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(1)

福岡発・アジア太平洋研究報告 第2次若手研究者研究活動助成決定 ワークショップ第3回

ADB寄託図書館資料紹介 モンゴル特集第3回 若手研究者研究活動報告

[資料紹介]

[コ ラ ム]

[レポート]

(2)

[事業報告]

2

アジア太平洋センターでは、これまで培ってきた国内外 のネットワークを活用し、テーマを持ってアジア太平洋地 域を訪問するスタディツアーを企画しています。現地訪問 前の学習会実施や、訪問先でも現地専門家のレクチャーを 受けるなど多角的な視点で、テーマについての理解や認識 を深めることができます。

昨年度に続いて第2回めの実施となる今回は、歴史上多く の重要人物を生み出し、世界中にネットワークを持つとい われる「客家」の歴史や文化を学び、そのエネルギーを探る と共に、客家のふるさとといわれ、建築学的に見ても特異 な集合住宅である土楼が数多く存在する福建省永定や華僑 の活躍が見られる廈門を訪ねました。

参加者:13名

振成楼内部

コロンス島と廈門市内

〈第1日〉11月20日(木) 福岡空港出発 上海経由廈門着

〈第2日〉11月21日(金)

☆廈門大学にてレクチャー

「客家の歴史と文化」

講師/ 暁華 氏(廈門大学人類学博物館館長・教授)

☆コロンス島見学

〈第3日〉11月22日(土)

☆永定土楼見学(承啓楼・振成楼など)

☆ 西賓館にてレクチャー

「客家と土楼建築」

講師/張開龍 氏(龍岩市議会文教担当責任者)

〈第4日〉11月23日(日)

☆集美学村・霞渓自由市場見学

〈第5日〉11月24日(月)

☆上海博物館・上海都市計画博物館見学(自由参加)

〈第6日〉11月25日(火) 福岡空港着

学習会

場所:アジア太平洋センター

現地ツアー

(旅行主催:日本旅行天神支店)

アジア太平洋センター 

平成15年度スタディツアー

華人パワーの源を訪ねる〜客家(はっか)の里〜

第1回 10月14日(土)「客家と華人経済」

講師:林 一信 氏 東アジア研究室代表 第2回 10月18日(土)「永定の客家土楼建築」

講師:岡 大輔 氏 (株)環境デザイン機構 第3回 11月18日(土) ツアー出発前準備

講師:安田知子 氏 ライター 第4回 12月16日(土) 事後学習会

 西賓館でのレクチャー 福建料理

スタディツアー レポート

今回のスタディツアーの目的である「客家」や「土楼」につ いて学ぶ学習会を現地訪問前に受け、「客家とは何者か?」、

「土楼はなぜ円いのか?」などの疑問を持ちながら、現地ツ アーに出発した参加者のスタディツアーレポートの一部を 紹介します。

「華人パワーの源を訪ねる〜客家の里〜」というスタディツアーのことを知 った時、私は随分前にNHKで見たことのある「客家」ということばや珍しい 集合住居とその生活の様子のことなどをおぼろげながら思い出していた。早 速参加させていただくことにし、学習会での講義や資料・参考書等を読み、

ビデオを見せていただいたりしていくうちにすっかり虜になってしまった。

でも、深みにはまったり難しすぎたり、私自身の無知もあってか、逆に潰さ れそうになることすらあった。そこで、これは素直な気持ちで現地を訪ねて、

触れてみるしかないという思いと、未知の世界を訪ねる喜びと期待に胸を膨 らませて出発の日を迎えたのだった。 (中村順子)

●私にとって今回のツアーで最も貴重な成果であった廈門大学の 暁華教授 の客家の歴史と文化についての考え方との出会いについて述べる。「客家は どこから来たのか」について伝統的説は、中国中原地域から来たとする。中 原の氏族が乱を避けて南へ移住したとする(ツアーの事前に学習したものも

このような内容であった)。しかし今日では、中原から移住した人々と、南 のミャオ・ヤオ族といった少数民族・原住民との混血によって客家が形成さ れたとする説が台頭しているとして、教授はこの新しい説の方を支持する立 場を表明された。これらの客家に関する 教授の考え方は納得のいくものの ように思える。 教授のさらなる研究の成果に接したいものである。(原布士乎)

