JETRO 定期報告 定期報告 定期報告 定期報告 : フィリピン フィリピン フィリピン フィリピン IT 事情 事情 事情 事情 FY2007-No.5 e-Services Philippines 2008 特集
今号 今号今号 今号ののの目次の目次目次目次
1 はじめにはじめにはじめにはじめに...1 2 フィリピンフィリピンフィリピンフィリピンITS/ITES産業産業産業産業はははは2010年年までに年年までにまでにまでに売上売上売上売上130億億億億ドルドルドルドル
雇用 雇用 雇用
雇用100万人万人の万人万人のののO&O産業産業へ産業産業へへへ...1 3 成長戦略成長戦略成長戦略成長戦略としてのとしてのとしてのとしてのアウトソーシングアウトソーシングアウトソーシングとアウトソーシングとと国境と国境国境国境をををを越越越えた越えたえたえた連携連携連携連携がががが
進展 進展 進展
進展しししし、、、フィリピン、フィリピンフィリピンフィリピンののののノウハウノウハウノウハウをノウハウをを他国を他国他国他国でもでもでもでも活活活活用用用する用するするする動動動動きききき....3 4 日本企業日本企業日本企業日本企業もももも2社社社社ががが講演が講演講演講演、、、、パネルディスカッションパネルディスカッションパネルディスカッションにもパネルディスカッションにもにもにも参加参加参加参加4 5 日本日本日本日本からのからのからのからの視察団視察団視察団視察団とととフィリピンソフトウェアとフィリピンソフトウェアフィリピンソフトウェアフィリピンソフトウェア産業協会産業協会産業協会産業協会
(PSIA)がが特別がが特別特別特別セッションセッションセッションセッション実施実施実施実施...4 6フィリピンフィリピンフィリピンフィリピンでのでのでのでのオフショアオフショアオフショアオフショア開発開発開発開発15年年年年ののの実績の実績実績実績をもつをもつをもつをもつAWS社社社社
が が が
が語語語語るるるる成功成功成功成功のののの鍵鍵鍵とは鍵とはとはとは...6 7ESPアワードアワード受賞企業発表アワードアワード受賞企業発表受賞企業発表受賞企業発表...7 8終終終終わりにわりにわりにわりに...7 1 はじめにはじめにはじめにはじめに
第8回目となるフィリピンのITサービス・IT活用サービス(以 下 ITS/ITES) 産業の会議・展示会イベントである eServices Philippines 2008 (以下ESP2008)が、去る2008年2月11日、
12日の2日間にわたってマニラ首都圏パサイ市のマニラ湾埋 立て地区に新設されたSMXコンベンションセンター(写真)
を会場に開催された。
写真:2007年11月にオープンしたばかりのSMXコンベンションセン ター正面入り口の様子
写真:ESP2008開催初日のSMXコンベンションセンター内部
出展したのは、主にバックオフィスBPO、コンタクトセン ター、ソフトウェア開発、各種データトランスクリプション、
ゲーム開発、エンジニアリングデザイン、アニメーション制作 などのサービス事業者、通信サービスなどのインフラ事業者、
フィリピン国内の各地方自治体など約 200 の企業や団体であ る。また、インド、ベトナム、日本、欧米各国そして今年は初 めてロシアからもアウトソーシングサービス業界関係者が一 同に会し、多彩な講演、活発な意見交換、商談などが行われた。
ESP2008 のウェブサイト(www.e-servicesphils.com/en/) か らは、オフショア・アウトソーシング先としてのフィリピンを 紹介する約9分間のビデオ(英語)が公開されており、ITS/ITES 分野でのフィリピン人材の活用の面では日本に大きく先行す る欧米企業幹部の証言を含めた興味深い内容となっている。
今号は、2日間のESP2008現地取材に基づいて報告する。
2 フィリピンフィリピンフィリピンフィリピンITS/ITES産業産業産業産業はははは2010年年年年までにまでにまでに売上までに売上売上売上130億億億億ドルドルドルドル 雇用
雇用雇用
雇用100万人万人万人万人ののののO&O産業産業産業産業へへへへ1
2007 年、フィリピンの ITS/ITES 産業の売上総額は対前年比 50%と大きく伸び、49 億ドルに達した(表 1 参照)。ESP2008 初 日は貿易産業省(DTI)のピーター・ファビラ (Peter Favila)長 官の開会挨拶に始まり、続いてグロリア・マカパガル・アロヨ (Gloria Macapagal Arroyo) 大統領が基調演説を行った。アロ ヨ大統領は、今後も大きな成長が見込まれる O&O 関連業界を支 える人材育成に向けて、小学校から大学まで全ての段階におけ るカリキュラムの改善に取り組むことや、年間 3 億 5,000 万ペ ソの職業訓練奨学金の拠出、アウトソーシング産業拠点を地方 都市に広げるための取組みであるフィリピン・サイバーコリド ー政策を今後も推進していくことなどを表明した。こうした政 策を進めることによって、O&O 産業が 2008 年以降も年率 40%
の高い成長率を維持し、2010 年には売上 130 億ドル、雇用 100 万人の産業となることを目標としていると強調した。
