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文化財 VR コンテンツの鑑賞が類似文化の受容や印象に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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文化財 VR コンテンツの鑑賞が類似文化の受容や印象に及ぼす影響 

Influence of virtual reality experience of cultural heritage  on acceptance and impression of similar cultural information 

5118E012-0 土居 巧果

指導教員 河合 隆史 教授

DOI Teika Prof. KAWAI Takashi

概要:文化財 VR コンテンツの視聴が、類似した文化情報に対する見方や興味・関心にどのような影響を及ぼすか、

実験的な検討を行った。対象とした国宝「八橋蒔絵螺鈿硯箱」は、実用的な道具でありながら美しい装飾が施されて いる特徴を持つ。これと同様に、装飾に特徴のある日本文化の静止画像を VR コンテンツの視聴前後に提示し、観察 中の眼球運動の測定・解析を行った。実験は日本人だけでなく、異文化圏の人に対しても実施し、影響を比較した。

キーワード: デジタル文化財、視線計測、興味・関心

1.

はじめに

2019 年現在、我が国の観光分野において文化財は「観 光資源として極めて有効」であると考えられており、そ の文化財活用の方法の一つとして、VR 等の先端技術の 利用が期待されている[1]。著者らはこれまでに、文化 財 VR コンテンツが、対象とした文化財の受容や印象に 及ぼす影響について検討し[2]、文化財 VR コンテンツの 視聴が、対象とした文化財の静止画像の観察行動に影響 を及ぼすことが示唆された。しかし、対象以外の文化受 容に与える影響は明らかではない。そこで、本研究では 文化財 VR コンテンツの視聴が、その後の文化情報の受 容や印象に及ぼす影響について、人間工学的なアプロー チから評価・検討することを目的とした。

2.

文化財

VR

コンテンツが日本人に与える影響 2.1 実験方法

実験刺激として、シアターを

VR

空間内に再現し、

VR

作品「日本工芸の名宝 色絵月梅図茶壺・八橋蒔絵螺鈿 硯箱」の一部を実験用に編集したものをスクリーンに提 示した。映像には、硯箱の全体像を見せるシーン、箱の 中から外側の装飾を透かして見せるシーン、箱の外側か

ら八橋の上を歩行するシーン、そしてナレーションが含 まれている。ナレーションでは、硯箱の構造を説明した のち、装飾で描かれているもの、それが伊勢物語の一場 面であることを紹介した。

VR

コンテンツの視聴前後に は、硯箱と同様に装飾に特徴の有した

3

種類の文化情報 の静止画像(図

1

から

3

)をランダムな順序で提示した。

2.2 評価手法

静止画像の観察中に視線計測を行い、

VR

コンテンツ 視聴前後での視線の停留時間と位置の変化について分 析した。各静止画像の提示直後には

5

件法による質問紙 への回答を求め、静止画像の「美しさ、好ましさ、興味 深さ」を評価させた。また、全ての刺激提示後、半構造 的インタビューを行い、

VR

コンテンツの視聴前後で、

静止画像の見方や印象に変化はあったか、回答させた。

2.3 実験手続き

本実験の参加者は

20

代男女

15

名であり、事前に十 分な説明を行い、実験参加への同意を得てから実験を行 った。参加者一人当たりの所要時間は約

20

分であった。

2.4 実験結果

VR

コンテンツ視聴前後の静止画像観察時の視線停留 時間の結果を図

4~6

に示す。静止画像毎に注視領域と

図 1 和踊り

©minowa studio/amanaimages

図 2 和⾷器

©HIDEAKI TANAKA/SEBUN PHOTO/amanaimages

図 3 和室

写真:⻘蓮院⾨跡

(2)

観察時期を要因とする二元配置分散分析を行った。

和踊りでは、着物と人物の顔を注視領域として設定し た。視聴時期の主効果に有意差はなく、注視領域の主効 果は有意であり、また視聴時期と注視領域の交互作用が 有意であった。視聴時期の単純主効果は顔領域に有意傾 向があり、着物領域では有意であった。コンテンツの視 聴により、顔へ集中していた視線が、着物へ集中するよ うになったと言える。

和食器では、食べ物と食器を注視領域として設定した。

視聴時期と注視領域のどちらも主効果は有意であり、ま た視聴時期と注視領域の交互作用が有意であった。視聴 時期の単純主効果は食べ物領域では有意でなかった。ま た、器領域では有意であった。コンテンツの視聴により、

器へ視線が集まるようになったと言える。

和室では、襖、欄間、窓、床の間を注視領域として設 定した。視聴時期と注視領域のどちらも主効果は有意で あり、視聴時期と注視領域の交互作用は有意でなかった。

各領域の視聴時期の効果は、襖では効果がほとんどなく、

欄間、窓、床の間では小程度の効果であった。文化財

VR

コンテンツの視聴により、窓への注視がわずかに減少し、

欄間、床の間への注視が増加した参加者がいたと言える。

2.5 考察

視線計測、主観評価、インタビューの結果、これまで に得られた知見から、以下の

3

点が示唆された。

・ 文化財

VR

コンテンツの視聴が文化情報の受容に影 響を及ぼし、興味・関心を促進すること

・ その影響は、コンテンツの対象とは別の類似性を有 した文化情報の受容へも波及すること

・ またその影響は、類似性が高い方がより大きな効果 を与えうること

これらの要因として、コンテンツ内の

VR

特有の表現が 文化情報の受容に影響し、ナレーションにより文化的背

景の理解が深まることで、より文化情報に対する関心が 高まったことが挙げられる。

3.

文化財

VR

コンテンツが異文化圏の人に与える影響 と日本人に与える影響の比較

本研究では、

2

章の実験と同様の実験を異文化圏の人 を対象として実施し、影響に違いがあるか検討を行った。

その結果、以下の

4

点の可能性が示唆された。

・ 文化圏に関わらず、文化財

VR

コンテンツの視聴が 文化情報の受容に影響を及ぼし、興味・関心を促進 すること

・ その影響についても、文化圏に関わらず、コンテン ツの対象とは別の類似性を有した文化情報の受容 へも波及すること

・ 異なる文化圏の人に対しても、文化財

VR

コンテン ツは日本人への影響と同程度に影響を与えること

・ 異なる文化圏の人は日本文化に対して、日本人とは 異なる部分へ関心を持つこと

上記の要因として、

VR

特有の表現は文化によらないも のであるため、これらの表現は文化圏に関わらず文化情 報の受容に影響したことが挙げられる。また異文化圏の 人は日本文化に親しみがあまりないため、日本文化に対 する前提知識の多い日本人とは異なる箇所に注目した ことが挙げられる。

今後も引き続き文化財

VR

コンテンツが文化理解に 与える有効性の評価・検討を行っていきたい。

参考文献

[1]

観光庁、”観光ビジョン実現プログラム

2019”

2019 [2]

土居巧果、河合隆史、中村直靖、黒田敏康、内山悠 一:シネマチック

VR

における文化財の表現手法が興 味・関心に及ぼす影響、第

23

回日本バーチャルリアリ ティ学会大会論文集

(2018

9

)

34D-5

201

図 4 和踊りの平均注視時間 図 5 和⾷器の平均注視時間 図 6 和室の平均注視時間

) 2

(

1

0 0

0

)

( 2

1 1

4 0

1 -

( )

2 2

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