実践事例2
1 題材名 「説明文を創りあげる」 (第2学年)
-新書版『ディズニーランドという聖地』との比較を手がかりに「聖地」を問う-
2 題材観
(1) 説明文と子どもたち
子どもたちに「どんなジャンルの題材を授業で 扱いたいか」と質問すると,小説が真っ先にあが ります。次に韻文,さらに古文や漢文が出て,最 後に思い出したかのように子どもたちは説明文の 名を口にします。
小説は,言葉から自由に想像ができます。作品 の世界に浸りながら,登場人物の心情の変化であ ったり,情景描写であったりを手がかりに,個人 の読みを主体的につくることができます。
一方説明文は,事実を根拠に筆者の主張がはっ きりと述べられているため,個人の読みをつくり あげる余地がないと感じてしまいます。また,難 しい専門的な具体例が多く,文章は長く堅いイメ ージがあるため,読まされていると受け身に感じ てしまう子どもが多いのではないでしょうか。こ うした理由で,説明文は子どもたちにとって,優 先順位の低いジャンルになってしまっていると考 えられます。
しかし,説明文には,今まで知らなかった古今 東西の事象に言葉を通してふれるおもしろさがあ ります。さらに,論理的に読み手に伝えるための 構成の工夫により,その「未知なる世界」に読み 手が引き込まれるため,事象を異なった視点でと らえ直すことができます。
今回扱う『ディズニーランドという聖地』で述 べられている筆者の視点は,子どもたちにとって は「未知なる世界」への扉となるでしょう。そこ で,その扉を子どもたちが主体的に開くための活 動として,構成を意識しながら説明文を創りあげ ます。
説明文を創りあげる活動では,語句や文章の意 味を正確にとらえるだけではなく,自分の伝えた い意図が,相手に読みやすく分かりやすいものに ならなければなりません。そのためには,言葉の 使い方,段落相互の関係などを意識することが必 要になります。
それらを意識し,表現された結果,自分が書い た文章の意図が仲間に伝わったという実感がもて れば,書くことに対する自信が生まれるでしょう。
そして,説明文の構成を工夫することの大切さを 実感し,さらに,主体的に説明文を読むことにも
つながると考えます。
(2) 教科書「ディズニーランドという聖地」から 読み取れること
教科書で扱われている能登路雅子さんの「ディ ズニーランドという聖地」は,岩波新書から1990 年7月に発行された『ディズニーランドという聖 地』の中の「異才ウォルトディズニー」から抜粋 された文章です。
教科書での記述を要約すると,以下のようにな ります。
ウォルト・ディズニーが少年時代を過ごし たアメリカ中西部は,その半世紀ほど前まで 自然の猛威に生命と正気を常に脅かされてい た。結果その当時の人たちは,自然に対し,
強烈な敵意や破壊の衝動を抱き,自然の美し さに対しては無感覚になったのだろう。
また,ディズニーの作品世界の大きな特色 は,自然の徹底的な否定と狂信的とさえ言え る衛生思想なのである。
動物たちに対してもそうした考え方があり,
ミッキーマウスのように,野生の野ねずみの 要素を一切排除して,きれいに着飾った姿で 登場している。
こうした当時のアメリカ人の生活意識が色 濃く反映されたディズニーランドの非日常世 界は,現在の我々の生活の中に入り込み,虚 構の世界ではなくなっている。
上記の内容や,新書版『ディズニーランドとい う聖地』が1990年に出版された背景から,環境問 題が叫ばれていた当時の社会の中で,自然を支配 し,便利さを追求してきた当時の人々に警鐘を鳴 らしているということが読み取れます。
(3) 新書版『ディズニーランドという聖地』で筆 者が伝えたかったこと
筆者はこの著書のあとがきで,
私はアメリカ人にとってのディズニーランド は「聖地」ともいうべき心のよりどころでは
ないか,という見方をするに至った。アメリ カ大衆の伝統的価値観や夢が,これほど一か 所に集約され,しかも具体的に表現されてい る場所はおそらくほかにはない。
と述べています。
ここで述べられている,アメリカ人にとっての
「聖地」ともいうべき心のよりどころとは,具体 的にどのようなものなのでしょうか。以下では,