アロヨ大統領に続いて演壇に立ったフィリピン・ビジネスプ ロ セ ッ シ ン グ 協 会(BPA/P)の オ ス カ ー ・ サ ニ ェ ス(Oscar Sañez)CEOは、まず2007年のO&O産業を次の様に総括した。
① 売上高は対前年比50%増で、2010年に向けたロードマッ プ2の予測通りの額を達成。
② 雇用の増加は予測を若干下回った。売上高は予測通りだっ
1 フィリピンでは、コンタクトセンター、メディカルトランスクリプ ション、リーガルトランスクリプション、その他のデータトランザク ション、ソフトウェア開発、アニメーション、エンジニアリングデザ イン、ディジタルコンテンツなどのセグメントを含む産業全体を主に
「ITサービス・IT活用サービス(ITS/ITES)産業」と称してきたが、2006 年頃からは同じ産業を指して「BPO産業」という呼び方も広く使われ るようになった。さらに、2007年10月にフィリピンビジネスプロセ ッシング協会(BPA/P)が発表した2010年に向けての業界ロードマップ の中で採用した「Offshoring & Outsourcing(O&O)産業」という新たな 名称も知られるようになってきた。以降、本報告書の中では、独自の 文脈では「O&O産業」を使い、その他は出所元で使われている表現を 採用しているが、ITS/ITES産業、O&O産業、BPO産業は同義である。
2 BPA/Pのロードマップの概要(英語)は、下記からダウンロード可能。
http://www.bpap.org/bpap/publications/bpap_roadmap.pdf
たことから、人員1人あたりの生産性の面では高まったと 解釈できる。
③ 人員1人あたりの売上増は、コンタクトセンターセグメン トだけでなく、主に財務関連のバックオフィスBPOとエ ンジニアリングサービスのセグメントで特に顕著である。
このような 2007 年の業界総括に続き、サニェス氏は 2010 年の目標達成に向けて最重要課題である人材育成、地方都市整 備、政策・法律・販促・投資家支援面でのビジネス環境整備の 3本の柱に関して具体的な行動計画を示した。
写真左から:DTI のファビラ長官、アロヨ大統領、BPA/P のサニェス CEO
表表表
表 1::フィリピン::フィリピンフィリピンフィリピンITS/ITES産業産業産業産業のののの売上実績売上実績売上実績売上実績のののの推移推移推移推移3 (単位:百万ドル)
業界業界
業界業界セグメントセグメントセグメントセグメント 2004 2005 2006 2007 カスタマーケア 1,024 1,792 2,353 3,600
バックオフィス 123 187 302 398
トランスクリプション 72 115 159 197
アニメーション 52 74 97 105
ソフトウェア開発(輸出のみ) 170 204 271 423 エンジニアリングサービス 34 48 68 152 合計
合計合計
合計 1,475 2,420 3,250 4,875 年成長率年成長率年成長率
年成長率 64% 34% 50%
表 表表
表 2::フィリピン::フィリピンフィリピンフィリピンITS/ITES産業産業産業産業のののの雇用雇用雇用雇用実績実績実績の実績ののの推移推移推移推移4 (単位:人)
業界 業界 業界
業界セグメントセグメントセグメントセグメント 2004 2005 2006 2007 カスタマーケア 64,000 112,000 160,000 198,000 バックオフィス 15,200 23,000 37,000 40,156 トランスクリプション 6,300 8,950 11,675 16,812 アニメーション 3,000 4,500 6,500 7,000 ソフトウェア開発(輸出のみ) 10,000 12,000 16,000 29,188 エンジニアリングサービス 2,000 2,800 4,400 8,000 合計合計合計
合計 100,500 163,250 237,175 299,156 年成長率年成長率年成長率
年成長率 62% 45% 26%
3 出所: BPA/P。BPA/Pによると、2008年から2010年の間のセグメン ト毎の予測値の改訂を行っていないとのことだが、業界全体としては 2010年に130億ドルの売上を目指している。
4 出所:BPA/P。BPA/Pによると、2008年から2010年の間のセグメ ント毎の予測値の改訂を行っていないとのことだが、業界全体として は2010年に約100万人の雇用を目指している。
O&O 産業拠点としての地方都市整備に関しては、サイバー
コリドー政策を主導する情報通信技術委員会(CICT)のレイ・ア ンソニー・ロハス-チュア(Ray Anthony Roxas-Chua III )委員長 が熱弁を振るった。昨年10月に就任したばかり、32歳の若い CICT 委員長は、「首都圏の人口はフィリピン全体の 12%に過 ぎないが、現在O&O産業の雇用の80%は首都圏に集中してい る。今後は、O&O拠点として新興の地方都市(New Wave Cities) の人材活用を拡大し、地方の雇用創出につなげていく必要があ る。」と訴えた。また、「フィリピンで地方都市に出張するとい うことは、美しいビーチでリラックスするチャンスもあるとい うことです。」とさりげなくフィリピンならではの良さをアピ ールしていた。
