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自閉症スペクトラム児と保護者の関係を支える 経験の共有

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原著論文

自閉症スペクトラム児と保護者の関係を支える 経験の共有

─ RDI を活用した事例の検討─

高橋ゆう子

大妻女子大学家政学部児童学科

The Importance of Sharing Experience between Parents and Child with Autism Spectrum Disorder

A Case Study through Relationship Development Intervention

Yuko Takahashi

Key Words :

自閉症スペクトラム,RDI,保護者支援,経験の共有

要旨

本報告の目的は、経験の共有の重要性について、

RDI(対人関係発達指導法)を行った一家族を対象

として検討することである。RDIは定型発達児と保 護者の情緒的関係が築かれるプロセスをモデルとし て、その関係の築き直しを図ろうとするものであ る。

対象となったのは、6歳の

ASD

と診断された男 児と両親である。コンサルテーションにあたって、

関係のアセスメント(RDA)を行ったところ、両 親とも言葉を頻繁に用い、子どもの行動に先立って 声がけすることが多かった。そこで、コンサルタン ト(報告者)は、子どもとのコミュニケーションの 意味について一緒に考え、「子どもの考える機会を 確保」するためにペースを落とす、また見通しを もって、子どもの自発的な行動を「待つ」ことを新 たな試みとして提案した。約

1

年の間に月

1

回の割 合でコンサルテーションを実施、家庭で料理やゲー ムなどのやりとりを行った

47

場面のビデオクリッ プについて、両親の振り返りが行われた。

結果は、次の通りであった。① 前期(母子の映 像が話題となる時期)

:

主に母親の子どもへの関わ りについて振り返りが行われ、自身のガイドと子ど もの行動の関連性が見いだされた。② 後期(両親 と子どもの

3

人の映像が話題になる時期)

:

両親と 子どもとのやりとり、特に父親に変化が見られ、相

互のアイコンタクトが多くなった。また、両親の表 情が豊かになり、声がけの頻度が減少した。

以上から、ペースを落としたり、子どもが考える 機会を確保したりすることによって、経験を共有す る機会が増えたことが推測された。さらに、経験の 共有が親子の相互交流を促し、「導かれた参加」関 係(Guided Participation Relationship ; GPR)の構築 につながることが示唆された。

1. 問題と目的

自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の特徴と して、社会的コミュニケーションと社会的相互交渉

(対人交流)の持続的な欠如と、行動・興味・活動 の限定的で反復的なパターン、この

2

つがあげられ るが、山崎(2015)は、ASDの診断にとって重要 なのは、発達歴・生活歴を可能な限り詳細にとりな がら子どもの全体像をとらえることで、発達的里程 標の乗り越え方を静的にとらえるだけでは不十分で あると指摘する。そして精神発達の過程は、その子 どもが両親を含めた環境といかに相互的な交渉をも ち、その相互関係をどのように展開・変遷させてき たのかというダイナミックな側面からとらえなけれ ばならないとする。つまり、知能検査や発達検査や 短時間の観察だけで子どもの発達のありようを理解 するのは難しいとし、環境、とりわけ家族との相互 交渉のプロセスに着目することの重要性を強調して

(2)

いる。ASD児の育ちについて岡田(2017)は次の ように述べている。ASD児は親に対して愛情欲求 のサインを送ることが少なく、親からの働きかけに 応じることが少ないので、親は子育てに対する効力 感をもちにくい。また

ASD

児も親から愛情を注が れていることを感じとるチャンネルが限られている ため、自閉症スペクトラムの存在は、早い時期から 親子関係に大きな影響を及ぼす。幼児期以降につい ても、仲間関係の築きにくさやレジリエンスの弱さ などがその特徴として挙げられ、ASD児の抱える 問題は、乳児期から青年期までにおけるつまずきと いえる。そのことは成人期以降につながっていくの で、だからこそ

ASD

児の育ちを踏まえた援助が求 められるとしている。岡田(2017)のいう

“育ちを

踏まえた”援助は、山崎(2015)のいう環境との相 互交渉や相互関係をどのように展開させてきたのか というダイナミックな側面からとらえることに通じ るものがある。

