TECHNICALREPORTSOFTHEMETEOROLOGICALRESEARCH INSTITUTENO.25 SEASONAL MEAN DISTRBUTlON
OF SEA PROPERTIES IN THE PACIFIC
BY
OCEANOGRAPHICAL RESEARCH DIVISION
気象研究所技術報告 第25号
太平洋における海洋諸要素の季節平均分布
海洋研究部
気 象 研 究 所
METEOROLOGICALRESEARCH INSTITUTE,JAPAN DECEMBER,1989
M[eteorological Research lnstitute
Established in1946
Director:Dr.Yasushi Okamura
Forecast Research Division Head:Mr.Isao Kubota Climate Research Division Head:Mr.Kazuhi Kiriyama Typhoon Research Division Head:Mr.Kiyoshi Kurashige Physical Meteorology Research Division H:ead:Mr.Osamu Kojima Applied Meteorology Research Division Head:Mr.Tsunehiro Majima Meteorological Satellite and
Observation System Research D玉vision Head:Mr.Akio Kurosaki Seismology and Volcanology Research Division Head:Dr.Masaaki Seino Oceanographical Research Division Head:Mr.Akira Sano Geochemical Research Division H:ead:Dr.Yukio Sugimura
1−1Nagamine,Tsukuba,Ibaraki,305Japan
Technical Reports of the M[eteorological Research lnstitute
Editor−in−chief:Masaaki Seino
Editors:Fumiaki Fujibe Tsugmobu Nagai Tetsuo Nakazawa Shigeru Chubachi Junji Sato Tomohiro Nagai Itsuo Fumya Hiroshi Ishizaki Hisayuki Yoshikawa Managing Editors:Yoshitsugu Nagasawa,Toshihiko Masuda
The Tg6h勉o召1ノ〜のo漉げ孟h6〃窃召ozo♂oμo召1ノ〜6sθ召70h動s読%彪has been issued at irreg一 ular intervals by the Meteorological Research Institute since1978as a medium for the publication of survey articles,technical reports,data reports and review articles on meteoro1−
ogy,oceanography,seismology and related geosciences,contributed by the members of the Meteorological Research Institute.
The Editing Committee reserves the right of decision on acceptability ofmanuscripts and is responsible for the final editing.
序
「気侯」に対応させて「海侯」という日本語が存在し,常用されて欲しいとかねがね思ってい る。とくに近年には,地球科学的見地から「気侯」が海洋を含めてクローズアップされているの で尚更である。
気象学では勿論のこと,マスコミでも一般の人々でも,「気侯・気象・大気」という語をごく 自然に使い分けている。ところが,海の分野では,ニュアンス的にはそれらに対応させながらも,
「海洋」で済ませている。「気象と海洋」,「気侯変動と海洋変動」,「大気・海洋相互作用」などと。
それぞれのニュアンスは専門家には分っていても,一般の人には何を意図しているのかを理解で きないだろう。水を湛えた「海」を漠然と念頭に置けば上出来であり,それ以上に興味を深入り させないだろう。几帳面に「天気」や「天侯」に対して「海況」を,「気象」に対応させて「海象」
を用いることもあるが,「海侯」は無い。海洋国家と自負しているだけに,辞書には「海」の字 が付く言葉は無数にある。しかし,「海侯」は無い。専門的な海洋大事典や文部省の学術用語集・
海洋学編も同様である。なお,「海洋気侯」は,洋上の気侯のことである。
何故「海侯」という言葉が無いのか。「気侯」け人間生活に密着して生じてきた言葉であり,
その内容も実感が伴っている。しかも,気象観測所の分布が密であり,長期間にわたっての豊富 なデータで科学的にも裏打ちされている。海にはそれらが乏しいからであろう。それでも,わが 国の漁師は,昔から黒潮や親潮の特性(水温・流路・海色・生産性など)とその季節変動や年々 変動を体験的に捉えていた。「海侯」の意識であるが,これが科学的に裏打ちされたのは,そう 遠い昔ではない。それも,水産業や海運業からの要望が強く,しかも日本の近海であるために観 測が比較的に容易なのでデータが蓄積されたからである。それがWCRPのWOCE(世界海洋循 環実験計画)が必要としている大洋スケールのデータになると,大西洋では比較的に豊富だが,
太平洋では僅少である。北西太平洋の東径1370線で凌風丸が,冬季には1967年から,夏季には 1972年からルーチン的に海洋・海上気象観測を継続させて,それぞれの気候値を明確にしつつあ
るが,その努力と成果に対する国内外の評価の所以はここにある。
さて,昨今,地球規模の気侯問題や環境間題に世界的な焦点があてられ,それには「海洋」が 密接にかかわっているとされている。モデルにせよ理論・解析にせよその基盤には「海侯」の認 識が必要である。定常的で豊富な気象観測によって得られた「気侯」に対して「海侯」をどのよ
うに処すべきか。
太洋スケールの定常的な海洋観測は少いものの,調査・研究観測の足跡は全海洋に記されてい る。この汎地球的な海洋データを収集し活用しようとする気運が1970年頃から国際的に高まって きた。その中心的な活動をしているNODC(米国海洋データセンター〉が集めた海洋観測資料を
用いて,S.Levitus(1982)が水温・塩分・溶在酸素についてデータセットを作成した。1901年 から1978年に至るデータ(項目と深度によって期間は異なっている)を品質チェックで吟味して から,水平的には1度メッシュ,鉛直的には項目と月・季・年の組合せによって異なるが0〜
5,500mの33層(最多)にグリッド化した。すなわち「海侯値」である。この労作は,大気や海 洋の各種モデルの初期値や検証用に,海況解析に国際的に活用されている。
磁気テープに収められた体系的な海洋データセットは,理論・計算を目的とするしかも大型計 算機が使用可能な研究者にはきわめて有利である。そうでない人にとっては猫に小判である。様々 な「海侯」を図によって認識したいのである。Levitus自身も気侯学的な全海洋図を作成してい るが,それは年平均値である。海にも季節変化があるので,できれば月平均図も欲しい。
都合が良いことに,当部では昭和63年度からの経常研究「北太平洋循環系の構造とその変動機 構の解明」でLevitusの資料を用いて海況解析を行なっている。海洋循環解明に必要な要素に計 算処理を行なって,「海侯図」を解析している当部の周東健三室長にその公開努力を依頼した。
またその有用・重要性を理解された編集委員会と企画室の協力によって産み出されたのがこの
「海侯図」である。内容はポテンシャル水温,塩分,ポテンシャル密度,ジオポテンシャルアノ マリー(または地衡流速)の季節別の水平・鉛直分布である。残念ながら月別の図は彪大な量に なるので割愛した。それでも888図になる。この中から必要な図を検索するための工夫も加えた。
範囲を太平洋に絞ったので,Levitusの全海洋図よりも詳細になった感がする。また,この図を 基にして海洋構造と季節変化についての解説も加えた。いささか手前味噌であるが,「海侯図説」
だと思う。
今後のTOGAやWOCEに,地球規模の環境間題等に,この図集を活用していただければ幸甚 である。末文ながら,S.Levitusの仕事に敬意を表したい。その基になる海洋資料取得に努力さ れてきた世界各国の海洋観測従事者に感謝する。
平成元年12月
気象研究所 海洋研究部長
佐野 昭
Seasonal Mean Distribution
of Sea Properties in the Pacific*
by
Oceanographical Research Division Meteorological Research Institute
