リハビリテーション神経科学が医療を創る
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(2) リハビリテーション神経科学が医療を創る. 835. れることがわかっている 7)8)。したがって,これら可塑性原理. の所見が改善すること,手指の随意運動が改善し,臨床スコア. や運動学習則を正しく理解し,演繹することによって,脳卒中. が上昇することなどを症例集積研究により見いだしている. 後の脳に見られる病的な活動動態を適切な状態に導くような. ABAB デザインによる一症例研究では,開ループ型 BMI に治. ニューロリハビリテーションを創ることができると考えられる。. 療効果は認められず,脳活動に応じたリアルタイムフィード. ウェアラブルで精密制御が可能なデバイスの登場. 9). 。. バック要素が機能回復に重要な役割を果たしていることが示 され 10),非ランダム化比較試験による検討からは,視覚的な. 脳卒中そのものは血管障害であり,それが原因で皮質下の感. フィードバックよりも体性感覚フィードバックが効果的である. 覚運動経路の一部が器質的に損傷することが,片麻痺を呈する. ことが示唆された 11)。現在では,44 名の症例集積研究の結果. 直接的な原因である。その後,回復期や維持期を迎えると,麻. から,38 名(約 86%)に筋電図上の所見もしくは臨床的身体. 痺手を使わない,あるいは不適切に使用することが原因で,組. 機能評価上の改善が認められており,その後に随意運動介助型. 織的には直接損傷していない様々な運動関連領域に二次的な機. 電気刺激装置を用いた HANDS 療法へ移行して,さらなる機能. 能変性が生じる。たとえば,一次運動野や脊髄運動ニューロン. 改善が認められる症例群があることも経験している 12)。. 群における基底活動状態の異常化,非一次運動野における身体 運動の制御を司る内部モデルの忘却や誤学習,基底核や視床を. おわりに. 介した運動調節の忘却や誤学習である。神経細胞群の基底活. 本稿では,神経科学のことばで病態脳の計測と制御(理解と. 動状態を変化させる方法は,冒頭で述べたようなニューロモ. 治療)を実現することの重要性を述べた。このように,疾患や. ジュレーションによって可能であるが,内部モデルの再構成. 重症度ごとに治療手技をテーラーメイド的に生みだすための. は,随意運動の遂行とそれに伴う誤差信号の受領を反復する. 「考え方そのもの」を構築することが,本稿のタイトルにもあ. ことが基本であり,随意運動を発現させるために機能させた. る「リハビリテーション神経科学」という学問の創出だと考え. い,機能的に未成熟な神経経路を活性化させるためには,use. る。また,このような学問の臨床展開例として生みだされた,. dependent plasticity や timing dependent plasticity を 活 用 し. 個別的手法やその運用のことを「ニューロリハビリテーショ. て maturation(unmasking)を促す必要がある。. ン」と位置づけることができる。本稿で紹介した BMI リハビ. ここで問題となるのは, 「それをどうやって実現するか?」で. リテーションは,その代表例である。. ある。脳に興奮性あるいは抑制性の刺激を与えたり,感覚情報. リハビリテーション神経科学とニューロリハビリテーショ. を送りこんだりするには,適切なタイミングで適切な強度の物. ン。両者が相補的に機能することで,リハビリテーション領域. 理刺激を脳や末梢神経に与える必要があるし,use dependent. に新しいディシプリンが生まれ,これまでの治療体系ではアプ. plasticity や timing dependent plasticity を扱うには,神経の活動. ローチすることが難しかった患者に福音がもたらされることを. 状態をリアルタイムに知る必要がある。いずれの場合も,時間. 願って止まない。. 軸でいえばミリ秒から秒のスケール,空間軸でいえばミリメー ターからセンチメーターのスケール,物理強度でいえばミリア ンペアのスケールでの計測と制御が要求されるので,これを人 間の手で行うことには限界があるし,ましてや脳の状態をリア ルタイムに知ることは,デバイスなしには不可能である。その 意味において,頭部や手足に生体信号用センサを取りつけたり, 電気刺激装置や電動モータを取りつけたりできるウェアラブル デバイスが登場し,それら汎用なモジュールを組み合わせて自由 にシステム開発できるようになったことは,前二項目に挙げた臨 床医学と神経科学の発展に比肩する,画期的なイベントである。. 実例としてのブレイン・マシン・インターフェースリ ハビリテーション このように,従来は別々の学問領域として交わることの少な かったものを,神経医療の創出という観点の下に再統合を図る ことが,これからの医学研究のひとつの潮流になると著者は考 えている。このような考えの下に理論構築を進めつつ,その理 論の実証的な事例として,ブレイン・マシン・インターフェー ス(Brain-Machine Interface:以下,BMI)を活用した概念実 証研究や臨床研究を現在進めている。BMI リハビリテーショ ンについては,運動企図時における障害半球体性感覚運動野 の興奮性が可塑的に高まることを,頭皮脳波や BOLD MRI に よって確認したほか 4),安静時における障害側一次運動野の興 奮閾値が低下すること,麻痺側総指伸筋における随意筋電図上. 文 献 1) Dimyan MA, Cohen LG: Neuroplasticity in the context of motor rehabilitation after stroke. Nat Rev Neurol. 2011; 7: 76‒85. 2) Ward NS, Cohen LG: Mechanisms underlying recovery of motor function after stroke. Arch Neurol. 2004; 61(12): 1844‒1848. 3) Werhahn KJ, Conforto AB, et al.: Kadom NHallett MCohen LG Contribution of the ipsilateral motor cortex to recovery after chronic stroke. Ann Neurol. 2003; 54(4): 464‒472. 4) Ono T, Tomita Y, et al.: Multimodal sensory feedback associated with motor attempts alters BOLD responses to paralyzed hand movement in chronic stroke patients. Brain Topogr. 2015; 28(2): 340‒351. 5) 里宇明元,牛場潤一(監修) :神経科学の最前線とリハビリテー ション.医歯薬出版,東京,2015. 6) 正門由久(編):リハビリテーションのための臨床神経生理学.中 外医学社,東京,2015. 7) Krakauer JW: Motor learning: its relevance to stroke recovery and neurorehabilitation. Curr Opin Neurol. 2006; 19(1): 84‒90. 8) Kitago T, Krakauer JW: Motor learning principles for neurorehabilitation. Handb Clin Neurol. 2013; 110: 93‒103. 9) Shindo K, Kawashima K, et al.: Effects of neurofeedback training with an electroencephalogram-based brain-computer interface for hand paralysis in patients with chronic stroke: a preliminary case series study. J Rehabil Med. 2011; 43(10): 951‒957. 10) Mukaino M, Ono T, et al.: Efficacy of brain-computer interfacedriven neuromuscular electrical stimulation for chronic paresis after stroke. J Rehabil Med. 2014; 46(4) : 378‒382. 11) Ono T, Shindo K, et al.: Brain-computer interface with somatosensory feedback improves functional recovery from severe hemiplegia due to chronic stroke. Front Neuroeng. 2014; 7: 19. 12) Liu M, Fujiwara T, et al.: Newer challenges to restore hemiparetic upper extremity after stroke: HANDS therapy and BMI neurorehabilitation. Hong Kong Physiother J. 2012; 30(2): 83‒92..
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