−大学での授業を手掛かりに−
著者 竹内 進
雑誌名 大和大学研究紀要
巻 6
ページ 69‑78
発行年 2020‑03‑16
URL http://id.nii.ac.jp/1677/00000183/
フラッグフットボールの教材的価値の検討(前編)
−大学での授業を手掛かりに−
Consideration of the educational value of flag football.(First part)
−With use of lessons at university−
竹 内 進*
TAKEUCHI Susumu
要 旨
アメリカンフットボールが起源で有り,日本には1990年代後半くらいから広まったフラッグフットボールというスポー ツがある。そのスポーツもまだまだ日本ではマイナーな物ではある。学習指導要領の小学校解説に取り上げられてから 徐々に広まり,2017年3月に従来の解説書(小学校体育編)のみでなく,小学校高学年において学習指導要領「本編」へ の掲載が確定したことを機に,もっと広範囲に普及されることが予想される。そんなスポーツが,果たして小学校の体育 教材にふさわしいのか?教える中身や教え方はどのようにすれば良いのか?大学生の授業を実施し,分析と検証を行う。
Abstract
There was a sport called Flag Football that was originally brought from American football and spread to Japan since the latter half of 1990s. The sport is still not so popular in Japan, but it has gradually spread since it being taken up by elementary school commentary on the education guideline.
In the upper grades of elementary school, publication to the education guideline “full edition” was fixed.
As a result, it will be expected that in March 2017 it spreads not only in the conventional manual(elementary school physical education)but also in a wider range. Is such a sport really suitable as a physical education material in elementary school? What and how we should teach to students? Proceed university classes, and conduct analysis and verification.
キーワード:フラッグフットボール 小学校体育 教材的価値
keywords:Flag football, Elementary school physical education, Value as teaching material
Ⅰ.はじめに
1 .フラッグフットボールが広範囲に普及か?
問題設定については,要旨に述べたが,まずは次に,
紹介する文章をご覧頂きたい。
「2017年3月31日付で新たな学習指導要領が文部科学 省より発表されました。フラッグフットボールは従来の 解説書(小学校体育編)のみでなく,小学校高学年にお いて学習指導要領「本編」への掲載が確定致しました。
発表されました学習指導要領(小学校)につきまして はこちらよりご確認ください。
http://www.mext.go.jp//a̲menu/syotou/new-cs/index.
htm
フラッグフットボールが解説書に掲載された第一期の
