,

周期的に防錆塗装を施すことによって,設備の維持管理が図られている.基礎の不同変位とは,

1.2

に示すとおり鉄塔の脚部に発生した基礎の相対的な変位のことであり,これにより,当初 設計で考慮していない二次的な部材応力の発生によって,設計荷重が作用した場合の耐荷力の低 下が,維持管理上,最も懸念される問題であると位置づけることができる.

1.1 送電線

(6)

- 2 -

鉄塔の設計は,基礎は固定,上部構造は静定構造物を仮定して許容応力度設計法にて行われて おり,基礎の変位の発生に関しては,鉄塔構造体としての裕度や接合部のボルトクリアランスに よる変位量の吸収などにより変位量が許容値以内であれば耐力上の問題はないものとされてき た.しかしながら,高度経済成長期またはそれ以前に建設された鉄塔の多くに許容変位量を超え るような鉄塔の存在が確認され,これらの鉄塔の合理的,実務的な鉄塔の耐荷力評価法が確立さ れておらず,より実態に即した合理的な耐荷力解析法の確立が必要となっている.

そこで本研究は,送電用鉄塔のうちその大多数を占める山形鋼鉄塔を対象に,基礎に不同変位 を生じた鉄塔の耐荷力について,より実態に即した合理的な解析法の確立を図ることを目的とし ている.加えて,鉄塔の支配的荷重である風荷重を合理的に見積もることによる耐荷力評価法の さらなる合理化,ならびに耐荷力の低下により部材交換が必要となった鉄塔の部材交換手順が鉄 塔部材へ与える影響を明らかにする.

a.

鉛直変位

b.

水平変位

1.2

基礎の不同変位

δ

δ

h

(7)

- 3 -

1-2 送電用鉄塔の概要

送電線は,電力の輸送を担う「電線」,避雷の役目を果たす「地線」(電線・地線をあわせて「架 渉線」と称される),電線を鉄塔から電気的に絶縁する「がいし」,電線や地線を支持する「鉄塔」

および「基礎」で構成されている.図

1.3

に送電線の構成を,図

1.4

に送電用鉄塔の各部の名称 を示す.なお,一般に鉄塔の脚と脚の間の水平距離を「根開き」と称している.

送電線の電圧が高いほど,大容量の電力を低損失で輸送することが可能となるため,増大する 電力需要と電源の大容量化・遠隔化に対応して,送電線の高電圧化が進められてきた.図

1.5

日本および海外における送電電圧の変遷を示す.送電線の高電圧化に伴う,電線と地面間,電線 相互間,電線と鉄塔間の所要離隔の増大や,送電容量の増大に伴う電線サイズや電線条数の増大 にあわせ,鉄塔の規模が増大してきた.図

1.6

に電圧別の鉄塔の規模の目安を例示する.

鉄塔

がいし 地線

電線

1.3

送電線の構成

(8)

- 4 -

1.4

送電用鉄塔

腕金(地線)

腕金(電線)

主柱材 腹材

基礎 根開き

A

B

C A

部詳細

B

部詳細

C

部詳細

(9)

- 5 -

1900 1920 1940 1960 1980 2000

200 400 600 800 1,000

電電圧(kV)

西群馬幹線 (1,000設計) ソ連

(1,150)

アメリカ (765) カナダ

(735)

ソ連

(500) 房総線

(500)

新北陸幹線 (275) ソ連,スウェーデン

(380)

アメリカ (285) アメリカ

(250)

アメリカ (220) 甲信幹線

(154) アメリカ

(154)

猪苗代 旧幹線 (110)

:架空線(海外)

:架空線(日本)

:架空線(日本)

1.5 送電電圧の変遷

1)

1.6 電圧別の鉄塔規模

0 20 40 60 80 100 120

66kV 154kV 275kV 500kV 1000kV

鉄塔高(m)

送電電圧

66kV 154kV 275kV 500kV 1000kV

(10)

- 6 -

1-2-1 鉄塔形状による分類

現在,電力系統の電気方式は

3

相交流方式が用いられており,送電方式は

1

回線あたり

3

つの 電線から構成された

3

3

線式が一般的である.このため,送電用鉄塔は,回線単位の

3

つの電 線を支持するための形状が採用されている.

四角鉄塔は,鉄塔の左右に回線単位の

3

つの腕金を垂直に配置した形状である.図

1.7(a)は垂

直配列

2

回線の四角鉄塔の例であるが,鉄塔用地の効率化利用のため,鉄塔を高くして

4

回線や

6

回線など多回線化を図った鉄塔もある.四角鉄塔の塔体は

4

面同一形状とし,部材の共通性か ら設計・製作・施工の面で効率化が図られている.

方形鉄塔は,図

1.7(b)のように,塔体の断面が長方形をなし,電線を水平に配列したものであ

る.電線の風荷重による主荷重を分担する塔体正面の幅を広げて,主柱材応力,基礎荷重の低減 を図っている.

えぼし形鉄塔は,鉄塔の中間部が細くなった形状からえぼし形鉄塔と呼ばれ,

1

回線送電線に よく用いられている.図は水平配列の例であるが,三角配列とされる場合もある.

門形鉄塔は鉄道や道路をまたいで建設する場合に用いられている.