本書からそれにつながるであろう,テーマごとの 要旨を紹介していきます。
① 「子ども時代の不在」
② 不老長寿と起死回生の奇跡
③ 究極のユートピア
④ 当時のアメリカの社会情勢から
-ファンタジーと超リアリズム-
⑤ 過去からの脱却,未来への挑戦
⑥ アメリカ大衆の伝統的価値観や夢
⑦ 「聖地の構造」
①ウォルト・ディズニーの,幼少期の過酷な労働 や父親からの虐待などの事実から,「子ども時代の 不在」をこのディズニーランドに盛り込んだとい う事実が見られます。
②「ファンタジーランド」のアトラクションの大 半は,勧善懲悪の昔話や童話を題材にとっており,
邪心をもった悪は醜い大人であり,一方の善は美 しく純真な子どもであり,空想上の小さな生き物 の助けを借りて,子どもたちは最終的に勝利をお さめます。
盛者必衰の運命を背負った人間が,不老長寿や 起死回生の奇跡といった主題が単純明快に語られ る世界が,人々の心をとらえます。
③「イッツ・ア・スモール・ワールド」では,最 後には全員の子どもが,このアトラクションと同 名の歌を英語で大合唱します。フィナーレで言語 が英語に統一されるのに呼応するかのように,人 形たちの民族衣装もここでは色彩を失って,同じ 白色系に統一されます。ここについに,国籍も民 族性もそして親も知らない,いわばこの世に誕生 する前の胎児のユートピアが出現します。
④1964年当時のアメリカでは,ケネディ-大統領 暗殺事件や,公民権をめぐる人種抗争,ベトナム 介入の深刻化など,不安の時代に突入しようとし ていました。ニューヨークで開催された世界博で は,ディズニーと最先端の技術力をもった家電メ ーカーや自動車メーカーが連携したパビリオンが 大盛況でした。このような最新技術を駆使したア トラクションは,停滞していたアメリカに夢と希 望を与え,当時のアメリカの可能性を世界に知ら
しめる結果となり,ディズニーがその役割を担っ たと言えるでしょう。
⑤無限のフロンティアを開拓するアメリカ人の夢 は,19世紀の末,辺境開拓線の消滅により終わり を告げます。そして,アメリカ人の次なるフロン ティアは地表から空へ,あるいは深海へと移行し ます。さらに,人間の理想を猛烈な勢いで追い抜 いていく科学技術の進歩に遅れまいと,開園以来 改修,改名を迫られ続けてきたことがわかります。
人々の未来への夢を表現していくことこそディズ ニーランドの使命なのかも知れません。
⑥時間軸にとらわれることなく,全ての観客の想 像力を満たしてくれる構造やアトラクションが,
工夫されて配置されているということがわかりま す。
見た人それぞれが,求めるものを享受できる空 間であるからこそ,理想郷として愛されることが できるのでしょう。
⑦観客(アメリカ人)がディズニーランドに求め たものは,アメリカが歩んできた文化や歴史その ものであると言えるのではないでしょうか。
この著書で述べられているディズニーランドは,
過去からの脱却,ウォルト・ディズニ-が子ども 時代を取り戻そうと原点回帰して考えられたアト ラクションの数々,未来の創造など,アメリカ人 だけでなく,人類が求める世界が凝縮された空間 であると言えます。
一方教科書で扱われている部分では,ディズニ ーランドには,中西部アメリカ人が自然を敵視す る生活意識が色濃く表現されているという視点か ら,ディズニーランドを自然が存在しない「聖地」
としてとらえられています。その説明が具体例で 述べられており,授業で扱う場面としては最適な 場所です。また,現在の生活に対する問題提起も されているため,子どもたちが受信するだけでな く,自分達の生活に置き換えて発信できる可能性 もある題材だと思います。
しかし,筆者が『ディズニーランドという聖地』
で伝えたかった,アメリカ大衆がディズニーラン ドに求めた「伝統的価値観」「夢」は,中西部アメ リカ開拓者が求め続けた「自然を管理することを 成し遂げた世界」であるという説明だけで充分な のでしょうか。そうした点から,全文を読んでい く必要があると感じました。
(4) 題材と子どもたち
ディズニーランドの魅力として,訪れたゲスト
(お客さん)に感動をもたらすキャストの徹底し たサービスがあります。また,童話を現代風にア レンジしたアニメ映画では,ファンタジーな世界
