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進化する海外企業研修

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進化する海外企業研修

大学院経営研究科第2回海外企業研修の実施と課題

梅野巨利・山口隆英

1.「理論と実践の融合」を体験する海外企業研修

本学大学院経営研究科(以下、本学MBAと呼ぶ)のビジネスイノベーションコース

(以下、本コースと呼ぶ)では、第2学年前期に必修科目として「フィールドスタデ ィⅡ」を開講している。本科目は海外日系企業子会社で約2週間、日本の国境を越え た異文化環境のもとで、いかに企業経営が行われているのか、どのような経営問題に 直面し、いかにして解決策を探ろうとしているのかという点を中心に、国際企業経営 の現実と実際を学生自身の肌身でもって感じ体験する、きわめて実践的な経営教育科 目の1つである。そうした狙いを持つ本科目は、「理論と実践の融合」を教育基本方針 に掲げる本学MBAを象徴する科目の1つであると同時に、本コースの大きなアピール ポイントとなる科目でもある。

本コースでは、昨年度に続き、本年度も海外日系企業2社に対し、第2学年在籍学 生合計9名全員を2班に分けてそれぞれ現地に送り込み、約2週間におよぶ企業研修 を行った。なお、学生の企業研修は、一般に「インターンシップ」という用語で表現 されることも多い。この用語の定義自体、確立したものがあるわけではないが、一般 には、インターンシップには就業体験が含まれていると捉えられている 1。われわれ の昨年度の報告書では、この用語を使って研修内容を報告した 2

1 文部省・通商産業省・労働省が共同で取りまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」では、イ

ンターンシップについて次のように説明している。「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験 を行うこと」。文部省・通商産業省・労働省「インターンシップの推進にあたっての基本的考え方」平成9918 http://www,jil.cgo.jp/jil/kisya/syokuan/970918_01_sy/970918。20121027日アクセス。

。しかし、われわれ が実施している企業研修は、必ずしも就業体験を含んでいるとは言えず、期間もわず か2週間程度と限られたものである。したがって「インターンシップ」という用語で

22 梅野巨利・山口隆英(2011)「海外インターンシップを通じた「グローバル人材」教育の実施と課題」『研究資料』No.235

(兵庫県立大学政策科学研究所)、201111月。

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表現するよりも「企業研修」という用語で表現するほうが、より実際に即していると 判断し、本報告書では「インターンシップ」という用語は使用せず、「海外企業研修」

と表現する。

われわれが実施している海外企業研修では、海外日系企業の第一線で活躍する現場 担当者、中間管理職、トップ経営陣と、幅広い階層の組織構成員たちから直に経営の 現場の体験談や事業解説を聞き討論する場が多数設けられている。加えて後述するよ うに、企業だけに研修場所を限定するのではなく、現地の大学・大学院での講義受講 や現地学生との交流プログラムも含まれている。その意味でも、われわれの海外企業 研修は、いわゆる「インターンシップ」よりも、よりアカデミックな内容を持ち合わ せている。それは上述した「理論と実践の融合」の方針が、本科目を通じて貫かれて いる現れであるといえる。

以下、本報告では、研修開始にいたるまでの準備段階、現地における具体的な研修 内容、帰国後のフィードバック、来年度に向けた課題のそれぞれについて、順次記述 してく。

2.研修準備段階

(1)研修先と学生の派遣先決定

学生の企業研修では、研修受け入れ先となる企業の探索と決定が何よりも先立つ問 題である。本コースは幸いなことに、学生の実践的な経営学教育に深い理解を示し、

そのために惜しみなく協力していただける企業を見出すことができた。研修先企業は 昨年度に引き続き、以下の日本企業2社の海外現地法人となった。手間のかかる学生 を受けて入れてくださり、企業研修のみならず、滞在生活面の細かなところまでお世 話していただいた受け入れ先企業、とりわけ現地子会社の経営トップ、現地研修担当 者の方々には重ねて御礼を申し上げる次第である。

研修先企業の1つ目は、わが国ゼラチン業界のトップメーカーである新田ゼラチン 株式会社(本社大阪)のインド子会社、新田ゼラチン・インディア(通称NGIL、Nitta Gelatin India Limited、以下NGILと略記)である。同社は1974年にインド・ケララ 州産業開発公社(KCIPL)との合弁で設立された会社である 3

3 NGIL の設立経緯と現地経営の特徴については、次を参照。梅野巨利(2012)「インドにおける日系海外子会社の自立

的成長―新田ゼラチン・インディア(NGIL)の事例―」大石芳裕・桑名義晴・田端昌平・安室憲一編・多国籍企業学

。NGILでの研修は昨年度

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3 に続き2度目である。

研修先企業の2つ目は、プレス機械・プラスチック成型の村元工作所(本社神戸市)

のフィリピン現地法人、MAPLE(Muramoto Audio-Visual Philippines, Inc.)である。

同社は1985年に設立され、主にオーディオ機器部品類の設計・開発・生産を行ってい る。昨年度、われわれは同社のタイ現地子会社METCO2で研修を行ったが、昨年9月の タイ大洪水の影響もあり、今年度は同社のフィリピン子会社が研修先となった。

今年度の派遣対象学生は合計9名である。男女別の内訳は男子4名、女子5名。国 籍別の内訳は日本5名、中国3名、ミャンマー1名である。派遣学生の研修先選択は、

宿舎の部屋割を考慮した男女別人数をこちらから指示した以外、基本的に学生たちの 自主的選択に任せた。その結果、インド班(男子2名、女子3名の合計5名、うち日 本3名、中国1名、ミャンマー1名)、フィリピン班(男子2名、女子2名の合計4名、

うち日本2名、中国2名)の2班が出発約3か月前に結成された。両班の引率担当教 員は、昨年度からの継続性を考慮し、NGILは梅野が、MAPLEは山口が、それぞれ担当 することになった。なお、インド、フィリピン、それぞれの入国査証取得、航空券チ ケット手配、海外旅行傷害保険等は、すべて学生の自己責任で行うこととした。とく に入国査証については学生の国籍によって条件が異なるので、時間的にゆとりをもっ て慎重に手続きを行うよう指導した。また、海外旅行傷害保険については、万一に備 えて救援費用特約を無制限で付保するよう指示した。