(a)

四角鉄塔

(b)

方形鉄塔

(c)

えぼし形鉄塔

(d)

門形鉄塔

1.7

送電用鉄塔の種類

(11)

- 7 -

1-2-2 支持形式による分類

送電用鉄塔を電線の支持形式で分類すると,懸垂鉄塔と耐張鉄塔に分類される.懸垂鉄塔は,

鉄塔の腕金から吊り下げられた懸垂がいし装置の先端に電線を支持する形式であり,これは線路 に水平角度がなく,かつ鉄塔の高低差の小さな箇所で用いられる.耐張鉄塔は,鉄塔の腕金に耐 張がいし装置によって電線を引き留めて支持する形式であり,これは線路に水平角度がある場合 や高低差の大きい箇所で用いられるが,水平角度の影響等により懸垂鉄塔よりも荷重が大きく,

経済的に不利となる.送電線は,懸垂鉄塔が適用できる直線のルートが最も経済的であるが,近 年,用地上の事情から,直線のルートを形成することが容易ではなく,耐張鉄塔が使用されるこ とが多くなっている.図

1.8

に懸垂鉄塔の例と耐張鉄塔の例を示す.

(a)懸垂鉄塔(V

吊)

(b)懸垂鉄塔(I

吊)

(c)

耐張鉄塔

1.8 電線の支持形式による鉄塔の分類

(12)

- 8 -

1-2-3 骨組結構の種類

送電用鉄塔に採用されている骨組の結構は,表

1.1

のとおりである.

ダブルワーレン結構は,腹材を塔体の中心で交差させた結構であり,荷重が比較的大きく,塔 体の中間部以上の箇所に使用される場合が多い.

シングルワーレン結構は,腹材を交差させずにトラスを形成した結構であり,塔体幅が小さく,

荷重も比較的小さい場所(狭根開き鉄塔上部,送電用鉄柱,屋外鉄構等)に使用される場合が多 い.

プラット結構は,腹材に引張応力のみ分担させ,水平材に圧縮応力を分担させるような設計思 想に基づいた結構であり,送電用鉄塔の建設初期に採用された.現在では新設鉄塔の建設には採 用されていない.

K

結構は,節間水平材の中心から,主柱材節点に腹材を配置した結構であり,根開き,塔体の 幅の著しく広い場合,または積雪の多い地域で鉄塔最下部に使用される場合が多い.

ブライヒ結構は,ダブルワーレン結構の腹材交点に主柱材の座屈補剛材として水平材を配置し た結構であり,塔体下部に使用される場合が多い.

1.1

送電用鉄塔に採用されている骨組の結構

結構 ダブル

ワーレン

シングル

ワーレン プラット K ブライヒ

(13)

- 9 -

1-2-4 構成材料による分類

送電用鉄塔を構成材料により分類すると,等辺山形鋼で構成された山形鋼鉄塔と鋼管で構成さ れた鋼管鉄塔に大別できる.送電用鉄塔の建設は,品質,経済性,施工性等を考慮して,鉄塔製 作工場で加工した部材をボルト締結により現地で組み立てることが一般的であるが,部材同士の 接合は,山形鋼鉄塔の場合にはせん断接合方式が採られており,鋼管鉄塔の場合には,主柱材同 士は引張接合方式,腹材等の端部継手はせん断接合方式が採られている(図

1.9

参照).鋼管鉄塔 は,部材の端部にプレートやフランジなどの溶接加工が必要となるが,山形鋼鉄塔は,製作時の 溶接加工がほとんどなく,部材の加工が容易であり,鉄塔製作費の面で経済的に優れている.た だし,等辺山形鋼の市販の最大サイズが幅

250mm,厚さ 35mm

であるため,これを超えるサイズ の場合には,鋼管鉄塔が採用される.また,鋼管は山形鋼に比べて風力係数が小さいため,風荷 重が支配的な鉄塔に対しては設計上,有利となる.また,鉄塔の部材は座屈が支配的要因となる 場合が多く,同一断面積で見た場合,鋼管は断面二次モーメントが大きく,座屈耐力の面から優 位性があり,鉄塔の軽量化に有利となる.これらのことから,鋼管鉄塔の適用により,部材の軽 量化による運搬・鉄塔組み立て費の低減や基礎荷重の低減による基礎の縮小化に伴う基礎工事費 の低減が図れる場合がある.鋼管鉄塔には,部材の腐食に対するメンテナンス性の向上を目的に,

腹材に山形鋼を用いた

PL

鉄塔(

P

は主柱材に用いる鋼管,

L

は腹材に用いる山形鋼を意味する)

や,主柱材の座屈耐力の向上を目的に,鋼管の内部にコンクリートを充填した部材を用いたコン クリート充填鋼管鉄塔を用いることもある.表

1.2

に鉄塔の構成材料により分類した各種鉄塔の 特徴を示す.図

1.10,図 1.11

に山形鋼鉄塔ならびに鋼管鉄塔の接合部の例を示す.

(a)引張接合方式(鋼管同士の継手) (b)せん断接合方式(山形鋼鉄塔,鋼管鉄塔の腹材)

1.9 鉄塔部材の接合方式

(14)

- 10 -

1.2

構成材料により分類した鉄塔の特徴

主柱材 腹材

山形鋼鉄塔

 主柱材,腹材の他,すべての部材に等辺山形鋼を使用し,古くから広 く使用されている鉄塔である.製作は容易であるが,大型鉄塔になると 部材数が多く,また市販の最大サイズが幅250mm,厚さ35mmで,この サイズを超える鉄塔には適用できない.

