【学位論文審査の要旨】
首 都 大 学 東 京 人 文 科 学 研 究 科 人 間 科 学 専 攻 日 本 語 教 育 学 教 室 学 位 論 文 審 査 要 旨 ( 課 程 博 士 )
論 文 提 出 者 : 村 田 裕 美 子
論 文 題 目 :
「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 を め ぐ る コ ー パ ス 研 究 と 実 践
- ド イ ツ 語 圏 の 日 本 語 教 育 を 対 象 と し て -
審 査 委 員
主 査 : 東 京 都 立 大 学 人 文 科 学 研 究 科 奥 野 由 紀 子 准 教 授 副 査 : 東 京 都 立 大 学 人 文 科 学 研 究 科 ダ ニ エ ル ロ ン グ 教 授 副 査 : 東 京 都 立 大 学 人 文 科 学 研 究 科 長 谷 川 守 寿 教 授
目 次
第1 章 序 章 ... 1
1.1 背 景 と 目 的... 1
1.2 本 論 文 の 構 成 ... 2
第 2 章 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 と 言 語 政 策 的 背 景 ... 5
2.1 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 の 変 遷 ... 5
2.1.1 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 : 初 の 日 本 語 講 座 か ら 初 の 日 本 学 設 立 ま で ... 5
2.1.2 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 : 日 独 対 照 研 究 か ら 日 本 語 学 習 ブ ー ム 到 来 ま で ... 6
2.1.3 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 : 日 本 語 教 員 養 成 か ら CEFRま で ... 8
2.2 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 の 現 状 ... 10
2.2.1 ド イ ツ の 日 本 語 教 育 事 情 : 機 関 報 告 ... 10
2.2.2 ド イ ツ の 日 本 語 教 育 事 情 : 高 等 教 育 機 関 の 実 践 報 告 ... 11
2.2.3 ド イ ツ の 日 本 語 教 育 事 情 : 事 例 研 究 ... 13
2.3 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 の 課 題 ... 17
2.3.1 教 育 現 場 の 側 面 か ら み え る 課 題 ... 17
2.3.2 言 語 研 究 の 側 面 か ら み え る 課 題 ... 18
2.3.3 CEFR の 側 面 か ら み え る 課 題 ... 19
2.4 ま と め ... 21
第 3 章 研 究 背 景 ... 22
3.1 第 二 言 語 習 得 研 究 と コ ー パ ス を め ぐ る 先 行 研 究 ... 22
3.1.1 第 二 言 語 習 得 研 究 の 変 遷 ... 22
3.1.2 コ ー パ ス 研 究 の 発 展 ... 25
3.1.3 研 究 成 果 の 概 観 ... 27
3.2 「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 を め ぐ る 先 行 研 究 ... 28
3.2.1 研 究 の 変 遷 ... 29
3.2.2 研 究 成 果 の 概 観 ... 33
3.3 ま と め ... 34
第 4 章 本 研 究 の 枠 組 み ... 36
4.1 本 研 究 の 課 題 ... 36
4.2 本 研 究 の 分 析 方 法 ... 38
4.2.1 研 究 課 題 1の デ ー タ と 方 法 ... 38
4.2.2 研 究 課 題 2の デ ー タ と 方 法 ... 38
4.2.3 研 究 課 題 3の デ ー タ と 方 法 ... 39
4.3 ド イ ツ 語 話 者 を 対 象 と し た 学 習 者 コ ー パ ス ... 39
4.3.1 開 発 背 景 ... 39
4.3.2 ド イ ツ 語 話 者 話 し 言 葉 コ ー パ ス ... 40
4.3.3 ド イ ツ 語 話 者 書 き 言 葉 コ ー パ ス ... 43
4.3.4 学 習 者 コ ー パ ス の 今 後 の 展 開 ... 46
4.4 ま と め ... 47
第 5 章 「 話 す 」 と 「 書 く 」 の 産 出 活 動 と 習 熟 度 に よ る 言 語 使 用 の 実 態 ... 49
5.1 本 章 の 目 的... 49
5.2 先 行 研 究 ... 50
5.3 デ ー タ と 分 析 方 法 ... 51
5.3.1 デ ー タ ... 51
5.3.2 分 析 方 法 ... 53
5.4 結 果 ... 55
5.4.1 結 果 [ サ ブ 課 題 1-1] ... 55
5.4.2 結 果 [ サ ブ 課 題 1-2] ... 59
5.5 考 察 ... 62
5.5.1 考 察 [ サ ブ 課 題 1-2] ... 62
5.5.2 考 察 [ サ ブ 課 題 1-2] ... 63
5.6 ま と め ... 64
第 6 章 「 話 し 言 葉 」 の リ ハ ー サ ル 効 果 の 影 響 ... 66
6.1 本 章 の 目 的... 66
6.2 先 行 研 究 ... 67
