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遺贈と贈与の遺留分減殺の順序・割合について

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(1)

遺贈と贈与の遺留分減殺の順序・割合について

その他のタイトル Sur l ordre de reduction des liberalites

著者 千藤 洋三

雑誌名 關西大學法學論集

37

2‑3

ページ 551‑597

発行年 1987‑10‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/1803

(2)

退

^ . 

(3)

一はじめに 二減殺の順序・割合に関する規定の立法経緯

0

明治民法制定前の状況

③明治民法草案の提出理由

①遣贈と贈与の減殺順序

@複数遣贈の割合減殺

⑥複数贈与の順次減殺

四日本法における減殺の順序・割合をめぐる諸問題

①遣贈と贈与の減殺順序

@複数遣贈の割合減殺

⑥複数贈与の順次減殺

(4)

わが民法は︑遺留分減殺の順序あるいは割合として︑遺贈と贈与が同時に存在するときには︑遺贈を贈与に先

目的の価額の割合に応じて同時に減殺し

( 1

0

三四

条︶︑また複数の贈与が存在するときには︑後の贈与から前の贈与へと順次に減殺することにしている︵︱〇‑︱‑五条︶︒

これらの諸規定は︑明治民法制定時に︑当時のフランス民法やドイツ民法草案を継受し︑もしくはそれらを基に創意

(1 ) 

工夫したものである︒遺留分減殺の効果を挙げるために︑まず第一に︑被相続人が処分しなかった遺産にかかってい

けることにし︑それで不足すれば︑次に現実に遺産として残っている遺贈を対象とし︑さらに不足すれば︑最後に贈

与にかかっていけることにしている︒このように︑贈与が最後になっているのは︑利益を受けて久しい受贈者を保護

(2 ) 

することによって取引の安全を図ることなどを主眼としたからである︒

(3 ) 

本稿は︑遣贈と贈与の遺留分減殺の順序・割合について検討してみようと試みるものである︒わが国では︑こ

(4 ) 

れまで︑減殺の順序や割合について︑裁判上︑問題となることはあまり多くなかった︒また︑学説も︑体系書の類を

(5 ) 

除いて︑それほど研究対象としてこなかったといえよう︒しかし︑地価の高騰等にみられるような個人財産の増加︑

それに伴う家族間での遺産争いの激化︑あるいは家産意識から次第に脱却し自己の財産の自由な処分を可能とする個

人意識の変化などが理由となって︑遺贈や贈与の件数が増大し︑そのことによって相続財産をめぐる紛争がより多く

なるものと予測される︒こうした状況のなかで︑遺言者あるいは贈与者の死亡後における遺贈や贈与の遣留分減殺を

めぐる争いの解決のためのささやかな糸口を知りうるために︑まず次章で︑減殺の順序・割合に関する規定の立法経 複数の遺贈が存在するときには︑

~

(5)

らかの示唆を与えてくれる︒ 員の口から︑時として︑

第三七巻第ニ・三号

ついで第三章で︑わが国の諸規定の母法の︱つであるフランス法の判例・学説を概観することにしたい︒更に

第四章で︑本格的な日本法についての検討は将来のこととするが︑フランス法について知りえたことをもとにして︑

本稿で述べようとすることを︑あらかじめまとめれば︑以下のようになろう︒

明治民法の起草に際して︑遺贈並びに贈与に対する遺留分減殺の順序・割合に関する諸規定については︑多くの他

の条項とは異なり︑まったくといってよいほど議論なしに︑起草委員の提案が法典調査会において受け入れられた︒

遺留分減殺の法的効力などといった本質論とはかけ離れた技術的な色彩の濃い規定であったことが︑その最大の理由

であったといえようが︑母法においてもほとんど異論がない︑と見られたことも理由の一っと思われる︒また起草委

法典としての体裁上からの要請であったことを物語り︑したがって議論に熱が入らなかったとも穿つことができる︒

確かに︑当該規定の母法の︱つであるフランス法においても︑こうした減殺の順序等をめぐっての裁判例が多くみ

られる訳ではない︒しかし︑本稿で紹介した十三例のいずれもが︑減殺の順序・割合をめぐって︑深刻な争いを示し

ているといえよう︒勿論︑ ﹁西欧法に規定がある﹂との言葉が漏れるのは︑わが国における必要性というよりも︑近代

フランスでの紛争は︑例えば﹁夫婦間の贈与﹂

ている︶といったフランス固有の問題と密接に絡んでいることではあるが︑多くの点で︑わが国での争いの解決に何

一例を挙げると︑贈与の日付が新しいために︑減殺に復しなければならなくなった受贈者が︑相続開始後に弁済不

能に陥った場合には︑遣留分権利者がこの弁済不能の結果を甘受しなければならないが︑しかし受贈者が相続開始前 わが国での若千の問題点に触れておきたい︒ 関法

︵仏民法典は︑これだけに数十箇条を充て

(6)

