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義務の不履行と法的対応

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Academic year: 2021

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無線通信と私、そして福大

工学部教授 太郎丸 眞

はじめに

この4月に工学部電子情報工学科へ赴任いたしま した。生まれも育ちも福岡市です。専門は無線通信 ですが、卒論・修論では東工大でパワーエレクトロ ニクスを学びました。修了後17年に九州松下電器

(現パナソニックシステムネットワークス)へ入社。

プリンタやMOドライブの開発を皮切りに、コー ドレス電話、PHS基地局・端末、ブロードバンド ワイヤレスアクセスシステムの開発研究に計14年間 従事しました。この間、九工大の博士課程(社会人)

で学位をいただきました。その後九州産業大学に助 教授として3年間、続いて前職の国際電気通信基礎 技術研究所(略称:ATR、京都府精華町)に6年間 勤務し、再び福岡へ戻って参りました。

ラジオ少年の頃

私は小学校の頃から電気に興味を覚えました。理 科の授業の乾電池と豆電球もそうですが、時折父が やっていたコンセントプラグなどの簡単な修理や、

電気屋さんがテレビの裏蓋を開けて修理する様子に は興味津々。そして本格的に電子工学の道を歩み出 すきっかけとなったのが学研の「マイキット」です。

小学4年の時、12年だったと思います。

マイキットはトランジスタ、抵抗、コンデンサな ど未配線の電子部品が並んだボードを自由に配線で きるもので、同様の商品としては「電子ブロック」

があります。1〜2石のラジオ、ワイヤレスマイク、

インタホン、電子小鳥といった「鳴って面白い」定 番の回路から、AND、OR論理演算回路やリレーの 自己保持回路(つまりメモリ)の実験といった、理 論学習を意図した教育的回路など、付属マニュアル には百種類以上の回路が載っていました。そこには 配線手順だけではなく回路図が載っていました。図 記号の説明も書いてあったので、小学4年から回路

図が読めるようになったわけです。ちょうどその頃、

教育テレビで「技能講座テレビジョン技術」という 番組がありました。カラーテレビの原理と構成、修 理法を学ぶ講座ですが、小学生に理解できるはずも ありません。が、よく理解もできないくせに想像力 を働かせながら見ていたものです。

アマチュア無線との出会い

その後中学に入ってすぐ、アマチュア無線の資格 を取得することになります。実はアマチュア無線に はそれほど興味はありませんでした。ところが5年 生の頃に購読を始めた雑誌「ラジオの製作」にはア マチュア無線用の無線機やアンテナの製作記事がよ く載っていました。ラジオとは比べものにならない 回路規模で、ラジオには無い興味深い回路が含まれ ています。アンテナや無線機を自作し、それを使っ て交信するのならば面白そうです。そしてこの雑誌 には「国試予想問題」「○月期国試出題問題」なる 記事が年に数回載ります。初級資格の科目は「無線 工学」と「法規」。どんなもんだろうかと「無線工 学」をやってみたら6割以上解けました。合格ライ ンは6割と言われていましたからギリギリ合格可能 ラインです。法規はがんばって覚えればよし。とい うわけで6年生から勉強をはじめ、中1の5月に受 験し合格。その後無線従事者免許申請を行い、無線 局免許申請・交付でやっと電波が出せます。開局は 同年10月。周波数はVHFの5MHzです。海外と交 信できるチャンスはめったにありませんが、国内と は関東や北海道などの遠距離交信も楽しめました。

とはいえ常時安定して交信ができるのは近所の

「ローカル局」。実家に近い福工大、九産大の下宿 生や、本学や九大の「お兄さん」達とも毎晩のよう によく交信したものです。6歳以上年上の人達と何 をしゃべっていたかというと、やはり技術的な話が 研究雑話

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多かったと思います。無線を趣味にしている学生は やはり理工系学部の方が多く、技術的な事を随分と 教わりました。回路製作、電子部品、アンテナ、電 波伝搬、交信のテクニック、等々。これが大変良い 勉強になりました。しかし中学生には限度がありま す。三角関数と対数は電気屋に最低限必要です。電 気・無線への興味とエンジニアへの夢が、高校・大 学での物理、数学、専門科目の勉強へのインセンティ ブになったことは言うまでもありません。そして地 元電気メーカーへ就職。最初はプリンタをやってい ましたが、携帯電話の開発を九州でも行うことにな り、希望を出して無線のチームへ異動しました。

