現代企業と社会的レスポンス
現代企業と社会的レスポンス
桜井克彦
目 次
第1節 序
第2節 企業活跡とっいての三次元的概念モデル
(1)定義の多様性
(2)社会的活動のモデル
(3)モデルの用途
第3節 セティの概念的モデル
(1)会社の社会的活動の諸次元
(2)外部環境
(3)枠組の通用
第4飾 現代企業と社会的レスポンス
第1節 序
現代の企業は,その環境適応的課題としていわゆる社会的責任への対応を 不可避的に要請されている。企業が責任の実践に際し考慮せねばならないと ころの責任は,複雑である。責任の客体は多様化しており,責任の徹域は多 岐にわたる。また,責任の性格も経済的,非経済的,あるいは法的,道義 的,等さまざまなものが存在する。企業はこれらの責任を外部環境の要請に 照応して適切に遂行せねばならないが,責任履行の必要とされる程度は状況 によって異なりうる。かくて企業の主体としての経営者は社会的責任指向の 経営政策の策定に際しては,企業が直面するところの社会的責任の内容(責 任の客体と責任問題),重任の性格,企業による責任履行の程度,ならびに 責任問題の社会的重要度といったものについて十分に把握することを必要と するのである。
56 経 営 と 経 済 本稿では,キャロノレおよびセティの所説を手掛りに,企業によるより良き 社会的レスポンスのための手引きについて考察する乙とにしたい。
第 2節 企業活動についての三次元的概念モデノレ
キャロノレは,会社の社会的活動についての三次元の概念的モデルを提示し ており,かれの所説は企業経営者による適切な責任実践のための有力な政策 的手段を提供しているO 本節では,そのようなキャロノレの所説1)を詳しく追
うことにし7こい。
(1) 定義の多様性
さて,キャロノレは, 1953年に出版されたボーエンの書物2)を時矢として多 くの著作が社会的責任の概念の展開花関して役割を演じてきた一方,社会的 責任の概念について論者の間にコンセンサスがみられないことを以下のよう に指摘する的。
すなわち,デイヴィスは社会的責任が r少くとも部分的には企業の直接 の経済的もしくは技術的な利害を越える理由でなされる事業家の決定と行 為4)Jを指すことを示唆するO あるいは,ィーノレズらは以下のようにいうo
「ひとびとが会社の社会的責任について語るとき,かれらは会社が社会にそ の影を投げかけるときに生ずる問題の見地から,ならびに会社と社会の間の 関係を支配すべき倫理原則の見地から思考しつつある5) J ,と。また,フリ ードマンは rその株主のために出来る丈かねを儲けるということ以外の社 会的責任の,会社経営者による受入れほどにわれわれの自由社会の基盤を傷 いうるような傾向は,殆んど存在しない6)Jと主張する。さらに,マガイア は「社会的責任の概念は,会社が経済的ならびに法的義務をもつのみならず,
これらの義務を越えるところの社会へのある責任をももつことを想定して いるの」といい,パックマンも「社会的責任は通常,経済的業績(例えば利 潤)を扱うところのそれらに加えて企業によって評量されるべきと乙ろの目 的もしくは動機を指している8)Jと述べるo 他方, f也の論者は社会的責任を 純粋に自発的な行為のみを含むとみ,法的ならびに経済的な基準を越えると
現代企業と社会的レスポンス 57 企業が考えるところのあるものとして社会的責任を概念化するのであって,
かかる見解の代表者たるマンは[""会社の社会的責任についてのなんらかの ワーカプノレな定義のもう一つの局面は,企業の行動が自発的でなければなら ないということである的」と論ずるo
社会的責任がなにを意味するかという問題への他のアプローチは,企業が 社会的責任をもっとみなされるところの領域を単にリスト化すると乙ろの定 義を含むのであって,例えばへイらは,社会的責任の一局面は企業に「以下 の諸領域の幾っか一ーすなわち,汚染問題……貧困と人種差別の問題……消 費者主義……および他の社会問題領域一ーにおいて意思決定を行い程々の種 類の資源を実際に投下する10)Jことを要請するということを示唆しているo
また,社会的責任の定義に際し経済的ならびに非経済的な関心事のスペクト
jレを包含する最初のアプローチの一つは, CED によってとり上げられた
「三重の同心円」のアプローチ11)であって,そこでは内側の円は製品,職 および経済的成長という経済的機能の効率的な遂行に対する基本的責任を,
中間の円は社会の変化する価値と侵先度を知覚しつつこの経済的機能を遂行 するという責任(例えば,環境保全や従業員関係)を,更には外側の円は企 業がその引き受けによって社会的環境の積極的な改善により広く係わり合う ようになるべきところの,新たに生じつつあるが未だ定まっていない責任を 含むとされるO 会社の社会的責任についてのスタイナーの概念は,伝統的な 経済的生産から,政府による指令,自発的領域,そして最後には現状を越え る期待にとわたる連続的な責任であり12) それは上記の CEDの概念や,