●台湾とほぼ同緯度の福建省南部( 南地方)の沿岸部(廈門)から、内陸部、

福建、江西、広東三省隣接部に集中する客家土楼の里へ続く葛折れの道、「棚 田」という既存のイメージを蹴散らすほど急峻で狭小な田が山頂まで連なる 様をバスの窓から目にして、「一族が強固にまとまり、先住者と争ったとい うこと、常に餓死と背中合わせで、人口が増せば新天地へ移動、発展して行 かざるを得なかったということ」などの客家の特殊性を少しばかり実感できた。

(松崎勇三)

振成楼

(3)

承啓楼内部 承啓楼内見学

振成楼から見た洪坑村の風景

●永定へ向けて出発。 州を通過する当たりから、バナナ畑が続く。このあ たりは中国一のバナナの生産地で、主に国内で消費されているという。山地 へ向かうにつれ竹林が見え、どこを走っているのかよく分からないうちに土 楼が見え始める。承啓楼。写真で見てきた物を確認する気持ちで、グループ から遅れないようについて行く。土楼内はお昼時で、大鍋にサツマイモの料 理が煮えていた。振成楼。林日耕さんというご主人が案内してくださる。聡 明そうな印象。部屋の前の椅子にくつろいだ表情で座っているご母堂、厨房 からの煙を集合煙管で外へ出す仕組み、展示室にあった「哭嫁」の儀式のよう

すなどが心に残った。 (高 玲子)

●山間部の平和に見えるところに土楼が立つ。外敵から身を守るために一族 を守るためにどっしりと立つ。砦とも見えるし、城とも見える。真ん中に祖 堂を配し先祖をまつる。一族の支えとなっている。倉庫は広い。不作の年に も対処できるように、食料が備蓄される。家畜も楼内に飼われている。上層 階には窓があり敵を見張る。平和なときには、窓の景色に心が安らぐ。みん なと一緒という安らぎが、そのなかにある。特に円楼では自分は中心にいる という気持ちになる。土楼はいくつかが隣り合って建っている。その佇まい が美しい。後ろに低い緑の山があり土色のどっしりとした土楼。屋根瓦は黒 く簡素にして楼の外側の上部を巡る。中心部分の天井といわれる光庭がほっ とする柔らかさを見せる。手前には稲の収穫の終わった田んぼ。傍らに川が 流れる。建築物として美しい。下から見上げても、上層階から眺めても、走 馬廊から内側を見ても、寝室から外の景色を見てもすべてが美しい。現実に 人が住み、生活している姿にその美しさはさらに輝く。 (野田律子)

●1970年代までは見られたという近隣同志の深刻な武力闘争でも、ここを 根城に戦うということはなかったようで、その防壁はあくまで野盗、山賊に 対するものであった。土楼には、1920年代に山賊が防壁を破って侵入しよう としたが、防壁の堅固さの前に一部を破損させただけで目的を達することが できなかったという痕跡が今も見受けられる。また、この土楼がその特徴的 な形である円形になった理由は、居住するものの平等を確保するためであっ たそうである。余談だが、日本にも傘(からかさ)連判状というものが存在した。

円形にサインをしていくことにより序列を生じさせないのである。これこそが、

他の図形にはない円だけが持つ特徴であろう。 (池田憲和)

家事に追い回され、睡眠時間5時間くらいで宗族を守っていたのだ。(松崎直子)

●客家人の按摩さんとは龍岩で出会った。19歳と20歳の2人の女の子が僕と 同行人をそれぞれマッサージしてくれる。そもそもこの歳でマッサージして もらうなんて生意気だ、と反省しながら。会話をしていくうちに、仕事の話 になった。彼女らは「この仕事を好きじゃない」と言った。「食べていくため に働かないといけないから」と続ける。教育を重視する結束の強いエリート 集団・客家。そんな像は一段とボケてしまった。若い子が「食べていくために」

