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賃金債権についての一問題

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(1)

賃金債権についての一問題

−市民法の社会法への架橋としての試み−

近代市民法が抽象的・形式的に人と人との関係を平等だとする原理竺且つに対して︑労働関係には︑労働者と使用

者との間の実質的不平等関係という特殊性にもとづき︑労働法が市民法原理を排除して独自の法原理を打ち樹て︑独

自の津体系を確立せんとする︒

しかしながら︑労働関係が痔殊の性格を有するものであるとはいっ・ても︑それが市民社会の中での関係である限り

において︑そのすべての場合に当って自己完結的な法体系を有するまでにいたっていない︒したがってそこに市民法

の適用による充足の場がみられるわけである︒そこで︑いかなる場合に︑またいかなる程度に労働関係に市民法が適用されるかは︑・単に法適用のテクl;クの問

題では放く︑現在の資本制社会の中における労働関係の意義と価値とに関連す畠問題であると考えられる︒け

このことについては︑最近において労働関係における信養誠実の原則が叫ばれβ︑権利濫用の問題が捷起されてい

るのであるが︑本稿では︑労働関係の特殊性から来る︑労働契約にもとづく債権−−唐金請求権1−1をとりあげ︑賃

金債権について︑市民法原理がどのように取り扱われているか︑そしてどのように取り扱われるべきであるかを見討

賃金債権についての一間串

一一九

(2)

一 一 一

O

してみ・たいと思うのである︒

市民法における通常の債権

l l

典型としての契約債権ーーは︑たとえば売買契約にみられるように︑売主と買主と

の間の意思の合致による契約の成立によって︑売主は代金請求権を取得し︑買主は目的物に関する履行誇求権を獲得

する︒労働関係における当事者の債権関係の発生も︑そめ点では︑一応普通の売買契約と同様に考えられるわけであ

る︒す注わち︑雇傭契約怠いしは賞働契約も︑被用者・ないしは労働者の先履行義務という特則はあるにしても︑当事

者間の債権関係は契約の成立によって一応は発生すると考えるととができるものである︒

ただ︑注意したければ注らないのは︑普通の売買契約と雇傭契約たいしは労働契約との法的性質の差異である︒換

言すれば︑その客体についての差異が認められるのである︒売買の目的物はいわゆる﹁物﹂であり︑労働契約のそれ

は﹁労働力﹂であると考えられるが︑との契約の目的物たる労働力の特殊性がさらに認識されたければたらたい︒

契約の目的物としての労働力が︑一般の売買の目的物と異り︑労働者の人格と切り離して実在し得危いものである

が故に︑ととは複雑となる︒すなわち︑労働者が労働力を給付するという行為は︑あくまでも労働者の人格と意思の

.

労働契約の概念にクいて︑たとえば浅井清信教授の言を引用すれば︑労働契約は当事者の一方が相手方の権力の下.

に労働に服するととを欲し相手方がとれに報酬を与えるととを約する契約であるσ︑と定義され︑そして︑法律上の

労働とは︑他人の需要をみたすための目的意識を有する人の活動であるゆと述べられる︒

労働契約は労働関係の発生の源とみられるのであるが︑資本制社会においては雇用の法形式であるといえる︒市民

社会における労働契約が雇用の法形式である怠らば︑労働契約は市民法上の雇用契約との間に本質的友差異は見出さ

れ危いわけである︒ただ︑労働契約が従属労働を目的とするととろから︑市民法上の雇用契約という一般原則を修正

した型として︑独自の法的類型が与えられているものと考えちれる︒さらにいえば︑労働契約も市民社会内での契約

(3)

