[資料紹介] アルバースの管理論
その他のタイトル [Material] H. H. Albers, Organized Executive Action
著者 飯野 春樹
雑誌名 關西大學商學論集
巻 8
号 3‑4
ページ 309‑328
発行年 1963‑10‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00021629
309
アルバースの管理論︵飯野︶ 環境を取扱う以上︑内容的には両者ともそれほどことなるものではない︒しかしながら接近方法と体系化に当っては相当の差異がみられるのは当然である︒ここで紹介しようとするアル
①
バースの管理論ほ︑後者に属するものとみなすのが適当であ 経営管理論の系譜をごく大ざっぱに分類すれば︑フェイヨルを古典的なモデルとする伝統的管理論と︑最近急速に発達しつつある組織理論に基づいて管理論を再検討しようとするものに分けることができよう︒もとより経営者︑管理者の機能とそのア ル バ
ス の 管 理 論
︱︱
九
しかしバーナードとの関連を求めるあまり︑アルバース自身の
意図に忠実でなかった点が多いのではないかとおそれている︒
従って本稿では︑出来るだけ忠実に彼の所論を紹介してゆきた ド理論の具体的展開を試みたものであることを明らかにした︒ R すでに拙稿﹁バーナードの流れをくむ管理論について﹂にお
飯
野
春
│ │ H e n r y H . A l r s b e , O R G A N I Z E D E X E C U T I V E A C T I O N : D E C I S I O N , M A K I N G , C O M M U N I C A T I O N , AND
L E A D E R S H I P . ( J o h n W i l e y
&
S o n s , I n c . ̀ 1 9 6 1 , 6 0 4 p p . ) 1
ると 思う
︒
いて︑アルバースの管理論の位置づけを試みた︒そこでは︑バ
ーナード理論の検討を通じて︑アルバースの管理論がバーナー
樹
310
第九章 第八章 意志決定の集中と分散 ライン・スクッフ・ファンクショナル問穿〖 いと考える︒ただし︑関心は内容よりも体系にあることをあらかじめおことわりしておきたい︒
最初に本書の構成を掲げることにしよう︒
管理問題・過去と現在
第二章
第三章 予備的考察科学的な管理への道
経営者の職能
管理のための組織
管理機構における委員会
取締役会および経営委員会
第 一
1一部意志決定・計画の戦略
第 十 章 意 志 決 定 機 能 第 十 一 章 現 境 の 諸 要 素 第 十 二 章 動 態 的 計 画
I
第 十 三 章 動 態 的 計 画
T I
第四部計画と統制の情報システム 第十五章第二十章第二十一章第二十二章第二十三章 情報と伝達び受領の問題特殊伝達体系ー特殊伝達体系
r r
リーダーシップとモーティベーション
権威とリーダーシップ
特定組織におけるリーダーシップ
ステイクス・システムの本質と機能
組織の維持
経営者の育成
経営者の資質と教育
企業の経営者育成計画
かように本書は六部︑二十三章より成り︑米国の経営学文献
の通例に従う部厚い書物である︒なお副題として﹁管理過程の
解剖学への総合科学的接近﹂(An
i nt e r di s c ip l i na r
y a
pp
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my
f o m a̲ n a ge r i al p ro c e ss ) . lJ ‑
¥ Qる ︒
注①アルバースはアイオワ大学卒︒同大学より経済学修士号を
︵一 九四 六年
︶︑ ニー ル大 学よ 経り 済学 博士 号を (‑ 九五 一年
︶ 授け られ
︑現 在ア イオ ヮ大 学の 営経 学準 教授 であ る︒
第七章 第六章第六部 第五章部門化 第四章組織描造 第二部第十九章 第十八章 第五部 第一章第十七章 第一部 アルバースの管理論︵飯野︶
第十六章 第十四章
伝達・情報のゆがみ︑メッ七ージの作成およ
︱二
0
311
アルバースの管理論
︵飯
野︶
アルバースは序文冒頭で︑﹁本書では管理行為
a ct i
o n)
の基本的要素である意志決定︑伝達およびリーダーシ
ップがその中心をなしている︒管理行為は組織的
( or g a ni z
e d)
ないし階層的過程とみなされる﹂
(P
re
fa
ce
̀p
.
