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神経科学的リハビリテーション入門

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Academic year: 2021

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(1)

神経科学的リハビリテーション入門

川口脳神経外科リハビリクリニック 理学療法士 壹岐 伸弥

R2年4月15日(水) 19:00〜20:30

(一社)枚方市理学療法士会 脳卒中勉強会 配布資料

カスパー・ダビッド・フリードリッヒ

『霧の海を眺めるさすらい人』(1818年頃)

(2)

もくじ

脳卒中の歴史

運動麻痺の病態

観察方法

論文紹介

(3)

片麻痺の歴史

・足底を熱くしたアイロンで刺激して治療する(ミステイケル,1709)

・動物の脳を電気刺激し運動を誘発することに成功(ローランド,1809)

・脊髄半側障害を報告(ブラウン・セカール,1846)

・運動性失語症を発見して脳の機能局在論が確立(ブローカ,1860)

・サルの運動野を電気刺激して筋収縮の出現を確認(フリッチ,1875)

・小児の片麻痺における連合反応を記載(ウエストファル,1875)

・内包における錐体路の局在を記載(ドゥシャンヌ,1891)

・錐体路徴候としてのバビンスキー反射を発見し臨床神経学が確立していく

(バビンスキー,1896)

・膝の屈筋と足の背屈筋の筋力低下が著しい(ウェルニッケ,1889)

・手指の伸筋が強く侵され,手指や手が屈曲することを報告し,

痙性麻痺が常識化していく(マン,1896)

沖田一彦:片麻痺の歴史についての覚書.認知運動療法研究,2007

(4)

日本脳卒中治療学会ガイドライン2015 維持期のリハビリテーション

回復期リハビリテーション終了後の慢性期

脳卒中患者に対して、筋力、体力、歩行能力な どを維持・向上させ、社会参加促進,QOLの改善 を図ることが強く勧められる

(グレードA)

在宅生活を維持、支援するための間欠入院によ るリハビリテーションは行うことを考慮しても いい(グレードC1).

個々の患者の障害・ニードに対応したオーダー メイドのリハビリテーション・アプローチを行 うことが勧められる(グレードB)

個別性の重要性

復職を希望する場合、就労能力を適切に評価し、

その上で、職業リハビリテーションの適応を考

慮しても良い(グレードC1)

(5)

脳卒中ガイドライン2015

歩行障害のリハビリテーション

歩行や歩行に関連する下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善のた めに強く勧められる(グレードA)知覚・注意・イメージの活性化

脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用 いることが勧められる(グレードB)関節の自由度を制限し情報を選択する

痙縮による内反尖足が歩行や日常生活の妨げとなっている時に、ボツリヌス 療法、5%フェノールでの脛骨神経または下腿筋への筋内神経ブロックを行う ことが勧められる(グレードB)下腿三頭筋の痙性を制御する

痙縮により尖足があり、異常歩行を呈しているときに腱移行術を考慮しても 良い(グレードC1)物理医学的リハビリテーションの限界

筋電や関節角度を用いたバイオフィードバックは、歩行の改善のために勧め られる(グレードB)視覚的イメージを筋感覚イメージの賦活に有用

慢性期の脳卒中で下垂足がある患者には機能的電気刺激が勧められるが、治 療効果の持続は短い(グレードB)自動運動が有効である可能性あり

歩行補助ロボットを用いた歩行訓練は発症3ヶ月以内の歩行不能例に勧めら れる(グレードB)

学習理論の視点で解釈するといいのではないか

(6)

機能解離 (Monakov,1986)

通常の運動状態のニューロン

機能乖離状態

過興奮状態

末梢伝導路による側芽現象

A B

A B

↓↓

A B

↑ ↑

A B

末梢からの信号を認知的な情報に加工できない状態

中枢神経系による制御ではなく末梢からの物理的信号 である筋の伸張に占有される

A:下行性の伝導路、B:上行性の末梢伝導路

伸張反射の亢進状態として観察される

高橋昭彦:痙性麻痺に対する認知運動療法.認知運動療法研究,2007

(7)

StageⅠ:求心性信号の合成

(感覚野や感覚連合野で求心性入力を認知する段階)

StageⅡ:行為受容器の完成

(運動プランが運動前野や補足運動野で想定される段階)

StageⅢ:効果器装置の形成

(運動野からの遠心性出力が試みられる段階)

StageⅣ:求心性信号の回帰

(運動に伴う感覚と運動プランとが照合される段階)

Anokhin(1974)の脳機能システムの再編成

富永孝紀ら:リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント.協同医書出版社,2012.

(8)

脳卒中後の運動機能回復システマティックレビュー

Langhorne, Peter, Fiona Coupar, Alex Pollock:Motor recovery after stroke:

a systematic review. The Lancet Neurology 2009: 741-754.