9年間,様々な寄附事業と共に実に6,000校を越える小学校で授業事例・授業実績が生まれて参りました。この 教育効果は高く評価頂いており,今回の本編への掲載に よって,今後は一層全国規模の取り組みが拡大されるこ とと思われます。是非,本件の発表をご認識の上,2017
年度以降もあらためまして,フラッグフットボールを宜 しくお願い申し上げます。 」
と,上記の様な文章が公益財団法人日本フラッグフッ トボール協会の HP(1)に掲載されている。この協会では 普及拡大のために,全国小学校フラッグフットボール パッケージプレゼントというキャンペーンを行ってい る。協会の発表によると,2010年には,200校2015年 には1000校300000人分の用具(ボール&フラッグ)が 寄贈されている。ちなみに2019年度で確認すると750 校にボールのみ10球の寄贈と変更になっている。この 寄贈には江崎グリコ(株)等が賛同し支援しているが,
累計で660万人分の用具を寄贈している様である。この 他には最近では長野県南箕輪村のふるさと返礼品とし て,5000円に対してボール一球という制度もスタート している様だ。現場では大変有り難い制度で有り,普及 の一助になっていることは明らかである。
*大和大学教育学部 令和元年12月11日受理
大和大学 研究紀要 第6巻 教育学部編 2020年3月 pp.69〜78
Ⅱ.研究の目的
Ⅲ.研究の方法
Ⅳ.教材分析
2 .フラッグフットボールの教材的価値
学校体育とクラブ活動とでは,同じスポーツを扱って いても,それは全く違うものである。クラブ活動にはふ さわしい競技でも,体育の授業教材としてふさわしくな ければ,授業への導入は諦めるべきではないかと考える。
前任校ではクラブ活動として,この競技に取り組んで いた。馴染みのないスポーツではあるが,あっという間 に虜になる学生が多かった。レベルも上がり卒業後の OB チームも複数誕生したほどで,指導には手応えと自 信を持っていた。しかし授業となると,運動が得意でな い学生も多く,運動能力に差がありすぎるので,難しさ を感じていた。クラブでも,全員運動能力が高いわけで もなかったが,興味を持って主体的に部員になった者達 なので練習量とポジションの特性に応じた役割分担と専 門性を身につけることで,ものになっていた。
この両者の差は,授業ではカバーできない。しかし,
運動が苦手な学生にも,フラッグフットボールのおもし ろさを,なんとか伝えられないだろうか?と毎年,授業 構想に手を入れて悪戦苦闘していた。「丁寧に伝えよう とすると時間がかかる」「時間をかけると,勘の良い者 が退屈する」苦手な者は,難解な物に対して拒否感を持 つ「複雑なルールを嫌がる」暑い時期だったからか?屋 外だったからか?寒かったからか?等々…その度に色々 な原因が考えられ,改善を試みたが,結局満足のいく出 来にはならなかった。
フラッグフットボールを,体育教材にするのは,「戦 略戦術」の面白さを学ばせるのにふさわしいと考えられ ている。私自身も授業で実施している中でその様に感じ てきた。しかしながら,今まで見聞きしてきた実践報告 では,「戦略戦術」の面白さを学ばせるのにふさわしい と考え実践している割には,「その面白さを学ばせたと は思えない」と,実践報告を見聞きして疑問に思っていた。
小学校の教員養成の中で,現場に進む学生たちに授業 の中で「なにを・どこまで・どのように」を,伝えれば いいのか検証するために,大学生への授業を通して,取 り組んでいくことにした。
次の手法で進める。
①2018年度後期実施スポーツを14回の実技で行う。
②初等幼児教育専攻の学生100名を対象とする。
③授業データーを取り分析する。
1 .研究会で検討された授業でも…
スポーツを教材に取り入れる時には,小学校体育の授
業に相応しい物に加工することも多い。例えばバスケッ トボールは,5人対5人の競技だが,5人対5人のフルコー トのプレーを最終形として目指すのではなく,3人対3 人のハーフコートを完成形で目指すことが多い。バレー ボールは,アンダーハンドレシーブをキャッチに変える ホールディングバレーがふさわしい等々,色々教材を 作ってきている。それは,本来「そのスポーツが持つ運 動文化を大事に」しつつ,「全ての子どもたちが活躍で きるようにするために」という視点で現場の実践を積み 重ねながら作り出してきたのである。
