• 検索結果がありません。

授業の設計と分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "授業の設計と分析"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

授業の設計と分析

著者 小野 擴男

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

13

ページ 53‑74

発行年 1990‑03‑16

その他のタイトル PLANNING AND ANALYSIS OF TEACHING URL http://hdl.handle.net/10105/4537

(2)

・ト!l'i一 掘 りJ,

(教育学教室)

PLANNING AND ANALYSIS OF TEACHING

Hiroo ONO (Department of Education)

AbstraCt

For successful classroom teaching, teachers plan lessons beforehand. Planning lessons requires him/her to image one's own lesson and describe it into a lesson plan. After carrying out a lesson, teachers need to analyze and evaluate their own lesson whether it s pursued as having been planned or not, and to find out factors and principles underlying successful teaching. In this paper, I discuss the procedure and aspects of lesson

analysis based on a 3rd grade Math class (division) as a case.

Procedure of Lesson Analysis

1 ) A∝urate Observation Protocol Centering Around Communication Between a Teacher and Students.

2 ) Articulation of a Lesson Comparing with a Lesson Plan.

a) Overview of Development of a Lesson b) Analysis and Comment

3 ) Confirmation of and/or Finding Out General Principles Underling Successful Classroom Teaching

Criteria of Lesson Analysis

1 ) Study of Crricurulum Content and Development of Teaching Material 2 ) Lesson Plan Tried Out Toward Achievement of Instructional Goals 3 ) Instructional Tact

a) Teacher's Drawing on, Evaluation, and Synthesis of Students'Answers and Opinions

b) Students'Concentration on Learning Activity and Teacher's Encouragement

‑ 53 ‑

(3)

小 野 横 男

はじめに

子どもたちは授業という場を通して、知識、認識、技能を系統だてて獲得していく。教師の 側からすれば、意図的・計画的に知識や技能を授け、子どもに認識力や創造力を形成するとい うことである。教師が子どもに目的意識的に働きかけるためには、どの様な教材で、どのよう な教授行為を用いて、どのような展開過程でそれを行なうかを前もって構想しておかなくては ならない。授業を設計するということはそうした授業のイメージを思い描くことであり、指導 案としてそれを具体的に記述してみるということである。

そうした「設計」(=指導案)に基づいて実施された授業は、授業者の計画通りの場合もあ れば、その構想を裏切る場合もある。また、第三者がその授業を見た場合に「成功」と感じる 場合もあれば「失敗」と映る場合もある。「授業を記録する」ということは、現実には消え 去っていく授業をまさに「記録」にとどめるという行為である。その場合にもどのような手段

で記録するか、たとえばビデオで残すか、速記録によるかごあるいはどんな目的で記録するか によって、記録の仕方や表現方法は異なったものになる。

「授業の分析」とは、そうしたなヰらかの形での「記録」をもとに、その授業の実際を検討 するということである。もっとも、実際の授業展開の印象に基づく考察は、必ずしも「記録」

によるものとはいえないかもしれない。まさに、見た事実をもとにしているからである。しか し、そうした「印象」に基づくものであっても、事実をふまえた考察である限り、そこでもま た「記録」が問題とされているといってよい。だから、問題は実際に展開された授業をどう記 録し、またどう分析するのかという「視点」を明らかにするということであるといってよい。

一般的に考えてみても、人はなんらかの枠組み(視点)でものを見ているのであり、授業を見 るという場合も例外ではない。授業をどんな目的で、どんな枠組み(視点)からみるかという ことが、「授業の分析」を考える上で基本的問題となる。

以上のような問題関心に基づき、本稿においては、「授業分析の手読き」および「授業分析 の視点」についての考察を行ない、「設計」の問題については分析結果からの示唆にとどめる。

検討の対象とするのは、教育実習「観察参加」のために公開された算数の授業(奈良教育大学 附属小学校3年生、授業者、今澤 均先生)である。

授業分析の作業仮説としては次の手〃酎こ従う。

1 教 師 と子 ど もの対 話 を 中心 と して で き るだけ正確 な授 業記 録 をつ くる。

2 指導 案 と対 応 させ なが ら授業 の 「分節 化」 を はか る。

①  授業 展 開 の概 要

②  分析 と コ メ ン ト

3 「授 業 指導 」 の一般 的原 則 の確 認 (発 見 )

ー 54 一

(4)

I.今澤先生の授業の構想(指導案)

I 算数科学習指導案(本時案)

教諭 今 澤   均 第7クラス(3年1組 34名)   1989.7.5(水)

題  材  あまりのあるわり算(乗法九九1回適用)

目  標  0除法の用いられる場面を、余りのある場面にまで拡張し、除法を用いる能力を 伸ばさせる。

0余りのある除法の構造(余り<除数)と商の立て方を理解させる。

0余りのある除法の筆算の仕方を理解させ、計算技能を習熟させる。

指導計画(全7時間)

第1次  余りのある場合への拡張(等分除)…・‥…・・‥‥…2時間

・余りの意味 ・式の表し方

第2次  計算の仕方

・商の立て方 ・筆算の仕方 第3次  包含除の場面への適用

3時間(本時第1時)

・等分除との違い

第4次  余りのある除法についてのまとめと練習…・‥・‥…1時間 本時指導案

ねらい  商を上手に立てられるように練習させる。

展 開

学  習  活  動 指  導  上  の  留  意  準 

1 . 本 時 の め あ て を 聞 く

2 . フ ラ ッ シ ュ ・カ ー ド

・商 を 、 正 し く ・遅 くな く言 え る よ う に す る練 習 を す る こ と 。

・前 時 の 学 習 (適 切 な 商 を 立 て る こ   フ ラ ッ シ ュ を す る。

3 . 個 人 カ ー ド④ を 使 っ て 、 各 自 で 商 を 立 て る

・時 間 内 に何 校 で き る

と ) を振 り返 らせ る。

0 本 時 の 学 習 を通 して 、 どの 程 度 上

・ カ ー ド

個 人 カ ー ド か 試 して み る。 手 に 立 て られ る よ う に な っ た か

を 、 後 で 確 認 で き る よ う に す る た め に さ せ る 。

0 練 習 中 の 児 童 の 声 を 聞 い て 回 り 一 人 一 人 の 技 能 の レベ ル を チ ェ ッ ク す る 。

0 も っ と速 く商 を 見 つ け た い と い う 意 欲 を持 た せ る 。

ー 55 −

(5)