(2)事前準備学習

海外企業研修の事前準備として行ったことは、次の5点である。1つ目は派遣先国 の国情・歴史・文化等に関する基礎勉強である。2つ目は派遣先企業・業界に関する 事前学習であり、研修先企業の本社訪問・工場見学もこの中で実施した。3つ目は生 産管理に関する基礎勉強である。生産管理については本コースでも選択科目として「生 産マネジメント」が開講されているが、派遣学生の全員が必ずしも受講しているとは 限らないため、生産管理の基本教科書をグループ・プレゼン方式で報告し質疑を行う ことで理解を深めた。4つ目は日本、神戸、本学(MBA を含む)のそれぞれについて の英語紹介プレゼンの準備である。これらに関する英語原稿と英文スライドの作成、

ならびに英語プレゼン練習を行った。これはインドとフィリピンとも、海外企業研修 プログラムの中に現地の大学・大学院学生との交流プログラムが組み込まれているた

会著『多国籍企業と新興国市場』文眞堂、第11章所収、203-220頁。

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め、それに向けた準備である。5つ目は英語運用力を含むコミュニケーション・スキ ル向上のための事前訓練である。以上のうち、最後の5点目について内容を紹介する。

海外企業研修において最も重要なことは、現地への適応力であり、現地でのコミュ ニケーション能力である。相手の言うことを理解し、自分の考えを伝え、相互に意思 疎通を図ることができる最低限のコミュニケーション能力を身につけておくことは、

海外企業研修の大前提である。本コースでは、「フィールドスタディⅡ」の海外企業研 修の実施にあたり、学生のコミュニケーション能力、とりわけ国際ビジネスにおける 共通語としての英語の運用能力を向上させるための集中講座を、本学MBA開設当初よ り夏期と冬期に正規カリキュラム外の特別授業として開講していた。この集中講座を 今年度のカリキュラム改定において正規の必修科目とした。科目名称は「グローバル・

コミュニケーション」であり、配当年次と開講時期により、次の3つを用意した。「グ ローバル・コミュニケーションⅠ」(1年次夏期開講、1単位必修)「グローバル・コ ミュニケーションⅡ」(1年次冬期開講、1単位)「グローバル・コミュニケーション

Ⅲ」(2 年次夏期開講、1単位)。海外企業研修に派遣する今年度2回生は旧カリキュ ラムで履修を行っているため、上記の新科目を必ずしも履修する必要はないが、すで に彼らも1回生の時点から、「グローバル・コミュニケーションⅠ」「グローバル・コ ミュニケーションⅡ」に相当する科目を履修していた。今回は7月中旬から海外企業 研修出発直前の8月中旬まで「グローバル・コミュニケーションⅢ」を受講した。

「グローバル・コミュニケーションⅢ」は海外の企業経営の現場に派遣する直前訓 練という意味もあり、実践的で国際経営の現場で有用なコミュニケーション・スキル を磨いてもらうため、講師陣には国際経営経験の豊富な企業人にお願いした。今年度 はプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(以下P&Gと略記)のボランティア社 員数名がチームを組んで同科目を担当した。英語力のアップを目指すことよりも、異 文化環境のもと、さまざまなバックグラウンドを持った人たちとコミュニケーション をとるためにはどのような資質や態度が必要なのか、コミュニケーションの本質に迫 るテーマを設定し、世界有数の多国籍企業であるP&Gのボランティア社員たちが、本学 生のスキルアップに尽力していただいたことは、大変ありがたく、かつ得難く貴重な ことであった。なおP&Gボランティア社員による本科目の提供については、P&Gホーム ページならびに本学MBAホームページにて詳細が紹介されているので、そちらもご参照 いただきたい4

4 P&G ホ ー ム ペ ー ジ 。「 大 学 院 生 に 、 社 員 ボ ラ ン テ ィ ア が グ ロ ー バ ル ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 伝 授 」

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3.現地研修内容

インドのNGIL、フィリピンのMAPLEにおける研修内容については、研修先となる現

地子会社に素案作成をお願いし、それを元に当方からの要望・提案を提示し、研修内 容を確定するというプロセスをたどった。研修期間は両班とも13日間程度であるが、

両社の事業形態・事業内容により、以下に記述するように、それぞれ特徴ある研修内 容となっている。はじめにインドNGILにおける研修内容、研修受講後の学生コメント、

引率教員のコメントを順次記述する。続いてフィリピンMAPLEを対象に、同様の流れ で内容を記述する。

(1)インドNGILにおける研修内容

研修初日はNGILの本社事務所(Registered Office、通称RO、以下ROと略記する)

で研修開講式が行われた。NGIL 社長スシラン(G. Suseelan)をはじめ、同社主要部 門トップが勢揃いするなか、今回の研修受け入れの直接の担当者である人事部のサブ

(Sabu Augustine)の司会のもと、スシラン社長のウェルカムスピーチがあった。そ の要旨は次の通りである。研修に対するNGILの取組姿勢が明確に示されている重要な 内容であるので、多少長くなるが記載する。

「インド、ケララ州、コーチン、そしてNGILにようこそ。NGILはマルチスズキよ りも、さらに早くインドに進出してきた。みなさんの研修を受け入れるのは、今年で 2年目となる。昨年は初めての受け入れで、当社としてもいろいろ戸惑いもあったが、

今年は兵庫県立大学側からの要望も取り入れながら研修内容を改善してきた。今後も お互い相互交流を図りながら、よりよい研修プログラムを作っていきたい。NGILの研 修プログラムは、当社とSCMS(School of Communications and Management Studies:

