基礎数学 I
2011 年前期 , 西岡
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp//˜nishioka/
2 号館 11 階 21131 号室 オフィスアワー : 水曜 4 限
1 集合論
• 数学では, 多くの場面で集合とその演算を利用すると理解が容易になる.
• とくに, 論理の展開や確率論に集合論を効果的に使うことができる.
1.1 用語と記号
I. 範囲を確定した物の集まり を集合 setと呼ぶ. じつはこの説明は 明確ではなく, 集合ははっきり定義できない. 集合A を構成する物を要素
elementaと呼び, 次のように表記する:
(1) a∈A (aがAに属する).
また, (1)の否定を次のように書く:
(2) a"∈A (aがA に属さない).
– 1 –
いかなるものも要素として含まない集合(これも集合と考える)を, 空集合 empty setといい, 次で表す:
∅ (空集合).
II. • 集合 A, Bにたいし,
A=B
とは, Aに属する要素とB に属する要素とがまったく一致することを いう.
• 集合A が, 要素a, b,· · ·, c から構成されているとき, A={a, b,· · · , c}
と書く. なお{a}は唯一つの要素aからなる集合である.
– 2 –
• 「集合A の要素がすべて 集合B に属する」とき ( これを論理式で a∈A⇒a∈B と表す ),
A はB の 部分集合 A⊂B という.
1.2 集合の演算
• 集合A.B の和集合unionA∪B とは,A またはB に属する要素から
構成された集合のことである. つまり
x∈A∪B ⇔ x∈Aもしくはx∈B.
• 集合A.B の 共通部分intersection A∩B とは, A およびB に属する 要素から構成された集合のことである. つまり
x∈A∩B ⇔ x∈Aかつx∈B.
– 3 –
• 集合A.B の差集合 differenceA−B とは,A には属するがB に属さ ない要素から構成された集合のことである. つまり
x∈A−B ⇔ x∈A かつx"∈B.
• とくに 集合 A全空間 X であるとき,差集合 X−B を B る補集合 complement と呼び, Bc と表記する*1.
*1高校数学では,補集合をB と表記するが,大学以降の数学では,この記号には別の意 味があり,今後「補集合を表す記号」としては使わない.
– 4 –
例題1. A={1,2,3,4}, B ={2,4,6}のとき, A∪B, A∩B, A−B, B−A を求めよ. *
[解答]
A∪B ={1,2,3,4,6}, A∩B ={2,4}, A−B={1,3}(= B のAに関する補集合), B−A={6}(= Aの B に関する補集合).
定理 2. 任意の集合A, B, C にたいし, つぎの等式が成立する: (i) A∪A=A, A∩A=A,
(ii) A∪B=B∪A, A∩B=B∩A, (iii) `
A∪B´
∪C=A∪` B∪C´
, `
A∩B´
∩C=A∩` B∩C´
, (iv) `
A∪B´
∩C=` A∩C´
∪` B∩C´
, `
A∩B´
∪C=` A∪C´
∩` B∪C´
, (v) A∪ ∅=A, A∩ ∅=A, A− ∅=A, A−A=∅.
(vi) (ド・モルガン) `
A∪B´c
=Ac∩Bc, `
A∩B´c
=Ac∪Bc, %
問題 3. 定理2 の(iii)を使い, 次の等式を証明せよ.
!"
A∪B#
∪C$
∪D ="
A∪B#
∪"
C∪D#
=A∪! B∪"
C∪D#$
.
!"
A∩B#
∩C$
∩D ="
A∩B#
∩"
C∩D#
=A∩! B∩"
C∩D#$
.
– 6 –
例題 4. あるクラスの50人に,サッカー(=S),野球(=B), テニス(=T) のどれが好きかを調べ,次の結果が得られた:
(i) Sが好きなものは35人, (ii) Bが好きなものは 30人,
(iii) Tが好きなものは15人, (iv) Sと Bが好きなものは20人,
(v) SとTが好きなものは10人, (vi) BとTが好きなものは 8人,
(vii) どの種目も好きでないものは4 人.
3種目とも好きなものの人数を計算せよ. *
[解答] サッカー好きなものをS, 野球好きをB, テニス好きをT で表 すと,
#(S∩B) = 20, #(S∩T) = 10, #(B∩T) = 8, となる.