である以上︑市民法上の契約理論から全く隔絶した異質のものとして把握する乙とはできたいであろう︒市民法的契

約理論との比較にh布いて︑労働契約は労働関係の特殊性から来る特異性を有するが伐に︑市民法的契約理論を修正す

るものだと考えられるのではあるまいか︒

と亡ろで︑労働契約の成立によって一応発生するとみ・た賃金債権も︑債権である以上︑一旦は市民法の適用を受け

それが労働関係の特殊性から来る修正を受けるものであると解するととが妥当では・なかろうか︒ただし︑就業規則に

法的効力を認める根拠を民法第九二条の規定に求めたり︑生産管理に民法の事務管理の規定を類推しようと試みるが

ごとく︑市民法規定の溺用によって労働関係を論理的にうまく解釈し︑あるいは法的構成をなす場合に︑形式的には

巧妙にゆくととがあってもそれだけでは不充介である︒その労働関係がその市民法の規定を遁用し得る実質的根拠を

欠くならば︑単に形式論理的に納得できてもその本質は明白に友らない乙とは注意する必要がある︒

賃金を労働力の対価としてみるにせよ︑労働の報酬としてとらえるにせよ︑賃金債権が債権としての性質を有する

以上︑当然にその法的性質︑法的効カなどの法律関係が民法によって漉過されねばたるまい︒具体的に確定して存在す

る賃金債権は︑民法上の一般の債権と同じく一種の金銭債権としての存在を有するものである︒ただ︑受領権限者︑

差押禁止︑譲波の制限︑相殺禁止たどの特則があるが︑それは︑労働関係の特殊性からくる本来の市民法規定の修正

とも目されよう︒

問題は︑前に賃金債権は労働契吋の成立によって一応発生するとみたが︑厳密にはいつ発生するかである︒とのと

とは

1 R

ト中の賃金債権の運命︑特に首分ストの場合のスト不参加者の賃金債権にクいて争われるととろである︒し

かして︑部分λトにおける賃金債権の法的処理が問題になるにしても︑その前提として︑ストライキ一般にクいての

賃金債権の運命をどのように考えるべきかが解明されなければならない︒それで怠ければ統一的な賃金債権の諸種の

紛争が明確に示され得ないわけである︒︒

(4)

しからば︑ストライキを行った労働者は何故に賃令債権を行使でき友いわであろうか︒ストが債務不履行を構成し

怠いととにヴいては︑その理論¥づけには諸種の説明の莱異はあるにしても大方の学説・判例の認めるととろであり︑

立法的にはともかく解決されているDドイヅの一部学説では︑契約の解約告知についての期間の経過を条件として債

務不履行上の責任を免除するというし︑ストが労働契約の停止を生やるとするという説もあり︑さらには︑刑法の目

的行為論から来る﹁社会的正当行為﹂説も現れている?との点の批判ならびに説明は現在のわたくしのよくすると

とろで怠いが︑とにかくストが債務不履行を構成したい乙とだけは明白である︒

ストライキ中の賃金問題に関して︑近頃ノllク・ノl

1プロダクト・ノIベイ論が有力に主

張されているσ

︒しかじ乙の論に対しては︑ノ

llク・ノ1ベイというととが法的にいかたる意味をもクめか︑何

故にノ

1 7

1

lベイの原則が引き出されてくるかが明確で危い︑常識論として友らともかく︑法律論としては

吾々を納得せしめ得友いとの批判が生れてくるぜ

わたくしも︑賃金請求権は個別的主労働契約関係の問題であり︑使用者と個えの労働者との閣の債権関係であると

考える︒したがって病欠たEの欠勤とヌトライキによる労働の休止とは︑債務不履行の点では異質たものであるが︑

賃金債権の面寸は同質的たものとみうると思う作︒

そう怠れば︑見方によってはプリミティーヴだとφ批難もあるであろうが︑結局は民法上の危険負担の考えをそと

に持ち出さざるを得たいととに怠る︒す怠わち民法第五百三十六条は︑危険負担に沿ける債務者主義の原則を規定し

ているが︑普通にはとれが雇傭契約にも適用されるものと解されている例︒判例の中には︑一部六トの場合︑スト不

参加者の履行し得たいのは債権者の資に帰すべき事由である止して︑同条第二項の適用をみているものもある例︒

民法第五百三十六条一項め前二条ニ掲ケグル場合ヲ除ク外しの中に︑一般には労務の提供を︑電力の供給︑物の

使用友どと友らべて包含せしめているのであるが川︑労働力の売買と目される労働契約の効果を乙の中に入れるがご

(5)