スポーツ教材をそのまま教えることだけが本来の小学 校体育の目標ではないので,スポーツ教材で教えたい中 身が別にあるはずだと考える。そうであれば,正式ルー ルにこだわらなくても良い。というよりはこだわりすぎ るべきで無い物がある。とすればフラッグフットボール を小学校体育の教材とする場合,何を目標にして授業を 組み立てれば良いのだろう。
「体育科技術指導授業プラン集」(2)によると次の様に紹 介されている。
「 目標
●タッチダウンをめざして一人ひとりの作戦を立て,
ゲームで試し確かめる。
●作戦の仕組みや,作戦の持つ意味について考える。
フラッグフットボールは,アメリカンフットボールの ルールを簡易化し,危険なタックルの代わりに腰につけ たフラッグ(しっぽ)を取るようにしたものです。子ど もたちはボールゲームでも,誰もがシュートしたい, ゴー ルを決めたいと心の中で願っています。
フラッグフットボールは,そんな子どもたちの願いを かなえるのにふさわしい教材です。誰もがゴール(タッ チダウン)できる可能性があり,しかも,1人の力では なく,みんなで力を合わせてタッチダウンするところに 特徴があります。
そのみんなの協力の真ん中にあってチームみんなをつ ないでいるのが「作戦」です。 「○○さんがタッチダウ ンする作戦」として作戦を考えるのですが,そのタッチ ダウンのためにチームの一人ひとりに役割があって,そ れをみんなが息を合わせてきっちりやることで作戦は成 功します。攻撃側と防衛側が分かれていて,1回ごとの 攻撃の前に短い作戦タイム(ハドル) があるフラッグフッ トボールは,他のボールゲームのように練習した作戦を 使える場面が偶然にできるのではなく,作戦通りにゲー ムを進めることができるのです。このようにフラッグ フットボールは「みんな」を大切にし,作戦や作戦の意 味について学ぶのにふさわしい教材と言えます。 」
(注)太字部分は筆者の強調として変更した。
上記の様に説明しているところについては,私も異存 のないところで,他の球技と大きく違うところがある。
フラッグフットボールの教材的価値の検討(前編) −大学での授業を手掛かりに−
表 1 (授業計画モデルは12時間)
① プレーとプレーの間に作戦を確認するハドルとい う時間がある。
② 攻防入り乱れた陣取りゲームだが,小学校の体育 では,攻守切り替え型で行えるので分かりやすい。
③ 作戦を立てたり,考えたり,練習したりと,チー ムのコミュニケーションが欠かせないのでコミュ ニケーション力が高まりやすい。
④ ただ勝った,負けただけではなく作戦が 上手 く いったという,深いレベルの面白さを体感しやすい。
⑤ 作戦により,それぞれの役目が明確になるので,
運動が苦手な児童も理解して動きやすい。
などであると思われる。そしてその辺りのことからも「戦 略・戦術を学ぶのにはふさわしい教材」である。そんな 風に言われている。しかし,各種指導書やテキスト,そ して各現場での実践を見聞きする分には,その狙いに到 達しているとは思えないというのが現状ではないかと考 えている。上記で引用した「体育科技術指導授業プラン 集」においても授業プランは下の表 1の様になっている。
この競技は,正式ルールでは5人対5人の競技である。
しかしながら,小学校の体育の授業レベルでは,到底 そこまでは到達できないと考えている。しかし,指導書 やテキストを鵜呑みにして,5人対5人で実践している 先生もいるようだが…ほとんど混乱だけで終わる児童が 大半ではないだろうか。現場での各教材にかける授業時 数が,大体5〜6時間が多いと言われている中で,この 授業プランは,ほぼ倍の計12時間を,費やしていると はいえ,この授業プランは無謀と言わざるをえない。
2 .三つの特徴
今回のこの実践では,三つの大きな特徴を持たせた。
その特徴の一つ目は,14回分の授業計画のことである。
