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(1)

「道徳の時間における自己の生き方についての考えを深める指導の工夫

-自己の生き方を見つめる学習活動を通して-」

研究主題 「道徳の時間における自己の生き方についての考えを深める指導の工夫 -自己の生き方を見つめる学習活動を通して-」

東京都教職員研修センター研修部専門教育向上課 町田市立町田第一小学校 主任教諭 吉本 一也 第1 研究のねらい

小学校学習指導要領解説道徳編(平成 20 年8月)より道徳の時間の目標に「自己の生き方に つ いての考えを深め」と一文が加えられ、特に意識して指導を行うことが重要であると示された。

道徳の時間において道徳的実践力を育成するためには、児童が道徳的価値について学んだこ とを基に自ら自己の在り方や生き方について考える学習を充実させることが必要である。

そこで本研究は児童が自己の生き方についての考えを深めることができる学習活動及び児童 の実態に応じた指導法を開発することをねらいとした。

第2 研究の内容と方法 1 研究仮説

道 徳 的 価 値 に つ い て 学 ん だ こ と を 基 に 、 自 己 の 生 き 方 を 見 つ め る 学 習 活 動 を 道 徳 の 時 間 に 位 置 付 け て 、 児 童 の 実 態 に 応 じ た 指 導 の 工 夫 を 行 え ば 、 自 己 の 生 き 方 を 明 ら か に し 、 自 己の 生き方についての考えを深めることができるだろう。

2 基礎研究

「自己の生き方についての考えを深める」ことの定義

本研究において「自己の生き方についての考えを深める」とは、 「よりよい生き方の実現への 思いや願いをより一層深める」と定義した。 「よりよい生き方の実現への思いや願いをより一層 深める」ためには、まず児童が道徳的価値について学んだことを基に「自己の生き方を明らか にする」ことが必要であることから、上記の研究仮説を設定した。

「自己の生き方を明らかにする」視点 を、自己の生き方の事実とともに生き方 のよさや課題を見付けるための「今の自 分の感じ方や考え方(現在)」、「これまで の自分の生き方(過去)」、「これからの自 分の生き方(未来)」という3つのカテゴ リーであると捉えることとした(表1)。

表 1 自 己 の 生 き 方 を 明 ら か に す る 視 点 明 ら か に す る 問 い か け 観 点

現在の生き方 今 の 自 分 は ど ん な 感 じ方や考え方なのか

道 徳 的 価 値 観の表現 過去の生き方 こ れ ま で の 生 き 方 は

どうだったのか 経験の想起 未来の生き方 こ れ か ら 生 き 方 は ど

うしたいのか

理 想 の 自 己 像 の 想 像

さらに、 「よりよい生き方の実現への思 いや願いをより一層深める」には自己の 生き方のよさや課題を肯定的に捉えるこ

とが有効であると考え、よさや課題を肯定的に捉える視点を設定した(表2)。

表 2 よ さ や 課 題 を 肯 定 的 に 捉 え る 視 点 肯 定 的 に 捉 え る 問 い か け 観 点

自己の生き方の よさや課題を肯 定的に捉える

自 己 の 生 き 方 の よ さ や課題を考え、褒めた り励ましたりしよう

肯 定 と 励 ま し

2 調査研究

道徳の時間における「自分自身について考えること」の現状を知るために、都内公立小学校 児童(3年生以上 1471 名)と教員(65 名)に意識調査を行った。

児童への調査によると学年が上がるにつれ、 「自分のことを考えるのは好きではない」の割合 が増えていた。また、「自分のよさを見付けることができる」とした児童は約

50%であった。

(6)-①

(2)

「道徳の時間における自己の生き方についての考えを深める指導の工夫

-自己の生き方を見つめる学習活動を通して-」

また、教員への調査からは、 「道徳的価値と自分のことを結び付けることや自分を振り返らせ ることが難しい」「児童がもつ課題を肯定的に受け止めさせられない」などを理由に、約 60%

の教員は指導に難しさを感じていた。これらの調査より、児童が自分のよさを見出し肯定する ことができる道徳の指導の工夫や発達段階を考慮した指導内容を考えることが必要であること が分かった。

