双曲結び目の複素体積に関する Cho-Murakami の公式について
首都大学東京 理工学研究科 数理情報科学専攻 博士前期課程
2
年 園田 悠也1 導入
3
次元球面S
3内の結び目K
の補空間M
が完備双曲構造をもつときK
を双曲結び目という. 3
次元双曲 多様体の構造から得られる双曲体積やChern-Simons
不変量等の幾何的不変量は, Mostow
の剛性定理[5]
より
3
次元双曲多様体の位相不変量となる.
本論文で扱う複素体積は, M
の双曲体積vol(M )
と, M
のChern–Simons
不変量[4] cs(M )
を用いて,
cv(M ) = − 2π
2cs(M ) + √
− 1vol(M ) ∈ C /π
2Z
で定義され
, Neumann [7]
とZickert [10]
による, M
の理想四面体(
四面体から4
頂点を取り除いたもの)
に よる分割を用いて計算する公式が知られている. Yokota [9]
はK
のKashaev
不変量[2, 3]
に対応するM
の 理想四面体分割にこの公式を適用し, Kashaev
不変量のoptimistic limit [6]
がcv(M )
を与えることを示した.
一方, Cho–Murakami [1]
は, colored Jones
多項式のoptimistic limit
がcv(M )
を与えることを示してい るが,
この公式はYokota
の結果から二重対数関数Li
2(x) = −
∫
x 0log(1 − t) t dt
の
5
項関係式等を用いて導出したものであり,
幾何的な証明ではない.
本論文の目的は, D. Thurston [8]
が提唱 したcolored Jones
多項式に対応する理想四面体分割に, Neumann–Zickert
の公式を適用し, Cho–Murakami
の公式を幾何的に証明するとともに,
ポテンシャル関数のより簡明な定義3.1
を与えることである.
この論文の構成は次の通りである
.
第2
章ではM
から異なる2
点q
+, q
−を除いたM
′の理想四面体分割 を構成し,
いくつかの理想四面体を退化させることで,
結び目K
の図式D
に対応するM
の理想四面体分割を 構成する.
第3
章ではcolored Jones
多項式のoptimistic limit
に対応するポテンシャル関数を定義し,
この論 文の主定理である定理3.3
を述べる.
第4
章では, Neumann–Zickert
の公式を紹介し,
この公式を第2
章で構 成したM
の理想四面体分割に適用するための準備をする.
第5
章では定理3.3
の証明を与える.
2 双曲結び目の補空間の理想四面体分割 2.1 M
′の理想四面体分割以下
, S
3\{ q
+, q
−}
をS
2× R
と同一視し, p : S
2× R → S
2を自然な射影とする.
結び目K
のS
2への射 影を, K
の異なる3
点が射影の像において同一の1
点にならず,
また, K
の異なる2
点が射影の像において接することがないとする
.
このような射影図は4
価頂点グラフとなり,
これに交点の上下の情報を加えたものを 図式という.
結び目K
の図式D ⊂ S
2× { 0 }
の双対グラフをD
∗とし, D
の頂点, D
∗の頂点, D ∩ D
∗の点, S
2\ (D ∪ D
∗)
の連結成分の集合をそれぞれ{ X
n| 1 ≤ n ≤ c } , { R
m| 0 ≤ m ≤ c + 1 } , { P
h| 0 ≤ h ≤ 2c − 1 } , { Q
g| 1 ≤ g ≤ 4c }
とする.
ただし, D
の交点数をc
とする.
ここで,
結び目K
がK ⊂ S
2× [ − 1, 1],
K ∩ (S
2× {± 1 } ) = { X
n| 1 ≤ n ≤ c } × {± 1 } , K ∩ (S
2× { 0 } ) = { P
h| 0 ≤ h ≤ 2c − 1 } × { 0 }
を満たすとしても一般性を失わない.
また,
結び目K
は双曲結び目であり,
特にトーラス結び目でないことか ら,
自明でない結び目の連結和として書くことはできないことに注意すると, D
∗に多重辺が存在しないと仮定 しても一般性を失わない.