小 野 損 男

4.どうすれば商をうま く見つけられるかを話 し合う。

・たくさんできた子の 見つけ方を聞いてみ る。

・先生のやり方を聞

く。

5.フラッシュ・カード

④で、 見えない数さ がし〝 をする。

・先生が言う 見えな い数〝 を聞き、商を

呂つ。

・自分たちで 見えな い数〝 を言う。

6.練習の成果を個人カ ードで確かめる。

0自動化されており、他人に説明な どできないであろうが、糸口を引 き出す努力をしたい。

0たとえば47÷7なら、40いくつに なる7の段の九九を思い浮かべる

こと。

0 見えない数さがし〝 というの は、たとえば35÷4では32を見つ ける活動である。

0いきなり言わせるのは抵抗が大き い。どうするのか、ここで十分意 識化させたい。

0声に出さないで、身振りや口振り

(心の声)も使い、さらに深める ことも考える。

0子どもたちが、喜びながら挑戦で きるような雰囲気をつくること 0先ほどより、たとえ1枚でも多く

できた児童を認めてやる。

0みんなの努力を讃え合いたい。

フラ ッ シュ

・カード④

個人カード

〔注〕

・フラッシュ・カード

否6÷4=51のようなカードで、商が適切かどうかを判断させる練習に使う。

・フラッシュ・カード④

32÷9(九三 27)のように、十の位の数字が違い、商を見つけにくいものを⑧とし、

⑧を除いたものを④としている。

・個人カード④

フラッシュ・カード④の小型版。

− 56 一

(6)

Ⅱ.授業の分析

1 教師と子どもの対話を中心として、できるだけ正確な授業の記録をつくる。

授業分析のための最初の作業は、実施された授業をできるだけ忠実に再現することにある。

教師と子どもの対話(コミュニケーション)を中心に、その時々の教師とこどもの表情、動き、

作業などをできるだけ忠実に記録し、再現するということである。

もちろん、細部にわたっての授業記録を作るということが、常に可能であるわけではない。

発言をすべて文字化するということはかなりの労力と紙幅を必要とし、また、「膨大」である が故に、読みにくいという場合も少なくない。多大な労力を注いだにもかかわらず、活用され ずに反故にされてしまうということもある。しかし、より正確な授業分析を行なうための基礎 資料づくりとして、正確な授業記録の作成は不可欠である。もちろん、そのためには常にビデ オやテープ・レコーダーに頼るのではなく、実際の授業を見ながらできるだけ正確な記録をと ることができるということも、教師の専門的力量のひとつの内容となろう。ビデオやテープ・

レコーダーにのみ記録を依存すると目の前で展開している授業の事実に対する分析力をかえっ て減退さすことにもなる。とはいうものの、とりわけ共同で授業研究を行ない、分析を加えよ

うとする場合には、ビデオ等を利用した正確な記録づくりが第一の作業課題となる。

たとえば、この授業のやま場でもある「余りのある計算のコツ」を子どもたちに聞く場面を 例に考えてみる。「主要発言の要約」と「できる限り詳しい再現」とを比較し、「できるだけ 正確な記録」作成の意味を確認しておく。

<主要発言の要約>

了了前 ̄1了面= ̄テ「・‥ Aカードを見ながら商を立てる練習

(Aカ1ドについては、指導案参照のこと)

T 「どうしてこんなに速くできるのか、速くできた人にそのコツを聞いてみましょう。」

Pl「頭で考える。」

P2「大きい数(披除数)の時には、大きいほうから(商を1、2、3と順番にはいわない)」

P3「その数(被除数)より少し小さめ(で割り切れる数)をいってみる。」

P4「パッとでてくる。」

T 「はい、何人かに聞いてみると共通点がありましたね。」

<できる限り詳しい再現>

ビデオから聞き取れる限りの再生を行なうと次のようなコミュニケーションが展開されてい る。

T 「ずいぶん沢山できた人いるんだけど、全部終ったという人いる? ちょっとたってどら ん。一回全部終ったという人。」

(8人立つ)

Px「い一なあ、い−なあ!」(羨望の声あり)

− 57 一

(7)

小 野 旗 男

T 「い−なあ、い−なあ、うん。(その声を取り上げながら)この人たちはどうしてこんな に早いのかちょっと聞きたいことありませんか? Poさん。」

(すわっているPo手をあげて発言を求める)

Po「毎日練習しているから。」

T 「毎日練習しているから、それはもちろんあるかもしれない。(考え方を一旦受け入れる)

でも毎日いうてもこのカード使ったんいっだよ。まだほんの一日ほどしか経ってないで しょう。ちょっとコツを聞いてみましょう。」

Pn「え?ない。」(立った子どもたち当惑して、大きな芦で。全体少しざわつく)

(教師ナイの声に負けることなく)

T 「ちょっと言えること言ってみ、なかったらなかったでいい。Plさんはどんなふうにし てる。」

Pl「家で?」

Px「塾行ってるから・・・」(すわっている子どもからの芦あり)

T 「家でと違う。いま、どんなふうにして答え出した、わからへん?」

Pl「勝手に頭で考えた。」

T 「勝手に頭で、ポッと出てくるの。P2さんは?」

P2「頭でポッと出てくる。あのね、ちょっと九九を言ったりする。」

T 「九九を? どんなふうに九九を言う?」

P2「だから・・」

T 「だから」

P2(言おうとするが口ごもる。)

Px「私も九九いう。」(すわっている子のつぶやき)

T 「何か出そうやんか。」(励ます)

T「たとえばこれ(斤二子1)やったら、どうするの?」

(具体的に、貼ってあるカードを指しながら助言する)

P2「だすねん。」(元気よく)

T 「何を出すの?」

P2「七七とか七八とかをさあ、それでな、多かったら小さい方とかでやっていく」

(ことばの句切りごとに、教師が発言者に「ウン」「ウン」と相づちを打ってやる)

T「なるほどこれ(直≡])、君は七一が七、七二、十四、つて順番に言っていくの?」

P2「うん?それはいわへん。」(確信を持って)

T 「どの辺から言うの?」

P2「(被除数が)大きい数やったら、大きい方から(除数を)いう。」

T 「大きい方から言っていくの、なるほど。」

二つの記録を比較してみる。確かに「主要発言の要約」からも、教師の問いかけに対して、

子どものどのような発言(認識)が引き出されたかは知ることができる。授業の大まかな展開

− 58 −

(8)