一応15コマ分の授業計画は立てたが,その授業計画に 縛られることなく,授業の様子を見ながら軌道修正して いくことを考えていた。それは,ガチガチの計画ではな く臨機応変に行いながら,授業の中でより良い授業計画 を作り上げるために必要だと考えてのことだった。今ま での取り組みの中では,限られた少ない授業計画の中で,
学ばせたい中身と,到達点を決めて授業していたので,
なんとしても進めていかなければという焦りと,学生の
「意味不明」「面白くない」という言葉や態度で,更に負 の連鎖のようになっていたことがあった。結果的には,
やりきった時に,授業者の思いが伝わったという結果も 見えてはいたが,「全ての学生が…」という結果にはなっ ていなかった。そこで,14コマもあるのだから,じっ くり取り組もう。そして,到達点を決めずに,それに縛 られないでいこうと考えてのことだった。
二つ目の特徴は,研究会の報告で聞いた実践で小学生 低学年でも,タブレットを授業で活用できていることに 刺激を受け,タブレットを使用することにしたことであ る。各チーム1台ずつタブレットを渡しチームの練習風 景や,試合の様子を録画してもらうことにした。2クラ ス同時並行ながらも,授業終了後すぐに PC にデーター を吸い上げ整理し,次の授業に備えていた。そういう作 業をしながら,映像を視聴しピックアップしながら資料 映像を作り上げ,タブレットにデーターを入れておいた。
授業開始の際,プリントを配布し前回の授業分析や,今 回の授業の流れ等を説明し,各班ごとに練習前にタブ レットの中の資料映像を視聴させた。言葉や図ではわか らないことも,具体的なプレーをスローモーションや静 止画像に加工し,テロップを入れて作った。そんな資料 映像は分かりやすかったようで,そのことに対する評価 の声も多かった。
三つ目の特徴は,学生の出来栄えは,見てわかる部分 であるが,理解度や関心度など目には見えない部分を見 ることを考えた。今までは,毎回丁寧な聞き取りや分析 は出来ていなかった。そこに新たな手法を使うことで解 決しようと考えた。
そのために,グーグルアンケートを導入した。授業で の学びが,どの程度伝わっているのかを中心に質問項目 を作り,アンケートを取ることにした。PC を通して集 まった物は瞬時に Excel で読み込め,グラフ化も出来て いるという便利な物だ。もちろん,そのデーターを自分 なりに,別の使い方も出来る。テキストマイニング手法(3)
での分析にも使用した。
そうして集約した情報のグラフや分析コメントを添え たプリントを作成し,授業初めに説明した。
3 .授業の進め方
授業は,初等幼児教育専攻の一般教養(スポーツ)卒 業要件の科目なので全員必修の授業である。1回生2ク ラス101名が対象。それぞれ,1組男子28人女子18人の 計46人。2組男子32人女子23人の計55人。前期に行わ れた,初等体育の最終にアンケートを取り,グループ分 けの参考にして,1,2組それぞれ6グループずつに分け た。その際のアンケートは次頁の図 1になる。性別と球
技の得意度で判断することにした。(今までの経験上,バ スケットボールの経験者は上達が早い)このアンケート から,グーグルアンケートを使用した。そして,その作 成したアンケートを,学生に提示する時にふさわしいフ リーソフトの QR のすすめ(4)がある。これで,QR コー ドを作成すると次のような図 2ができあが る。それをプリントで配布しスマホで読み 込むと,スマホ上にアンケートが出てくる。
できるだけ答えやすいように,そして集約 しやすいようにと試行錯誤しながら作成し てきた。学生たちも忙しいので,ついつい忘れてしまう こともあり,毎回全員分を集められてはいないのは,残 念であり今後の改善点である。しかし,効果は絶大ある。
学生たちの理解度や授業への関心度などは,今までは表 面上の雰囲気で判断するしかなかった。そのため,実践 終了時に単元のまとめ的なプリントへの記入の中身を見 て,授業者と学生たちに意識の乖離があったことを知り,
がっかりすることもあり,難しさを感じていた部分であ る(学生たちの授業評価は手厳しい)。そこが改善され るので,この手法を使うのは,忙しい中では BEST に近 い手法だと思われる。
4 .授業開始
① オリエンテーション