更にはデイヴィスらのそれ13)に類似するD
ところで,近年,幾人かの論者が企業の社会的「責任」へのわれわれの焦 点は,企業の社会的な努力もしくは活動を十分に述べるには余りに狭心ま た余りに静的であると示唆しているo例えば,アッカーマンらは社会的責任 なる表現を批判しており,社会的要請に応えることはなにを行うかを決定す ること以上のものであって,行うと決定したことを行うという経営者の仕事 が残るとともに,この仕事は重要である乙と,されば社会的レスポンシブネ スが望ましい指向であることを主張する14)。セティもまた,社会的責任か
58 経 営 と 経 済
ら社会的レスポンシブネスへと到達するのであって,かれは社会的ニーズへ の会社行動の適応を分類するための図式を示しているo それは,社会的義 務,社会的責任,および社会的レスポンシプネスである。乙こに社会的義務 は,市場の勢力もしくは法的制約に応じての会社行動を含み,社会的責任は 普遍的な社会的規範,価値,および期待と一致するレベルまで会社行動を引 き上げることを意味する。また社会的レスポンシブネスは,重要なことは会 社がいかに社会の圧力に応答するかではなく,動的な社会システムの中での その長期的な役割はなんであるべきかということであって,されば企業は予 期的ならびに予防的たらねばならないのである15)。
このようにキャロルは,社会的責任が多数の異なる方法で定義もしくは概 念化されてきたことを指摘する。そして,社会的責任がなにを意味するかに ついての多様な見解の幾つかを,以下のように要約的にリスト化する16)。
1. 利潤追求のみ(フリードマン〉
2. 利潤追求を越えて進むこと(デイヴィス,パックマン〉
3. 経済的ならびに法的要請を越えて進むこと(マガイア〉
4. 自発的活動(マン〉
5. 経済的,法的,自発的活動(スタイナー) 6. 絶えず拡大する同心円 (CE D,デイヴィスら〉
7. より広い社会システムに対する関心(イールズら〉
8. 多数の社会問題領域における責任(ヘイら)
9. 社会的レスポンシブネスに道を譲る(アッカーマンら,セティ〉
(2) 社会的活動のモデル
キャロノレは,多数の異なる問題が社会的責任についての上記の多様な見解 には含まれているとみるD すなわち,例えば幾つかの定義は,企業の社会的 責任の範障にいかなる範囲の経済的,法的,もしくは自発的問題が該当する かという問題に面しているO 他の定義は,企業が責任を有するところの社会 問題(例えば差別,製品の安全性,等〉をとり扱うO 第三のクツレープの定義 は,扱われるべき問題の種類によりも応答の仕方もしくは原理(例えば,反 動 (reaction)対積極的受入れ (proactjon))により関心を有しているので
現代企業と社会的レスポンス 59 ある。
そしてキャロノレは,乙れら三つの見解すべてが重要であるとして,会社の 社会的活動 (corporatesodal performance)についての以下の三つの異な る局面を示唆する。それらは,1. 社会的責任の基本的定義(すなわち,わ れわれの責任は経済的ならびに法的関心事を越えるのか)2. それに対して 社会的責任が存在するところの諸問題の列挙(すなわち,われわれが責任を もっ領域はなにか一一環境,製品の安全性,等) ,および 3. 応答 (re‑ sponse)の原理の詳述(すなわち,われわれは問題に反動的であるのか,
積極的に受け入れるのか)である17)。
つぎにかれに従って,乙れらの局面を眺めてみるO
( i )社会的責任の定義
社会的責任の定義が企業の社会に対して有する義務の全範囲を十分にとり 上げるためには,それは企業活動の経済的,法的,倫理的,ならびに自由裁 量的拓国主を包含せねばならない。同 118)は,どのように社会的責任が四つの グループに範時化されうるかを示して いるo これら四つの範隠は,相互に排 除しあうものではない。ビジネスの歴 史は,先ず経済的局面に,ついで法的 局面に強調が置かれ,そして後に倫理 的ならびに自由裁量的局面に関心が存 在したことを示唆する。企業のなんら かの責任もしくは行為は,経済的,法 的,倫理的,もしくは自由裁量的動機 を有しており,動機もしくは行為は主 としてこれら四程のいずれかに箱時化 されうるに過ぎない19)。
これら四つの立‑任について説明するならば20) まず経済的責任であるが,
最初θそしてまず先にくる社会的責任は経済的な性格のそれであるD 企業は なによりもまず,社会の基本的な経済的単位であり,それは社会の欲する財
l司l 社会的責任の筒時
自由裁量的責任 ' ﹁
1lhノ 倫理的責任
Jレ な
社会 法的責任
的
J.1.