働かなきゃならない程、中国での生活は厳しいのかな。日本だって「好きじ ゃない」仕事を、自立した生活のために若い子だろうがなんだろうがやって いるじゃないかと思う。実態は分からない。彼女らが語った「食べていくた めに」は日本とは重みが違うのかも知れない。来春からは僕もまた社会人だ。

それなりの視点を持って物事を見極めていかなければならない。 (田篭良太)

●旅行中、数多くのメガネ(眼鏡)橋を目にした。バスの中からの観察では、

橋脚部(アーチ形)、欄干部分が黒ずんでいるので年数が経過しているのがわ かる。オランダ力学とかで、この種の橋は、長崎、平戸のメガネ橋、大型で は熊本県の通潤橋など見聞される。円楼のある永定県、承啓楼への道のりで、

川沿いの狭い山道を左右にカーブを登ったり下ったりの数時間、難行を極め たが谷を下った際に数多く見かけた。現役として立派に務めを果たしている。

龍岩市より廈門市への帰路で、山地で交通渋滞にあったが、幹線道路でもア ーチ型の橋を発見した。石作りのメガネ橋として架橋技術が残っているので

あれば興味あるものであった。 (服巻義行)

●中国を再訪するときには・・・(反省)。①次は、語学も少しは学んでいこ うと思う。現地の人にいろいろ聞いてみたい。②中国の人はよくお酒を注い でくるので、お酒に強くなろう。③あらかじめ、いろんな情報を集めておき、

自分なりの楽しみ方を考えておく。 (末崎政晃)

●日本の近代社会の形成の中で、先ず第1に中国からの文化の輸入によって 日本文化の基礎が形成され、第2に欧米文化の輸入によって日本の近代化が 進められ、第3に1945年頃より世界の資本主義・国家主義のもとに戦争を 繰り返し、ついに敗戦を迎えた。戦後の経済の発展によって世界の中で有数 な近代国家が形成されたかにみられたが、第4に現代世界の状況は多方面に おいて変化をきしている。これに対して日本人は、このままではどうにもな らないという不安を懐きながらも、具体的に何を目標としたらよいかが分か らない状況にある。この時に、一つの試みとして中国の古い歴史を学び、また、

現地での近代化・共産主義・資本主義の発展、中国文化の変遷を学ぶことに より、日本の未来を開いていくヒントが多く与えられると思った。これはま さに自己理解・日本理解から始めるということである。 (中村次郎)

●今回のツアーで私なりに感じたことは、これから13億人を有する中国パワ ーは次第に世界を席巻していくのではないかということです。それはこれまで、

一般的には、華僑と呼ばれ、世界のあちこちに、チャイナタウンを形成して きた素地があり、そのうえ中国本土でも、一番ハングリーな生活を強いられ てきた客家の人達が、これまでの呪詛から解き放たれた時、すでに張り巡ら されている、世界の人・物・金のネットワークがさらに飛躍的に拡大してい くのではないでしょうか。円楼など、数十〜数百所帯の生活空間を一族で共 有し、共有財産で師弟の教育を賄うなど、一族で独自の生活文化、防御機能 を備え、また遠い将来を見据えた遠大さ、ハングリーを基本とした生活・精 神面での勤勉さなど、過去の歴史をバネにたくましく、中国内ばかりでなく 世界へネットワークを広げていく客家のパワーを感じさせられたツアーでした。

(下永 弘)

(4)

[事業報告]

福岡発・アジア太平洋研究報告

12名の若手研究者が活動内容を報告

4

日  時:

会  場:

2003年10月9日 (木) 13:30〜16:00 アクロス福岡6階 606・607・608会議室 この報告会は、平成14年度のアジア太平洋センター若手 研究者研究活動助成を受けた若手研究者がその助成テーマに 関して、研究成果を広く市民の皆様に提供するとともに、若 手の研究者に研究発表の機会を提供するものです。

本年度は12名の若手研究者が研究テーマごとに分けた3つ の分科会で、アジア太平洋地域での研究活動の内容を報告し ました。報告終了後、いずれの分科会も会場より報告内容に ついての質問が多数あり、活発に意見が交わされました。

