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塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験: University of the Ryukyus Repository

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(1)

Title

塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負

繰り返し水平加力実験

Author(s)

山川, 哲雄; 伊良波, 繁雄; 田中, 伸幸; 松永, 尚凡

Citation

琉球大学工学部紀要(50): 55-70

Issue Date

1995-09

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12000/5457

Rights

(2)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 55

塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の

正負繰り返し水平加力実験

山川哲雄*伊良波繁雄*田中伸幸**松永尚凡***

HorizontaICyclicLoadingTestonExistingR/C

duetoChIorideAttack

onExistingR/CPublicHousingDamaged

TetsuoYAMAKAwA、ShigeoIRAHA、NobuyukiTANAKA・・

TakaminaMATsuNAGA… Abstract

Aninvestigationondamageduetochlorideattackonareinforcedconcrete

publichousingwascarriedoutbeforethehorizontalcyclicloadingtest

Chlorideattackiscausedbyusingseasandwithoutremovingsodiumchloride

Thecompressivestrengthofconcrete,coverthicknessandcarbonationwere

examined・Asaresultofthisinvestigation,thedeteriorationoftheexisting

R/Cpublichousingwasrecogmzedfromthepointofthedurabilityforthe

R/Cbuildings、

InordertoobservetheoverallseismicbehavioroftheexistingR/Cpublic

housingdamagedduetochlorideattack,ahorizontalcyclicloadingtestwas

carriedoutonthebuildingsite・Thisloadingtestindicatedthatthebehavior

ofthisbuildingwasnotaffectedbythedamageanddeterioration、The

horizontalloadingcapacityofthisbuildingwasaboutfourtimesthevalue

determinedusinganelasto-plasticanalysisofapureframestructulD・This

factisthecauseofusingpartitionorouterwallsmadeofconcreteblock

However,theseismiccapacityandductilityofthisexistingbuildingwerenot

highAssuranceofsafetyandserviceabilityareimportantforcorrosion

damagedbuildings.

KeyWords:Horizontalloadingtest,Existingbuilding,Seismicbehavior,

ChlorideattackCoverthickness,Carbonation,Durability,Elasto-plasticbehavior,Horizontalloadingcapacity,Ductility.

1.実験目的 襖地域に位置する沖縄では,塩害により鉄筋力彌食し, その膨張圧によりコンクリートにひび割れが生じ,損 傷を受けた鉄筋コンクリート(RC)造建築物が,現 在でも他の都道府県に比較してきわだって多く存在す 高温多湿の気候条件に加え,台風の度重なる襲来を 受け,しかも塩風に年中吹ききらされているような島 受理:1995年5月12日,日本建築学会1994年度第35回九州支部研究発表会で一部発表済み

*環境建設工学科Dept、ofCivilEngineeringandArchitecture,Fac・ofEngineering

**清水建設株式会社技術研究所InstituteofTechnology,ShimizuCorporation

…清水建設株式会社(元・琉球大学院学生)ShimizuCorporation

(3)

56山川・伊良波・田中・松永:塩害により損侮を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 る.特に沖縄が日本に復帰する以前や,その前後に建 てられたRC造建築物においては,細骨材として海砂 が洗浄されることなくそのまま用いられたため,コン クリートに高濃度の塩分が含まれている(9).その結果 20年から30年前後経た今日Ⅲ塩害により生じたRC造 建築物の損傷が建物の機能維持や.耐震性能の劣化に 少なからぬ影獅を与えているものと思われる.そうい う中にあって,塩害により損傷を受けたRC造公営集 合住宅の建て替え工事が行われることになり,この実 在建物を利用して正負繰り返し水平加力による破壊実 験を行った. 塩害により損傷を受けた実在建築物は,沖縄本島の 中部にある北谷町営栄ロ団地(図-1参照)の集合住 宅3棟のうちの1棟で(図-2参照),1970年度に建 設された3階建てのRCラーメン樹造(12戸)である (写真-1参照).この当時の設計用地震力は本土の半 分であり,この状態が1980年まで沖縄では継続された ことになる.1戸あたりの専有面積が40㎡前後の比較 的小規模の建物である.本実験の目的は次の3点に集 約される. 1)破壊実験を行う前に塩害で損傷を受けた実在建物 の材料試験を行い,塩分含有量,中性化,コンクリー トの圧縮強度,鉄筋の腐食量,コンクリートのひび割 れ調査,腐食鉄筋の力学的性質等を明らかにすること. 2)塩害で損傷を受けた実在建物の正負繰り返し水平 加力実験を行い,耐震性能(剛性,強度,じん性,エ ネルギー吸収量)の劣化の有無を検討すること. 3)塩害により損傷を受け,剥離または剥落しそうな かぶりコンクリート破片の落下が正負繰り返し水平加 力により促進されるおそれがあるので,このことを層 間変形角との関係に注目しながら実在実験で確翻する こと. 特に,塩害により損傷を受けた実在RCラーメン構 造物が試験体であるので,すなわち建股以来約24年間 の長期にわたり,自然暴露を行ってきた塩分入りの貴 重な実在試験体でもあるので,塩害の実体に基づいた 実験が可能となる.したがって,その影癖の有無を現 実的に把握することに,本実在実験の目的がある. 2.北谷町営栄ロ団地の所在位匠と概要 水平加力による破壊実験を行った公営集合住宅の所 在位置は図-1に示すとおりである.図-1から分か るとおり,本集合住宅は海岸から内陸部に約2km入っ た場所に位置している.山川研究室が現在までに塩害 調査を行った団地の中では,直線距離にして上田団地 と同程度に海から隔たった距離を有する.実在建物の 水平加力破壊実験は,今回建て替えの対象(取り壊し 対象)となっているA棟で行い(図-2,3参照), 実在試験体は1,2通りとS,N通りで囲まれた1ス パン3層の立体ラーメン(図-3~5参照)としⅢ桁 方向に正負繰り返す水平加力実験である. 前章でも述ぺたとおり,この集合住宅は1970年(昭 和45年)に建てられたもので,建設以来24年間の長期 にわたり自然暴露をしてきた塩分入りの貴重な建物で あるといえる.それを考慮すると塩害の実体に基づい た実験が可能となり,塩害の水平荷重に及ぼす力学的 影響の有無を把握することも可能である.水平カロカ破 壊実験の対象となるラーメン及びその柱,梁断面は, 図-6および表-1に示すとおりである.表-1に示 すように,柱の断面が3階建てのRC造ラーメン構造 にしてはきわめて細い.断面寸法は400×400mであり, IpH HH 公営染 図-1水平加力破壊実験を行っ た実在建物の所在位置 図-2実在実験対象建物の北谷町営栄ロ団地内配瞳図