運動イメージ介入の有効性

(9)

支持 機能 緩衝

機能 推進

機能

到達 下肢機能 機能

システム

踏み切り期 遊脚期 踵接地期 立脚中期

到達 機能 支持

機能 対称

機能

垂直 体幹機能 機能

システム

正中線 腰椎−骨盤リズム 方向づけ・回旋 リーチング

操作 機能 把持

機能 到達

機能

接近 上肢機能 機能

システム

リーチング アプローチ グラスプ・ピンチ オペレーション

行為の機能システムの変質(外部観察)

カルロ・ペルフェティ:認知神経リハビリテーション入門.協同医書出版社,2016

行為 構成要素

(10)

認知過程の変質 (内部観察)

行為の記憶 治療の記憶 治療効果の持続

一般性注意/注意の持続性 注意の分配/注意の選択性

注意の集中

視覚的イメージ/筋感覚イメージ 運動イメージ/イメージの同時性

イメージのための所要時間

一般的な言語表出・理解 失語の有無

質問に対する反応

関節覚/運動の時間性 運動の空間性/模倣/図形認知

触覚/圧覚/重量覚

どのように

言語で記述するのか

どのように イメージするか どのように

注意するか

どのように 学習するか

どのように 知覚するか

どのよう に動くか

カルロ・ペルフェティ:認知神経リハビリテーション入門.協同医書出版社,2016

(11)

足底の重量覚認識課題(認知問題)

足底の傾き

足関節の三平面運動 接触の部位と量

⇒触圧覚 固有感覚

下腿筋感覚での筋調整 重量を認識することに

必要な知覚の要素

どのように 知覚するか

セラピストは患者に何を教えたいのか?

患者は何に知覚仮説を立てているのか?

(12)

身体座標における内的・外的言語教示が 膝関節最大伸展筋力に及ぼす影響

対象:健常者21名(男性12名、女性9名)年齢:25.8歳

方法:ミュータスを利用して,内的言語教示(膝を伸ばす)・外的言語教示(センサーに圧が加わるように 力を加える)をした際の筋活動(N)を測定.また,測定する順序を内的言語教示(A群)後に外的言語教示

(B群),B群からA群の2種類とした.

荒瀬 咲:今給黎総合病院学生卒業研究;身体座標における内的・外的言語教示が膝関節最大伸展筋力に及ぼす影響.2013

0 100 200 300 400 500 600

内的 外的

0 100 200 300 400 500 600

内的 外的

0 100 200 300 400 500 600

内的 外的

**P<0.01,*P<0.01,n.p P>0.05

n.p

**

内的群と外的群の総和 内的群から外的群 外的群から内的群 どのように 注意するか

(13)

レトリック言語が歩行運動イメージに 及ぼす影響−fNIRSによる検討−

藤本 昌夫:理学療法科学;レトリック言語が歩行運動イメージに及ぼす影響−fNIRSによる検討−.2009

対象:20歳代の健常成人12名(男性2名、女性10名) 年齢:24.1±5.6歳

方法:近赤外光イメージング装置(FOIRE3000 株式会社島津製作所)を使用し,

条件A「歩いているイメージをしてください」,条件B「踵が柔らかい砂浜に 沈みこむのを意識しながら歩いているイメージをしてください」と異なる 言語教示を与えた際の脳血流量を測定.

結果:チャンネル11,13,19において条件BはAに対して脳血流量の増加を特に 認めた(P<0.01).同様に12,14においても増加を認めた(P<0.05).

しかし,37においては減少が認められた(P<0.05).

※左背側運動前野,両補足運動野,左一次運動野の活動がみられ,

左視覚野領域の活動の低下がみられた.

どのように イメージするか

(14)

表面素材の認識課題にて

言語で記述するのかどのように

「これは“壁材”と“ニードルパンチ風カーペット”だ.」

表面素材を比喩を用いて言語で記述する

(15)

リハビリテーションでの観察

ある治療場面でのセラピストと患者の対話

どのように 学習するか

セラピスト 眼球運動障害を呈した患者

自主トレはやってみましたか?

前回、気付いた左目の運動はあれからお家で練習して来ましたか?

そういえば、左目の動きが悪いって言ってたな。

早く仕事がしたいねん。車に乗りたいねん。

本当によくなる?どれぐらいかかる?

訓練を記憶しているが、行為に変化を与えていない

(16)

身体表象には階層性が存在する

概念的 表象

感覚運動 表象 志向性

背景 信念

思考

文脈

体性

感覚 視覚

ボトムップ

トップウン

Synofzik M, Vosgerau G, Newen A. I move, therefore I am: a new theoretical framework to investigate agency and ownership. Conscious Cogn. 2008 (2):411-24.

意識の志向対象となり 言語化されやすい

意識の志向対象となりにくい 言語化されにくい

【はじめに】

脳卒中片麻痺患者を対象とした上肢ポインティングによる身体表象の評価.