久保田(1993)は、定型発達児の生後から

2

半になるまでの発達のプロセスと比較して

ASD

の特徴を次のようにとらえた。ASD児は、定型発 達児と同様、何かの欲求目的があって、そのために 外界とわたりあうことも、周囲に探りをいれたりい じったりすることもできる。模倣も知的な能力が高 い場合には、人がやっていることに注目して、その 一部をやることはできるが、模倣を見られたり、そ れを一緒にやったり、向き合って繰り返したりする ことを喜ぶなどの様子は現れにくい。また、社会的 な連携の形成につながる愛着、ないしは

“つきあい”

といった、互いに好意的な態度を向けあうことが

3

歳から

5

歳になっても現れないか、遅れて弱い形で 現れ、さらに気を許している人との間での認識の共 有などがさらに難しくなるとして、ASD児の愛着

(アタッチメント)や相互交流の弱さを指摘する。

滝川(2017)も同様の指摘をしているが、ASD 児は、人との交流への志向性がけっしてゼロではな く、大人への興味や接近のサインをかすかではある が示しているので、それをキャッチして、そっと応 答を返すところから交流性を育むことがケアのポイ ントとなると支援の重要性について触れている。こ のように、アタッチメントの双方向的な構造を生か して、乳児側の対人交流の不足を大人の側が意識的 に補うような働きかけは、乳児期以降にも有効で、

小さなサインをキャッチしながら応答する養育者を 支えていくことが援助者の役割となるだろう。

ここでは、ASD児の社会的コミュニケーション

を促すために、養育者との基本的な信頼関係、情緒 的関係を安定させ、養育者が子どもを導き、子ども が導かれるような関係、つまり「導かれた参加

(Guided Participation)」(Rogoff, 1990)の関係を築 くことが重要であるという社会文化的視点にたって 検討を行う。

「導かれた参加」という概念は、明らかに教育的 な状況はもとより、それ以外でも生じる学びの協働 的性質についてより広い見地から考えるために、

Rogoff(1990)によって提唱された。そこでは、子

どもたちはさまざまなかたちで文化コミュニティの 実践や価値観に参加し導かれながら学ぶということ が注目される。そして子どもたちが観察したり手伝 い始めたりすることが可能な場所に子どもが身をお くことを許容するようなアレンジメントが重要とな る。つまり、子どもが自ら進んで観察し、目の前の 活動に加わるようになることを期待し、その機会を 作ることが大人には求められる。最初から子どもの ために用意され、教育するためにデザインされたわ けではなく、直接子どもには向けられていないよう な出来事に、子どもが注意を払って興味をもって加 わってくるような活動の正統的周辺参加者(Lave

and Wenger, 1991)となることを想定するので、徒

弟制の中での学びや支援の構造と似ている。ASD 児の養育者の場合、子どもの発達、特に社会性の発 達に不安を感じ、それを促そうとすると、子どもが 自ら考え、自発的に参加する機会が待てなくなって しまう。失敗しないように先回りするような形で指 示をしたり、状況を設定したりすることが多くなり がちである。結果的に、子どもは自ら感じたり考え たりしながら、判断する機会が奪われてしまい、そ のような経験の積み重ねは期待できなくなる。それ を子どもの能力として原因帰属してしまうのは悪循 環の始まりであり、発達を促すことにはまったくつ ながらない。

この悪循環を断ち切るためには、効率よく子ども のスキルを伸ばすというより、日常生活の中で養育 者が師匠、子どもが見習いとなるような関係を築く ことに重きを置いて、ガイドとなって養育者が子ど もを導く力をつけることが肝要である。

社会性の発達を促すことは、適切な行動の獲得と は異なる難しさがあると思われる。なぜなら自発性 やその場に応じた対人コミュニケーションは、あら かじめ設定されたプログラムの中で教えるには限界 があるからである。目標やゴールが明確に設定でき ないし、正解は一つではないため評価しにくくし、

(3)