v i i )
とのべて
書名
を説
明し
︑ る ︒
さらに概略次のようにその意図を明らかにす
﹁経営管理の書物は知識や技術の集合以上のものでなけれ
ばならない︒多くの部分は一つの全体に統合されるべきであ
る︒本書は四つの基本的な︑統合のための主題
( in t e gr a t in g
th
em
es
)をもつ︒すなわち︑機構
( h i e
̲ r a r
c h y )
︑過程
( pr o c es s )
視点
( pe r s pe c t iv e )
および経済
(e
co
no
my
)
という四つの統
合主
題で
ある
︒﹂
(P
re
fa
ce
p .
v i i i
)
この著者の意図を︑以下の内容と関連づけると︑第二部にお
︑ ︑
いて管理組織の諸問題を取扱い︑この機構ないし階層関係を意
志決定︵第三部︶︑伝達︵第四部︶︑リーダーシップ︵第五部︶
︑ ︑
の諸機能と結びつける︒これら諸機能はまた次のような過程と
①
みることができる。すなわち、山経営者—ー社長から第一線監•
( ex e c ut i
v e
②拙
稿﹁
・ハ
ーナ
ード
の流
れを
くむ
管理
論に
つい
て﹂
商学
論集
第八
巻第
二号
を参
照さ
れだ
い︒
関西大学督者までーーは計画のための決定を行なう︒③かかる決定が︑
部下の管理的︑非管理的人員をして行動せしめるべく︑行き
(f
or
wa
rd
)
の伝達によって伝えられる︒③上司の決定の正し
さ︑部下の実行の正しさが戻り
( fe e d ba c k )
ないし統制の情報
によって示される︒④フィードバックが︑計画のための決定を
修正したり︑あるいは統制のための決定やリーダーシップ活動
を行なう基礎となる︒︹︱二三頁の図参照︺
関係づけは︑機構を基礎にして過程が行なわれる︑すなわち﹁機
構におけるそれぞれの職位は同時に意志決定︑伝達︑リーダー
シッブのセンクーである﹂
( p . 2 3 1 )
とみなされるのであり︑か
かるセンクーに位置する管理者の有効な機能によって機構に活
力が与えられるのである︒
この二つの統合主題は︑部︑章分けと直接関連させうるが︑
第三の視点と第四の経済は︑その性格上当然に︑全体を通じて
現れ
る︒
視点というのは︑管理問題に関する種々の知識や技術を特定
組織の視点から論ずることである︒換言すれば︑﹁組織﹂とい
う観点を通じてそれらを綜合することである︒例えば︑
O
R
の手法は専門家の技術としてではなく︑経営者の必要という点か 伝達︑リーダーツップが過程的に把握されるが︑機構と過程の
かよ
うに
意志
決定
︑
ら意志決定に即してみるし︑予算制度や会計制度を一っの特殊
な伝達体系として捉えるなど︑ことなる
d is c i pl i n e
を組織な
いし意志決定過程のなかに
i nt e r di s c ip l i na r
y に捉えて行こう
とする試みである︒
経済とは︑企業の存続に当って︑収益と費用との間に好まし ︑ ︑
いバランスが達成されねばならぬということである︒本書では
社会的・心理的な諸要因をも考慮に入れているが︑一般に測定
可能な収益と費用のバラソスを意味している︒
かようにアルバースは︑四つの統合主題を設定することによ
って管理論に統一性を与えようとするが︑この点は本書の特徴
の︱つであり︑またこれを通読するに当ってつねに念頭におか
なければならぬところである︒
さて
︑第
一部
の一
1︱つの章は序論であって︑まずは穏当な叙述
テクノロジ卜に終始している︒第一章では協働と技術︑近代経営の先駆︑近
代経営の背景︵工場制度︑経営者階級の出現︑労働組合︶︑政
府の規制︑科学とマネジメントなどの項目のもとに予備的な展
望を試みる︒第二章は経営管理の発展に貢献した主要人物を中
心に︑いわば経営管理論成立の歴史を取扱う︒科学的管理のテ
ーラーおよびその一派︑管理職能や管理組織の体系的考察を行
ったフェイヨルとズローソ︑人間関係論のホーソン実験︑最後 アルバースの管理論︵飯野︶
三
に最近の新しい動向を概観する︒ここで選択された項目は︑現
代の経営管理論にとって至極適切であると思う︒
テーラーについては︑彼のミッドヴェイルおよびペスレヘム
製鋼会社における業績を紹介し︑科学的管理法が計画における
科学的方法の重要性を強調したこと︑計画責任の執行段階から