遺贈の贈与の遺留分減殺の順序・割合について

に既に弁済不能に陥っていたときには︑遺留分権利者は︑日付が前の受贈者にかかっていけるか否か︑

一説は︑法律が自由分を直接定めていることから︑その反面と

して遺留分が決定されるという理由で︑遺留分権利者が︑その損失を負担しなければならないと解する︒二説は︑折 衷的な解決で︑遺留分の計算総体のなかに︑当該の贈与を加えないことにより︑遺留分権利者と前の受贈者との間で︑

弁済不能分についての分担を行うと解する︒三説は︑遺留分権は︑被相続人に由来するのではなく︑法律から直接も たらされるものとして︑前の受贈者のみが損失を負担すると解する︒破毀院は︑このうち三説の立場にある︒ただし︑

この破毀院判決は︑受贈者の一人の弁済不能のケースではなくて︑もっとまれな︑受贈者が誰か分からないという場

こうしたフランスの判例・学説は︑わが国の解釈論にも示唆に富むものといえよう︒

( 1 )

法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査会民法議事速記録七﹄︵昭五九︶八七五頁以下︑各参照︒

( 2 )

柚木馨﹃判例相続法論﹄︵昭二八︶四二七頁︒

( 3 )

遣贈と贈与の遣留分減殺の順序・割合が問題となるのは︑複数の遣贈や贈与が存在する場合に限らない︒たとえば︑遣留

分侵害を受けた複数の者がいるときには︑これらの者は︑自己の侵害額に応じて︑遣贈ないし贈与に対して減殺をなしうる︒この場合にも︑減殺請求の割合といえる︒その意味では︑﹁遺留分減殺請求権者ないしこの請求の相手方たるぺき者が複数あるときは︑減殺の順序と割合が問題となる﹂との表現は︵鈴木禄弥﹃相続法講義﹄︵昭四三︶一

00

頁参照︑鈴木禄11唄孝一﹃人事法

﹄︵昭五I I

0 )

1︱九頁も同一文言︶︑正当である︒しかし︑請求の相手が一人で遺贈と贈与を受けて

いた場合もありうる︒本稿では︑請求権者もしくは相手方という主体からではなく︑減殺の対象物である客体に視点を置い

( 4 )

裁判例は︑後述するようにわずか八例みられるにすぎない︒もっとも︑減殺の順序・割合の問題は︑ある意味でネーペン 合を対象にしている︑との学説からの批判がある︒

フランスの判例・学説は︑三説に分かれる︒

という問題に

(7)

意思が優先する︒遣言者の意思優先は︑

(1 ) 

第三七巻第ニ・三号

( 5 )

から前の贈与に及ぶことになる︒この贈与の順次減殺の原則は︑

(3 ) 

ていた問題であったが︑

から遺贈の間に前後関係がなく︑ の勅令によって確定され︑一七三一年のダゲッソー

(D

'A

gu

es

se

au

)

(4 ) 

ランス民法典九二三条に結実した︒複数の遺贈がある場合には︑いずれの遣贈も遣言者の死亡時に効力を生じること

したがって価額の割合に応じた按分比例になるが︑この場合には︑遺言者の特別の

(5 ) 

ローマ法においても認められていたことであった︒なお︑現行フランス民法

は︑包括遣贈と特定遺贈との間で区別をしない旨の明文規定︵九二六条︶を設けている︒フランス古法では︑包括遺

(6 ) 

贈をまず減殺するのが順序であった︒フランス民法制定時にも︑古法のやり方が草案にもられ︑ただ先に減殺を受け

る包括受遺者自身にも減殺権を認める立法主義であったが︑法典の起草者達は︑特定遣贈の弁済を包括遺贈に優先す ついで一八

0

四年のフ 一八世紀にいたるまでフランス古法のもとで争われ 贈与よりも遺贈が先に減殺されるのは︑古い処分はなるべく生かすべきであるという理由で︑

(2 ) 

ないところであるといわれる︒同じ理由から︑複数の贈与がある場合には︑減殺は遣留分を回復するまで︑後の贈与

ローマ法以来争いの

(8)

( 2 )  

︹旧民法︵ボアソナード民法︶の規定︺ ることが被相続人の意思ではないと判断し︑結局︑両者を区別することなく全部按分比例という形で落ち着いた訳で

(7 ) 

ある︒また︑フランス古法では︑特定遺贈のうち︑単なる物の遺贈と金銭遺贈とがあったときには︑前者を先に減殺

の対象にするというボティニ

(P ot ie rs )

等の学説があったけれども︑

(8 ) 

明治二三︵一八九

0 )

年に公布されたわが国の旧民法︵いわゆるボアソナード民法︶は︑財産取得編第三八八条で︑

(9 ) 