現地の私立経営大学院)の両者が共同で作成している。研修生はSCMSで理論を学び、

NGILで経営の実践を学ぶ。理論と実践をうまく組み合わせてプログラムを組んでいる。

インドでは特に食事に気をつけて過ごしてほしい。みなさんにとって不慣れなものも 多いから、無理はしないでほしい。異文化環境でうまく自分を管理することが、より よいマネジャーになるための条件であることを覚えておいてほしい」。

スシラン社長の歓迎スピーチの後、さっそく研修が始まった。最初の研修テーマは、

NGILの企業概要ならびにゼラチン産業の概要説明である。この内容については、事前

http://jp.pg.com/topics/1210global/index.jsp。本学MBAホームページ。http://www.mba.u-hyogo.ac.jp/。

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に日本本社訪問時にも日本語による説明を受けていたので、学生たちは、ある程度、

内容は把握できたようである。午前の研修を終え、午後からは現地の経営大学院SCMS に研修場所を移し、同院の教授から経営戦略に関する講義を受講した。初めてインド で受講する英語講義、学生たちは、聞きなれないインディアン・アクセントの英語授 業に相当疲労し、教授から求められた議論にも、ついていくことができなかった。

研修2日目は、RO にて調達部門担当者による企業倫理の研修から始まった。NGIL が企業倫理をどのように捉えているのかを説明した後、同担当者が作成した2つのケ ースをもとに学生と対話型で研修を行った。しかし、ここでも学生の英語力の不足か ら、十分な議論が展開できずに終わってしまった。この日はちょうど、ケララ州の重 要なお祭りであるオーナムが始まった週であったこともあり、RO の玄関ロビーでは、

昼休みにスシラン社長ほか本社職員全員とその家族が集まり、オーナムの儀式が執り 行われ、われわれ学生一同もこれに参列した。インドの現地文化に直接接する貴重な 機会を研修2日目にして経験できたことは幸運であった。オーナム行事参列後、再び 研修会場に戻り、学生たちは同社財務担当者からNGILの財務諸表について説明を受け た。その後、再びオーナム行事に参加するため、われわれはRO屋上広場で行われた夕 食会に招待された。ケララ州の伝統的な食事であるバナナの葉の上に同州産のお米で あるケララ米が配られ、続いてそこに各種のカレーやピクルスが次々と盛られた。現 地の人たちはこれを手だけを使って巧みに口に運んでいた。われわれも「現地化」を 実践するため、スプーン、フォークを使わず、見様見まねで手を使って、この現地伝 統食をいただいた。一緒に食事をとっていた同社社員のご家族の小さな子どもたちは、

異邦人であるわれわれが慣れない手つきで食事をとる姿を面白がって終始笑って見て いた。彼ら彼女たちの素朴で素敵な笑顔が印象的であった。

研修3日目は現地滞在最初の休日の日曜日。われわれはサブの案内のもと、市内の 遺跡旧跡を巡った。

研修4日目は、NGILのオセイン事業部(Ossein Division、通称OD、以下ODと略記)

で研修を受けた。オセインはゼラチンの原料にあたるもので、同社の事業の原点であ る。ODROのあるコーチン市内から40キロほど離れた郊外にあるため、同所までの 所要時間は車で約1時間40分ほどかかった。しかも道路交通事情は日本とはかけ離れ ているため、通勤ドライブそのものが強烈な異文化体験であった。でこぼこ道路はも ちろんのこと、入り乱れる車とテュクテュク(オート三輪のタクシー)、二輪バイクと 自転車、急な割り込みと無理な追い越し、まるで音楽のように終始鳴りっぱなしのク

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ラクション、急ブレーキ。OD到着後、われわれ一同は、よくも無事に到着できたもの だと、胸をなでおろした次第である。これもまた貴重な体験的学習である。さて OD 到着後、われわれが最初に目にしたものは、会社正門前に列をなしている地元住民た ちであった。彼らはNGILが販売する野菜・果物類を購入するため集まってきていると いう。オーナムのこの時期、NGILは地域社会貢献活動の1つとして、地域住民に格安 で食材を販売しているのだという。ODの立地する地域は貧しい人たちが多いためとの ことであった。NGILCSR(企業の社会的貢献)活動を実際に目にできたわけである。

ODでは生産部門担当者から、オセインならびにゼラチンの生産プロセスについて概 説を受けた後、担当者が用意したケーススタディをもとに議論を行った。ここでも学 生の英語力の不足が目立ったが、それでもなんとか議論についていこうとする姿が見 えてきたことは引率担当者としては心強かった。午後からはオセインプラントの工場 見学を行った。見学後の研修テーマはCSRである。OD到着後に目にした地元住民の行 列そのものがCSRの1つであったが、このほかにも数々のCSR活動が写真を交えて紹 介された。

研修5日目はゼラチン事業部(Gelatin Division、略称GD、以下GDと略記)での 研修であった。GDは新田ゼラチン株式会社にとっての中核製品たるゼラチンを生産す る拠点である。昨日訪問したODから輸送されたオセインが、ここGDでゼラチンへと 加工・製品化される。GDの第1研修項目は情報管理部門担当者によるNGILにおける IT管理とセキュリティ対策についてであった。企業におけるITの必要性、NGILにお けるITシステムの構造とERP(Enterprise Resource Planning)の活用方法について 丁寧な解説を受けた。

研修6日目は上述したケララ州の最大のお祭りであるオーナム当日で会社もお休み であったため、われわれは同州の代表的な観光名物の1つであるハウスボートに出か けた。ハウスボートとは、小型の船舶にリビング、キッチン、ベッドルーム、トイレ 等が揃った一軒家のような船で、バックウォーターと現地では呼ばれる水郷地帯の河 川や湖を1日かけて(ツアーによっては船内宿泊を伴うものもある)ゆっくりと過ご す船舶クルーズである。インドに来てから不慣れな環境のもと緊張の連続であった学 生たちとって、このゆったりとした1日は心と体のよいリフレッシュとなった。

研修7日目は再び経営大学院SCMSにて、次の4テーマからなる授業を終日かけて受 講した。電子調達、インド自動車部品産業の現状と課題、国際マーケティング、部品 の輸入調達。英語に限らずどの言語についてもいえることであるが、スピーカーの話