太平洋における海洋諸要素の季節平均分布**
気象研究所海洋研究部
*Presented by Kenzo Shuto:Oceanographical Research Division,MeteoroIogical Research Institute
**周東健三:海洋研究部
目
序
概要(和文) ・………・………・………
Abstract(英文) ………一
はじめに
第1章 各季節における海洋諸要素の水平分布 1.1 ポテンシャル水温
1.2 塩分
1.3 ポテンシャル密度
1.4 ジオポテンシャルアノマリー
第2章 海洋諸要素の季節変化の水平分布 ……・…・
2.1 ポテンシャル水温 2.2 塩分
2.3 ポテンシャル密度
2.4 ジオポテンシャルアノマリー
第3章 各季節における海洋諸要素の鉛直断面分布 3.1 ポテンシャル水温
3.2 塩分
3.3 ポテンシャル密度 3.4 地衡流速
おわりに ………・・…・・……●…………●……… … 参考文献 ………一…・・…・………・…………・
付:図一覧表 ・………
付:英文図説 ・……兜…………・………・…・・…・…
次
・・…… 11
・・… 一… 一・一・… 17
21
・・… 一・・ 21
…・・ 23 25
概 要
本報告においては,Levitus(1982)の季節別の多年平均海洋データセットを用いて太平洋に おける海洋諸要素の分布を示してある。第1章では,ポテンシャル水温(θ),塩分(S),ポテ ンシャル密度(σθ),ジオポテンシャルアノマリー(GP冗)の水平分布を示す。西太平洋熱帯域 の暖水,亜熱帯高塩分水,高緯度域の低塩分水,北太平洋の亜寒帯環流,亜熱帯環流,南極周極 流などの特徴が記述してある。第2章では,第1章で示した諸要素の季節問差と年較差の水平分 布を示す。冬から春(南半球では夏から秋)にかけてのθの変化では,100〜150m深では海面付 近とは逆の変化(北太平洋で降温,南太平洋で昇温が卓越)を示している。塩分の変化は水温の 変化ほど組織立ったものではない。日本の東方海域は,水温,密度およびGPン4の年較差が大きい。
塩分の年較差は熱帯域の東部および西部で大きい。GPン4の年較差は東部熱帯域および南極周極 流域でも大きい。第3章ではポテンシャル水温(θ〉,塩分(S),ポテンシャル密度(σθ),地 衡流速の南北および東西の断面分布が示してある。諸要素の分布の特徴を述べた後,亜熱帯高塩 分水,中層水(塩分極小水)と等ポテンシャル密度面および流れの場との関係を記述してある。
北太平洋の中層水はσθ=26.8に,南極中層水はσθ=27.2〜27.3の等密度面に沿って低緯度に 張り出しているが,その場所では亜熱帯循環によって東向きの流れが卓越している。
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Abstract
Recently as climatic change has gradually become more evident,the role that oceans play in itねas attracted more attention,and global oceanograp血圭c observations are going to be put into practice intheWOCE(World Ocean CirculationExperiment)program ofWCRP
in order to clarify the role.
Under these circumstances the necessity of understanding the sea conditions of the oceans as a whole is increasing,and the author believes that it is wOrthwhile to show the basic distribution of sea properties in the Pacific as done in this technical report.
The main aim is to show their distribution l therefore the description in this report is limited to the statement of the characteristics in the distribution of sea properties without
any oceanOgraphic analysis.
Levitus (1982)seasonal mean oceanographic data set,which is used here,consists of temperature and salinity data『at standard depths at1。×1。grid points of the world oceans.
Thesea properties treated in this report are potentia玉temperature(θ),salinity(S),potential density(σθ),geopotential anomaly・(0ハ4)and velocity of geostrophic current.
θis calculatedbased onFofonoffandMillard(1983)withthereferencetotheseasurface.
σθis calculated byσθ=ρ(S,θ,0)一1000.0(kgm−3),whereρis the density of seawater which is calculated based on UNESCO(1981). αPン4is calculated by
GP凶一∫ρ7{α(S,T,ρ)一α(35,・,ρ)}⑳,
whereα=ρ一1,T is water temperature in situ,ρis pressure andρ7is the reference pressure which is taken as150bar(1500db).The velocity of the geostrophic current is calculated by dividing the difference of GPン4between any two stations by the distance between them and Coriolis parameter∫.
In chapter1,the horizontal distribution ofθ,S,σθand GP盟is treated,and such subjects are discussed as warm water in the tropical westem Pacific,subtropical high salinity water,
10w salinity water in high latitudes,subarctic gyre in the North Pacific,subtropical gyres in the:North and the South Pacific and the Antarctic Circumpolar Current.
In chapter 2,the seasonal change and the range of annual variation of those sea properties are presented.The change ofθat100to150m depth from winter to spring(from summer to autumn in the Southem Hemisphere)shows opposite pattems of distribution to
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Tech.Rep.Meteoro1.Res.Inst.No.25,1989
the one near the sea surface,namely descent in the North Pacific and ascent in the South Pacific.Seasonal changes in salinity are n tンso sy$tematic as temperature change.In the region east of Japan the range of annual variation inθ,σθand OP24is large.The range of salinity changds Iarg♀in theρastern a陰d westβm parts of the tropical region。.The range
of GPン4change、is large also in,the eastem tropical reg墨on and in t車e region of the Antarctic Circumpolar Current.