﹁遺贈ノ幾分ヲ減殺シテ貯存ス可キ財産ノ分量ヲ組成ス可キトキハ包括ノ遣贈卜特定ノ遣贈トヲ問ハス其価額ノ割合

( 10 )  

ヲ以テ総テノ遣贈ヲ減殺ス可シ﹂と規定する︒この包括遺贈と特定遺贈との間で区別をしないという点は︑フランス

民法九二六条をそのまま継受したことが明白である︒これ以外には︑減殺の順序・割合について規定したものは見当

たらない︒とりわけ︑贈与の減殺を明規していない点に注目される︒なお︑第三八八条の直後の第三八九条で︑﹁総テ

贈与ニシテ贈与者ノ死亡ノ後執行ス可キモノハ遺贈卜其効カヲ同フス﹂と規定していることから︑起草者は死因贈与

を遺贈と同様に扱うものと考えていたと解される︒現行民法第五五四条にも同趣旨の規定があるが︑この五五四条は︑

典型契約の一っとしての贈与のところに位置しており︑条文の位置という点において︑趣が異なるものといえよう︒

明治民法草案の提出理由

ここでは︑明治二九︵一八九六︶年︱二月一六日に開催された第二

0

二回法典調査会における明治民法草案の

( 11 )  

提出理由を紹介する︒まず︑遺贈と贈与の減殺順序をみてみよう︒贈与と遺贈の先後に関する一︱四七条の提案趣旨

︱ ︱

‑ l

0

四年のフランス民法典には採用されなか

(9)

国の法律には︑皆ある﹂︑﹁只少し旧法典の文字を改めた点は︑取得編三八八条の﹃幾分﹄ということは要らぬと思い

まして︑採りませんでした︒それから︑包括の遺贈と特定の遣贈とあるのも二つ採れば宜いと思って︑これも書きま

せんでした︒但書を加えたのは︑外国の法律には︑大抵あります︒旧法典にはなくても︑矢張り反対の意思表示を許

すという性質ではあろうと思いますが︑解釈は余程疑わしくなろうと思う︒遺留分に関する規定は︑公益規定である︒

減殺の規定も公認の規定であるということで︑こういうことは出来ないというような解釈が出来ぬとも限らぬ︒これ

は︑但書を置いたが宜かろう︒此の規定は︑意思の規定の出来ないということで︑其主義を明らかにするために置い

た︒仏蘭西民法杯は︑此の意思は明示でなければならぬとあるが︑本条においても︑其の遣言に云々と書いてありま

す︒つまり︑明示ということであろう︒ 国の立法例は︑皆この通りになる︒わが旧法典の草案においてもこういう風に改まっている﹂と述べる︒この説明を受けて︑清浦奎吾議長退席後の本条の審議から議長となっていた三浦安議長は︑めて次に移ります﹂と決議している︒富井説明にみられる旧民法で︑なぜ贈与を減殺の対象にしなかったのかは︑興味の惹かれるところである︒その点はともかくも︑遺贈と贈与の先後に関して︑極めてといってよいほど簡単に決着がついている︒まったく議論がなかった︒外国法では︑そうなっているからというだけである︒

次に複数の遣贈の間での減殺をみてみよう︒ここでも富井委員が︑遺贈の割合減殺に関する第一︱四八条の提

﹁本条の規定も諸外国の法律に倣いましたので︑皆この通りになっております︒造贈の減殺を認める

説明を富井政章起草委員が︑

第三七巻第ニ・三号

﹁本条は旧法典にはない︒旧法典では︑贈与の減殺を認めていなかったからである︒し

一旦︑贈与の減殺を認めた以上は︑どうしても遺贈を減殺した後でなければ︑いけないということになる︒外

つまり︑特約で其の意思を表示したるときでなければならぬ︒ただ︑そうい ﹁別に御発議がなければ︑確定と認

︱ ︱

(10)

( 1 )