6.2.1 リ ハ ー サ ル 効 果 に よ る 産 出 の 違 い ... 67
6.2.2 自 動 化 に よ る 産 出 の 違 い ... 68
6.3 デ ー タ と 分 析 方 法 ... 69
6.3.1 デ ー タ ... 69
6.3.2 分 析 方 法 ... 71
6.4 結 果 ... 72
6.4.1 結 果 [ サ ブ 課 題 2-1] ... 72
6.4.2 結 果 [ サ ブ 課 題 2-2] ... 75
6.5 考 察 ... 81
6.5.1 考 察 [ サ ブ 課 題 2-1] ... 81
6.5.2 考 察 [ サ ブ 課 題 2-2] ... 82
6.6 ま と め ... 82
第 7 章 「 書 く 」 活 動 が 「 話 す 」 能 力 に 及 ぼ す 効 果... 84
7.1 本 章 の 目 的... 84
7.2 先 行 研 究 ... 85
7.3 デ ー タ と 分 析 方 法 ... 86
7.3.1 デ ー タ ... 86
7.3.2 分 析 方 法 ... 88
7.4 結 果 ... 89
7.4.1 結 果 [ サ ブ 課 題 3-1] ... 89
7.4.2 結 果 [ サ ブ 課 題 3-2] ... 92
7.5 考 察 ... 94
7.5.1 考 察 [ サ ブ 課 題 3-1] ... 94
7.5.2 考 察 [ サ ブ 課 題 3-2] ... 95
7.6 ま と め ... 95
第 8 章 研 究 課 題 1 ・ 2 ・ 3 の 総 合 考 察 ... 97
8.1 研 究 課 題 1に 対 す る 考 察 ... 97
8.2 研 究 課 題 2に 対 す る 考 察 ... 99
8.3 研 究 課 題 3に 対 す る 考 察 ... 101
8.4 ま と め ... 103
8.4.1 「 自 動 化 」 の 重 要 性 ... 103
8.4.2 「 プ ラ ン ニ ン グ タ イ ム 」 の 重 要 性 ... 104
8.4.3 「 リ ハ ー サ ル 」 の 重 要 性 ... 104
第 9 章 「 書 く 」 活 動 を 取 り 入 れ た 口 頭 産 出 能 力 育 成 の た め の CLIL実 践 ... 106
9.1 本 章 の 目 的... 106
9.2 実 践 の 概 要... 106
9.3 「 日 本 語 で 説 明 」 す る 課 題 に 「 書 く 」 活 動 を 取 り 入 れ る... 108
9.3.1 テ ー マ ... 108
9.3.2 学 習 目 標 :CLILの 4C ... 109
9.3.3 活 動 目 的 と 学 習 内 容 ... 110
9.3.4 活 動 の 成 果 ... 111
9.4 「 ポ ス タ ー 発 表 」 の 課 題 に 「 書 く 」 活 動 を 取 り 入 れ る ... 112
9.4.1 テ ー マ ... 113
9.4.2 学 習 目 標 :CLILの 4C ... 113
9.4.3 活 動 目 的 と 学 習 内 容 ... 114
9.4.4 活 動 の 成 果 ... 116
9.5 CLIL実 践 の 成 果 ... 118
9.6 ま と め ... 119
第 1 0 章 終 章 ... 121
10.1 ま と め ... 121
10.2 本 研 究 の 主 張 と 意 義... 124
10.3 日 本 語 教 育 へ の 提 言... 125
10.4 展 望 ... 128
10.5 今 後 の 課 題 ... 130
参 考 文 献 ... 133
謝 辞... .. 142
1. 背 景 と 目 的
本 研 究 の 目 的 と し て 、 実 証 的 研 究 か ら(1)と(2)を 、 そ し て 、 実 践 研 究 か ら(3)を あ げ る 。
(1) ド イ ツ の 大 学 で 日 本 語 を 学 ぶ 学 習 者 の 産 出 デ ー タ を 収 集 す る こ と 。 (2) コ ー パ ス を 用 い て 、学 習 者 が 産 出 す る 言 語 使 用 実 態 、具 体 的 に は 、「 話 し 言
葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 の 差 、 そ の 関 連 性 を 体 系 的 に 捉 え 、 解 明 す る こ と 。 (3) 実 証 的 研 究 の 結 果 を ふ ま え て 、「 話 す 」活 動 と「 書 く 」活 動 を 活 か し た 効 果
的 な 教 育 実 践 を 紹 介 し 、 日 本 語 教 育 の 発 展 と 貢 献 の た め に 情 報 を 共 有 す る こ と 。
実 証 的 研 究 の 目 的 と し て 、(1)の ド イ ツ の 大 学 で 日 本 語 を 学 ぶ 学 習 者 を 対 象 に し た の は 、第 1 に 、筆 者 が ド イ ツ の 大 学 で 日 本 語 教 育 に 従 事 し て い る 教 師 だ か ら で あ る 。日 々 、接 し て い る 学 習 者 の 言 語 習 得 の 過 程 や 、そ の 過 程 で 出 会 う 困 難 点 な ど を 分 析 す る こ と が で き れ ば 、教 授 法 や 教 案 の 再 考 に 役 立 ち 、ひ い て は ド イ ツ 語 圏 の 日 本 語 教 育 の 発 展 に 貢 献 で き る も の で あ る と 考 え て い る 。
(2)の 学 習 者 の 言 語 使 用 実 態 の 解 明 を 目 的 に し た 理 由 を 2 つ あ げ て い る 。 ま ず 1 つ は 、 日 本 語 教 育 の 現 場 へ 還 元 す る こ と が で き る た め で あ る 。 ネ ウ ス ト プ ニ ー