In chapter3,meridional and zonal sections ofθ,S,σθandthe velocity ofthe geostrophic current are Shown.、After the descriptiqn of the characteristics in their di$tribut圭on,some relationship between subtropical high salinity water,intermediate water(defined by salinity minimum),potential density surfaces and the velocity field is mentioned.、The North.Pacific Intermediate Water琴nd the Antarctic Intermediate Water extend toward the・10w latitudes along theσθ=26.8,surfacρandσθ=272〜27.3surface re$pectively,and。tレe eastward current is conspicuous in the velocity field there due to subtropical gyres in the North and the South
Pacific.
Lastly,the author wishes to express his thanks to Dr.Sydney Levitus for his permission to publish these maps in this tec耳nica互report.
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は じ め に
近年,気侯変動が顕在化するにつれて気候変動における海洋の果たす役割が注目され,世界気 候研究計画(WCRP)の中で世界海洋循環実験計画(WOCE)のように大規模な海洋観測が国際 的に実施されようとしている。
太平洋は世界最大の海洋であり,全球的な気侯変動に大きな影響を与えている。このような背 景のもとで,太平洋全体の海況を理解する必要性は高まっており,この技術報告において太平洋 の基本的海洋構造を示すことは意義があると信ずる。
この技術報告では太平洋の基本的海洋構造を表す諸要素の平均的分布を示すことに主眼を置い ている。従ってここでは海洋学的解析を行なわずに諸要素の分布の特徴を述べるに止める。
ここで使用しているのは,Levitus(1982)の季節別の多年平均海洋データセットであり,そ れは全世界の海洋の1。×10の格子点の海面から1500m深までの基準深度における現場水温(T)
と塩分(S〉のデータから成っている。このデータでは冬季が2〜4月,春季が5〜7月,夏季 が3〜10月,秋季が11〜1月となっていて,気象における季節とは少しずれているが,これは海 洋における季節の遅れを考慮したものと思われる。
ここではポテンシャル水温(θ),塩分(S),ポテンシャル密度(σθ),ジオポテンシャルァ ノマリー(GP冗)および地衡流速を扱う。熱力学的保存量としてθとσθを取り上げたが,θと 現場水温(T)との差は1500m深で0.1℃程度,σθと現場密度(ρ一1000.0)との差は1500m深 で7.Okg/㎡程度である。
θはFofonoff and Millard(1983)に基づき,基準圧力をO barに取って計算し,σθはσθ=
ρ(S,θ,0)一1000.0(kg/㎡)とした。ρ(S,T,ρ)はUNESCO(1981〉により計算した。σm は次式によって計算した。
隅一ρα(s・τρ)一α(35・軌ρ)ゆ
ここでα(=1/ρ)『は現場比容,ρは圧力,ρ,は基準面の圧力で150bar(1500db)に取ってい る。地衡流速は2点間のGP凶の差を2点間の距離とコリオリのパラメータ∫で除して求めたが,
その際3次のスプライン補問により,基準深度におけるT,Sの値から10m毎の値を求め,それ に基づいてGPン4を計算した。
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第1章 各季節における海洋諸要素の水平分布
1.1ポテンシャル水温(e℃)(図1.1.1〜図1.1.64)
a.西太平洋熱帯域の暖水
海面水温が28℃以上の暖水は140QW以西の熱帯域を占め』F−29℃以上の最高水温域は西太平洋熱 帯域にある。その南側の境界は全季節を通じて15。S付近にあるが,北側の境界は冬季における 10。Nから夏季における250Nまで変化する。その暖水は100〜125m深で100N付近の冷水によって
2つに分かれる。一つはフィリピンから東に伸びる暖水で,もう一つはニューギニア島の東の暖 水である。
フィリピン沖の暖水は250m深で北に広がり,300m深では日本の南方まで移動する。日本の南 方の暖水は,400〜500m深で最も顕著であり,それ以深では深くなるとともに規模が縮小する。
南半球の暖水は,100〜200m深でニューギニア島から東南東方に伸びており,その水温はフィ リピン沖の暖水よりも2〜3℃高い。その暖水は300m深ではオーストラリア北東部から東に伸 び,400m深ではその張り出しは西に退く。オーストラリアの東の暖水は300m深で日本の南方の 暖水よりも約1℃高く,1500m深でも,南偏してニュージーランド北半分にかかるが,明瞭に見
られる(日本の南方の暖水は1000m以深で不明瞭となる〉。
b.北太平洋と南太平洋の冷水
45。N以北の亜寒帯域では,海面水温は冬季の0〜5℃から夏季の8〜15℃まで変化するが,
100血以深では全ての季節で5℃以下である。亜寒帯域の冷水の影響を受けた比較的低温の水は 50m15℃等温線で見ると北米沿岸に沿って30。N付近まで南下している。
』100m以深で東部熱帯域から100N付近に沿らて西へ伸びる冷水が見られ,600m深で消失して
いる。
南極大陸周辺の海面水温はO℃以下で,最低水温は冬季と秋季には一2でに,春季と夏季には 一1℃になるQ
南米沖の100m以浅には比較的低温の水があ6て赤道上を西に張り出している。その冷水は125
〜200m深で100N付近の冷水と一体となる。
1.2塩分(S)(図1.2.1〜図1.2.64)
a.北太平洋および南太平洋の亜熱帯高塩分水
北太平洋の亜熱帯高塩分水は200N〜30。N,145。E〜135。Wの海域の表層にあり,塩分ほ35.0〜
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35.5である。その西側の境界は海面では冬季と春季には145。Eに,夏季と秋季には160。Eにある。