(4)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 57

⑦①⑦①①①

29850

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廓一験加

①③

F1 L」 pH2つ VJ F-L 実在実験対象建物の平面図 図-3

。 。。。。○ 図-5実在実験対象建物の北側立面図 。 。。①。① 図-4実在実験対象建物の南側立面図 ① ① 柱,梁断面リスト 表-1

梁上

鑓部中央稲 基礎梁ベランダ受け染 -300-.-300-.

爵鳳.ミロ

ーーーー('MKIニノTたる) 如力方向

柱-

2通りT 2通り 1通り ●-D22 o-,19 -)-,10 通り 1 1

基礎

〆 / _上 DC X] 、1[WaZDOD】0 1 〕MMDmDOD1[

1口

6225

(N通りラーメンにはBG1がなく,

そのほかはS通りラーメンと同じ)

図-6s通りラーメン立面図 〕10.(、芝OODlO-化 3.実在建物の塩害による損傷調査 設計用地震力が本土の1/2であったその当時の影癬を 強く反映している.これくらいの規模のRC造建築物 であれば,少なくとも柱の断面寸法は,500×500mm以 上あってしかるぺき建物である 加力実験に先立ち,実在破壊実験を行う建物(A棟, 図-2参照)について塩害による損傷調査を行った. 目視による外観調査結果を図-7に示す.ベランダの IIIIl_セリIほ庁イⅡ了詑工

|雪L1j堅11型LI:U1L-z…摩1-回199-1:niLニーZ型-.I

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(5)

58山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験

扉二三

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南側 go ■ ̄ ̄■ ̄ ̄ ̄c●●●● ̄●●●●⑪。 ̄■■■●P■■■● ̄●■■ ̄■■■ ̄■◆ ̄CCC ̄ 東側 名2こぜ0 C ̄ ̄'■ ̄■ ̄■’■’■’■ ̄■ ̄。●●CCC●●。●d■●ウー。 ̄■■・■’■■■■ .■ ̄U■'■ ̄■■■ ̄■ ̄ ̄□●● ̄ ̄ ̄CCC●c● ̄●●-■-■,■-,■■ ̄

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西側

外観ひび割れ北側

」■:剥落・欠落鰯:補修後[二コ:白色変

備考:コンクリートが白く変色した部分は非常に小さなひび割れが無数に生じてい る.変色部は直射日光のあたる場所にのみ見られる.また,ベランダ手すりの棚干

などスリット部が多数抜け落ちていた(補修として角材を代用していた)

図-7ひび割れⅢ剥離,剥落に関する外観調査 手すりや庇の軒先端はかぶりコンクリートの剥離,剥 落現象が生じており,日常生活上かなり危険な状況に ある(写真-2,3参照).建設後24年経過している が,外観上はかなり劣化した状況にある.そこで,構 造体劣化の有無を検討するために以下の項目について 測定や試験を行った. 1)含有塩分量の測定 2)中性化,かぶり厚さの測定 3)鉄筋の腐食量鯛査 4)不同沈下量の測定 5)コンクリート,鉄筋の強度試験 含有塩分量はJCI(日本コンクリート工学協会)の

規準(案)側に準じて可溶性塩分について行い,塩素

イオンC1-で表示する.屋外から12個,屋内から12個 のかぶりコンクリートの破片を採取して鯛ぺた塩化物 量(塩素イオン換算)を図-8に示す.塩分含有量の 定義については昭和62年6月2日建設省住宅局建築指 導課長名で,全国の特定行政庁にだされたいコンクリー トの耐久性確保に係る措置について"に従う.それに よれば,コンクリート1㎡中に含まれる塩化物の含有