過程もわかる。しかし、その「要約部分を拡大」(できるだけ詳細な記録作成)してみると、

そうした子どもの発言(認識)を教師がどのように「引出し」「対応し」「整理」しながら、

発言(認識)の「共有」「深化」を図ろうとしているのかを知ることができるのである。さら には、学級の雰囲気や教師と子どもがまさに積み重ねてきた「授業づくりの歴史」をも推し量

ることができる。

子どもの「質がよい」から優れた発言があるというのではない。教師の「子どもへの優れた 働きかけ」が、子どもたちの優れた発言を引き出し、子どもたちの授業への集中をつくり出す のである。詳細な記録に基づく分析は、表出された発言だけではなく、発言を引き出すに至っ たそのプロセスをも明らかにすることができる。

2 指導案と対応させながら授業過程の「分節化」を図る−教師の働きかけと子どもの思考・

認識過程の分析一

実際の授業で、どのように子どもの思考・認識活動が組織され、どのように子どもたちに思 考・認識の飛躍をつくり出そうとしているかを、授業の「分節化」を通して解明する。正確な 授業記録があればこうした作業は比較的容易に行なわれる。作業としては指導案と対応させな がら、教師と子どもの主要発言を要約して記述することになる。

授業過程の「分節化」

〔教師の働きかけ〕

1.<本時のねらいの確認>

「余りのある割り算の答えを正しく遅くなく出す」

板書「正しく、おそくなく」

〔子どもの活動・反応〕

2.<前時の復習>

2−1.「答えはいいか、悪い(ダメ)か」         一斉学習  フラッシュカード

(5分)フラッシュカード(A、B使用)を提示(17枚)  を見ながら復習

「元気ないね」(励まし)

「00君目が光ってます。よろしいね」

「ああ、よかった終った」

2−2.「(ダメの中には)オーバーとまだいける(の

(2分)  二つがある)」 (板書)

49÷8=7(「オーバー」)

38÷6=5(「まだ行ける」) (説明)

2−3.練習(全員)(「オーバー」と「まだいける」の練習)    一斉学習

(1分)   教師カードの提示、間を置いて「ハイ」

師可(ユ撒)

一 59 −

「まだいける」

(9)

小 野 接 男

「八八、六十四、まだいける」(確認)

了47÷7=可

(全員声を合わせて)

「オーバー」

3.<個人練習>

3−1.「こんなことに注意して練習、ウズウズしてるんじゃないか」

(4分)

「(やる気があって)よろしいね−」

個人練習の指示(「声を出して」)

机間巡視

3−2.「今日の勉強の前に3分で何校できるか」

(3分)  「いっもより声が少ないよ」

「間違ってもいい、堂々と間違え!」

「もっと元気だして」

「声が小さくなってきたぞ」(励まし)

枚数の確認

「数えた人姿勢よくしなさい」

4.<「集団思考」>

4−1.「この人たち(計算の早い人)には何かコツがある

(3分) のでは」≪子どもから意見を引き出す≫

「だから」

「たとえば」

「なるほど」

「それで」

(教師のうなずきと接読語)

4−2.「何人かに聞くと共通点」

(1分)白正司・六一、六、六二、十二

とはやっていない

個人作業

「よかった、(時間はからなく て)遅いねん」

(つぶやき)

個人作業(練習)

「〇枚できた」

「00さん、何枚できた?」

(相互に聞き合う)

意見発表

「パッと頑にでてくる」

「九九を言う、大きいほうから」

「その数(被除数)よりも少し 小さい昌を言う」

「私も山田君と同じように、ちょ っと違うかな・・」

≪子どもの意見の集約≫

・「途中から」

・「○○さんのように、四十いくつに 近い数」をさがす

一 60

Px 「途中からやってる」

(10)

4−3.「先生も考えた。〔軍手可を見たら

(4分)18という」(見えない数を言う。)≪新しい知見の提示≫  一斉学習

教師が、黒板のカードを指示しながら

「これを見たら・・・という」と例唱していく

「だいぶわかってきた」

黒板のカードすべてやり終る

≪原理の説明≫(板書)

了有=耳1

∠亡 

「四十いくつを手がかりに」←カードAを使用

(唱和の声が大きくなる)

「わからへん」

(の声もある)

5.<新しい方法での練習>

5−1.「田48」(黒板のカードを順次さす)   一斉学習

(2分)    「見えない数(48)」を教師が言う    Pn 「6」

パターン1(10枚)

5−2.〔亙三重「テレパシーで言う」「ハイ」

(2分)    (48を声に出さない) パターン2(8枚)

5−3.〔珂「48と君らが言う」パターン3(8枚)

(2分)

「考えたか、考えたか、・・・ハイ」

(挑発)

「いい口開いてる」

「この列よろしい」(評価活動)

5−4.「自分一人で挑戦してみたい人」

(3分)     (一問づつ2回言わす)

「すわってる人も、関係ないというんじゃない」

(全員参加を促す)

(時間のかかった子に)

「そうよう言えた」(励まし)

2回目「他に挑戦してみたい人?」

(立った者全員に)「よく頑張った」

一 61−

「ドキドキする」

「6」

「先生、口変やで」

個人発表(5人立つ)

「遅かったらどうしょう」

(すわっている者は、

発表者と問題の両方を見る)

(追加発表者なし)

(11)

小 野 摸 男

6.<学習成果の確認>

「さっきより一枚でも多くなるはずです

(3.5分)(再び3分で何校)」(実際は3.5分)

机問巡視

「田中さんだけ(多くならなかった)

おしかった、ゴメンネ」

「(増えた人)みんなではめあって拍手。」

「今日の学習で、いちばん頑張った人、

川口君、西川さん、多田さん、拍手!」

3「分節化」の要約

〔教師の活動〕

導入(復習)

1 「いい」か「ダメ」か ダメのものについて

2 「まだいける」「オーバー」

3 Aカード3分で何校

展開I(商の立て方)

4−1「速い人のコツ」

4−2「近い数を言う」

「大きいほうから言う」

4−3 「19÷2を見たら18という」

(10の位が同じ数で見つける)

展開Ⅱ(新しいやり方の練習)

5−1「『見えない数』を教師が言う」

5−2「『見えない数』を子どもたちに考えさす」

5−3「『見えない数』を子どもたちが言う」

まとめ(学習成果の確認)

5−4「一人で挑戦できる人」

6  「3分で何枚」

個人作業

「63枚や」

〔子どもの活動〕

[練習]