この高塩分水は75七一100m深で縁1400El付近まで,150m深でばフ悉リピ『ン沖合にまで達するが 250m以深には存在しない。
献平洋の塩分35・0以上の亜締高塩分水は瀬ではニューギテア?東榔鰐レ て赤導と 400Sの間のほぼ全域を占める。最高塩分は36.6で,36.0以上の最高塩分蔵は東部の200mないし
250m以浅に存在している。塩分が35.0以上の海域は400m深で急に狭くなり1,600m深で消失する。
b.北太平洋および南太平洋の低塩分水
40。N以北の海面には塩分34.0以下の低塩分水があり,170。W以東ではそれが次第に南に広が りゴ北米沿岸に沿って25QNまで張り出している。この張り出しは100〜200m深では200Nまで達し,
10。N付近を西に張り出す低塩分水と接続している。500m深では中央部から東部にかけての30。N と400Nの間に34.0以下の低塩分水があり,600〜1100m深では北太平洋の亜熱帯全域が3410〜
3生4で相対的に低塩分となうている。
南極大陸と50。Sの問の海面から50m深まででは34.0以下の低塩分水が大きな領域を占めてい る。南極大陸周辺の相対的に高い塩分を持つ水と亜南極海域の低塩分水との境界は75〜1500m深
で50〜65。Sに見られる。
1.3 ポテンシャル密度』(σe㎏/m3)(図1.3.1〜図1.3.64)
a.亜寒帯域および南極海域
冬季の北太平洋亜寒帯域の海面には西部にσθが26.0以上の水があり,東部には25.0〜26.0の やや軽い水がある。この東西での密度差は,相対的に西部が低温・高塩分,東部が高温・低塩分 であることに起因している。
σθが26.0以上の水は海面では夏季以外の季節で見られ,100m以深では全ての季節で同じ程度 の広がりを持っている。南極海域の海面水の密度は27.O以上で,太平洋の海面水で最も重くなっ ている。・最大値はロス海における27.6である。
b.熱帯域および亜熱帯域
熱帯域の西部および東部の海面にはσθが22.0以下の最も軽い水がある。その水は夏季に最も 発達し,100N付近に沿って東西方向に広がる。
北太平洋の亜熱帯域の西部および中央部の表層では等密度線が東西方向に走り,亜熱帯高塩分 水の影響は顕著には表れていない。北太平洋の亜熱帯域の東部の海面には30。Nを中心に密度が 比較的一様な水があり,その値は冬季に24.4〜25.2,夏季に23.8〜24.0である。
南太平洋の亜熱帯域の東部の海面にも300Sを中心として密度が比較的一様な海域があり,その 値は冬季(南半球)に25.0〜26.0,夏季・(南半球)に24.0〜25 0で,北太平洋亜熱帯域東部の水
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よりもやや重い。この比較的密度の一様な水は,北西方向の水温の上昇の効果を打ち消すように 亜熱帯高塩分水が影響を及ぼして生じている。
150〜300m深では,両半球の亜熱帯域はσθが26.O以上の水で囲まれている。
L4 ジオポテンシャルアノマリー(Gm10m2/s2)(図1.4.1〜図1.4.40)
GPン4の等値線は地衡流の流線を表し,北半球ではOPみの高い値を右に見て流れ,南半球では 左に見て流れる。等値線の間隔が狭いほど流速が大きい。
a.北太平洋の亜寒帯環流
亜寒帯環流はカムチャッカ半島沖とアラスカ湾沖の二つの低気圧性環流に分かれる。カム チャッカ半島沖の環流は春季と夏季にやや弱くなるが,少なくとも500m深でも残っている。
b、南北両太平洋の亜熱帯環流
日本の南方には全太平洋でGR4が最も高い海域がある。夏季におけるその海域のGP五最高値 は冬季よりも0.4(10m2/s2)高い(約O.4mの高度差に相当する)。
このGPン4最高域の西側と北側には西岸境界流である黒潮が流れている。黒潮に続いて黒潮続 流,北太平洋海流が東向きに流れているが,東に行くにつれて等値線の問隔が広がり流速が弱く
なる。北米沿岸沖合の40。Nから20。Nにかけては緩やかな南下流のカリフォルニア海流があり,
それに続いて12。N付近に最強部のある幅の広い北赤道海流が西向きに流れている。これらの海 流系が北太平洋の亜熱帯環流を形成している。
南太平洋の亜熱帯環流は300S付近の東向流,南米沖を北上するペルー海流,西へ向かう南赤道 海流および東オーストラリア海流で構成されており,北太平洋の亜熱帯環流よりも低緯度に位置
している。
c.赤道域
100N付近にGP且のトラフがあって,その北側を北赤道海流が流れ,南側を赤道反流が流れて いる。そのトラフは夏季と秋季に発達する。ペルー海流に続いて,150。W以東の赤道上もGP且 のトラフとなっている。
d.南極周極流および南極海域
南極周極流は50。S〜60。SのGmの等値線の密集によって示される。南極周極流は南極大陸の まわりを東向きに流れ,ニュージーランド付近では海底地形の影響を受けて蛇行している。500m 深でのGPン4の南北傾度は海面での南北傾度の6割程度で,流れが深くまで及んでいることを示
している。春季と夏季(南半球)には,ロス海に弱い低気圧性循環がある。
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第2章 海洋諸要素の季節変化の水平分布
2.1ポテンシャル水温(e℃)(図2.1.1〜図2,1.40)
a.冬から春への変化(南半球では夏から秋)
北太平洋の海面水温は,西部では20。N以北で,東部では40。N以北で3℃以上昇温し,特に日 本の東方では5〜7℃昇温している。しかし,亜寒帯域中央部では海面水温の上昇は3℃以下で 周囲より小さくなっている。
南太平洋では海面水温の降下は200Sと50。Sの間およびペルー沖で大きく2〜5℃に達してい
るQ
海面から30m深までは水温変化のパターンは同じであるが,50m深ではメキシコ沖に降温域が 現われ,75m深では北太平洋東部に広がっている。100〜150m深では降温域が北太平洋の広範囲 に広がり,南太平洋では昇温域が顕著となって,海面付近における分布とは符号が反対になって いる。100〜200m深で南赤道海流域の降温が顕著である。
b.春から夏への変化(南半球では秋から冬)
300N〜500Nの海域の海面から30mまでの深度で3〜6℃の大きな昇温となっている。50m深 ではその昇温域は南西に移動して狭くなるとともに昇温も2〜3℃と小さくなっている。東部熱 帯域の10。N付近には50〜150m深で顕著な昇温域と降温域が南北に対になって現われている。
100m以深では,北太平洋で降温域が南から北に広がっている。南太平洋の50m以浅では,300S と50。Sの間で1400W以東の海域および東部赤道域で顕著な降温を示している。
c.夏から秋への変化(南半球では冬から春)