経営者への移行を促進したことを指摘する︒しかしテーラーが
いる︒組織における人間行動の動態が科学的に研究されるの
は︑ホーソン実験以後である︒
管理組織の体系化に貢献したのほフェイヨルであり︑簡単なが
らその研究が紹介され︑評価されているのは当然のことであろ
う︒しかしフェイヨルが経営管理論で再認識されたのは最近の
ことであり︑経営組織の体系的研究の展開にあずかって力があ
ったのは︑むしろジェネラル・モークーズの再組織に成功した
スロ
ーン
(A
lf
re
P . d
S l
o an , Jr . )
をはじめとする実業人の業
績であったことが指摘される︒他に一九二
0
︑ ‑ ︱
‑ 0
年代において組織原則︑管理原則の確立に貢献した人々の名前があげられR
てい
る︒
さて︑産業における人間行動の解明に新しい光を投げかけた テーラーがその研究を工場段階の諸問題に限ったのに対し︑ 人間行動の理解に充分でなかったことなどが正しく批判されて
アルバースの管理論︵飯野︶
第三章では経営者︑管理者の職能︑すなわち管理職能が考察
のは︑もはや言うまでもなくホーソソ実験である︒実験の経過 と主要な発見の紹介があるが︑本稿でとくにとり上げる必要も
③
ないであろう︒第二章の最後には︑新しく出現しつつある分野として︑
O R をはじめとする計画における数学的手法︑人間関係や組織行動 の諸問題︑コミュニケーションの諸問題などが簡単に論ぜられ るが︑組織と組織形成の関係についても新しい思考様式が出現 しつつあることを指摘する︒すなわち︑組織形成職能は計画職 能に下属させて考えうるけれども︑組織は計画過程が実現して ゆくメカニズムとして重要であり︑管理職能を能率的に実施す る第一の前提条件であるとする︒彼自身もこの立場に立つこと
は後述の通りである︒
される︒まざ一︑三の実態調査を引用して経営者の現実の行動 を検討したのち︑抽象的には意志決定
(d
ec
is
io
n‑
ma
ki
ng
︑伝)
達
(c
om
mu
ni
ca
ti
on
)
およびリーダーツップ
( le a d er s h ip )
の
三機能に分類しうるとする︒
( p p .
5 7 6 1 )
すなわち﹁管理職能の本質についての第一の結論は︑それが他の人々の行動を支 配する決定を含むということである︒﹂﹁管理決定は組織目的に 関連するものであり︑管理者とはかかる決定をなす責任を受け
の決定を伝える︒﹁統制
( co n t ro l )
の問題は基本的にはモーテ
ィベージョソという広い問題の一側面である︒リーダーシップ ないしモーティベーションの活動は管理職能の重要な構成要素
である︒﹂右の図は以上の理解を容易にするであろう︒
かように意志決定︑伝達︑リーダーシップの活動は一般に管 理階層にその職位をもつ多くの管理者によって行なわれる︒管
上司の決定
(計画と統制の決定)←
↓ 戻りの伝達
行きの伝達 (実行についての情報)
↑
→部下の実行
I
コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 循 環 図
( p . 6 0 )
三
られるまで︑次々に統制 経営者は満足な行動がえ その情報にもとづいて と一致しない場合には によって計画された行動 の現実の行動が管理決定 ければ部下は応ずる意志もし組織
をも たな い︒
﹂
伝達がなければ部下は上
司の決定に応ずることが
不可能である︒受容がな 受容されねばならない︒ らに﹁決定は伝達され︑
④
入れ る人 々で ある
︒﹂
さ
314
である︒
アルバースの管理論
すでにのベ
︵飯 野︶
理行為はこの階層関係での職能的および社会・心理的動態
( so c i
0,
ps
yc
ho
lo
gi
ca
l
dy
na
mi
cs
) と索
i
眸
gに関
窄飴
する
る︒
たように︑統合原理の機構と過程の関係がここにみられるので
あり︑第二部において管理のための組織構造が問題にされるの
①本書での
ex
ec
ut
iv
es
は管理組織にあって管理職能を担当
する各階層の人々を意味する︒︒本稿では時に応じて経営者︑
管理 者と 自由 に使 うこ とに した
︒
②本文中に名前を引用されている人々とその著書は次の通りで
ある
︒ ( pp .