遣贈と贈与の遺留分減殺の順序・割合について   もたらしたのではないか︒

二条との関係についての説明が興味をひく︒

う意思であるということではいけない﹂と述べる︒この説明を受けて︑さきほどの一︱四七条と同様に︑三浦議長は︑

﹁御説がなければ可定と認めまして︑次に移ります﹂と決議した︒ここでは︑遺言者の意思により︑複数の遺贈のう

ちのどれを先に減殺すべきかを決定することが出来るという但書規定に関する起草委員の発言が︑注目される︒

最後に︑複数の贈与の問における減殺順序に関する一︱四九条について︑前二条と同じく︑富井委員は︑

与の減殺を認めておる国の法律は︑皆こういうようになっております︒理由はわかりきったことで︑初めの贈与は後

の贈与より余計保護を受けなければならぬ︒ただちょっと御注意までに申し上げなければならぬのは︑︱︱四二条に

﹃其期間前二為シクルモノト雖モ当事者双方力遺留分権利者二損害ヲ加フルコトヲ知リテ之ヲ為シタルトキ亦同シ﹄

とあって︑減殺が出来ることになっている︒其の減殺の順序は︑矢張り本条に依って新しいものから減殺することに

なっている︒幾ら悪意があっても︑古い者は保護するということになっている︒それは︑只今申した理由で︑何程悪

い意思を以て贈与したにせよ︑前の贈与は後の贈与よりも余計に保護するのである﹂という︒これに対して︑尾崎三

良出席委員が﹁異議なし﹂と述べ︑三浦議長が﹁然らば可定と致して次に移ります﹂と決議した︒ここでは︑

以上︑明治民法制定時の草案提出の理由を見てきた︒起草委員の一方的な説明に終わっており︑他の条項にみ

られるような議論がまった<交わされていないことに注目される︒単なる技術的な条項であったことも︑議論となら

なかった理由に挙げられようが︑諸外国において︑ほとんど異論がないと見られた規定であったことも大きな影響を

(11)

本章は︑ 関法

第三七巻第ニ・三号

( 2 )

原田︒前掲書三二九頁︒

( 3 )

原田・前掲書三二九頁︒

( 4 )  

Ma ze au d,   Le c

; on s d  e  d r oi t   c i v i l ,   t .  

4,  v .  

2,  1 98 2,

 n

93 2.

( 5 )  

Z o e .   c i t . ,  

( 6 )  

P ot h i er , O  eu vr es   de   Po t h ie r ,  t .  

V I I I

,   1

84 5,  p .  42 7.  

( 7 )  

Ma ze au d,   op .   c i t . ,  

n

93 5.

( 8 )  

P ot h i er ,   o p .   c i t ・

・ t .  

I,

 p . 

42 1.  

( 9 )

旧民法では︑遣留分として︑法定家督相続人があるときには︑この者が被相続人の相続財産の半額を受け︵財産取得編三

八四条一項︶︑また遺産相続の場合には︑被相続人の卑属が半額を受けた︵財産取得編三八四条二項︶︒明治民法のもとで

は︑家督相続の場合には︑法定家督相続人である直系卑属が︑被相続人の財産の半額を遺留分として受け︑もしも直系卑属

以外の者が家督相続人となったのであれば︑被相続人の財産の三分の一を受けた︵明治民法︱一三

0

条︶︒また︑遺産相続

の場合には︑遣産相続人である直系卑属が︑被相続人の財産の半額を︑直系卑属がいなくて遺産相続人となった者が配偶者

または直系専属であれば︑これらの者が︑三分の一を受けた︵明治民法︱︱︱︱︱一条︶︒

( 1 0 )

我妻栄編﹃旧法令集﹄︵昭四三︶一六五頁参照︒

( 1 1 )

法務大臣官房司法法制調査部監修﹃法典調査会民法議事速記録七﹄

適宜︑簡略化した︒

フランスにおける遺贈と贈与の減殺の順序・割合をめぐる解釈上の諸問題について︑

最後の第三節で複数の贈与の間での順次減殺を扱うことにする︒

フランスの学説並び に判例を紹介するものである︒まず第一節では遣贈と贈与の減殺の順序を︑第二節で複数の遺贈の間での割合減殺を︑

︵昭五九︶八七五頁以下︒なお︑発言内容は︑筆者が

三 ︱

1 0

0

)

(12)

遺贈と贈与の遣留分減殺の順序・割合について 順序についても明規している︶︒

フランスでの遺贈を贈与に先立って減 民法九二三条が﹁遺贈と贈与の減殺順序﹂と﹁複数贈与の順次減殺﹂を︑

包括遺贈と特定遺贈との間で区別なく按分減殺を行うこと︶﹂を︑

( 1 )  

九二七条が﹁遺贈の減殺順序に関する遺言者の意思優先﹂を︑それぞれ規定している︒そこで︑いいかえれば︑第一

節は九二三条︑第二節は九二六条と九二七条︑第三節は九二三条︑

遺贈と贈与の減殺順序

の各規定をめぐる諸問題を対象とすることになる︒

( 1 )

フランス民法九二三条︑九二六条︑九二七条の内容は︑次のようなものである︵なお︑これらの条文は一八

0

ンス民法典制定以来、修正等を受けていない)。条文訳は、稲本洋之助•他訳『法務大臣官房司法法制調査部編フランス

民法典ー家族・相続関係ー﹄︵昭五三︶二八七頁以下に依る︒第九二三条﹁生存者間の贈与を減殺することは︑遺言による処分に含まれるすべての財産の価値を汲みつくした後でなけ