S
B T
x
– 8 –
また, #(Sc∩Bc∩Tc) = 4 だから,#(S∪B∪T) = 50−4 = 46であ る. #(S∩B∩T) =x とおくと,
46 = #(S∪B∪T)
= #S+ #B+ #T −#(S∩B)−#(S∩T)
−#(B∩T) + #(S∩B∩T)
= 35 + 30 + 15−20−10−8 +x= 42 +x.
つまり,
x= 46−42 = 4. !
– 9 –
例題 5 (国公一種). 50 人の学生について, 英数国の3科目中で得意な科 目を調べた.
(i) 英語が得意なもの30人, (ii) 国語が得意なもの25 人,
(iii) 数学が得意なもの20 人, (iv) 3科目とも得意なもの5 人,
(v) 1 科目だけ得意なもの20人.
3 科目とも不得意なものは何人か? *
– 10 –
[解答] 英語が得意なものをE, 国語が得意なものをJ, 数学が得意なもの をM で表す. 英語だけが得意なものは,
#E−%
#(E∩J) + #(E∩M)&
+ #(E∩J∩M).
同様に, 国語だけが得意なものは,
#J−%
#(E∩J) + #(J ∩M)&
+ #(E∩J ∩M).
数学だけが得意なものは,
#M−%
#(E∩M) + #(J∩M)&
+ #(E∩J∩M).
つまり1 科目だけが得意なものは, これらを足し併せて
#E+ #J+ #M−2%
#(E∩J) + #(E∩M) +#(J∩M)&
+ 3 #(E∩J ∩M)
– 11 –
この式に数値を当てはめて
20 = 30 + 25 + 20−2%#(E∩J) + #(E∩M) + #(J ∩M)&
+3×5 = 90−2%
#(E∩J) + #(E∩M) + #(J∩M)&
. これより
%#(E∩J) + #(E∩M) + #(J∩M)&
= 35.
一方
#"
E∪J∪M#
= #E+ #J+ #M
−%
#(E∩J) + #(J∩M) + #(E∩M)&
+ #(E∩J∩M)
= 30 + 25 + 20−35 + 5 = 45 だから
#(Ec∩Jc∩Mc) = 50−#"
E∪J∪M#
= 50−45 = 5人. !
– 12 –
1.3 一般化
前節の議論は一般化でき, 大変有用である.
定理6. 集合 A1, A2,· · · に対し,次が成立. #A でA に属する要素の数
を表す.
(i) #(A1∪A2) = #A1+ #A2−#(A1∩A2).
(ii) #(A1∪A2∪A3) = #A1+ #A2+ #A3
−%
#(A1∩A2) + #(A2∩A3) + #(A3∩A1)&
+ #(A1∩A2∩A3).
(iii) #(A1∪A2∪A3∪A4) = #A1+ #A2+ #A3+ #A4
−%
#(A1∩A2) + #(A2∩A3) + #(A3∩A4) + #(A4∩A1)&
+%#(A1∩A2∩A3) + #(A2∩A3∩A4) + #(A3∩A4∩A1) +#(A1∩A2∩A4)}−#(A1∩A2∩A3∩A4). *
定理 7. n個の集合A1, A2,· · ·, An に対し次が成立する. ただし#Ak
で 集合 Ak に属する要素の数を表す.
#(A1∪A2∪· · ·∪An) = '
1≤k≤n
#Ak− '
1≤j<k≤n
#(Aj ∩Ak)
+ '
1≤i<j<k≤n
#(Ai∩Aj∩Ak) +· · · (つまり−と+が交互に現れる). *
– 14 –
1.4 論理への応用
問題 8. 次の各項目が成立している:
• ジャズが好きな人は自由が好きである.
• 数学が好きな人は英語が好きではない.
• 歴史が好きな人は自由が好きである.
• 地理が好きな人は演歌が好きではない.
• 物理が好きでない人は演歌が好きである.
• 物理が好きな人は自由が好きではない.
• 物理が好きでない人は英語が好きである.
このとき, 以下の項目を「正」「誤」「不明」に分類せよ. 1. 歴史が好きな人は英語が好きではない.