認知神経リハビリテーション学会学術誌.2017,壹岐ほか

(17)

【対象と方法】

当院に外来リハビリテーション通院中の12名

脳卒中患者6例(男性3名、女性3名、平均年齢73歳、平均罹患期間110日、

SIAS平均点数63点、FIM平均点数117点 )

整形外科疾患患者6例(男性3名、女性3名、平均年齢63歳、平均罹患期間380 日、うち肩疾患2、LCS2、SCI1、膝疾患1、FIM平均点数126点 )

※認知機能に問題のない患者を対象とした.

(18)

98 91 81

96

0 20 40 60 80 100 120

手の長さ 前腕全体の長さ 言語教示 接触教示

【結果】

(%)

脳卒中6例の平均値 整形外科疾患6例の平均値

**P<0.01 n.s.

95 96 97 102

0 20 40 60 80 100 120

手の長さ 前腕全体の長さ 言語教示 接触教示

脳卒中患者では、手の長さで言語教示群と比較し接触教示群で有意に短くなった.

(P<0.01)

(19)

【結果 身体表象の変質あり群】

接触教示群において手の長さが短かった脳卒中患者について

MCA M3領域梗塞 80歳代後半 女性

罹患期間120日

FIM 82点

“腕が肩から長く感じる”

108

93

69 76

0 20 40 60 80 100 120

言語教示 接触教示

0 20 40 60 80

100motor

DTR

m.tone

sensory ROM

Pain Trunk

高次脳機能

健側機能

SIAS total score 50点 全体平均

(%)

SIASやFIMが最も低値

(20)

【結果 身体表象の変質なし群】

手の長さの差が少なかった脳卒中患者について

左被殻出血・左小脳梗塞 70歳代前半 男性 罹患期間240日 FIM120点

“手が痺れる”

0 20 40 60 80

100motor

DTR

m.tone

sensory ROM

Pain Trunk

高次脳機能

健側機能

SIAS total score 64点 全体平均

97

69

93 95

0 50 100 150

手の長さ 前腕全体の長さ 言語教示 接触教示

(%)

SIAS総得点・FIMは中程度. SIASにて感覚運動項目が高い

Sensory

(21)

経過

発症から4週目 Barthel Index 100点

近位監視レベルにて歩行が可能であったにも関わらず、不安を強く訴えたために 病棟では車椅子グリップを把持しての歩行であった。

受傷前の日常生活動作は全て自立しており、夫の逝去後(独居・子無し)も、

地域の役員やボランティア活動、趣味である旅行などの社会参加を行っていた。

症例紹介

性 別 女性

年 齢 70歳代前半

診断名 右橋延髄梗塞

傷病名 Wallenbelg症候群

在宅復帰に向けて心身能力の改善が不十分であった

Wallenberg症候群の1例.

理学療法科学.2017,壹岐ほか

(22)

理学療法と経過

0 5 10 15 20

0 5 10 15 20

不安と抑うつ

不安 抑うつ

(回)

(点)

0 5 10 15

0 5 10 15 20

自己効力感

※各評価は1週間毎に実施し、合計20回の計測を行った。

10m歩行試験はわずかに向上 したにも関わらず、

不安と抑うつおよび 自己効力感は悪化した

0 5 10 15

0 5 10 15 20

10m 歩行試験

(回)

step

(23)

病態の複雑さ(自覚の欠如)

38例中、最も発現頻度が高いものが頭痛(95%)であり、次いで歩行障害 (89%)、めまい(76%)、構音障害・嚥下障害(66−68%)であった。

(氷見 徹夫ら;ワレンベルグ症候群における延髄病変部位と自発性眼振との関連,Equilibrium Research,1993)

50歳代のSingle caseでは48ヶ月後もめまいが継続している。

(中山 明峰ら,Wallenberg syndrome症例の長期観察,Equilibrium Research,1991)

自己志向的完全主義、高度目標設置

自己志向的完全主義であるからといって適切な防衛規制を 選択するとは限らない。

(中川 明仁ら;自己志向的完全主義と防衛規制および不安との関連,健康心理学研究,2011)

高目標設置が必ずしも適応的ではない。

(福井 義一,高目標設置は本当に適応的か?成人愛着スタイルを調整変数として,心理学研究,2009)

考察

病態を深化する視点と適切な目標設定の重要性を示唆

(24)

まとめ

根拠に基づきながら、リハビリテーションが今よりも 前進するために、個々の症例において社会参加および 生活の質が少しでも向上するよう、療法士は様々な知 見と視点を持って観察し支援していく必要があるので はないかと考える。

そのために、神経科学的リハビリテーションの視点は

脳の情報処理過程を把握するための手段として有用で

あり、学習を支援するために必須の知識である。

参照

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