(1995:186)は「 日 本 語 教 育 の 目 的 が 、日 本 語 を 外 国 人 の 話 し 手 に 使 わ せ る こ と に あ る な ら 、 外 国 人 の 話 し 手 が 実 際 に 日 本 語 を ど の よ う に 使 っ て い る か を 研 究 し て み る 価 値 が あ る は ず で あ る 。む し ろ 、こ れ は 日 本 語 教 育 の 出 発 点 で あ り 、か つ 、到 達 点 で あ る べ き か も し れ な い 」と 述 べ て い る 。さ ら に 、こ れ ら の 解 明 が「 効 果 的 な 対 策 を た て る 」こ と に つ な が る と 述 べ て い る 。本 研 究 で も 、こ の 考 え に 基 づ き 、特 に 学 習 者 の 産 出 能 力 向 上 を 目 的 に 、学 習 者 の「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」の 言 語 実 態 を 明 ら か に す る 。そ し て も う 1 つ は 、第 二 言 語 習 得 研 究 の 新 た な 観 点 が 提 示 で き る と 考 え て い る か ら で あ る 。「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 の 差 に つ い て は 、 こ れ ま で も 英 語 教 育 、日 本 語 教 育 で 研 究 さ れ て い る 。し か し 、習 熟 度 と ど の よ う な 関 係 が あ る か に つ い て 、そ し て 、同 一 の テ ー マ を 用 い た 調 査 に よ っ て 生 じ る リ ハ ー サ ル 効
果( 繰 り 返 し の 効 果 )に つ い て は 、こ れ ま で 検 証 さ れ る こ と が 少 な か っ た 。そ の た め 、本 研 究 で 取 り 上 げ る こ と に よ り 、「 話 す 」と「 書 く 」の 能 力 の 差 、「 話 す 」と「 書 く 」の 活 動 の 違 い 、習 熟 度 と の 関 係 を 明 ら か に し 、第 二 言 語 習 得 研 究 と 、学 習 者 の 口 頭 産 出 能 力 向 上 の た め の 教 育 を 目 指 す も の で あ る 。
そ し て 、(3)の 実 践 研 究 を 紹 介 す る 理 由 は 、 本 研 究 が 実 証 研 究 の 結 果 を 現 場 に 生 か す た め の 研 究 だ か ら で あ る 。現 場 へ の 還 元 に 役 立 て る こ と を 目 指 す 以 上 、実 証 的 研 究 の み で は 不 十 分 で あ る 。 本 研 究 で は 、(1)(2)の 実 証 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を 、 実 践 を 通 し て 実 際 の 現 場 で 具 体 的 に ど の よ う に 還 元 で き る の か 検 証 す る 必 要 が あ る と 考 え て い る 。そ の た め 、本 研 究 で は 、実 証 研 究 で「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」を め ぐ る 研 究 を 取 り 上 げ 、実 践 研 究 で「 話 す 」活 動 と「 書 く 」活 動 を 授 業 の な か に ど の よ う に 取 り 入 れ る こ と が で き る の か 、 そ の 一 案 を 報 告 し て い る 。
2. 本 研 究 の 構 成
本 論 文 は 、 全 10 章 で 構 成 さ れ て い る 。
ま ず 、第 1 章 で 、全 体 の 研 究 背 景 と 目 的 を 述 べ 、第 2 章 で は 、本 研 究 の 対 象 と な る ド イ ツ の 日 本 語 教 育 に 関 す る 社 会 的 背 景 を 説 明 す る 。続 く 第 3 章 で は 、研 究 背 景 に つ い て 、 第 二 言 語 習 得 、 コ ー パ ス 、「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 に 関 す る 理 論 的 背 景 を 先 行 研 究 を 紹 介 し な が ら 述 べ る 。 次 い で 、 第 4 章 で は 、2 章 、3 章 を ふ ま え て 、 本 研 究 の 枠 組 み と し て 、3 つ の 研 究 課 題 を 示 す 。 第 5 章 、 第 6 章 、 第 7 章 は 研 究 課 題 に 対 す る 実 証 研 究 、第 8 章 は 実 証 研 究 の 総 合 考 察 を 行 う 。第 9 章 は 、実 証 研 究 を ふ ま え た 実 践 研 究 を 紹 介 し 、 本 研 究 が 実 証 研 究 と そ れ に 基 づ く 実 践 研 究 を 合 わ せ た 論 文 で あ る こ と を 示 す 。 そ し て 、 最 後 に 、 第 10 章 で ま と め と 今 後 の 課 題 を 述 べ る 。 図 1 は 、 博 士 論 文 の 全 体 構 成 図 で あ る 。
3. 本 研 究 の 課 題
本 研 究 の 課 題 と し て 、 ま ず コ ー パ ス 構 築 を あ げ る 。 本 研 究 第 4 章 で は 、「 ド イ ツ 語 話 者 日 本 語 話 し 言 葉 コ ー パ ス (Spoken Corpus of German Learners of Japanese)」
と「 ド イ ツ 語 話 者 日 本 語 学 習 者 書 き 言 葉 コ ー パ ス(Written Corpus of German Learners 第 4 章 : 本 研 究 の 枠 組 み