量,すなわち塩化物量を0.3kg以下とするという規制

値が設けられている.一方,これまでの研究からわが

国の気象条件下では通常の建築構造物の場合,内部鉄

筋が著しく腐食する限界はコンクリート中の塩分量が

0.03~0.035%(NaCl/コンクリート重量:0.1%NaC1 /絶乾砂重量にほぼ等しい)と考えられるい).図-8に よると,屋外より屋内のかぶりコンクリート採取片に 塩化物量がより多く含まれ,しかも屋内の塩化物量は 総量規制値である0.3kg/㎡をすべての採取片で上回っ ている.その当時は細骨材として海砂が塩分を除去す ることなくそのまま利用された可能性がある.このこ とは,山川らによる帆沖縄県の公営集合住宅(県営と 公社住宅)の塩害による建物損傷状況とその原因に関 する鬮査報告'′によっても裏付けられている(1).屋外 の採取片に塩化物量がより少なかった理由としては, 採取片がかぶりコンクリートであったため,風雨で塩 分が洗い流されたコンクリート表面を計測した恐れが ある.この建物は幾度か補修されており,その補修跡 が室内外に見られた.特に室外については著しく,補 修の際には当然ながら健全なコンクリートを使用して いる. コンクリートの採取片を利用して中性化深さと,か ぶり厚さを測定した.中性化深さについては図-9に, またかぶり厚さについては図-10に各々示す.中性化

の平均値は室内で16m,室外で23mで,一方かぶり厚

さは室内で19m,室外で321nmでありⅢ平均的にはかぶ り厚さが中性化深さを上まわり,望ましい傾向を示し ている.このことは,かぶり厚さと中性化深さを同一

(6)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 59 一一鉄筋腐食危険ラインー塩化物魁規制値 (掴〉峰、 (kg/m,) 4 7 や扇e瀬魁葹鴎4-J? 1

'

654321 類運e’主愚購 3210 U蝋鼻】}蝿4-1 0 OS10152025 採取片番号

0-“-1醐蛎謡-3-鮪if

) 図-8かぶりコンクリート採取片の含有塩分量Cl ̄ (個) (m、) 、万卯軍0 1 和腿苧塑任4-- 7 1

如騒e翻魁縮鴎4-JI

654321 類璽e上昌職 0 0510152025 採取片番号 O-25-lO-20-30-40-SO-中性イヒ深さ

W1fiiW

図-9かぶりコンクリート採取片の中性化深さ (個) (m、) 100 加 図卜75 = 2」650 長

12:

6543210 識塵e土昌購一 1

如露e翻遡施鴎1-jj

0510152025 採取片番号 O-2.5-10-20-30-40-.0-かぶり厚さ

WIii3I

図-10かぶりコンクリー ト採取片のかぶり厚さ の採取片について,同時に示した図-11に関しても同 様に言える.しかしながら,図-8からもわかるよう に,本建物に含まれる塩化物量が鉄筋腐食危険ライン や,塩化物量規制値を大きく上まわっているので,現 状の建物の損傷や劣化がさらに加速されるおそれがあ る. 次にコアを採取してコンクリートを厚さ方向にスラ イスして,塩化物量の分布状況を検討した.採取した コアは72mmから175mmの長さであり,合計16本である. コア16本の塩化物量の分布状況は図-12のとおりであ る.スライスしたコアに関して,塩化物量はスラブの 表面より内部に蓄積される傾向が強いことが分かる (図-13参照).いずれにしてもこれらの試料に関して は,規制値を大きく上まわっている. 水平カロカ実験を行う前に反力側の建物を利用して. 中性化深き(屋内) △中性化深き(屋外) ◎ 0000000 654321

(日日)和図二喝忽《・和騒】}起任

22

採取番号

1 図-11同一採取片における中性化深さと かぶり厚さの比較 図かぶり厚さ(屋内)・かぶり厚さ(屋外) ● ● ● ●一 □白・●●◆CCC:●・◆●.。;:lIQC・OIIロ6..33●8】 ● ● -=9---=

。』 o 』 。。古 ●‐P ・屋内 ・屋外 ● ● ●● _EVoI、、穴

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(7)

60山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 --鉄筋腐食危険ライン (船) -塩化物量規制値(kg/m〕) (kg/m,) (kg/m,)(%) 3210 『U噸尋】}璃十-1 02 0.1 0.2 0.1 6.4 l■■■■Ⅱ■■■■l■■ vlO25457095120135145 --スラブ下方から上方への厚さ(m、) a〉No.3(3階ベランダ床スラブ)方への厚さ(m、)一一スラブ下方から上方への厚苔シダ床スラブ)b)No.6(3階層室内床スラブ) コアの厚さ方向に分布している塩化物量 (m、) 0 採取片番号 図-12コア中に分布している 塩化物量Cl- 図-13 ンクリートコアや鉄筋等の採取を行い(写真-4~7 参照),これらの力学的性質を鯛査,試験した.これ らの試験結果を表-2~4と図-14に示す.鉄筋はか なり腐食しており,孔食の激しい部分からの破断が多 く見られた.その当時の状況から,コンクリートの設 計基準強度は180kgf/c㎡で,鉄筋はSD30を利用したも のと思われる1,.鉄筋の腐食によって,鉄筋の降伏応 力は降伏力を公称断面積で除しているので,見かけ上 低下している.なおⅢ鉄筋は表-2,3に示した本数, コンクリートは100の×200mmの採取コンクリートコア 10本の平均値である.表-2では全鉄筋の平均値を, 表-3では孔食破断しなかったものについての平均値 を示す.コンクリートに関しては,設計基準強度Fc= 180kgl/CIIを満足しているようである(図-14,表一 4参照). 表-2はつり出した全鉄筋の力学的性質 Sひu (MPa) 317.0 398.4 375.,