・一斉練習

・個人練習 自由

時間制限(3分)

[認識]

[集団思考]

[練習]

(一斉練習)

個人発表(立候補)

個人練習(3・5分)

(1−6の番号は指導案に従っている)

ー 62 −

(12)

教師の教材提示および教師と子どもの主要発言を、指導案に従って「分節化」してみること で授業の流れの骨格が浮かんでくる。指導案に基づきながら実践の授業展開の概要を記述する ことによってその授業の特質や学ぶべき点、さらには今後の課題を大まかに把握することがで きる。なお、板書及び授業を観察した学生のレポートは資料に掲げている通りである。

4 授業の分析一授業記録と「分節化」からみえてくるもの−

(1)教科内容の緻密な分析

大人からみれば、簡単に見える「余りのある割り算」の問題も子どもの側からみれば未知の 課題である。しかも子どもの中にもかなり速くその計算ができる者もいれば、商を立てるのに まだ時間のかかる者もいる。突き詰めれば、九九をどれだけ自分のものにしているかというこ

とであるが、逆にこの練習を通して九九の力を高めていくことにもなる。

この授業では「余りのある割り算」の商を「正しく、遅くなく」計算するために、「被除数と 10の位が同じで割りきれる数を見つけだす(=『見えない数』をさがす)こと」が教えられる。

これは余りのある割り算をA・B二群に分けた時のA群に共通する性質である。もちろん、こ うした内容もそのことを教師がストレートに教え込むならば、それは子どもにとってなんの面 白味も感動もない。またひとっ「覚えなくてはならない課題」が増えたと感じさせるだけであ ろう。

商を立てるということは、一人一人の頭の中で、いわば、試行錯誤を繰り返すということで もあるが、導入(復習)場面での「誤った商」(「まだいける」「オーバー」)の確認は、そう した試行錯誤をみんなでやってみるということである。正しい認識というのは、そうした「誤 り」や「つまずき」を媒介としながら本来成立してくるものであり、授業過程もそうしたいわ ば「発生的認識」をふまえることが必要となるのである。

後半の「遅くなく商をたてる練習」の場面では、①「教師が割り切れる被除数をいって、子 どもが商をいう」→⑧「子どもが割り切れる被除数をいう」→③「子どもが正しい商をいう」

という三つの活動(パターン)が仕組まれている。余りのある割り算の商の立て方として、

「割り切れる披除数」を思い浮かべ「除数との九九計算をする(逆演算)」という教科内容が 子どもの学習活動の内容となる。指導案にもかかれているが、一挙に「高い思考レベル」を要 求するのではなく、より細かなステップを踏んでいるのである。頭の中で生じている割り算の 作業(見えない)を一度外在化させ(見えるようにする)、子どもたちがそれを共有できるよ

うにしてから、一人一人の頭の中で再びその作業を行なわせている。

このようにみてくると、「この教材で、どんな認識や学習活動が可能であり、またそれをど のように体験さすべきであるのか」という緻密な教材研究が、この授業の骨格をつくり出して

いるのである。

(2)授業の各場面が関連づけられていること

授業は一般には「導入」、「展開」、「終結(まとめ)」といった形でその展開過程が区分され るが、そこでの問題はその形式区分でもなければ、それぞれの場面でのネーミングでもない。

− 63

(13)

小 野 蹟 男

それぞれの場面が関連づけられ、その授業展開全体を通して、子どもたちがどの様に新しい認 識や技能さらには能力、態度を獲得していくのかということである。

この授業は大きくは三つの場面に分けられる。「前事の復習(余りのある割り算の練習)」

「本時の課題確認(十の位が同じである被除数の発見)」「新しい方法に基づく計算練習」であ る。この授業展開で特徴的なことは、この三つの部分が一時間の授業としても意味ある関連を もっていることである。「前車の復習」は、学に既習事項を想起さすということにとどまるの ではなく、「計算を遠くする方法を自覚化さす」という本時の課題づくりの伏線をなし、また、

導入部での枚数確認は最終場面での練習の前提であるとともに、それへの意欲づけにもなって いる。

「本時の課題確認」と「新しいやり方での練習」場面では、計算の練習をただ機械的な作業 に終わらせてしまうのではなく思考(認識)を介在させた形での練習(習熟)となっている。

「導入での作業(復習)」は、展開過程や終結部分まで作用するとともに、展開・終結部を経 ることによって、「新しい知見(『見えない数』の発見)」の威力を確認さす。

(3)子どもとの共同作業を通して新しい認識(技能)を獲得さす

授業の課題は、既有の知識・技能や生活経験をフルに活用させながら、新しい知識・認識・

技能を共同で学び取らせていくところにある。子どもたちにとって「未知」であるように思わ れたものを、いつのまにか「既知」へと転化さすところに授業の中心的任務があるといってよ い。この授業では、子どもたちに新しい課題を獲得さすために、次のような教師の働きかけが みられる。

≪子どもから思考を引き出し、整理し、広げ、値うちづける≫

はやくできた子どもにコツを発表さすことで、「無意識的」に、子どもたちは「新しい方法」

を使用していることに気づく。「近い数(披除数に近くて割り切れる)」と「大きい方から

(順番にかけ算しない)」の確認は、子どもの側からの本時の課題への接近であり答えである。

教師は子どもの発言を巧みに引出し、また学級全体に対して整理して提示し直している。

新しい課題は、全く未知のものとしてあるのではなく、子どもたちはそれをすでに利用して いるのである。学生のレポート(資料2)にもあるように、そうしたことを発表さすのは「無意 図的なものの自覚化」であると同時に「優れたものを共有する」ということを意味する。

≪新しい知見のタイムリーな提示≫

しかし、子どもはまだ「10の位が同じで割り切れる数(=見えない数)」を見つけてないな い。そこで、教師がそれを提示し説明する。子どもの思考方法が前もって引き出されているの で、教師の提示(説明)はより納得のいくものとなる。しかも、その提示の仕方が、「19÷2 を見たら18というのです」と、ある種の意外性を持った提示の仕方になっており、子どもから すれば、ますます新しい知見に引き寄せられる。子どもたちがギリギリ背伸びしたところ で教師の力強い手がさしのべられているというイメージである。子どもの提示したものと教 師の提示したものとの関係については、なお考察を必要とするとも考えられるが、子どもたち 全員の認識を一歩高めるための手だてを、「既知」を土台としながら子どもたちは学びとって

