ヘミセルラーゼ生産菌No.101の胞子形成
大宮満男・今里祥子・小川サチヨ・深掘知子
(昭和51年10月31日受理)
Spore Formation in a Hemicellulase‑Producing Bacterium No.101
Mitsuo OOMIYA, Shoko IMAZATO, Sachiyo OGAWA Tomoko FUKAHORI
Department of Home Economics, Faculty of Education Nagasaki University, Nagasaki
(Received Oct. 31, 1976)
Abstract
We have previously isolated a bacterium which produces a hemicellulase active toward corn seed hemicellulose. During the cultivation of this bacterium, it was found that the bacterium is quite resistnt to heat sterilization, since even after the 20 minute‑
shearing at 120℃, a significant number of bacteria appeared in the sterilized medium.
This suggests that this bacterium contains spores quite resistant to heat treatment.
緒言
乳酸を多量につくり,しかも耐熱性の胞子をつくる菌については,乳酸菌(1)あるいは有胞子 育(2)として研究されてきている。我々は,前回より本菌の集積培養,細胞膜溶解について再検 討を重ねていたところ,特に熱に対する抵抗が大であることが判明した。次いで染色法により 胞子を有することを認めたので報告する。
実験方法
1.材料トウモロコシ種子(3)
*長崎女子短期大学Nagasaki Women′s Junior College, Nagasaki
130
大宮満男・今里祥子・小川サチヨ・深堀知子 2.集積培養における加熱処理a 無菌水集積培養(4)
b 加熱処理条件
培養2日目のものを800C,90。Cでそれぞれ1,5,10,15分間加熱処理した。
また,1kg/cm2,120。Cで20分間加圧殺菌したものは,トウモβコシ種子が膨潤して溶 液が採取できず,菌数を数えることが不可能であったため, 2日問培養し,グラム染色で 明らかに菌の存在が認められるものについて,全体をよく混合し,溶液のみをあらかじめ 殺菌ずみの試験管に移し取リオートクレーブにかけた。
c生菌数
処理前,処理直後,処理後24時間経過したものについて平面培養法(3)により生菌数を数 えた。
3.胞子確認実験 a 培地の組成 (1)脱ぺ基本培地(5)
(2)肉汁寒天斜面培地
第1表 肉汁寒天斜面培地組成 (%)
代
用 肉
汁肉
工 キ ス 1.0ぺ
フ。 ト ン 1.0Na C1 0.5
寒
天
2.0肉エキス・一・唖鈴肉エキス ペプトンー・・細菌培養用ペプトン
(3)代用麦芽汁
第2表 代用麦芽汁組成 (%)
麦 芽
糖 6.0 〜 7.0デ キ ス ト リ ソ 1.5 〜 2.6 グルコース および フルクトース 0.6 〜 0.9
シ ヨ 糖 0.2 〜 0。6
(4)麦芽エキス(DIFCO LABORATORIES製) 1.5%
(5)酵母エキス(オリエンタル酵母工業K.K.製) 0.5%
いずれも水道水に溶解 b 培養
(1)これまで植え継いだ菌を脱ぺ基本培地に1コ・二一植え370Cで2日間培養し,その1 白金耳を肉汁寒天斜面培地に移植し,40。Cで培養し,毎日芽胞染色を施した。肉汁寒天 斜面培地上のコ・二一を種菌として冷蔵庫(5土10C)に保存し,以下の実験に使用し
たo(2)代用麦芽汁に1コ・二一を植え,すぐに沸騰水浴中(970C)で加熱し,それぞれ加熱 時間を0,10,20,40,50,60分間とし,流水で急冷の後400Cで培養した。
(3)麦芽汁に種菌1コロニーを植え,970Cで20分間加熱処理したものと処理しないものに
ついて40。Cで培養し,毎目芽胞染色を施した。
(4)麦芽汁に種菌1コ・二一を植え,石原ら(7)の方法によって16時間培養のものと,48時 間培養のものを同時に採取でぎるようにした。
c 芽胞染色
液体培地のものは,1白金耳をプレパラート上に塗抹し,固定培地のものは1コ冒二一 を無菌水10m1に懸濁し,その1白金耳を塗抹していたが,非常に菌が少なく顕微鏡観察 が困難であるため,まずプレパラートに1白金耳無菌水を採り,そこに1コロニーを採り,
プレパラート上で混ぜ合わせる方法にした。各試料プレパラートにMO:LLER法(8)により 芽胞染色を施し,顕微鏡観察した・
4,胞子形成条件
それぞれ酵母水,麦芽汁について行った。なお,どの培養も,上記種菌を脱ぺ基本培地で集 殖培養し,毎目芽胞染色し,検鏡した。
a.通気度の影響
寒天斜面,穿刺,液層2mmおよび10mm b.pHの影響
酢酸およびリソ酸緩衝液でinitial pH4.4〜7.5まで調整し,その影響を調べた。 斜面 培養による。
c.グルコース濃度の影響
濃度を5種類0.1,0.25,0.5,1.0,5.0%のグルコースを添加し斜面培養した。
実験結果
第3表 80。C加熱処理における生菌数 (105/m1)
加熱時間(m1n)
1
5