さまざまな状況に対応する柔軟性が問われることに ことになる。RDIではまず、社会的コミュニケー ションや社会的相互交渉には、言語的コミュニケー ション以前の非言語的、情動的コミュニケーション が成立することが重要と考え、それらを養育者が導 く形で、相互交流のやり直しを試みる。つまり、家 族との継続的な対話を基盤にした家族支援、養育者 に対するエンパワーメントを行う(Gutstein, 2009)。

本報告の目的は、先の「導かれた参加」関係を築 くために、RDI(対人関係発達指導法)を通して、

親子の間の経験の共有がいかに重要であるか、一家 族の事例を通して検討することである。

2. 方法

(1) 対象家族の概要

今回、対象となった家族は、初回面接時

6

歳の

A

君とその両親である。A君は

2

歳前に広汎性発達障 害と診断された。6歳になったときに新版

K

式発達 検査の結果は、発達年齢が

3

7

か月で知的発達の 遅れが見られた。その後、地域の小学校の特別支援 学級に入学した。初回面接時における母親の相談内 容は次の通りであった。自閉症の息子への関わり方 についてアドバイスがほしい。知的な遅れがあり、

他の人が言っていることの理解が難しく、オウム返 しになることが多い。ただし、母親の言うことは少 しわかる。このような状況の中で、母親が

RDI

興味をもち、自分でいろいろと調べて問合せに至っ た。RDIが子どもに対する療育というよりも、養育 者が育てる力をつける、エンパワーメントを重視し ていることが了解されたので、最初は母親と子ども

2

人の来談だったが、まもなく父親も参加するよ うになった。

(2) コンサルテーションの方法と期間

RDI

では、開始にあたって、親子の関係性につい て映像を用いてアセスメント(RDA ; Relationship

Development Assessment)を行う。その結果を踏ま

えて、養育者と援助者(報告者)との間で共有され たことを元に、親子それぞれにとっての課題を抽出 する。その後、課題として家で行う日常的なこと、

タオルたたみや料理、宿題やトランプ遊び、ゲーム などを通した親子のやりとりを撮影、それを養育者 の判断で数分間に編集したものについて面接で話し 合う。具体的には「最初に考えたやりとりの枠組 み」「やりとりしているときの感じ、実感されたこ と」「やりとりの後、ビデオクリップを見て自身の

ガイドや子どもの様子について気づいたこと」など についてである。これらについて、必要に応じて、

援助者が

A

君とやりとりをするデモンストレーショ ンを行った。面談はプレイルームで、報告者が両親 と話し合い、A君とはもう一人のスタッフが遊ん だ。このような形態で、月に一回程度の面談を約

1

年行った。さらに面談後、抽出された課題につい て、ビデオクリップが作成されたときには、その内 容についてメールでのやりとりを行った。

(3) コンサルテーションの方針

初回面接での母親との話し合いから、母親が

A

君の療育、教育に対して積極的で、A君の状況をみ ながら試行錯誤していることがわかった。また、A 君も母親を頼りとしていて、母親を参照したり、同 意を求めたりする様子が頻繁に見られた。これまで

A

君とのやりとりを通して、母親は自身につい て、口頭指示が多くなりがちであること、A君が母 親に依存的になりがちなことを自ら振り返ったが、

それらは

RDA

の結果からも裏付けられ、共有され た。

そこで、A君とやりとりするときには非言語的コ ミュニケーションを取り入れること、さらに

A

が戸惑うかもしれないが、すぐ適切なふるまいがで きなくても、彼自身が感じたり考えたりする機会を 保障するために、ある程度の見通しをもって

待つ

ことを提案した。合わせて、A君の参照の対象が母 親になる機会、モデルとなる機会が圧倒的に多かっ たので、別のモデルとしての父親の参加も促し、母 親と同様のことを提案した。

(4) 分析の対象と分析方法

分析の対象は、47場面の映像とそれに関する保 護者の振り返り(面接時に語られたことやメールに 記述されたこと)である。分析にあたっては、開始 前半の約

6

カ月を初期、後半の約

6

カ月を後期とし て、それぞれの特徴について整理を行った。今回、

保護者との間で確認された相互交流の変化が、どの ように映像に現われるか、非言語的コミュニケー ションに着目し、開始当初時と約

1

年を経過したと きの

2

つの映像について、行動コーディングシステ ム(DKH社製)を用いてコーディングを、報告者 を含む

2

名(臨床心理士)で試みた。

(4)