ときはいささか疑問に思えるのである︒はなはだ唐突な感じを与えるかも知れたいが︑商品としての労働力は︑第五

百三十四条にいう﹁特定物﹂﹁不特定物﹂に当るものではなかろうか︒たとえば︑家主の賃貸借契約︑画家の肖像を

描︿契約︑倉庫業者の物品保管契約と注らんで︑労働者の雇傭契約も︑契約の成立し・た後に︑両当事者の責に帰すべ

からざる事由によって右の債務の履行が不能に怠っ・たときは︑乙れらの反対給付を受ける権利を失うと仰︑説かれて

いる点に疑問があるのである︒

第五百三十四条の﹁特定物﹂﹁不特定物﹂が最も瀕繁に且ク典型的に現われるのは売買である︒売買の目的物が特

定しているときには︑規定の上では︑債務者の帰責事由によら友い場合には︑反対債権たる代金請求権は消滅したい

し︑目的物が不特定物であるときには︑それが特定した時以後においては同様︑代金蕎求権たる反対債権は消滅し訟

労働力たいしは労働が︑人間のそれである限り︑労働者の人格と不可分離的存在であるととは前述の通りである

が︑法技術概念として︑労働力を労働者の人格から商品す放わち﹁物﹂として抽象する乙とは認められていいであろ

う例︒物として労働力を概念構成した場合に︑労働力はあくまで可能性概念と終始するものであるから経済学的には

労働として現れなければ実在性が友い︒換言すれば︑労働生産過程に・おいて労働力は実在性を有してくる0

的には恰も︑種類債務に・おける不特定物が多種多様の可能.性を有fるものとして概念化されるのに対して特定物が具

体性・特定性す怠わち個性を有してくるのに対照さ・れるのである︒

かくして︑商品としての労働力は︑債権の目的物としてみた場合には︑不特定物として概念構成されてよいであろ

う︒そして抽象的存在たる労働力の特定化す注わち箇えの労働力は特定物に類比されるべきものとなるわけである︒

しからば労働力の売買たる雇傭契約たいしは労働契約の場合に沿いても︑その客体たる労働力が﹁特定物﹂﹁不特定

物﹂に類するもので友いとどうしていえるであろうか︒

右のようにして︑労働契約の目的物たる労働力が市民法上の繁務契約における﹁物﹂に当るものであるとみる友ら

ぼ︑﹁物﹂の支配す友わち﹁労働力﹂の支配を使用者に移転させるわけであるから︑あたかも特定物または不特定物

一 一

(6)

の所有権の移転の場合と同じく︑偉ヱ務契約における危険負担の法理が構成されるととに怠る︒

契約の客体たる労働カが民法上の﹁物﹂と同質のものであるとする見方は︑現今では普通に認められているととろ

であり川︑敢て寄を述べるととにはたら左いと考える︒た売問題は︑商品たる労働力目物は︑物としての法的性質に

どのような特異性が認められるものであるかであろう︒

そとで︑労働関係に台ける賃金債権についての危険負担の問題に移ろう︒

まず︑民法第五百三十四条は﹁特定物ニ関スル物権ノ設定叉ハ移転ヲ目的トスル隻務契約ニオイテ債務者ノ責ニ帰

︑スベカラザル事由ニヨリテ物カ滅夫又ハ段損シグルトキハ危険ハ債権者カ之'フ負担スル但シ不特定物ニアザデハ第四

百一条一項ニヨリ特定シタル時ヨワ前条ノ規定ヲ適用スル﹂回目を規定している︒

労働力を不特定物注りとみれば︑その特定以前す注わち具体的な労働力になる以前は債務者日労働者の危険負担と友り︑賃金債権は消滅する︒しかし︑労働力の特定または集中があれば︑その時以後は不可抗力の場合にあっても反

対債権たる賃金請求権は消滅したいととに怠る.