各
g
に対し, Q
gはD
の1
つの頂点とD
∗の1
つの頂点, D ∩ D
∗の2
点の4
点を頂点とする四角形が囲む 領域である.
定義
2.1
自然数の集合N = { 1, 2, . . . , 4c }
に対し,
写像σ : N → {± 1 } , ν : N → { 1, . . . , c } , µ : N → { 0, . . . , c + 1 } , α, β : N → { 1, . . . , 2c − 1 }
を図1
により定義する.
図1
まず
, M
′の理想四面体分割を,
分割S
2× R = ∪
g∈N
(Q
g× R )
から構成する.
簡単のためA(X
n) = X
n× (1, ∞ ), B(X
n) = X
n× ( −∞ , − 1), C(R
m) = R
m× ( −∞ , ∞ ), A(P
h) = P
h× (0, ∞ ), B(P
h) = P
h× ( −∞ , 0)
とおく
.
ただし, 1 ≤ n ≤ c, 0 ≤ m ≤ c + 1, 0 ≤ l ≤ 2c − 1
とする.
各n ∈ { 1, 2, . . . , c }
に対し, K
n+, K
n− をそれぞれ,
点X
n× { 1 } , X
n× {− 1 }
を含むK ∩ { ( ∪
ν(g)=n
Q
g) × R}
の連結成分とする(
図2
参照).
図式図2
図3
D
に向きを付け, ν
−1(n) = { i
n, j
n, k
n, l
n}
とし, Q
in, Q
jn, Q
kn, Q
lnは図3
の通りとする.
面A(K
n+)
をp
−1(K
n+) \ K
n+の上半分とし,
面B(K
n−)
をp
−1(K
n−) \ K
n−の下半分とする(
図2
参照).
また
,
辺U
+(X
n)
を面p
−1(K
n−)
上でのA(X
n)
の近傍の境界とし, U
−(X
n)
を面p
−1(K
n−)
上でのB(X
n)
の近傍の境界とする(
図4
参照).
図4
各
n
に対し, K
n+, K
n−はそれぞれ可縮であるため, ∪
cn=1A(K
n+)
と∪
cn=1B(K
n+)
の連結成分はそれぞれK
からS
2× {∞}
の辺とK
からS
2× {−∞}
の辺に縮む.
これにより, ( ∪
ν(g)=n
Q
g) × R
から得られたものをO
nと書くとするとO
nは図5
のようになる.
構成からA(X
n) = A(P
α(in)) = A(P
α(jn)) = A(P
α(kn)) = A(P
α(ln)),
B(X
n) = B(P
β(in)) = B(P
β(jn)) = B(P
β(kn)) = B(P
β(ln))
となることに注意する.
図5
ここで
,
A(X
n), A(X
n), U
+(X
n), B(P
α(in)) = B(P
α(ln)), C(R
µ(in)), C(R
µ(ln))
を辺に持つ理想四面体を∆
n1,
A(X
n), A(X
n), U
+(X
n), B(P
α(jn)) = B(P
α(kn)), C(R
µ(jn)), C(R
µ(kn))
を辺に持つ理想四面体を∆
n2,
B (X
n), B(X
n), U
−(X
n), A(P
β(in)) = A(P
β(jn)), C (R
µ(in)), C (R
µ(jn))
を辺に持つ理想四面体を∆
n3,
B (X
n), B(X
n), U
−(X
n), A(P
β(kn)) = A(P
β(ln)), C (R
µ(kn)), C(R
µ(ln))
を辺に持つ理想四面体を∆
n4,
U
+(X
n), U
−(X
n), C(R
µ(in)), C(R
µ(jn)), C(R
µ(kn)), C (R
µ(ln))
を辺に持つ理想四面体を
∆
n5 とする.
それぞれの理想四面体の辺の配置は図6,
図7
の通りである.
以上より, M
′=
∪
c n=1O
n=
∪
c n=1(∆
n1∪ ∆
n2∪ ∆
n3∪ ∆
n4∪ ∆
n5)
となり, M
′理想四面体分割を得た.
これをS
と書くことにする.