2. 数学が好きでない人は地理が好きである. 3. ジャズが好きな人は地理が好きである. 4. 数学が好きな人は歴史が好きではない. *
[問題8 解答] ジャズ好き=J,自由人=F, 数学好き=M,英語好き= E, 歴史好き =H, 地理好き=G, 演歌好き=S, 物理好き =P とする. 成立しているのは
J ⊂F, M ⊂Ec, H ⊂F, G⊂Sc, Pc⊂S, P ⊂Fc, Pc⊂E
組み合わせて(定理2 (vi) も使う)
J ⊂F ⊂Pc⊂S ⊂Gc, J ⊂F ⊂Pc⊂E⊂Mc, H ⊂F ⊂Pc⊂S⊂Gc, H ⊂F ⊂Pc⊂E⊂Mc, G⊂Sc⊂P ⊂Fc ⊂Jc, M ⊂Ec⊂P ⊂Fc⊂Jc, G⊂Sc⊂P ⊂Fc ⊂Hc, M ⊂Ec⊂P ⊂Fc⊂Hc. これより, 1=誤, 2=不明, 3=誤, 4=正. !
– 16 –
2 実数
現代数学では 無限 を日常的に取り扱う. その際, 奇妙なことが生じる. パラドクス?
! "
例題 9. 次の等式を証明せよ.
(3) 0.999· · ·= 1. *
# $
[証明] Step 1 (簡単な方法). 小学校で学ぶ割り算を認める:
(4) 1
3 = 0.333· · ·
この(4)の両辺に3 を掛けて, (4)と (3)は同値となる:
1 = 3×1
3 = 3×0.333· · ·= 0.999· · ·.
– 17 –
Step 2. しかし厳密には, 「無限小数0.333· · · に3 を掛ける」演算が可 能かどうかに多少の疑問点が残る. そこで
x≡0.999· · · とおき, 10x−xを計算する:
10x = 9.999· · · +) −x = −0.999· · · 9x = 9.000· · · つまり9x= 9 ⇔ x= 1. !
– 18 –
現代数学の特徴
! "
• 現代数学の特徴は, 無限を頻繁に扱う 点にあるが, 例題 9,??に示 されるように, 無限を扱うには特別の注意が必要である.
• さらに 現代数学では「小さな無限, 大きな無限, より大きな無限,
· · ·」など無限の大小関係を比較することが可能である.
# $
• 基礎数学の目的である ‘微積分’ の根底にあるものは極限. この極限は 実数の上で展開される. そのため,極限=微積分を理解するためには「無 限の厳密な理解」および「実数の理解」が必要.
• 本節の内容は「数III, C」を超えているし, それとの繋がりも無い.
• 誰にとっても ‘初めての話’ なので, 是非, 理解すること.
– 19 –
2.1 自然数から有理数へ
まず自然数 Nとは,
N={1,2,3,· · · } のことである. m, n∈Nにたいし
(5) 四則演算: 和 m+n, 差m−n, 積m×n, 除 m
n を自由に使いたい.
– 20 –
(i) しかし(5)の 差m−n が一つの集合の中で完結するためには, 自然数の全体Nでは不十分で,
整数 Z={· · ·,−2,−1,0,1,2,3,· · · } まで広げなければならない.
(ii) さらに(5)の 除m/n が一つの集合の中で完結するためには, 整 数の全体Zでも不十分で,
有理数 Q={m
n :m, n∈Z, n"= 0} まで広げる必要がある.
ところが:
(iii) 一辺の長さ1 の正方形ABCD の対角線AC の長さx は, 有理数
Qの範囲に留まらないことが証明できる(有理数の不完全性, 練習問 題 10 ).
A D
C B
(iv) また x2 = 2という方程式を解こうとすると, 有理数 Qの中では解 が見つからないことも証明できる( 練習問題10 ).
– 22 –
(v) また近代数学では, 頻繁に極限操作を行うが, √
2 = 1.41421· · · に 収束する数列
a1 = 1, a2 = 1.4, a3 = 1.41, a4 = 1.414,· · · , を考えると「収束先が見つからない」という不都合がおこる. など多くの不具合が発生する. そのためQをさらに広げる必要がある. 問題 10. 辺の長さが1である正方形ABCD の 対角線AC の長さ xは 有理数ではないことを示せ. *
[解答] まず ピタゴラスの定理 より
(6) x2 = (AB)2+ (BC)2 = 12+ 12 = 2.