また、研究活動の報告内容をまとめた「福岡発・アジア太平 洋研究報告 第12号」も併せて刊行しました。

第1分科会では、パワーポイント、OHPなどを利用し、バングラデシュや中国の教育制度の現状、教育改革の動向等についてと、タイの伝 統的職人の認知技能に関する研究報告がされました。

日下部達哉(九州大学大学院・日本学術振興会特別研究員)

「バングラデシュにおける初等教育制度受容に関する調査研究」

王 暁 燕(九州大学大学院)

「現代中国の市場経済社会における教師教育改革の動向」

趙 晋 平(九州大学大学院)

「中国の中等教育段階における才能教育の実態に関する調査研究」

時津 裕子(九州大学大学院・日本学術振興会特別研究員)

「伝統的土器製作者の認知技能−タイ王国を事例として」

●第1分科会(606会議室)

第2分科会では、パワーポイントなどを利用し、ミャンマーと中国の福祉の現状、福祉施設の運営や中国帰国者の状況など専門的な研究活 動の内容が分かりやすく報告されました。

劔 陽子(産業医科大学助手)

「ミャンマー連邦の村落におけるヘルスワーカーの働き」

鞏 従 容(九州大学大学院)

「中国の住宅商品化政策下での商品住宅の供給と管理に関する研究」

福嶌 智(九州大学大学院助手)

「中国帰国者の文化的背景をめぐる一考察

−福岡市と遼寧省における調査をもとに−」

陳 暁 嫻(九州大学大学院)

「中国の高齢者福祉施設運営の多元化と利用者満足度に 関する研究 −蘇州の福祉施設を事例に−」

●第2分科会(607会議室)

第3分科会では、パワーポイント、ビデオなどを利用し、中国、インドネシア、台湾の地域における政治社会変動、社会環境変化などの研 究活動の内容が報告されました。

蘇 鳳 鳴(九州大学大学院)

「カムにおける民族間交渉とチベット族の自己イメージ形成」

佐々木拓雄(九州大学大学院)

「現代ジャワにおける「ふつうのムスリム」」

西谷 郁(熊本県立大学非常勤講師)

「中国映画史における1930年代:文献調査およびフィールドワーク」

陳 淑 瑩(久留米大学大学院)

「緑島に残存する台湾語の基礎的調査」

●第3分科会(608会議室)

福岡発・アジア太平洋研究報告

12名の若手研究者が活動内容を報告

福岡発・アジア太平洋研究報告

12名の若手研究者が活動内容を報告

(5)

福岡発・アジア太平洋研究報告

12名の若手研究者が活動内容を報告

平成15年度第2次 若手研究者研究活動 助成対象者を決定

この助成は、アジア太平洋地域の 「異なる文化理解」 の促進、

または 「地方発展」 に関する研究を対象とし、九州北部4県 (福 岡、 佐賀、 長崎、 大分)の若手研究者(40歳未満)の研究活動 を資金的に支援するものです。平成15年度第2次募集では、

10件の申請があり、選考委員会で審査の結果、次の6名の 方に海外現地調査活動費の助成を行うことに決定しました。

針塚 瑞樹(九州大学大学院人間環境学府博士課程)

「インドにおける子どもの労働観」

松岡 雄太(九州大学大学院人文科学府博士課程)

「モンゴル語における文法変化の研究

−特に時制と相を中心として−」

徐 涛(福岡大学大学院商学研究科博士課程)

「中国流通システムにおける「総合商社」モデルの 発展に関する考察」

林 青(九州大学大学院人間環境学府博士課程)

「中国天津市租界地における歴史的住宅の保存と再生に関する研究」

小川暢

(九州大学産学連携センター助手)

「産官学連携による日韓地域交流支援システムの構築に関する研究」

楊 慶 敏(九州大学大学院比較社会文化学府博士課程)

「中国石炭流通政策の変遷とその輸送問題」

第3回   ワークショップ

テ  ー  マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

「台湾における観光業の発展」

蘇  哲  仁  氏

(台湾・輔仁大学観光管理学部助教授)

田村 馨 氏

(福岡大学商学部教授)