XT鉄塔

 主柱材が単一山形鋼で強度不足となる場合,山形鋼を十字に組み合 わせた十字鋼を使用し,腹材に山形鋼をTの字に組み合わせたT字鋼を 使用したものである.部材の構造偏心が少ない分,山形鋼鉄塔に比べ 重量は軽くなり,かつ部材数も少なくなる.しかし,部材や接合部の加工 工数が増える.

XP鉄塔

 主柱材に十字鋼,腹材に中空鋼管を使用したもので,XT鉄塔に比べ 重量はさらに軽くなり,鉄塔風圧も減少するが,鋼管接合部の溶接部が 必要なため加工工数が増大する.

PL鉄塔

 主柱材に中空鋼管,腹材に山形鋼を使用したもので,中空鋼管鉄塔よ りも重量が重くなるが,主柱材のみの溶接となることで製作しやすく,腹 材が山形鋼となることで外観のみによる劣化評価が可能となり,メイン テナンス性が向上する.

中空鋼管鉄塔

 主柱材,腹材に中空鋼管を使用したもので,XP鉄塔よりもさらに重量 が軽くなり,鉄塔風圧も減少するが,部材接合部のすべてに溶接が必 要であり,加工工数が増大する.鉄塔風圧の影響が大きな鉄塔には山 形鋼鉄塔に比べ有利となる.

MC鉄塔

 中空鋼管鉄塔の主柱材にコンクリートを充填し,座屈強度を上昇させ たもので,さらに鋼材重量は軽くなり,鉄塔風圧も減少できるが,鋼管内 の全断面にコンクリートを重点するため,鉄塔重量とコンクリート充填費 用が増加する.

TP鉄塔

 中空鋼管鉄塔の主柱材の内面に,遠心力を利用してコンクリートを所 定の厚さに圧着充填させたもので,MC鉄塔に比べてコンクリート量を少 なくすることができ,鉄塔重量が軽くできるが,コンクリート充填費用が 増大する.

種類 構成材料

特徴

コンクリート

コンクリート

(15)

- 11 -

最下部 中間部

1.10

山形鋼鉄塔の接合部

最下部 中間部

1.11 鋼管鉄塔の接合部

(16)

- 12 -

送電用鉄塔の接合部の構造については

JEC-127

-19792)に規定されており,製作性,施工性,経済 性を考慮して鉄塔製作仕様の標準化3)が図られている.表

1.3

にボルトサイズに応じたボルト穴 径,ピッチ,部材端寸法を示す.また,表

1.4

にボルトゲージに関する規定を示す.

1.3 ボルト穴径,ピッチおよび部材端寸法の規定

1.4 ボルトゲージの規定

e1

(≧2.0d )

e2

(≧1.5d )

e1

(≧1.5d )

e2

(≧1.3d )

M16 17.5 50 40 125 35 24 25 21

M20 21.5 60 50 160 40 30 30 26

M22 24.0 65 55 175 45 33 35 20

M24 26.0 75 60 190 50 36 40 32

単位:mm, d :使用ボルトのねじの呼び ボルト

種類

ボルト 穴径

主柱材及び 腕金主材

腹材及び 腕金吊材

ピッチ 部材端寸法

標準

≒3d

最小

≒2.5d

最大

≒8d

e1

e1 e1

e2

ゲージ

g1

g2

g3

説明

ボルトの部材軸に沿って1列に設ける場合 ボルトを部材軸に沿って千鳥に設ける場合

b g1

g2

e2 g3

b

t

r

2 3

2

1

0 . 65

2 1

e b g

r t d g

b b

g

  ただし 以下

(17)

- 13 -

1-2-5 送電用鉄塔の基礎

送電用鉄塔に採用されている基礎は,直接基礎,杭基礎,深礎基礎に大別される.直接基礎は,

一般に山岳,丘,畑地などの比較的良質な地盤に適用され,

4

脚独立に逆

T

字形の形状を用いた ものと,不同変位を抑制するために

4

脚を一体型にした形状(マット形)のものがある.杭基礎 は,床板直下の地盤が軟弱で,直接基礎では所定の圧縮耐力が得られない箇所に適用され,独立 基礎にする場合と一体型基礎にする場合がある.杭の種類は,既製杭と場所打杭があり,既製杭

PC

杭,鋼管杭などが適用され,場所打ち杭は既製杭の施工が困難な箇所に適用される.深礎 基礎は,山岳地など地形,地質条件等により,杭打ちのための施工機械の搬入や施工が不可能で,

かつ地下水の排水処理が可能な場所に適用される.なお,地盤が良質な岩盤などの場合は,アン カー基礎が採用されることもある.表

1.5

に基礎の種類を示す.