前期終わりの(初等体育)の最後に,後期から始まる 授業についての簡単な予告(フラッグフットボールとい う球技に取り組むこと)を告げ,チーム分けのために,
アンケート図 2に答えてもらうようにお願いした。その 辺りの考え方(チーム分けの基準等)については説明し たとおりだ。当然男女の比率等も,出来るだけ条件を揃 えた。
初回は,教室でのオリエンテーションを実施した。チー ム分けを発表し,チームごとに着席させた。プリントの 資料を配付した物を元に説明した。そして,資料用の映 像を鑑賞させた。前任校の時から,どのような映像を見
せればいいのか?資料映像を編集したり,吟味してきた が,まだパーフェクトな物がないというのが実感である。
その後,タブレットを渡して使用に慣れることを目的と しながら,チームで自己紹介等を行った。全体的にはい い雰囲気での授業となった。事前アンケートの結果でも,
この球技に対しての知識や経験は皆無に近いが,楽しみ にしているという結果は出ていた。その結果は上のグラ
フ 1
のとおりになった。オリエンテーションで教材紹介には,次のようなこと を伝えた。
「フラッグフットボールとは 1 ,アメリカで一般的に広く普及されています。
2 ,楕円形のボールを使った鬼ごっこに似た物です。
3 ,腰に下げたフラッグを取られないように敵の陣地 に,ボールを持ち込むゲームです。
4 ,アメリカンフットボールの簡略版です。
5 ,危険なプレーをルールで排除しているので,男女混 合でも,気軽に誰でもが楽しめます。
6 ,作戦を考え実行する,相手の考えを予想するおもし ろさがあります。 作戦通りにいった時の感激は一塩です。
7 ,仲間との結びつきが強くなる教材です。
8 ,足が速いだけで勝つ!体が大きいだけで勝つ!とい う単純な物ではありません。
9 ,ほとんどの人が初体験だということも併せて,最初 は戸惑うことも多いし,全てを理解するまで時間がか かると思いますが,徐々に面白くなってくるのでご期 待を!
この授業でも,今までの初等体育の授業のように,ス モールステップを使用してのグループ学習を行います。
ですので,いきなり5人対5人の正式ルールで行うわけ でもありませんし,ただ面白いだけ,うまくなれば良い,
勝てば良いという授業方法ではありません。将来現場で,
どのように指導していけば児童がわかりやすく興味を 持って授業に取り組めるようになるかを学ぶことが大事 になってきます。最後まで忘れないでください。 」
グラフ 1 図 1
図 2
フラッグフットボールの教材的価値の検討(前編) −大学での授業を手掛かりに−
② 2:1ランプレーのみ
毎回この学びについては,うまくいくか不安な部分だ。
短大の時にはこの辺りをクリアーさせることを,目標に 進めていくと学生の様子からして,あまり得策ではない のではないか?と思っていた。なぜかと言えば,フラッ グフットボールではガードが大っぴらに認められてはい るものの,単純なランプレーだけで大きくゲインし続け ることはない。ここに時間をかけるのではなく,ハンド オフやフェイクといったプレーに時間をかける方が良い と思っていた。限られた授業時間内に実践を進めていく のであれば,それが得策だと思っていたからだ。そして,
フラッグフットボールの面白さをより深く掴むために は,それが近道だと考えていたからだ。
しかし,研究会で学ぶ内に,小学生段階ではここが大 事だと理解が変わった。実践が最終までいっても,3:
3まで到達できるかどうか?という計画であれば,欲張 る必要はないし,ガードを最大限に生かすための力は,
運動が苦手な児童を救うことになる。そして,自分のや ることが分かりやすくなる。そして結果的にフラッグ フットボール(体育)が好きになることに繋がるとわかっ たからだ。
そして,今回は今まで取り組んだことのないロングラ ンの実践になることで,腹をくくっていたものの不安を 抱えながら実技をスタートさせた。
ボールを相手の陣地に,持っていくのには一番確実な プレーは,走って持っていくのが分かりやすく簡単だ。