平成15年10月22日(水)13:30〜15:30 福岡市役所15階講堂

《講演要旨》

台湾では海外旅行が盛んで、日本にも毎年多くの団体ツアーが訪 れている。所得水準の向上や高齢者人口の増加、マスメディアの発 達による情報の拡充、さらに週休二日制度実施に伴う余暇時間の拡 大など、これらの要素が台湾の観光業の発展に大きく寄与した。

その軌跡を辿れば、1979年に海外旅行が自由化されてから、海 外観光旅行はごく一部の人達の贅沢から一般大衆へと広がり、消費 者ニーズの変化と共に、その質的向上を目指す努力が常に行われて いることを見て取れる。特筆すべきことは、1987年の親族訪問解 禁を契機に、台湾から中国大陸への観光旅行が次第に盛んになり、

今や海外旅行の重要構成となっていることである。また、大陸から の台湾訪問も1995年に解禁され、2002年からは団体観光旅行も 実施できるようになったので、景気対策として大陸から多くの観光 客を期待していたが、参加条件が厳しく行動規制も多いため、来訪 者は少なく、実質的な経済効果はまだ上がっていない。

台湾観光業が抱える問題として、国内旅行の市場が小さいこと、

季節差が大きいこと、観光開発への投資が少ないことなどがよく挙 げられる。海外観光客の誘致に力を入れているが、観光施設にかか るコストや人件費が高いため国際競争力は低く、成功しているとは 言い難い。

産業構造における観光業の地位を向上させるため、2000年は「観 光計画年」、2001年は「観光推進年」とし、多様な文化資源を活用 して海外観光客を誘致し、国内観光客の不足を補うのがねらいだった。

さらに、「2008−国家発展重点計画」においては、観光客倍増計

画が重点投資計画の一つとして策定され、そのための事業推進が進

められている。イラク戦争やSARSの影響を受けて、今年の訪台海

外観光客数は激減したが、当面は国内市場を活性化させ、その次に

海外観光客を呼び戻す施策がとられている。

(6)

[資料紹介]

ADB寄託図書館受け入れ資料紹介

●平成15年10月〜12月の寄託図書

Local Government Finance and Bond Markets

Quarterly Procurement Statistics as of 30 June 2003

Commercialization of Microfinance Bangladesh

Interim Progress Report on the Policy on Gender and Development

Sixth Progress Report on Timor-Leste

Economic Issues in the Design and Analysis of a Wastewater Treatment Project

Policy Issues in Pension Reform

ERD Working Paper Series 35 など

●お勧めの一冊

ASIAN WATER SUPPLIES −Reaching the Urban Poor−

Arthur C. McIntosh  著

モンゴル特集 第3回

 この 「コラム」 は、アジア太平洋の国・地域の様々な社会、文化、

生活事情などについて4回にわたってシリーズで掲載するものです。

今年度は 「モンゴル特集」 とし、九州大学大学院の三本  泉氏に書 いていただきます。

Mongolia

2003年8月。珍しく雪が降った

カザフ・ゲルの内部 地下水に頼っている地域も、まだ多い。

プロフィール

三本 泉

(みつもと いずみ)

1972年生まれ。

九州大学大学院比較社会文化 学府博士後期課程在学中。

専攻は文化人類学。

テーマはモンゴル・中央アジ アの民族・文化の変容過程。

モンゴル

中華人民共和国

ウランバートル バヤンウルギー

北京

上海 福岡

日本

香港 台北

Mongolia

これまでモンゴル全般とウランバ ートルについて述べてきたので、後 半2回はモンゴル国のエスニック・

マイノリティ、カザフ人について書 いてみる。

モンゴル国でのマイノリティとし ては、モンゴル系ではトゥバやブリ ヤートなどが挙げられる。しかしマ イノリティの中で人口が最多数であ るのが、トルコ系のカザフである。

カザフ人の大部分は、モンゴル国最 西部のバヤンウルギー県に住んでいる。

1990年頃までのバヤンウルギーの カザフ人の人口は約10万人程度であ ったが、民主化後多くのカザフ人が カザフスタンに移住していった。そ の数ははっきりしていないが数万人 といわれている。しかしカザフスタ ンの経済状態がよくないこともあり、