そとで次に︑労働力の特定または集中の時期︑換言すれば不特定物としての労働力の特定または集中の時期が問題

と怠るわけである︒

しかしながら︑民法第五百三十四条の規定自体にクいて︑その法史的沿革の不明︑その合理性にクいての疑問が残

されている結果︑学説は一般に︑との規定をできるだけ狭く厳格に解釈する態度をとって妥当性を鷲らさんとしてい

るロそれはともかくとして︑わたくしは通説の乙の点に関する考え方を批判して︑危険負担と過失責任・無過失責任

といろ民事責任論去の関係から不弁理注点を救済し︑危険負担の法理はそれとしての存在意義と機能を認めるもので

あるリ危険負担の法理は現実に生きて市民法上の債権関係を処理してゆくべきものであると考えているマ要旨を再述

すれば︑市民法上の普通の債権については︑債権の社会的機能と︑個人意思の社会意思との相関関係にゐける相対的

(7)

尊重という立場から︑不可抗力の概念を極めて厳格に解し︑その厳格に解釈された不可抗力の場合には反対債権も消

滅するものであると考えるのである︒す注わちその場合には両当事者の契約責任が消滅するとみるのである︒

第五百三十四条の規定をそのまま適用すれば︑労働関係に・おける賃金債権は︑労働者の帰責事由にもとづか怠い履

行不能の場合に︑消滅しないととに友るが︑通説はとれを厳格に狭く解釈された場合にのみ賃金債権は存続するとい

うであろう︒わたくしは既述のごとく解するととろから︑厳格に解釈される範囲での不可抗力の場合には使用者の契

約責任││逆にいえば労働者の賃金債権は消滅するが︑それ以外の場合には泊減しない乙とにたる︒それでは使用者

の労働契約にもとづく労働者に対する就労詩求権はどう友るかといえば︑乙れも単純に消滅するものでは左いが︑た

だ︑労働者ー

l

債務者の方で履行の提供をしたにも拘らず使用者の方でとれを受領しえ友いわけであるから︑その結

果労働者は契約責任を免れるととに怒る︒

ととろで︑右に述べたととは︑市民法の原理としての契約当事者の地位の平等︑両給付.の等価的輩連関係の存在を

前提としたものであアた︒等価性にクいては︑労働力が商品として労働市場に・おいて取引される仕組にたっている以

上︑他の物品の市場での取引と同じく.特別の考慮を払う必要はないであろう︒ただ問題は︑当事者間の地位の平等で

ある︒すたわち労使間の労働力の取引にあたっての力関係である︒との点に労働関係の特殊性からくる特別の法的考

慮が注されるべき余地が存するのではあるまいか︒

λトライキ中の賃金債権は︑債務者の責に帰すべき事由による履行不能であるから労働者は乙れが請求を注し得な

いというのが多数説のようである︒他方にはまたノllク・ノIベイ論が有力に主張されて︑労働者の賃金請求が

否定せられている︒前者の考えを見討してみると︑賃金誇求権が必もそも初めから発生していたいというのか︑また

は一旦発生した賃金債権が請求し得たいととにたるのか明らかでないが︑恐らく賃金が後払いの原則を採るという理

由からじて︑かかる場合には賃金債権の発生を認めてい在いのではないかと思われる︒よしんば賃金請求権の成立を

認めて︑乙れが請求を拒否されるものだとみるにしても︑債務者す怠わち労働者の責に帰すべき事由にもとづくもの

だとストライキを眺めるととは妥当であるうか︒

一 一一 五

(8)