1.5

基礎の種類

基礎種類 概要図

直接基礎

杭基礎

深礎基礎

独立基礎 一体型基礎

独立基礎 一体型基礎

(18)

- 14 -

1-3 送電用鉄塔設計の概要

1-3-1 荷重

送電用鉄塔は,電気事業法により定義された電気工作物に該当し,経済産業省令で定められた

「電気設備に関する技術基準4)(以下,電技という)に適合するよう設計・維持されなければな らない.設計荷重は,高温季(夏から秋にかけての季節)において考慮する甲種風圧荷重と低温 季(冬から春にかけての一般的に強風はない季節)に考慮する乙種風圧荷重または丙種風圧荷重 に区分される.甲種風圧荷重は風速

40m/sec

の風があるものとして仮定した場合に生じる荷重で あり,風圧を受けるものの区分に応じて,表

1.6

に示す風圧値が定められている.乙種風圧荷重 は,氷雪の多い地方において,架渉線の周囲に厚さ

6mm,比重 0.9

の氷雪が付着した状態に対し,

甲種風圧荷重の

0.5

倍を基礎として計算した荷重である.丙種風圧荷重は氷雪の多い地方以外の 地方において,架渉線のへの氷雪の付着を考慮せず,甲種風圧荷重の

0.5

倍を基礎として計算し た荷重である.上記の高温季,低温季のそれぞれの条件に対して,架渉線の切断を考慮しない場 合の荷重を常時想定荷重,架渉線の切断を考慮する場合の荷重を異常時想定荷重として定めてい る.これらに加え,異常着雪時想定荷重として,河川横断箇所の送電線の径間長が

600m

を越え るものや,開けた谷その他の地形的に風が通り抜けやすい箇所を横断するものについては,架渉 線の周囲に比重

0.6

の雪が同心円状に付着した状態に対し,甲種風圧荷重の

0.3

倍を基礎として 計算した荷重が定められている.ここで,着雪厚さについては,当該地域及びその周辺地域にお ける過去の着雪量を考慮し,さらに当該地域の地形等を十分考慮した上,適切に定めたものであ ることとされている.

1.6 甲種風圧荷重に考慮する風圧

丸形のもの 780

六角形または八角形のもの 1470

1670 2840 880 980 1370

風圧を受けるものの区分 構成材の垂直投影面に

加わる圧力(Pa)

鉄塔

架渉線

単柱

がいし装置

鋼管により構成されるもの(単柱を除く.)

その他のもの(腕金類を含む.)

多導体を構成する電線 その他のもの

(19)

- 15 -

送電用支持物設計標準

JEC-127

-19792)(以下,

JEC

という)は,電気学会の電気規格調査会で定 めた標準規格であり,規模の大きい鉄塔や特殊箇所などを対象に,電技の設計を補完する目的で 自主保安的に用いられている.電技は,全国一律の風速を基礎とした荷重が定められているのに 対し,

JEC

では,自然風の時間的,空間的変動性状や着氷雪現象の実態を把握して地域別に評価・

区分された設計風速,着雪厚さが定められている.想定荷重としては,ごく稀に発生する自然の 外力を想定した強風時荷重,着雪時荷重,長期にわたって持続的に加わる荷重を想定した平常時 荷重および工事あるいは保守作業時等を想定した作業時荷重が定められている.強風時荷重の算 定に用いる基準速度圧は,最大瞬間風速の再現期間

50

年の値をベースに定められており,地域

に応じて

100~240kg/m

2の範囲で

6

分類されている.強風時に考慮する基準速度圧地域区分を図

1.12

に,着雪時に考慮する基準着雪量地域区分を図

1.13

に示す.

1.7

に,電技および

JEC

の風荷重に係わる規定内容を比較して示す.

1.12

基準速度圧地域区分(高温季の例)

地域区分 速度圧 凡例

240kg/m2 北緯30°以南の諸島

200kg/m2

175kg/m2

150kg/m2

125kg/m2

100kg/m2

(20)

- 16 -

1.13

基準着雪両地域区分(湿型着雪の例)

1.7 電技および JEC

の風荷重に係わる規定内容

項目 電技 JEC127-1979(強風時)

基本となる風速 ・地上15m高さにおける10分間平均風速

・40m/sec

・地上高さ10mにおける突風風速

・地域別風速(6地域)

各種風圧荷重

(高温季)

・鉄塔風圧(山形)2840(Pa)(地上40m以下)

・鉄塔風圧(鋼管)1670(Pa)(地上40m以下)

・架渉線風圧 980(Pa)

・がいし風圧 1370(Pa)

(低温季)

高温季の1/2の風圧荷重

地域別の風圧荷重

・鉄塔風圧,架渉線風圧,がいし風圧ともに基準速 度圧区分別,高さ別に標準風圧値が与えられてい る.

・高温季と低温季の基準速度圧の分布が異なる マップで与えられている.

風速の地上高逓増 鉄塔風圧に関しては10分間平均風速に対して,べ き指数1/7のべき乗則で逓増する.

突風風速に対して,べき指数1/8のべき乗則で逓増 する.

突風率

・平均風速30m/sec以下では1.45

・平均風速40m/sec以上では1.35

・平均風速30~40m/secでは直線内挿

架渉線風圧の径間低減 以下の径間低減係数を架渉線風圧に考慮する.

 β=0.5+40/S(S:径間長(m)) 架渉線の風力係数 ・1.0(単導体の場合)

・0.9(多導体の場合)

・0.95~1.05

・多導体の風圧低減は考慮しない.

設計風向 ・線路方向に対して0°,90°

・超高圧鉄塔では60°風向を考慮する.