モンゴルへ戻ってきている人も多い。

現在では大量移住は収束しており、

代わりにカザフスタンとモンゴルの 間を、仕事や学業などの目的で行き 来する人々が増えている。

バヤンウルギーの県庁所在地の町 ウルギーまでは、首都ウランバート ルからプロペラ飛行機の定期便が週

3回就航しており、飛行時間は約4時 間である。飛行機の窓からは雪をか ぶったアルタイ山脈が見え、草原の 多いモンゴル国中央部とは、一味違 った景色が楽しめる。バヤンウルギ ーはその北西と南西の県境が、それ ぞれモンゴルとロシア・中国との国 境になっており、国境を越えての日 用雑貨品等の商取引が盛んである。

取引されているのは物資だけでなく、

ロシアから電力もバヤンウルギーへ 供給されている。そのために、モン ゴル国政府がロシア政府に電力の支 払いを怠ると、送電が停止されるこ ともある。筆者が滞在中にこの停電 状態が起こったことがあり、そのと きは町全体に明かりがなく、夜にな るととても暗かった。

カザフ人達は普段はカザフ語で会 話するが、バヤンウルギーにはモン ゴル系の民族も住んでいるので、ほ とんどの人がモンゴル語も話す。街 中で見かけられる文字は、モンゴル 人が使うキリル文字とは若干異なった、

カザフ式のキリル文字を使用している。

カザフ語の本の出版も行われているが、

経済状態全体が低調なため、出版さ れる本の数は少ない。

カザフのゲルはモンゴルのゲルと は若干、形状が異なっている。モン ゴルのゲルよりも大きく、天井を支 える外枠の棒が長く、そのぶん天井 が高い。また、モンゴルのゲルと違い、

ゲル中心部の天窓を支える支柱がな いので中は広々と感じる。内側の壁 はカザフの文様入り壁掛け絨毯で飾 られている。普通、モンゴルのゲル の入り口は南を向いているが、バヤ ンウルギーのゲルは東を向いている。

これはカザフ人のやり方だが、バヤ ンウルギーに住んでいるモンゴル系 の住民のゲルも、東を向いていた。

最近ではモンゴル文化だけでなく、

カザフ文化にも興味をもった外国人 観光客が多数訪れるようになってき ており、ウルギーには観光案内所も 設置された。「モンゴル国内で見られ るカザフ文化」ということをセール スポイントにして、観光資源化も進 行しているようである。

〈概要〉 アジア諸国では、全ての人に安全な水が十分に行き渡っ ているとは言い難い状況にある。

著者Arthur C.McIntoshはADBでの長年にわたる経験を通じ て得た、アジアにおける水の供給についての知識を、本書にて詳 述している。水源から利用者に至るまでの包括的な実情が紹介さ れているが、政府の目線と同時に貧困層にも視点を合わせ、水資 源管理の問題点を明らかにしている。

本書は特定の国や地域に関するものではなく、読者はそこに盛り込まれた様々な アイディアの中から、それぞれの状況に最適なものを選択するようになっている。

水資源関係機関が利用者によりよいサービスを提供するための指標となるべき資料

である。

(7)

ネパールの地形

エベレスト

ネパール東部ダンクッタ郡 ダンクッタ近くの小学校

ネパール中西部ネパールガンジの 女子高校の授業風景

ネパール西部バグルーン郡バレワの小学校の授業風景

「学校保健」の現状と課題』

長崎大学熱帯医学研究所 助手

金田 英子

●ネパールの主な疾病

●学校における保健・衛生教育の現状

 学校教育制度は、現行では 1学年から5学年(小学校)、6 学年から8学年(中学校)、9、

10学年(高等学校)をとって おり、保健・衛生教育は、1学 年から3学年までは環境周辺 科目、4、 5学年では環境科目、

6学年から8学年は体育科目

の中に、それぞれ必須として、9年生以降は、選択科目として 体育科目の中に位置づけられている。学習指導要領には、具体 的な指導内容が記載されてはいるものの、単元ごとの授業時間 数までは定められていない。この一貫性のないカリキュラムの 位置づけが、年間多数見られる教科別教師トレーニングの中に、