このことは︑市民法の危険負担の原理を誤って適用し︑しかもそのまま無修正に適用した結果にほか怒らたいもの

である︒換言すれば︑賃金請求権と就労請求権との聞の等価的牽連関係のみを以て︑ただちに市民法の規定を適用す

るととにたっていて︑そとには労働関係の特殊性についての顧慮が欠けていると考えられる︒

勿論︑ストライキは濫用されるべきものであってはなら怠いロしかし︑憲法が労働者の争議権を保障し︑労働基本

法がその点を詳かに規定しているととから考えて︑正当程争議権の行使は︑労働者の経済的地位を使用者と平等友立

場に上げての商品安換を可能たらしめるための当然のことがらである︒

かようた労使の聞の力関係の対等を︑労働関係の特殊性が市民法の形式性・抽象性を修正して︑具体的・実質的な

らしめるものであるととから考えて︑労働力たる商品の焚換の過程の場においても︑かかる修正は考慮されるべき必

要がある︒す注わち︑労使聞の労働契約にもとづく債権関係は︑単純なる市民法の適用であっては友らたいのであ る ︒

一 一一 六

とのように論を進めてくると︑ストライキは債務者としての労働者の責に帰すべき事由によるものとみる乙とはで

き友いととに怠るのである︒

しかしそれだからといって︑従来の危険負担の法理の解釈のごと︿に︑﹁当事者の責に帰すべからざる事由による

物の滅失・致損は債権者の負担に帰す﹂として︑何らの法律的根拠も示さずただちに労働者を保護せんと考えるもの

ではたい︒ストライキが︑労働者の使用者に対する地位の上昇をはかるための正当程権利の行使であるたらぽ︑それ

はもはや両当事者の帰責事由によら友い履行不能であり︑わたくしの民法第五百三十四条の解釈からすれば︑就労請

求権もないし︑また乙れと等価的牽連関係を有する賃金請求権も行使し得友いととにたる︒

従来のスト中の賃金債権に関する諸種の学説︑ま・た判例が不明瞭た法律的理論構成によって︑その結果'あるいは偏

った労働者の味方にたり︑あるいは逆に妙に使用者の有利を導くようたととに怠ったのは︑就労請求権と賃金債権との

関係を︑ただ単に等価性の面のみをとらえてことを論じ.それに市民法を修正た︿して適用するととるに欠陥があった

ように思うのである︒すたわち︑労働関係の特殊性がそとに介在して︑市民法の修正を行ろととが法技術的にも看過さ

(9)

れていたのでは怠いかと考えるわけである酢

.畠圃

法技術概念上︑労働力を不特定物としてみた場合に︑それではいつ乙の不特定物は特定ま・たは集中すると考えられ

るであろうか︒

不特定物は一般の債権の場合には︑種類債務の目的物として現われる︒すなわち種類債務にあっては︑目的物の品

質・数量のみが示されているだけであって個性がたく︑代替性を有するものである例︒

乙れに対し労働力は︑労働者個え人について考えればその人格と切り離してみ怠い限り個性を有し︑したがって特

定性を有する乙とに怠る︒しかし商品としての蛍働力という抽象化された技術概念的存在としての労働力は︑その人

格から分離して存するとみられ得るものであるから︑甲の労働力︑乙の労働力は商品目物としては同質のものと目さ

れるであろう︒す友わち︑使用者側で︑どの部門に︑いか友る質の労働カを購入するか︑あるいはいか怠る量の労働

力を購入するかという段階では︑労働力一般は物一般と同様の存在を与えられるととに怒る.

乙れが普通の物品の売買であれば︑買主は売主に対していか怠る質の物品をどの量だけという具合に買入れるわけ

であるから︑物品取引市場にあっては︑た.だ単怠る物品が︑契約の時において法的意味を有する不特定物とたるもの

労働市場における労働力購入の場合にあっては︑右のよう怠物品取引市場に‑おける場合と事情を具にする︒物品市

場にあっては︑商品たる物品の支配は結局個々人の直接的友支配の下にあるので怠るが︑労働カは対使用者すたわち

買主に対する関係では︑一応労働組合の支配下にあるものである︒したがって労働力の所有者たる個々の労働者は直

接的にはいまだ表面の売主としては現われない︒労働市場における労働力の取引にあっては︑一応使用者と労働組合

との関係が第一次的に現われる乙とに理論的には友るわけである︒労働力の完全注支配が労働組合に存したい場合が

吾が国の場合起るわけであるが︑それは労働組合の未発達のためであり︑組合を通さ友いで直接個々の労働者が自己

(10)