写真:既に米国資本コールセンターやBPO企業数社が進出済のドゥマ ゲテ市沖にあるアポ島のビーチ。アポ島は海洋生物保護区となってお り、ダイビングスポットとして人気がある。
CICT では、人材、インフラ、
ビジネスコスト、ビジネス環境な どのカテゴリーに分類された評 価インデックスからなるスコア カードを使って地方都市の評価 を進めている。チュア委員長によ ると、2008 年後半には評価ラン キングを公表したいとのことで ある。現時点では、マニラ首都圏、
セブ、ダバオ、クラーク、バギオ、
イロイロ、バコロド、ドゥマゲテ などを含む16都市には既にO&O 企業が進出済みで、その他の6都 市も、現時点で未だ進出企業はな いものの、企業進出に適した環境 が整っているという評価をして いるという。
なお、チュア委員長が、ESP2008 の会場でフィリピンの日 刊紙インクワイヤラーの記者のインタビューに答えて New Wave Citiesについて説明するビデオがYou Tube上で公開さ れている。(http://www.youtube.com/watch?v=5IrpX9JjUp0)
写真:ESP2008で講演する チュアCICT委員長
3 成長戦略成長戦略成長戦略成長戦略としてのとしてのとしてのとしてのアウトソーシングアウトソーシングアウトソーシングアウトソーシングととと国境と国境国境国境をををを越越越越えたえたえたえた連携連携連携連携がががが 進展
進展 進展
進展しししし、、、フィリピン、フィリピンフィリピンフィリピンののののノウハウノウハウノウハウをノウハウをを他国を他国他国他国でもでもでもでも活用活用活用活用するするするする動動動動きききき
昨年、ESP2007の報告では以下の3つの傾向が顕著に感じ
られたと述べた。
① KPO(Knowledge Process Outsourcing)と称される高付加 価値のアウトソーシングサービスに高い注目。
② 大企業を中心に、複数の国に拠点を置いたマルチロケーシ ョンデリバリー体制を確立する動きが拡大。
③ グローバル市場におけるフィリピン ITS/ITESサービス産 業の成熟・ノウハウの蓄積、業界を俯瞰的に考察する余裕 が見えた。
今年のESPでも、マニラに居ながらにしてアウトソーシン グサービスの世界市場で起こりつつあることを垣間見ること ができた。
成長戦略成長戦略成長戦略
成長戦略としてのとしてのとしてのアウトソーシングとしてのアウトソーシングアウトソーシングアウトソーシングへのへのへのへのシフトシフトシフトシフト
まず、国外の人材、いわゆるグローバルリソース活用の目的 は、コスト削減から企業の成長戦略(地理的に新たな市場拡大 や、新商品・サービスの市場投入までの時間の短縮など)に変 わってきていることが強調されていた。昨年報告したKPOの 浮上も、この流れの一環であろう。アウトソーシングサービス のバイヤー側が求めるものが、単なるコスト削減から事業の成 長に寄与することへとシフトしていく中で、ベンダー側も、ま たベンダー企業のデリバリーセンターや自社向けシェアドサ ービスセンターの立地拠点となる各国の都市も、長期的な価値 を提供し続けるためには戦略的な変革が求められている。
BPO 分野に特化している米国の投 資顧問会社Tholonsのアヴィナシュ・
バシスタ(Avinash Vashistha) CEO(写 真)は、今後期待されるアウトソーシ ング拠点として同社が評価した世界各 国の都市のうちの上位 50ヶ所を紹介 しながら、「長期にわたってアウトソ ーシングサービス拠点都市としての優 位性を保ち続けるには、コスト優位性 から、インフラ整備、ビジネス環境整 備、人材の育成と確保、という成熟の ステップを確実に実践できるかどうか が勝負を分ける。」と話していた。
サービスサービスサービス
サービス供給国側供給国側供給国側の供給国側ののの国際連携国際連携国際連携国際連携ややややベンダーベンダーベンダーベンダーのののマルチロケーショのマルチロケーショマルチロケーショマルチロケーショ ン
ンン
ン化化化化ががが進展が進展進展進展
次に、サービス分野でもグローバルな分業が進む中で、今後 はオフショアアウトソーシングサービスを受託して提供する 側の国の間での国境を越えた連携が加速していることが感じ られた。インド、ベトナム、ロシアなどの企業から、パートナ ーシップ構築を希望、あるいはパートナーシップのメリットを 訴える講演が相次いでいた。
例えば、インドとフィリピンの連携は、インドの全国ソフト ウェア・サービス産業協会(National Association of Software and Service Companies 以下、NASSCOM)とフィリピンの
BPA/Pが2006年9月に両団体間での連携合意文書に署名して
以降急速に進んだ。BPA/PのCEO、サニェス氏によると、既
にインド系のアウトソーシングサービス企業12社がフィリピ ン国内でオペレーションを行っており、更に2,3社の進出が決 まっているということだ。主要なところでは、ウィプロ・テク ノロジーズ、インフォシス、アイフレックス・ソリューション ズ、ヒンドゥージャ TMT、サザーランド・グローバルなどが、
既にフィリピンに拠点を持つ。