学校保健(健康教育)のみのトレーニングが実施されない理由で もある。教師を対象とした、健康教育に関するトレーニングが 全くなされていないわけではない。多国の援助を受け、高校教 諭などを対象に、薬物乱用やエイズ予防については実施されて いる。ところが、マラリアやリーシュマニアは、ネパール国内 でも流行地域が限られているし、児童・生徒にもっとも身近な 皮膚病や寄生虫病などは、ほとんどの場合、死に直結する疾病 ではない。また、下痢は日常生活の中でも頻繁に見られること なので、教育関係者の意識は

別の方面に向いている。しか し近年になり、ようやく教育・

スポーツ省は学校保健に着目し、

小学校からの徹底した保健・

衛生教育や施設の充実、およ び衛生管理の重要性を提言す るようになってきた。

●小学校が抱える問題

  教 育・ス ポ ー ツ 省 の 報 告

(2001) によると、全国の小学 校 数 は 2 5 , 5 2 2 、 児 童 数 は 370万人とされているが、就 学 率 で 見 る と 7 2 . 1 %( 男 79.4%、女64.4%)で、女児 は約6割に過ぎない。教師数 は99,382人であるが、訓練 された教師は全体の44.5%と半数以下である。そのため学校教 育のレベル向上を図り、各国からの援助に支えられながら、多 教科にわたる教師の再教育がなされているが、小学校が抱えて いる問題は各教科内容の改善や指導方法の向上だけではない。

前回現地を訪れた際、新聞で次のような記事を見かけた。ネパ ールでは多くの教師トレーニングが実施されていて、小学校教 諭はそれに参加するよう政府からの通達があり、やむを得ず参 加しなければならない状況が少なくない。ある村では、小学校 教諭が2人しかおらず、一人が教師トレーニングのためにカト マンドゥーへ行き、一人が病気で休養をとっているため学校閉 鎖が続いている。そこで村の保護者が、交代で児童に読み書き を教えているというのである。ネパールは他国からの援助が多 い国でも知られているが、学校数を増やすことが、必ずしも教 育の向上につながるのではなく、逆に、教師数の不足を増大さ せる一つの原因になることを

示唆している。このような課 題が山積している現状では、

まだまだ"Education  for  all  (すべての人に教育を)"を、最 優先課題とすべきなのかも知 れない。

 「ネパール」と聞くと、「エベ レスト−さぞかし寒く雪に閉 ざされた国」と多くの人は想像 す る か も 知 れ な い 。 東 西 約 800km、南北約200kmの 距離を有する国土は、冷帯か ら亜熱帯までの気候を帯状に

有しており、南部低湿地帯(海抜300m以下)では、盛夏になる とラジオで連日のように、暑さのために何人が死亡したという ニュースが報じられる。熱帯地特有の疾病も見られ、保健省の 統計資料(2001)によると、例えば、インド国境に接している 郡では、東部から極西部全般にかけマラリア

が蔓延していて、

定住者の約73%がその危険にさらされている。地区別に見ると、

極西部や中西部では日本脳炎が多く、感染者数1,908人の約 15%が死に至っている。東部ではリーシュマニア

**

が集中し ており、その感染者数は1,000人に対し45人と深刻な問題と なっている。さらにヘルスサービスの利用頻度が最も高い順に、

皮膚病(5.51%)、下痢症(3.12%)、腸管寄生虫疾患(2.85%)

を挙げている。マラリアや日本脳炎は蚊への対策を実施するこ とで、また、皮膚病、下痢症や腸管寄生虫疾患は衛生に対する 知識の習得により減少させることが可能で、これらは、いずれ も子どもの頃からの徹底した健康教育により、かなりの予防が 期待できる。

ネパール中西部カルナリー県

ジュムラ郡ティルク村の小学校の授業風景

*アノフェレス属の蚊が媒介する。ネパールでは、3月から10月にかけ感染の可能性 が高く、7、8月にピークとなる。三日熱マラリアが多く見られるが、熱帯熱マラリア もあり、発熱、脾腫、貧血などの症状がある。 