38
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9)
Ja
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1 9 4 2
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のように管理職能のなかに
or
ga
ni
zi
ng
職能を含めてはいない
わけでもない︒組織形成は組織計画のなかに含められているよ
うであるから︑第二部は組織の静態的な構造論とみなさざるを
えないのであり︑多分それ故に伝統的な組織論の色彩が濃厚と
なっている︒相当程度︑意志決定やコミュニケーションの要素を
取り入れた記述ではあるが︑別にそれが特徴的ではない︒第二
部は百三十頁にも及ぶが︑それが理論上あまり独創的であると <ョリ日常的な管理過程というような明確な分類を試みている し︑あるいはまた︑甚本的な経営構造の形成と︑それにもとづ orga
ni
zi
ng
の問題とものべているが︑彼の場合︑一般の分類 能すべきフレイムワークを取扱う︒アルバースはときにこれを 第二部﹁管理のための組織﹂は︑経営者︑管理者がそこで機
Ly
nd
al
l U
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ic
k,
Ma
na
ge
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︑
0
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1 9 3 3
.
③アルバースはヒューマソ・リレーショソズ・アプローチと人
事管理の間の区別に注意を喚起し︑ヒューマン・リレーツョン
ズの主題は管理論︑組織論の
or
ga
ni
c
pa
tr
と解 釈す べき こ
とを強調している
( p .
40 n.
)︒
④ 方 針 設 定
(p
ol
ic
y,
ma
ki
ng
) る必 要を 認め いて ない
︒
と意志決定とはこれを区別す
︱二 四
アルバースの管理論︵飯野︶ おくことにしよう︒
第四章は組織構造の一般的な問題を取扱う︒例えば︑職能的
な組織構造論
( f u n
c t i o
n a l
th
eo
ry
of
o rg a
n iz a
t io n
a l d
e si g
n )
は組織目的をもっともよく達成しうるように職能的な必要にも
とづいて理想的な構造を計画しようとするが︑人間ないし︒ハー
ソナリティの問題が充分考慮されているとはいいがたいことを
批判する︒また経営者の限られた能力が階層的な組織を必然的
なものにすること︑ここに管理限界
( t h e
sp
an
f om
an
ag
em
,
e n t )
の問題が生ずること︑それを規定する経営者に内在的な
要因をそれぞれ考察する︒最後に管理限界と階層の関係が取り
上げられる︒スパソが大となれば階層の数がすくなくなるのは
当然であるが︑実験や調壺例からは︑この場合の方がコミュニ
ケーションの改善︑管理者の育成などに好ましい結果を生むこ
とが示されている︒
ところで︑階層組織は経営者の責任を二つの面から規定す
る︒一方は委任の問題であり︑階層のことなるレベルヘ責任を
委任すること︵組織の横割りの関係︶︑他は同じレベルにある管
理者間に責任を分割すること︵組織の縦割りの関係︶である︒
第五章﹁部門化﹂
( de p
a rt m
e nt a
t io n
)
は後者を取扱い︑第七 は認められないことと紙面の都合で︑できるだけ簡単にのべて
︱二
五
また生 章﹁意志決定の集中と分散﹂では前者が論ぜられる︒
第五章では部門化の型として︑①職能別︑②製品別︑③サー
ビス別︑④地域別︑⑤時間別︑⑥設備別︑⑦番号別
( a l p
h a ,
nu
me
ri
ca
l)
な部門化に分類し︑それぞれに検討を加えている︒
組織における集中と分散の問題には︑地域的な︑あるいは職