・線路方向に対して0°,90°,60°を考慮

許容応力 ・常時荷重:鋼材の降伏点・座屈耐力の1/1.5

・異常時荷重:降伏点・座屈耐力

・降伏点,座屈耐力

地域区分 着雪量 凡例

WⅠ 30mm WⅡ 20mm WⅢ 10mm

WⅣ 0mm

(21)

- 17 -

架空送電規程5)は,日本電気技術規格委員会(

JESC

)が定める民間規格であり,電技および電 技解釈の内容と整合を図るとともに,自主保安に基づく自己責任原則を基本とした民間の自主規 格・基準である.鉄塔設計に使用する設計荷重は,電技で示されている荷重に加え,台風による 強風が局地的に強められる特殊箇所に施設する場合の強風時荷重が規定されている.

また,送電用鉄塔は,従来から電技に基づいて設計されたものは,地震に対しても十分安全に 耐えられるものとされている.これは,これまでにわが国において発生した数々の地震に対して 地盤の液状化,隆起,陥没,地割れなど地盤変状に起因した被害はみられるものの,地震時の振 動に伴う部材の損傷は皆無であるという事実からも裏付けられており,平成

7

年兵庫県南部地震,

平成

12

年鳥取県西部地震,平成

16

年新潟県中越地震においても,地盤変状に伴う二次的被害を 除き,地震動による上部構造部材の被害はなく,大規模地震に対しても十分に安全であることが 確認されている.このため,地震荷重に対する設計は通常の場合,省略されている.ただし,重 要度の高い鉄塔や特殊な構造の鉄塔,鉄塔と基礎が共振する可能性がある場合などは,耐震設計 が実施されることがある.

(22)

- 18 -

1-3-2 使用鋼材

送電用鉄塔に使用する鋼材は,電技により日本工業規格(

JIS

)に制定された適切な鋼材または これに準ずる構造用鋼材を用いるものと規定されている.表

1.8

に鉄塔に使用する代表的な鋼材 の種類を示す.表

1.9

に使用材料の変遷について,送電電圧,鉄塔規模・種類とともに示すよう に,鉄塔の大型化に伴って,より強度の高い鋼材が採用されてきた.これは使用鋼材の高強度化 に伴い,鉄塔の軽量化が図れ,建設コスト(運搬,組立費等)の低減に寄与するためである.

1.8 鉄塔に使用する鋼材

鋼材 種類 規格

SS400,SS540 JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材 SH590S JIS G 3129 鉄塔用高張力鋼鋼材 STK400,STK540 JIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管 STKT590 JIS G 3474 鉄塔用高張力鋼管 SS400 JIS G 3101 一般構造用圧延鋼材 SM490,SM520,SM570 JIS G 3106 溶接構造用圧延鋼材

ボルト 5.8,6.8,9.8 JIS B 1051 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質 鋼管

鋼板 山形鋼

1.9 使用鋼材の変遷

6)

送電電圧

(kV) 鉄塔規模

(重量)

鉄塔種類

(構成材料)

鋼材の 引張強さ

(材質)

山 形 鋼

鋼 管

1960 1970 1980 1990 2000 2010 年代 1910 1920 1930 1940 1950

66 115

77 154 220 275 500 1,000

30ton級以下程度

100ton以下程度

150ton以下程度

300ton以下程度

山形鋼鉄塔 XT鉄塔

XP鉄塔

XL鉄塔 MC鉄塔

中空鋼管鉄塔 環境調和鉄塔

TP鉄塔 PL鉄塔

SS400 SS490

SS540

SH590S STK400

STK490

STK510 STK540

STKT590

(23)

- 19 -

送電用鉄塔に使用する鋼材の対応強度は,以下のとおりである.

(1)

電技

・常時想定荷重:降伏点(または耐力)の

1/1.5

・異常時想定荷重:塔体は降伏点(または耐力),腕金は降伏点(または耐力)の

1/1.5

・異常着雪時荷重:降伏点(または耐力)

(2)JEC

・強風時荷重および着雪時荷重:降伏点(または耐力)

・平常時荷重および作業時荷重:降伏点(または耐力)の

1/1.5

使用鋼材の許容応力は,電技に規定されており,常時想定荷重に考慮する許容引張応力,許容 圧縮応力,許容曲げ応力,許容せん断応力および許容支圧応力は,表

1.10

に規定される値とされ,

材質および強度区分別許容応力は表

1.11

に示すとおりである.

1.10

使用鋼材の許容応力

許容応力(N/mm

2

板厚4mm以上の場合 その他の場合

備考 1 σ

y

は,鋼材またはボルトの降伏点または耐力(N/mm

2

を単位とする)

    2 σ

B

は,鋼材またはボルトの引張強さ(N/mm

2

を単位とする)

許容応力の種類

許容引張応力

許容圧縮応力または許容曲げ応力

許容せん断応力

許容支圧応力

B

5 . 1

7 . 0

y

5 . 1

1

y

5 . 1

1

y

3 5 . 1

1

y

3 5 . 1

7 . 0

Bの場合

y

 

Bの場合

y

  0 . 7

Bの場合

y

 

Bの場合

y

  0 . 7

y

25 . 1

y

1

.