ESPでのロシア企業による講演は今年が初めてだったが、ロ シアのある大手ソフトウェア企業の社長は、「ロシアでは、修 士号、博士号をもったエンジニアが職に就けないでいるという 現状がある。ロシアの優秀な人材をぜひ活用してほしい。」と 訴えていた。ベトナムで約800人の技術者を擁するTMA社の グエン・レー会長も講演し、「コミュニケーション能力に長け るフィリピンがフロントエンド、コミュニケーション力は弱い が優秀な人材供給にまだ余裕があるベトナムでバックオフィ スサービスというスキームから始めたい。」という趣旨のメッ セージを送っていた。
このように、アウトソーシングサービスのベンダー側が事業 分野や人材規模、地理的な守備範囲を拡大する動きの中で、国 際的な合併・買収(M&A)も非常に活発化している。全世界で投 資顧問サービスを行っているTholons社では、2007年に約520 億ドル規模だったBPO関連のM&Aは、2010年には1,000億 ドルを超えるだろうと予測している。ESP2008 に参加したイ ンド企業の中には、フィリピンのソフトウェア開発サービス企 業の買収を計画しているというところもあり、ESP2008 への 参加とあわせて、買収候補企業の訪問・視察を予定していると いうことだった。
フィリピン フィリピン フィリピン
フィリピンのののグローバルデリバリーノウハウのグローバルデリバリーノウハウグローバルデリバリーノウハウグローバルデリバリーノウハウををを他国を他国他国他国がががが活用活用活用へ活用へへへ マルチロケーションデリバリー体制作りが進み、国境を越え た企業間の提携・連携が加速する中で、フィリピンのオフショ アコールセンター運営ノウハウが次の世代のオフショア先を 目指す国々で生かされようとしている。これまでフィリピンを 最大の拠点として英語圏向けのコンタクトセンター・BPO サ ービスを展開してきたピープルサポート社は、スペイン語圏市 場への事業拡大のために2006年に設立したコスタリカ拠点の 強化とともに中米に新たな拠点設立の準備を進めている5。同 社のコスタリカ拠点の立ち上げにあたっては、管理者クラスの 人員はすべてフィリピンからフィリピン人を現地に連れて行 ったという。
さらに、貿易産業省(DTI)のアキノ上級次官は、ドミニカ共和 国政府からフィリピンのコンタクトセンター・BPO 企業に対 して、ぜひドミニカに進出し、スペイン語人材を使ってオペレ ーションを行ってほしいという招待を受けていることも明ら かにした。アウトソーシングサービス提供国として後発組の 国々では、フィリピンの経験とノウハウの移転に期待を寄せて いるようである。
5 ちょうどESP2008期間中の2月12日に発表された米国のPew
Research Centerのレポートによると、2005年時点で米国の人口の
14%を占めるヒスパニック系人口は、2050年には29%へと倍増すると 予測されている。ピープルサポート社は、スペインや南米のスペイン 語圏市場だけでなく、米国内のスペイン語市場にも注目している。
4 日本企業日本企業日本企業日本企業もももも2社社社社ががが講演が講演講演講演、、、、パネルディスカッションパネルディスカッションパネルディスカッションにもパネルディスカッションにもにもにも参加参加参加参加 昨年のESP2007や、セブで2007年6月に開催されたICT 産業の国際会議イベントでは日本企業の講演が皆無で、日本の プレゼンスは非常に低かったことを以前に報告したが、今年の
ESP2008ではメイン会議で2社の日本企業から日本人による
講演があり、しかも2人とも講演後のパネルディスカッション にも堂々と英語で参加していたことが強く印象に残った。
大手エンジニアリング会社日揮のフィリピン現地法人、JGC フィリピン社(1989 年設立、従業員数 883 名)の松山 喜久 男シニア・バイスプレジデントは、フィリピン、中国、シンガ ポール、インドネシア、パキスタン、アルジェリアなどにグロ ーバルなエンジニアリングネットワークを構築している JGC グループの取組みや戦略、フィリピンの長所・短所について講 演した。松山氏は、フィリピンの長所として英語力、CAD 習 得のセンスのよさ、豊富な人材、人件費の安さ、日本との地理 的な近さ、仕事に向かう態度の良さなどを挙げ、一方改善が望 まれる点として計画性、リーダーシップと調整能力、技術的専 門性、転職率の高さなどを指摘した。
写真:ESP2008 2日目の会議で講演するJGCフィリピン社の松山氏
また、日本のテレマーケティング企 業大手、トランスコスモス社の取締役 副社長石見浩一氏(写真:左)は、
"Marketing Chain Management"6とい う独自のアウトソーシングサービス 概念と、この概念を適用して成功した マーケティングキャンペーンの事例 を紹介する講演を行った。講演後の石 見氏に話を聞いたところ、「フィリピ ンのコールセンター企業に出資する ことを決めており、1,2 ヶ月以内にオ ペレーションを開始する。フィリピン 拠点からは、英語圏向けのサービスに 進出・拡大していきたい。」とのこと であった。日本の大手コールセンター によるフィリピン進出はおそらく初のケースであり、今後の展 開が非常に興味深いところである。
