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現代中国の都市における夫婦関係に関する考察 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)現代中国の都市における夫婦関係に関する考察 ― 平等性の視点から ― キーワード:夫婦関係、市場経済、平等性、格差、妻の意思決定関与度、妻の家事遂行関与度. 発達・社会システム専攻 馮 暁軍 1.序章 夫婦関係は、人類社会においてもっとも重要な社会関. より大いに支えられてきた男女平等な夫婦関係はどのよ うな変容をとげるであろうか。. 係であり、家族の中で親子関係と並んで中核的な家族関. 本論文の目的は、市場経済の設立と発展を背景に、相. 係である。夫婦関係におけるお互いの調和と協働性は全. 互作用論的パースペクティブから、中国の都市における. 体社会の再生産にとって非常に重要な機能を持つ。家族. 夫婦関係の現状を分析し、その規定要因を究明すること. における民主と平等、そして家族の幸せは、家族メンバ. である。本論文では、社会学的な角度から、定性的な分. ー間の平等、特に夫婦間の平等の程度によってきめられ. 析方法と定量的な分析方法を併用して、既存文献や統計. る。. 的なデータと実際に行った調査で収集してきた一次デー. 中国では、改革・開放政策がスタートした 1978 年 12. タをもとにして、夫婦関係の現状を分析し、夫婦関係に. 月からの 20 数年間において、著しい経済成長を遂げた。. ついて総合的に考察を深める。市場経済の進展や人々の. 経済発展と社会の激動に伴い、中国の家族の変動と革新. 意識における「惰性」などによる夫婦の平等関係への影. は、これまでのどの時代の変動よりもおおきい。さらに. 響を重視し、夫婦間の合理的な平等性に基づくパートナ. 1992 年以降の、市場経済への社会主義体制を維持したま. ー関係を土台にしている近代的な家族関係を構築すべき. までの移行という大きな社会変動の中で、当然効率優先. であるとの結論に到達する。. 主義や利益追求優先主義が生じていると考えられる。こ. 使用している主な既存資料とデータは、 『世紀之交的. のことはそれまでの社会主義的家族のあり方にどのよう. 城郷家庭』 (楊善華、瀋崇麟 1999)と『第ニ期中国婦女. な影響を及ぼしているのであろうか。本論文は、こうし. 社会地位抽様調査主要数据報告』 (2001)で公開されたも. た今日の中国社会の変化のあり様を、都市生活の基盤に. のである。その分析と考察をふまえて、2004 年 8 月に中. なっている都市家族に焦点を当てて、夫婦関係を考察す. 国の改革開放都市―青島市で、 『青島市婚姻家族意識に関. ることを通して、捉えようとするものである。. するアンケート調査』を行い、さらに分析を展開した。. 1949 年中華人民共和国設立以来、中国の家庭内におけ る夫婦関係は、国の政策的な保障により、 「男女平等」と いう目標へ邁進している。夫婦関係は「平等かつ独立的 なパートナー関係が主流となっている」(徐,『社会』. 2.現代中国の都市家族における夫婦関係の現状 2004 年 8 月に中国の東部沿海開放都市―青島市で行っ. 1992.1) という結論も今までの研究でまとめられている。. た「青島市婚姻家族意識に関するアンケート調査」のデ. 伊田広行(1993)によると、夫婦関係のあり方は、資本. ータをもとに、既存文献のデータと比較しながら夫婦関. 主義とそれに呼応した近代国家の社会政策のあり方によ. 係を分析した。. って規定されている。中国の家庭内における夫婦の平等. まず、回答者の社会的属性について、全般的に女性、. 性も中国の国家政策と密接な関係がある。中国の経済体. 有業者、義務教育とそれ以上の学歴をもっている人の比. 制が計画経済から市場経済へと移行するにあたり、改革. 率が高い。男女の収入格差が極めて明瞭に捉えられた。. や利益構造の調整を強く推進したことと、伝統的な「男. さらにこれに結びつくとみられる職業構造の違いや教育. 尊女卑」思想の影響のため、男女間、女性階層間におけ. などにも関連が認められた。これは当然ながら、本論文. る発展の格差が深まったという事実は、いままでの研究. の分析において、回答者たちが営む家族生活にも反映す. でもすでに知られている。そうした過程で特に女性の就. ると予想される。他方、家族生活、夫婦関係、意識が、. 業形態や保障システムが大きく変化してきた。既婚女性. このような経済条件の違いとは対応しない結果を示す場. の職業進出の状況の変化につれて、いままで国の政策に. 合は、それがどのような要因や条件に由来することにな.