海面では35。N以北で3℃以上の大きな降温を示し,特に北海道東方の1600E付近では8.5℃に 達する。アリューシャン列島の南には,比較的降温が小さい海域がある。50m深では北太平洋北 部に昇温域が現われ,北太平洋の75〜125m深では降温域よりも昇温域の方が卓越している。南 太平洋では50。S,135。W付近に顕著な昇温域があり,その最大値は海面で6.30℃,250m深で3.05℃
である。300S,100。W付近の0〜50m深にも4.4〜2.0℃の昇温域がある。東部赤道域の50〜125m 深に顕著な昇温域と降温域が対になって現われている。
d.秋から冬への変化(南半球では春から夏)
400N,170。E付近の海面に最大値が4.5℃の強い降温域がある。0〜100m深で類似したパター ンを示すが,125m深では北太平洋南部では昇温域が広がる。
南太平洋では30。S〜500Sで1800以東およびペルー沖に4.2〜4.6℃の強い昇温域があり,前者は 0〜250m深に,後者は0〜30m深に存在している。
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北太平洋東部熱帯域の50〜125m深に顕著な昇温域と降温域が対になって現われている。
e.年較差
海面での最大値は北太平洋では日本の東方の12.O℃であり,南太平洋では300S〜50。Sの海域お よびペルー沖の海域での6・0〜7・2℃であり・北木平洋の方が2倍大きレ}?卑都芦よび中央部赤導
域の100−150m深には極大値が7.36〜8.58℃に及ぶ大きな年較差がある。
2.2 塩分(S)(図2.2.1〜図2.2.40)
a.冬から春への変化(南半球では夏から秋)
海面塩分は北太平洋の亜寒帯域の西部および南太平洋の高塩分域で低下している。北太平洋中 央部では亜熱帯高塩分域の北への移動に伴って上昇域と低下域が現われている。東部赤道域には 100N付近に沿った低塩分帯の南への移動と南太平洋の高塩分水の北への張り出しに伴って大き
な低下と上昇を示す海域がある。30。S,1450W付近の顕著な低下は海面から500m深まで見られる。
b.春か.ら夏への変化(南半球では秋から冬)
北太平洋では東部亜熱帯域を除いて海面塩分は低下している。東部亜熱帯域では亜熱帯高塩分 水の張り出しによって塩分が上昇しており,その上昇域は50m深では北向きに広がり,75m深で は北太平洋北部を占めるようになる。1・
南太平洋では海面塩分は熱帯域中央部で上昇し,亜熱帯域で低下している。これらの変化は亜 熱帯高塩分水の北西への張り出しと関係している。80。W〜1500Wの南極大陸沿岸域の0〜100m 深は顕著な低下を示している。
c.夏から秋への変化(南半球では冬から春)
北太平洋の海面塩分はべ リング海付近を除いた亜寒帯域と西部で上昇している。この上昇域 は50〜100m深で低下域に変わっている。北太平洋中央部では亜熱帯高塩分水の南への移動に伴っ て南北に対となった上昇域と低下域が現われている。北太平洋熱帯域西部の100N付近および中 央部の10。N〜200N付近では低下域が帯状に分布している。
南太平洋では海面塩分の上昇域と低下域は複雑な分布を示すが,ニューギニア島から東南東に 伸びる低下域は東部赤道域まで達している。
d.秋から冬への変化(南半球では春から夏)
北太平洋の海面塩分は亜熱帯域の東部および中央部の比較的狭い海域を除いて上昇している。
海面から50m深までは類似した分布を示すが,100〜150m深では亜寒帯域でも低下している。
10。N付近のO〜30m深で上昇は大きく,東部では特に大きいb赤道域の中央部と東部の海面塩 分は低下している。
南太平洋ではニューギニア島から東南東に伸びる海域,500S〜60QSの緯度帯および南極大陸沿
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岸域(特に1500W付近で顕著)で低下している。亜熱帯高塩分水に関連して30。S,、.1400W〜
150。W付近の0〜250m深で顕著な上昇が見られ,最大は海面における1.04であるb e.、年較差
亜熱帯高塩分水の張り出しの季節変化に伴って,北太平洋亜熱帯域東部(最大値0.652〉およ び南太平洋亜熱帯域中央部(最大値1.508)は大きな年較差を示す。熱帯域の低塩分水の変動に より20QN〜20。Sでも年較差が大きい。これらの顕著な年較差は,北太平洋の亜熱帯域では0〜
30m深で,熱帯域では0〜50m深で,そして南太平洋亜熱帯域では0〜400m深で見られる。
2.3 ポテンシャル密度(σe㎏/m3)(図2.3.■〜図2.3.40)、
a.冬から春への変化(南半球では夏から秋)
海面密度は北太平洋全般に減少し,特に亜熱帯域西部で減少量が大きい(1.0〜1.6kg/㎡)。
南太平洋では海面密度は一部の海域を除いて大きくなり,特にペルー沖で増加が著しい(1.0
〜1.4kg/㎡)。南太平洋亜熱帯域中央部では増加域と減少域が東西に隣り合って分布している。
海面から30m深までは同様な分布をしているが,75m以深では南太平洋で減少域が広がっている。
赤道域の100〜150m深で密度の増加が顕著である。
b.春から夏への変化(南半球では秋から冬)
北太平洋では赤道域の一部を除いて海面密度は全般に減少しており,特に日本の東方で滅少量 が大きい(1.0〜1.4kg/㎡)。南太平洋では,南極大陸沿岸域を除いて海面密度は全般に増加して おり,特に30。S,140。W付近では最大1.39kg/㎡の大きな増加を示している。
海面から50m深までは同様な分布を示すが,75m深では北太平洋東部熱帯域の100N付近に沿っ て,最大1.37kg/㎡に及ぶ顕著な増加域が現われる。100〜150m深では赤道域の中央部から東部 にかけて顕著な減少域がある。
c.夏から秋への変化(南半球では冬から春)
北太平洋の海面密度は全般に増加しており,特に日本の東方海域および亜熱帯中央部で増加量 が大きい(1.0〜2.Okg/㎡)。この顕著な増加域は海面から30m深まで見られる。50m深では亜寒 帯域に減少域が広がり,75〜125深では北太平洋で減少域が卓越している。
南太平洋では海面から50m深まで全般に減少域となっており,75m以深で増加域が所々に見ら れる。東部熱帯域の50N,110。W付近の50〜100m深は顕著な増加を示す。
d.秋から冬への変化(南半球では春から夏)
海面密度の変化は夏から秋への変化に類似しているが,日本東方海域の密度の増加はそれほど 大きくなく最大で1.19kg/㎡である。赤道域中央部および東部では10。Nに沿って50〜150m深に 顕著な減少域があり,減少量の最大値は100m深での2.09㎏/㎡である。