それがランプレーで,攻撃はクォーターバック(以後 QB とする)が,まずボールを保持し,レディーゴーのかけ 声から始まる。当然守備は,ボールを持ち込まれないよ うに,フラッグを取りに来ることになると,1対1の局 面では,走力によほどの差がない限り,守備側の方が有 利となる。それでは得点することに繋がらないので,味 方がボール保持者を助けることになる。守備の選手がフ ラッグを取りに来るのを,自分の体を使って QB を守る
(ガード・ブロックする)。ボールを持ってない選手が,
守備側の邪魔をすることが大っぴらに許されているの も,このスポーツの特徴だ。ここでぶつかると攻撃側の 反則なので注意が必要であり,プレー前に,相手にわか らないように作戦を考えて打ち合わせしておく。
授業後のアンケートの結果を分析するには,グーグル アンケートで回収し,数値の部分は,そのままグラフ化 できるので使用した。しかし,自由記述の部分を分析す るには,難しいのでテキストマイニングを使った。その 資料が右の図 3と表 2である。
まずは,学生の自由記述で使用されている言葉を,名 詞・形容詞・動詞に分け,使用頻度を加味した上で可視 化した図になっている物が図 3である。質問項目は質問 1とした物である。
質問1「QB をうまくプレーするこつは?」と聞き,答 えられた物を分析した。
まずは【ワードクラウド】で見るとこうなる。青が名 詞。緑が形容詞。赤が動詞で,基本的には字の大きさは 学生の意見の多さとポイントの高い物(重要性)となっ ている。一人で走って行くのではなく,ガードを頼りにす ることや,よく話し合うことと捉えていることがわかる。
次に【単語出現頻度】で見ると表 2となる。
この表を見て分析してみると,学生の考えていることが 浮き彫りになった。それは。センター(以降 C とする)
のポジションとの関係である。
ガードとの関係 打ち合わせをする
C 息を合わせる
信じる 声かけ QB のスキル 隙を突く
腰をひねる フェイク と考えていることが分かった。
学生の感想でも,以下の様な物もあった。
QB を見てガードが守るのではなく,守備の動きで QB を 守っ てい るガ ード の動 きに 合 わ し て QB は しっかりそのガードの後ろにつくことが大切だと感 じました。
図 3
表 2
図 4
表 3
表 5
図 5
次 に2問 目の 質問では,「ガ ー ド が う ま く い く こ つは?」と聞いてみたのが,
【ワードクラウド】図 4だ。その図 4と下の【単語出現頻度】表 3の結果を元に分析 してみると,
QB との関係 距離感が大事 声を掛け合う すぐに位置に入る
QB の邪魔にならないように C のスキル 腰を低く
圧力をかける ためらわない
と考えていることが分かった。そして,このような学生 の感想も見られた。
しっかりと打ち合わせした方向に行ってあげないと ボールを持っている人がうまく進まないので,自分 が試合を動かしているぐらいの強気な気持ちで進ん で行く。
③ 2:1ランプレーのみ(2回目)
当初のプランでは2:1は1回で終了するはずだった。
しかし,授業の映像を見た限りでは,うまく出来ている 学生もいるが,動き方を理解していない学生が多いこと に気づいたので,もう1回行うことを決めた。そして,
授業開始の際,アンケートを分析した物を使っての説明 を行った。その後,グループに分かれて,資料映像①を タブレットで視聴してから練習に入るように伝えた。す
ると,前回に比べると動きはスムーズに見えた。やはり,
言葉や図で説明するだけではなく,実際の映像を見て学 ぶ方が分かりやすいと思われる。
2回目の試合後の感想より「みんながこのゲームが面
白いと感じているのは?」の質問に対しての,結果は次
の【単語出現頻度】表 5である。出現頻度の高い言葉をつなげるとわかりやすい。
前回より 作戦を 考え できるようになって 面白い QB と 話し合って コートも 広くなり点数が取れて
面白い と繋がった。次に,単語の繋がりと深さを関連づけつつ 2回目の授業の面白さを分析したのが【2次元マップ】
図 5
で次の通りとなる。上の分析を更に面白いと関連が強い言葉の項目だけを強 調したのが次頁の図 6となる。
そこから分析してみると,次のような関連づけをして いることが見えてくる。