(2) るかということもまた分析や解釈の焦点になっていくで. 立は、女性の家族内での実権を握ることにつながる。こ. あろう。. のような女性の就業化と経済的な独立は、女性自身のも. そして、青島市のデータと 1998 年に中国で行われた. つ資源を効率的に活用することを可能にし、家庭内にお. 「現代中国城郷家庭研究質問紙」調査の単純集計データ. ける男女間の格差を最大限に縮小させることになったの. (上海市) (楊善華、瀋崇麟,1999)と比較して、青島市. である。中国における女性の継続就労は、女性の独立性. の夫婦関係を全体的に把握した。結果としては、青島の. そして夫婦関係に平等性に大きな支援を与えている。. 家族における夫婦関係は、ほぼ上海の家族と同じ趨勢を. 3)伝統的な役割分業意識と男女平等の思想. 呈している。全体的に中国の都市(上海/青島)家族にお. 家庭内における家事分担は、いまだに不平等なところ. いて、夫婦関係は、平等、調和、譲り合える関係にある。. がある。中国の家族において、夫も家庭内で比較的に多. 夫婦関係に対して満足している家族が圧倒的に多い。ま. くの家事を行っているが、女性のほうは家事の負担がも. た、家族内の権力モデルは平等で、夫婦共同で家庭の実. っと多い。しかし、このような「不平等」な役割分担に. 権を握る家庭が主導的である。妻が家庭内で握っている. 対して、調査では、女性達は、 「不平等」だとは評価して. 実権は、主に、妻の日常的な支出の支配権であらわれて. いなかった。女性がこうした分担の現実を受け入れてい. いる。しかし役割関係において、全体的に夫婦共同でや. るのは、 「男は外、女は内」とみなす社会が依然として存. っている家族は相当な割合を占めているが、全体的に、. 在することがもちろん背景の一つとなっている。. 「主に妻」及び「妻のほうが多い」家族は、「主に夫」 及び「夫のほうが多い」家族より、多いことも示されて いる。夫婦間の家事分担には、まだ不平等なところがあ ることは明らかである。役割関係は、「男は、仕事、女 は、家事+仕事」という構成になっている。 中国の女性の家庭内における地位が急速に向上した 背景には、社会的要因が存在している。. 3.中国の都市家族の夫婦関係における諸問題 青島市のデータを中心に、中国の市場経済導入後、男 女間の収入の格差の拡大により、夫婦関係への影響を分 析した。男女間の収入の格差により、稼得パターン4類 型を定義した。具体的には、下記の通りである。. その主な理由は:. (夫の平均月収―妻の平均月収)平均月収差≧1000 元. 1)法制度と国家による政策的保障 ―平等性―. (夫―妻). 中華人民共和国成立後、女性解放、男女平等の理想を. 0 元<(夫の平均月収―妻の平均月収)平均月収差<1000. 24%. 政治目標として、政策化されている。中国では、このよ. 元. うな、男女平等の基礎は、国家により行政を通じて実現. (夫の平均月収―妻の平均月収)平均月収差=0 元. したのである。たとえば、 「同工同酬」 (同一労働、同一. 26%. 賃金)政策は、中国の憲法でも、 「労働法」 、 「婦女権益保. (夫の平均月収―妻の平均月収)平均月収差<0 元. 障法」などにそれぞれ明記されている。つまり中華人民. 15%. 35%. 共和国成立時の封建社会から近代社会への転換期におい. その次に夫婦間における勢力構造を反映している妻. て、 男女に関する規範意識の切り替えに、 国家の政策は、. の意思決定関与度、役割関係を反映している妻の家事遂. 大いに貢献したわけである。 日本で、 「明治の近代国家が. 行関与度に対して、性別、年齢、学歴、月収、夫婦学歴. 社会を再編していく中で家族及びその中のジェンダー関. 差、夫婦月収差、性別役割分業意識と七つの独立変数を. 係を変容させ、そして変容された家族及びジェンダー関. 用いて、回帰分析によって、その規定要因を分析した。. 係を拠点として人々は自発的にリスペクタブルな国民. この回帰分析からは、性別役割分業意識変数が妻の意思. (あるいはリスペクタブルな妻/夫) として自己を形成し. 決定関与度を規定する要因としてはもっとも有効である. ていった」 (牟田,1996)とするなら、中国では、旧中国. ことがわかる。そのつぎには、性別、妻の教育資源(夫. から新中華人民共和国へ、封建社会から近代社会への転. 婦の学歴差) 、平均月収、妻の経済資源(夫婦の月収差). 換期において、国家がこれらの一連の法律、政策、行政. の順に規定要因として有効となっている。これらの変数. 手段により、人々の意識、家族及びジェンダー関係を変. のなかで、性別変数は、負の効果をもっている。すなわ. 容させたといえるのであろう。. ち、性別役割分業意識が革新的であるほど、妻が夫に対. 2)共働き夫婦における女性の継続就労で確立された 女性の相対的な独立性―平等性 中国におけるこのような女性の職業化と経済的な独. して相対的学歴資源が高いほど、また月収が高いほど、 妻の意思決定関与度が高い。 妻の相対的資源については、 夫婦間の学歴差が大きいほど、月収差が大きいほど、妻.