1

(24)

- 20 -

1.11

材質および強度区分別許容応力

引張 圧縮 曲げ せん断 支圧

t≦16 245 400 163 163 163 94 269

16<t≦40 235 400 156 156 156 90 258

t≦16 400(378) 540 252 266 266 145 440 16<t≦40 390(378) 540 252 260 260 145 429 SH590S t≦35 440(413) 590 275 293 293 158 484

STK400 - 235 400 156 156 156 90 -

STK540 - 390(378) 540 252 260 260 145 - STKT590 - 440(413) 590 275 293 293 158 -

t≦16 245 400 163 163 163 94 269

16<t≦40 235 400 156 156 156 90 258

t≦16 325 490 216 216 216 125 357

16<t≦40 315 490 210 210 210 121 346 t≦16 365(364) 520 242 243 243 140 401 16<t≦40 355 520 236 236 236 136 390 t≦16 460(399) 570 266 306 306 153 506 16<t≦40 450(399) 570 266 300 300 153 495 SH590P 6<t≦25 440(413) 590 275 293 293 158 484

5.8 - 420(364) 520 242 - - 140 462

6.8 - 480(420) 600 280 - - 161 528

9.8 - 720(630) 900 420 - - 242 792

注) ( )内の値は0.7σ

B

ル ト 山 形 鋼

SS400 SS540

鋼 管

鋼 板

SS400 SM490 SM520 SM570 種

材質記号 及び 強度区分

厚さ t(mm)

降伏点 σy (N/mm

2

)

引張強さ σ

B

(N/mm

2

)

許容応力度(N/mm

2

)

許容座屈応力は,部材の有効細長比の区分により,下式にて計算された値であることとされて いる.

 

k

0

2 2

1

0

100 100 

 

 

 

 

 

ka k k

ka

 

 

 (1.1)

k

2

100

93

 

 

 

k

ka

 (1.2)

ここに,

ka:許容座屈応力(N/mm2

k:部材の有効細長比(

k

k

/ r

r

は部材の断面の回転半径)

 , 

ka0

, 

1

, 

2:構成材の区分および降伏点に応じ,それぞれ表

1.12

に示す値

上式は,短柱域については

Jezec

の近似解をもとにした偏心座屈応力に対して

1.5

の安全率を,

長柱域については,

Euler

座屈式に対して安全率

2.2

を考慮した式となっている.表

1.12

に示され

(25)

- 21 -

た諸定数は,部材の断面形状と構造上生ずる偏心量の相違により,下記

3

区分とされている.

(a)

:鋼管,箱型断面材,十字型断面材その他偏心の極めて少ないもの

(b)

:単一山形鋼主柱材その他の偏心の比較的少ないもの

(c)

:片側フランジ接合山形鋼腹材その他の偏心の多いもの

降伏点の値が

235(N/mm

2

)

の鋼材を例とし,有効細長比

kに対する上記

(a),(b),(c)

各区分におけ る許容座屈応力の値を示せば図

1.14

のとおりである.

1.12 許容座屈応力の計算式における諸定数

降伏点

(N/mm2) Λ σka0

(N/mm2) κ1 κ2

σka0 上限値 (N/mm2)

備考

STK400 235 100 156 0 63

STK540 390 75 260 0 168

STKT590 440 70 293 0 211

SS400(t≦16mm) 245 105 154 2 61

SS400(t>16mm) 235 110 148 2 57

SS540(t≦16mm) 400 85 252 5 165

SS540(t>16mm) 390 85 245 4 156

SH590S 440 80 277 5 200

SS400(t≦16mm) 245 135 153 76 0 98

SS400(t>16mm) 235 140 147 71 0 94

SS540(t≦16mm) 400 105 250 158 0 160 SS540(t>16mm) 390 110 244 152 0 156

SH590S 440 100 275 182 0 180

a.鋼管

b.山形鋼

c.山形鋼 種類

鋼管,箱型断面材,十字 型断面材その他偏心の 極めて少ないもの

単一山形鋼主柱材その 他の偏心の比較的少な いもの

片側フランジ接合山形鋼 腹材その他の偏心の多 いもの

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0 50 100 150 200 250

許容応力(N/mm2)

有効細長比λk

(a) (b) (c)

1.14 有効細長比に対する許容座屈応力(σ

y

=235N/mm

2の場合)

(26)

- 22 -

1.13

有効細長比の理論値

材端の 支持状態

理論値(   ) 座屈形

両端ピン 両端固定 一端ピン

他端固定

一端自由 他端固定

k

 0 . 5  0 . 7  2 . 0 

圧縮材の許容座屈応力を求める場合には,材端支持状態を考慮し,有効細長比

k

k

/ r

をと ることされ,支持点間距離

が一定であっても材端の支持条件によって有効座屈長さ

kは変化す る.表

1.13

に支持条件を完全にピンあるいは固定とした場合の有効座屈長さの理論値を示す.

一般に送電用鉄塔の場合,部材の両端が支持され,かつ支持条件は通常完全ピンではないため,

材端の拘束効果によって有効座屈長さ

kは,支持点間距離

より減少する.ボルト接合された部 材の座屈耐力は,両端ピンの単材に比べてかなり増大することが実験的にも確認されており,一 般に部材の有効座屈長さを

k

 0 . 9 

としている.

一方,支持点の剛性を特に大にするよう考慮した腹材あるいは小規模な山形鋼を用いた支持物 の腹材で

2

本以上のボルトで接合した場合では,

k

 0 . 8 

まで減じることができるとされてい る.