四面■菰■■Tm

;28240128 、10(5本) 、11(6本) D22(3本) a:鉄筋の断面積,sびy:降伏点強度,sEy:降伏点ひずみ. Sm:破断強度,SE:鉄筋のヤング係数 表-3孔食部が破断しなかった鉄筋の 力学的性質 sぴu (MPa) 430.1 440.5 40,.4 7129580122 画祠■万Z■■、■ 28240128 、10(2本) D11(2本) 、22(2本) 4.水平加力及び測定計画 0000 321

奇凸冨)魁翻躍田

水平加力するにあたり,基礎梁を除いた実在建物を 試験体部分と反力側部分に切断し(写真-8~10参照), 加力用鉄骨ジグを設置した.鉄骨ジグを床に完全に固 着するために,全室内の内装を全て撤去し,コンクリー トスラブがむき出しになるようにした.コンクリート スラブと加力用鉄骨ジグの固着は,スラブとジグの間 にモルタルをひき,コンクリートスラブを鉄骨ジグで 上下からはさみ込んだ状態で鋼棒を使って締め付けた (写真-11参照).実在RC造建物に水平加力を行った 場合,水平剛性のアンバランスにより建物がねじれる ことがないように,2階および3階床スラブに油圧ジャッ

キ(±50tonf)をそれぞれ2台ずつ設置した(図-15,

16参照).さらに,油圧ジャッキは柱列すなわち外壁 の内側にできるだけ近接きせた(図-15,写真-11, 12参照).床スラブをH形鋼でサンドイッチし,それ を加力梁にして油圧ジャッキを図-15,16に示すよう u00.10.20.30.405

圧縮強度時のひずみ(%)

図-14採取コンクリートコアの強度とひずみ 表-4採取コアの材料定数平均値 CEpPa)  ̄ 21,5 コンクリート cぴ■:段大圧麺強度.ccロ:cUn時のひずみp cE:コンクリートのヤング係数 OS10152 4 3 2 0 ,28.945.467.291.212 ●  ̄ ● ●  ̄ ●● ● ● 、H1上;十強度FC=l80kgWCm2 コンクリートコア全10本 ....■.。。、9....0.。.、0...△

11

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(8)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 61

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凡亙凹一一一一一_固迩=_ Z■⑪ mIH GL 足場 図-17変位測定計画 図-15油圧ジャッキの取り付け位置 (2階,3階平面図) の表面位置で,水平方向変位(水平加力方向とその直 交方向の2成分)と上下方向変位に関して行った.変 位計は実在建物試験体と独立に仮設した組立足場(不 動体とみなす)に取り付けた.これらの変位計による 測定結果は,自動的にパソコンに収録きれる(写真- 13,14参照). 5.正負繰り返し水平加力実験 水平力は3階床スラブに取り付けた2台の±50tonf 油圧ジャッキを,その能力いっぱいの合計100tonfま で稼働させ,それでも水平力が不足する場合は,その l00tonfを保持したまま,2階に股圏した2台のジャッ キ(合計100tonf)を稼働きせることにした.水平加 力はひび割れが発生するまで荷重制御により行い,ひ び割れ発生後は変位制御に切り替える.変位制御は1 階の層間変形角を0.25%ずつ増加させながら,同一振 幅で2サイクルずつ正負繰り返しを行った. 図-16油圧ジャッキの取り付け位置(断面図) に設置し,正負繰り返し水平加力を行った.したがっ て水平力の作用位置が床スラブ面より150mm程度上が ることになる③、 一方,図-17に示すように変位測定は各階床スラブ コックpq厨 Rゴ]

図-18 1階N通りのひび割れ進展図

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(9)

62山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 2101 』

(己so侭弱ミヤ唾e聖[

にもあらかた破壊が進み,層間変形角も0.5%以上と なっている.以上の様子から,コンクリートブロック 壁は建物の変形を抑制するのに大きく貢献すると考え られる.しかし,一方では建物としての靭性を劣化せ しめることにもなる. また前述したように塩分含有量も多く,いずれ鉄筋 の腐食による櫛遺体の劣化や損傷もかなり加速される と思われるが,この時点では塩害による損傷は本実在 建築物の耐力にあまり影響を与えていない.むしろ耐 力などの樽造上の問題よりも,塩害により損傷したか ぶりコンクリートの剥離,剥落など日常安全性の確保 が重要である. -2---2-1012