能的な集中や分散も考えられるが︑︑第七章で問題となるのはこ
︑
︑
︑
︑
︑
︑
︑
となる階層の管理者間に意志決定の責任がどの程度に分割され
ているかである︒いわゆる分権か集権かの問題である︒もちろ
ん分権︑集権は相対的な程度の問題であって︑調整と目的の統
一なしには組織は存続しえないことを注意しなければならな
い︒
本章
では
︑
委任の程度を規定する諸要因を論じ︑
産︑阪売等々の各職能領域での集権︑分権の可能な程度に言及
したのち︑ジェネラル・モーターズの分権管理の実例を紹介し
て章をとじている︒
順序が前後したが︑第六章ではライン・スタッフ・ファソク
ショナルな関係を論ずる︒標題から想俊しうるように︑権限関
係説︵クーソッらのごとき︶の立場をとっている︒まず軍隊に
おけるスタッフ制度を詳細にのべたのち︑企業におけるこれら
諸関係の検討と実例の紹介がある︒スタッフの概念は︑命令の
統一を犯すことなしに職能的な専門家の利用を可能にするもの
316
種の経営委員会について論じている︒ 確な答を出せないが︑実践上は相当程度まで可能である︵命令 であるが︑重要なことは命令統一の原則と専門化の利益とをいかにバラソスさせるかであろう︒なお︑純粋のライン・スタッフ関係を修正して︑ファソクショナルな意志決定権を与えるとすれば︑どの程度が適当であるかについては︑組織理論上は明の統一を大きく破壊することなしに︶としている︒(p.131)
第八章では経営における委員会が問題となる︒委員会とは管 理職能のある部面の実行に従事する一団の人々と定義される︒
委員会にも種々のクイプと目的があり︑各階層において利用さ れる︒本章では委員会の利害得失︑問題の種類によって委員会 でやるか個人がやるかどちらが適当か︑効果的な委員会運営の 根本問題などを︑かなり重点をおいて記述している︒引続いて 第九章では︑同じく委員会であるところの取締役会とその他各 以上第二部の各章をごく簡単に紹介した︒各種の資料を充分 に利用して︑ある意味では丁寧すぎるほどに組織構造の諸問題 を論じている︒しかしクーンツ︑ニューマン︑デールなどこの 分野の標準的な文献にくわしい場合には︑第二部はそれほど関 心を惹かないのではないかと思われる︒第一一部は﹁機構﹂とし
ての地位を与えられているが︑理論的には︑第一︱一部以下で経営 アルバースの管理論︵飯野︶
論に依るところが多い︒ 新しい発展をよく取り入れており︑とくにバーナードなどの理 者の諸活動の組織的側面を説明するための前提となっている︒もっとも興味深いのは︑以下につづく第一一一部から第五部までで
第三︑第四︑第五部では︑管理職能として分類された意志決 定︑伝逹︑リーダーツップがそれぞれ論ぜられるが︑とくに経 営者が階層関係において機能するところから︑その組織的性格 に注意が払われる︒本書の中心はこの部分であろう︒第二部が
比較的伝統理論を基礎にしているのに対し︑'この部分は最近の
第三部﹁意志決定・計画戦略﹂は第十章﹁意志決定機能﹂に 始まる︒この章は意志決定の基本問題を扱い︑その項目分類を まず列挙すると次のごとくである︒意志決定における倫理と合 理性︑不確実性の問題︑オペレーションズ・リサーチ︑主観的
﹁知識﹂と技術の重要性︑組織的意志決定過程︑企業における
決定問題︑である︒以下にや
4
詳しく重要と思われるところを紹介 しよ う︒
ある
︒
︱二六
アルバースの管理論︵飯野︶ ﹁意志決定は二つあるいはそれ以上の代替策
( al t e rn a t iv e s )
から︱つの選択
c h ( a o ic e
) を行なうことを意味する︒﹂
( p . 2 0 1 )
決定は︑数ある可能な代替策のうち︑一っが他のものより良い
と判断して選択される以上︑倫理的性格をもつ︒もし意志決定
が全く倫理の問題であれば決定の科学はありえない︒﹁幸いに
も手段と目的の分化
( di f f er e i a n t t io n o f m
ea
ns
n a d e
nd
s)
によって合理的な理論が展開しうる︒代替手段から選択すると