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e.年較差
海面密度の顕著な年較差は日本の東方海域および亜熱帯域中央部の海面で見られ,その値は 2。0〜2.6㎏/㎡である。これはこの海域における水温の大きな季節変化によってもたらされてい る。南太平洋ではペルー沖とそれに続く東部赤道域,ニュージーランド北東方および30。S〜50。S の120。W以東に大きな年較差が見られるが,その値は1.0〜2.Okg/㎡である。海面における顕著 な年較差は50m深まで維持され,50〜150m深では北太平洋東部熱帯域および中部赤道域で顕著 な年較差が現われる。
2.4 ジオポテンシャルアノマリー(GP》410m2/s2)(図2.4.1〜図2.4.40)
a.冬から春への変化(南半球では夏から秋)
北太平洋の海面のGR4は亜寒帯域中央部,低緯度域および亜熱帯域中央部の狭い海域で低下 し,それ以外の海域で上昇している。特に東部熱帯域には最大0.184(10m2/s2,以下単位省略)
の顕著な上昇域がある。南太平洋では亜熱帯域中央部と南極大陸周辺海域で上昇し,それ以外の 海域では低下している。北太平洋亜寒帯域の低下域と南太平洋の上昇域は深さとともに拡大し,
50m深では上昇域と低下域は同じ程度の広がりを持っている。
b.春から夏への変化(南半球では秋から冬)
北太平洋の海面のGP孟は10。N〜20。Nを除いて上昇しており,特に日本の東方海域で大きく,
最大0.14になっている。南太平洋では東部熱帯域,ニュージーランド北東方および120。W以東の 南極大陸沿岸域を除いて全般に低下している。低下量は亜熱帯域の130。W付近おタび南極のロス 海沖合で大きく,最大値はそれぞれ一〇.178および一〇.20となっている。50m以深で北太平洋の G朋低下域は北に広がり,100N〜30。Nを占めるようになる。赤道域の中央部および東部の顕著 な上昇域は海面から125m深まで見られる。55QS,135。W付近の顕著な上昇域は海面から少なく
とも900m深まで存在する。
c.夏から秋への変化(南半球では冬から春)
北太平洋の海面のOPン4は全般に低下しており,南太平洋では低下域がとびとびに分布してい る。40。S〜600S,1200W〜160。Wの海域には顕著な上昇域(最大O.286)と低下域(最大一〇.141)
が隣接している。これは冬季(南半球)に見られた南極周極流の小蛇行が春季(南半球)に消失 したために生じたもので,海面から少なくとも900m深まで見られる。50m以深で北太平洋東部 は上昇域となっている。
d.秋から冬への変化(南半球では春から夏)
北太平洋の海面のG♪ン4は10。N〜200Nの海域を除いて全般に低下している。特にO oん5。N,
1200W〜160。Wの海域は顕著な低下(最大一〇.207)を示しており,200m深まで存在する。南太
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平洋では亜熱帯域東部での上昇が著しく,最大0.194に達しており500m深まで見られる。75m以 深では北太平洋中央部で上昇域が広がっている。
e.年較差
年較差が0.1(10m2/s2)以上の部分には点で影をつけてある。海面におけるG朗の年較差は 日本の東方海域,北太平洋熱帯域の中央部から東部にかけての海域,南太平洋亜熱帯域の中央部 から東部にかけての海域および南極周極流域で大きくなっており,最大値はそれぞれ0.200,
O.207,0.194および0.288である。日本東方海域の0.1以上の大きな変動は50m深で消失している。
北太平洋熱帯域の中央部の大きな変動は200m深で,南太平洋亜熱帯域東部の大きな変動は500m 深で消失しているが,南極周極流域の大きな変動は900m深でも見られる。
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第3章 各季節における海洋諸要素の鉛直断面分布
3.1ポテンシャル水温(e℃)(図3.1.1〜図3.1.112)
a.南北断面分布
赤道域における表層の暖水は1500Eと1600Eの間で29℃以上の範囲が最も広く,発達している が,夏季には経度で10。程西に寄っている。その暖水は夏季には北太平洋の亜熱帯域で北に広がる。
亜熱帯の暖水を示す等温線の下方へのふくらみは,深さとともに高緯度側にずれ,北太平洋では 700m深で消失するが,南太平洋の100。W以西では1400〜1500m深でも見られる。
200N付近の600〜700m以浅および200S付近の1500m以浅で見られる等温線の上方へのふくら みは100N付近の300m以浅で一つに融合している。
南極収束線は500S〜60。Sにあり,その近辺では等温線は急勾配で下方に沈み,水温の水平傾度 が大きい。南極収束線の南には,0〜200m深に0℃以下の低温な水があり,200〜1000m深を1
〜2℃の相対的に暖かい水が占め,1000m以深には0〜1℃の水がある。この水温の三層構造は 全ての季節で見られ,170。W〜140。Wで顕著である。また,表層の低温水は春季と夏季(南半球)
に1600W〜1400Wの100m深付近で北に張り出す。
北太平洋の亜寒帯収束線においても等温線の鉛直勾配は大きいが,その大きな勾配は1500m深 には及んでいない。亜寒帯域の50m以浅は春季と夏季に強い成層状態になる。亜寒帯域の160。E 以東の800m以浅に等温線の上方へのふくらみがあるが,これは亜寒帯域における湧昇を示して いるものと思われる。
b.東西断面分布
50。Nに沿った断面では,5℃以上の相対的に暖かい水が東部の400m以浅にあり,3℃以下の 低温な水がオホーック海の1000m以浅と全域 り900m以深を占めている。中央部には2〜4℃の 比較的一様な水温を持った水が全層にある。春季と夏季には50m以浅に水温躍層が形成される。
40・N断面はほぼ亜寒帯海流ないし北太平洋海流に沿っていて,等温線の深度分布に大きな変化 はないが中央部でやや深くなっている。北太平洋の亜熱帯環流の中央部を東西に横切る20。N断 面では,水温躍層の深度と鉛直傾度は西部で深くて小さいが東部では浅くて大きいことがわかる。
西部の陸岸の近くには西岸境界流の存在を示す等温線深度の急変が現われている。10。Nおよび 赤道断面では水温躍層が最も浅くて強く,西部では100〜250m深に,東部では50m以浅にある。
赤道での表層混合層は西部よりも1800付近でやや厚くなっている。200S断面の水温分布は200N 断面と類似しているが,西岸境界流の存在を示すような等温線深度の急変は見られない。
40QSと50QSの断面ではニュージーランドおよびその東方の海底地形(キャンベル海台,チャ