3. 結果

(1) 初期(母子の映像が主な話題となる時期)

① 父母と支援者のやりとり

最初の頃は、父親は仕事が忙しいこともあり、撮 影には積極的ではなかった。したがって面接では、

母親と子どもとのやりとりの映像について話題にす ることが多く、援助者と母親とのやりとりを父親が 聞いていることが多かった。母親は、映像を通して 自らの子どもに対するかかわり方を振り返ったが、

撮影時には気づかなかったことやうまくいかないこ とが多く語られた。具体的には、母親の表情は豊か

A

君の様子をよくみながら関わっているものの、

その一方で長くはないが言語指示が多いこと、A は確認したり、助けを求めたりするときに、頻繁に

「ママ」と口にすることなどが話題になった。父親 も日常生活での自分のかかわりについて振り返る機 会があった。具体的には、始めは

A

君を受け入れ る形でやりとりするが、指示の内容等がうまく伝わ らないと、だんだん叱責が多くなってしまうことな どが報告された。そこで、言語指示が多くなりやす いことの背景について話し合うと、子どもに対する 思いや心配などが明らかになった。ビデオクリップ を見て、そのときのことを振り返ったり、日常生活 と重ね合わせて話し合う経過の中で、指示が多くな ると社会的参照や一緒にやっている感じが減るなど が実感され、母親の導き方と

A

君の行動との関係 について確認することができた。

② 母親と子どもの様子(日常生活)

援助者は、A君のやろうとする意思が見られた ら、すぐに言葉で促さずに、子どもから動いたり取 り組み始めたりする機会を待つこと、またうまくで きたことがあったら、ほめて評価するというより、

その状況を一緒に確認したり喜んだりすることを提 案した。その結果、母親の気づきや、A君とのアイ コンタクトが増え、母子とも表情も豊かになった。

母親からは「無理せずにやりたいとは思うのです が、気負えば気負うほど、うまくいかず落胆し焦り が生じる負のスパイラルに陥ります。結果ではなく プロセスと自分に言い聞かせて、言葉を減らして もっと共感しあえる時間が少しずつ増えるよう、が んばります」「ちゃんと通じ合えていると実感する ことができました」というような内容のメールがビ デオクリップに添えられていたこともあった。

(2)  後期(両親と子ども 3 人の映像が話題になる 時期)

③ 父母と支援者のやりとり

後期になって父親を含めたトランプのやりとり が、撮影されたことがあった。それらを見ると、父 親も含めた

3

人で始めたものの、母親と

A

君でやっ ている状況と変わらず、父親は参加できていない様 子が見られた。そこで一緒にやるとはどういうこと か、映像の中のわずかな、やりとりの瞬間を取り上 げながら話し合った。また、スタッフと遊ぶ様子を 見ながら、“経験を共有する”ということ、子ども に大人が合わせるだけだったり、逆に大人の言うこ とを聞くだけだったりすることについて感じたこと を出し合い、大人の導き方によって子どもの行動が 変化することを確認した。

④ 父母と子どもの様子(日常生活)

後期は、父親を含めた映像が少しずつ増えた。そ れを見ると、3人のやりとりに変化が見られ、初期 にはなかった、母親や子どもが父親に視線を向ける ことが多くなり、3人で共有する感じが、両親に実 感され、そうでないときとの違いが認識されるよう になった。具体的に母親から「以前よりは、3人で やれたような気がしました。まだ

“僕がやりたい”

というのが強い息子ですが、一緒に何かやることの 楽しさが少しずつわかってきつつあるのかなと思い ます。でも、私は教えようという意識が強くなりす ぎることを痛感するときもあります。」という内容 のメールが添えられたことがあった。

(3)  映像のコーディングからみた親子のやりとり の変化

開始当初と約

1

年後の、母親と

A

君のキッチン でのやりとりを撮影した映像、5分程度について コーディングを行った結果が、Fig. 1、Fig. 2の通り である。25項目設定してコーディングを行ったが、

開始当初と比べて、約

1

年後の映像の方が、母親の 関わり方のバリエーションが増えていること、母子 とも操作する対象を見るよりも、相手を見る機会が 多くなり、視線の共有が増えたことがわかった。

4. 考察

(1)  ASD 児と養育者との関係を支える経験の共

本報告では、「導かれた参加」の関係を築きなお すことを目的に、非言語的、情動的コミュニケー ションを重視して保護者に

“子どもが感じたり考え

(5)

Fig. 