図6
図7
2.2 M
の理想四面体分割ここで
K ∩ (S
2× [0, 1])
の弧状連結成分の集合を{ I
x| 0 ≤ x ≤ d } , K ∩ (S
2× [ − 1, 0])
の弧状連結成分の集 合 を{ J
y| 0 ≤ y ≤ d }
とする.
ただし,
| I
x∩ J
y| =
1 if y ≡ x (mod d + 1) 1 if y ≡ x + 1 (mod d + 1) 0 otherwise
とする
.
また,
図式の向きは図8
の向きとし,
R
0, R
c+1, P
0, . . . , P
a, P
2c−b, . . . , P
2c−1, X
1, . . . , X
a+1, X
c−b, . . . , X
c,
は図8
のように配置されているとしてよい.
ここで,
次の4
つの{ 1, 2, . . . , 4c }
の4
つの部分集合α
−1( { 1, . . . , a } ), β( { 2c − b, . . . , 2c − 1 } ), β
−1(a) ∪ α
−1(2c − b), µ
−1( { 0, c + 1 } )
に対し
,
これらのいづれか2
つに共通部分がある場合,
結び目K
の交点数を減らすことができるので,
これら の集合は互いに素であるとしてよい.
またK
が双曲結び目であることから, β
−1(a) ∩ α
−1(2c − b) = ∅
として も一般性を失わない.
図8
図式
D
の双対グラフD
∗の頂点R
0とR
c+1を結ぶ辺e ⊂ S
2× { 0 }
に対し, W = e × ( −∞ , ∞ )
とすると
, M
はM
′\ (K ∪ W )
と同相である
. S
の理想四面体はW
との共通部分を持つ場合には辺や面,
点に退化する.
これよってM
の理 想四面体分割T
が得られた.
このとき退化せずに残った理想四面体の集合をΓ
と書く.
以下,
各n
に対してO
nの退化の7
通りの仕方をみる.
(1) n = 1
のとき: W ∩ O
1は3
辺A(X
1), B(P
0), C(R
0)
を境界とする面と, 3
辺A(X
1), B(P
0), C (R
c+1)
を境界とする面であるため, α(j
1) = α(k
1) = 0
であり,
この2
面と理想頂点を共有する個数によって退化の 仕方が決まる.
これら2
面と理想頂点を4
個共有する理想四面体∆
12は理想頂点に退化し, 3
点を共有する理 想四面体∆
11, ∆
15はそれぞれ辺に退化し, 2
点を共有する理想四面体∆
13, ∆
14は1
つの面に退化する.
以上に より, O
1は面に退化する.
(2) 2 ≤ n ≤ a, a ≥ 2
のとき: W ∩ O
n= A(X
n)
となるのでA(X
n)
を辺として含んでいる∆
n1, ∆
n2 がそれぞ れ,
辺B(P
α(in)) = B(P
α(ln)) = C(R
µ(in)) = C(R
µ(ln)), B(P
α(jn)) = B(P
α(kn)) = C(R
µ(jn)) = C(R
µ(kn))
に退化する.
このとき, U
n+は潰れ,
これに伴って∆
n5 は3
辺U
n−(X
n), C (R
µ(in)) = C(R
µ(ln)), C(R
µ(jn)) = C(R
µ(kn))
を境界とする面に退化し
, ∆
n3, ∆
n4 はそれぞれ, 3
辺B(X
n), B(X
n), U
n−(X
n)
を境界とする面と3
辺U
n−(X
n), C (R
µ(in)) = C(R
µ(ln)), C(R
µ(jn)) = C(R
µ(kn))
を境界とする面を共有しているため
, ∆
n3, ∆
n4 をPachner move
と呼ばれる図9
の変形により, 3
辺B(X
n), C(R
µ(in)) = C(R
µ(ln)), A(P
β(in)) = A(P
β(jn)) = A(P
β(kn)) = A(P
β(ln))
を境界とする面と3
辺B(X
n), C(R
µ(jn)) = C(R
µ(kn)), A(P
β(in)) = A(P
β(jn)) = A(P
β(kn)) = A(P
β(ln))
図9 Pachner move
を境界とする面に縮約できる
.
よって5
つの四面体の和O
nはこれら2
面に退化する.