先 行 研 究 を 受 け 、 本 研 究 の 課 題 を 提 示 す る 。 第 1 章 : 序 章
研 究 の 背 景 と 目 的 、 本 研 究 の 構 成 を 提 示 す る 。
第 2 章 : 社 会 的 背 景 先 行 研 究 を も と に 、 ド イ ツ に お け る 日 本 語 教 育 の 、1) 変 遷 、 2) 現 状 、3) 課 題 、 を 提 示 す る 。
第 3 章 : 研 究 背 景
先 行 研 究 を も と に 、1) 第 二 言 語 習 得 研 究 と コ ー パ ス に 関 す る 理 論 的 背 景 、2)「 話 し 言 葉 」 と
「 書 き 言 葉 」 に 関 す る 理 論 的 背 景 、 を 提 示 す る 。
実 証 的 研 究 実 践 的 研 究
第 9 章 :「 書 く 」 活 動 を 取 り 入 れ た 「 話
す 」 活 動 の 実 践
「 話 す 」 活 動 に
「 書 く 」 課 題 を 取 り 入 れ る CLIL の 実 践 を 紹 介 し 、 こ れ か ら の 言 語 教 育 へ の 可 能 性 を 示 唆 す る 。
第 5 章 課 題 1:「 話 し 言 葉 」・「 書 き 言 葉 」 の 差 と 習 熟 度 に よ る 言 語 実 態
第 6 章 課 題 2: 習 熟 度 と 「 話 し 言 葉 」 の リ ハ ー サ ル 効 果 の 影 響
第 7 章 課 題 3:「 書 く 」 活 動 が
「 話 す 」 能 力 に 及 ぼ す 効 果 検 証
第 8 章 : 総 合 考 察
課 題 1~3 に 対 す る 考 察 を 述 べ る 。
第 1 0 章 : 終 章
ま と め を 述 べ 、 本 研 究 の 意 義 、 今 後 の 課 題 を 提 示 す る 。
図 1博 士 論 文 の 全 体 構 成 図
of Japanese)」 を 紹 介 し て い る 。
さ ら に 、 コ ー パ ス を 用 い た 研 究 課 題 を 3 つ 、 サ ブ 課 題 各 2 つ ず つ と り あ げ 、 第 5 章 か ら 第 7 章 ま で で 明 ら か に し て い く 。
【 研 究 課 題 1 】同 じ テ ー マ に よ る「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」は 習 熟 度 が あ が る に つ れ て ど の よ う に 変 化 す る の か 。
[ サ ブ 課 題 1-1]「 話 す 」と「 書 く 」と い う 産 出 活 動 の 違 い と 習 熟 度 の 違 い は 産 出 量 に ど う 影 響 す る か 。
[ サ ブ 課 題 1-2]「 話 す 」と「 書 く 」と い う 産 出 活 動 の 違 い と 習 熟 度 の 違 い は 特 徴 語 に ど う 影 響 す る か 。
【 研 究 課 題 2 】「 話 し 言 葉 」 に お け る リ ハ ー サ ル の 影 響 は 習 熟 度 が あ が る に つ れ て ど の よ う に 変 化 す る か 。
[ サ ブ 課 題 2-1] ド イ ツ 語 話 者 の 「 話 し 言 葉 」 は 同 じ テ ー マ を 繰 り 返 す 活 動 に よ っ て 産 出 量 が ど の よ う に 変 化 す る の か 。
[ サ ブ 課 題 2-2] ド イ ツ 語 話 者 の 「 話 し 言 葉 」 は 同 じ テ ー マ を 繰 り 返 す 活 動 に よ っ て 特 徴 語 が ど の よ う に 変 化 す る の か 。
【 研 究 課 題 3 】同 じ テ ー マ に よ る「 書 く 」活 動 は「 話 す 」能 力 に ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か 。
[ サ ブ 課 題 3-1] 作 文 を 書 く こ と で 、 発 話 量 と 語 の 量 が 増 え る の か 。 [ サ ブ 課 題 3-2] 作 文 を 書 く こ と で 、 発 話 の 内 容 が 変 わ る の か 。
4. 本 研 究 の 結 果
研 究 課 題 1 は 、同 じ テ ー マ に よ る「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」は 習 熟 度 が あ が る に つ れ 、ど の よ う に 変 化 す る の か と い う も の で あ る 。仮 説 1、2 と し て 、「 話 し 言 葉 」 と「 書 き 言 葉 」の 産 出 活 動 の 違 い は 産 出 量 や 特 徴 語 の 差 と し て 表 れ 、習 熟 度 の 違 い 、 つ ま り 言 語 能 力 の 差 も 産 出 量 や 特 徴 語 の 差 と し て 表 れ る は ず で あ る と 考 え 、 検 証 し た 。 そ の 結 果 、 特 に 、「 話 し 言 葉 」 の ほ う が 「 書 き 言 葉 」 よ り も 産 出 量 が 多 い こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 習 熟 度 が あ が る に つ れ て 、「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 の 言 語 的 特 徴 が 似 て く る こ と を 明 ら か に し た 。