fI
経済的責任
60 経 営 と 経 済 とサービスを生産し,利潤を得てそれを売るという責任をもっD 法的責任に ついていえば,社会は企業に法的要請の枠組の中でその経済的使命を遂行す ることを期待する。図1における点線は,経済的ならびに法的責任の場合に おけるように,四種の責任が同時に充されねばならない乙とを示唆する。
倫理的責任についていえば,最初の二つの範時は倫理的規範を具体化する のではあるが,しかしながら,必ずしも法の形をとらないものの社会のメン ノイーが企業に期待する付加的な行動と行為が存在するO 社会は,法的要詰を 越えた期待を企業について有するのであるD 自由裁量的責任についていうな らば,自由裁量的もしくは意思的責任とは,社会が企業に対し明瞭なメッセ ージをもたないところの責任である。乙れまで述べられたそれを越える社会 的役割を引き受けるようにという社会的期待が,企業に対して存在してい るo とれらの役割は純粋に自発的であって,それを引き受けるという決定 は,企業の希望によってのみ導かれるD 自由裁量的活動の例は,慈普的寄付 を行うこと,問題を起す失業者層の訓練,等である口これらの活動の本質は もし企業がそれらに参加しなくても,それ自体として非倫理的であるとは考 えられないということであるO これらの自由裁量的活動は,スタイナーの挙 げる自発的範時およびCEDの第三の円(社会を助けること〉に類似する。
以上のような四部の枠組は,社会が企業に引き受けを期待するところの多 様な責任に対する範時を提供するO 各責任は,企業のトータルな社会的責任 の一部に過ぎない。かくして,つぎの定義を述べうるD すなわち,企業の社 会的責任は,社会がある時点で、組織について有するところの経済的,法的,
倫理的,ならびに自由裁量的期待を包含するoかかる定義は,社会的立任反 対論者をもとり込むことを意図している。それはまた,倫理的期待が法的期 待となる場合におけるように,一つの範囲主から他のそれへの移動の可能性を 認識することを要請する21)。
( ii )含まれる社会問題
会社の社会的活動のための概念的枠組の展開に際しては,社会的責任の性 質(経済的,法的,倫理的,自由裁量的)を規定せねばならぬのみならず,
これらの責任が結び、つけられるところの社会問題を同定せねばならない。
現代企業と社会的レスポンス 61 この場合,問題は変化するし産業によって異なるO 企業と社会の関係を調 べる 問題"アプローチが,すべての社会問題への一般化された応答様式の 展開により関心をもっと乙ろの経営的アプローチに道を譲ったのは,一部は との理由による口社会問題は時間の経過によって変化しているのであり,問 題,およびとりわけ問題への組織の関心の程度は流動的である。例えば,製 造企業は保険会社の場合よりも, リサイクノレの問題に熱心である。どんな社 会問題が組織の最大の関心事で、あるかを経営者が測定せんと試みるとき,多 くの要因が作用するD ある調査22)によると,社会的係わりの領域の選択に 際して経営者が留意する上位五要素として,会社のニーズもしくは能力,社 会的ニーズの重要性, トッフ。の関心, P R価値,政府の圧力が挙げられるの であって,これらの異なる要因はどんな社会問題がとり上げられるべきかに ついて経営者がコンセンサスを有しないことを示唆するO
かくして,社会問題は会社の社会的活動の重要な局面として同定されねば ならないが,これらの問題が何であるべきかについての意見の一致は存在し ないのである23)口
(iii)レスポンシブネスの原理
モデノレの第三の局面は,社会的責任と社会問題の背後にある理念,様式,
もしくは戦略を扱う。かかる局面を述べるために一般に用いられる語が,社 会的レスポンシブネスである。
社会的レスポンジプネスは,なにもレスポンスしないこと(なにも行わな いこと)から,積極的な (proactive) レスポンス(多くを行うとと)まで の連続上にわたるo とこでの主要な焦点は,経営者の行為の程度と程類の上 にあるO レスポンシブネスの範囲を述べる概念的図式を,幾人かのものが示 しているD 例えばウィノレソン24) は,反動 (reaction),防衛 (defense), 適応 (accommodation),および積根的受入 (proaction)という四つのあ
りうる企業戦略を主張しているoマッカダム25) も,ウィルソンの戦略とか み合う四つの社会的責任理念を記べており,デイヴィスら26)も 社 会 的 圧 力 への択一的なレスポンスを述べているのであって,図227) ノはこれらのレス ポンスを述続的に並べたものであるD
経 営 と 経 済
積 極 的 受 入 産業をリードせよ 適応
進歩的たれ
渉ホ ︿