フラッグフットボールの教材的価値の検討(前編) −大学での授業を手掛かりに−
図 6
図 7
グラフ 2
・できる(ことが)
・作戦(うまくいって)
・前回(より)
・(フラッグが)取れて
・コートが広くなって
・試合(に勝てて)
・成功して
・慣れてきて と関連づけられる。
一回目より作戦を詳しく立てることによって,自分 がすべきことがはっきり理解出来た。だがプレーを しているうちに必死になり,作戦を忘れることも 多々あった。
更に 面白いより できるの言葉の方が多いとなると
図 7
として,できる(できた)から面白いと見えてくる。・考える
・取(れ)る
・前回(より)
・広い(から)
・慣れ(たから)
・相手(の動きを見れて)
④ 2:1のランのみ(3回目)
今回もアンケートの結果を基にした分析結果を基に説 明した。今回の質問は,「フラフトの面白さは次の5個
の中で順番をつけてみてください。一番面白いと思うも のを1とする。
」とした。結果はグラフ 2である。次に分析方法を変えてみた。1番面白いとした人数に
×5ポイント,2番目が×4ポイント,3番目が×3ポイ ント,4番目が×2ポイント,5番目が×1ポイントとし て,合計したものが次頁のグラフ 3となる。
この時点では,作戦を立てて攻撃することの面白さを 感じているというのが一番ポイントは低い。この段階で は,まだ2人でのランプレーのみなので,まだ作戦を立 ててプレーするという面白さは薄いのだろうと考えられ る。
グラフ 3
図 8
グラフ 4
表 4
図 9
⑤ 2:1のスイッチプレー(ハンドオフ&フェイク)
センターから渡されたボールをランニングバックに渡 す時に,手渡しするのがハンドオフと言い,記録は H,
渡したふり,貰ったふりのプレーはフェイクと言い F と記入する。
⑥ 2:1のスイッチプレー(パスあり)
「とても面白くなった」「少し面白くなった」を合わせ て82.9%%の人が面白さがアップしたとの結果が出た。
今回はハンドオフが入って複雑になりました。しかし,
難しくなったからこその面白さも含まれるのだが,その ことをどう感じているのかを,しっかりと見ることも大 事だと思い,そこを分析したのがグラフ 4だ。
上のグラフを見ると,とても面白くなったと感じてい
る人が14人。少し面白くなったと感じる人が34人で,計 48人・78.4%の人が肯定的に捉えていることがわかっ た。その反面,あまり変わらないが10人,少し,つま らないが3人で,合計13人・21.3%となる。全体的には 8割近くの学生が肯定的なので,授業として及第点では あると思われる。しかし,全ての人(子どもたち)が,
満足度の高い授業を目指すために,13人の声を自由記 述の中から拾ってみると,下の表になる。13人のハン ドオフについての自由記述で分析し,出現頻度で見たの が下の表 4である。
ここで,形容詞の項目に注目してみた。すると「難し い」が,出現頻度も多く,スコア(重要度)も高い。こ のことが,面白さをまだ感じられない要因なのだと思わ れた。
次に2次元マップを図 9で見てみると,難しいと関連 のある言葉は,多岐にわたっていることもわかった。そ の中でポイントの高い言葉をつなげると,
ボール−持つ−難しい となり,
隠して持つこと 落とさないで持つこと 練習 必要
タイミング 等々 その要因となっている。
フラッグフットボールの教材的価値の検討(前編) −大学での授業を手掛かりに−
図10
表 5
グラフ 5
グラフ 6
次に,現在のチームについての質問に対して,自由記述で答えた結果は次の図10の通りだ。
更に,違う表 5で見ると次のような結果となった。
ここの表 5からは次のようなことが読み取れる。名詞 と形容詞の関連の言葉の中で,「プレー=楽しい」とか
「雰囲気=良い」というポジティブな感想が二つに対し て,「上手くいかない」「前回より上手くいかない」「馴 染みがないメンバーと関わりにくい」等々のネガティヴ な感想が多い。そして表の中では,中立という分類はさ れているものの,中身はメンバーの欠席に対しての苦情 めいた物であった。この競技は,やはり,固定されたメ ンバー同士の意思疎通が取れたプレーが重要なので,出 席率の悪いメンバーだと,充分話し合いや練習が出来な い。そのため上手くいかない。ということになったいる のだと思われる。大学生の授業だから起こりえる欠席学 生による物だ。