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し方(音声、アクセント、スピード等)によって聞き取り難易度は大きく左右される。

ここインドにおいても、英語音声の個人差は大きい。とりわけ現地言語(ケララ州は マラヤラムと呼ばれる現地語)なまりの強い英語は非常に聞き取りにくい。加えてス ピーチ速度が上がると、もうお手上げである。今回のSCMS授業の受講においても、こ のことを学生たちは痛感した。NGILでの研修同様、SCMSでも教授の解説とケーススタ ディが組み合わされたが、やはりケース討論を行うには相当の英語力が必要であり、

学生はついていくのに必死であった。

研修8日目から10日目までの週末3日間を使って、NGIL研修担当サブのアレンジ で、インド最南端コモリン岬への2泊3日のフィールドトリップに出かけた。ここは インド洋、ベンガル湾、アラビア海の3つの海の合流地点でありインドでも著名な観 光スポットである。コーチン市内から自動車で休憩を含めて片道10時間近くかけてイ ンド最南端からインド洋寄りのカニャクマリという町に到着、同地で宿泊した。翌朝、

われわれはインド洋に上る朝日を見ることができた。同日夕刻には最南端を回って西 側へと向かい、今度はアラビア海に沈む夕日を荒波押し寄せる海辺まで入り込んで、

みな、ずぶ濡れになりながら大騒ぎで鑑賞した。インド洋とアラビア海の2つの大海 を前に日の出と日没の両方を鑑賞できた今回のトリップは、きわめて印象深く感動的 であった。学生たちの心の中に一生の思い出として残ることであろう。

研修11日目は再びGDにて研修を受講した。内容は、戦略的マーケティング、新製 品開発、品質保証で、いずれも関連ケーススタディを交えて担当者と対話型で行った。

研修12日目はSCMSにて学生交流会を行った。SCMSは本学MBAのビジネスイノベー ションコースと同様、企業勤務経験を持たない学部卒の学生を対象にしたMBAコース であるため、年齢層もわれわれの学生とほぼ同じで、双方の学生たちはすぐに打ち解 けた。交流会では、われわれの学生があらかじめ用意してきた英語スライドに基づき、

日本文化、神戸の街、兵庫県立大学と本学MBAコースの紹介をプレゼンテーションし た。その後、このプレゼン内容をめぐってインド側学生から多くの質問が寄せられた。

ここでも日本側学生の英語力不足もあって、必ずしもスムーズな討論とはいかなかっ たが、何かを伝えようとする意志だけは相手方にも理解され、和気あいあいとした交 流会となった。交流会終了後、SCMS側のはからいで日本食のケータリングサービスの ランチをごちそうしていただいた。日本人がほとんど滞在していないといわれるコー チン市で、まさか日本食に接する機会があるとは思ってもいなかったわれわれは、大 きな喜びと感動をもって日本食をいただいた。SCMSのホスピタリティに感謝するばか

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9 りである。

SCMSを後にしたわれわれは、再びNGILGDに向かい、マーケティング、新製品開 発、そして人事の3テーマの研修を受けた。とくに最後の人事のセッションでは、こ れまでのような担当社員による解説とケース討論という形をとらず、人事トップほか 3名の人事担当者が学生たちと人事問題をはじめ、インドにおける企業経営全般に関 するフリーディスカッションを行った。学生たちはこのセッション開始直前に用意し た質問をこれらの担当者に直接質問し議論を行った。ここで議論されたトピックスの 一例をあげれば、次の通りである。ケララ州のようなインド南部出身者とインド北部 出身者とでは人事管理においてどのような違いがあるのか。NGILにおける人事評価の 指標は何か。徹底した成果主義による評価なのか、あるいは年功制が色濃いのか。NGIL の企業方針は社員全体に対してどのような手段を通じて浸透させているのか。インド 的な人事管理と日本的な人事管理の違いは何か。このセッションでは、これまでにな いほど、学生たちは積極的に質問を投げかけた。回答するNGIL担当者も、ゆっくりと はっきりとした英語で回答してくれたことにより、学生たちの理解も深まり、大変有 意義なセッションを持つことができた。

このフリーディスカッションの後、われわれは今回の研修における最後のテーマで ある「インドの文化・宗教・遺産」について、地元大学の考古学専攻の教授から直接 講義を受けた。遺跡や発掘物などを含む多数のスライドをもとに、平易な英語でイン ドの歴史や宗教について説明をいただいた。その内容は奥深く、わずか2時間ほどの 講義では到底把握し切れるものではなかったが、学生たちは興味深くインド文化の解 説を聞いていた。

研修終了後、研修受け入れ担当者のサブが、われわれ学生一同を彼の自宅に招待し てくださり、豪華な家庭料理、もちろんすべてがインド料理の各種カレーで、もてな してくれた。NGIL研修の受け入れ担当者という役割を超えて、家族ぐるみの付き合い をしてくださったサブと彼の家族に、われわれは心から感謝して、彼の自宅を後にし た。

研修最終日は、今回の NGIL 研修全体を通して学んだことについて、学生一人ひと りによる英語プレゼンが行われた。同日午前中はそのための準備時間にあてられ、学 生たちはGDの会議室で、それぞれスライドとスピーチ原稿の作成に取り組んだ。午後 から予定されていた最終プレゼンは NGIL 経営トップ陣を前に行われることになって いたので、学生たちはかなり緊張した面持ちで作業に取り組んだ。英語でプレゼン資

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料をすべて作成しリハーサルまでこなすにはかなりの準備時間が必要で、学生たちは 同日NGILから用意されていた昼食もとらずに作業に集中した。NGIL側からは、プレ ゼン内容に次の3項目を含めることが指示されたほかは、形式等は自由であった。内 容は、SCMS での受講を含めたNGIL研修内容全体についての感想、インドにおける滞 在生活面における感想、来年の研修プログラムに向けての要望・改善案の3点である。