研 究 課 題 2 は 、「 話 し 言 葉 」に お け る リ ハ ー サ ル の 影 響 は 習 熟 度 が あ が る に つ れ 、 ど の よ う に 変 化 す る の か と い う も の で あ る 。 仮 説 3、4 と し て 、 リ ハ ー サ ル の 効 果 は 産 出 量 や 特 徴 語 の 差 と し て 表 れ 、習 熟 度 の 違 い 、つ ま り 言 語 能 力 の 差 も 産 出 量 や 特 徴 語 の 差 と し て 表 れ る は ず で あ る と 考 え 、 検 証 し た 。 そ の 結 果 、 リ ハ ー サ ル は 、
習 熟 度 に 関 わ ら ず 、ど の レ ベ ル に も 効 果 が あ っ た が 、習 熟 度 が 低 い 場 合 は 産 出 量 に 影 響 が あ り 、 習 熟 度 が 高 く な る と 産 出 情 報 の 整 理 に 影 響 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 、 特 徴 語 に は 影 響 が な い こ と を 明 ら か に し た 。
研 究 課 題 3 は 、同 じ テ ー マ に よ る「 書 く 」活 動 は「 話 す 」能 力 に ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る か と い う も の で あ る 。 仮 説 5、6 と し て 、「 書 く 」 活 動 ( 作 文 の 課 題 ) を 経 験 し た と い う リ ハ ー サ ル の 有 無 は 、 産 出 量 や 特 徴 語 の 差 と し て 表 れ る は ず で あ る と 考 え 、 検 証 し た 。 そ の 結 果 、「 書 く 」 活 動 を 発 話 の 前 に 実 施 す る と 、 そ の 後 の 発 話 の 産 出 量 や 語 彙 の 広 さ 、抽 象 語 の 増 加 に 影 響 が あ る こ と が わ か っ た 。こ の こ と か ら 、「 書 く 」活 動 に は 、「 話 す 」内 容 を 活 性 化 さ せ る 効 果 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。
さ ら に 、研 究 課 題 1 か ら 3 の 成 果 を ふ ま え 実 施 し た「 書 く 」と「 話 す 」の 活 動 を 行 き 来 す る CLIL(Content and Language Integrated Learning、内 容 言 語 統 合 型 学 習 、 以 下 CLIL) 実 践 で は 、 学 習 者 の 言 語 面 と 思 考 面 の 変 化 と 効 果 が 伺 え た こ と を 報 告 し て い る 。
5. 研 究 の 主 張 と 意 義
本 研 究 で は 以 下 4 点 を 主 張 す る 。
(1) 習 熟 度 が あ が る に つ れ て 、「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 の 言 語 的 特 徴 が 似 て く る 。
(2) リ ハ ー サ ル を 行 う こ と で 生 じ る 効 果 は 、 習 熟 度 に よ っ て 異 な る 振 る 舞 い を す る 。
(3) 「 書 く 」 活 動 を 行 う こ と で 、 そ の 後 の 「 話 す 」 内 容 が 充 実 す る 。 (4) CLILを 用 い た 、 既 知 情 報 や 既 習 知 識 の 再 学 習 は 有 効 で あ る 。
ま ず 、(1)と(3)に 関 わ る 主 張 の 意 義 と し て 、「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」を め ぐ る こ れ ま で の 研 究 で は 、産 出 に 関 わ る 行 為 と し て 、ひ と ま と ま り に 考 え ら れ て い た た め 、両 者 の 相 互 作 用 に 関 し て 、実 証 的 な 研 究 は 出 て こ な か っ た 。こ れ に 対 し て 、本 研 究 の 第 5 章 や 第 7 章 の 考 察 は 、 産 出 活 動 に お け る 複 雑 さ を コ ー パ ス 分 析 の 手 法 を 用 い て 、延 べ 語 や 異 な り 語 、抽 象 的 な 語 の 使 用 実 態 か ら 明 ら か に し た 。ま た 、特 に(3)に 関 わ る 主 張 の 意 義 と し て 、「 書 く 」 と 「 話 す 」 が 無 関 係 で は な い と い う こ と を 実 証 的 に 示 し た 。
次 に 、(2)に 関 わ る 主 張 の 意 義 と し て 、繰 り 返 し の 効 果 に 関 し て 、習 熟 度 の ど の 段 階 で 有 効 か と い う こ と は 、こ れ ま で 検 証 さ れ て こ な か っ た 。こ れ に 対 し て 、本 研 究 の 第 6 章 の 考 察 は 、 初 級 か ら 中 級 ま で の 効 果 と 上 級 以 上 の 効 果 が 異 な る こ と を 実 証 的 に 示 し た 。