研究との出会い

PHSの開発を会社が手がけることになり、私も 開発チームの一員になりました。PHSはデジタル 無線方式です。しかし会社にはアナログ無線の技術 しかありません。デジタル無線技術を勉強せよとの 上司の命を受け、九工大情報工学部の赤岩芳彦教授

(当時)の門を叩いたのが、無線通信の研究者とな るきっかけでした。もしもPHSやデジタル携帯電 話の実用化のタイミングが3年以上ずれていたら、

私は研究者にはなっていなかったかもしれません。

当時の研究は会社の製品開発と明確につながって いました。デジタル無線技術はまだ黎明期であり、

研究成果が製品開発に貢献し、特許になると同時に 論文にもなることが今よりも多かったのです。そし て学会の研究会や大会で議論することの面白さを知 りました。NTTをはじめ、一流の研究者と対等に 議論ができるのは学会ならでは。試作・実験もさる ことながら、家に帰り岩波の公式集片手に式を解き、

じっくりと理論検討するのもまた良し。国際会議で 海外の研究者と議論する楽しさも知りました。学位 を頂いて4年が過ぎた頃、会社の要素技術開発の方 向性と自分が目指すものにずれが出てきたこともあ り、それまでの技術者から「研究者」として身を立 てることを決意しました。

電波とアンテナと信号処理

私の専門は「無線通信システム」と呼ばれる分野 です。電子情報通信学会にはそれぞれの分野ごとに 研究専門委員会という組織があり、年数回の研究会

を開きます。その一つに「無線通信システム」研究 専門委員会があります。また分野的に関連が深い「ソ フトウエア無線」「アンテナ・伝播」などもありま す。そのなかでも特に専門としているのはマルチア ンテナシステムです。複数のアンテナで送受信を行 い、アンテナ毎に適切な信号処理を行って信号を合 成することにより、自動的に干渉(妨害・混信)電 波を抑圧し、同一周波数同一時刻に複数の信号を互 いに干渉せず送受信することができます。アンテナ そのものではなく、送受信機における信号処理技術 の研究です。このほか変復調方式や、無線チャネル を基地局や複数の端末(携帯電話や無線LAN)で 共用する際の効率的な通信手順、さらにこれら次世 代の無線方式に適した無線機の回路構成法などを研 究しています。今後は院生を中心に学生諸君の力を 借りながら、このような研究に取り組んでいきたい と考えています。

学会活動では現在「電子情報通信ハンドブック・

知識ベース」の中の「移動通信」とう編の編主任を 仰せつかっています。図書館等にある、電子・情報 技術の辞典「電子情報通信ハンドブック」を全面改 定し、WEBで無償公開するものです。現在β版の 公開へ向けて編集作業も大詰めです。Wikiなどと は異なり、専門家が責任を持って執筆・編集してお りますので、どうぞご活用下さい。

コンテストと JA6YCU

さて、最近は私もすっかり電波を出さなくなって しまったアマチュア無線ですが、アマチュア無線に は「コンテスト」と言う競技会があって上位入賞者

1988年に宮崎県串間市都井岬で移動運用を行った時に 無線部が発行した QSL カード

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は賞状がもらえます。できるだけ多くの地域の多く の局数と交信することを競うもので、九州の最強 チームの一つがここ、福大無線部でした。コールサ インはJA6YCU。現在も学而会館に3本のアンテナ タワーがそびえ立っていますが、活動を休止したと のことで残念です。いつの日か福大から「CQコン テスト」のコールを復活させたいと目論んでいます。

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義務の不履行と法的対応

法学部教授 折 登 美 紀

ある記事から

数年前のことであったか。滞在先ドイツで新聞を 読んでいて、次のような記事が目に留まった。見出 しは「就学義務を履行させるために、父親に対して 強制拘留の実施が決定された」とある。記事は、就 学義務に違反して子供らを学校に通わせていない両 親に対して、強制金が課せられていたが、それでも なお両親は子供らを学校に通わせようとはせず、何 回かの強制金の賦課も成果が得られなかったので、