を,擬人化された動植物や物たちが駆け回るもの でありながら,勧善懲悪や,友情の大切さなどの 教訓を含んだ要素が盛り込まれており,家族で楽 しめるものでもあります。
こうした要素を魅力的だと感じている子どもた ちが,教科書からディズニーランドが聖地として 存在している理由を知った時,どのようなことを 思うのでしょうか。子どもたちが魅力的であると 感じる理由とのギャップに,心揺さぶられること でしょう。もしかしたら,子どもたちのディズニ ーランドに対するイメージが壊れてしまうかもし れません。
しかし,筆者は,読み手のディズニーランドに 対する夢や幻想を壊すことが目的でこの本を書い たのではないと思います。ディズニーランドを見 るいくつかの視点を,アメリカの歴史や文化から
示唆するためなのではないでしょうか。
『ディズニーランドという聖地』全文から,筆 者が伝えたかったことを問い直し,説明文を創り あげるという試みは,子どもたちのディズニーラ ンドに対するとらえをいくつかの視点から再構築 する活動であると考えています。その過程で,構 成を工夫しながら,筆者の伝えたいことを具体例 を用いて説明するという,説明文の本質にも迫れ ると考えます。
子どもたちが,新書版『ディズニーランドとい う聖地』で,文中の言葉から筆者の伝えたいこと に寄り添いながら,仲間と共に読み手に伝わるた めの説明文を創りあげる活動を通して,さまざま な視点でものごとをとらえ,自分の考えを構築し,
それを表現できるような力を養いたいと思います。
参考文献:能登路雅子(1990)『ディズニーランドという聖地』 岩波新書
アラン・ブライマン【著】能登路雅子【監訳】(2008)『ディズニー化する社会』
明石ライブラリー 3 学習指導要領との関連
B 書くこと
イ 自分の立場及び伝えたい事実や事柄を明確にして,文章の構成を工夫すること。
エ 書いた文章を読み返し,語句や文の使い方,段落相互の関係などに注意して,読みやすく分かりや すい文章にすること。
オ 書いた文章を互いに読み合い,文章の構成や材料の活用の仕方などについて意見を述べたり助言を したりして,自分の考えを広げること。
C 読むこと
ウ 文章の構成や展開,表現の仕方について,根拠を明確にして自分の考えをまとめること。
エ 多様な方法で選んだ本や文章などから適切な情報を得て,自分の考えをまとめること。
※ 以下から記す題材構想において,便宜上,新書版『ディズニーランドという聖地』は『 』で,教 科書に抜粋された「ディズニーランドという聖地」は「 」で使い分けます。
4 題材構想
(1) 説明文の構成との出会いを果たす
題材の出会いとして,1年生の教科書(光村図書) で扱われている,桑原茂夫さんの「ちょっと立ち 止まって」を用いました。形式段落ごと切り取っ た本文を,内容と構成(序論・本論・結論)を意識 しながら並べ替える活動を行いました。その際,
子どもたちから以下のような気づきを聞くことが できました。
・序論には,どんな話題かを読み手に伝える 意図が込められている
・序論では,大まかな筆者の主張が述べられ ている
・本論は,その話題に対する具体例が述べら
れている
・本論が筆者の主張の根拠になっている
・3つの具体例が挙げられているが,だまし 絵の順番が徐々に難しい内容になっている
・この説明文は,視点を変えることで,新し い発見の驚きや喜びを味わうことができる ということが結論である
・筆者が自分の主張を読み手に伝えるために,
構成を工夫している
など 授業者は子どもたちに,次の授業では説明文を 読むことだけを伝えて,授業を終えました。
(2) 問いの共有
教科書(学校図書3年)の「ディズニーランドと いう聖地」に入る前に,授業者は子どもたちに,
ディズニーランドの魅力を聞きました。そこでは,
「キャストが親切である」「アトラクションが楽し い」「非日常が味わえる夢の国」「キャラクターが かわいい」「とても清潔でゴミがほとんど落ちてい ない」など,子どもたちにとっての魅力が語られ ました。
その後,教科書にある「ディズニーランドとい う聖地」を範読しました。その際,「ちょっと立ち 止まって」で学んだ,構成を意識しながら読むと いう視点を与えました。