表 3 指 導 内 容 段 階 表

3 開発研究

(1) 自己の生き方を見つめる学習活動の工夫

道徳の時間における学習活動において、授業展開の後半に「自己 の生き方を見つめる学習活動」を位置付けることとした。

自己の生き方を見つめる学習活動は、図1のように、「(1)自己の 生き方を明らかにする」視点を位置付けた学習では3つの観点で自 己の在り方や生き方の事実とともによさや課題を明らかにし、「(2)

自己の生き方のよさや課題を肯定的に捉える」視点を位置付けた学 習では自己の生き方のよさや課題を肯定的に捉えるために図2の学 習カード(「(2)ウ参照」)で自らを励ますメッセージなどを考える 。

導 入

1 学習課題等を把握する

展 開

2 資料等を基に話し合う 道徳的価値について学び合う

3 自己の生き方を見つめる学習活動 (1)自 己 の 生 き 方 を 明 ら か に す る

・ 道 徳 的 価 値 観 の 表 現

・ 経 験 の 想 起

・ 理 想 の 自 己 像 の 想 像

(2) 自己の生き方のよさや課題を肯定的に捉える

・ 肯 定 と 励 ま し 終

4 学習をまとめる

「 資 料 タ イ ト ル 」 月 日 ( ) 年 組 番 名 前 ( ) 自 分 の 生 き 方 を 見 つ め よ う

(2) 児童の実態に応じた指導の工夫 ア 指導内容段階表の作成

児童の実態に応じた指導内容を選択し、指導の工夫を考える ことができるよう、自己の生き方を見つめる学習活動の指導 内 容を児童の発達段階を考慮して作成した(表3)。(詳細は「研究 成果物集」参照)

イ 自己評価シートの作成

自己の生き方を見つめる学習活動に関する児童の意識を把握するシートで、回答を表計 算ソフトのシートに入力すると、自己評価の結果が数値化される。活用に当たっては、数 値のみで児童の姿を捉えないように留意する必要がある。(詳細は「研究成果物集」参照) ウ 学習カードの作成(図2)

児童の実態に応じた自己の生き方を見つめる学習活動を円滑に進めるために、指導内容 段階表を基にした低・中・高学年用の学習カードを作成し、指導内容段階表で選択した指 導内容を学習カードに反映させることとした。

段 階 3( 高 学 年 )

児童の一般的 な発達傾向と 道徳性の育成 のための視点

( 『小学校学習 指導要領解説 道徳編』より作 成)

・行為の動機も十分に 考慮でき、人の心を 思いやる共感能力 が発達する。

・理想主義的な考え方 の傾向が強く、自分 の価値に固執しが ちであるが、その考 え方を大切にして、

未来への夢や希望 をはぐくむ。

・自己に対する肯定的 な自覚を促す。

道 徳 的 価 値 観 の表現

今日の学習から自分 の感じ方や考え方、

価値観を表し、以前 と比べて考える。

経験の 想起

自分の経験を想起し その時の心情や理 由、判断動機などを 考える。

( 1

) 自 己 の 生 き 方 を 明 ら か に す る

理想の 自己像 の想像

なりたい自分の姿を 考え、その理由やそ のよさを考える。

( 2 ) 生

き 方 の よ さ や 課 題 を 肯 定 的 に 捉 え る

肯 定 と 励まし

自分の行為や内面

(心情/判断動機)な どの「生き方のよさ」

を考えて肯定した り、 「生き方の課題」

を考えて、よりよい 生き方に向けて励ま したりする。

( 高 学 年 欄 の 抜 粋 )

図 2 学 習 カ ー ド( 高 学 年 用 ) 図 1 学 習 活 動 の 位 置 付 け

よさや課題をもつ自分へメッセージを 送ろう。 (肯定と励まし)

経験を振り返ろう。

その時の気持ちや 理由を考えてみよ う(経験の想起)

これから自分はどう なりたいか。その理由 やよさを考えてみよ う。 (理想の自己像 の想像)

今日の学習から自分が感じたことや思 ったこととこれまでの考えと比べてみ よう。 (道徳的価値間の表現)

(6)-②

(3)