1 母子の相互交流(料理)のコーディング

(6)

Fig. 

2 母子の相互交流(皿洗い)のコーディング

(7)

たりする機会を保障すること(待つこと)

を提案 し、その都度、映像を振り返りながら検討したとこ ろ、子どもの気持ち(やる気や興味)が推測しやす くなり、“できるようにさせる”(結果)というより

“一緒にやっている”(プロセス)という感じが生じ

たと思われる。滝川(2102)は、そだち(発達)と は、養育者との間で様々な体験が分かち合われてい くことを通して、子どもが社会をともに生きられる ようになる歩みであり、それをどう補ったり支えた りするかが、子どもにとっての大切な課題であると する。今回は

“待つこと”

によって、子どもの表情 やしぐさにも目が向くようになり、アイコンタクト も正否を確認するのではなく、同意や承認を求めた りするような視線が増え、質的に変化したことが推 測された。そして、母親と子どもの間の視線や感情 の共有は、父親の参加や変化を促し、結果的に、保 護者にとって子どものリソース(備わっている力)

を発見、確認する機会となったと思われる。このよ うな親子のやりとり(対話)の深まりは、親子の情 緒的関係を安定させ、「導かれた参加」関係(生活 をともにする中で、子どもが保護者をはじめとする 身近な人からいろんなことを学んでいくという関 係)につながることが推測された。

Hobson(1989)は、ASD

児は、他の人々がさま ざまな形で言及している世界をともに経験すること が乏しいがゆえに、目先の狭隘な視野から解き放た れて概念を自在に操るための手段を奪われていると いう。よい行動についてその理由とともにていねい に言葉で教えるよりも、一緒に何かに取り組み、そ こで経験したことを相手(保護者)と共有すること によって、経験を共にする相手(他者)を意識、そ の他者をモデルとしたり社会的参照の対象としたり すれば、子どもが自発的に考える機会が増えると思 われる。今回の家族の事例から、母親や父親への参 照の仕方が質的に変化したことで経験を共有する機 会が増え、安定した情緒的関係や信頼関係が築かれ ることが推測された。

(2)  映像を活用したコンサルテーションの意義と 課題

Lawrence

ら(2012)は、父親と幼児の相互交流 を改善するためのビデオフィードバックを使ってそ の効果を試験的に検討した。対象となった

5

名の父 親すべてが、子どもの考えていることや感じたこと に関する理解が深まり、コミュニケーションが変わ り、関係も改善されたことを報告した。彼らはその 方法を

Video

-

feedback Intervention to promote Posi-

tive Parenting(VIPP)と呼んだが、RDI

と共通し ている部分が少なくないと思われた。まず、家庭で のやりとりを対象にした援助を行う点、そして問題 行動に焦点を当てるのではなく、親子の相互交渉の ありように焦点をあてる点である。RDIでは、映像 をコンサルテーションの必須としているわけではな いが、映像を通して、養育者が自らの子どもへのか かわりを振り返ることは意味があると思われる。な ぜならば、やりとりがうまくいかないことがあった としても、どちらか一方に原因が特定されるもので はなく、相互作用の中で起こってくる関係性の問題 であることがよくわかるからである。つまり、子ど もの能力だけに原因を帰属させるのではなく、関係 性において立ち現れてくる子どもの姿だと、視点を 変えて状況を捉えなおすこと(リフレイミング)に よって、養育者が考える導き方が多様になる。

本報告においても、父親、母親とも映像を通し て、新たな気づきが得られたことが少なくなく、一 般的な保護者の態度としてではなく、親である自分 自身の振り返りを深める機会になり、保護者支援に おいて映像を活用することの重要性が示唆された。