(3) の意思決定関与度も高い。教育資源の方が妻の意思決定. 妻の家事遂行関与度に対して、正の効果がある。すなわ. 関与度への影響がもっと効果的である。また、年齢が若. ち、妻の相対的経済資源が少ないほど、伝統的な性別役. いほど、妻の意思決定関与度が高い。学歴や収入が高け. 割分業意識を持つほど、年齢が高いほど、妻の家事遂行. れば、家庭内における妻の意思決定関与度も高くなる。. 関与度が高くなる。全体的にみて、妻の夫に対する経済. 結果は、R2 値にも示されており、この数値によれば、こ. 的な資源ともいえる妻と夫の月収差は、妻の家事担当度. の概念モデルに含まれた説明変数以外にも妻の意思決定. への影響が一番大きい。この分析モデルでは、妻の家事. 関与度の規定要因が存在する、ということになる。. 遂行関与度に対する説明力はあまり高くはないが、各独 立変数と従属変数間の関係はこれでわかる。また、この. 表1 妻の意思決定関与度に対する回帰分析. つぎは、本論文において、近年中国の既婚女性に現れ. Standardized Coefficients Beta. Sig.. 性別. -0.049. 0.247. 年齢. -0.019. 0.655. 本人学歴. 0.023. 0.611. 平均月収. 0.037. 0.436. 夫婦の学歴差 A. 0.048. 0.24. 夫婦の月収差 A. 0.025. 0.545. 性別役割分業意識. 0.057. 0.158. 独立変数. モデルに含まれていない規定要因がある。 ている「専業主婦志向」について分析した。 (女性対象者 のみ) 表3 「専業主婦志向度」に対する回帰分析 Standardized Coefficients Beta. Sig.. 0.023. 0.679. -0.137**. 0.035. 学歴差 A. -0.029. 0.604. 妻月収. 0.064. 0.518. 夫婦総月収. 0.018. 0.861. 性別役割分業意識. 0.086. 0.111. 0.283***. 0.000. 独立変数 結婚継続年数 妻学歴. 2. R =0.013 N=626 表2 妻の家事遂行関与度に対する回帰分析 独立変数 性別 年齢 本人学歴 平均月収 妻の学歴資源 妻の経済資源 性別役割分業意識 R2=0.045 N=591. Standardized Coefficients Beta -0.084** 0.047 -0.019 -0.036 0.021 -0.171*** -0.07*. 男女差別意識 2. R =0.110 Sig. 0.048 0.272 0.684 0.447 0.607 0.000 0.087. ***p<0.01,**p<0.05,*p<0.10. N=346 ***p<0.01,**p<0.05,*p<0.10 結果からみると、独立変数のうち、結婚継続年数、妻 の月収、夫婦総月収、性別役割分業意識、男女差別意識 は、専業主婦志向度の規定要因として、専業主婦志向に 正の効果をもっている。妻の学歴と夫婦学歴差(本論文 では、妻の相対的教育資源ともいえる)は、専業主婦志 向の規定要因としては、専業主婦志向度に負の効果をも っている。 各変数の専業主婦志向への影響度からみれば、 意識による影響がわりと大きいが、そのなかでも男女差. また、妻の家事遂行関与度に対して、同じ独立変数を. 別意識による専業主婦志向に与える影響が、伝統的な性. 用いて、 回帰分析をした。 この回帰分析でわかるように、. 別役割分業意識より高く、もっとも影響が強いことがわ. 妻の家事遂行関与度の規定要因としては、もっとも影響. かる。そのつぎには、妻の学歴、月収、結婚継続年数、. 力のある変数は、妻の経済資源すなわち夫婦の月収差変. 夫婦総月収の順に規定要因として有効となっている。. 数であり、統計的にも有意である。その次は、性別、性. このことは、すなわち、男女差別意識及び伝統的な性. 別役割分業意識、年齢の順になっている。そのうち、妻. 別役割分業意識が強いほど、 また、 妻の学歴が高いほど、. の経済資源変数、性別変数、性別役割分業意識変数は、. 妻の月収において低いほど、専業主婦志向が強くなり、. 妻の家事遂行関与度に対して、 負の効果がある。 年齢は、. つまり専業主婦賛成する傾向にある。したがって、専業 主婦志向の妻像は、男女平等意識が弱い、伝統的な性別.