さ ら に 、(4)に 関 わ る 主 張 の 意 義 と し て 、従 来 の CLILで は 、言 語 面 に お い て 、目 標 言 語 に 注 目 さ れ て き た が 、 本 研 究 の CLIL 実 践 で は 、CEFR(Common European Fram ework of Reference for Languages、 ヨ ー ロ ッ パ 言 語 共 通 参 照 枠 、 以 下 CEFR) の 理 念 に 基 づ き 、さ ら に 、JFL 環 境( 目 標 言 語 が 話 さ れ て い な い 地 域 で「 外 国 語 と し て の 日 本 語 (Japanese as a Foreign Language:JFL)」) を 活 か し て 、 母 語 に よ る 知 識 を 利 用 し た 活 動 を 行 い 、そ れ が 成 果 に つ な が っ た 。具 体 的 に 述 べ る と 、主 な 参 加 者 で あ る ド イ ツ の 学 習 者 が す で に 高 校 ま で で 勉 強 し た 学 習 内 容 を 知 識 と し て 備 え て い る こ と を 前 提 に し た う え で 、日 本 語 に よ る 活 動 を 加 え た 。こ れ に よ り 、目 標 言 語 で あ る 日 本 語 で 内 容 の 再 学 習 を 行 う こ と が で き 、CEFRとCLILの 理 念 を 融 合 し た 、 よ り 効 果 的 な 学 習 に つ な が る と 考 え て い る 。本 研 究 の 第 9 章 で 紹 介 し た 実 践 は 、現 地 で 用 い ら れ て い る ド イ ツ 語 の 能 力 、 ド イ ツ の 高 校 ま で の 学 習 内 容 を 活 か し た CLIL の 実 践 の 重 要 性 を 示 し て い る 。 こ れ は 、CEFR が 主 張 す る 複 言 語 能 力 を 活 か し た 教 育 で あ る 点 と し て 評 価 で き る も の で あ る 。
6. 日 本 語 教 育 へ の 提 言
本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 を も と に 、 日 本 語 教 育 へ 以 下 の 3 点 の 提 言 と し て あ げ て い る 。
(1) 海 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言 (2) 第 二 言 語 習 得 研 究 に 対 す る 提 言
(3) 日 本 国 内 / 国 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言
(1) 海 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言
海 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言 と し て 、 以 下 3 つ あ げ て い る 。
第 1 に 、本 研 究 成 果 は 、ド イ ツ の 学 習 者 を 対 象 と し た 例 で あ る が 、こ れ は 海 外 の 言 語 教 育 一 般 に 関 し て 示 唆 す る も の で も あ る 。 本 研 究 を 1 つ の モ デ ル と し て 捉 え 、 ド イ ツ 以 外 の 海 外 で 現 場 に 立 っ て い る 者 が 、 目 の 前 の 学 習 者 の ニ ー ズ や 問 題 と 向 き 合 い 、本 研 究 の よ う な 、ま た は そ れ 以 上 の 研 究 が 今 後 さ ら に 進 む こ と を 期 待 す る 。
第 2 に 、本 研 究 成 果 を 、海 外 で 学 ぶ 日 本 語 学 習 者 の 言 語 運 用 力 の 向 上 に 役 立 て た い 。海 外 の 学 習 環 境 で は 、日 本 語 の イ ン プ ッ ト や ア ウ ト プ ッ ト の 機 会 が 限 ら れ て い る 。 特 に 、 ア ウ ト プ ッ ト で は 相 手 が い る こ と が 重 要 で あ る が 、 大 都 市 で な け れ ば 、 日 本 人 や 日 本 語 で 会 話 で き る 人 を 見 つ け る の は 難 し く 、 日 本 語 教 師 が 唯 一 の 日 本 人 で あ る こ と も 珍 し く な い 。こ の よ う な 限 ら れ た 環 境 で の 日 本 語 教 育 で は 、学 習 者 1 人 ひ と り に ア ウ ト プ ッ ト の 機 会 を 提 供 す る こ と も 困 難 で あ る 。し か し 、第 7 章 で は 、「 書 く 」活 動 を 加 え る こ と で 、「 話 す 」活 動 が 活 性 化 す る こ と が 示 さ れ た 。限 ら れ た 教 室 環 境 で も 、作 文 の よ う な「 書 く 」活 動 を よ り 積 極 的 に 行 う こ と で 、全 体 的
な 総 合 産 出 能 力 の 向 上 が 見 込 ま れ る 。こ れ を ふ ま え て 、本 論 文 の 第 9 章 で 紹 介 し た よ う な 実 践 が さ ら に 増 え て い く こ と が 望 ま れ る 。
第 3 に 、本 研 究 で は 、日 本 学 の な か で の 日 本 語 教 育 の あ り 方 に つ い て 触 れ た 。本 研 究 で は 、第 3 章 で も 述 べ た が 、複 言 語 主 義 に 基 づ く 言 語 教 育 、自 国 文 化 の 理 解 の 重 要 性 を 改 め て 強 調 し た い 。教 室 活 動 で も 、言 語 の 使 用 を 制 限 せ ず 、母 語 や 日 本 語 以 外 の 言 語 を う ま く 利 用 す る こ と 、 教 科 書 や 教 材 で 扱 う テ ー マ を 日 本 国 内 に 制 限 せ ず 、本 論 で は ド イ ツ の 歴 史 を 例 と し た が 、自 国 文 化 を 積 極 的 に 利 用 す る こ と な ど も 必 要 で あ る 。
(2) 第 二 言 語 習 得 研 究 に 対 す る 提 言
第 二 言 語 習 得 研 究 に 対 す る 提 言 と し て 、3 つ あ げ て い る 。