いった。

一 64 −

(14)

≪教材・教具の工夫≫

子どもたちの思考を明確にし、認識・技能の共同化をはかるという点で、フラッシュ・カー ドはきわめて大きな威力を発揮した。子ども全員がカードに集中して、共同作業(声をそろえ て答えをいう)することができた。みんなで言うということは、一見、無責任になりがちにみ えるが、正しく組織されるとき、他者の声(答え)を聞きながら自分の答えを言うという緊張 した状況をつくり出し、やり方によっては退屈してしまう単調な練習を楽しくバリのあるもの にする。

さらに、黒板の使い方が資料1で示したように前もってカードを貼り、その余白部分に本時の 学習のポイントとなる部分を子どもと対話しながらまとめてる。ことばのやりとりだけではな

く、文字によって視覚的にも整理され、それが同時に子どもたち一人ひとりの思考・認識の整 理を助けるものとなっているのである。

(4)多様な学習活動(形態)の活用

単調な作業に終りがちな計算練習の授業を起伏に富むものとしているのは、「認識」と「練 習」が総合化され統一的に指導されているからである。つまり、どうすれば「より速くなるか」

(それは速さを競うということではなく、より合理的な計算の仕方の発見を意味している)と いうことをまず考えさせ、意見を述べさせ、理論的な認識に基づいて練習させているというこ

と。思考・認識と技能の習熟(練習)とを機械的に二分してしまうのではなく、一連の流れの 中で認識の深化と技能習熟とを統一的に形成しようとしている。

第二は、学習形態の多様性ということである。「一斉作業」「個人作業(自力解決)」「個人 発表(集団思考)」の適切な交換転換が授業にリズム感を与え、子どもたち一人ひとりの学習 への能動的参加をよびおこしている。個人作業の場面では、二度机間巡視(観察)もなされ、

一人ひとりの作業(練習)の進捗状況や問題点も確認している。

(5)子どもへの応答とたえざる励まし(評価)

学生のレポートにもあるように、この授業を「ドラマ」と感じさせ、「教師の世界に子ども たちを引き込み(教師と子どもの作りあげていく世界)」「人間教育」を感じさせた最大の要 因は、教師と子どもの問に応答関係がつくり出されていったことによる。(もちろん、既述の 優れた教材分析がそれを可能にしているのだが。)

≪子どもへの励まし(「評価活動」)≫

たとえば、子どもへの励ましを教師は次のように行なっている。

「元気ないな(声の小ささに対して)昨日はもっと元気あったぞ。」

「00君、眼が光っている、よろしいね」

「涙でるほど参加している。いいね−。」

「先生は10枚できれば十分と思っていた。」

「00君は、こんな大きな口開いて練習している。」

「こんなに人が見ているところでよく頑張った。」

− 65 一

(15)

小 野 擁 男

「今日の授業でいちばん頑張ったのは、00さんと00さんと○○さん。」

こうした「評価活動」は、子どもたち全体の学習に対するやる気(意欲)をかき立てるもの となる。教師は子どもたちの否定的な現象ではなく、学習に立ち向かっていく子どもの積極面 を評価している。まさに教師自身の願いを肯定的な評価活動を通して子どもたちに語りかけて いるのである。

≪発言を引き出し、受けとめ、待つことができること≫

教師と子どもとの応答の成立は、子どもの「発言」(思考)をまず教師が受けとめてやる必 要がある。P「計算遅いねん。」T「遅くてもいい。」/P「(速い子は)練習したからでき

る。」T「そうだね、でも昨日やったばかりだよ。」というように、子どもの本音の部分を聞 いてやりながら、「でも頑張ってコツを習得していけば遠くできるようになる」ことを学ばそ うとしている。

子どもの発言は最初から完全なものはない。それは教師の手助けによって、徐々に明確なも のになっていく。「なるほど」と相づちをうち、「だから」「たとえば」「こういうふうにし ているの」といった、教師からの「接続語」が一人ひとりの発言を長くし、思考や認識を明確 で確かなものとする。教師と子どもの一対一の問答もそれを聞いている子どもたちの自問自答 を手助けすることになるし、また、そういうものとして組織する必要がある。

集団の中で一人で立って発言することはだれしも勇気がいるし緊張もする。みんなの前で発 言するということは、自己の思考の明確化を自分自身に課すということでもある。子どもは立っ たとたんに言うことを忘れることもある。この授業でも発言しようとして立ったが20秒はど答 えが出ずに他の子どもたちがざわつきだしたが、それでも発言し切ることができた。教師が

「待てる」ということも、場面によっては重要な子どもへの働きかけとなる。

「クラスの全員が先生の顔を見て練習しているのに気づいた」とレポートに書いた学生もい たが、まさに、対面し、うなずきあるいは首をかしげて、応答関係を作り出すということが、

授業成立のための基本要件である。みんなに答えさせるとき、教師が一人一人の顔を見なから

「いいか?いいか?いいか?はい!」といって一斉に答えを言わせるのも、技術であると同時 に授業はみんなで学びとっていくものという教師の願いの現れでもある。

Ⅲ.「授業指導」の一般的原則の確認(発見)

授業分析としては、最後に、以上のような分析結果を授業指導のための一般的原則の確認

(発見)という視点から整理しておく必要がある。個別の授業実践を一般化して促え直すこと によって、個々の優れた実践を名人芸としてあるいはその教師の人格のなせる技として終わら せてしまうのではなく、優れた指導技術を分析者自身のものにしていくことができるのである。

またそれは優れた授業の理論や法則性を明らかにしていくという作業でもある。

授業指導の一般的原則を明らかにしていくために以下の視点から個々の実践分析を整理・検 討する。こうした視点(枠組み)の有効性については、さらに授業分析を積み重ねる中で、修 正し、より豊かなものにすべきであろう。

ー 66 一

(16)

1「教材分析(解釈)・教材づくり」に関して

(1)教科内容の分析(教材解釈)

・教科内容の系統性・発展の見通し

・「教えたいこと(教科内容)」の明確化(分析・解釈)

・子どもの思考・認識発達の分析(「子どもから」の視点)

(2日 ̄たのしく、わかる」教材

・「手づくり」の教材

・子どもの「既知」「既習」と結びつく教材

・子どものイメージ化を助ける教材

・共同活動を引き出せる教材

2「授業展開の構想(指導案づくり)」に関して

(1)既習事項の確認=課題学習・学習意欲の喚起(導入)