範読後は,個人で構成(序論・本論・結論)をと らえる活動に入りました。そこで,結論が最終段 落に述べられていることを,子どもたちはすぐに 見いだすことができました。しかし,序論と本論 をどこで分ければよいのか悩む子どもたちがいた ため,内容をクラスで共有する必要性を感じまし た。
次の時間では,序論と本論を分けるために,ク ラスで内容の共有をおこないました。
序論部分に示される内容は,以下のようになり ました。
・アメリカ中西部の自然環境について
・アメリカ中西部の人々の自然観と精神構造
⇓ ⇑
・恐怖空間とも言える生活環境
+
・安全で快適な世界
+
・楽観的なネズミ
この中で,話題提示としてとらえられる「生活 環境」や「安全で快適な世界」についての記述と,
「楽観的なネズミ」という具体的な内容の記述が 同じ形式段落で表現されているため,子どもたち は,どちらが筆者の主張なのか迷っていました。
しかし,「この形式段落は,これから『楽観的なネ ズミ』のような具体例を提示するという筆者の意 図があるのではないか」という指摘がなされ,こ
の形式段落までが序論であるという結論に至りま した。
そして,本論では当時のアメリカ中西部の人々 がもっていた自然観と精神構造が,ディズニーラ ンド内のキャラクターやアトラクション,樹木や 草木といった具体例を読み取ることができました。
さらに,次の授業ではこの説明文を通して伝え たかった,筆者の主張はどんなことだろうという 学習課題を考えました。その際,子どもたちから 以下のような意見が出ました。
・私たちの生活がディズニーランドに近づい ている(人間が自然を管理)
・このままで本当によいのかという問題提起
⇓ ⇑
・中西部のアメリカ人にとって自然状態が存 在しないディズニーランドは,まさに天国 であり,「地上でいちばん幸せな国」である 子どもたちは,この二つの主張が結論で述べら れているととらえ,どちらのとらえをこの説明文 の結論としたらよいのか迷っていました。
そのため,筆者がディズニーランドを「聖地」
としてとらえている根拠(本論)についても,結論 と結びつけることが困難になりました。
そこで,この教科書に載っている部分は,新書 版『ディズニーランドという聖地』の一部である ことを伝えました。そして,これから新書を通し,
教科書とは違う視点の説明文を創っていくことを 告げて授業を閉じました。
(3) 筆者の聖地のとらえ(結論)と,それを導く具 体例(本論)を探す
授業者は事前に新書版『ディズニーランドとい う聖地』を一人一冊行き渡るように購入し,子ど もたちに手渡しました。そうすることで,いつで も読むことができ,ふせんを貼ったり書き込んだ りすることができます。
そして,次に読み込む上で大切にしたいことと,
今後の見通しを示し,読み込みが始まりました。
次にその視点を示します。
①「アメリカ人・来園者・ウォルトなどにと って,どうしてディズニーランドは聖地と 言えるのか」という能登路さんの考えをま とめる
②その考えを導く根拠となるまとまり(具体例 を用いながら考察されている本論の材料)を
見つける
③本文に書き込んだり,ふせんを貼ったりし て,後でまとめやすくしておく
④序論→本論→結論の見通しをもつ
⑤説明文を創る際にはペアを基本におこなう (同じ聖地のとらえの仲間)
(4) 個人で構成を意識しながら,説明文の大まか な流れを考える
子どもたちは,新書版『ディズニーランドとい う聖地』を読むことを通して見いだした,筆者の 聖地としてのとらえ(結論)と,それを導く(本論) を,ワークシートに記入していきました。一読で は難しく,何度も読み返しながら探す子どもたち の姿が見られました。子どもたちが記入した結論 部分を示します。
・アメリカ大衆の伝統的価値観や夢が集約さ れた場所
・昔の楽しい日々を取り戻すための場所
・子ども心や遊び心に訴える空間
・子ども性・スター性・変身願望が叶えられ る世界
・アメリカ人の理想,神話的な過去のイメー ジを具現化した世界
・ウォルトが幼少期に欲しいと思っていなが ら手に入れることができなかったものが盛 り込まれた世界