A
B C
D
1 x
つぎに, もし xが有理数だとすると, ある 整数k, j があり x= j
k, k"= 0,
j, k は既約(つまり 1以外の公約数を持たないこと) (7)
– 24 –
と表される. ところで(6)より j2
k2 =x2 = 2 ⇒ j2= 2·k2 ⇒ j は偶数
⇒ ある整数 q があり,j = 2·q すると
2·k2 =j2= (2·q)2= 4·q2 ⇒ k2 = 2·q2 ⇒ k は偶数
⇒ ある整数r があり, k= 2·r.
結局 j
k = 2·q 2·r
となり(7)で仮定した 既約 に反する. よって, (7)が間違っており, x は有理数ではない. なお上記の議論により, x2 = 2 の解が有理数でな い ことも示されている. !
– 25 –
2.2 有理数から実数へ
そこで私達は 前述I, (v) の不具合を解消するために,「次に述べる(8)の 方法」で, 有理数Qを拡大する.
すると具合の良いこと,前述 I, (iii) – (vi)の難点もすべて解消されること が証明できる*2.
有理数からなる数列 で「基本列」と呼ばれる性質(9)を 備えたものの極限全体を考え,それを 実数 Rとよぶ. (8)
直感では理解しにくいが,これが 実数R(数直線上の全ての点の集合) で ある.
*2この 拡大の方法 とか, それで不具合が解消される ことなど論 ずることが, 「実数論」である. またどちらも無限個だが, 「実数の 個数>有理数の個数」となることが証明できる.
– 26 –
まず基本列 の定義を述べる.
定義 11. (実数でも有理数でも)数列 {an} が 基本列 とは, 任意のε>0 にたいし, ある自然数N があり,
m, n≥N → |am−an|≤ε (9)
をみたすことである. *
注意 12. 大雑把ににいうと, 基本列{an}とは, nが大きくなるにつれ,
|an−an+1| がいくらでも小さくなる数列のことである.
任意の基本列{an}の極限をすべて付け加えて, 実数 Rを作ったので, 前 述(v) の不具合は解消された.
– 27 –
こうやって得られた 実数Rは次のような良い性質を備えている. 命題13 (実数の性質).
(i) (四則演算が閉じている) a, b∈R
⇒a+b, a−b, a×b∈R, b"= 0なら a/b∈R. (ii) a, b∈R ⇒ a < b , a=b, a > b のどれかが成立*3. (iii) a, b∈R, a < b ⇒ a < c < bとなるc∈Rが存在する*4.
(iv) 実数列{an}⊂Rが(9)を満たせば, 必ずlimn→∞an∈Rが存在 する*5. *
*3 この性質を 線形順序性 という.
*4 この性質を 稠密性 という.
*5 この性質を 実数の完備性 という. 有理数全体Qは完備性を備えていない. – 28 –
3 無限の数え方
現代数学の特徴の一つは「無限を頻繁に扱う」ことである. ここでは「無 限」を分類するが, 無限を数えるための準備を行おう.
3.1 数の数え方 ( 基礎数学 I)
(i) 男子学生a, b,· · ·, から数人を選び,集合 X を X ≡{a, b, c, d, e,}
と定義する. X の人数は5 と直ぐに数えられるが, ここで 数える と は次を意味する:
U を自然数の部分集合 U ≡{1,2,3,4,5} とするとX と U とに
1 : 1関係がある=X の要素に番号をつける.
!全単射 "
定義 14. ある集合 Aと B とに1 : 1関係があるとは, 以下の条件を
みたす関係式h:B →A が存在することである:
x∈B にたいし h(x)∈Aかつ h(B) =A, x, y ∈B かつ x"=y⇒h(x)"=h(y).
(10)
(この(10)をみたす関係式を全単射とよぶ.) *
# $
(ii) Step 1. 女子学生の集合
Y ≡{α,β,γ,δ,&}
がある. いまX とY が同数であることを確認するには, 「Y とU
={1,2,· · · ,5}とに 1:1の関係がある」ことを確かめるより, もっと簡単
な方法がある.