6 同社のウェブサイトによると、「リアルタイムマーケティング活動 と、企業と消費者のダイレクトなコミュニケーションをサポートする コールセンター/コンタクトセンターを同期させることにより、マー ケティングの最適化、効率化をし、売り上げの拡大、新規顧客の獲得、
顧客満足度の向上を実現する」ための概念である。
5 日本日本 からの日本日本からのからのからの視察団視察団視察団視察団ととととフィリピンソフトウェアフィリピンソフトウェアフィリピンソフトウェアフィリピンソフトウェア産業協会産業協会産業協会産業協会 (PSIA)がががが特別特別特別セッション特別セッションセッション実施セッション実施実施実施
今年を含めて8回開催されたこれまでのESPに、日本から は合計で延べ156社から232人が視察団に参加している。(図 2参照)今年は、主に中小規模のソフトウェア開発企業・人材 派遣・コールセンター、CICC、JETROなど13の企業・団体
から19名がESP2008視察団に参加した。初日の午後には日
本人視察団向けの特別プログラムが行われ、フィリピン投資委
員会(BOI)のジャパンデスク、フィリピン日本人商工会議所、
フィリピン大学IT研修センター(UP-ITTC)、財団法人海外技術 者研修協会 (AOTS)、情報処理技術者試験を実施している
PhilNITS財団などの活動についての紹介・説明や、フィリピン
で15年間にわたって日本向けのオフショア開発実績のあるア ドバンスト・ワールド・システムズ(AWS)社の成功事例紹介、
フィリピンソフトウェア産業協会(PSIA)による特別セッショ ンなどが行われた。
28 26
18
36 36
31 38
18 21 19 15
23 21 22 23
13
0 5 10 15 20 25 30 35 40
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 参加者数 参加企業・団体数
図図
図図 1::日本::日本日本日本からからからからe-Services Philippinesへのへのへのへの視察団派遣実績視察団派遣実績視察団派遣実績視察団派遣実績
PSIAは、この特別セッションに先立ってESP2008初日に日
本人視察団との昼食会を主催し、各テーブルにPSIAの理事が 1人以上ずつ入って視察団参加者と一緒に食事をとりながらの 懇親会も行われた。
写真:PSIA主催による日本人視察団との昼食懇親会の様子
PSIA が企画した特別セッションにおいては、フィリピンの ソフトウェア産業の概要説明、米国系の大手アクセンチュア社
やRCG IT社、フィリピン資本としては最大のソフトウェア開
発企業Pointwest Technologies 社などの成功事例紹介、PSIA の「日本市場グループ」に加盟する18社の紹介、フィリピン
人技術者を日本に派遣する場合の具体的な手続きの実務につ いてなどのプレセンテーションが行われた。これらのプレゼン テーション資料は、PSIA のウェブサイトからダウンロードで きるようになっている。
(www.psia.org.ph/RESOURCES/LIBRARY/tabid/56/Default.aspx)
写真左から:日本人視察団との特別セッションで講演した PSIA のア
ン・シー(Anne Sy)エグゼクティブ・ディレクター(ESP2008終了後
の2月18日から5週間、日本で日本語の研修に参加している)、RCG IT社フィリピンのリック・マクドネガル(Rick McGonegal)社長、アク センチュア社のウィンストン・クルズ(Winston O. Cruz)シニア・エグ ゼクティブ、PSIA会長も務めるポイントウェスト・テクノロジーズ社 のマリア・クリスティナ・コロネル(Ma. Cristina Coronel)社長
写真:フィリピンのソフトウェア産業概要について、流暢な日本語で プレゼンテーションをする月電ソフトウェアフィリピンズ社のルエル ムンド・モラレス(Ruehrmund S. Morales)ゼネラルマネージャ アクセンチュア
アクセンチュアアクセンチュア
アクセンチュア社社社の社ののの概要概要概要概要
ITアウトソーシング事業及びBPO事業を展開する米国企業 アクセンチュア社のマニラデリバリーセンターは、1985 年の 設立で現在約 14,000名強の従業員を擁する。このうち半数以 上が IT アウトソーシング事業対応の人材で、フィリピン国内 のITサービス企業としては最大規模である。CMMI7レベル5、
ISO270018、SAS709などの認定を受けており、ホスト系シス
7 CMMI (Capability Maturity Model Integrated):米カーネギーメロン大 学のソフトウェア工学研究所(SEI)が公表したソフトウェア開発プロセ スの改善モデルとアセスメント手法(IT用語辞典e-Words (e-words.jp) より定義を引用)
8 ISO27001: 情報システムセキュリティ管理の国際標準規格
9 SAS70: 米国公認会計士協会(AICPA)が策定した監査基準書第70号
テム、パッケージソリューション、インターネット系のシステ ムなどのシステムインテグレーション、アプリケーション運用 管理、テスト、基盤支援サービスなどを提供している。
RCG-IT社社社社ののの概要の概要概要概要