(3) n = a + 1
のとき: a = β(i
a+1) = β (j
a+1)
とするとW ∩ O
a+1∋ A(P
a)
となるので, A(P
a)
を辺として 含む理想四面体∆
a+13 は3
辺U
−(X
a+1), B(X
a+1) = C(R
µ(ia+1)), B(X
a+1) = C(R
µ(ja+1))
を境界とする面に退化する.
このとき, ∆
a+14, ∆
a+15 は∆
a+13 が退化してできた面と3
辺U
−(X
a+1), C(R
µ(ka+1)), C(R
µ(la+1))
を境界とする面を共有しているのでPachner move
により, 3
辺B(X
a+1) = C(R
µ(ia+1)) = C(R
µ(ja+1)), C(R
µ(ka+1)), U
+(X
a+1) = A(P
β(ka+1)) = A(P
β(la+1))
を境界とする面と3
辺B(X
a+1) = C(R
µ(ia+1)) = C(R
µ(ja+1)), C (R
µ(la+1)), U
+(X
a+1) = A(P
β(ka+1)) = A(P
β(la+1))
を境界とする面に縮約できる.
一方,
理想四面体∆
a+11, ∆
a+12 は退化せず残る.
(4) n = c − b
のとき: 2c − b = α(i
c−b) = α(l
c−b)
であり, W ∩ O
c−b∋ B(P
2c−b)
となるので, B(P
2c−b)
を辺 として含む理想四面体∆
c1−bは3
辺U
+(X
c−b), A(X
c−b) = C(R
µ(ic−b)), A(X
c−b) = C(R
µ(lc−b))
を境界とする面に退化する.
このとき, ∆
c2−b, ∆
c5−bは∆
c1−bが退化してできた面と, 3
辺U
+(X
c−b), C(R
µ(jc−b)), C(R
µ(kc−b))
を境界とする面を共有しているため, Pachner move
により, 3
辺A(X
c−b) = C(R
µ(ic−b)) = C(R
µ(lc−b)), C(R
µ(jc−b)), U
−(X
c−b) = B(P
α(jc−b)) = B(P
α(kc−b))
を境界とする面と3
辺A(X
c−b) = C(R
µ(ic−b)) = C(R
µ(lc−b)), C (R
µ(kc−b)), U
−(X
c−b) = B(P
α(jc−b)) = B(P
α(kc−b))
を境界とする面に縮約できる
.
一方,
理想四面体∆
c3−b, ∆
c4−bは退化せず残る.
(5) c − b + 1 ≤ n ≤ c − 1, b ≥ 2
のとき: W ∩ O
n= B(X
n)
となるのでB(X
n)
を辺として含む理想四面体∆
n3, ∆
n4はそれぞれ,
辺B (P
α(in)) = B(P
α(jn)) = C(R
µ(in)) = C(R
µ(jn)), B(P
α(kn)) = B(P
α(ln)) = C(R
µ(kn)) = C(R
µ(ln))
に退化する.
このとき辺U
−(X
n)
は潰れ,
これに伴って∆
n5 は3
辺U
+(X
n), C (R
µ(in)) = C(R
µ(jn)), C(R
µ(kn)) = C(R
µ(ln))
を境界とする面に退化する
.
理想四面体∆
n1, ∆
n2 は∆
n5 が退化してできた面と3
辺A(X
n), A(X
n), U
+(X
n)
を境界とする面を共有しているため, Pachner move
により, 3
辺A(X
n), C(R
µ(in)) = C(R
µ(jn)), B(P
α(in)) = B(P
α(jn)) = B(P
α(kn)) = B(P
α(ln))
を境界とする面と3
辺A(X
n), C(R
µ(kn)) = C(R
µ(ln)), B(P
α(in)) = B(P
α(jn)) = B(P
α(kn)) = B (P
α(ln))
を境界とする面に縮約できる.
よって, O
nはこれら2
面に退化する.