– 30 –
Step 2. X と Y が同数であることを確かめる簡単な方法
=「男女が1:1で互いに手をつなぐ」.
⇒ 全員が手をつなげれば, X と Y は同数. つまり h:X ↔Y
という全単射が存在した.
(∗) 以後, この考え方を使う. ⇔X と Y の要素の個数が判らなくても,
‘同数’ が確かめられる.
2. 定義14の方法を使えば(数を数えられなくても)「集合A とB が同 数」を確かめられる.
同数 の厳密な定義
! "
定義 15. (i) 集合Aと B の元の個数が同数, (今後は, Card[A] =Card[B] という記号を使う. )
⇔ Aと B とに1 : 1関係式h が存在することである. (ii) 集合A の元の個数はB より少ないか等しい. (今後は, Card[A]≤Card[B] という記号を使う.)
⇔ B の部分集合 C で, 「Aと元の個数が同数」のものが存在する.
#* $
– 32 –
例題16. 学生の集合X ={a, b, c, d, e}と 椅子の集合 Y ={ア, イ,ウ, エ, オ, カ}の元の個数を比較せよ.
[ 解答 ]
X と Y の間には, どんな全単射も存在しない.a b c d e
ア イ ウ エ オ カ
1:1 対応がない
つまり, 二つの集合A, B の元が同数でなければ, AとB の間には全単射 が存在しない. *
– 33 –
3.2 可算無限
自然数の全体
N={1,2,3,· · · }
の個数は無限個だか, この無限を特に可算無限ℵ0(アレフ ゼロ) と呼ぶ. 可算無限の例
! "
例題 17. 以下を証明せよ.
(i) 偶数の全体の個数は可算無限 ℵ0. (Card[偶数の全体] =ℵ0.) (ii) 整数の全体Z の個数は可算無限ℵ0. (Card[Z] =ℵ0. )
(iii) 2次元整数の全体 Z2 = {(n, m) : n, m ∈Z} 個数は可算無限
ℵ0. ( Card[Z2] =ℵ0.)
(iv) 有理数の全体Qの元の個数は可算無限 ℵ0. ( Card[Q] =ℵ0.)
# $
– 34 –
[解答] (i) 偶数の全体をEとおく. k∈Nにたいし h(k)≡2k とおく.
h(1) = 2, h(2) = 4, h(3) = 6,· · · h:N→Eは全単射だからNとEの元の個数は同じ.
(ii) 関係式h を
h(k) =
( −2k+ 1 k≤0
2k k≥1 とおく.
– 35 –
つまり
h(0) = 1, h(−1) = 3, h(−2) = 5,· · · h(1) = 2, h(2) = 4, h(3) = 6,· · ·
となるので, h:Z→Nは 全単射. これは,下図の方法で整数Zを数え ること:
-2 -1 0 1 2 3
– 36 –
(iii) 2次元整数のZ2 を漏れなく数え上げる方法を言えばよい. 図で示す
と,下図の方法がそれ.
(iv) ある整数m, n(n"= 0) があり,x=m/n と表現できる数の全体が 有理数Qである.
このとき
x= m
n ∈Qにたいし ϕ(x) = (m, n)∈Z2
という対応を考えると,Qの元の個数が Z2 より少ないことが判る. ( 例えば,1/2∈Qに対応する Z2 の元は(1,2),(2,4),· · · と無限個ある. またn"= 0なので(1,0),(2,0),· · ·∈Z2 に対応するQの元は存在しな い.)
一方, Q⊃NなのでQの元の個数はNの元の個数(=可算無限ℵ0) より 多い.
つまり(iii) の結果を使うと
ℵ0=Card[N]≤Card[Q]≤Card[Z2] =ℵ0
となり, (iv)が証明された. !
