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坂本論文へのコメント

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Academic year: 2021

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坂本論文へのコメント

星野崇宏

(東京大学教養学部)

総括的なコメント

○本研究は日本におけるパネル調査データを利用して「一人親かどうか」「弱齢出産かどう か」といった家庭環境が子供の達成学歴や就業に及ぼす影響について、単なる群間差では なく因果効果の推定に踏み込んだという点について大いに評価に値する。

また、解析手法としても、近年欧米の政策評価や医学疫学分野の研究で利用されるよう な先端的手法を積極的に利用している点で優れていると考える。

○分析の結果は「一人親かどうか」の効果は見られなかったと言う点で、これまでの研究 結果と異なる。

○但し、既存のデータを利用した分析であることから、本来の研究関心において重要であ る変数のいくつかが測定されていないことに伴う問題がある。具体的には、「一人親かどう か」「弱齢出産かどうか」の因果効果を推定する際に影響を除去すべき交絡要因・共変量と して筆者は少年期の家庭の経済状況の重要性を指摘しているが、実際の解析で利用された 共変量としては父親と母親の「生年」「学歴」及び「父親の職業」「小中学校当事の居住都 道府県」のみであり、家庭の経済状況に関する変数が利用されていない。例えば日本版一 般社会調査においては少年期の経済状況を回顧式で聞く項目が用意されているが、本パネ ル調査では調査されておらず、利用できない。しかし、両親の年齢や学歴、職業を経済状 況の代理変数として利用することができるか疑問である。実際にLogit Model の決定係数 は極めて低い。別の代理変数は利用できないのであろうか?

○これに関連して、共変量がこのように少ないのであれば、共変量も独立変数として利用 する単純なロジスティック回帰分析モデルを利用してもあまり結果が変わらないという報 告がなされている。

○VI 節で述べられている通り、政策によって操作可能な変数(具体的には給付など)の効 果がどの程度のものであるかについては、今後別のデータを用いた検討がされるとよいと 考える。

(2)

個別的なコメント

○III節2の変数の説明において、独立変数と従属変数は説明されているが、調整に利用す る共変量が明記されておらず(IV の「記述統計による比較」において記載されているが)、

この記載法は読み進めるにあたり、分かりにくく感じた。

○「身体的・精神的苦痛尺度」の構成については、計量心理学的な観点からはやや疑問に 感じる。尺度の妥当性・信頼性の報告をして頂くことが望ましい。

○同様に初職についても、単に非正規雇用か否かを議論するのではなく、たとえばSSM調 査で計算された職業威信スコアなどを利用して連続変数として考える方が意味はあるので はないか?

○回顧式に頼らない、家族を追跡する形のパネル調査(NLSYではその部分サンプルの子供 に対して認知能力のテストまで行っている)の結果の方が測定値の妥当性と言う点で望まし く、(これは本論文そのものに対するコメントではないが)本パネル調査においても同様の 努力が今後なされることが望まれる。

○一人親の場合には両親のうち片親(多くは父親)に関する調査項目への回答が非常に信 頼性が低いと思われる。この点は重要と考えるが、論文ではLogit Selectionの推計結果の 表において少し触れているのみである。

○式(5)の0≤u≤1u =0,1の間違いではないか?

V節3節後半は既知の結果であるので、引用ですませるか、付録に回すほうがよいと考え られる。

○ATT が 有 意 で な い モ デ ル に つ い て は 感 度 分 析 を 行 わ な か っ た と あ る が 、Hidden

Covariateの影響により本来は有意であるが、これを考慮しないと有意にならないという可

能性があるため、実施したほうがよいと思われる。

○誤字脱字がところどころで見られるので、チェックをして頂きたい。

参照

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