本 研 究 は 、第 5 章 、第 6 章 で 学 習 者 コ ー パ ス を 用 い て 、習 熟 度 ご と に デ ー タ を 比 較 し 、学 習 者 の 言 語 実 態 の 変 化 を 調 べ る こ と に 焦 点 を あ て た 。こ の こ と か ら も 、本 研 究 の 立 場 が 中 間 言 語 分 析 研 究 と コ ー パ ス 研 究 を 融 合 し た ア プ ロ ー チ で あ る こ と を 主 張 し て い る 。
第 二 言 語 習 得 研 究 に 対 す る 提 言 と し て は 、ま ず 、第 1 に 、本 研 究 で は 大 規 模 コ ー パ ス を 用 い て 計 量 的 な 分 析 を 行 っ た こ と を あ げ る 。こ れ ま で の 研 究 は 、部 分 的 な 観 察 に 基 づ く も の が 多 く 、「 デ ー タ 全 体 を 俯 瞰 的 に 捉 え る 」 と い う 観 点 は 扱 わ れ て こ な か っ た 。 本 研 究 で は 、 こ れ を ふ ま え て 、 大 規 模 コ ー パ ス の 利 点 を 活 か し 、「 デ ー タ 全 体 を 俯 瞰 的 に 捉 え る 」試 み に よ り 、習 熟 度 の 向 上 と と も に 、学 習 者 の 言 語 的 特 徴 に は「 話 し 言 葉 」と「 書 き 言 葉 」と い う 産 出 活 動 の 差 が な く な っ て い く 様 子 を 明 ら か に し た 。 こ れ に よ っ て 、「 話 し 言 葉 」 と 「 書 き 言 葉 」 に お け る 中 間 言 語 の 変 異 性 の 新 し い 観 点 が 示 さ れ た 。
そ し て 、第 2 に 、量 的 分 析 か ら 得 ら れ た 結 果 を も と に 質 的 分 析 を 行 う 必 要 性 を あ げ る 。本 研 究 で は 、先 行 研 究 で 明 ら か に な っ て き て い る 質 的 分 析 の 結 果 を ふ ま え 、 量 的 分 析 を 試 み た 。た だ し 、量 的 分 析 と 質 的 分 析 は 互 い に 相 補 的 な 関 係 で あ る べ き で あ り 、今 後 は 量 的 分 析 で 得 ら れ た 結 果 を も と に 質 的 分 析 を 行 う 必 要 が あ る 。本 研 究 で は 、こ の 点 が 十 分 に 扱 わ れ て い な い た め 、今 後 は さ ら に 、コ ー パ ス を 利 用 し 、 質 的 分 析 と 量 的 分 析 の 両 分 析 が 活 性 化 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。
さ ら に 、第 3 に 、リ ハ ー サ ル の 重 要 性 と そ の 効 果 に つ い て さ ら な る 検 証 の 必 要 性 を あ げ る 。リ ハ ー サ ル の 重 要 性 に つ い て は 、こ れ ま で 様 々 な 研 究 が さ れ て い る 。本 研 究 で は 、新 た な 観 点 と し て 、習 熟 度 と リ ハ ー サ ル 効 果 の 関 連 性 に つ い て 検 証 し 、 習 熟 度 の 低 い 学 習 者 と 高 い 学 習 者 と で は 、 リ ハ ー サ ル に よ っ て 異 な る 効 果 が あ る こ と を 明 ら か に し た 。具 体 的 に は 、初 級 か ら 中 級 で は 産 出 量 に 、上 級 や 母 語 話 者 で は 情 報 の 整 理 に 効 果 が あ る こ と が 確 認 で き た 。 こ の よ う な 研 究 で 得 ら れ た 成 果 は 、
学 習 者 の レ ベ ル に 合 わ せ た 活 動 を 提 案 す る た め の 資 料 の 1 つ と な り 、 現 場 に 還 元 で き る も の で あ る 。
(3) 日 本 国 内 / 国 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言
日 本 国 内 / 国 外 の 日 本 語 教 育 に 対 す る 提 言 と し て 、CLIL 実 践 の さ ら な る 発 展 を 期 待 す る 。 ド イ ツ の 大 学 の 現 状 を み る と 、 日 本 学 と 語 学 を つ な げ る 学 習 環 境 で は 、 CLIL の よ う な 言 語 教 育 が 求 め ら れ て お り 、 ま た 、 大 き な 成 果 を あ げ て い る 。 日 本 国 内 の 日 本 語 教 育 に 関 し て も 、 こ れ ま で の よ う な 教 育 、JLPT( 日 本 語 能 力 試 験 、 Japanese -Language Proficiency Test、 以 下 JLPT) 対 策 の よ う な も の を 維 持 、 発 展 さ せ て い く こ と と 同 様 に 、 学 習 者 の 背 景 や 専 門 知 識 な ど を 活 か せ る よ う な 内 容 学 習 と 言 語 学 習 を 統 合 し た カ リ キ ュ ラ ム を さ ら に 拡 充 し て い く 必 要 が あ る 。
そ の な か で も 、特 に 、設 定 す る 内 容 の 重 要 性 に つ い て 述 べ た い 。本 研 究 で は 歴 史 に 焦 点 を あ て る こ と が 重 要 で あ る と 主 張 し て い る 。