1階の層間変形角R(%)

図-191階の層せん断力Qと層間変形角Rの関係 5.1水平カロカによる建物の損壊状況 5.2水平加力実験のデータ解析 この建物の破壊形態は,コンクリートブロックでつ くられた腰壁やたれ壁のため短柱化した柱のせん断破 壊(写真-15,16参照)と,コンクリートブロック壁 のせん断破壊(写真-17,18参照),そして長柱の曲 げ破壊等(写真-19,20参照)の組み合わせによって 支配ぎれた.具体的には,1階の2通り柱(N側とS 側の両柱)でせん断破壊が発生しており,実験終了時 には完全に破壊してしまった.また,この実験の1つ の特徴であるコンクリートブロック壁のせん断破壊は, N側壁でもS側壁でも広範囲にわたり,著しく生じた (写真-21参照).1階に関しては,図-18,19に示す ようにコンクリートブロック壁は,1階の層間変形角 が小さいところで既にききはじめる.そのためコンク リートブロック壁は,柱・梁などの構造部材よりも先 にひび割れ・剥離などの劣化を生じる.構造部材にひ び割れが目立ち始める頃は,コンクリートブロック壁 RC造3階建ての本建物の水平耐力は1階部分にお いて,コンクリートブロックでつくられた腰壁やたれ 壁のため短柱化した柱のせん断破壊,コンクリートブ ロック壁それ自身のせん断破壊,そして長柱の曲げ破 壊等の集積によって支配された.したがって’1階の 層せん断力Qと層間変形角Rの関係を示した図-19, 20のQ-R曲線は複雑な履歴を示しているが,1階部 分すなわち建物としては明らかにせん断破壊の様相を 示している.図-20で層間変形角が0.1%前後の正側 で,せん断力が急激に上昇した後一時的に下がってい るのは,一部のブロック壁にせん断破壊が生じたから である.その後,また層間変形角の増大とともにせん 断力,すなわち水平耐力が上昇しているが,正側の0.5 %,負側の0.25%でそれぞれ最大水平耐力にほぼ達し ている.その後は徐々に耐力が変形の増大とともに低 下している.また図-19より履歴ループの面積も小さ 0.5 2101 口

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1階の層間変形角R(%)

1階の実験結果から得られたスケル トンカーブ

1階の層間変形角川6)

図-211階柱頭部での面外方向回転角8と 層間変形角Rの関係 図-20 -Z‐1012 -2-1012  ̄  ̄ P ■ ■ ■ ■ R=0.08,Q=1.53 ̄ _‐三 夢一一 -R=-0.25.Q=-1.48 _二・・、.▲△▲■△..aq△...

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(10)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 63 <,原点指向タイプのせん断破壊型の傾向を示してい る.ただし,加力試験体の妻壁側にある柱は長柱とし て曲げ破壊している.この実在試験体は饗壁のみが鉄 筋コンクリート造で,残りの壁はすべて壁筋の補強が 不完全で,かつコンクリートの充填も不完全なブロッ ク壁であった。それにもかかわらず図-24に示したス 321012 』□

(EE)的唄怪壗e鯉蝋

321012 缶』 (EE)⑫蝋」誼e豐朔 ‐1012

階柱の層間変形角R(%)

2 -101 2

階柱の層間変形角R(兜)

2 1 321012 □』

(已昌)②暇腔浸e謹欄

321012 -。 (EE)⑫項跨遷e謹鴇 2 -101

階柱の層間変形角R(%)

2 2 1階の層-1 間変形角R(%)01 2 1 図-22基礎の沈下量Sと1階の慰問変形角Rの関係 3 2 1 0 0 0 0 (誤)シU暗やわ掴塞葦斡汁 2 101 00 0

(韻)シ凹舗や合鍵畳}罰汁

0.1 2 01

問変形角R(%)

2 -1 1階の層 01

間変形角R(%)

2 2 -1 1階の層 2 10 1 00 0 (誤)シU鵠やら躍吾}鍾片 2 0 1 1 0 0 0 (誤)シ辺舗や台躍缶}嚢株 01

間変形角R(%)

2 -1 1階の層 2 2 1階の層‐1 間変形角R(%)01 2 1階柱の平均伸縮ひずみEvと屑間変形角Rの関係 図-23 ■ J ■ ■ B ■ B P

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■Pいい中曰トレB・bBBB こ ■ 、。..、1..△.B』△..Ⅱ▲凸ロ. -N通り妻壁側  ̄ ■■B倍■B■■P■PbpP・LPP卜』Pi L 。h_LLH-釘マョニーーー  ̄ ~ ̄て F1 』.△■Djp■ユロロムロロロ、』.. -N通り階段側

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-N通り階段側

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(11)