1-3-3 基礎設計

基礎は,上部構造を安全に支持し,構成部材に有害な影響を及ぼすような変位を起こさないよ うに設計するものとし,その許容支持力は,電技(常時荷重)

JEC

(平常時荷重・作業時荷重)

の場合は降伏支持力の

1/2.0

を,電技(異常時荷重)

JEC

(強風時荷重・着雪時荷重)の場合は 降伏支持力の

1.5/2.0

を採ることとされている.地盤の支持力の算定は,地盤の種類ごとに決めら れた引揚力に抵抗する土の有効角度,土の単位質量,圧縮耐力を用いて算定する簡便な方法と,

詳細な地盤調査を行い,土質力学に基づいて合理的に算定する方法があるが,近年では後者によ るものが一般的である.

(27)

- 23 -

1-4 基礎の不同変位に関する既往の研究

本項では,鉄塔の不同変位に関する既往の研究ならびに他分野における不同変位に対する動向 を整理する.

(1)電気協同研究第 20

巻第

4

7),送電用大型鉄塔,第

5

章「基礎の変位と鉄塔の応力」

当時まれにみる大型台風によりかなりの被害を被ったことを発端に,骨組構造自体のみならず,

付随的または二次的影響にまで掘り下げて検討する必要が生じ,それまでにほとんど検討されて こなかった「基礎の変位が鉄塔強度におよぼす影響」について検討されている.ここでは,電源 開発株式会社の佐久間幹線

A

型鉄塔,関西電力株式会社の丸山幹線

B

型鉄塔の実在鉄塔をモデル として,鉄塔の

4

脚のうち

1

脚の支持条件を固定,弾性支持,自由に分類し,立体トラス解析を 実施し,常時荷重を与えた場合,脚部に単位荷重を与えた場合の主柱材,腹材への発生応力の計 算例に基づき,

4

脚固定とした場合と脚変位を有する場合の差異および節間補強材の有無による 発生応力の傾向を示し,節間補強材の必要性や留意点,変位による鉄塔への影響の大きい最下

2

3

パネルの主柱材への部材裕度の増加の必要性を指摘している.しかしながら,ここでの解析 法は,鉄塔のモデルは部材をピン接合されたトラス部材として扱い弾性計算を行っていることと,

実際に生じうる接合部のボルトすべりについては考慮されていない.また,あくまでも解析的な 検討のみであり,実験や実測との検証がなされておらず,実際の鉄塔の挙動との整合性の確認が なされてはいない.

(2)電気協同研究第 25

巻第

2

8),送電用鉄塔基礎,第

6

章「基礎の変位と鉄塔の応力」

1

脚自由,他脚固定とし自由の

1

脚に垂直荷重を加えた場合について,前述の立体トラス解析 結果と平面トラスとして計算した略算法の結果の比較が示されている.主柱材応力,相対変位は 実用上十分な対応が確認できたものの,腹材応力は差異が大きいという問題が指摘された.また,

接合部のボルトすべりや部材の元たわみの影響などによる非線形性の影響を考慮する係数とし て塑性変形倍数を導入し,これを過去の強度試験等から調査して定めた上で,略算法により基礎 不同変位による部材の応力増加率を計算し,鉄塔規模や部位に対する応力の傾向と設計時に確保 すべき裕度に対する提案がなされている.しかしながら,この略算法による応力値については,

実験的な検証がなされるにいたっておらず,解析的な検討にとどまっているに過ぎない.

(3)

電気協同研究第

30

巻第

2

9),送電用鉄塔特殊基礎,第

10

章「基礎の変位と影響」

前に示した文献

7)

8)

のレビューを中心に記述されているのに加えて,基礎の不同変位に対す る許容変位量の記述がみられる.ここでは,設計応力に対して

10%

の耐力減少は十分補えるもの とし,許容変位量としては,鉛直変位で根開きに対して

1/1200

程度の値が参考になる旨,記述さ れている.一方,水平変位については,

5~10mm

程度が許容変位量の目安となるが,腹材につい てはかなりの二次応力が生じるため,部材の選定にあたっては

10%程度の余裕を採ることを推奨

(28)

- 24 -

している.また,変位の抑制と対策方法について触れ,施工や加工の精度の確保の他,基礎型の 適切な選定,上部構造の部材裕度の確保の必要性,および最下節の補強方法の具体例について示 されている.ここでは,許容変位量について言及されてはいるものの,弾性挙動を基本とした解 析的な検討にとどまっており,その妥当性の検証は今後の課題と位置づけられる.

(4)関西電力株式会社他 3

社による実規模試験10),11)

77kV

用実物大鋼管鉄塔の部分模型を用いて,基礎の

1

脚を変位させ,上部構造体への影響を 調査した.接合部は,リーマボルトを使用してボルト孔クリアランスの影響を小さくし,引張側

1

脚を変位可動脚とすべく板ばねにより支持し,その形状,寸法,材質を変えることで脚変位 の条件を可変としている.ここでは,実験の結果を立体トラス解析との比較により検討をしてい る.ただし,立体トラス解析の鉄塔のモデル化は,各部材の節点はピンとして設定し,変位可動 脚のバネ構造は等価な弾性伸びを有する部材を仮定して挿入している.実験で計測した測定応力 と立体トラス解析の応力がよく合っているとの結果を示しているが,解析モデル,すなわち接合 部のボルトすべりや境界条件の与え方などが,実態と合っていないことは課題として挙げられる.