午後3時から場所を RO へと移し、今回の参加学生5名による最終プレゼンが始ま った。学生プレゼンに先立って、引率担当の梅野がNGIL側に対して研修受け入れに対 する謝辞と、昨年度の研修と比較しながら今回の研修プログラム全体についてのコメ ントを行い、来年度に向けた改善提案についてプレゼンした。続いて参加学生5名が 順番にインド滞在中の写真を多用しながら、それぞれの感想を英語で伝えた。少ない 準備時間の割には、みなそれなりにまとまったプレゼン内容であったが、スピーチ・

リハーサルの不足のため、スピーキングに多少難が感じられた。それでも彼らの伝え たかった意図は、経営陣には理解してもらえたようである。こうしてNGILを舞台にし た研修は終了した。

日本への帰路、われわれはインド北部のラジャスターン州ジャイプールを訪問した。

州都であり多くの遺跡が残る観光都市ジャイプールはインド南部のコーチン市とは街 の光景も大きく異なり、そこで出会う人々の顔つきや表情までもが異なって見えた。

ジャイプール訪問前にNGILのスタッフに、インドの北部と南部とでは、多面にわたっ てかなり違いがあるからよく見てくるように言われていたが、その通りであった。わ れわれはインドの奥深さ、多様性をこの目で確認できた。滞在中、NGILスタッフやSCMS 教授陣が口にしていた「Unity in Diversity」(多様性のなかの統一性)の意味の一端 を垣間見ることができた収穫は大きい。2泊3日のジャイプール見学を終え、われわ れは無事に帰国の途についた。

(2)学生の感想

最終プレゼン内容ならびに研修期間中の対話から、学生たちは今回の研修全体につ いて、およそ次のような感想を持っていた。はじめに研修内容全体であるが、日本語 を一切使用しない100%英語で行われるNGIL研修についていくためには、事前にかな りの英語力が必要であることを痛感したということであった。とりわけ日常会話では ない英語力、すなわち経営活動に関する説明やSCMSでのケース討論における議論にな ると、相手の言うことをすぐに聞き取り内容を理解し即応できるだけの会話力が必要

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であり、そのためには、事前に相当の練習と訓練が必要であることを理解したようで ある。日本において事前に英語研修を受けてきた彼らであるが、研修についていくた めには、まだまだ力量不足であることを再認識したと同時に、いっそうの英語学習に 励みたいとの意志表明があった。

インド滞在生活全般については、学生全員が目一杯インド滞在を楽しんだとのこと であった。昨年同様、学生たちは同一部屋(リビング・キッチン共同、寝室・シャワ ー等は2人部屋で共有)での2週間近くの共同生活をおくったが、不自由さは感じな かったという。むしろ宿舎で行った共同学習や語らいを大いに楽しんだようである。

インド滞在中もっとも印象深いものとして、全員がインド最南端へのフィールドトリ ップをあげた。昨年もフィールドトリップが組み込まれていたが遠方の山岳地への1 泊2日旅行であったため、学生たちは相当疲労した。今回は、景色の素晴らしさに加 えて、旅行期間が1泊多いことで、ゆとりをもった計画を組めたことが旅を楽しめた 大きな理由と考えられる。来年度の研修に対する学生からの要望として共通していた ことは、学生交流会の時間をもっと増やすことであった。同年代のSCMS院生たちとの 交流会は、わずかな時間であったものの、これを通じて学生たちの間には友情が芽生 えたようである。

(3)引率教員の感想

NGIL研修最終日の学生最終プレゼンでは、学生による報告に先立ち、インド班引率

教員の梅野から、今回の研修内容について昨年度の研修と比較しながら次の点を中心 に総括報告を行った。まず、昨年度の研修プログラムよりもかなり大きな改善があっ たことである。とりわけ際立った改善点として、昨年に比べて圧倒的にケース討論の 時間が増えたことと、それに伴って、研修においてNGILスタッフとの対話時間が格段 に増えたことである。昨年度は研修初年ということもあり、NGIL側も研修内容や研修 方法について戸惑いも多く苦労したようで、担当社員による講義形式の研修が主体で あった。今年は、梅野からの要望、すなわち、ケーススタディを中心とした双方向授 業を取り入れてほしいという提案をNGIL側は受け入れてくれた。結果として、豊富な ケーススタディと対話型研修へと、大きく研修スタイルが変わった。第2に、研修ス ケジュール全体が余裕をもって組まれるようになったことである。昨年はタイトで過 密な研修スケジュールで、学生たちは研修プログラムについていくだけで、かなり疲 労したが、今年は研修項目を減らし、1項目にかける時間を長くすることで、研修担

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当者との対話時間や質疑時間が増えたことで、研修内容に対する理解も深めることが できた。第3に、フィールドトリップの行先選択が風光明媚なインド最南端コモリン 岬で、旅行行程も適当であり、学生一同、大いにインドの多様性と文化を研修できた ことである。

反面、研修を通じた反省点として、次の諸点を指摘した。第1に、なんといっても 学生の英語力の向上が、このNGIL研修にとっては必須の前提条件であることである。

すべての研修が英語のみで、しかもスピーカーによって多様なインディアン・アクセ ントで繰り出される英語音声とスピードについていくのは、正直言って、引率教員で すら大変であった。まして実践英会話に不慣れな学生たちにとっては、研修担当者の 音についていくだけで精一杯であったというのが正直なところである。学生たちは、

インディアン・イングリッシュのシャワーを浴び続け、ずぶ濡れになった。学生たち は海外研修に先立って、英語集中講座を3度にわたり受講してきているが、やはり NGIL研修についていくだけの英語運用力は短期間の集中講座では不十分であり、日常 的に英語を使った授業(英語による授業実施や英語のみで行うケーススタディ討論等)