よ チ せ 一 時 る を ロ 範 れ み 的 プ の さ の 法 ア ス 街 請 と ネ 防 要 乙
︒ フシ ン
・ え ポ 闘 ス に レ 的 的 動 面 会 反 全
LL id
什 ・
62
図2
1 . ウイノレソン
T.マ ッ カ ダ ム
P R 問題解決 アプローチ 撤 退
デ イ ヴ ィ ス と フーロムストロム
何 も 行 わ ず ‑多くを行う
幾人かの論者は会社の社会的レスポンシプネスを社会的責任に代わるもの それはむしろ,社会的分野での経営者の応答の行 として論じてきているが,
動局面である。概念的モデノレの最初の局面たる会社の社会的責任は倫理的も しくは道徳的要素を有するが,第三の局面たる会社の社会的レスポンシプネ スはそれらを含まず,経営者のレスポンスのプロセスにのみ関心をもっ。乙
= 1 = , ..1.1 ^ ...V"~~"',128)
れらのプロセスは,百十回と社会的予測 , 社 会 的 レ ス ポ ン ス の た め の 組 織 化29) 社 会 的 活 動 の 統 制30) 社会的意思決定,および会社の社会政策31)を
三 つ の 局 面 を ー 諸 に し て 社 会 的 活 動 の 概 念 的 モ デ ル に し た も のである。図3で同定される社会問題は例示的なものに過ぎなし...33)。 含むであろうO
図332)は,
会社の社会的活動のモデjレ
ょと ......... ./' ./' ./" ./' 三戸 τレ, 戸/〆レν
,戸",.レ/
レ/
~
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l,.....‑〆レ
1.....圃・・ /'
社会的レスポンシブネスの
原 理 積極的受入
任
経 済 的 責 任 反 動 防 自由裁量的責任 倫 理 的 責 任
自 責 力
図3
法
社会的責任の範蒔
株
主
製 職
品 業の の
安 安全 全
性 性 含 ま れ る 社 会 問 題
差 glj 環 境
消費者主義
現代企業と社会的レスポンス 63
(3) モデノレの用途
キャロノレは,かくの如きモデノレの効用について述べるO
すなわち,会社の社会的活動についてのこの概念的モデノレは,学者と経営 者の双方にとり有用であると思われる。学者にとってはモデノレは,主とし て,社会的責任の諸定義の聞の区別を知るための助けとなるo これまで社会 的責任についての別々の定義とみなされてきたものが,乙乙では,会社の社 会的活動に属する三つの別個の問題としてとり扱われている。一つの局面 は,経済的,法的,倫理的,ならびに自由裁量的要素に関係する。第二の局 面は,社会問題の範囲に関連する。最後に,社会的レスポンシプネスの領域 が存在するのであり,モデjレはレスポンシブネスが,とり扱わるべき一つの 付加的局面に過ぎないことを示唆する。従って学者にとっての主要な用途 は,社会的責任の概念の明確化に際してとり上げられるべき重要な問題を体 系化することを助ける乙とにある。モデルは,社会的活動の主要な局面の理 解へと向うための必要な階梯であるO
モデノレは,経営者が主要な社会問題を体系的に考え抜くことを助けうる。そ れは,より良く管理された社会活動プログラムへと導きうるところの概念化 を提供する。自分が行なってきたことを図3の立方体に従って範時化せんと 試みる組織にとり,例示が有益であろうO すなわち,某社は通常のソフトドリ ンクよりもアルコーノレ分の多い新しい成人用飲料を試販したのであるが,消 費者グループより,かかる飲料は未成年者にも利用可能であり某社は社会的 に無責任であるという批判を招来した。そこで某社は飲料を市場ーから引き上 げ,安全なように成分の変更を行ったのである。この場合,図3の社会的活 動モデ、ノレによれば,会社はモデノレの消費者主義領域に位置している口問題に ついての社会的支任の範時は,倫理的であった。会社はモデノレのレスポンシ ブネスの次元に沿って,反動および防衛から適応へと移動した。この例は,
どのように企業の応答を社会活動モデノレに位置せしめうるかを示している。
平均的な企業は例示のような多くの論争的問題に直面しており,これらの問 題に関してのそのスタンスを分析するために,そして恐らくその動機づけ,
行動,およびレスポンス戦略の決定を助けるために概念的モデノレを用いるか
64 経 営 と 経 済 もしれないのである34)。
キャロノレの所説の概要は,以上のようであるoかれは最後に所説を,つぎ のように要約するo
すなわち,会社の社会的活動は, (1)企業の社会的責任が見積られるべきと とを,および(2)それが処理せねばならぬ社会問題が同定されるべきことを,
