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視覚情報記号論レジメ 10

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Academic year: 2021

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視覚情報記号論レジメ 10

名古屋市立大学2016年度講義 久木田水生

1 アフォーダンスとデザイン

認知心理学者のドナルド・ノーマンは,ギブソンの「アフォーダンス」の概念に基づくプロダクト・

デザインの理論を提唱している.ノーマンによれば,良いプロダクト・デザインとは利用者たちの認知と 行為の傾向性から自然にそれを利用するための最適な動作が生まれるようなもの,一言で言えば「直感 的に使える」ものである.

例えばドアに取っ手がついていれば,それは「握って引く」という行為のためのアフォーダンスを提 供する.しかしもしそのドアが押し開けるものであるとき,このデザインは利用者に対して相反するア フォーダンスを提供してしまう.取っ手は「握って引く」という行為を引き出すものであるのに,ドア自 体は引っ張っても開かないからである.このようなデザインは利用者の認知と行為を混乱させるもので あり,優れたデザインとは言えない.

デザインをアフォーダンスの面から考えるとき重要なのは,環境が与えるアフォーダンスは,その環 境の中で活動する個体の特徴や能力によって大きく異なるということである.また人間の認知や行為の 傾向は学習によって形成されるものが多くの部分を占めるので,文化や風習の異なる社会においては同 じデザインが異なるアフォーダンスを提供しうる.従ってデザインはそれを利用するのがどのような 人々であるかということを意識した上で作らなければならない.

2 道具と人間の共進化

革新的な道具というものはそれまで人間が使っていたどんな道具とも異なっているものである.その ような道具に関しては「直感的に使える」デザインを考えることは難しい.それでも人間がすでに持って いる認知と行動の枠組みを意識したデザインを心がけることは重要である.

しかしながら,新しい道具で最初は使い方が全く想像つかないようなものでも,人間の持つ高い順応 性は,新しい道具を使っていくうちに,それが組み込まれた環境がどのようなアフォーダンスを提供す るかを学習することを可能にする.このことが人間に新たな認知と行動の習慣を形成させる.そしてデ ザイナーはその新しい認知と行動の習慣を利用したデザインを作りこむことが可能になるのである.こ のようにして人間と道具(を含んだ環境世界)は共進化して,ますます豊かなアフォーダンスにあふれる 世界を構築してきたのである.

参照

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