れば︑なんら行われない︒この減殺を行うときは︑最後の贈与から始め︑後の贈与から前の贈与に順次さかのぼることによ

第九二六条﹁遣言による処分が︑あるいは自由分を︑あるいは自由分のうち生存者間の贈与の価額を差し引いた後に残る

部分を超えるときは︑減殺は︑包括遺贈と特定遣贈との間のいかなる区別もなく按分で行う﹂︒第九二七条﹁ただし︑遺言者がある遺贈が他の遣贈に優先して弁済されることを意図する旨を明示的に申述したすべての

場合には︑この優先が行われる︒この目的となる遣贈は︑他の遺贈の価額が法定遣留分を満たさない限りでなければ︑減

フランス民法九二三条により︑遣贈の減殺は贈与の減殺に先立って行われる︵なお︑同規定は︑贈与の減殺の

この点は日本民法一

0

三三条と同様である︒

(1 ) 

殺に服しめるという原則は︑二つの理由から説明される︒まず第一に︑最終の意思処分である遺贈は︑遺言者の死亡

(1)  ﹁複数遺贈の割合減殺︵厳密にいえば︑

フランスでは︑

さらに

また九二六条が

(13)

第三七巻第11•三号

だ何も受け取っておらず︑返却すべき何物をも持っていない︑

遺贈と贈与の減殺順序をめぐって︑

て遣贈の減殺後に減殺されうる︑

~

により効力をもたらすことから︑生前贈与よりももっとも最近の恵与である︒したがって︑贈与に先立つ遺贈の減殺

は︑公序

(o

rd

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pu

bl

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)

であると解されている︒第二に︑生前贈与の不可撤回性

( i r r

e v o c

a b i l

i t e )

これは︑複数の贈与があった場合に︑後の贈与によって前の贈与の撤回を容易に認めることを許さないもので︑割合

(3 ) 

的減殺が行われず贈与の日付の順序に従った減殺の理由ともなっているものであるが︑要するに︑後の遺贈によって

(4 ) 

前の贈与の効力を損なわないとするものである︒なお︑自由分が完全に生前贈与によって吸収されるときには︑遺言

処分は失効し︵仏民九二五条︶︑遺贈が減殺されることはない︒この他に︑生前贈与の受益者と異なり︑受遺者はま

(5 ) 

という点も付け加えられる︒

とりわけ夫婦間の将来財産の贈与について論じられることが多い︒

ィー・エ・レィノー︵

Ma

rt

y

e t  

Ra

yn

au

d)

 

(6 ) 

という︒そして︑この趣旨での下級審判決もみられる︵後述①・③判決︶︒しかし︑

夫婦間の贈与は撤回が可能であるので︑生前贈与とは異なった扱いが考えられる︒また︑将来財産の贈与であるので︑

遺言処分に類似する︒こうしたことから︑たとえば︑婚姻中に夫婦の間で行われる契約による相続人指定は︑遺贈と

同様に任意に撤回しうることを理由として︑破毀院民事部一九二九年二月二

0

日判決

( D .

P.

  1 92 9,  1 , 

1 0 4 )

は︑夫婦

間の贈与を遺贈と同一視し︑遺贈と同一順序で減殺した︒これに対しては︑先程のマルティー・ニ・レィノーと同様

に︑夫婦間の将来財産の贈与は︑生前贈与として扱われるべきであって︑あらゆる遺言処分の後で︑日付に従って減

(7 ) 

殺するように扱うべきだというジョスラン

(J

os

se

ra

nd

)

の反対意見がみられる︒今日の学説の多くも︑テレ・ニ・ル

と解してい

( 3

ケ ッ ト

(T

er

re

e t   L

eq

ue

tt

e)

にみられるように︑婚姻中における夫婦間の贈与は順次減殺規定に従う︑ 関法

は︑夫婦間の将来財産の贈与は︑一般には生前贈与と扱われ︑したがっ

(14)

① 

しかし︑③判決の評釈にみられるように︑反対意見も強い︒

。ハリ

(Paris)

控訴院一九二六年一0月二0

日判決

D•

H .  

19 26 , 

568 

被相続人ゲノー

(G

ue

no

t)

は︑妻であるゲノー夫人のために︑

よって贈与を行った︵なお︑

︵ 五 六 一

︱ ‑

ゲノーは一九一九年四月一三日に死亡し︑また同夫人もおよそ一年後の一九二

0

ゲノーは︑デスビエジュレ

(D

es

pi

eg

el

er

)