(3)レスポンスの原理が選定されるべきことを要請するo 提示されたモデノレ は,学者と経営者に等しく有用であろうところの概念的枠組における主要な 局面を明確に示そうと試みるo概念的モデノレは,種々の定義的要素の明確化 と統合を助けることを意図するoモデ、ノレは経営者が社会的活動における主要 な問題を経営者が概念化することを助けるために,社会問題についての,思考 を体系化するために,ならびに社会的活動領域における計画と診断を改善す
るために用いうるD
以上,本節ではキャロノレの提示する,企業活動についての三次元的概念モ デノレについて眺めてきた。かれのモデルは,企業の社会的活動を三つの次元 から眺めるが,それは現代の企業における複雑化した社会的責任実践活動の 理解にとって少なからぬ有用性をもっと思われる口
注
1) Archie B. Carroll, A Three‑Dimensional Conceptual Model of Corporate Performance, the Academy of Management Review, 4 (4) (October 1979) in Wi11iam R. Allen and Louis K. Bragaw, Jr., Social Forces and the Manager Readings and Cases, 1982.
2) H. R. Bowen, Social Responsibi1ities of the Businessman, 1953. 3) R. Allen and L. K. Bragaw, Jr., op. cit., pp. 46"'7.
4) K. Davis, Can Business Afford to Ignore Social Responsibilities?, California Management Review, 1960, 2 (3), p. 70.
5) R. Eells and C. Walton, Conceptual Foundations of Business, 196 ,1 pp. 457"'8.
6) M. Friedrnan, Capitalism and Freedom, 1962, p. 133. 7) J. W. McGuire, BusinessandSociety, 1963, p.144.
現代企業と社会的レスポンス 65 8) ]. Backman, Social Responsibility and Accountability, 1975, p. 2. 9) H. Manne and H. C. Wallich, The Modern Corporation and Social
Responsibility, 1972, p. 5.
10) R. D. Hay et al., Business and Society, 1976, pp. 15""'6.
11) Committee for Economic Development, Social Responsibi1ities of Business Corporations, 197 ,1 p. 15.
12) G. A. Steiner, Business and Society, 2 nd ed., 1975, p. 169.
13) K. Davis and R. L. Blomstrom, Business and Society: Environment and Responsibility, 3rd ed., 1975.
14) R. W. Ackerman and R. A. Bauer, Corporate Social Responsiveness, 1976, p. 6
15) S. P. Sethi, Dimensions of Corporate Social Responsibi1ity, California Management Review, 1975, 17 (3), pp. 58""'64.
16) W. R. Allen and L. K. Bragaw, ]r., op. cit., p. 48. 17) Ibid.,p.48.
18) Ibid., p. 49. 19) Ibid., pp. 48""'9. 20) lbid., pp. 49,‑...,,50. 21) Ibid., p. 50.
22) S. L. Holmes, Executive Perception of Corporate Social Responsi‑
bility, Business Horizons, 1976, 19 (3), p. 87.
23) W. R. Allen and L. K. Bragaw, ]r., op. cit., pp. 50""1.