**サシチョウバエが媒介する。約3ヵ月の潜伏期の後、高熱、肝・脾の腫大、貧血、

白血球減少などが進み、放置すると衰弱して死亡する。

ネパールガンジ バグルーン

カトゥマンドゥ

ダンクッタ

(8)

編 集 後 記

●[アゴラ]は再生紙を使用しています。●[Agora]とは古代ギリシャの集会所、広場を意味する言葉です。

E-mail [email protected] 財団法人アジア太平洋センター

発 行 日/2004年1月31日

編集・発行/財団法人アジア太平洋センター

〒814-0001

福岡市早良区百道浜2丁目3番26号 福岡タワーセンタービル2階

TEL092-852-1155 FAX092-845-3330 編 集 協 力/(株)アルコス

刷/白木メディア(株)

ニューズレター

Vol.12 No.43

第4回ワークショップ参加者募集

★アジア太平洋センター(APC)賛助会員★

 今年のお正月は穏やかな天候に恵まれて、初詣に出かけた人が統計を取り始めてから過去最高だっ たそうです。私はいつも元日に近所の神社へ詣り、家族の健康と家内安全を祈願します。

経済や生活面において不安材料が多く、ストレスによって健康を損なうことも多くなっています。

昨年はなんとなく過ごしてしまったので、今年は新しいことに挑戦して自分を磨こうと思っています。

皆さんは、何か目標をたてていますか?〈O〉

■表紙

ミン・ワエ・アウン《うちへ帰ろう》油彩・画布 1994/ミャンマー 福岡アジア美術館所蔵 淡い夕焼けの光のもと、一日の仕事を終え、帰路につ く家族たち。作家の故郷ミャンマーの仏塔を彷彿させ る黄金色の光は、しばしば「帰り道」を見失ってしま う現代人の心を優しく包み込む。

第4回アジア美術展(1994)の出品作家として、作 家が3ヶ月間の福岡滞在中に制作した作品。

今回新たにご入会いただいた会員の皆様をご紹介いたします。

ご入会誠にありがとうございます。

アジア太平洋センター ホームページ   http://www.apc.or.jp

●賛助会新規加入会員

(五十音順・敬称略)

●お問い合せはこちらへご連絡下さい!

 〒814-0001  福岡市早良区百道浜2-3-26

 福岡タワーセンタービル2階 財団法人アジア太平洋センター  事業企画係  Tel: 092-852-1155   Fax: 092-845-3330   E-mail : [email protected]

【9:30〜17:30 土曜、日曜、祝日は休みです】

●お申し込み・お問い合せ

 財団法人アジア太平洋センター 研究交流第1係  〒814-0001  福岡市早良区百道浜2-3-26  福岡タワーセンタービル2階

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上田進一郎  太田 一馬  木本 昌宏  黒田  学 末崎 政晃  樋口 幸恵

■個人会員(6名)

テ ー マ:世界都市への挑戦〜万博上海の試み〜

日   時:平成16年2月18日 (水) 13:30〜15:30 会   場:福岡市役所15階講堂

(福岡市中央区天神1-8-1)

講   師:張 明 海

(中国・上海市人民政府発展研究センター研究員、

       アジア太平洋センターフェロー)

コメンテーター:出口 敦

(九州大学大学院人間環境学研究院助教授)

入場無料

定  員:150名(先着順)    

締  切:2月10日 (火)必着

福 岡 市 早 良 区 百 道 浜 2- 3- 2 6 福 岡 タ ワ ー セ ン タ ー ビ ル 2 階

財 団 法 人 ア ジ ア   太 平 洋 セ ン タ ー     研 究 交 流 第 1 係

●講演会名

●郵便番号

●住所

●氏名(ふりがな)

●年齢

●職業

●電話番号

【アジア太平洋センターワークショップ】

センターの活動を通じてネットワークを築いてきた海外 の研究者や有識者を講師として招き、市民や研究者、企 業関係者を対象に 「情報交流、相互啓発の場」 として開催 する講演会です。

※講演は逐次通訳で行われます。

参照

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