「道徳の時間における自己の生き方についての考えを深める指導の工夫

-自己の生き方を見つめる学習活動を通して-」

4 検証授業 (1) 検証の概要

自己の生き方を見つめる学習活動の有効性を検証することを目的とした。検証の視点を「自 己の生き方を明らかにする視点」と「自己の生き方のよさや課題を肯定的に捉える視点」を具 体化した観点(道徳的価値観の表現、経験の想起、理想の自己像の想像、肯定と励まし)から、

全児童の学習カードの記述と授業前後の自己評価の結果から有効性を考察した。

なお、道徳の副読本の指導展開例に自己の生き方を見つめる学習活動を位置付け、小学校第 3学年から第6学年で各学年3回ずつ検証授業を実施した。

(2) 検証の結果

ア 学習カードの記述内容の変容

どの学年でも3回の検証授業で該当学年の指導内容段階表に当てはまる記述をする児童 が増えた。以下、第6学年の児童を例に挙げる(表4)。

表 4 第 6 学 年 児 童 の 学 習 カ ー ド 記 述 内 容 の 変 容

イ 観点からみた自己評価の結果(図3)と学習カード(表4)の記述内容の傾向 (ア) 道徳的価値観の表現

全ての学年で自己評価の数値が増加した。

「私だったら…」と自分を登場人物と重ねる 記述が多かった。3回の検証授業で、高学年は 学習する前と後の自分の感じ方や考え方、価値 観を比べている記述が増えた。

(イ) 経験の想起

第6学年の場合には、内容項目「4-(4)学 校愛」の記述数が約 30%、「2-(5)謙虚・寛 容」の記述数が約 70%であった。また「でき なかった経験」を想起した記述が多く見られた。

(1 )自 己 の 生 き 方 を 明 ら か に す る (2 )自 己 の 生 き 方 の よ さ や 課 題 を 肯 定 的 に 捉 え る 道 徳 的 価 値 観 の 表 現 経 験 の 想 起 理 想 の 自 己 像 の 想 像 肯 定 と 励 ま し 一

回 目

未 来 に つ な げ よ う と し て い る ん だ と 思 っ た 。

よ く 裁 縫 と か で 何 か 作 れ な い か と 考 え て い る 。 や っ て み よ う と 思 っ た け ど 、 難 し く て 出 来 な か っ た り す る 。

自 分 な り の 個 性 を 出 し 、 自 分 に で き る 範 囲 で 人 に 喜 ん で も ら え る よ う に な り た い 。

こ れ か ら は 、 人 に 喜 ん で も ら え る 自 分 に な っ て ね 。人 の ま ね を し な い で 、 自 分 の 個 性 を 出 し て ね 。

二 回 目

私 は 集 会 委 員 。 第 一 候 補 だ っ た 。自 分 が や り た か っ た こ と が 出 来 た か ら 仕 事 は 辛 く な い 。楽 し い 。今 日 の 学 習 の 前 か ら 気 持 ち は 変 わ ら な い 。

委 員 会 な ど で 、 う ま く で き た 時 、 そ の 時 の 事 を メ モ に し た 。 次 の 人 達 も こ の メ モ を 見 て 参 考 に し て く れ た ら い い か ら 。

仕 事 と 思 わ ず 自 分 や 人 の た め と 思 っ て 楽 し く す る 自 分 に な り た い 。そ う す れ ば 、成 功 す る と 思 う 。

こ れ か ら は 、 こ れ ま で 以 上 に 楽 し く 仕 事 を し た ら 、 う ま く い く よ 。 自 分 か ら 変 わ っ て み て 。

三 回 目

妹 と ケ ン カ を し た 時 、や り 返 し た く な る 。 お 互 い 様 と 思 う 。 学 習 す る 前 と 後 で は 私 の 思 い は あ ま り 変 わ ら な け ど 、も う 少 し プ ラ ス の 考 え 方 を し よ う と 思 っ た 。

( 下 線 部 は 、「 指 導 内 容 段 階 表 」 に 該 当 す る 記 述 )

自 分 も 同 じ 事 を 人 に や っ て い る か も し れ な い か ら 、 人 に 言 っ た り 、 や っ た り で き な い と 思 っ て 許 す 。 で も 、 あ ま り ひ ど い こ と を や ら れ た ら 許 せ な い 。

自 分 と 相 手 を 照 ら し 合 わ せ て 考 え る 自 分 。そ う す れ ば 、人 の 過 ち を 許 す こ と が で き る だ ろ う 。

今 ま で 通 り 自 分 の 事 を 思 い 出 し て 人 の 事 を 考 え て ね 。 許 せ な い こ と が あ っ た ら や っ た 人 に 嫌 と 言 う と お 互 い に 納 得 で き る よ 。 フ ァ イ ト !