– 38 –
3.3 非可算無限
前節では, 可算無限ℵ0 の例しか提示しなかった. ではℵ0 より 大きな無 限 は有るのか? この疑問に答えるため, 数直線上の 区間
I ≡{x∈R: 0≤x≤1}を考える. 可算無限より大きい無限
! "
定理 18. I の元の個数は可算無限 ℵ0 より真に大きい. *
# $
非可算無限
! "
定義 19. I の元の個数を 非可算無限c (シー) と呼ぶ( 連続無 限 ともいい, ℵ1 (アレフ ワン)とも記す). *
# $
定理20 (定理 18の別証). 開区間(0, 1) 上の点の個数は, 自然数Nの 個数より真に多い. つまり, (0, 1) 上の点の個数は非可算c である. * [証明] 背理法で示す. いま, 開区間(0,1)の元の個数を可算無限ℵ0 とす る. すると 開区間 (0,1) の元は
{f(1), f(2),· · ·, f(k),· · · } と番号がつけられ, 小数表示を使うと
(11)
f(1) = 0.a11a12a13a14 · · · f(2) = 0.a21a22a23a24 · · ·
...
f(k) = 0.ak1ak2ak3ak4 · · · ...
– 40 –
という表が得られる. ここで, akj は 0≤akj ≤9 なる整数である. この表から新しい整数列b11, b22,· · · を以下の方法で定義する:
bjj ≡
) 1 もし ajj "= 1 2 もし ajj = 1
この整数列b11, b22,· · · から 開区間 (0, 1) の点x を次で定義: x≡0.b11b22 · · ·bjj · · ·
b11 "=a11 だから x"=f(1), b22 "=a22 だからx"=f(2),
· · ·, bkk"=akk だから x"=f(k),· · · に注意すると, 次の矛盾が出現する:
x∈(0, 1) だが 表(11)の右側のどの数字とも一致しない⇒ ところが, (0, 1) 上のすべての点は 表(11)の右側に現れるので,x"∈(0, 1) *
– 41 –
(∗) Rの部分集合の点の数を数える. 無限が関わるといろいろ不思議な 事が起きる.
例題 21. 線分X ≡[0,1]とY ≡[0,2]上の点の個数は等しい. [証明] 定義2.9より Aと X 間に全単射が有ることを言えばよいが, f :X →Y; f(x) = 2x, が条件を満たしている:
2 x
0 x 1
2
f(x)= 2x
!
– 42 –
例題 22. 次を証明せよ:
閉区間X ≡[0,1]と半開区間Y ≡[0,1) 上の点の個数は等しい.
[証明] 定義2.9より X とY 間に全単射が有ることを言えばよい. X 上 の点列B, Y 上の点列C を
X ⊃B ≡{bk≡ 1
2k, k= 0,1,· · · }
={1,1
2,· · ·, 1 2k,· · · } Y ⊃C≡{ck= 1
2k+1, k= 0,1,· · · }
={1 2, 1
4,· · ·, 1 2k,· · · } とおく.
f :X →Y; f(x)≡
( x もしx∈X−B
ck もしx=bk – 43 –
このf は, f(1) = 1/2, f(1/2) = 1/4, ,· · · であり,B, C 以外の点は同じ 点に対応している. これは, 下図のように全単射を定義している:
1
1/2
1/4 1
1/2
1/4 1/8
0 0
1/8
!
– 44 –
命題23. 数直線R≡(−∞,∞) と開区間Y ≡(−1,1)上の点の個数は等 しい.
[証明] 下の関数f :Y →R; f(x) = 1
1−x − 1
1 +x を使い, 例題21 と 同じ議論を繰り返す.
!0.5 0.5
!5 5
!
3.4 まとめ
代表的な無限集合の元の数は以下の通り: 可算無限 ℵ0 自然数N
整数Z k 次元格子点Zk 点列{1, 1/2,1/3, 1/4,· · · }
有理数Q 非可算無限 c 開区間 (0,1) の点の数
(ℵ1) 閉区間[0, 1]の点の数 実数R
k 次元実数Rk
– 46 –
(∗) いくつかの事実.
例題 24. 「実数Rから 有理数 Qを差し引いた集合=無理数」の元の数 を数えよ.
[解答] 無理数の個数=c である. !
例題 25. 可算無限ℵ0 と非可算無限c との間には, 別の大きさの無限が有 るのか?
[解答] 「証明が不可能」 ということが証明されている. 「無い」と仮定 するのが, 連続体仮説 で, こう仮定して不都合が無いことも証明されて いる. !
例題 26. 非可算無限c より真に大きい無限が有るのか?
[解答] この証明も易しくないが,「有る」. 実数R上の関数全体 の個 数は, 真にc より大きく,2c と表記できる. !