(4) 役割分業意識が強い、高学歴、低所得の結婚年数のそん. けである。夫婦関係において収入という貨幣に関わる問. なに長くない女性であるということができるであろう。. 題が権力関係を創造することは、構造化理論を裏打ちし. 前節の分析をふまえて、中国の妻達の専業主婦志向の. ていることになるであろう。このことは夫婦関係にある. 誕生は、日本と同じく、経済高度成長の産物であるが、. 男女は貨幣を資源として互いに勢力バランスを作り上げ. 社会的、文化的な構造の相違により、日本と違う傾向を. ることを意味するため、夫婦内の収入格差を縮小するこ. 呈している。経済的な原因、たとえば妻の月収、夫婦総. とが、夫婦間の対等な権力関係を作ることにつながるこ. 月収の影響もあるが、意識による影響のほうがもっと大. とになるであろう。. きい。新中華人民共和国成立後、国家政策により支えて きた「男女平等」思想、そして、国家政策により保障し て来た「男女平等」の夫婦間の経済構造は、市場経済と. 5.主要参考文献. いう「見えない手」により、バランスを崩しているとい. 日本語文献. えよう。 市場経済は個人の独立と自由を支持するが、 人々. ステファニー・クーンツ 2003 『家族に何が起きてい. に意識に隠れている封建的男女差別意識や伝統的な性別. るか』 筑摩書房、. 役割分業意識が台頭してきている。そして、本調査のデ. 伊田広行 1993 「シングル単位論観点による社会保障. ータでは、専業主婦志向度は、職業や生活レベル、収入、. 制度・税制度等の再検討」 、竹中恵美子(編著) 『グロー. 夫婦関係などとも統計的に有意な相関関係を示されてい. バル時代の労働と生活』ミネルヴァ書房. るが、どのように関わっているかは、今後の課題として. 岩波講座 現代社会学 第 19 巻 1996 『 〈家族〉の社会. 研究すべきである。さらに、本当は、自らすすんで専業. 学』 岩波書店. 主婦になる女性とやむをえない自宅待機中の 「専業主婦」. 中国語文献. とキャリア既婚女性と、それぞれの家族において、夫と. 全国女性連盟、国家統計局 2001 『第ニ期中国婦女社. の平等性や夫婦関係にあらわれている変容などについて. 会地位抽様調査主要数据報告』. も、今後研究する意義がある。また、日本や他の先進諸. 沙吉才主編 1995 『当代中国婦女家庭地位研究』天津. 国における専業主婦の大量出現と比べると、中国の「専. 人民出版社. 業主婦」志向は、異質なところがあるといえよう。これ. 徐安琪 「中外婦女家庭地位的比較―中国都市家庭“陰. も、今後の課題として考えるべきである。. 盛陽衰”的深層剖析」 『社会』1992.1 徐安琪 主編 1997 『世紀之交中国人的愛情和婚姻』 中国社会科学出版社. 4.結論 中国では、改革開放前の家族の変動の規定要因は、工 業化及び国家政策に保障されてきた女性の高就業率とい えるが、現在、都市家族の変容を規定する要因は、都市 における経済体制の転換による社会分化だといえる。そ の影響は、かなり深層まで、広範囲まで及んでいる。 このような結果は社会学理論とどう結びつくか、本論 文において、「人間の主体性を強調し社会理論を構築し た」イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズの構造化 理論をもとに考えた。夫婦の稼得パターン別の分析によ り、夫婦間における男女の収入の格差は、夫婦関係の各 面に影響を与えていることはすでに確認した。つまり妻 の意思決定関与度において、夫婦間の月収差の差に相関 して家庭内における妻の意思決定関与度が決定されるわ けである。こうした現実は、貨幣という構造を用いた権 力関係の創造として構造化理論の立場から理解できるで あろう。つまり、夫婦間において貨幣が夫婦関係という システムを形作る媒体として(構造化)作用しているわ.

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