父親に対して代償強制拘留が決定されたとの内容で あった。母親は子供の養育をする必要があるため、

強制的に拘留されるのは父親のみであるとのこと。

両親が子供らを学校に通わせようとしなかったこと の背景には、宗教上の理由があるようだが、この点 についてはおくとして、就学義務を履行しない者に 対して、「強制金が賦課され」さらに「代償強制拘 留がなされる」とは、どういうことなのか。記事は

「いよいよ父親が拘留か?」というある種扇情的な ものであった。旅先のことであったため、興味をも ちつつも、その後の事の経過を追わずに、帰国した。

義務の不履行に対して

私たちには法令上多くの義務が課せられている。

また、様々な規制もある。たいていの場合は、この 義務に従っている。しかし、ドイツでの新聞記事に 掲載された先の例のように、一般的に賦課されてい る義務、また、個別的に賦課された義務を履行しな いという人もいる。

法令上の義務が履行されない、行政庁が適法に課 した義務が履行されないといった状態の出現、その 放置は、法治主義の徹底、行政の適法性確保の観点 からいっても、決して望ましいことではない。先に あげた就学義務ばかりではない。運転免許の停止命 令、違法操業の工場への操業停止命令、建築物の除

却命令、屋外広告物の撤去命令が義務者によって無 視され、そのまま放置されるといった状態を考えれ ば、望ましくないことは容易に首肯されよう。

行政庁は、法律により義務を課す命令権を付与さ れている。しかし、命令権を持っていても、その命 令権を担保するのに有効な執行権を持っていなけれ ば、命令権はいわば「張子の虎」になってしまい、

長期的にみれば行政庁による命令は軽視ないしは無 視されてしまう。違法状態の蔓延、常態化ともなれ ば、行政に対する信用を失わせ、国民や住民の間で の不公平感を生じさせ、最終的には「住みにくい」

社会を招来する。

履行確保のための法的手段

法は、義務不履行を放置するつもりはない。履行 確保のための手段、執行手段を予定している。

問題は、それらの執行手段が義務の不履行状態の 改善に有効なものであり、あるいは、有効に機能し ているのかどうかということであろう。命令権は有 効な執行手段の存在に支えられ、生きてくる。

もっとも、命令権を生かすための手段は執行手段 だけではない。行政上の義務が履行されていない状 態への法的対応には、大別して2種類のものがある。

その1つが「刑罰」であり、もう1つが執行手段た る「行政上の義務履行確保手段(行政上の強制執 行)」である。この2つは義務の不履行に対して、

何らかの不利益を義務者に課すという点では共通す るが、異なる手段である。前者は、間接的には義務 履行状態の確保に資するということはあるかもしれ ないが、やはり、過去の義務不履行状態への制裁で あるのに対して、後者は、直接的に義務不履行状態 の改善に対応し、将来にわたって義務履行状態を創 設しようとするものであり、そもそも目的が異なる。

法は、ある行政上の義務違反に対しては刑罰で、ま 研究雑話

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た、ある義務違反に対しては義務履行確保手段で対 応する。ただし、両者は別のものであるから、刑罰 が規定されているからといって義務履行確保が排除 されるというような、排斥関係にあるものではない。

わが国の履行確保の現状

子供を学校に通わせない親というような事案であ れば、社会的関心も高く、世間の耳目を引くであろ うが、それ以外にも義務違反、義務の不履行は数々 ある。いったい、わが国でどのくらい義務不履行状 態が存在しているのであろうか。

実は、これについては判然としない。というのも、

建築行政、教育行政など各行政領域における義務違 反の件数や内容、それに対する下命の件数、義務履 行確保手段の実施件数などを総合的、統計的に纏め た資料が存在していないため、全般的状況を把握す ることができないからである。例えば、建築行政の 分野に限ってみても、ある地方公共団体において、

違法建築物に対しての下命件数や義務履行確保手段 の実施件数などを纏められることはあるが、それと ても、継続的になされているわけではなく、いわば 単発的なものである。各地方公共団体がすべてこの ような件数を把握しているという状況にもない。た だ、ある調査では義務違反があるにもかかわらず、

