厚生労働科学研究費補助金 (エイズ対策研究事業)
分担研究報告書
HIV/HCV重複感染患者の予後調査(中間報告)
研究分担者 四柳 宏 東京大学生体防御感染症学 准教授
共同研究者
塚田訓久(国立国際医療研究センターエイズ研究開発センター)
今村道雄(広島大学消化器・肝臓内科)
本多隆(名古屋大学消化器内科)
A.研究目的
本邦のHIV/HCV 重複感染例は血友病の 患者が多い。若い頃から頻回に輸血を受け ていることもあり、HCVへの罹患年齢が若 く、若年で進展慢性肝疾患に至る可能性が ある。HIVへの重複感染があることも肝疾 患の進展を早める原因である。本研究の目 的はこうした症例における肝疾患の進展に 関する知見を得ることである。
B.研究方法
2004年に HIV/HCV重複感染症におけ る肝疾患ガイドライン を作成する目的で 厚生労働省研究班(小池和彦班長)におい て肝機能の断面調査を行い、2009年にその 追跡調査を行った。本研究では調査に参加 した施設のうち、本年1月までに追跡調査 の結果が出そろった3施設での予後調査を 行った。
(倫理面への配慮)
東京大学医学部倫理委員会に ヒト免疫 不全ウイルス(HIV)感染者における C型肝炎ウイルス感染症の予後因子に関す
る研究 ということで申請し、研究許可を 得ている(審査番号10678)。
C.研究結果
3施設から合計138例の症例がエントリ ーされた。以下の点に関して解析を行った。
(1)生命予後
2004年から 2014年の間に 138例中21 例(15%)が死亡していた。死亡時年齢の 中央値は50歳であった。死因としては、① 肝硬変(肝不全)6例、② 肝細胞癌 3
例、② PML3例、④ 腎不全2例、④ 多
臓器不全2例、⑥悪性リンパ腫、直腸癌、
肺炎、乳酸アシドーシス、インターフェロ ン投与中の原因不明死、各1例であり、肝 疾患関連死は9例(43%)であった。
(2)食道静脈瘤の合併
肝硬変、非肝硬変を問わず、門脈圧亢進 症の所見として観察される可能性がある。
本研究では17例(12%)に10年以内の食 道静脈瘤合併が見られた。発症年齢の中央 値は43歳であった。17例中14例は1990 年代にARTが導入されていた。17例中11 研究要旨 HIV/HCV重複感染患者の長期予後を知る目的で、2004年に調査を行った患 者138名の追跡調査を行った。10年の追跡期間中に21名が死亡しており死亡時年齢の 中央値は 50 歳であった。死因は肝硬変(肝不全)6例、肝細胞癌3例、PML3例の順 であった。食道静脈瘤の発生を17例、非代償性肝硬変への進展を12例、肝細胞癌の合 併を9例にそれぞれ認めた。これらのいずれかの合併は27 例に認められた。HIV/HCV 重複感染患者の約2割が10年以内に進行肝疾患に進展し、その4割近くが死亡すること が判明した。進行肝疾患の合併年齢の中央値は 51 歳であり、HIV 合併により進展速度 が早くなることも示唆された。
例は血小板数100000/uL未満であり、残り の6例中5例はアルブミン値が4g・dL 未 満であり、17 例中16 例は臨床的に肝硬変 が疑われた。
(3)肝不全の合併
腹水または肝性脳症の出現をもって肝不 全の合併とした。12例(9%)にいずれか の出現を見た。発症年齢の中央値は50歳で あった。12例中9例は肝細胞癌の合併のな い症例であった。ビリルビンが3mg/dL 以 上に上昇した症例が13例あったが、1例を 除いて肝不全もしくは肝細胞癌の合併例で あった。
(4)肝細胞癌の合併
肝細胞癌の合併は9例(6%)に見られ、
うち6例は死亡した。平均罹病期間は3年 であった。発症年齢の中央値は60歳。9例 中8例は血友病の症例であった。
(5)進展慢性肝疾患の合併
(2)から(4)までの少なくともいず れかを合併する患者は27例(19%)であっ た。年齢の中央値は51歳であった。
D.考察
本邦のHIV/HCV 重複感染例は血友病の 患者が多く、肝疾患の進展に関しても諸外 国と一律に考えることができない。
今回の調査では肝疾患で亡くなる血友病 患者が10年間で6.5%(138人中9名)、即
ち年率 0.65%であった。現在血友病者で肝
疾患のため毎年数名が亡くなっている状況 に合致する数値である。その他日和見感染 である PML で亡くなる人が死因として目 立った。
食道静脈瘤の合併が10 年間で 12%に認 められた。その90%近くは肝硬変を伴って いる。発症年齢の中央値は43歳と若く、長 い罹患歴、HIV 治療に用いられた d-drug の影響が考えられた。
肝不全の合併は年率 0,9%程度であった。
HCV 単独感染症では肝細胞癌の合併が高 頻度に見られるが、今回のコホートでは 75%の症例には肝細胞癌の合併は見られな かった。肝移植の適応になる症例がかなり 含まれていることを示唆するデータであっ た。
肝細胞癌の発症は年率 0.6%であったが、
9例中6例が亡くなっており、罹病期間は 3年であった。これは HCV 単独感染症と 比較して明らかに短く、HIV/HCV 重複感 染例における治療の困難さを反映したもの と考えられる。
進展慢性肝疾患のイベントは 10 年間で
19%に認められており、今後DAA併用療法
によるウイルス排除が極めて大切である。
E.結論
HIV/HCV 重複感染者の半数近くは現座
も肝臓病のために亡くなる。イベント発生 は50歳前後であり、早急な抗ウイルス療法 の導入が臨まれる。
F.健康危険情報 なし
G.研究発表 1.論文発表
Ohgishi M, Yotsuyanagi H, Tsutsumi T, Gatanaga H, Ode H, Sugiura W, Moriya K, Oka S, Kimura S, Koike K.
Deconvoluting the composition of low-frequency hepatitis C viral quasispecies: Comparison of genotypes and NS3 resistance-associated variants between HCV/HIV coinfected hemophiliacs and HCV monoinfected patients in Japan. Plos One [Epub ahead of print]
2.学会発表
大岸誠人、四柳宏ほか。HCV/HIV 重複感 染 を 有 す る 血 友 病 患 者 に お け る 多 重 Genotype 感染歴・NS3 プロテアーゼ阻害 剤に対する自然耐性変異の頻度に関する検 討。第28回日本エイズ学会学術集会・総 会 大阪市
H.知的財産権の出願・登録状況(予定を 含む。)
1.特許取得 該当なし 2.実用新案登録 該当なし
3.その他 該当なし