・現実から離れた,過去と未来と空想の世界 など
(5) 同じ聖地のとらえの仲間と説明文の構成を創 りあげる
聖地のとらえが同じ,または似た表現や同じ具 体例から導いた子ども同士でペアをつくり,教科 書とは違った視点の説明文を創りあげる活動に入 りました。
その際,聖地のとらえが同じでも,根拠となる 具体例が異なる場合もあるので,ペアで交流しな がら,個で説明文の構成を組み立てました。自分 が導いた聖地のとらえと具体例との整合性をもた せるために,仲間に確認したり,新書を何度も読み 返したりしながら,構成を吟味している子どもたち の姿が見られました。
また,原稿用紙への清書を控えた活動であるた め,文と文をつなぐ接続詞や,どのように序論を 書けば,筆者の結論を導きだす内容になるのかや, 説明文の構成として一貫性があるのかなど,考え
を巡らせていました。
(6) ペアの仲間の説明文を読んで見いだした,よ いところや改善点をクラスで共有する
子どもたちは,ペアの仲間の説明文を読み合い,
仲間の説明文のよいところを伝えたり,自分の創 作活動の過程で困っていることを相談したりしま した。仲間の説明文を読んで,自分の説明文と比 較する機会をつくることで,自分の説明文を振り 返ったり,仲間の文章を参考にしたりできました。
さらに,ペアで交流する中でどうしても解決で きないことや,仲間の説明文のよいところをクラ スで共有し,クラスで考える時間を設けました。
そのことで、構成の工夫や語句の使い方,文相互 の関係などに注意しながら,自分の説明文をより 伝わりやすくするための手だてになると考えまし た。
次に子どもたちから出た意見をまとめます。
序論
困ったところ
・書き始めの言葉が見つからない
・本論にどうつなげたらいいか分からない
・どこまで書いたらいいか分からない よかったところ
・要点がつかみやすい
・読み手を誘う表現「探す旅にでかけません か」
解決策
・新書の言葉を自分の言葉に直す 本論
困ったところ
・まわりくどい表現をすっきりさせたい
・具体が見つけにくい
・新書から抜き出せるけどつなげて文章化す ることが難しい
よかったところ
・具体が詳しく書かれている
・具体を提示する順番を,結論につながるよ うに変えていた
解決策
・辞書などを用いて,難しい言葉を分かりや すい言葉に変える
・ページ数で具体例を提示する順番を決める のではなく,徐々に難しくする
結論
困ったところ
・本論から結論へのつながりが分かりにくい
・文末表現をどうすればよいのか
・全体像はとらえられるが,まとめるのが難 しい
よかったところ
・筆者がディズニーランドをなぜ聖地として とらえているのかの根拠がまとめられてい る
解決策
・序論で書いたこととの関連性をもたせる
・時代の流れを意識したら,具体例とつなが った
など これらの意見を参考に,自分の構成原稿を推敲 してこの授業を終えました。
(7) 説明文を創りあげる
子どもたちは,前時に推敲した構成原稿をもと に,800字マスの用紙に序論・本論・結論の順番で 説明文を創りあげる活動に入りました。その際,
同じ結論のペアとの形態を解消し,通常の座席で おこないました。そこで,新しい仲間との接点を もちながら創作活動をおこなうことで,違う視点 で説明文の構成をもう一度考える機会になりまし た。
次の授業では,子どもたちが創りあげた説明文 を冊子にし,配付することを告げて授業を終えま した。
(8) 仲間の説明文を評価し合う
本時は,子どもたちが冊子を読み込むことを通 して,仲間の説明文のよかったところと改善点を 見いだす時間にしました。そして,見いだしたこ とを,二つの視点で色分けされたふせんに書いて 仲間に渡しました。読んだ人のアドバイスを受け,
それを自分の説明文に生かすことで,読む人に伝 わりやすい説明文に近づくと考えたからです。ま た,自分が書いた説明文の意図が相手に伝わった という喜びや達成感,客観的に自分の説明文に向 き合い,何をどのようにすればよいのかを考える ことができます。
そのふせんに書かれていたことは,次の通りで す。
よいところ
・ウォルトの少年時代の経験が,どのように ディズニーランドに生かされているかが分 かりやすい