を日本にいるときから実施しておく必要があることを痛感した。第2に、研修で使用 するケーススタディの事前送付を今後の改善点としてお願いした。今回の研修では一 部のケースについては出発2週間前くらいに手元に到着していたが、出発直前に配布 されたものもあり、こちらの準備が追い付かなかった。余裕をもって事前準備をする ためにも、研修開始1カ月前にはケースが到着していることが望ましく、この点を要 望として伝えた。最後の要望は学生交流会の時間延長である。学生にとっては同年代 のインド人学生たちとの交流が最も印象的であったようである。学生交流会の時間延 長については今年度の研修要望として伝えていたが、SCMS側のカリキュラム都合によ り時間を割くことができなかったとのことである。SCMSの学生にとっても、日本人学 生との交流は貴重な異文化学習・国際交流の機会となると思われることから、この点 についてはぜひ、来年度に向けて検討してもらうようお願いした。

(4)フィリピンMAPLE研修

研修初日は、セブ市内の英会話学校で英語研修1日を行った。「クラッシュ・イング リッシュ・クラス」(Crash English Class)というタイトルの下で、英語の特訓コース を午前・午後と実施した。このクラスは、事前協議のなかでMAPLEから提案されたも ので、フィリピンで研修を行う上での肩慣らし的な側面を持っていた。サン・カルロ

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ス大学で授業を担当している講師をMAPLEにアレンジしてもらった。クラスは、午前 2時間、午後4時間の合計6時間実施した。この研修において必要最低限の英語を再 確認することができた。英語研修終了後、MAPLE の村元忠志社長主催のウェルカム・

ディナーにご招待頂いた。この研修をサポートしてくれる日本人のスタッフを紹介い ただいた。合わせて、村元社長から、参加学生に対する期待ともに、約2週間の研修 を楽しむこと、積極的に取り組むことという研修における心構えをご訓示頂いた。

研修2日目はMAPLEFactory 2で、午前中にMAPLEの企業概要、生産ラインの見 学を行い、午後に研修全体を通じての安全講習および工場内での安全についてのレク チャーを受けた。MAPLE の新入社員および海外出生者が受ける内容であった。MAPLE の安全担当の社員よる英語でのレクチャーであったが、パワーポイントの英語表記、

および、渡部工場長よる日本語での補足説明で、理解を得ることができた。研修中の 安全確保という点と同時にMAPLEの安全に対する意識の高さを知ることができるレク チャーであった。

研修3日目はFactory 1を訪問し、午前中に生産ラインの説明を聞き見学を行った。

午後、生産管理についてのレクチャーを受けた。日本語によるレクチャーを受けた後、

Factory 2 のスタッフから実際の業務フローについての説明を受けた。英語での専門

的な説明であったが、日本人スタッフが英語で質問し、補足説明を促しくれたことで、

Factory 2での生産管理の業務フローについての理解が促進された。加えて、Factory

2 における適正な部品在庫に関係する業務フローについてどのような改善提案をする という課題が出された。

研修4日目は前日同様にFactory 1を訪問し、前日に提示された課題に取り組んだ。

午前中、Factory2のスタッフとのミーティングを行い、課題解決に向けて必要な情報

収集を行った。午後から学生間でのミーティングを実施し、改善提案に対する意見交 換および発表内容についてのまとめ作業を行い、部品在庫の問題に対する改善提案に ついてのプレゼンテーションを行った。

研修5日目は、アテネオ・デ・マニラ大学セブ分校のMBAクラスに参加した。土 曜日に開催されているMBAのオペレーション・マネジメントの授業で、学生は社会 人というクラスであった。午前中のレクチャーでは、社会人のクラスということで実 践的な課題に対するディスカッションが交わされる授業で学生自身の英語力に加え て、知識の面でも授業についていくことがやっとという感じであった。授業終了後、

学生交流のためのランチがあり、食べ物等の話題でフィリピン人学生との交流ができ

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た。午後は、MBAコースの学生のファクトリー・ビジットに同行する形で、MAPLE

Factory 2の工場見学と、セブ国際空港の新施設の見学(雨天のために、マネジャ

ーからレクチャー受ける形となった)を行った。

研修6日目は日曜日でMAPLEは休日であったが、MAPLEの日本人スタッフにアテン ドしてもらって、セブ島のリゾート地での海水浴を行った。綺麗なビーチサイドで過 ごしたことで、学生のリフレッシュにつながった。

研修7日目はFactory 2で、Factory 2で実施されている生産管理の状況について レクチャーを受けた。午後から、生産計画、在庫発注計画について説明を受け、現在 抱える課題、つまり、部材によっては実際に使用する数ヶ月前に発注をかけないと調 達できない部品があり、これに対する対策について課題を提示された。最終報告まで に、この課題についての解決策についての提案を行うことになった。

研修8日目はFactory 1の最終訪問日となった。午前中はFactory 1での生産活動 について、林工場長に質問し、討論を行った。林工場長とのやり取りの中で、疑問に 思った工程や見逃した工程については午後から再度訪問した。午後は、Factory 1 課題をどのようにとらえるかと点を、学生間のグループディスカッションを通じて明 らかにし、Factory1の課題について林工場長へのプレゼンテーションを行った。

研修9日目はFactory 2で実務体験を行った。フィリピン人女性マネジャーの指導 のもとで、プレスマシンの操作方法と機会操作の体験をした。その後、品質管理(QA)

部門に移り、実際の部品の検査方法を体験した。実務を経験する場面では、フィリピ ン人スタッフから直接英語で指導を受けた。午後からは、渡部工場長から工場の現状 についてのレクチャーを受けた後、渡部工場長に対する質問をし、さまざまな点につ いてのディスカッションを行った。

研修10日目はFactory 2で、金型のメンテナンスについてのレクチャーを受けた

後、実際に金型のメンテナンス体験を行った。金型をばらして、組み立てる作業を通 じて、実際の実務が教室の議論で考えていた以上に複雑でスキルが必要な仕事である ことを認識することができた。午後は、昨日に引き続き渡部工場に対していくつかの 点についての質問を行った後、最終プレゼンテーションに向けて、学生によるディス カッションを行った。