米国ニュージャージー州に本社(1974年設立)、米国内の14 拠点の他、フィリピンに1ヶ所、ブラジルに3ヶ所の海外デリ バリーセンターを持つ。IT戦略立案、設計、アプリケーション 開発・運用管理、インテグレーションを事業の柱としている。
1997年に設立したフィリピン拠点は現在約500人体制で、主
に.NET系及びJava/J2EE系の開発、サポート、保守、品質保
証・ソフトウェアテストなどを行っている。海外拠点はブラジ ル、フィリピンともにCMMIレベル5であり、ブラジル拠点に は日本語が出来る要員も多いという。
ポイントウェスト ポイントウェスト ポイントウェスト
ポイントウェスト・・・・テクノロジーズテクノロジーズテクノロジーズテクノロジーズ社社社社のののの概要概要概要概要
2003年に設立された100%フィリピン資本の同社は、設立時 の従業員9名から5年の間に400名強、売上高1,100万ドルに 急成長した企業で、ソフトウェア受託開発サービス、アプリケ ーション運用保守、コンバージョン、テスト、エンタープライ ズ・アプリケーション・インテグレーション(EAI)等のサービス を提供している。CMMIレベル3を取得している同社の事業は 9割が米国向けだが、数年前から日本市場にも強い関心を寄せ ており、日本で毎年開催されるソフトウェア開発環境展
(SODEC)にも出展している。ESP2008では、「最も進歩的なフ
ィリピン企業(ソフトウェア開発部門)」の大賞を受賞した。
同社のマリア・クリスチナ・コロネル社長は、2008年からPSIA 会長も務めており、業界からの信頼も厚い人物である。
PSIA日本市場日本市場日本市場日本市場グループグループグループグループ
PSIAでは、会員企業110社のうち日本市場向けの事業に興 味を持つ企業のグループを2007年10月に発足させた。(PSIA Speical Interest Cluster Group on Japanese Market) 2008年3 月現在、同グループの会員企業は25社である(表 3参照)。
フィリピンのソフトウェア産業界にとって、日本は米国に次 ぐ第2の輸出先10だが、ソフトウェア関連の対日輸出の大半は 在比の日系企業によるものと推測される。日系以外の在比企業 が日本市場向けのソフトウェア開発サービス輸出を行うには、
日本語の壁、日本市場の情報不足、ビジネスネットワークの弱 さなど、多くの課題がある。こうした難しさもあって、現地企 業の日本市場に対する関心はこれまで必ずしも高くはなかっ たが、ここ2,3年で状況は徐々に変わりつつある。日本市場グ ループの25 社の内訳は、日系企業 5社、フィリピン企業 18 社、他の外資系企業が2社で、フィリピン企業の間でも日本市 場への関心が高まってきていることが伺える。19 社のフィリ ピン企業のうち、アライアンス・ソフトウェア社、アヤラ・シ ステムズ・テクノロジー社、インペリアム・テクノロジー社、
SVI社、タッチソリューションズ社の5社は日本法人もある。
PSIAと日本人視察団とのセッションでは、PSIA日本市場グ ループ会員企業各社の簡単な紹介が行われた。会員企業の代表 者も数多く会場に出席しており、参加者からは、「今年はPSIA の熱意と意気込みが感じられた」というコメントが聞かれた。
10 フィリピンからの対日ソフトウェア輸出額は、フィリピン中央銀行 の調査では、2005年が約40億円、日経コンピュータ誌の推定では2007 年が78億円である。
写真:PSIA日本市場グループ会員企業各社代表者たちも、数多くが日 本人視察団とのセッションに同席していた。
表表表
表 3::::PSIA日本市場日本市場日本市場日本市場グループグループグループグループ企業企業企業企業((((アルファベットアルファベットアルファベットアルファベット順順順順、、、、企業名企業名企業名青字企業名青字青字は青字ははは 日系企業
日系企業日系企業 日系企業))))
No. 企業名企業名企業名企業名 ウェブサイトアドレスウェブサイトアドレスウェブサイトアドレスウェブサイトアドレス 1 Advanced World
Systems, Inc. (AWS) www.awsys-i.com 2 Alliance Software, Inc. www.alliance.com.ph 3 Astra (Philippines), Inc. www.astra.ph/
4 Ayala Systems
Technology, Inc. www.ayalasystems.com 5 CIM Technologies, Inc. www.cimtechnologies.com 6 Computer Professionals,
Inc. (CPI) www.cpi.com.ph
7 Eastern Telecom
Philippines www.easterntelecom.com.ph
8 Exist Global www.exist.com
9 Geospatial Solutions, Inc. www.gsi.com.ph 10 IBM Solution Delivery,
Inc. www.ph.ibm.com
11 Imperium Technology,
Inc. www.imperium.ph
12 Mannasoft Technology