(5)JEC-127

-19792)の記載内容

基礎の許容変位量について述べられており,鉄塔構造体としての裕度やボルトクリアランスに よる変位量の吸収などを考慮すれば,不同変位量は,鉄塔根開きに対して,鉛直方向に

1/1200

また水平方向に

1/800(たとえば根開き 6m

の場合,鉛直方向:5mm,水平方向:7.5mm)程度ま で許容できると考えられるとされている.これは,文献

9)の検討が根拠となっているものである.

ここで示されている基礎の許容変位量は,基礎設計や既設鉄塔の健全性を判断する基準として,

今日まで広く使用されてきている.しかしながら,ここで述べられている許容変位量は,根開き をパラメータとしたひとつの目安を与えるものといえるが,鉄塔の種類,規模,構造などに応じ て,鉄塔への影響は変わるものと考えられ,合理的な評価方法の構築が求められている状況にあ る.

(6)東京電力株式会社による実規模試験

12)

東京電力株式会社では,

UHV

送電線の建設にあたり,基礎の不同変位が鉄塔部材に及ぼす影 響について,実規模の

UHV

鉄塔(鋼管鉄塔)を対象に,実験と解析により検討した.解析は線 形立体応力解析を基本に,接合部のボルトすべりについては仮想仕事の原理に基づいた検討方法 により考慮し,結果,実験と解析でよい対応を示していることが示されている.また,極限耐力 実験から,従来の規定値である許容鉛直変位量(根開比

1/1200

,許容水平変位量(根開比

1/800

を与えた時の応力は,極限耐力時の応力の

0.15

倍以下となることが確認され,この範囲であれば 鉄塔の潜在裕度により吸収できるとされている.鋼管鉄塔を対象とした許容変位量に対する一つ の実験的検証事例を与えているものの,許容変位量を超えた場合の具体的な評価法の構築につい ては課題が残されている.

(29)

- 25 - (7)

土木分野の現状

土木分野では,道路橋示方書13)において,基礎の安定に関する基本事項として,許容変位につ いて述べられている.まず,常時,暴風時及びレベル

1

地震時に対しては,橋の健全性を保持す るように,上部構造及び下部構造から決まる変位を考慮することとされている.上部構造から決 まる許容変位は,上部構造に有害な影響を及ぼさないように基礎の変位を制限する値であり,橋 脚天端や支承位置での変位が与えられた場合の値に相当する.下部構造から決まる許容変位は,

弾性体基礎の過大な水平変位は有害な残留変位の原因となることから,基礎の残留変位が工学的 に弾性挙動として評価できる範囲におさえる意味で規定され,許容水平変位は,多数の載荷試験 結果に基づき,原則として基礎幅の

1%とされている.

ただし,基礎幅が

5m

を超えるものは

50mm,

杭径

1.5m

以下の杭基礎においては

15mm

とされている.次に,レベル

2

地震時における基礎の 許容変位は,上部から決まる許容変位として,橋の供用性及び上部構造の修復性に影響を及ぼさ ないように基礎の変位を制限する必要があるとされ,一般には落橋防止システムの設計にこの変 位を考慮するとされる.下部構造から決まる許容変位は,基礎の塑性化を考慮した設計をする場 合,過大な残留変位を防止する観点から基礎に生じる変位を制限するのが望ましいことから,こ れを規定するものであり,橋脚基礎の場合,基礎天端あるいはフーチング底面における回転角

0.02rad

程度を目安とすることとされている.以上のように,土木分野では,上部構造から決まる

基礎の許容変位量については一義的に定めずに,個別に検討することを求めている.

(8)建築分野の現状

建築分野では,建築基準法施行令

38

条において,「建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及 び外力を安全に地盤に伝え、 かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしな ければならない。」とされ,建設省告示第

1347

号 建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準 を定める件では「構造計算を行うに当たり、自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建 築物又は建築物の部分に有害な損傷、 変形及び沈下が生じないことを確かめること。」とされて いる.建築基礎構造設計指針 14)では,建物の要求性能に対して沈下量の評価を行うものとされ,

沈下限界値の目安について触れられており,鉄骨造の場合,上限変形角として

3.5

×

10

-3

rad

,相対 沈下量として

1.5cm

(標準値)

3.0cm

(最大値)となっている.また,住宅の品質確保の促進等 に関する法律の規定に基づく住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準のうち,傾斜について,

構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性として,可能性が低いものは

3/1000

未満の勾配,可 能性が一定程度存するものは

3/1000

以上

6/1000

未満の勾配,可能性が高いものは

6/1000

以上の 勾配として示されている.送電用鉄塔では,一般に4本の主柱材を有するトラス骨組構造となっ ており,独立基礎の場合,基礎の不同変位が鉄塔の主要構造部材(最下節の主柱材,腹材)の変 形,ひずみに直接影響することとなる.このため,建築分野で示されている許容変位量は,送電 用鉄塔には過大なものであると考えられる.

図 1.11  鋼管鉄塔の接合部
図 2.8  代表的地域の地盤沈下の経年変化 3)
図 2.10-1  主柱材の変形状況:(1)主柱材の蛇行
図 2.11-1  腹材の変形状況:(1)腹材のたわみ
+7

参照

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