64山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 ケルトンカープの比較からわかるように,ブロック壁 の水平耐力が算定外余力として予想以上に高い. 図-21に,SおよびN通りラーメンの2階床位置に おける水平加力方向と,直交方向のそれぞれの動きを 示す.図-21は1通りと2通りのスパン方向の水平変 位,すなわち水平カロカ方向と直交をなす方向(以後面 外方向)に生じる桁方向1スパン当たりの変位の差を, 桁方向のスパン長でそれぞれ除した値(これを図-21 では面外方向回転角と定義する)と,1階の層間変形 角Rの関係を示した図である.図-21より,面外方向 回転角が最大で約0.03%であり,水平加力方向と直交 方向の水平変位は小さく,実験にあたって建物のねじ れはあまり生じなかったものと推定きれる.図-22に 基礎梁上面位置で測定した上下方向変位,すなわち基 礎の沈下量を示す.水平力による引張力が柱に加わる と,若干基礎が浮き上がっていることがわかる.特に 図-22に示すように,妻壁側の基礎はその影響が大き い_また,水平力による圧縮力が自重による圧縮力に 加わっても,その沈下量は小さいことが図-22よりわ かる.なお,本建築物の基礎には所要のコンクリート 杭が打たれている.基礎梁上面と2階床スラブ表面間 の上下方向の相対変位量を,1階の柱材長で除した1 階柱の平均伸縮ひずみと1階の層間変形角の関係を図-23に示す.S通りの柱で曲げ破壊する柱(妻壁側の1 通りの柱)とせん断破壊する柱(階段側の2通りの柱) では,若干平均伸縮ひずみが異なる.すなわち,曲げ 破壊する柱に,より大きな伸縮ひずみが生じているこ とがわかる. 21012 二『

(z]三)○R重くや酸e聖「

1階の層間変形角川6)

図-24実験結果と純ラーメンとしての計算結果の比較 0 5 0 5- 0 0

(》邑言)○便題ミヤ趣e聖「

1階の層間変形角R(%)

図-25実験結果と計算結果の初期剛性に関する比較 3階スラブ位置で水平力を先行載荷する方法をとった. また,N側ラーメンとS側ラーメンとではベランダ小 梁に関する違いがあり,これを考慮した上でそれぞれの ラーメンを計算しⅢ最終的に加え合わせる方法をとった. 図-24,25に実験結果とあわせて計算結果(純ラー メンとしての弾塑性解析値)を示す.これからもわか るとおり,やはりコンクリートブロックは水平耐力の みならず,初期剛性にもかなり寄与している.さらに この実在建物の破壊形態は,せん断破壊の様相が濃い ためⅢ次のようなせん断耐力式を利用した考察も試み

た.柱のせん断破壊は2通り目(階段室)のS通り,

N通りの両柱で起こっており,その部分に慣用されて いる荒川式に加え,A法とB法によるせん断強度式を

適用した,柱の曲げ破壊については,妻壁側にある残

りの2本の柱で生じており,前述した曲げ解析の結果

(純ラーメンとしての曲げ耐力)を,S側ラーメンと

N側ラーメンでそれぞれ1/2ずつにして加算した.そ 6.水平加力実験に関する理論解析 実在建物の弾塑性解析には,B・GNealの⑪The

PlasticMethodsofStructuralAnalysis"㈹を利

用した.基本的には,『仮想変位の原劉『仮想力の原 理』に基づいた方法,すなわち仮想仕事法によるもの である.ただし,この方法を適用するにあたっては, ヒンジ部を完全弾塑性と仮定し,ヒンジ点以外でのひ

び割れにともなう剛性低下は考慮しない.さらに,コ

ンクリートブロック壁を考慮しない純ラーメンとして

計算を行った.まず仮想変位の原理により釣合条件式

を作成し,仮想力の原理により適合条件式をつくる.

適合条件式をつくる際,Heymanによって提案され

た仮想残留曲げモーメント系を用いた.層せん断力に

ついては実験と同じく,l00tonf(0.98MN)までは 4-1012 、500.

実験結果

-s ,-1、 1----■■■---■■■-- ̄ ■■■△0▲.■▲■△___凸 1 ̄ 純ラーメンとし

ての計算結果

■△■.■-.-、0__■

果 結

実 / / l、 〆 〆 ̄ ------■■■ / ----L----- ̄ 〆〆 〆 ■□□.ロロ▲._ロ._.。■__▲_ 、 ̄ 純ラーメンとし

ての計算結果

ロロ■■0■□△ロロ。、ロ.0._▲_

(12)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 65 とに留意する必要がある.さらに,ブロック壁が本建 物のように腰壁に利用されると柱が短柱化し,その柱 が本実在実験にみられるごとく。もろいせん断破壊す ることも事実である 本建築物の総重量は4本の柱中心で囲まれた床面積