(2)「やま場」の構想(展開)

①「発問(課題)」づくり

・「既知」と「未知」(本時のねらい)との問を問う

・「既知」をゆさぶる

・多様な思考・解釈を引き出す

⑧集団思考(共同活動)の構想

・子どもたちの力で解決(子どもの反応予想)

・「教師の力」で解決(教師の説明)

・子どもと教師の共同活動で解決(意見の関連づけ・総合化)

(3)学習成果の確認・定着(「まとめ)」

・教師による整理(説明)

・子どもによるまとめ・確認(発表、ノート)

3「授業展開のタクト(実際の授業での対応)」に関して

(1)発問(課題)の提示方法

・わかりやすさ

・タイ ミング

・補助発間(子どもの反応に応じて)

・思考(作業)時間の保障

・板書、メディアなどの活用

(2)発言(思考)の組織化(「接続語」による応答関係の組織化)

①子どもから意見を引き出す

・「教師からの接続語(応答)」

・「だから」「それで」「たとえば」「このばあいは」など、うなずきと助言

(彰発言の価値づけ

・「つまずき」への同調

・「皮相な理解」への抵抗

一 67 −

(17)

小 野 撞 男

③意見の整理・集約と関連づけ

・子ども相互の問答や論争

・教師からの新しい知見の提示

・黒板等の活用

④学習形態(活動)の交互転換

(3)学習活動への集中と「励まし」

①教師による肯定的評価活動

㊥子ども相互のかかわり合いの質を高める

・仲間に教えることができる

・仲間に問うことができる

③「学習集団(学習に取組む学級)」としての力量を高める

・共同で学ぶことの楽しさを知る

・共同で学ぶことを通して一人ひとりが個性的主体となる

・学ぶことを通して他者への共感や連帯感が生まれる こうした視点からいま一度、この授業実践の意義をまとめてみる。

1「教材内容の分析(解釈)、教材づくり」にかかわって

(1)教科内容の分析−「内容分析」と「子どもの思考の分析」との統一

余りのある計算を二つに分ける(A、Bのカード)ということは、子どもの思考活動 を引き上げる上で効果を発揮した。余のりある割り算をより確実にやらすための手がか りを子どもたちに与えることになった。教科内容の分析は、子どもたちにどう理解させ、

わからせていくかという視点を含み込んでなされるべきである。

(2)教材づくり一共同活動と個性的学習の統一

フラッシュ・カ1ドは、子どもたちが全員で練習していくうえで、また子ども用のカー ドも個別学習を行なう際に効果を発揮するものとなった。カードは、子どもたちが共同 で学んでいくということと、一人一人個性的に学ぶことを同時に成立させるための優れ た教材となっている。

2「授業展開の構想」にかかわって

(1)子どもを学習の主体にする豊かな構想力

全体に細かなステップを踏んでいること、導入(=復習)が同時に課題づくりとなっ ていること、多様な学習活動や形態を用意していること、教師と子どもの「対決」(知 恵比べ)的構造で課題を学びとらそうとしていること、「子どもたちが喜びながら挑戦 できるような雰囲気をつくること」等、学ぶべき点は多岐にわたるが、子どもの「既知」

を引出しながら学習活動の主体にしていくという観点が授業に貫かれていることが重要 である。

(2)「発問(課題設定)」1子どもの思考と教師の思考の対置−

− 68 一

(18)

まず「たくさんできた子の見つけ方を聞いてみる」(第一の問い=ゆさぶり)、次い で「先生のやり方を聞く」(47÷7なら、40いくつになる7の段の九九を思い浮かべ る=第二のゆさぶり)というように、子どもの注意や関心あるいは疑問を生じさせるよ うに「課題」を構想する。子どもの発想と新しい認識とを結びつける「発問(課題)づ くり」を行なうことが重要である。

3「授業展開のタクト」にかかわって

(1)発間(課題提示)の方法一タイミングと簡潔性一

指導案そのままに授業がすすんでいくというのがよい授業では決してない。指導案に書 いた発間が、子どもの思考に刺激を与えるものとなるためにはただ機械的に指導案をな ぞっていけばよいというものではない。現実の授業展開の中でその提示のタイ ミングが はかられ簡潔な表現が揺られなくてはならないのである。たとえば「19÷2を見れば、

18といいます」という課題提示の方法は、この授業展開の中できわめて効果的な思考刺 激となっている。

どんなタイミングで、どんな表現や表情で課題提示を行なうかということを授業展開 の中で柔軟に思考し決断していくとき、現実の授業は事前の構想以上のものとなる。

(2)子どもの発言の組織化−「助言」「接続語」で意見を引き出す一

助言や「接続語」を教師が駆使しながら、子どもの発言を巧みに引き出し、また引き 出した発言を要約したり整理したりしている。板書もそのさい有効に利用されている。

ただ、子どもの発言と教師の発想をどう関連づけるのか、その関係がなお曖昧であった ように患われる。

また子どもから巧みに意見を引き出している。それを可能にしているのは、「教師の 助言」「接続語」あるいは「思考・発表時間の保障」といった、子どもの状況に応じた 教師の的確な働きかけである。「何でも思った通りに言ってどらん」と漠然と言うだけ

では子どもから発言を引き出すことはできないのである。

さらに教師が子どもの発言を意味づけ整理することで、子どもたちは認識を共有して いく。そうしたことを通して、やがては子どもたち自身でその作業を行なうことができ るし、絶えずそれを行ってもいる。その意味でも「○○と同じように、ちょっと違うか な」とか「私も九九をやる」といった、仲間の発言を聞きながら思考を整理し、深めて いる発言をいっそう「値うちづけ」てやる必要があろう。仲間の発言から思考を展開す ることの重要性をいっそう意識化さすことができるからである。

(3)学翌への集中と励まし…「肯定的評価消動」とたえざる「応答」一

フラッシュ・カ1ドもそれ自体で効力を発揮するものではない。教師の「いいか、い いか、考えたか」という語りかけ、呼びかけとともに、効果を発揮している。教具を使っ ての意識的な「集中」づくりがなされているのである。さらに子どものほとんどすべて の発言に対応し、受容しながら、一歩上位への励まし(「評価活動」)を行なっている。

「00君は口をこんなにして声を出している」「涙出るほど参加している」「この列が いい」といったようにほとんどが肯定的評価である。評価活動は、まだ学級全体には現

一 69 一

(19)