いう問題は合理性のテストに服することができる︒与えられた
目的の達成をもたらす手段を選択した場合に︑その決定は合理
的で ある
︒﹂
( p . 2 0 2 )
すなわち︑決定は目的と手段の連鎖と分
析され︑目的の見地から手段選択の合理性が評価されうる︒し
かし﹁決定の結果に影響する諸要因についての管理者の知識に
はつねに限度がある︒主要な困難は︑意志決定が︑高度の確実
性をもって予測しえない将来の行動にかかわることである︒さ
らに管理決定のいくらかの要素は︑正否の科学的テストをなし
えない倫理的性格をもつ︒﹂
( p . 2 0 3 )
組織事象を現実に取扱う
場合には︑高度の合理性を逹成することは不可能なことに注意
する必要がある︒
﹁管理決定はつねに将来に生起する行為にかかわる︒合理性
は︑将来に関するある程度の判断をなす能力を前提にする︒﹂
ーニ 七
理しうるほど数多いとは限らない︒従って﹁経営者は必然的に
(
p . 2 0 4 )
ここに予測の問題があり︑不確実性
( un c e rt a i nt y )
の問題がある︒確率論はたしかに決定問題に役立つ︒しかし企
業経営者が予測すべき多くの問題は︑過去に起った事象とはい
ちじるしく異なることが多く︑また過去の事象とて統計的に処
自己の洞察力にもとづく主観的将来像を形成せざるをえない﹂
( p . 2 0 9 )
ことが多いのである︒
さて︑テーラーは意志決定において科学的技術を用いるべき
ことを強調した︒最近には
O
R
と呼ばれる技術がこの方向に沿って発展してきた︒
O
R
については二0
七ーニ︱八頁にわたって初歩的な解説があるが︑それは割愛し︑
O
R
の将来についてのアルバースの見解をのみ紹介しておこう︒
から みて
︑
﹁これまでの成功
O
R
の歴史は丁度初期の科学的管理法の歴史と同様イノベーになろう︒テーラーおよびその一派のいくらかは︑彼らの新技
術についてあまりに楽観的な見解に走りすぎた︒
O
R
は︑先行︑ ︑
の科学的管理法と同じく︑疑いもなく人間ではなくモノに関す
る決定問題の解決にはうまくゆくだろう︒人事や市場調査問題
よりは︑生産や在庫問題に一層よい解答をもたらすだろう︒
O
R
は意志決定の客観性をある程度増大させようが︑主観的技術の必要性を排除しはしないだろう︒経営者は答のない問題に解
318
答しつづけて行くだろう︒﹂
( p . 2 1 8 )
意志
決定
では
︑
O
R
のごとき客観的技術とともに︑主観的な知識や技術も等しく重要である︒科学的知識を超越する主観的
洞察力をもつ人々があり︑その直観的過程が複雑な問題を解決
することも多いのである︒また決定は︑分析上︑ときに常規的
( r o u
t i n e
) 決定と純正的
( g e n
u i n e
)
決定とに分けられることが
ある︒前者では使い慣れた原則と情況に応用する場合であり︑
後者では意識的な思考過程によって新しい原則を作ることが必
要である︒確立した組織の熟練な経営者はその決定の九十︒^1
セントは常規的決定であると見積っている︒かくして﹁意識的
思考よりも直観
( i n t
u i t i
o n )
が重要な意志決定メカーーズムとな
る︒しかし直饒的決定がつねに最菩の決定であるとか︑つねに
悪い決定であるとか考えてはならない︒﹂
( p . 2 2 0 )
なお︑主観
的ないし直観的過程の生理学はいまだ充分解明されていないけ
れども︑﹁主観的な意志決定の理論と技術は将来の研究の一っ
の重要な目標となるように思われる︒﹂
( p . 2 2 3 )
プレインスト
ーミングなどはこのような技術の一例であろう︒
さて︑﹁ある程度以上の規模の組織における意志決定は︑それ
が協働的過程であることを認識しなければ完全に理解しえな
ぃ ︒ ﹂
( p . 2 2 5 )
協働的な決定過程の本質と意義とが次に論ぜら アルバースの管理論︵飯野︶
かわ
る︒
れることになる︒
広い目的をョリ特殊な目的へと変形させる︒組織の上方では手
段よりは主に目的の規定が問題になる︒中間層では広い目的が.