婦人︵控訴人︶のために︑遺贈を含んだ一九

一八年八月一日付けの自筆証書遺言を行っていた︒そこで︑受遺者であるデスピエジュレ婦人から︑遺贈物の引渡

しを求めたのである︒第一審は受遺者の敗訴︒そこで控訴がなされた︒控訴人は︑第一審判決が遺言による恵与と

夫婦間の贈与との同一視を否定した点を批判し︑遺贈を贈与よりも先に減殺対象にしている民法九二三条は撤回不

能な贈与にのみ適用されるべきであって︑ゲノー夫人への贈与が全面的に実行されるべきではなかった︑と主張し

た︒これに対して︑控訴院は︑以下のような幾つかの理由から控訴を棄却した︒第一審裁判官が指摘したように︑

遣言者によるゲノー夫人への贈与は確実なものであって︑そこでは明白に︑遺言者はその贈与が侵害されないこと

を望んでいた︒デスピニジュレ婦人は︑後の遣贈により前の贈与の少なくとも部分的な撤回があったのであり︑自

分のために行われた遺贈は︑実際に︑自由分全体(‑五二四八フラン一五セント︶の上であれ︑あるいはゲノー夫

人への用益権として与えられた部分︵自由分全体の半分︶の上であれ︑これらのものを含む虚有権の遺贈を構成し

と主張する︒しかし︑こうした遺言の解釈は︑受遺者がゲノー夫人の死亡後にのみ︑遣贈から利益をうけ

るという注意を促した遺言書の単純な表現から︑控訴人が望むようには推論されることはできない︒そして︑夫婦

~

一九一六年︱二月一日付けの公正証書に

(15)

③  間の贈与は一般の贈与と異なり︑撤回が可能であるから︑遺贈と同じ扱いをすべきだとの控訴人の主張に対して︑

第三七巻第ニ・三号

控訴棄却﹁夫婦間の贈与は︑ただ撤回可能という事実ゆえに生前贈与としての性格を失うことはなく︑

とりわけ減殺という見地から︑最終の意思処分と同一視されることはできない﹂︒

フランスでは︑生存者間の贈与は︑受贈者の忘恩行為等を理由とした若干の例外があるものの︑原則として撤回が

不可能である︵仏民九五三条︶︒

的な生存者間の贈与とは異なり︑遺言処分に類似のもので︑生存者間の贈与に先立って減殺されるべきだ︑といった

問題が出てくる余地があった︒これに対して︑パリ控訴院は︑撤回可能ということだけでは︑通常の贈与とは異なら

破毀院民事第一部一九六一年五月二七日判決D.

19 62 ,  65 7.  

生存者間の贈与と称するものであっても︑常

被相続人ジュヌビィニープ・ド・アルグ

(G

en

ev

ie

ve

de

  Hargues) 

であるマリー・ド・アルグ

(M

ar

ie

de

  Hargues)

婦人︵ルラッソー

(G

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= 三 四

婦人は︑法定相続人として︑姉妹

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婦人など計四名と︑多額の財産を残して︑

氏の未亡人でもある︶︑甥

死亡した︒同年︱二月一五日に︑相続人の一人であるルラッソー未亡人は︑姉妹の相続への放棄書に署名した︒そ

翌年の一月二二日に︑唯一の法定相続人であるが不仲であった娘のマリーアントワネット・ルラッソーと︑

( L o u

i s )

と姪のガルドー

0

月一八日に ないと判示したのである︒ に撤回することができる︵仏民一

0

そこで︑控訴理由ともなっているように︑

ところが︑夫婦間の贈与については︑ 次のような判旨のもとに︑これを斥けた︒ 関法

(16)

に算入されるべきだ︑との判断に興味が惹かれる︒ 包括受遺者のラゴー分の計算のために︑母であるルラッソー未亡人の放棄の結果として︑被相続人の遺産から従兄弟姉妹たちが取得した財産を考慮に入れるべきだと言わせるために︑ソー未亡人の相続放棄は真意に出たものではなかったこと︑遺産額が多額であることを知らなかったなど︑多くの点を主張した︒アンジェ控訴院は︑人の具体的相続分を増加させるために行われた相続放棄は間接贈与となる︑など判示した︒そして︑自由分の計算のためには︑直接贈与もしくは間接贈与によって処分された物を︑贈与者の死亡時に現存財産の総体に擬制的に集合すべきであるとし︑支持したわけである︒

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) 

氏を残して死亡した︒そこで︑

ガルドーとラゴーを共同利害関係人に指定したり︑また︑

ルラッソー未亡人の相続放棄は本人の自由意思から出たもので︑また共同相続

ついで遺贈と贈与の減殺順序に関して︑判旨のような判断を下した︒破毀院は︑この判断を

上告棄却﹁もしも生前恵与と遣言恵与との全体が自由分を超過しているのであれば︑減殺は︑まず第一

ついでそれで不十分な場合には︑最後の贈与の上に行われなければならない﹂︒

破毀院判決は︑遺贈と贈与の減殺順序に関するアンジェ控訴院の態度を追認しただけで︑減殺順序は条文通りであ

り︑それ自体︑特に問題となるわけではなかった︒ただ︑相続放棄が間接贈与となり︑遺留分算定の基礎財産のなか

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控訴院一九七九年三月七日判決

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19 82 ,  19 5.  