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タム海膨)の影響を受けて等温線深度が急変しているが,400Sでは等温線が下方に張り出し,
50。Sでは上方に張り出して逆になっている。
3.2塩分(S)(図3.2.1〜図3.2.112)
a.南北断面分布
塩分35.0以上の亜熱帯高塩分水は,北太平洋では20。N〜300Nの海面から200m深までに存在し,
最高塩分は35.4程度である。南太平洋では35.0以上の高塩分水は赤道から40。Sの海面から400m 深までに分布し,最高塩分は36.4程度である。北太平洋の亜寒帯中層水および南太平洋の南極中 層水は塩分極小層を形成する。北太平洋亜寒帯域の表層底部からの塩分34.0以下の低塩分水の南 方への張り出しは各季節とも160。W〜150。Wで最も顕著である。34.1の等塩分線で見ると低塩分 水の張り出しの先端は300N付近の600〜800m深にあり,そこからさらに南方上方へ伸びている。
130。W付近には200m深を南に張り出す低塩分水があり,浅い塩分極小層を形成している。
南極中層水を形成する南極収束線付近からの低塩分水の北方下方への張り出しは,1600E付近 で最も顕著で,34.4の等塩分線で見てその張り出しの先端は50。S付近の1200m深に達している。
200S〜400Sの600〜1200m深にも塩分極小層を形成する低塩分水があって,170。W以西では南極 収束線付近から北方下方へ張り出す低塩分水と分離しているが,160QW以東では一緒になってい
る。
b.東西断面分布
50。N断面では,各季節とも100〜200m深に塩分躍層がある。400N断面では塩分極小層は200〜
600m深に見られ,冬季には34.0以下の水が4つの部分に分かれている。300Nでは東部の表層か ら西部の700〜800m層に張り出す中層水が顕著である。20QNでは冬季と秋季に亜熱帯の最高塩 分水が1700E〜180。で海面に露出しており,蒸発によって高塩分水が形成されていることを示し ている。その高い塩分水は海面下を東西に張り出して塩分極大層を形成している。200S断面では 1400W〜100。Wの海面から200m深に36.O以上の高塩分水があり,この海域で蒸発によって高塩
分水が形成されていることを示している。この高塩分水は夏季(南半球)に最も発達して,西方 には1500Wまで達し下方には250m深まで及んでいる。この高塩分水は100〜300m深を北と西に 伸びている。300S,40。S断面では塩分極小層が東部の表層から西部の800〜1200m層に伸びてい るが,北太平洋の場合ほど鮮明ではない。
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3.3 ポテンシャル密度(σe㎏/m3)(図3.3.1〜図3.3.112)
a.南北断面分布
ポテンシャル水温と非常に良く似た分布をしている。1700W〜150。Wの断面では,30。N付近 の等温線の下方へのふくらみがせいぜい700m深までであるが,ポテンシャル密度の等値線の下 方へのふくらみは1200m深まで見られる。これは低塩分の中層水の下層への張り出しの影響であ る。南太平洋の140。W以東でもこれと同様な現象が見られる。南太平洋熱帯域から亜熱帯域にか けての表層では1600W〜140。Wで等密度線が空間スケールの小さい変化を示すが,これは亜熱帯 高塩分水の影響である。
ポテンシャル密度の範囲は西部赤道域の海面の21.4から冬季(南半球)のロス海における亜表 層の28.0までである。
b.東西断面分布
50。N断面で,中央部でのポテンシャル密度の成層は塩分の成層の影響を強く受けている。
400Nには東部にσθ=25.0の軽い水があるが,これにも低塩分水が寄与している。また,東部の 沿岸域500m以深でσθの等値線の傾きはSに類似しθとは逆のセンスになっている。このように 亜寒帯域ではσθの分布にはSの影響が大きいが,これは水温変化が小さいからである。他の断 面ではσθの分布はθの分布に類似しているが,30。S断面で1500W〜1400Wの200〜500m深には
θの分布に見られないようなσθの複雑な分布がある。
3.4地衡流速(cm/s)(図3.4.1〜図3.4.160)
a.地衡流速東西成分の南北断面分布と東西断面分布
150。E,160。E断面では東向きの黒潮続流の中心は350N付近にあり,1000m深まで及んでいる。
180。以東では亜寒帯海流,北太平洋海流の東向流は南北に広がり,中心は400N〜50。Nにある。
流れの及ぶ深さも東に行くにつれて浅くなり,1400Wでは500m深となっている。
40。N東酉断面では170。E付近で東向きの流れが最も深くなっている。300N断面では150。E以東 で表層は東向き,中・深層は西向きの流れになっている。
西向きの北赤道海流の中心は12。N〜15。Nの100m以浅で海面下にある。10。N断面でこの状況は 良く示されており,西向きの流れの中心は西部では亜表層にあって流速が大きく,東部では海面 付近にあって流速が小さい。ただし,夏季,秋季には160。W〜1100W・で東向流が現われる。5。N 断面では東流の流速の鉛直傾度が大きい層が200m深付近にあり,それは東の方ほど浅くなって いる。西向きの南赤道海流の中心は160。E,170。Eでは13。S付近の100〜200m深にあるが,1800 以東では10。Sと赤道の間の0〜200m深にある。南太平洋の亜熱帯環流の東向きの流れは25。S〜
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40。Sの800m以浅を占め(その中心は300S付近にある),東の方ほど南北に広がり,夏季,秋季(南 半球)では東の方ほど浅くなっている。(Uの160。E以東の南北断面図および300S断面図参照〉。
南極周極流は500S〜60。Sにあって少なくとも1300m深まで及んでいるが,120。W〜100。Wでゃや 浅くなっている。南極周極流の最強流域は500S断面では140。E付近と150。W付近にあり,600S断 面では170QE付近にある。
b.地衡流南北成分の東西断面分布
400N断面では,おおよそ180。〜1700W以西で北向き,それ以東で南向きの成分を持っている。
300N断面では150。W以東の300m以浅で南向きの成分が多少強く,亜熱帯環流の南下流を示して いる。200N断面では120。E付近に西岸境界流を示す強い北上流が見られる。・10。N〜100S断面で は東西流の小蛇行に伴う北流と南流の小さいスケールの構造がある・南極周極流の蛇行により,
600S,1600E〜170。Eに比較的強い南流成分が見られる。
第3章のまとめとして,南北両太平洋の亜熱帯高塩分水,中層水と密度場,流速場との関係に ついて述べる。