を34.5㎡,単位床面積当たりの重量をL2ton/㎡,屋

根スラブ(t=12cm)は仕上げ材を0.2ton/㎡考慮した 単位面積当たりの重量を0.49ton/㎡と仮定して計算す れば141.1tonである.一方,本実在実験から得られた 最大水平耐力は156tonfであったためⅢこの実在建物 は地震の際には1.1Gの応答水平加速度までしか耐え られないことになる.したがって]本建物が1995年1 月17日に起きた阪神大震災クラスの地震(震度階7) にも耐えられるかどうか,きわめて疑問のあるところ である.しかも,本実在建物が靭柱に欠ける耐震性能 を有していることを考慮すると,なおさら崩壊の危険 性があるRC造建物と推定せざるをえない. 実在実験の対象となった本建物は,沖縄が日本に復 帰する1972年以前の1970年に建設されたものである. したがって,その当時アメリカの統治下にあった沖縄 は本土の1/2の地震力で建築物の櫛造設計をしていた. すなわち,本土で震度法による値が0.2に対して,沖 縄では0.1を採用していた.すなわち,建物の総重量 の10%を設計用地震力として,水平力に算入した.そ のためか,3階建てのRC造ラーメン榊造である本建 物の柱の断面が1階から3階まで,すべて400×400mm というきわめて細い柱になっている.しかも,主筋比 が11、さいところで1.08%しかなく,全般的に水平耐力 が小さい建物になっている.しかもブロックによる腰 壁の影響で,1階柱(2通り)が実在実験で予測どお りのせん断破壊を起こしている.このような耐震性能 しかない上に,しかも多量の塩分を含み,塩害による 腐食と劣化が進行しているという2重の意味で要注意 の建物であるといえるこのように沖縄では今日なお, 塩害による損傷が進行しつつある建物で,しかも耐震 性能に欠ける建物が今なお多く存在するものと思われ る.このような建物では,できるだけ早い機会に建て 替えるか,補修・補強を行い,耐久性能と耐震性能の 回復と増強に努力する必要がある.これには沖縄の産 官学を構成する人々が力を合わせていい知恵を出し合 い,場合によっては沖縄仕様書を作成するくらいの気 持ちで取り組む必要があると思われる.特に大学に所 属する我々の責任はきわめて大きいと,自戒の意味も 込めて本節の結びとしたい.

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単位:cm 図-26コンクリートブロック壁の配置と実測寸法 のようにして求めた柱のせん断耐力と曲げ耐力を,実 験中に計測された最大水平耐力1.53MN(l56tonf) から引いた.荒川式を用いた場合の算定外余力は1.04 MN(106tonf)となり,その値を壁の断面積で割る ことで,コンクリートブロック壁の見かけ上の負担せ ん断応力を求めた.その結果,荒川式ではせん断応力 0.79MPa(8.1kgf/c㎡)となった.同じ操作でA法と B法ではそれぞれ算定外余力が0.66MN(67ton{), 0.24MN(24tonf)となり,その時のせん断応力度が 0.64MPa(6.5kgf/c㎡),0.23MPa(2.3kgf/c㎡)とい う数値がそれぞれ求められた.図-26にも示すとおりⅢ 水平加力方向のブロック壁の壁量は約14cm/㎡であり, 柱もコンクリートブロック壁の断面積に含めた最大水 平耐力時の平均せん断応力は,約1MPa(約10kgf /c㎡)である.一方,最大水平耐力時の一般的なコンク リートブロックのせん断応力は,5.6kgf/b㎡から10kgf /c㎡程度であり,これらの値と,実験と計算から推定 されるコンクリートブロック壁のせん断応力は,ほぼ 類似していることがわかる.したがって,本実験の場 合,ラーメン構造に組み込まれた間仕切り用のコンク リートブロック壁は,水平耐力に関しては純ラーメン として計算した柱4本分が負担するのと同じ程度のせ ん断力を負担し,しかも水平剛性に関しては純ラーメ ンの約14倍も増加させているこのように,間仕切り 用のコンクリートブロック壁は,建物の水平耐力と水 平剛性の増大にかなりの影騨を及ぼすことがわかった. ただし,本建物の場合,柱の断面が細い上に主筋量が 少ないのでⅢ純ラーメンとしての水平耐力は小さいこ

(13)

66山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 7.結輪 をいただきました.本実験に際しては鹿児島大学工学 部建築学科の徳広育夫教授が直接ヨ現地に滞在され,数々 のご助言とご教示をいただきました.本実験は清水建 股㈱技術研究所との共同実験であり,同技術開発セン ターの磯畑傭副所長には,数々のご助言,ご支援およ びご協力をいただきました.また,竹中工務店技術研 究所の毛井崇博主任研究員には,計測機器関係でご尽 力いただきました.そのほか,たくさんの関係者の皆 様にご協力とご支援をいただきました本実験に琉球 大学の大学院生や卒議生が多数参加しました.なお, 本研究に関して1994年度日本建築学会九州支部奨励研 究助成(代表者松永尚凡)をいただきました.ここ に記して,関係各位に深甚なる感謝の意を表する次第 です. 塩害により劣化した実在3階建て集合住宅の損傷鯛 査と,正負繰り返し水平加力実験を行った結果,下肥 のことがわかった. 1)本建物の建設当時,海砂を細骨材として洗浄する ことなく,そのまま利用したと思われるので規制値を 越える相当量の塩化物量が含まれ,しかも鉄筋の腐食 がかなり進行していることがわかった.したがって, 今後構造体の劣化や損傷もかなり加速されるものと推 定される. 2)塩害に起因する建物の損傷が,静的な正負繰り返 し水平加力による実在実験において,かぶりコンクリー トの剥離,剥落現象の増大や,建物の水平耐力の劣化 等に影響を与えるようなことは,ほとんどなかったと 判断される.ただし,地震力が実際には動的な現象で あることを考廟すると,塩害により損傷したかぶりコ ンクリートの剥離,剥落がいっそう促進きれるおそれ がある. 3)集合住宅等の建物の水平耐力は純ラーメンとして 計算した水平耐力の約4倍近くあり,コンクリートブ ロックでつくられた腰壁や間仕切り壁などの算定外余 力をかなり期待できる.しかし柱が細い上に(柱の断 面寸法は400×400mm),ブロック壁が腰壁として,結 果的に柱を短柱化させているので,建物として靭性に 欠け,しかも建物の水平耐力も建物重量の1.1倍しか 期待できない. 以上のことより,本実在建物は塩害による損傷が進 行しつつある建物で,しかも耐震性能に欠ける建物と 判断せざるを得ない.この種の建物はできるだけ早い