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n)

夫人は︑法定相続人として︑夫と前婚から生まれた娘を残して一九七六年八月二三日 に遣言処分について︑

マリーアントワネット・ルラッソーは︑自己の遺留

(17)

の受益者である夫との間での遺産分割前に︑娘のショーペ のもっとも強い夫婦間の贈与︑

にのみ実行されること︑また︑ いいかえると︑自由分全体の所有権であれ︑あるいは全財産のうちの四分の一の完

全な所有権と四分の三の用益権であれ︑あるいは全財産の用益権であれ︑受恵者の選択によることとなる贈与を行

0

九四条の一︶︒第一審裁判官は︑夫のスガール

de s Ba rq ue s)

所在の不動産の優先分与請求について判断を下すことなく︑

由は︑ラガン夫人は︑夫への贈与に際して︑その贈与が負担を負うことになるに違いなかった一九七五年の遺贈の

ことを︑完全に意識していたからである︑という点に求められた︒

スガール氏は︑判決がスガール氏とラガン夫人の共通財産︑並びにラガン夫人の遺産の清算・分割を命じたもの

であり︑その手続きを︑ただし遣産の残余についての修正のために︑公証人であるオランド

(H ol la nd e)

氏に委ね

たものであるという点について判決を受け入れたが︑その他の点で控訴した︒

かじめ実行されるのは自分への贈与であり︑遺贈は︑もしも十分な処分可能の残余財産が明らかとなっている場合

ボルト・デ・バルクにある共有不動産の優先分与を主張することに根拠があるとい

い︑また不動産を評価するために専門家に委ねること︑清算公証人のところに当事者を移送することを要求した︒

ショーペ夫人は︑判決の確認︑ならびに上訴濫用を理由に︑また新民事訴訟法典七

00

条の適用に

スガール氏に対して︑二

00

0

フランの損害賠償を支払うように求めた︒ 遣贈を行っていた︒また︑同夫人は︑夫のためにも︑ に死亡した︒ラガン夫人は︑娘のために︑ 関法第一=七巻第ニ・三号

0

月ニ︱日付けの遺言書によって︑三万フランを含む特定

一九七六年六月︱一日付けの証書によって︑自由分について

(S ga rd ) 

(P or te

s  , 

遣留分権利者である娘と夫婦間の贈与

(C ha uv et )

夫人への特定遺贈の実行を命じた︒その理

つまり︑共有財産の清算後に︑あら によるポルト・デ・バルク

(18)

与を減殺する余地がある︒その結果︑一九七六年に合意された夫婦間の贈与は︑ 控訴院は︑控訴が形式として適法であること︑

スガール夫婦が法定共通制の規定の下に婚姻し︑ボルト・デ・バ

ルクにある不動産を婚姻継続中に取得したこと︑同夫婦がそこに住み続けてきたこと︑スガール氏はいまなおそこ

に住んでいること︑したがって優先分与に関する民法八三二条の諸要件を充足すること︑以上のことから︑

ル氏の優先分与請求が正当であると認定し︑遺贈の実行の前に贈与の実行を求めたスガール氏の請求も︑以下の理

由で正当と認定した︒

﹁民法九二三条の文言によると︑遺言処分のなかに含まれた財産価値をくみつくした後にのみ︑生前贈

特定遣贈の前に実行されなければならない︒これらの恵与は︑ 一九七五年の遺言の中に含まれた

いずれも遺言者の死亡に際して完全に効力を有する︒

夫婦間の贈与が︑夫婦の間での自由分から控除されると︑直ちに遺贈は︑もしも残っていれば︑その残額に行使さ

この判決には︑グリマルディ

(G ri ma ld i)

の浩潮な判例評釈がある︒まず彼は︑問題点を次のように明らかにする︒

つまりここでは︑将来財産の贈与︑あるいは契約による相続人指定という非常に特別な恵与が問題となっていた︒す

なわち︑授恵者は︑契約によって相続財産の全部もしくは一部を与える︒そして︑贈与と遺贈という二つの恵与が完

全な履行を受け得ないと分かったのは︑授恵者の死亡時であった︒贈与だけで︑全自由分を吸収し尽くしていたから

である︒そこから︑減殺を行う必要がでてきた︒まず最初に行うべきことは︑二つの恵与の減殺の法的順序を確定す

ることであった︒特定名義の遺贈の場合は︑因難はなかった︒というのは︑民法典は明らかに遺言処分の減殺の順序

を指示しているからである︵仏民九二三条︑九二六条︶︒将来財産の贈与︑あるいは契約による相続人指定が︑深刻

(19)

( 1 )   ( 2 )   ( 3 )   ( 4 )   ( 5 )  

(6 ) 

( 7 )   ( 8 )  