ヨリ特殊な目的へと再規定され︑生産︑阪売︑人事︑技術︑財
務などの問題に多くの注意が払われる︒各階層で用いられる部
門化の型によって︑目的の規定様式が左右されるのである︒下
部階層では必然的に︑目的達成に直接貢献する特定の活動にか
階層組織における各職位から意志決定をみると︑﹁各管理者
には︑社長から職長にいたるまで︑全決定責任の特定部分が割
当て
られ
てい
る︒
﹂
( p . 2 2 7 )
その権限範囲は部門化︵第五章︶
と集権︑分権︵第七章︶によって二面的に規定されている︒各管
理者は自己に割当てられた決定問題に専心することによって︑
全組織の運営を促進することになる︒管理組織では︑異なる管
理者によってなされる意志決定のたえざる連続を生む︒すなわ
ち︑それは相互依存的な体系である︒﹁階層における各職位は
同時に決定︑伝達およびリーダーツップ︵権威︶のセンクーで
ある︒決定は職能的責任の階層的分布によって︱つの統一体系
のなかへ相互に関係づけられる︒統括は上位の決定に下部の階 組織的意志決定過程は︑階層の上から下へと進むにつれて︑ ︱二八
319
アルバースの管理論︵飯野︶
﹁企
業に
お
層を服従させることによって達成される︒決定過程は一つの管
理職位から他の職位への伝達によって動態化される︒それは権
威関係によって効果的となる︒﹂
( p . 2 3 1 )
このように統合主題
の機構と過程との関係づけがみられるのである︒
最後に企業における決定問題が取上げられるが︑
ける基本的な決定問題は︑収益と費用の間に好ましいバランス
を生ぜしめるような戦略を発展させることである︒企業はもし
費用がつねに収益より大であれば︑一般に存続しえないのであ
る ︒ ﹂
( p . 2 3 1 )
経営者は決定に当って︑経済学者による限界分
析(
ma
rg
in
al
an
al
ys
is
)の
よう
に︑
消費
者需
要︑
技術
︑生
産
性︑コスト︑要素価格が一定であると仮定しえない︒これらの
うちの︱つでも変化すれば︑組織活動において重大な調整を必
要とする︒しかもそれには時間の経過を要するので余計複雑と
なる︒﹁将来の予測の問題とともに測定の困難さは︑企業の静
態理論で用いられる計量的技術の応用に制約を加える︒﹂
( p . 2 3
3 )
しかし経営者の直面する問題も多くの点で限界分析の接近方法と同じ性格をもつものである︒
ところでバーナードによれば︑決定の客蜆的な場を構成する
ものは︑目的と環境である︒﹁決定の機能はこの二つの部分の
間の関係を調整することである︒この調整は︑目的を変更する
︱二
九
か︑あるいは︵目的を除いた︶環境の残部を変えるか︑いずれ
かによって達成される︒﹂︵バーナード﹁経営者の役割﹂一九五
頁︑
訳書
二
0
九頁︶もし環境があまりに抵抗的であれば目的の修正︑変更を余儀なくされるし︑他方︑環境にある諸力に能動
的に働きかけ︑これを修正し︑統制することによって組織のも
つ目的を強行する場合がある︒かかる理解からアルバースは︑
企業が計画を桐立するに当って重要な役割を演ずる﹁環境の諸
要素﹂を第十一章において論ずる︒すなわち︑製品市場の問題
︵市
場予
測︑
市場
分析
︶︑
生産
資源
(p
ro
du
ct
iv
e
re
so
ur
ce
s)
市
場の問題︵金融︑労働︑設備︑原材料など︶︑政府の政策︑技