北太平洋の亜熱帯高塩分水(S≧35.0)はσθ=23.0〜25.0の密度を持ち,200m以浅に存在し てその上層は東向き,下層は西向きの流れの場の中にある。σθ=24.4〜24.6面に沿って高塩分 水が東に伸びているが,その場の流れは西向きになっている(例えば,冬季20。N東西断面図参照)。
南太平洋の亜熱帯高塩分水は塩分35.0以上の部分はσθ=26.4以下,塩分36.0以上の部分は σθ=23.3〜25.6に分布している(S≧35.0の水の方が深くまで分布しているので,最大密度が 大きくなる。例えば,冬季20。S東西断面図参照)。10。S断面では亜表層のS≧36.Oの高塩分水は σρ=23.0〜25.9の範囲にある。この高塩分水は100S,20。S断面では140。W以西の206m以浅を 除いて西向きの流れの中にあり,300S『断面では東向.きの流れの中にある。
北太平洋亜寒帯域から南方へ張り出す中層水はほぼσθ=26.8面に沿っており,そこでは東向 きの流れが卓越しているが弱い南向きの流速成分も持っている(例えば冬季1600W南北断面図参 照およびγの冬季400N東西断面図参照)。塩分の東西断面で西向きに伸びる極小層は32。N〜380N では東向きの流れの場の中にあり,30。N以南では西向きの流れの場の中にある(例えば冬季 30。N東西断面図参照)。東部の表層の低塩分水の密度はσθニ26.0以下であり,亜寒帯表層の低
塩分水が南下してきたもので,中層水とは別のものである。
南極収束線から沈降する低塩分水はほぼσθ・=27.2〜27.3面に沿っており,北太平洋の中層水 よりも重く,深くまで達している(例えば160。E南北断面図参照)。300S,40。Sにおける中層水 はσθ、ニ27.0〜27.2の密度を持ち,北太平洋の中層水よりも厚い層をなしている。その中層水は 30。Sでは西向きの流れの中に,40。Sでは東向きの流れの中にある。
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お わ り に
Levitusの海洋データセットのうち季節平均データを用いて,太平洋における海洋諸要素の分 布とそれらの要素の季節問差の分布を示し,その特徴を述べた。
この技術報告が海況解析や数値シミュレーション等において様々に利用されることを願ってい
る。
謝辞
この技術報告を刊行するにあたり,原稿を閲読していただいた佐野海洋研究部長はじめ有益な 助言を与えてくれた同僚諸氏に感謝します。
最後に,この海洋季節平均分布図の発行に対し快く許可してくださったSydney Levitus博士の 好意に感謝します。
参考文献
Fofonoff,N.P。and R.C.Millard Jr.,1983:Algorithms for computation of fundamental properties of seawater,Unesco Technical Papers in Marine Science No。44,UNESCO,Paris.
Levitus,S.,1982:Climatological Atlas of the World Ocean,NOAA Professional Paper13,173pp.
日本海洋学会,1970:海洋観測指針(気象庁編),第5章,海水の状態方程式及び力学計算,91−102.
UNESCO,19811The practical salinity scale1978and the international equation of state of seawater−
1980,Unesco Technical Papers in Marine Science No.36,UNESCO,Parls.
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図1.1.1〜1.1.16 図1.1.17〜1.1.32 図1.1.33〜1.1.48 図1.1.49〜1.1.64 図1.2.1〜1.2.16 図1.2.17〜1.2.32 図1.2.33〜1.2.48 図1.2.49〜1.2.64 図1.3.1〜1.3.16 図1.3.17〜1.3.32 図1.3.33〜1.3.48 図1.3.49〜1.3.64 図1.4.1〜1.4.10 図1.4.11〜1.4.20 図1.4.21〜1.4.30 図1.4.31〜1.4.40 図2.1.1〜2.1.8 図2.1.9 〜2.1.16 図2.1.17〜2.1.24 図2.1.25〜2.1.32 図2.1.33〜2.1.40 図2.2.1〜2.2.8 図2.2.9〜2.2.16 図2.2.17〜2.2.24 図2.2.25〜2.2.32 図2.2.33〜2.2.40 図2.3.1〜2.3.8 図2.3.9〜2.3.16 図2.3.17〜2.3.24 図2.3.25〜2.3.32
図 一 覧 表
冬季におけるポテンシャル水温水平分布 29 春季におけるポテンシャル水温水平分布 37 夏季におけるポテンシャル水温水平分布 45 秋季におけるポテンシャル水温水平分布 ……・ 53 冬季における塩分水平分布 ・…… 61 春季における塩分水平分布 ・… 69 夏季における塩分水平分布 77 秋季における塩分水平分布 ・・85 冬季におけるポテンシャル密度水平分布 93 春季におけるポテンシャル密度水平分布 ・… 101 夏季におけるポテンシャル密度水平分布 …・…… 109 秋季におけるポテンシャル密度水平分布 ・……117 冬季におけるGPレ4水平分布・一………・・…… ……・125 春季におけるGPン4水平分布…・…一………・・…… ・・130 夏季におけるGm水平分布・……・…………・一… ……… 135 秋季におけるGPン4水平分布………一…・一… …・ 140 ポテンシャル水温の差の水平分布(春季一冬季) 145 ポテンシャル水温の差の水平分布(夏季一春季) ・… 149 ポテンシャル水温の差の水平分布(秋季一夏季) …一・153 ポテンシャル水温の差の水平分布(冬季一秋季) …・ ・… 157 ポテンシャル水温年較差の水平分布 …・ 161 塩分の差の水平分布(春季一冬季) 165 塩分の差の水平分布(夏季一春季) 169 塩分の差の水平分布(秋季一夏季) ・・173 塩分の差の水平分布(冬季一秋季) …・ ……・177 塩分年較差の水平分布 …・…………・…・……・…… 181 ポテンシャル密度の差の水平分布(春季一冬季) …一 185 ポテンシャル密度の差の水平分布(夏季一春季) 189 ポテンシャル密度の差の水平分布(秋季一夏季) ・… 193 ポテンシャル密度の差の水平分布(冬季一秋季) ・… 197
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