の労働力を使用者に売渡す場合があるとしても︑理論的には︑労働市場に烏ける労働力の取引は︑組合を通して・注さ

れたものと考える乙とができる︒

かくいう乙とができるならば︑労働力は︑使用者と労働組合との聞の契約のときに伽︑商品として不特定物という

法的性質を有するにいたるのであり︑その労働力が具体的に使用者の支配下に委ねられ︑各々の部門に受容れられる段

ll個えの労働契約

1

1にたると︑労働力一般であったものが具体的に個々の労働力として特定または集中してく

るととにたるわけである︒

以上のようにみる左らぽ︑労働力は︑労働契約の時に︑いわゆる特定または集中という法的現象を起すものと考え

ストライキと賃金債権との問題を諸学説の充分注検討を述べる暇なく︑かなり犬胆に取り扱ったが︑要するに賃

金債権は伺えの労働契約の問題であり︑根本的には市民法の契約理論が基礎にあるものと考えた︒ただその場合に

市民法上の契約債権に対し︑労働契約債権関係が労働関係の特殊性︑換言すれば労使間の取引におけるカ関係を顧

慮すべきととを唱えたのである︒単純な市民法の適用は避けられねば左いのしかしてまた市民法理から懸絶した労

働法的︑政策的た解決は五口えを法律的に納得せしめ注い品川︒

スト中の賃金債権を危険負担の領域で考察し︑それに労働関係の特殊性による修正を加えて︑労働関係への市民

法の架橋の一場合を眺めたわけである︒

そのととの解決を前提として︑実際上大いに議論のあった部分ストの場合の不参加者の賃金債権を次に考察し︑

さらに︑ロック・アウTと賃金債権について見討し︑そしてまた労働基準法第二十六条と民法との関係にクいて考

えてみたいと思っている︒

(一九五七・三・三一)

(11)

ω

清水兼男﹁労働関係における権利濫用論1i市民法理論の社会法への適用について﹂金沢法学一巻一号二頁︒

閣信義誠実の原則については︑労働関係への適用を排除せんとする立場もあるが(林信雄﹁労働法における信義則の展開﹂││

﹁末川先生還暦詑念・労働法・経済法の諸問自﹂二四一一具︑杭川他﹁氾補判例労⁝航法の研究﹂二五一百八など)︑一般には当該

原則の労働関係への適用が認められているようである︒

間浅井清信﹁労働川一約の本質と労働基準法ト(﹁労働‑約の基本間前﹂九七頁

) η

ω

浅井右掲九七頁︒

23

NZ

E0

1

E

Nt

m?

?ミ ・

間外尾健一﹁労働争議と賃金債権﹂季刊労働法二三号五三頁D

J争議権の二つの課問のために﹂神戸法学雑誌六巻一・二号北村教授還暦利賀記念二四三頁以下︒特に二五C頁以下

111. 脳外尾前掲五三頁ロ

問岡田日・外尾右掲六六頁D

側たとえば我妻栄・有泉宇﹁債権法コンメンタ

1

ω

東京地裁昭和二六・一・二三労働法令四巻三号一九頁︒

問我妻・有泉前掲コンメンタール二六五頁

D松岡三郎﹁労働法講義案﹂(昭和三十年版)二七O頁以下︑浅井前掲﹁基本問題﹂

二七三頁以下も第五百三十六条によるとする︒.

湖我妻・有泉前掲書二六五頁︒

ω

外尾前掲は︑労働者側の債務は︑従属労働に服するという為す債務であり.︑労働力といラ財産権もしくはその占有の移転を目

的とする債務とみることは︑労働力の性質上不可能である︑と解されている(五六頁)︒

的川島武宣﹁債権法総則講義第一﹂入頁註

3︒教授は︑労働午︑約を︑独立人格者たる労働者の商品的労働の取引

( z g

﹃官官Jだと

考えることは︑アメリカ︑イギリスをはじめとして資本主義国の常識でるるとされる(九頁}︒

(16) 

拙稿﹁契約責任に関する一考察﹂金沢法学一巻一号四一頁以下︒

賃金債権についての一問題

(12)

一 三O

舟橋諒一﹁特定物と種類債権の特定﹂法政研究一一一一巻二l四合併号三九九頁以下参照︒特定の効対として︑不特定物の売買そ

の他双務契約にあっては︑いろゆる特定の結果として︑危険が債権者に移ることについては︑民法第五三四条第二項の明文も

あることであり︑疑いはないとされる(四O

)

かかる契約が協約であるかどラかは疑問であるが︑労働協約の考察によって明らかにさるべきである︒

宮島侍史﹁ロッグ・アウトと賃金﹂法律時報二入巻九号四五頁では︑労働法的解決は賃金請求権の発生を就労のみにおいたの

であるが︑元来︑市民法的には賃金請求権と就労靖求権とは平行するものであって︑相互に条件となっているものではないこ

とを主張されている︒

c r9)  ~

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(2)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する

  

   東洋法学       六

「価値に立脚する生産の前提は,富の生産の決定的な要因としての直接的労