術革新︑その他︵文化社会的要因︑天候など︶を取り上げる︒
これら個々の問題は︑それぞれ専門的な研究領域であるが︑本
章および次章の価値は︑かかる各専門分野の主題を意志決定機
能という組織要素に結合して︑これを統一的に把握しようとし
てい
る点
であ
る︒
企業の計画には︑以上の環境の諸要素への適応を意味する場
合と︑環境を統制し︑修正すべく企業が採用する諸戦略とが含
まれる︒第十二章﹁動態的計画
I
﹂は︑おもに環境に働きかける企業の動的な計画︑いわゆる経営戦略の問題を論ずる︒
すでにみたように︑企業存続のためには収益と費用の好まし
320
目したいと思う︒ も︑意志決定機能のもとに各論を体系化しようとする意図に注 いバランスを確保することが必要である︒収益を向上させるか︑費用を低減するか︑あるいは生産性向上によって収益増ないし費用減を計るか︑いずれかの方策を用いうるであろう︒市場戦略
(m
ar
ke
t s tr a t eg y
)︑資源調達戦略
(r
es
ou
rc
e
pr
oc
,
ur
em
en
t s
t ra t e gi e
s )︑操業能率
(o
pe
ra
ti
ng
e f f i
c i e n
c y )
はそ
れぞれその方策であり︑第十二章の主たる項目である︒前章と
同じく︑論ぜられる各専門的な学門領域それ自体の問題より
市場戦略においては︑製品の多角化など製造品目の問題︑価
格政策︑宣伝広告︑製品・サービスの革新などが取扱われる︒
資源調達戦略では︑企業がその経済的︑制度的勢力によって︑
市場に影響を及ぽしうる戦略を問題にする︒労務費︑賃金︑団
体交渉︑採用︑訓練︑原材料︑在庫︑立地などがそれである︒
生産性向上の戦略としては︑工場︑事務所の建物︑設備︑科学
的手続と方法︑標準化と単純化のごとき主として
I
E
ないし生産管理の諸問題︑さらに工場の設備能力と操業度︑技術的失業
の問題などを取扱う︒
それぞれの項目の記述自体は︑各専門分野の文献に劣ること
は止むをえないとしても︑経営管理各論を計画過程を通じて展 アルバースの管理論
︵飯 野︶
成されたかどうかをみるのに必要である﹂
四
︱ ︱
︱
1 0
測される戦略問題の部面として捉えてゆく接近方法には敬慈を
表し
たい
︒
第十三章﹁動態的計画
n
﹂は︑組織内における計画過程のヨリ具体的なあり方に注意を集中する︒すなわち︑計画職能︑計
画期間︑計画基準︑組織︒フログラムの計画が主要項目をなし︑
幅広く種々の重要で興味ある問題を展開するが︑これを簡潔に
要約する能力と時間の不足︑さらに紙面の余裕にかんがみ︑こ
の辺で第三部の紹介をとじることにする︒
意志決定をするためにも︑これを執行するためにも︑情報は
重要な要素であり︑情報の送達
(i
nf
or
ma
ti
on
t ra n s fe r )
すな
わち伝達
(c
om
mu
ni
ac
ti
on
)
は組織動態の璽要な一局面であ
る︒伝達が必要な理由は︑すでにみたように︑﹁
H
計画過程の協働的な性格上︑管理者や他の人々の問に大撒の伝達を必要と
する︒口伝達は計画を執行するに当って璽要である︒部下の管
理者や非管理者は︑伝逹なくしては上司の決定に正しく反応し
えない︒国部下の実行についての情報は︑計画された目標が達
(p .3 27 )
ことにあ