Corporation www.mannasoft.com
13 Mediafarm www.mediafarmglobal.com 14 Mobile Arts, Inc. www.mobile-arts.com 15 Northern
TranscriptionWorks www.northerntworks.com 16 Oyama Network
Solutions, Inc. www.foxmagic.biz 17 Pointwest Technologies,
Inc. www.pointwest.com.ph
18 Primesoft Philippines, Inc. www.primesoft.com 19 Software Ventures
International (SVI) www.svi.com.ph 20 SQL*Wizard, Inc. www.sqlwizard.com 21 Systema Computer
Solutions Corp. www.systemacorp.com/
22 Touch Solutions www.touch.madcrowdmedia.com/
23 Tsukiden Software
Philippines, Inc. www.tspi.com.ph 24 Ubiquitous Technologies www.ubiquitous-tech.com 25 WeServ Systems
International, Inc. www.weserv.com
6 フィリピンフィリピンでのフィリピンフィリピンでのでのでのオフショアオフショアオフショアオフショア開発開発開発開発15年年年年ののの実績の実績実績実績をもつをもつをもつをもつAWS社社社社 が
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前述のPSIA日本市場グループメンバーでもあるAdvanced World Systems (AWS)社は、1993年の以来フィリピンを拠点 にした日本向けのオフショアソフトウェア開発や製品保証サ ービスで15年にわたる実績がある。ESP2008に参加した日本 からの視察団を前にフィリピンでの成功事例についてプレゼ ンテーションを行った同社副社長の全 南樹氏は、ビジネスア プリケーション開発を前提とした「フィリピンへのオフショア の成功の鍵」として以下のポイントを挙げていた。
1) プロジェクトのサイズ、難易度、フェーズ等の面で、オフ ショアで無理なく受託できる範囲を適切に選択すること。
ミッションクリティカルな業務は避け、まずは比較的容易 な業務部分を切出すべき。プロジェクトサイズでは150人 月を超えると日本人のプロジェクトマネージャが必要。
2) フィリピンの人材を上手に活用するためのプロジェクト 体制上の考慮点
♦ 日本でよくある丸投げはフィリピンでは受けられな いことを顧客側にきちんと理解してもらう。
♦ 顧客側にもオフショア専属のブリッジSEをアサイン してもらう。
♦ ブリッジSEには事前にオフショアサイトに来てもら い、必ず現場を見せる。
♦ 事前に会議を定義し、必要に応じてマネジメントクラ ス(月例),担当者クラス(週次)、作業者クラス(日次) の会議を実施する。
3) コーディング基準を設ける他にも、プロセスとドキュメン トを標準化させる。
4) 顧客、オンサイトチーム、オフショアチームの間での情報 共有ツール活用は必須。
AWS社(従業員数約370名)の2007年度の売上高は約8億円 (ほぼ全て日本市場向け)を見込んでおり、過去5年間で2倍に 伸びている。受託開発サービスのほか、自社製品開発にも着手 しており、日本人のシニア技術者とフィリピン人の若手技術者 のコラボレーションで簡易ネットワーク管理ツール開発も進 めている。また、AWS社が手がけた日本の大手銀行向けATM システム開発は、ESP2008 アワードにおいて「最優秀クライ アントアプリケーション(ソフトウェア開発部門)」の大賞を受 賞した。
7 ESPアワードアワード受賞企業発表アワードアワード受賞企業発表受賞企業発表受賞企業発表
ESPでは、毎年様々な部門での優秀企業、サービス、製品な
どを審査・表彰している。今年は、フィリピンを発祥の地とす る優良企業、フィリピンで開発された優秀なクライアントアプ リケーション、コンシューマーアプリケーションなどのカテゴ リーで、国内外の審査員による2段階にわたる審査の結果、表 4に示す各社が受賞した。ESP2008の2日目の夜に受賞発表と 表彰式があった。
前頁で紹介したポイントウェスト・テクノロジーズ社や、
AWS社、メディアファーム社、など、PSIAの日本市場グルー プ加盟企業も3社が受賞している。
表 表表
表 4::::ESP2008アワードアワード受賞企業アワードアワード受賞企業受賞企業(受賞企業((企業名(企業名企業名企業名はははは英語表記英語表記英語表記英語表記)))) カテゴリー 最も進歩的なフィリピン企業
(ソフトウェア開発部門)
受賞企業 Pointwest Technologies Corporation カテゴリー 最も進歩的なフィリピン企業
(コンタクトセンター開発部門) 受賞企業 PeopleSupport (Phils.) Corp.