研修11日目はFactory 2で、午前中、研修の最終プレゼンテーションに向けて、

最終的なディスカッションとプレゼンテーションシートの英文の訂正を行った。午後、

村元社長をはじめ、MAPLEの日本人スタッフおよびフィリピン人スタッフ向けに、最

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終プレゼンテーションを行い、いくつかの提示された課題に対する解答を試みた。加 えて、発見した課題に対して、学生のアイディアに基づく提案を行った。最終プレゼ ンテーションの評価としては、提案が十分に受け入れ可能とは評価されなかったが、

短時間で課題を抽出し、その課題に対する解決策を提示したことに対して一定の評価 を頂いた。

研修12日目はこれまで行けなったセブ市内の教会や砦などの歴史建造物とともに、

サブ島の文化を紹介したミュージアムを、MAPLEのフィリピン人スタッフの案内で観 光した。セブ島やフィリピンの歴史、日本とフィリピンとの関係などこれまであまり 意識していなかった日本とフィリピンとの関係を知る機会となった。夕食はフェアウ ェル・ディナーとして、村元社長から招待を受けた。村元社長より今回の経験を活か して、国際的に活躍できるビジネスパーソンになって欲しいという言葉を頂いた。

最終日は飛行機の出発まで時間があったことから、MAPLEのフィリピン人スタッフ の案内で、フィリピンの人が遊びに行く施設に出向き、フィリピン人の休日の過ごし 方の一端を経験した。釣り堀やフィールド・アスレチックのような設備がある施設で 出発までの時間を過ごした

(5)学生の感想

学生の感想としては、研修そのものは楽しく勉強できたというものであった。MAPLE のスタッフから提示された課題や最終プレゼンテーションに向けて、寝る時間を惜し んで勉強した経験は学生たちにとって貴重な経験になったというものであった。合わ せて、フィリピンという違う文化のなかで、2週間余り生活して、日本との違いを実 感できたことは大きかったようである。日本で当たり前にある便利な生活がフィリピ ンでは非常に高価な生活であるという理解を得たようである。

また、最も多かった感想が自身の英語力の低さに関するものであった。フィリピン 人スタッフとの会話やインタビューによる情報収集が上手くできなかった。アテネ オ・デ・マニア大学の授業についていけなかった。質問に対する答えができなかった。

学生の会話が十分にできなかった。このような、各種場面で、英語で話す、質問する、

という基本的な部分ができなかったことについての悔しさが学生から聞かれた。

最後に、約2週間の共同生活を通じて、学生の自身の生活態度等について反省も聞 かれた。自分本位になりがちだった点、フィリピン人スタッフが進めてくれたことを やらなかった点など、チームでの活動に必要な思いやりや配慮に欠ける部分が自分に

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16 はあったと述べる学生が多かった。

(6)引率教員の感想

村元社長をはじめとするMAPLEスタッフの協力のおかげで、非常に有意義な研修と なった。昨年との違いとして、初日に英会話のコースに参加した。この新しい試みは、

学生がスムーズに研修に入るきっかけとなった。フィリピンは英語クラスが日本と比 較すると非常に安価で豊富ということで実施できた。フィリピン以外では、マレーシ アなどが同様な環境と考えられるが、そのほかの国で研修する場合は、英語クラスの 利用は難しいように思う。ただ、語学クラスから入ることは研修を進めるうえでは、

プラスの効果があるということが今回わかったので、他の国でも、その国の言葉を促 成に学ぶクラスを活用する方法については模索したいと思う。

2つ目の違いとして、学生がある程度のリラックスできる環境を提供できたことが 大きかった。特に、研修6日目の海水浴は学生をプレッシャーから解放し、研修の折 り返し地点で、学生の気持ちをリフレッシュできた点は大きかった。結果として、病 気で研修を休む学生は出ず、集中力を維持することができた。以上のようなことを含 めて、研修プログラムの運営方法としては多くのノウハウを獲得していると実感でき た研修であった。

このような形で実施した研修であるが、いくつかの課題も抱えていると感じた。1 つ目が学生の英語力強化の必要性である。海外研修前の準備授業、および、集中講義

「グローバル・コミュニケーション」を本研修に向けての英語力強化の場とした。し かし、プレゼンテーションの現場ではほとんど英語が使用できていなかった。アテネ オ大学との交流に際しても、食事の場面でどうにか話ができた程度であった。また、

1つの方策として、学生の中で英語が最も得意な学生に発言を任せて乗り切ろうとし た。しかし、その学生は十分に内容を理解しているわけではなく、チームとして発言 したい内容と発言がずれていくという点も見られた。いかに学生の英語力をあげてい くかが今後のポイントであるといえる。ただ、授業だけで語学力をあげることは不可 能であり、普段の学生の努力が求められることになる。そのために、いかに学生をモ チベートして語学力アップに取り組ませるかが大きな課題であるといえる。

そして、2つ目の課題として、コンサルテーション・プロジェクトを実施する上で 必要となる論理力の一層の強化が必要である。いくら語学力が上がっても、コンサル テーション・プロジェクトである以上、研修先企業に納得してもらう提案をすること

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が重要である。この点については2つの点での強化が必要であると感じられた。1つ はプレゼンテーションのスキルである。短期間でプレゼンテーションを行うために、

十分な練習時間がとれるわけではない。その短い時間の中で、伝えたいことを聴衆に わかりやすく伝えていく能力の養成していかなければならないと感じた。もう1点は 提案の源泉となる知識の応用力である。現実の問題に取り組む際に、どのような見方 をするのかという場合に、現実の問題をどう考えるかという視点にとらわれて、現実 に起こっていることを理論的に解釈しなおしてみるという作業がなされておらず、理 論的な裏付けのない非常に浅い提案になってしまう傾向が見られた。学んだ理論と現 実の問題に応用する力が不足していたと感じられる。ケーススタディ等の教育方法を 通じて、理論と現実の相互作用ができるような教育上の工夫が今後一層必要であろう。