小 野 擁 男

れてはいないが萌芽的にはみられる現象を大きく肯定的に評価することで、教師の願い を現実に作り出していく活動に他ならない。そのことがまさに行なわれているといって よい。

学習は一人一人のものであると同時に、クラス全体のものであるという認識を実感と して子どもたちに作り出していくこと。学習に取り組む学級の実力の拡大(歴史的発展)

という視点からも、子どもたちを励まし評価していくことがさらに必要であるし、学習 における「班」の役割といったことも今後の検討課題となろう。

資料1

[板 書]

正し く  おそく なく ( 1)

恒 ]回 d∈司 49÷9 57÷ 7 由

オ ーバ ー ∠亡 一 々

49 ÷ 8 = 7   匹 ] β ∈ ∃ ∠ 車 重 ] β 亘三 可  3 5 ÷ 7 4 二 三 8 × 7 =⑲

0 ま だ い け る   β 亘 司 画 〔二亘 ヨ ] ∠ 直 ≡互 ′ 5 7 ÷ 9 4 亘

38 ÷ 6 = 5 (4 − 2 )

6 × 5 =3 0  β ∈ 可 〔車 三重 〔 亘 亘 ] 麺 重 ] ∠ 垂 三 司 6 ×( り=3 6

(2 − 2 )

(カッコの数字は、授業の分節対応)

ー 70 −

(20)

資料2 今澤先生の授業を観察した学生のレポート 小学校課程 Y生

(1)本時のねらいは「商を上手に立てられるように練習させる」であったが、文句なく十分達 成することができたといえる。子どもは集中し、意欲的であり、計算練習の授業であるのに 楽しそうであった。また、上手なやり方をきいて、それが自分でもできるようになることが 本当にうれしそうで、子どもの世界が広がっていく様子がみられた。

(2)商をうまく見つけてたくさんできた子の見つけ方を発表させることは、個人の方法を全員 のものにするという点と、無意識に行っている計算を言葉にすることで、意識させるという 利点があると思う。たくさんできる子を見て、いいなあと患い、自分もそうなりたいと努力 することにもなる。それが相互に高めあうことになると思った。

(3)この教材はあとで習う3ケタ÷2ケタ、3ケタ÷1ケタの割り算ができるためにも、しっ かりと獲得しておかなければならない技術を身につけさせる重要なものである。数は、九九 で割り切れるものばかりが存在するのではなく、余ったり、足りなかったりするのもある。

この点で子どもにとって難しい、あまりのあるわり算であるが、本時はカードをたくみに使っ たり、みえる数、みえない数、オーバー、まだいけるなどわかりやすくされていて良かった。

また、計る時間を後の方を30秒長くすることもちょっとしたことだが考えられているなと 思った。

(5)今日の授業は、今まで観察してきたものの中でも、たいへん良い授業のうちの1つである と思った。子どもが先生にどんどんひきつけられていって、すっかり子どもが先生のつくる 世界にひきこまれていた。みんな同じ目標に向かっていて、それでいて、終始などやかでた

のしい授業であった。検討会のときのお話もたいへん勉強になった。

小学校課程 N生

(1)提示した課題はねらいを十分達成することができたか。

この授業のねらい「商を上手に立てられるように練習させる」は、はぼ十分に達成された と言えると思う。一部個人で練習する時に裏の答を見ていた子がいたようであるが、そういっ た子は少なかったように思うし、その子以外は驚くほどはやく商が立てられるようになって いた。だからと言って、早さをきそわせるのではなく「はい」と言ってから答えるように指 導し、ほとんどの児童が考えられる間をとっていたのは、さすがだと思った。あれをしてい なかったら、これはどの子どもがそろって商を立てられるようになっていたか疑問である。

(3)教師の教材解釈(資料・教材)は子どもの思考・表現・技能を高めることができたか。

今澤先生が事前指導で話をして下さった時から、教材研究をよくされているなあ−と思っ ていました。先生はどちらかというと知的な厳しい先生という印象も少し与えたので(失礼 ですが…)、今日の授業が今澤先生だと知った時はどんな授業をなさるのか、わくわくとし ておりましたら、やっぱり思ったとおり大学の講義室とはうってかわって、とても素敵な表 情をされて、授業をされていたのでつい見とれてしまいました。よくわからない文章になっ てしまいましたが、つまり事前指導のお話を聞いた時から、先生の授業を見てみたいなあ、

と思っていたのです。そして見た授業は、というと、私が今まで見た授業で1番楽しくいき

ー 71

(21)

小 野 擁 男

いきした授業のように恩いました。フラッシュカードの効果も大きかったと思います。その カードを作って子どもに答えさせる順序もすばらしかったと思います。特にテレパシーのシー ンは、あの時の先生の表情を恩いうかべると今でもふっとわらいたくなるぐらい素敵でおも しろかったです。

フラッシュカードをめくっていく時の先生と、「42」と叫ぶ子どもたち。時折聞こえてく る「ドキドキする一つ」「涙でてきた」という子どもの声。

子ども達は先生に、フラッシュカードにひきつけられ、頭の中では式を見て、九九を恩い うかべ答を探し、それが声になっていた。

こういったことはドリルで黙々とやって済まされそうな授業だと思う。それをフラッシュ カードを用いることでその45分は子ども達にとってドラマになったのではないか。きっと忘 れることはないように思う。ドリルでもいずれは解けるようになるのだと患う。しかし、こ ういった感動的な授業を積み重ねることによって、たくさんの数学大好きの子ども達を作る ように思う。

そういったことだけでなく、九九をはじめから言うのではなく、そばの九九を思いうかべ るのだというのがはっきりとどの子にも理解できたのではないだろうか。なんとなく計算す るのではなく…。またこの授業で驚いたのは、先生が何もかも教えるのではなく、無理なく 子ども自身に考えさせていったことである。こういった学習の仕方は身につきやすいと思う。

また「速く」ではなく「遅くなく」としたところ、「先生は10枚できたら、それでいいと 思った」とおっしゃったところ、最初と最後で自分自身が何枚増えたかを評価したところに、

先生の細やかな配慮が見られた。

また、声を大きく出さした言葉がけや、3分30秒はかったところは、さすが現場の先生と 患った。

(5)その他全体的な感想

(3)ですでに感想みたいになってしまいましたが‥・。

こんな授業をしたい。先生の顔が輝いて、子ども達は夢中で…・‥、授業がキラキラしてい たように思う。子ども達もあんなに声を出して、あれだけ頑をつかったら、満足な気持ちで 授業を終ったのではないだろうか。

