論文内容要旨(甲)
論文題名
Cilostazol suppresses Aβ-induced neurotoxicity in SH-SY5Y cells through inhibition of oxidative stress and MAPK signaling pathway
和文名
シロスタゾールは
SH-SY5Y
細胞において酸化ストレス及びMAPK
シグナル経路の抑制を介してAβ誘発性神経毒性を抑制する
掲載雑誌名
Frontiers in Aging Neuroscience, Vol.9, 337, P1-P12, 2017
年 DOI: 10.3389/fnagi.2017.00337専攻名 病理系 薬理学
(医科薬理学分野) 専攻 小口 達敬
内容要旨
[背景・目的]アルツハイマー型認知症(AD)は、進行性の認知機能障害を きたす疾患であり、病理学的には脳内での老人斑と言われるアミロイド β蛋白(Aβ)の沈着と神経原線維変化、それに続く神経細胞の脱落が特徴 であり、酸化ストレスが関与しているといわれている。近年,軽度認知 機能障害の患者に対して、抗血小板薬であるシロスタゾール(CSZ)の内服 によって認知機能障害の進行抑制効果が報告された。そこで本研究では ヒト神経芽細胞腫 SH-SY5Y 細胞を用いて、Aβが誘発した酸化ストレスに よる神経細胞傷害に対する CSZ の障害抑制機序を明らかにすることを目 的とした。
[方法]我々は、Aβ1-42 (2.5 µM)を分化した SH-SY5Y 細胞に処置し神経 細胞傷害を誘発した。また、細胞に CSZ(2.5 µM)を 1 時間前処置後、
Aβ1-42 (2.5 µM)+CSZ でインキュベートした。細胞傷害およびアポト ーシス評価のため 3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H- tetrazolium bromide(MTT)、caspase-3, -9 の測定と annexin V による 染色を行った。次に細胞における酸化ストレスを評価するために活性酸 素種(ROS)、NADPH オキシダーゼ(Nox)活性、NOX4 mRNA、Cu/Zn-スーパー オキシドディスムターゼ(SOD)を測定した。また、Mitogen-activated Protein Kinase(MAPK)経路である p38 MAPK と Extracellular Signal- regulated Kinase(ERK) 1/2 活性の測定と、ミトコンドリア機能評価の ため Bax、Bcl-2、cytochrome c および cAMP response element binding protein(CREB)の測定を行った。
[結果]Aβは酸化ストレスマーカーである ROS、Nox 活性、NOX4 mRNA お よび Cu/Zn-SOD を低下させた。また、ミトコンドリア機能マーカーであ る Bax の増加、Bcl-2 の低下、caspase-9 活性および caspase-3 活性の増 加、MTT の低下が見られ、アポトーシス促進および細胞生存率低下が見 られた。しかし、CSZ の前処置により、これらのマーカーは有意に抑制 され Aβ による神経細胞傷害作用は減少した。さらに、Aβは p38 MAPK および ERK 1/2 活性を増加、CREB リン酸化を減少させたが、CSZ 前処理 により p38 MAPK 活性は低下し、CREB リン酸化は増加したが、ERK 1/2 活 性はさらに増加した。
[結論]SH-SY5Y 細胞において Aβ誘発性神経細胞傷害に対する CSZ の Nox 活性抑制を介する酸化ストレス抑制効果が実証された。CSZ は、Nox 活性 の抑制によって Aβ誘発酸化ストレスを阻害し、さらに、Aβ誘発性神経 傷害に対し、P38 MAPK 活性、Bax および caspase-9 活性の抑制作用さら に、ERK1 / 2 活性および Bcl-2 を増加させ、ミトコンドリア機能傷害お よびアポトーシス抑制作用を引き起こした。したがって、CSZ は、酸化 的ストレス、ミトコンドリア機能傷害、およびアポトーシスを保護する 有益な薬剤であることが示唆された。CSZ は、ニューロン損傷を保護す るための有望な治療薬として、そして、AD 患者における認知障害の治療 のための候補となるかもしれない。