24) Ian Wilson, What One Company is Doing about Today' s Demands on Business, in George A Steiner (ed.), Changing Business‑Society Interrelationships, 1975.
25) T. W. McAdam, How to Put Corporate Responsibi1ity into Practice, Business and Society Review I Innovation, 1973, 6.
26) K. Davis and R. L. Blomstrom, op. cit..
27) W. R. Allen and L. K. Bragaw ]r,. op. cit., p. 52.
28) K. Newgren, Social Forcasting An Overview of Current Business Practices, in A. B. Caroll (ed.), Managing Corporate Social
66 経 営 と 経 済 Responsibility, 1977.
29) T. W. MacAdam, op. cit..
30) A. B. Carro11 and G. W. Be1ier, Landmarks in the Evolut1on of the Social Audit, Academy of Management J ournal, 1975, 18 (3). 31) E. H. Bowman and M. A. Haire, A Strategic Posture toward Cor‑
porate Social Responsibility, California Management Review, 1975; A. B. Ca rro11 (ed.), op. cit.; G. Ftich, Achieving Coporate Social Responsibility, Academy of Management Review, 1976, 1 (1); J. E. Post and M. Mellis, Coporate Responsiveness and Organizational Learning, California Management Review, 1978, 20 (3); L. E. Preston and J. E. Post, Private Management and Public Policy, 1975; F. D. Sturdivant and J. L. Ginter, Corporate Social Responsi‑
veness: Management Attitudes and Economic Performance, Cali‑ fornia Management Review, 1977, 19 (3).
32) W. R. A11en and L. K. Bragaw Jr., op. cit., p. 53. 33) Ibid., pp. 51"'2.
34) Ibid., pp. 52‑‑‑‑‑4.
第3節 セ テ ィ の 概 念 的 モ デ ル
ところで,企業による社会的責任実践活動の分析のための概念的枠組み の構築に努めている他の論者の一人にセティ1)を挙げることができる。かれ の所説もまた,企業による適切な社会的レスポンスの実践のための有力な手 掛りを提供していると思われるのであり,本節ではかれの見解を追うことに
し7こい。
セティは,企業による社会的レスポンスを社会的活動と外部環境というこ つの次元からとり上げるところの概念的モデルを示しているO かれの所説を
!眺めるならば,以下のようである。
さてセティはまず,つぎのようにいうO 企業は,環境関辿的ならひ、に社会 政治的問題を惹起せしめたとして,また社会のニーズに無感党であるとして
現代企業と社会的レスポンス 67 非難されている。そして,乙こから,社会問題についてのその管理を改善す るようにというかなりの圧力が企業に課せられているとともに,多くの企業 は多殺な社会問題の処理のための手をうってきている。しかるに,概念的な らびに分析的枠組の展開が相対的にみられないととが,会社の社会的レスポ ンスの比較と評価についての体系的研究を妨げているのであって,本稿では 企業についての,ならびに社会的圧力への企業のレスポンスについての比較 を符易ならしめる分肝的沖組の展開が試みられるのである,と2)。
そして,かかる枠組についていう。すなわち,会社の活動の評価は大なる 程度に文化│ドjならびに時間的に限定される。特定の行為は時間,環境,およ び含まれる当事者の性質といった枠の中でのみ社会的に責任あるものといえ るのであり,同じ活動がある時点では社会的に責任あるものであり,他の時 点では社会的に無責任たるものとなるD 従って,会社の社会的活動を評価す るためのシステムは,文化的ならびに社会政治的環境を無視しえない。