(6) n = c
のとき: W ∩ O
cは3
辺B(X
c), A(P
0), C (R
0)
を境界とする面と, 3
辺B(X
c), A(P
0), C (R
c+1)
を境界とする面であるため, β (i
c) = β(j
c) = 0
とすると,
これら2
面と理想頂点を4
個共有する理想四面体∆
c3は理想頂点に退化し, 3
点を共有する理想四面体∆
c4, ∆
c5はそれぞれ辺に退化し, 2
点を共有する理想四面 体∆
c1, ∆
c2は1
つの面に退化する.
以上により, O
cは面に退化する.
(7) n ̸∈ { 1, c } , µ(ν
−1(n)) ∩ { 0, c + 1 } ̸ = ϕ
のとき: W ∩ O
n∋ C(R
0)
またはW ∩ O
n∋ C(R
c+1)
であるため, µ(i
n) = 0
とすると, C(R
0)
を辺として含むのは∆
n1, ∆
n3, ∆
n5 である.
理想四面体∆
n1 は 面U
+(X
n) = C(R
µ(ln)), A(X
n), A(X
n) = B(P
α(in)) = B(P
α(ln))
に 退 化 し,
理 想 四 面 体∆
n3 は 面U
−(X
n) = C(R
µ(jn)), B(X
n), B(X
n) = A(P
β(in)) = A(P
β(jn))
に退化し,
理想四面体∆
n5は面U
+(X
n) = C(R
µ(ln)), U
−(X
n) = C(R
µ(jn)), C(R
µ(in))
に退化する.
一方, ∆
n2, ∆
n4 は退化せずに残る.
(8)
上記以外の場合: W ∩ O
n= ∅
より, O
nは退化しない.
3 ポテンシャル関数
この章では
,
前章の記号をそのまま用いることにする. S
2内のグラフG = p(K \ (I
0∪ J
0))
はS
2を(c − a − b)
個の領域に分ける.
これらの領域を{ F
f| 0 ≤ f ≤ c − a − b }
とし, P
0∈ F
0とする.
このとき,
結び目K
が双 曲結び目であること,
特に非自明な結び目の連結和でかけないことから, 0 ≤ f ≤ c − a − b
を満たす任意のf
に対して, #(I
0∩ F
f), #(J
0∩ F
f) ≤ 1
かつF
f は単連結であるとしてよい.
各F
f に対し,
複素パラメータw
fを対応させる.
ただし, w
0= 0, w
c−a−b= 1
は固定する.
面に対応したパラメータw
1, . . . , w
c−a−b−1を 用いて関数V (w
1, . . . , w
c−a−b−1)
を以下のように定義する.
図10
定義
3.1
結び目K
の図式D
から構成されたG
の各交点X
n(a + 1 ≤ n ≤ c − b)
に対して,
交点X
nの周り の面に対応するパラメータをw
i, w
j, w
k, w
lとし(
図10
参照), W
nを以下で定義する.
(a) w
i, w
j, w
k, w
l̸ = 0
のとき: W
n= Li
2( w
iw
l) + Li
2( w
kw
l) + Li
2( w
kw
j) + Li
2( w
iw
j) − Li
2( w
iw
kw
lw
j) − 1 2 π
2+ 1
2 (log w
jw
l)
2(b) w
i, w
j, w
k̸ = 0, w
l= 0
のとき:
W
n= Li
2( w
iw
j) + Li
2( w
kw
j) − 1
3 π
2+ log w
iw
jlog w
kw
j(c) w
i, w
j, w
l̸ = 0, w
k= 0
のとき:
W
n= − Li
2( w
jw
i) − Li
2( w
lw
i) + 1
3 π
2− log w
jw
ilog w
lw
iこのとき
,
V (w
1, . . . , w
c−a−b−1) =
c−b
∑
n=a+1
W
nと定義する
.
さらにV
0(w
1, . . . , w
c−a−b−1)
をV
0(w
1, . . . , w
c−a−b−1) = V (w
1, . . . , w
c−a−b−1) −
c−a
∑
−b−1 m=1w
m∂V
∂w
mlog w
mで定義する
.
注意
3.2 Cho–Murakami
が定義したポテンシャル関数V (w
1, . . . , w
c−a−b−1)
は定義3.1
とは異なり,
かな り複雑である.