4.帰国後のフィードバック

インド、フィリピンの両研修班が帰国したのち、われわれは3つの形でフィードバ ックを行った。第1は、研修出発直前にP&Gボランティア社員に実施して頂いた「グ ローバル・コミュニケーションⅢ」の授業効果に関するフィードバックである。これ は授業を直接担当した同社社員側からのイニシアチブで開催された。第2は、学内に おいて開催した帰国報告会である。これは来年度研修を受ける予定の1回生全員を前 に、各班が研修で何を学び、何を次年度研修学生に伝えたいかを確認する場である。

第3は、研修先企業本社における最終報告会である。これは研修を受け入れてお世話 を頂いた両企業に対するお礼と研修成果の報告である。

(1)「グローバル・コミュニケーションⅢ」フィードバック

両研修班が帰国して間もなくの2012914日に、同科目を担当したP&Gボラン ティア社員と海外研修参加学生との間で、研修を終えて本科目がどの程度役立ったの か、授業内容や授業進行において何が今後の課題と改善点になるかを話し合った。イ ンドとフィリピンとでは、研修において英語の使用頻度が異なるため(インドでの英 語使用度は100%、フィリピンは50%程度)、学生のコメントも異なるものであったが、

共通していたことは、本科目で最も重点がおかれたこと、すなわち「コミュニケーシ ョンとは行動することであり、自信をもってコミュニケーションを行うこと」「何か を伝えようとする際、難しい単語を思い起こそうとするのではなく、簡単な単語を探

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して自分の言いたいことを伝えること」、この2点は学生たちが研修中、絶えず頭の中 にあったことであったと感想を述べた。インド班引率担当の梅野からは、本コミュニ ケーション講座は確かに異文化コミュニケーションの心構えと態度の形成には有益で あったが、やはり学生の英語運用力の不足が目立っており、コミュニケーション・ス キルの前提となる基礎英会話力の引き上げが必須であったとの指摘がなされた。フィ リピン班は英語使用度が少なかったこともあり、さほど大きな問題は認識しなかった ようであるが、それでも現地トップ陣を前にした学生最終報告会での英語プレゼンで は能力不足が露呈したようで、インド、フィリピン、両班ともに英語運用力の底上げ が必須課題であることを認識した。

これらの学生・教員からの感想に対し、P&G ボランティア社員からは、今回の授業 の狙いが英語の運用能力の向上にあったのではなく、コミュニケーションの本質とは 何であり、異文化背景を持った多様な人たちとコミュニケーションを図る上でどのよ うな資質が必要なのかを体得してもらうことにあったとし、英語力そのものの向上は、

別な授業機会を通じて鍛錬してもらいたいことが伝えられた。また、インド班研修で は、英語によるケーススタディが多数実施されたため、今後は、シチュエーション別、

たとえば、アカデミックスタイルの場面、企業説明の場面、日常生活における場面等 に分けた講座内容も検討していくことが伝えられた。同社には後期も引き続いて「グ ローバル・コミュニケーションⅡ」の授業も担当していただく予定になっている。今 回の研修結果を踏まえ、より効果的な授業展開が期待される。

(2)学生帰国報告会

20121010日、来年度海外企業研修に派遣される本コース1回生全員の出席を

得て、今回の研修について学生帰国報告会を開催した。フィリピン班、インド班、そ れぞれがスライドやビデオ映像を駆使しながら、自分たちが行ってきた具体的な研修 内容と現地での最終プレゼン内容、現地での生活環境、今後の研修内容に対する要望、

後輩たちへの助言を行った。後輩たちは興味深く先輩たちの体験談を聴講し、次年度 に自ら体験することになる海外企業研修を疑似体験していた。

(3)本社帰国報告会

インド班、フィリピン班ともに、帰国から約1ヶ月後にそれぞれ研修受け入れ先と なった企業を訪問し、経営トップを前に研修受け入れのお礼と研修成果の報告を行っ

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19 た。

フィリピン班は20121016日、村元工作所西神本社を訪れた。学生の研修成果 報告に対して、同席していただいた経営トップからは次のようなコメントを頂いた。

まず、英語も重要であるが、英語以上にコミュニケーション力を磨くことが国際ビジ ネスにおいては重要であるという指摘がされた。英語だけを理解しても、仕事上のコ ミュニケーションがとれたとは言えない。英語プラス現地環境の理解、コミュニケー ションをとらなければならない人がおかれている環境を理解して、言い換えれば、相 手に対する思いやりをもって話ができなければ、本当のコミュニケーションは成立し ないということであった。また、学生の行った提案については、問題の現象面の理解 だけでなく、その背後にある事情にも目を向けたものでないと受け入れることが難し い、という指摘なされた。しかし、短時間で、MAPLE の事情をよく理解し、提案まで こぎつけた点は評価できるというものであった。

インド班は1018日に新田ゼラチン株式会社八尾工場を訪れた。学生の研修成果 報告に対して、同席いただいた同社のトップ陣からは次のような感想・コメントがな された。まず、コミュニケーションツールとしての英語力の強化は今やビジネスにお いて必須であるため、若い今のうちから英語力を磨いておくよう励ましを受けた。ま た、同社が昨年末に上場したことに伴い、今後、同社の企業情報の開示量も増えるの で、学生の研修の事前学習にあたって、同社の経営問題に関するデータに基づいた学 習がより効果的に行えるのでないかとの指摘がなされた。さらに、このような学生企 業研修は、インドのNGILにとっても、有意義な異文化学習の機会になっているとの指 摘もあった。つまり、われわれ日本人学生が研修生としてインドを訪問することは、

新田ゼラチン本社の日本人社員が訪問するのとは、また別の視点で彼らインド人スタ ッフが日本人を受け止める機会になるということである。

5.実りある海外企業研修に向けて

本年度で2年目を迎えた海外企業研修。まずは学生全員が研修に参加し無事に帰国 できたこと、彼ら自身が研修を通じて海外での企業経営の現実を五感で感じとったこ と、反省も込めてさまざまな思いをそれぞれの脳裏に描き考えたこと、それだけでも 海外企業研修はそれなりの意義があったと考える。近年、「グローバル人材の育成」を 旗印に海外研修を行う大学・機関等が増えている。ただし、短期間の研修では修学旅

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