ここで展開される枠組は,二組の要素からなる白第一は,会社のレスポン スのタイプについての箱路を取扱うのであって,かかるタイフ。は社会的圧力 への応答に際して適用される基礎的論理のタイプの見地から定義される。第 二の要来は,外部環境についての,もしくはその中で会社のレスポンスがな され汗価されつつあるところω文脈についての定義を倣う。このアプローチ は,それによって会社の活到jを社会的文脈の中で測定しうるところの論理的 にして受け入れ可能な外的基準を定めることをわれわれに可能ならしめるの であり,かくしてそれは,会社の社会的活動の測定の問題を扱う研究への重 要な補完物となるのである,と3)。
(1) 会社の社会的活動の諸次元
セティによると,会社の社会的活動は三種に分類されることになるが,こ の点についてセティはまず,以下のように述べる。
さて,企業は,I!J場および非市場‑というこ程の社会的勢力に応答するorlf
j持勢ノJω場合,企業は製品の変更等によって消資者のニーズの変化に迎応す るωであり,レスポンスω迎切さは企業の収益性および成長の見地から測定 されうるC ところで、すべての市場活動は社会への幾らかの非市場‑的もしくは
68 経 営 と 経 済 間接的な結果を有するのであり,乙れらの第二次的効果が外部性(例えば,
汚染)であるとともに,それは社会全体によって負担されるO しかるに,そ の活動の二次的効果を最小化たらしめるとともに社会的弊害の是正に対する より大きな責任を引き受けるようにという社会的圧力が,企業に対し増大し てきているのであって,それが,一般に企業の社会的責任もしくは社会的レ スポンシプネスと名付けられるところの,非市場勢力への企業のレスポンス である口
会社は社会のインテグラノレな部分であり,その存続と成長を社会に依存す るo従って会社は,社会システムの目標と一致するようその活動を形づくろ うと努めるD 企業の活動と社会の期待との間にはギャップが存在しそうであ るが,ギャップの拡大は企業の正当性を失わせその存続を脅かすのであっ て,企業は社会の物的ならびに人的資源を要求するためには,ならびにその 内部的意思決定と外部的取引とへの最大の自由裁量的なコントローノレを維持 するためには,正当性についてのかかるギャップを狭めるべく努めねばなら ないD
ところで,会社の社会的活動を評価する一つの方法は,正当性の物指しを 用いることであって,会社の行動は,狭義から広義にわたる正当性の概念に 基づいて三段階の現象として述べることができるO 乙のようにして限定され る会社行動は,社会的義務,社会的責任,もしくは社会的レスポンシブネス として定義しうるのである心。
このようにしてセティは会社の社会的活動を三段階に分けるのであるが,
乙れら三種の社会的活動についてのセティの説明はつぎの如くであるC
<社会的義務としての会社行動>
第ーに,市場勢力もしくは法的制約に応答しての会社行動は,社会的義務 として定義される。この場合の正当性の基準は,経済的ならびに法的のみで ある。正当性の基準は,市場で資源を競うその能力を通じて,ならびに社会 システムによって課される法的制約の中でその活動を遂行することを通じ て,企業によって充たされるo
しかしながら,資源を求めての競争は適切な基準ではない。理想的な状況
現代企業と社会的レスポンス 69 においてさえ市場の倫理は,ただ一種の正当性のみを提供するのであって,
国家はかかる正当性を国家的危急のときには拒否することが知られている。
行為の合法性もまた,基準として用いられえない。法は社会的に受け入れら れた行動を法典化する傾向にあり,社会的変化を導く乙とは稀であるo 伝 統 的な経済的ならびに法的基準は会社の正当性の必要条件ではあるが,十分 条件ではない。これらの基準の単なる充足は会社の継続的存続を保障しな
︒︑目ノ
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く社会的責任としての会社行動>
第二lこ,大会社と種々の社会制度との聞のコンフリクトの大部分は,社会 的責任の範鴎に属しているD 法に違反したとして非難される会社は比絞的少 数であるが,会社はますます,社会的期待にかなわないとして,ならびにそ の行動を変化する社会的期待に迎合させていないとして批判されてきてい る。かくして社会的責任は,現在普遍的であるような社会的規範,価値,
および業績期待と一致する水準にまで会社の行動を高める乙とを合んでい るo
社会的責任は,会社の行動の正常なパターンからのラデイカルな離脱を要 請しない。それは,新しい社会的期待が法的要請となる前に,一歩踏み出す 乙とである。社会的義務の概念が禁止的な (procriptive)性格である一方,
社会的責任の概念、は処方的 (prescriptive)である的。
<社会的レスポンシプネスとしての会社行動>
社会のニーズへの会社行動の適応の第三段階は,社会的レスポンシプネス の見地からのものであるD 社会的レスポンシブネスの見地からの問題は,会 社は社会的圧力にいかに応答すべきかということではなく,動的な社会シス テムにおけるその長期的な役割はなんであるべきかというととである。ここ では会社は,会社の現在の活動の結果であるかもしれないところの変化を予 期することを期待される。社会的責任関連活動が処方的な性格である一方,
社会的レスポンシプネスに関連する活動は,積極的 (proactive)な,すな わち予期的ならびに予防的な性格をもっ7)。
表18)は,三段階下の会社行動の次元と属性を要約している。