図 3 授 業 前 後 の 自 己 評 価 の 変 化( 平 均 値:視 点 別 )

道徳 的価値 観の表 現

63.6%

50.0%

62.5%

59.4%

51.5%

43.8%

48.6%

44.7%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

授業前 授業後

3年 4年 5年 6年

経験の想起

72.7%

65.5%

71.9%

71.9%

63.6%

65.6%

64.9%

73.7%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

授業前 授業後

3年 4年 5年 6年

(6)-③

(4)

「道徳の時間における自己の生き方についての考えを深める指導の工夫

-自己の生き方を見つめる学習活動を通して-」

(6)-④ (ウ) 理想の自己像の想像

どの学年でも、自己評価の数値が増加した。

学習カードの記述を見ると、ほとんどの児童が

「なりたい自分の姿」を記述できた。

高学年においても、「なりたい自分を想像し た理由やそうなることのよさ」を考えて記述を

理想の自己像の想像

75.8%

71.9% 75.0%

56.3%

72.7%

56.3% 70.3%

50.0%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

授業前 授業後

3年 4年 5年 6年

する児童が増える傾向が見られた。

(エ) 肯定と励まし

全ての学年で、授業後の自己評価の数値が増 加した。学習カードからは、自己の生き方の課

肯定と励まし

50.0%

63.6%

59.4%

62.5%

43.8%

51.5%

44.7% 48.6%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

授業前 授業後

3年 4年 5年 6年

題を捉えて励ます記述が多く見られた。

(3) 検証結果の考察

ア 「自己の生き方を明らかにする視点」について

「道徳的価値観の表現」 「理想の自己像の想像」の2つの観点で自己評価の数値が増加し た。児童の実態に応じた自己の生き方を見つめる学習活動を継続して取り組んだことや、

学習カードを活用して考える観点を明確に提示したことで、児童が学習活動で何を考えれ ばよいのか把握しやすくなったことが数値の増加につながったと考えられる。

「経験の想起」の観点での自己評価の微減については、授業のねらいや内容と児童の生 活経験にズレがあるなど児童が自分の経験を想起できにくかったことが原因と考えられる。

これらより、児童の実態の把握や「自己の生き方を明らかにする視点」で内容項目を捉 えることで、道徳的価値と自己の生き方を結び付きやすくし、より一層自己の生き方を明 らかにできると考えらえる。

イ 「自己の生き方のよさや課題を肯定的に捉える視点」について

「肯定と励まし」の観点における自己評価の数値は増加したが、自己の生き方のよさを 考えて肯定している記述はあまり見られなかった。 「よさや課題をもつ自分にメッセージを 書こう」という発問だけでは、何を書けばよいのか戸惑っている児童も見られた。教員が 児童の生き方のよさを認めるコメントを学習カードに書くなど、児童に生き方のよさを捉 える機会を増やす工夫が必要である。

第3 研究の成果

自己の生き方について、児童が考えを深めるために有効な視点を明確にした「自己の生き方 を見つめる学習活動」を道徳の時間に位置付け、開発した「指導内容段階表」 「自己評価シート 」

「学習カード」に基づき、児童の実態に応じた指導を工夫したことで、自己の生き方を明らか にし、よりよい生き方の実現への思いや願いを深める児童が増えた。

第4 今後の課題

○ 児童が自己の生き方のよさを考えて、肯定したり賞賛したりできる、より効果的な指導 の工夫を追究し、検証する。

○ 自己の生き方を見つめる学習活動を軸にした各教科等の全体計画を作成する。

参照

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