・引用の部分よりも自分達の言葉で書かれて いる部分が多く,「知っているだろうか」な どの文と文のつなぎの言葉や問いかけが使 われていてひきつけられると思う
・なぜ聖地なのかというのを解明するのに,
あえて逆の表現を使って説明していて,聖
地のとらえが濃くなっている
・序論で読者になげかけていたのがものすご くよいと思った。また,そう思った根拠と なるものを説明していた
・具体例で,「全員が一緒になって物語の主人 公を演じるのだ」が,すべての人にとって 理想の国であったということが強調されて いてよかった
・序論・本論・結論と構成がうまくて読みや すかった。平等になることができるから,
アメリカ大衆の夢があり,それが聖地につ ながると分かった
・「世界で一番幸せな場所」という筆者のとら えを,アメリカ人・ウォルトからの二つの 視点から見ているので,より説得力がまし ている
・本論では「アメリカ人の理想に合っている」
ことや「現実世界を完全に遮断した」こと が説明されているけど,結論で2つが上手 くまとめられて,1つの答えになっていた
・ヨーロッパにしぼって書かれているので,
話題があちこちに振られることなく,分か りやすい。また,ディズニーランドがヨー ロッパにもたらした影響について詳しく書 かれていた
アドバイス
・結論と本論のつながりが弱い
・ウォルトの子ども時代の苦難が,どうして
「大人も楽しめる遊園地」につながったの か,もう少し詳しい説明が欲しい
・序論で二段落あるが,一段落目と二段落目 を接続詞でつなげた方が分かりやすい
・序論と結論だけで全体の半分以上とってい るので,本論(具体)が少ないので,もう少 し取り入れた方が分かりやすい
・どうして,いろいろな人がディズニーラン ドに集うとき,出身地や階級の差を超えて 平等な市民というゲストになるのかがよく わからなかった。もう少しそこを詳しく書 けば結論が分かりやすくなるかもしれない
・話題がいろいろな方向に飛んでしまい,根 拠・理由のつながりが薄い
・序論には聖地と書いてあるが,結論には書 いていないため,聖地のとらえが分からな い
など 構成のことや内容のことなど,さまざまな視点 で,説明文を分析できていることが分かります。
また,仲間の説明文を読んで直したいという発言 も出ました。次時は,その声に応える活動を取り
入れました。
(9) 仲間からの評価を説明文に生かす
本時では,仲間からもらったアドバイスや指摘 をどのように改善していくかを考えました。その 際,どう改善したらよいのかを周囲の仲間とのか かわりから見いだしたり,新書や仲間の説明文に 戻ったりする子どもの姿が見られました。それで も改善点を見いだせない子どもには,授業者がか かわりました。
次に,どのように改善していったのかの一例を 示します。
指摘やアドバイス どのように改善したか
・話がいろいろ飛び ・本文中の抜き出しだ すぎてわかりづら けでなく,自分達の
い 考えを入れてつなげ
ていく
・出身地や階級の差 ・「種々雑多なアメリカ を超えて平等な市 人たちを統合する場 民となるという根 として」という言葉 拠がない を入れる
・なぜ宗教的な聖地 ・「~アメリカを賛美す なのか るようになりメッカ
・エルサレムと同様 に聖地にする」
・具体例の数が多す ・具体例ごと段落をつ ぎて何が言いたい くる。そしてその後 のか伝わらない に説明を入れて分か
りやすくする
・Mさんと,書いた ・父親がウォルトの子 結論は同じなのに ども時代を支配して 私より分かりやす いて今があるから,
い 父親のことを書いた
方が説得力が増しそ う
など 子どもの言葉にもありますが,筆者の伝えたか ったことが同じような内容でも,切り取った具体 例が異なったり,構成を変えたりすることで,書 き手の意図だけでなく,受け手のとらえも変わっ てきます。そうしたことを実感として体感するた めには仲間や題材の言葉との対話から生まれる言 葉の吟味が必要であると,改めて実感しました。
(10) 単元を通しての振り返り
自分の説明文を創りあげた子どもたちは,単元 のまとめとして,この単元で学んだことをワーク シートに記入し,クラスで共有しました。