機会に建て替えるか,補修・補強を行い耐久性能と耐

震性能の回復と増強に努める必要がある.沖縄で数多

く見られる塩害により損傷を受けたRC造建築物にお いては,かぶりコンクリートの剥離,剥落事故が生じ ないように建物の保全,補修(場合によっては建て替

え)を行い,日常安全性の確保に努めることもまた重

要な社会的課題ではないかと思われる. 参考文献 (1)山川哲雄,他3名:沖縄県の公営住宅の塩害によ る建物損傷状況とその原因に関する鯛査報告,日 本建築学会研究報告九州支部第35.1(樹造系), pp、9-20,1995年3月 (2)日本コンクリート工学協会:コンクリート樹進物 の腐食・防食に関する試験方法ならびに規準(類.

日本コンクリート工学協会,技報堂,pp、17-54,

1994年4月 (3)徳広育夫,三谷勲,久徳琢磨:実在鉄筋軽量コン クリート造学校建築の繰り返し水平加力による破 壊実験,コンクリートエVoL25,Nulqpp、95~ 112,1987年10月 (4)B、GNeal:ThePlasticMethodsofStructural Analysis(日本語訳:五十嵐定義,井上一朗几 建築構造物の塑性解析法,pp、32~41,丸善,1988 年3月

(5)日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・

同解説,丸善,1988年7月 (6)日本建築学会:建築耐震設計における保有耐力と 変形性能,丸善,1981年6月 (7)日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の終局強 度型耐震設計指針・同解説,丸善,1990年11月

(8)岸谷孝一,他6名:塩害(2),コンクリート櫛造物

の耐久性シリーズ,技報堂,pp、103~110,1988 年9月 鮒辞 本実在実験は北谷町役場の好意により実現したもの であり,とりわけ同建設課の金城永和課長や仲宗根義

覚氏に大変お世話になりました.また実在試験体の準

備にあたっては.栄商店の伊誼栄社長に多大なご協力

(14)

67 琉球大学工学部紀要第50号,1995年

醗輔劇

艤鑿ffl1鍵'1鑿鑿

写真-1実在建物の外観(右端の1スパン3屑部分 が実在実験の対象). 写真-4コアドリルを用いてコンクー トコアを採取中

llliili議il鑿il藤!i}

写真-2塩害により損傷したひさし部分 写真-5室内床スラブの中性化状況

菫讓雲霧篝

写真-3塩害により損傷した天井部のはつり調査 写真-61まつり出した鉄筋の腐食状況

(15)

68山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験

醤繍鰄霧讓i繍鋼■■Ⅱ■口癖

mliiiii壜i7S1ll

脳弐・W

丁■ 写典-10建物を切断した後の状況(北面) 写真-7送電管の腐食状況

蕊鐵

写真-8建物の切断に用いたウォールカッター 写真-11加力梁設置の作業風景

「蔬誘霊fr--可

!。.. …篭

;鍵鐵iii蝿

ilii1lmll111m…、

写真-9ウォールカッターによる屋上床スラブの 切断面と中性化状況 写真-123階床に設置した押引き (±50tonf)ジャッキ

(16)

琉球大学工学部紀要第50号,1995年 69

ililUii

写真-13制御室での計測風景 写真-161階N通りのせん断破壊した柱

i鑿、ヨビヅ鰯。■L灘

掴共脳

熱毫iii

写真-14正負繰り返し水平加力実験の全景 何

藩=詞牽= 写真-171階N通りブロック壁のせん断破壊状況

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Willi=-filiii

写真-18室内からみた1階S通りブロック壁の せん断破壊状況 写真-151階S通りのせん断破壊した柱

(17)

70山川・伊良波・田中・松永:塩害により損傷を受けた実在RC造公営集合住宅の正負繰り返し水平加力実験 壇矧 写真-211階S通り面の破壊状況の全景 写真-19 1階N通り妻側(1通りスパン) 脚部の曲げ亀裂を生じた柱およ び耐震壁

iil

巴■■■●守可□■可1巴已■|§』 ・叩{・・・・}・←

写真-22 実在実験スタッフ 写真-201階S通り妻側(1通りスパン) 柱頭の曲げひび割れの進展状況

参照

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