な問題を提示する︒

で︑それを減殺すべきなのか︒この明確な問題に対して︑

旨であると︒そして︑グリマルディは︑判決の動機となったのは︑九二三条の明確かつアプリオリな逐条陳述で︑主 たる古典的解釈であり︑これは説得力をもたないと批判する︒その理由として︑夫婦間で行われ︑かつ将来財産の贈 与は︑通常の贈与と比べて︑特殊性を提示しており︑十分な熟慮なしには︑補充的に考えて書かれた条文を適用する ことはできない︒贈与並びに遺贈の減殺の法的順位の根拠に関する熟慮により︑論理的必然性から︑遺言処分の順位 で︑夫婦間の将来財産の贈与を減殺することが︑説得力をもたらす︒それに︑破毀院は︑

決により︑すでに暗黙のうちではあるが︑

第三七巻第ニ・三号

つまり︑贈与の中の非常に特別な種類であるので︑民法典が通常の贈与について定めている順位

ボアティニ控訴院は︑

しかし確実に判断を下している︒ はっきりと解答を出した︒それが判

グリマルディの意見の要旨である︒確かに︑夫婦間の将来財産の贈与は︑

しかもその効力は遣贈と同様に贈与者の死亡時に生じることから︑通常の贈与よりも遣贈と同順位での減

殺が考えらる︒ともあれ︑この問題は︑フランス法での減殺順位をめぐるもっとも争いのあるところである︒

Ma rt y  e t  R ay na ud ,  D ro it  c i v il ,  L es   su cc es si on s  e

! e t   s   l i b er a l it e s ,  1 98 3

,  n

4 47 . Re pe rt oi re d  e  d r oi t   c i v il ,  1 9 7 5,   qu ot it e  di sponible, 

n

44 0. Ma ze au d,   Le c; on s  de   dr o i t  c iv i

̀ l  

t .   4 ,   v .   2 ,   1 98 2 n,  

°9 32 .  Te rr e  e t  L eq ue tt e, D  ro it   ci v i l 

! es   su cc es si on s 

! es   l ib e r al i t es ,   1 9 8 3,   n° 10 20 .  Ma rt y  e t  R ay na ud , 

p .  

c i t . ,  

n

447. Ma rt y  e t  R ay na ud

︑0

p .   c i t . ,   p .  3 40 ,  n ot e  (3 29  b i s ).   Lo ui s  Josserand, 

Co ur s  d e  d r oi t  c i v il   p os i t if   F ra n c ;a i s ,  to me

 I I I

,   1

93

  0 •

n° 17 31 .  Ter re   et   Le qu et te , 

p .

c i t   . ,   p .   9 22 .   note

4 .   6  

関法

一般の贈与と異なり︑常に撤回 ひどく過少評価された諸判

三 八

(20)

各遣贈の価値の割合に応じて︑

0

複数遣贈の割合減殺

複数の遺贈が存在する場合には︑たとえ別々の機会に行われた遺言の結果としてであれ︑すべて遺言者の死亡

このような複数遣贈の割合的減殺としてフランスで常に問題となるのは︑併存した包括遺贈と特定遺贈のいずれが先

に減殺の対象になるかである︒フランス古法では︑包括遺贈が先に減殺の対象となり︑特定遣贈は優先的に弁済され

た︒特定遺贈は︑特定遺贈だけで自由分を超過したならば︑その場合のみ減殺されたのである︒この点は︑

年の民法典制定時に︑両者を割合的に減殺することとして︑立法的解決をみたところである︒遺言書作成時期の先後

を問うことなく︑いずれも遺言者の死亡の日に効力を生じるからである︒結局︑各受遺者は︑自己の受遺分から︑比

(1 ) 

例配分して遺留分を負担しなければならない︒しかし︑以下の⑥判決でも明らかなように︑フランスでは今日でも両

者の先後関係が︑争いとなっている︒わが国では︑旧民法でフランス民法と同様の規定︑つまり包括遣贈と特定遺贈

とを問わずその価額の割合を以て総ての遺贈を減殺すべし︑との規定︵民法財産取得編三八八条︶が置かれていたが︑

明治民法では当然のこととされ︑あえて明規されなかった︒包括遣贈と特定遺贈の優劣関係は︑両者の差異の歴史的

な経緯を知らないわが国では殆どといってよいほど問題とならないところである︒

複数遺贈の割合減殺規定の適用は︑次の二つの場合には排除される︒まず第一に︑特定受遺者と競合する包括

(2 ) 

受遺者が︑同時に唯一の遣留分権利者であるならば︑割合的減殺の余地はない︒この場合︑全遺贈が自由分を超過し

ていなければ︑減殺の余地はない︒逆に︑自由分を超過していれば減殺ということになるが︑包括受遺者は︑遺留分 の日に遣贈の効力をもつことから︑

三二九 按分比例による減殺が行われる︵仏民九二六条︶︒

( 2 )  

参照

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