カテゴリー 最も進歩的なフィリピン企業 (バックオフィスBPO部門)
受賞企業 Transprocure
カテゴリー 最優秀クライアントアプリケーション (ソフトウェア開発部門)
受賞企業 Advanced World Systems, Inc. (AWS) 受賞エントリー 日本の大手銀行向けATMシステム開発 カテゴリー 最優秀クライアントアプリケーション
(アニメーション、ゲーム開発部門)
受賞企業 Media Farm, Inc.
受賞エントリー 生命保険会社向けeラーニングシステム カテゴリー 最優秀テクノロジー
(トランスクリプション部門) 受賞企業 EMR Global Corporation 受賞エントリー 電子カルテシステム カテゴリー 最優秀テクノロジー
(ソフトウェア開発部門) 受賞企業 Next IX Systems, Inc.
受賞エントリー NEXT I.X. INF.
カテゴリー 最優秀コンシューマーアプリケーション (ソフトウェア開発部門)
受賞企業 Navigator Systems, Inc.
受賞エントリー Ur HR Partner (人事管理パッケージ) カテゴリー 最優秀コンシューマーアプリケーション
(トランスクリプション部門) 受賞企業 Total Transcription Solutions, Inc.
受賞エントリー
Online On-the-Job Simulation
(実務シミュレーションによるメディカルト ランスクリプション要員の研修システム) カテゴリー 最優秀コンシューマーアプリケーション
(アニメーション、ゲーム開発部門) 受賞企業 TechFactors Incorporated
受賞エントリー Tekkids Courseware
(ITを学ぶ子供向けのeラーニングシステム)
写真:ESP2008アワード受賞式での各企業の代表者たち
8 終終わりに終終わりにわりにわりに
筆者は、第 1回目のESP から全て参加してきているが、8 回目を迎えた今年は、国際会議・展示イベントによりふさわし い会場が使われたばかりでなく、講演内容の質、パネルディス カッションにおけるパネリスト間の議論のレベルなどからも 全体的に非常に成熟度・洗練度の高いイベントだったと感じた。
また、オフショア・アウトソーシングを戦略的に活用する動 きが世界中で急速に広がり、ベンダー側もバイヤー側もダイナ ミックに進化し続けていることが感じられた中で、ソフトウェ ア開発以外でも、コールセンターやエンジニアリングデザイン 分野でグローバルリソースを活用する日本企業のプレゼンス が見えてきたことも喜ばしい。
そうはいっても、グローバルなアウトソーシングの活用とい う面で日本は他の先進国にかなり大きく遅れていると認識し ている外国企業幹部は少なくない。メイン会議で筆者が同席し たインドのカリバーポイント社のアショク・ビルディカール (Achok Bildikar) CEOは、「日本企業も、日本の人材だけでなく 世界の人材に今以上に真剣に目を向けるべきだ。日本企業は、
新しい技術の導入や研究開発のスピードは非常に速いが、バッ クオフィス業務の効率化に関する戦略的な意思決定は非常に 遅い。」と辛口のコメントをくれた。
例年、ESPへの日本人視察団のツアーについては、在日フィ リピン大使館商務部(Tel: 03-5562-1591/1592)がとりまとめ ている。来年のESPでは、より多くの日本人視察団がフィリ ピンを訪れ、ダイナミックに変化・進化するフィリピンを実際 に見て・感じた上で、協業の可能性を探ってみてほしいと願っ ている。
JETRO定期報告フィリピンIT事情2007年度 No. 5 終り