10
15
処 理 前
18 81
37
14 22 10
7
19 19
5112 11 174 288
処理直後 01
33
500
11
9 00
23
00
24 133
処理後24時間経過
14
28.82.2 5.8
1.1
多数
〃
132
大宮満男・今里祥子・小川サチヨ・深堀知子第4表 90。C加熱処理における生菌数 (10ヴml)
加熱時間(min)
1
5
10
15
処 理 前
10,400 4,700
0 0 0 0 50
3,500 36,200
0 0 100 0
6,900 13,900
0 0 0 0
12,700 11,400
0 0
処理直後
10,100 7,800
0 0 0 3.8
15.4
00 02,2
02.9
00 00
50.10
00
14.2 13.5
処理後24時間経過
6.1 0.3
14.9 多数
〃
1.8
10.1 多数
〃
0.4 1.4 7.8
25.6
多数
〃
第5表 オートクレーブによる加熱処理における生菌数 (102/ml)
処 理 前
38,000 11,000
0
処理直後 0 0 0 1 4
34
5
処理後24時間経過
0.4
1,020
2
1,000 7,610 4,500 11,020
1.集積培養における加熱処理の影響
ミセル・一ス分解菌によるトウモ・コシ種子細胞膜の溶解実験において殺菌の目的で800C 5分間加熱したところその処理効果はなかった。gO。Cにおいても,処理直後に顕れたり,加熱 後24時間経過すると菌数が増加したりすること妥)あった。そこでオートクレーブにより加圧殺 菌を試みたが,この場合ですら殺菌効果はなかった。
2.胞子確認実験
検鏡による結果は次のようであった。
a.肉汁寒天斜面培地では,短桿菌の存在は認められたが,胞子の有無は判然としなかった。
b.代用麦芽汁においては,970Cで40分加熱処理し,2日培養のもののみ,胞子らしきもの を認めた。 (第1図)
c.麦芽汁1%および5%の場合は,加熱処理しないものは,菌が認められず,麦芽汁濃度 が1%のときは,菌が少なく,胞子もなく,5%のときは菌は小さいが,中心に胞子様の ものおよび裸胞子様のものが見られた。 (第2図)
d 麦芽汁培養で16時間,48時間経過した菌を混合したものでは,青い菌体の中心にピンク 色の胞子があり,また菌体のみのもの,裸胞子状態のキ)のが見られた。 (第3図)
3.胞子形成条件 a 通気度の影響
酵母水寒天斜面上,大気圧下に穿刺培養した場合は, 3日目くらいから菌が顕れたが非 常に少なく,胞子も見られなかった。麦芽汁の場合も同様であった。10mm層2mm層の 液体培養では,菌の生育はともに良好であるが,2mm層の方がやや数量的に多いようだ が胞子は見られなかった。
》謡
梅 蕪
磁
霊 購癖一
第1図 970C加熱40分処理後 培養 2日目 (×1,500)
毒醗甥、繋嚢.、.,灘 、鞭
撃擁・饗欝、美 ・_
欝。 績隆懸 鋳
第2図 麦芽エキス 596 970C加熱 20分処理後
1音養
2日目
(×1,500)134
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難難1濠灘…
鑛藻馨…灘,,,灘灘
、.
懸、鯉螺、
≦鍵
第5図 基本培地 培養 2日目
、戴 奮
回
癖(×1,500)
体同じで濃度による差はなかった。酵母汁では胞子の着生は見られず,グルコース添加の 場合,菌の伸長が特長的であった。麦芽汁では3日目になると,胞子の着生が見られ,
0.1〜0.5%が適当であった。 (第5図)
胞子形成条件の実験中,冷蔵庫保存中の肉汁寒天培地から集殖培養を目的として脱ぺ基 本培地に植えた菌では,培養の2日目に胞子の着生が見られた。
考 察
本菌が熱に対して抵抗性が大であることは,胞子を形成しているためであることが判明し た。また加熱処理前に菌が非常に少なく,処理後に表われることがあるなど,熱という物理的 刺激が胞子から歯への成長を促しているといえる。はっきりとした胞子形成の条件は得られな かったが,代用肉汁寒天斜面,麦芽汁,脱ぺ基本培地の場合に胞子を着生し,酵母汁の場合は 着生しないことがわかった。
総 括
さきにトウモ・コシ種子から分離したヘミセルラーゼ活性を有する細菌が800C5分間の加熱 条件では,完全には殺菌されないことから,本菌の胞子形成能を予想し,加熱条件を800Cと 900Cでそれぞれ,1,5,10,15分間更に1kg/cm2,120。Cで20分間加圧した場合に殺菌効 果のないことを確めた。次いで各種培地の胞子形成確認をM6LLER芽胞染色を用いて行っ た。胞子形成条件について魂、,通気,pH,グルコース濃度の影響を検討した。pHについて は,条件内で,7.0で胞ヂらしき4、のを認めることができた。
136
大宮満男・今里祥子・小川サチヨ・深堀知子参 考 文 献 1)中山大樹,坂口謹一郎,農化,23,513(1950)
2)花岡明,原田篤也,農化,23,517, (1950)
3)大宮,今里,小川,深堀:長崎大・教・自然・紀要,27,243〜259(1976)
4)大宮,高橋,4》川:長崎木,・教・自然・紀要,22,96(1971)
5)大宮,今里,F小川,深堀=長崎大・教・自然・紀要,24,114(1974)
6)東京大学農芸化学教室編雪¢実験農芸化学 上巻 朝倉書店(1961)P.188 7)石原,竹内他:細菌学・食品衛生学実験書 第一出版(1968)P.17
8)微生物学イ・ンドブック編集委員会編 微生物学ハンドブック 技報堂(1966)P・998