RDI

では、子どもと養育者の関係と、援助者と養 育者の関係はパラレルな関係となる。したがって、

養育者が多様なコミュニケーションを活用して子ど もに関わり、子どもを導く力を身につけるには、援 助者も効率的に関わり方を教授するというよりも、

援助者自身も振り返りながら養育者と多様なコミュ ニケーションを通して関わることが重要となる。今 回の事例検討においても母親の不安や父親の戸惑い の解消を急がず、援助者も保護者を

“待つ”

姿勢が 信頼関係を保つことになると思われた。保護者の不 安を共有しながら、いかに対話を進めていくか、今 後の課題としたい。

謝辞

今回、研究を進めるにあたり、協力いただいたご 家族に心より感謝申し上げます。

文献

Gutstein, S.

(2009) The RDI Book : Forging New

Pathways for Autism’s and PDD with the Relation- ship Development Intervention Program, Connec- tions Center Publishing.

Hobson, P.

(1989) 認知を超えて─自閉症の理論,野

(8)

村東助訳,In Dawson, G. Autism : nature, Diag-

nosis, and Treatment, New York : The Gilford Press. 野村東助・清水康夫監訳(1994) 自閉

症─その本態,診断および治療,日本文化科学 社.

久保田(1993) 二歳半という年齢 認知・社会性・

ことばの発達,新曜社.

Lave, J. and Wenger, E.

(1991) Situated Learning :

Legitimate Peripheral Partiupation. 佐伯 胖訳

(1993) 状況に埋め込まれた学習─正統的周辺 参加─,産業図書.

Lawrence, P.J., Davies, B. & Ramchandani, P.G.

(2012) 

Using video feedback to improve early father

-

infant

interaction : A pilot study.

岡田 俊(2017) 変わりゆく発達障害の概念、臨床 心理学,Vol. 17,No. 3,金剛出版,302-

305.

Rogoff(1990) Apprenticeship in Thinking : Cognitive Development in Social Context, New York : Oxford University Press.

滝川一廣(2012) 子どものそだちとその臨床,日本 評論社.

滝川一廣(2017) 子どもための精神医学,医学書院.

山崎晃資(2015) なぜこの特集を組んだのか─自閉 症スペクトラム障害の診断と支援の在り方─,

精神療法,Vol. 41,No. 4,461-

467.

Summery

 The purpose of this report was to clarify the importance of “experience sharing” in order to construct Guided Participation

Relationship between parents and their child with autism spectrum disorder

(ASD)

, through a family case study which applied Relationship Development Intervention

(RDI)

. The intervention is different from many problem

-

focused approaches. The aim of RDI is reconstruction of GPR between parents and child, so parent

-

child interaction is focused directly, not the outcome but the process.

 A family (parents and their 6 year-

boy who was diagnosed with ASD) participated in the program. From the assessment

(RDA)

at the beginning, it was clear that both parents communicated with their child verbally and often use instruction. The author

(consultant)

worked with the parents to think about the meaning of their child’s communication shown in the video clips, and offered different perspectives, not in a didactic

(instruction)

, but by declaration. About once a month for a year, consultations were held and their reflections were facilitated through about 47 video clips of activities at home.

 The results are as follows : 1)

the most topics in the consultations were interactions between the mother and her son in the early sessions. There was a direct relationship between her way of communicating and her son’s behavior. This was made clear through her reflections on the video clips. Those consultations facilitated the father’s engagement gradually. 2) The interactions between the parents and their son improved, especially the father ; for example, mutual eye contacts increased and the parents’ facial expressions became more pronounced. On the other hand, the frequency of instructions decreased in the latter sessions. 

 According to the above case study, the author focused on the “pace down” and “waiting for their child to feel and think for

himself” to ensure their feelings of sharing experiences. This report suggested that sharing experiences supported their

interactions, reciprocity, to construct Guided Participation Relationship.

Fig. 1 母子の相互交流(料理)のコーディング
Fig. 2 母子の相互交流(皿洗い)のコーディング

参照

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