日 本 語 教 育 は 、こ れ ま で 教 科 書 で 文 法 や 語 彙 を 学 ぶ こ と 、い わ ゆ る 言 語 形 式 の 習 得 が 中 心 で あ っ た 。そ し て 、内 容 に つ い て は 、日 本 文 化 や 日 本 事 情 に つ い て 扱 わ れ る こ と が 多 か っ た 。 し か し 、CLIL で は 、 言 語 だ け で な く 、 内 容 に も 焦 点 を あ て 、 学 習 者 に と っ て 意 味 の あ る 内 容 を 設 定 す る こ と が 重 要 で あ る と 考 え ら れ て い る 。 本 研 究 で は 、歴 史 を テ ー マ に 設 定 し 、あ る 国 や 地 域( 本 研 究 で は ド イ ツ 、ミ ュ ン ヘ ン )の 歴 史 を 通 し て 、そ こ か ら 現 在 の 社 会 が 見 え て く る よ う な 活 動 を 目 指 し て い る 。 こ れ は 、 現 在 や 未 来 が 過 去 の 歴 史 の あ る 部 分 と 必 ず つ な が っ て い る も の で あ る と い う 考 え に 基 づ い て い る 。そ の た め 、現 在 の 社 会 や 人 々 の 考 え を 理 解 す る た め に は 、 そ の 背 景 に ど の よ う な 過 去 が あ る の か 、 こ れ ま で の プ ロ セ ス を き ち ん と 理 解 す る 必 要 が あ る 。例 え ば 、ド イ ツ が 難 民 を 受 け 入 れ る 理 由 を 説 明 す る た め に は 、過 去 の 戦 争 の 過 ち に つ い て 理 解 し て い な け れ ば な ら な い し 、CEFR や 複 言 語 複 文 化 主 義 が 誕 生 し た 背 景 に も 戦 争 が 大 き く 影 響 し て い る 。も ち ろ ん 、歴 史 は 戦 争 ば か り で は な い が 、今 あ る 社 会 や 文 化 は 過 去 の 歴 史 の 何 か の 影 響 を 受 け て い る は ず で あ る 。学 習 者 が 自 分 の 国 の 歴 史 を 日 本 語 で 説 明 で き る よ う に す る こ と は 、 今 後 さ ら に 重 要 に な っ て く る と 考 え て い る 。
審 査 結 果
公 開 審 査 は 2020 年 9 月 1日 ( 火 )16:00〜18:00 に オ ン ラ イ ン で 実 施 さ れ た 。
毎 日 接 し て い る ド イ ツ の 大 学 の 日 本 学 の 学 習 者 の 方 々 に 資 す る 研 究 を 行 い た い 、 ド イ ツ 語 圏 の 日 本 語 教 育 の 発 展 に 貢 献 し た い と い う 教 師 と し て の 熱 意 が 動 機 と し て 根 底 に 流 れ て い る 研 究 で あ り 日 々 の 授 業 を フ ィ ー ル ド と し て デ ー タ を 収 集 し 必 要 な コ ー パ ス は 自 身 で 収 集 し 構 築 す る 研 究 姿 勢 が 評 価 さ れ た 。
村 田 氏 は そ の コ ー パ ス を も と に ド イ ツ 語 を L1と す る 日 本 語 学 習 者 の こ と ば の 実 態 を 「 話 し こ と ば 」 と 「 書 き こ と ば 」 の 両 面 か ら 把 握 し て い る 。 そ の 上 で 、 習 熟 度 に よ る 差 や 、 同 一 テ ー マ に よ る リ ハ ー サ ル 効 果 に つ い て 、 述 べ 語 数 、 異 な り 語 数 、 接 続 表 現 、 語 種 、 な ど の 観 点 か ら 計 量 的 に 検 証 し 、 教 育 へ ど の よ う に 還 元 す べ き か を 考 え 、 実 際 の 教 育 の 中 で 、 書 く タ ス ク と 話 す タ ス ク の 組 み 合 わ せ の 順 に 配 慮 し て 実 践 し 、 そ の 効 果 を 実 証 し て い る 。
ま た 、 教 育 的 取 り 組 み と し て L1 の ド イ ツ 語 や 既 習 知 識 を 活 用 し L2 の 日 本 語 で の 発 信 に つ な げ て い る 点 に つ い て も 学 習 者 の 複 言 語 能 力 、 複 リ テ ラ シ ー を 活 か し て お り 、JFL 環 境 の メ リ ッ ト を 生 か し た 活 動 と し て 評 価 さ れ た 。 ま た JFL 環 境 で の 産 出 能 力 の 向 上 を 支 え る 教 育 デ ザ イ ン と し て も 評 価 さ れ た 。
公 開 審 査 時 の 質 問 や 意 見 と し て 、 理 論 面 で の 貢 献 に 対 す る 記 述 、 質 的 な 分 析 を 含 め た よ り 分 厚 い 記 述 、 ド イ ツ 語 を 母 語 す る 日 本 語 学 習 者 特 有 の 傾 向 の 記 述 な ど が 課 題 と し て 指 摘 さ れ た 。 こ れ ら の 質 問 や 意 見 に つ い て は 、 村 田 氏 が 不 十 分 な 点 に つ い て 再 考 す る 必 要 性 を 自 覚 し 、 今 後 に つ な げ て い く 方 針 を 持 っ て い る こ と が 質 疑 応 答 か ら 確 認 で き 、 そ の 意 思 と 力 も 備 わ っ て い る も の と 判 断 さ れ た 。
査 読 有 単 著 4、 査 読 無 単 著 5、 査 読 有 共 著 2、 査 読 な し 共 著 9、 単 独 研 究 発 表 12、 共 同 研 究 発 表 3 と 業 績 も 非 常 に 多 く 、 学 位 請 求 論 文 の 内 容 、 公 開 審 査 に お け る 応 答 内 容 な ど か ら 総 合 的 に 判 断 し た 結 果 、 審 査 委 員 全 員 一 致 で 、 こ の 研 究 が 博 士 ( 日 本 語 教 育 ) の 学 位 を 授 与 す る に ふ さ わ し い も の で あ る と い う 結 論 に 達 し た 。