最後に,題材を終えての子どもたちの感想と,
ある子どもが創りあげた説明文を紹介して,事例 2の実践まとめとします。
・普段説明文を読者側の視点で読んでいたが,
書く立場になってみて,みんなの説明文を筆 者側の視点で読むことができた。視点が変わ ると感じることも変化して,より筆者の伝え たいことを読み取れるようになったと思う。
・最初に読んだ文章では,作者はディズニーラ ンドに対してマイナスの考え方を抱いている ように見えたが,新書を通して読んでみると,
アメリカ人やその他の人々にとって,ディズ ニーランドはどのような場所なのか客観的に 見ることができた
・説明文を書く人は,言いたいことの「結論」
があり,それにもっていくための「本論」が ある。どの順番で書けば一番伝えたいことが 伝わるのかを考えて授業ができた。
・説明文を創るうえで大事なことは,自分の主 張をどう分かりやすく伝えるかだと思う。そ のために,文章は序論・本論・結論に分けら れていると思った。その中で一番重要なのは 序論で,読者の興味をひく必要があり,本論
・結論までの要点をつかみやすくすると分かっ た。
・今回は序論・本論・結論という順番で書いた が,結論を最初に書いて読者の関心を高める という方法もあるのではないかと思った。次 回はそうしてみたい。
・説明文を読んでみて,筆者の思いをより深く 知れたり,別の意見や考えを知ったりできた から,自分達の疑問に対する答えが解決でき た。自分で説明文を書くことは思っていた以 上に難しく,「序論・本論・結論」に分けたり,
具体例やつなげる言葉(つまり,だから,言い 換えるとなど)を使ったりして,思いを伝える ためには様々な工夫があると分かった。次は,
これらを意識して,なるべく読み手が分かり やすいように文章を創ることを意識していき たい
・普段は自分の思い出や経験を原稿用紙に書く ことが多かったが,「ウォルト・ディズニー」
という他人の歴史について調べることや理解 することから始めて,それを人に伝える文章 にすることは大変だった。事実をまとめ,人 に伝える時には,少し構成が変わるだけで相 手には伝わらないことがある
など
ディズニーランドという聖地
開園以来すでに35年を経たディズニーラ ンドは,いまだに絶大な人気を集めている。
なぜアメリカ人は,人工的につくられた場所 に,これほど夢中になれるのだろうか。その 理由の1つに,「園内の清潔さ」があげられる。
園内を清潔に保つという営業上の一大鉄則の 背後には,アメリカ人の心のあり方や,世界 観と深いかかわりがあった。そしてそれらを 解く鍵は「過去のアメリカ」にあった。
ディズニーの作品世界の大きな特色は,「自 然の徹底的な否定」である。過去のアメリカ の人々は自然の猛威に生命と正気を常に脅か されていた。納屋から母屋に戻る途中,吹雪 で方向感覚を失って凍死することや,地平線 の果てから連日のように襲ってくる砂嵐に発 狂者が出るといった悲劇は,当時,珍しくな かった。ディズニーランドは,日常生活を完 全に遮断した空想世界である。そのため,自 然を恐れ敵視した彼らの世界観からすれば,
自然状態が存在しないディズニーランドは,
外の恐ろしい景色とは正反対に美しく映った
だろう。
ディズニーランドの物語世界を貫く第一の テーマは,過去のアメリカに対するなつかし さである。ウォルトは過去のアメリカ人の理 想を現実に変えた。アメリカ国民の多くが,
この場所を訪れる特殊な信仰に似た現象がお きたのだ。それは,初めてディズニーランド に行った日のことを昨日のことのように,鮮 明に記憶していることも多くのアメリカ人に 共通する現象である。これらの現象を通して アメリカ人はディズニーランドという場所を 単なる遊園地としてとらえていないことが分 かる。
これらの過程を経て,ディズニーランドは アメリカ人が一生に一度は行くべき場所にな った。アメリカ大衆の夢がこれほど一カ所に 集約され,具体的に表現されている場所は恐 らく他にはない。つまり,アメリカ人の理想 とウォルトの世界観が一致したものが,ディ ズニーランドという夢の世界である。だから アメリカ人にとってディズニーランドは「聖 地」というべき心のよりどころになったので ある。