詳しくは[1]
を参照.
Cho–Murakami [1]
の主定理は以下である.
定理
3.3
双曲結び目K ⊂ S
3, K
の補空間M ,
理想四面体分割T
について, T
に対応したM
の双曲構造方 程式はexp (
w
1∂V
∂w
1)
= 1, . . . , exp (
w
c−a−b∂V
∂w
c−a−b−1)
= 1 (1)
となる
.
さらに, (1)
の解で, M
の完備双曲構造に対応する解をw
01, . . . , w
0c−a−b−1とすると, K
の複素体積 について− 2π
2cs(M ) + √
− 1vol(M ) ≡ V
0(w
10, . . . , w
c0−a−b−1) mod π
2(2)
が成り立つ
.
注意
3.4
双曲構造方程式とは, M
の幾何構造が完備双曲構造であるための条件(1)
理想四面体分割の各辺の周りの面角の和が2π
の整数倍である.
(2)
結び目K
の近傍の境界がユークリッド構造をもつ.
を適当なパラメータを用いて方程式で表現したものである.
注意
3.5
ポテンシャル関数は図式の取り方と,
基点P
0の取り方に依存するが,
定理3.3
の(2)
の右辺はπ
2 を法とすると,
これらに依存しない.
写像
γ : N → { 0, . . . , c − a − b }
をg ∈ N
に対し, Q
g⊂ F
γ(g)で定義すると,
理想四面体分割T
の退化し ていない理想四面体∆
n1, . . . , ∆
n5 に対して,
モジュラスと呼ばれる,
理想四面体の位相構造を定める複素数値z(∆
n1), . . . , z(∆
n5)
は定理3.3
の(1)
の解を用いて,
z(∆
n1) = w
γ(i)w
γ(l), z(∆
n2) = w
γ(k)w
γ(j), z(∆
n3) = w
γ(i)w
γ(j), z(∆
n4) = w
γ(k)w
γ(l)z(∆
n5) = ∏
ν(g)=n
w
γ(g)−σ(g)で定まる
.
このとき, z(∆
n5) = { z(∆
n1)z(∆
n2) }
−1= { z(∆
n3)z(∆
n4) }
−1となることに注意する.
4 Zickert の公式
定理の証明のために
, ∆
n1, ∆
n2, ∆
n3, ∆
n4, ∆
n5 の辺の向きと,
それに伴う頂点のオーダー0, 1, 2, 3
を図11,
図12
で定める.
図11
図12
この辺の向き付けは
,
図5
のO
nの縦方向の辺に対し,
上から下に向きを付けることでM
′の理想四面体分 割S
では矛盾なく定義できるが, M
の理想四面体分割T
では, S
の理想四面体が退化する過程において,
向き の異なる辺同士が同一視される場合がある.
この場合は, Pachener move
により理想四面体を2
つ増やし,
辺 を2
重にすることで, T
の辺に矛盾なく向きを付けることができる.
このとき増やした四面体の集合をΛ
と する.
理想四面体
∆
が頂点のオーダー0, 1, 2, 3
を持つとき, ∆
の向きをϵ(∆) =
{
+1 (
頂点のオーダーの配置が図13
のとき),
− 1 (
頂点のオーダーの配置が図14
のとき)
と定義すると,
ϵ(∆
n1) = − 1, ϵ(∆
n2) = +1, ϵ(∆
n3) = +1, ϵ(∆
n4) = − 1, ϵ(∆
n5) = +1
となる.
図13 図14
結び目
K
の近傍をN (K)
とすると, ∂N(K)
はユークリッド構造をもつので, ∂N(K)
の不変被覆空間 を複素平面と同一視できる.
これは一意的ではなく,
拡大と回転に依存するが,
展開写像を1
つ決めると, T ∩ ∂N(K)
の有向辺y
にψ(y) ∈ C
を対応させることができる.
理想四面体分割T
の有向辺x
に対してx
を 含む理想四面体の面Z
を1
つ決めるとZ ∩ ∂N(K)
の有向辺y
+, y
−が図15
のように定まるので, ξ(x) ∈ C
をξ(x)
−2= ψ(y
+)ψ(y
−)
で定める
.