⑥ 2:1のスイッチプレー(パスあり)
ハンドオフからのピッチ(パス)も入って更に,プレ
―の幅が広がると共に難しさと面白さが加わった。その 事による,変化は次のグラフ 5となる。
たが
やはり,今までパスが禁止されていたが,その箍が外 れたことで嬉しかったようだ。特に男子は,パスへの憧 れが強く,この教材の進め方にも不満を持っているよう な学生もいた。その結果に表れている。大学生の満足度 を高めながら,小学生にフラッグフットボールを授業に 取り入れるための授業研究の一環なんだという意識付け をどう持たせていくのか,なかなか難しい。パスが出来
ることで満足度は高まるが,そのことによって今まで地 道に積み上げてきたものを忘れないように意識させるこ とも難しいことである。
次に,「プレーのスタイルが4つに増えたが,その中
で自分はどのプレーが気に入ったか?」という質問に対
しての分析はグラフ 6となる。しかし,そのパスの選択肢が増えたことで,DF がラ ンプレーかパスプレーか両方ケアしなければいけないの で,それまでなかなか決まらなかったランプレーが決ま りやすくなっている事に繋がる。そのことで,①や②に も人気があるのだと思われる。
「難しすぎて面白くない」と答えた人もいるが,大半
の人の意見をつなげると「作戦の幅が広がり面白くなったけど,練習しないと大変だと思います。でも,練習し て上手になりたいと思います。 」と,前向きな発言をし
ている人が目立っている。次の質問で,
「試合に勝つために大事な物は何でしょ
う?次の4つの項目の重要だと思う物から順番をつけて
くさい」に対しての答えを分析したのが,次のグラフ 7
である。グラフ 7
図11
Ⅴ.まとめ
この結果からすると,パスプレーも増えたことから作 戦の重要度がわかってきていることがわかる。しかし,
その作戦も練習が不十分であると勝てない。そのことが わかっているので,このような結果に成っていると思う。
一番重要なのは練習と答えているが,二番目に重要なの は作戦と答えている物が多いことで,作戦の重要性に気 づいていることがわかる。
そして,同じ時の質問で「あなたのチームに欠けてい
る物は?」の質問に対して自由記述で答えて貰った。す
ると結果は,【ワードクラウド】で見ると図11のように なった。そし て出現頻度で 見ると圧倒的 に作戦に対し ての重要度を 上げている。【ワードクラウド】で見ても,「作戦が自チームに欠けて いる」と,認識しているのが分かった。作戦と関連づけ て何が?不十分なのかと考えているのかは多岐に渡って いることも分かった。ここまで来て,フラッグフットボー ルの面白さと難しさの中身について,分かってきている ということが読み取れる。
ここまで,大学の授業を通して,フラッグフットボー ルの教材的価値について分析してきた。14回の授業の 流れ通りに,授業で得たデーターの分析を進めてきた。
この時点でも十分沢山のデーターを整理することが出来 ている。規定の紙面の分量を考えながらまとめたため,
表の大きさが不十分で,見にくい物と成ってしまってい るのが残念だ。それでも,まだ授業回数としては半分弱 の段階である。この調子で進めていくとしても,この原 稿の正式な考察は全ての整理を終えた時がふさわしいと 考えている。しかし,今回のこの原稿では残念ながら,
規定紙面がつきたことと,締め切りの期日に来ているこ ともあり,今回の原稿は(前編)として一応の区切りと する。そして,来年度の研究紀要に(後編)を書き上げ 完結としたい。
(1)公益財団法人日本フラッグフットボール協会 HP https://www.japanflag.org/
(2)「体育科技術指導授業プラン集」編著:大貫耕一 民衆社
(3)User Local AI テキストマイニング https://textmining.userlocal.jp/
(4)QR のススメ https://qr.quel.jp/