• 検索結果がありません。

『日本・スペイン交流史』 (れんが書房新社、2010 年)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "『日本・スペイン交流史』 (れんが書房新社、2010 年)"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

24

 『スペインと日本』(行路社、2000)と同じ編 者による表題書は、近・現代期の両国交渉をも 幅広く補完し、「第一部近世初期の交流史」8章、

「第二部幕末明治以降の交流史」20章とで構成 される、斯界の権威松田毅一著作集にも連なる 体系的な専門書である。スペイン国駐日ミゲル

・カリエド大使の「刊行に寄せて」と「編者ま えがき」はイエズス会ザビエルによるカトリッ ク布教の実践(1549)から現今のフアン・カル ロス国王夫妻訪日(2008)までの壮大なる両国 交流史の大要であり、格好の読書案内(導入)

でもある。

 「第7章スペインと日本」(川成洋)は、「スペ イン内戦」時における共和派への日本人義勇兵 の消息を中心に、多岐にわたる膨大な資料に基 づき考証を進める、硬質の精力的な論稿である。

有事の緊張感に包まれた題材でありながらも読 者を飽きさせない健筆は、〈スペイン内戦史研 究〉の第一人者ならではの広博な学識によるも のであろう。

 「第15章スペイン語に翻訳された日本文学の 流れ」(古家久世)の論述では、スペイン語に 翻訳された最初の日本文学作品、新渡戸稲造『武 士道』(G・.J.デ・ラ・エスパダ訳、マドリー ド、1909)から説き起こし、日清(1894)・日 露(1905)両戦争での台頭をもって海外におけ る日本への関心が高まったこと、スペインで日 本文学熱が昂じたのは川端康成のノーベル賞受 賞(1968)が契機となって順次諸作品の翻訳化 が進んだこと等が明らかにされている。日本語 から英・独・仏語などを経て西語への重訳に依存 することが主流だった時代から、川端受賞後原 書から直接西語化される時代を迎えるに至った その背景には、J・フェルナンデス(上智大学)

『古都』、『沈黙』、A・カベサス(京都外国語大学)

『伊勢物語』、『好色一代男』、J・ロドリゲス(天 理大学)『徒然草』、『子規百句』のように日本 文化に精通したスペイン人識者による着実な文 化貢献が大きかったことや、三島由紀夫割腹事

件(1970)、大江健三郎ノーベル賞受賞(1994)

といった社会的トピックが指摘される。吉本ば ななや村上春樹人気もこれまでの延長線上にあ ると見られる。

 「16章スペインにおける日本のポップカル チャー」(金関あさ)では、スペインにおける 日本アニメ・マンガの輸入に着目し、『クレヨ ンしんちゃん』の大人気を基軸に分析を試みる。

スペイン国内だけでも5言語に翻訳されTV放 映も広く続けられる作品には、「子供向けのマ ンガではない」とする原作者臼井義人の主張へ の理解が、高視聴率の根底にあることなどが解 説されている。こうした両章の事例は、文化的 相互理解・相互信頼は、言語表現を介してさら に深化・進展することを物語っている。具体的 には、漱石『猫』の西語訳・研究書やセルバン テス『ドン・キホーテ』の邦訳・関連書も、数々 の刊行が様々な批評を展開し、言語文化を豊潤 にすると評者は確信する。

 「第19章スペインを訪れた日本人」(坂東省 次)は、既刊『スペインを訪れた日本人』(行 路社、2009)の要諦が凝縮された言わば、ダイ ジェスト版に近く、明治期以降スペインへ渡航 した著名人(=民間人エリートたち)の記録を 丹念に精査し、蓄積・集成する。同章「7まとめ」

での「日本におけるスペイン学の基礎を築いた のは他ならぬノンプロパーたち、つまり作家、

外交官、評論家、新聞記者、舞踊家、俳優たち であった。(略)1970年代あるいは80 年代にな るとプロパーの手によるスペイン論が登場して くる。」(p.466)という分析は、有本紀明『ス ペイン聖と俗』(NHK出版協会、1983)を基点 に、〈スペイン学〉を研究者自らが積極的に構 築する本格的な段階に入ったことを証言するも のであり、日本の〈スペイン学〉大系の確立を 編者が重ねて公言する論拠でもある。 

 かたくら じゅうぞう

(天理大学教授:スペイン・ラテンアメリカ文学)

スペイン語圏を知る本(その 58)

坂東省次 ・ 川成洋編

『日本・スペイン交流史』

(れんが書房新社、2010 年)

評者 片倉 充造 学外の皆様からのご支援

参照

関連したドキュメント

BCP とは Business Continuity Plan の略称でビー・シー・ピーと呼ばれ、日本語では業務継続計画などと訳されます。

始めに山崎庸一郎訳(2005)では中学校で学ぶ常用漢字が149字あり、そのうちの2%しかル

日本の生活習慣・伝統文化に触れ,日本語の理解を深める

この 文書 はコンピューターによって 英語 から 自動的 に 翻訳 されているため、 言語 が 不明瞭 になる 可能性 があります。.. このドキュメントは、 元 のドキュメントに 比 べて

存する当時の文献表から,この書がCremonaのGerardus(1187段)によってスペインの

Official Basketball Rules 2020 Basketball Equipment (FIBA 原文/日本語訳).. 第 3 章

日本語で書かれた解説がほとんどないので , 専門用 語の訳出を独自に試みた ( たとえば variety を「多様クラス」と訳したり , subdirect

年度まで,第 2 期は, 「日本語教育の振興」の枠組みから外れ, 「相互理解を進 める国際交流」に位置付けられた 2001 年度から 2003