命令が出される件数も、さらに執行にかかった件数 も極めて少ないと指摘されており、違法状態が相当 程度放置されていると推測される。

使われない「武器」

法は、行政上の義務履行確保手段として、代執行、

直接強制、強制徴収などの手段を規定している。こ れらの履行確保手段のうち、行政法は、代執行を一 般的執行手段とする。代執行とは、名称があらわす ように、義務者のなすべき義務を、行政庁あるいは 第三者が、義務者に代わって行い、その義務履行に かかった費用を後に義務者から徴収するものである。

ところが、代執行がほとんど使われず、結果、義務 違反状態が放置されているというのが実態である。

なぜ使われないのか。代執行が使われることなく、

「機能不全」を起こしている理由には様々ある。代 執行にかかるか否かについては行政庁の裁量とされ ていること、義務不履行者からの費用徴収が難しい

こと、強権発動イメージがぬぐえないことなどがあ るなどである。もっとも、多くの義務違反に対して、

執行手段を登場させる前に、行政庁による指導の段 階で義務者が義務を果たしており、執行にかかる必 要が事前に回避されているということはあろうが、

指導も命令も効果がなかった場合には、代執行の登 場となるはずであるが…。指導にも従わない、命令 にも従わないという義務者を相手に、執行にかかる のは、相手方の抵抗も予想されるだけでなく、世間 の注目をも集めよう。その上、最終的に執行の費用 徴収もままならないとなれば、行政庁としても、二 の足を踏みたくなる。

問題解決の方向性

行政実務においては、代執行に加えて、あるいは、

代執行に代わる「使い勝手の良い」履行確保手段を 求める意向が示されている。行政の現場を預かる行 政実務としては当然ともいえる反応であろう。

行政実務の「要望」「悲鳴」を待つまでもなく、

義務履行確保手段の実効性は確保されねばならない。

そのためには、幾つかの方策が考えられよう。一つ は、現行の代執行をより活発に使うことができるよ う、例えば、要件判断についての柔軟な解釈論の展 開をするというものである。二つめには、代執行以 外の他の義務履行確保手段の創設や活用をすること である。

どのような道を探るべきか。戦後、代執行を義務 履行確保手段の一般的手段とするとした立法経緯や 現行の代執行法を前提とする限り、まずは、代執行 が「使い勝手が悪い」とされている制度内在的問題 と運用上の問題とを分けて、「使い勝手の良い」解 釈論の展開と運用改善を模索すべきであろう。と同 時に、行政庁や第三者が代わって執行することが困 難な代執行になじまない義務、例えば、健康診断の 受診義務、義務教育を受けさせる義務などについて は、新たな義務履行確保手段の模索と制度設計を考 えねばならない。これらの義務は、義務者本人に履 行してもらわないと全く意味をなさない。代執行の 要件判断を仮に柔軟にしたとしても、代執行では対 応できない義務があり、少なくともこれらの義務に ついては、新たな手段を構築する必要があろう。

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新たな履行確保手段の模索

近時、新たな義務履行確保手段の創設を求める議 論、特に、課徴金、強制金など、義務者に対して義 務履行を促す経済的インセンティブを与え、義務履 行状態の実現を図る間接的義務履行確保手段の創設 を求める主張が活発である。わが国も、戦前の行政 執行法には執行罰という手段を持っていたが、戦後、

これといった議論もなく、「その効用少なし」とし て、行政執行法の廃止とともに一般的手段としては 葬り去られてしまった。この執行罰は、罰という名 称ではあるが、刑罰ではなく義務履行確保手段であ り、その歴史的淵源はプロイセンの「強制金」にあ る。強制金は、代執行で対応できる代替的作為義務、

代執行には馴染まない非代替的作為義務、不作為義 務、受忍義務などにも対応する手段として、現在で もドイツにおいて一般的義務履行確保手段として広 く活用されている。強制金の実効性をさらに背後か ら強めるために認められているのが「代償強制拘 留」という手段である。

できることとできないこと

かのドイツで起こった就学義務違反の父親は強制 金によっても代償強制拘留の実施決定によっても、

動じず、子供たちを学校に通わせようとしなかった。

果たして、拘留されたのであろうか。拘留で何が得 られたのか。結局、それで子供らが学校に通うこと ができるようになったのか。

執行手段でできることには限界がある。それでも、

有益な手段の怠ることなく準備しておく必要はある。

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参照

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