無駄な時間は数秒もなかったと思う。すばらしい。こんな授業を見られるのだったら、教育 実習を附小にすればよかったと思う。算数の全ての授業がこんなに感動的だったら、世の中 は算数好きの子でいっぱいになると思う。どの教科の授業もこんなに子ども達を夢中にさせ ることができたら、子ども達は毎日学校に来るのがうれしくて仕方ないだろう。

私は協力校で3年1組に入ります。あまりのある割り算のところだったらフラッシュカー ドをつかってあんないきいきした授業をすることに挑戦したい。

授業が、先生があまりに素敵だったので、感想でほとんどを占めてしまいました。いい授 業を見せて下さってありがとうございました。

ー 72 一

(22)

小学校課程 S生

(3)教師の教材解釈は、子どもの思考、表現、技能を高めることができたか。

これは、完壁にできたと思う。まず、教材解釈については、先生もおっしゃっていた通り、

「どうやったら早く計算できるか。」というふつうは、ドリルをくり返して子供達が個人で 気付き、気付いた子だけが早くできるということになってしまう部分を、授業で取りあつかっ

たというのは、すばらしいことだ。

私は、よく「遠くできるコツをどうして、先生は教えてくれないのだろう」と思っていた

(小学生の頃)が、このような授業があれば、よかったなあと思う。それにしても 計算の 遅い子は、 ○×1 の所から順にやっているからだ〃 ということに気付かれ、それを直す 授業を考え出す、というのは並大抵のことではない。本当にすごいと思った。

次に、フラッシュカードについてであるが、1×7=1というのを見て、子供は笑ってい たが、こういう簡単なものも入れて、苦手な子も参加できるようにしているのはよいと思っ た。

また、黒板のカードを見て、全員が一緒に問題を解いているのもよい。ふつう、算数の授 業は、教科書を説明してその問題を解き、宿題にドリルをやらせるというノヾターンが多いが、

このように児童が一体となって、楽しくやることもできるんだなあと感心した。

そして、最初と最後に、時間を計って記録を見る所では、3分と3分30秒にされていた。

そして、そのことで子供達は自分達はとても進歩した、と患った。授業の終わりにはとても うれしそうであった。子供はきっと、今日の授業で、とてもいいことを教わった、と思った と思う。そして、とてもよかったのは、「20枚以上増えた人は」というように「何枚できた か」ではなく、その授業でどれだけ伸びたかを聞いていたのは、とても重要なことだ。先生 もおっしゃっていたように、何校できたかとなると、他人との競争になってしまう。自分が どれだけできるようになったか、という自分との競争を、どの教科でもしていけば、クラス のムードもとてもなどやかで、向上心のあるものになると思う。

(4)授業において、子供の相互の「かかわり合い」は、どう育てられたか。

早くできる子に、そのヒケツを言わせるというのは、いう子にとっても聞く子にとっても、

とても新鮮なものだと思う。聞いている子はとても興味深げだし、言う子は得意気だった。

また、全員で一緒に答えるという点で、楽しく明るく授業が進んでいた。

算数の授業では、「かかわり合い」などありえないような気がしていたが、この授業では 見事にそれがなされていた。

私が算数の授業で「かかわり合い」を経験したのは5年生の時で、早く問題の解けた子は できない子に教えてあげるというものだった。この方法は、できない子はあまりいい気はし ないのだろうか。それともいい方法なのだろうか、今澤先生はそういうことをされたことは ありますか。

(5)全体の感想

先生のあたたかいお人柄と、教育への情熱がひしひしと感じられた、すばらしい授業であっ たと思う。

まず、教え方であるが、フラッシュカードを使う時、少しずつ程度を上げ、答え方に変化

− 73 一

(23)

小 野 嫡 男

をつけて、子供をあきさせないようにしているのはすごい。そして「テレノヾシーを送るか ら…」と言われた時は、子供はとてもわくわくして、先生に注目していてまさに全員参加の 状態で、教室に活気があふれていた。

そして、声を出しているかどうかも 列ごとにはめる〟 というので、子供はやる気を出し ていたと思う。

それから、何よりも感動したのは、「まちがってもおそれない、できない子も楽しく」す ることを考えていると言われたことです。できない子をアホといっていたムードをすばやく 察知し、それを直そうとされているのが授業でもありありとわかった。

「先生は10枚できたら十分だと思う。」と言ったその一言で、できない子も、安心して取 りくめるし、カードのうらを見て答えていた子もゆっくりでいいからしっかり考えようと忠 うだろう。

また、多田さんはさされた時、かなり考えていたが、先生はしんぼう強く待たれ、答えを 出したとき、心からはめてあげていた。子供達が何人か「できないの−」とか言っていたが、

先生がこうして、がんばったことをはめてあげたら、そういう子もいなくなるだろう。それ に、「まちがってもいいよ」と何度もいっておられたのも前のような、クラスのムードを考 慮した上でのことだったのかと本当に感心した。

できない子をバカにする、まちがいをおそれる。こういうことは、その子の性格を大きく ゆがめるものである。ユつの授業の中で先生の心配り一つで、こういう人間教育もできるん だと思い、これこそ小学校教育でしかできないものであると強く感じた。私は、数学が苦手 で、算数の授業の時困るだろう、いやだと患っていたが、今日の授業を見て、がんばろうと 思うようになった。

今澤先生の他の授業も見せていただきたいなあと思っています。

こんなためになる授業を見せていただき、本当にありがとうございました。

ー 74 一

参照

関連したドキュメント

活用のエキスパート教員による学力向上を意 図した授業設計・学習環境設計,日本教育工

Keywords: Online, Japanese language teacher training, Overseas Japanese language education institutions, In-service teachers, Analysis of

The Admissions Office for International Programs is a unit of the Admissions Division of Nagoya University that builds and develops a successful international student recruitment

2  事業継続体制の確保  担当  区各部 .

‹ Share nuclear information (even. minor information)

区分 授業科目の名称 講義等の内容 備考.. 文 化

授業設計に基づく LUNA の利用 2 利用環境について(学外等から利用される場合) 3 履修情報が LUNA に連携するタイミング 3!.

’ in Thomas Cottier (eds.), The Role of the Judge in International Trade Regulation: Experience and Lessons for the WTO, World Trade Forum, Vol.4 (Ann Arbor: The University