この値は面Z
の取り方に依存しない.
図15
このとき
, u(∆), v(∆) ∈ C
をu(∆) = log ξ(x
03) − log ξ(x
13) + log ξ(x
12) − log ξ(x
02), v(∆) = log ξ(x
02) − log ξ(x
23) + log ξ(x
13) − log ξ(x
01)
で定義する
.
ここで, x
stは∆
のオーダーs
の頂点からオーダーt
の頂点に向かう辺とする. Zickert [10]
の結 果より,
ある整数κ, λ
が存在し,
u(∆) = log z(∆)
ϵ(∆)+ κπ √
− 1, v(∆) = − log(1 − z(∆)
ϵ(∆)) + λπ √
− 1
であり,
cv(M ) = ∑
∆∈Γ
ϵ(∆)L(∆) + ∑
∆∈Λ
ϵ(∆)L(∆)
が成り立つ.
ただし, L
はL(∆) = Li
2(z(∆)
ϵ(∆)) + 1
2 log z(∆)
ϵ(∆)log(1 − z(∆)
ϵ(∆)) − π
26 + π √
− 1 2
{ λ log z(∆)
ϵ(∆)+ κ log(1 − z(∆)
ϵ(∆)) }
で定義する
.
ここで, z(∆)
は∆
のモジュラスとする.
このL
は∆ ∈ Γ
に対して, π
2を法としてL(∆) = Li
2(z(∆)
ϵ(∆)) − π
26 + 1
2
{ log z(∆)
ϵ(∆)+ κπ √
− 1 }{
log(1 − z(∆)
ϵ(∆)) + λπ √
− 1 }
− 1 2 κλπ
2≡ Li
2(z(∆)
ϵ(∆)) − π
26 + 1
2 u(∆) {
v(∆) + 2 log(1 − z(∆)
ϵ(∆)) }
が成り立つ.
5 定理 3.3 の幾何学的証明
理想四面体分割
T
の辺の向きづけのために増やした理想四面体の集合Λ
は全てPachner move
により作ら れたものであるためYokota [9]
の系3.2
および補題3.3
より∑
∆∈Λ
ϵ(∆)L(∆) = 0
が成り立つ.
以下, ∑
∆∈Γ
ϵ(∆)L(∆)
を計算する.
以下では, Z
n= ∑
5m=1
ϵ(∆
nm)L(∆
nm)
とする.
ただし, ∆
nm がT
を得る過程で退化する場合L(∆
nm) = 0
とする.
補題
5.1 ξ(C(F
c−a−b)) = 1
のとき, 1 ≤ f ≤ c − a − b − 1
に対して, ξ(C(F
f)) = w
fが成り立つ
.
証明
. 5
つの理想四面体の和O
nにおいてξ(C(R
µ(in))) = ξ(C(F
γ(in)))
とξ(C(R
µ(jn))) = ξ(C(F
γ(jn)))
の関 係をみる.
図16
は,
図5
の上部と下部を描写したものであり,
白丸はC(R
µ(in)),
黒丸はC(R
µ(jn))
を表して おり,
ξ(C(R
µ(in)))
−2= ψ(y
+in
)ψ(y
i−n
), ξ(C(R
µ(jn)))
−2= ψ(y
+jn
)ψ(y
j−n
)
である.
このとき,
図16
の左側の影を付けた部分のモジュラスはz(∆
n3) =
wwγ(in)γ(jn) であり
図16
ψ(y
j+n
) = w
γ(in)w
γ(jn)ψ(y
i+n
)
が成り立つ
.
また, K
n−のカスプの周りのモジュラスの積が1
であることから,
図16
の右側の影を付けた部分 のモジュラスの積はz(∆
n3) =
wwγ(in)γ(jn) とわかるので
ψ(y
j−n
) = w
γ(in)w
γ(jn)ψ(y
i−n
)
が成り立つ.
これらからξ(C(R
µ(in)))
2ξ(C(R
µ(jn)))
2= w
γ(i2n)
w
2γ(jn)
となり
,
補題が成り立つことがわかる. □
結び目