子どもに澄ける交流の発達(一)
一姿勢を中心とした乳児期の場面的・
人格的交流の一事例(K児の場合)一
荒 木 美知子
はじめに
人は他の人々との交流を通じて自分にっいての 意識を形成する。しかし、自己意識め形成は、他 の人々とのさまざまな関係をとり結ぶことによっ てのみならず、自分の身体にっいての意識や自分
の諸能力にっいての認識をも前提としているとい えるだろう。
人格形成におけるこの自己意識の意義は次のこ とにあると考える。っまり、それによって何より も自分についての尊厳の自覚と新たな可能性を追 求すること一それは欠点や弱点などの克服姿勢で
もある一それを可能にするということである。ま た他方で、他の人々と自分との関係、すなわち、
他の人々の中での自分の位置ともいえるが、それ を自覚することである。他の中の自分、自分の中 の自分というものを意識することによって自分の 行動や思考の見通しをたてることができる。
ところで、この自己意識は一定の年令になって 自然発生的に子どもに形成されるのではない。そ れは、乳児期から周囲の人々の多様な働きかけ、
年令や発達段階に応じた豊かな交流が保障される ことによってはじめて可能になる。中でも、乳児 期における交流の経験、また、それによる交流の 要求の形成こそが不可欠である。それは周囲の人 々、とりわけ、大人の意識的な子どもへの働きか けがあってはじめて可能となるのである。という のは、約1年の「生理的早産」をしている人間の 子どもは誕生からほぼ1年ないし1年半という長 い時間をかけて、人間たるべく基礎一歩行と言語
を獲得するのである。それによって、一定の社会
的文化を獲得し、継承・発展させる担い手となる ことができるのである。したがって、この乳児期 は、ある意味では、歩行や言語の獲得準備期でも ある。すなわち、この時期、子どもは言語以外の 表情や身ぶり、哺語などを使って、また後期には 物を介してまわりの人々と交流する。子どもはこ
れらの手段をも周囲の人々の交流によって形成、
獲得するのである。そして大事なことは、これを 駆使して周囲の人々と交流するという経験を通し て、その後の交流の要求の基礎をこの段階できず いていくことである。というのは、それによって 子どもが自ら能動的に外の世界、周囲の人々との 関係をとり結ぶことを可能にするのだから。そし て子どもは周囲の人々の言語を伴なった交流を通 じて、自らの言語を獲得することができるのである。
この期の交流の重要さは以上のことにあるといえよう。
ソビエトの児童心理学者、M・珂・リシナは乳 児期の交流を、場面的一人格的交流(または、直 接的一情動的交流)と名づけて抽出している。本 小論では、この期の情動的なものを介した交流に っいて、ある1っの事例を対象に検討することを 課題とする。
1節 乳児期の姿勢と交流について
M・M・リシナは場面的一人格的交流を、大人 と子どもの間の、他のいかなる物質をも介さない
(その意味で直接的な)、すなわち情動的なもの を媒介にした交流と特徴づけている。そして、事 物を介したものを次の発生形態、場面的=実際的交
鰍」膿第畿卿・峰膿)
一64一
それに対して、本稿において筆者は、乳児期の 姿勢の発達と交流の関係に注目してその変化のプ ロセスを検討することにする。その意味で事物を 介するかどうかにっいては特に問題にしない。む
しろ、後に具体的に見ていくように、大人の側が 最初、これを積極的にとり入れていくが、子ども の側の交流への一層の能動的な参加によって、事 物を介さなくなってくる。それゆえ、子どもが手 の操作性の発達に伴い事物を介することが、交流 の発達にいかなる意味をもつかなどの点について は検討していない。
ここでは、乳児期の交流を、場面的一人格的交 流として、姿勢を交流の発達の指標とするが、そ
の理由は次のことにある。
① 乳児期は次々に新しい姿勢・移動能力を獲 得する。それらを獲得しはじめの頃はまだ不安定 で、子どもは大人との交流を求めるより、もっぱ らその能力を確実なものにするかのごとぐ、ある いはそれをためすかのごとく飽くことなくいっま でも繰り返している。そしてそれが安定してくる
と、ふたたび人との交流を求めるようになる・そ の際、交流は一層多様になってくる。
② 乳児期はまだ言語による交流が不可能な段 階であb、そのために顔や声の表情、身体による 表現が主要な手段となる。顔と顔を見あわせ、目 と目をあわ焦声と声をあわせるなど、お互いに 相手と向きあうことによって交流が成立すること が多い。その際、姿勢によってそのあわせ方もさ まざまである。
③ 言語がまだ獲得されていないこの期の交流 の形態は、言語が獲得されて以降も独自な位置を もって存在し続ける。それは交流の基礎ともいう べきものである。すなわち、さまざまな姿勢を獲 得することによって、相手との交流に応じて自由 にそれらを駆使するようになるのである。それは 同時に、人々との交流の態度をも形成していくと いえるであろう。
2節 時期区分とその特徴
上記の諸点にっいてはさらに検討、吟味するこ とが必要であろうが、以上の点を踏まえて、乳児 期の交流を次の5期に時期区分することとする。
(表参照)
第1期 誕生から生後2〜3ケ月までの仰臥位 第2期 生後3ケ月以降5ヶ月までのダッコ中 心の時期
第3期 坐位がしっかりする生後5ケ月以降 第4期 生後7〜8ケ月ころになるとっかまり 立ちするようになるとともに葡旬という移動 能力をはじめて獲得する。
第5期 生後11ケ月から1才にかけて1人立 ちができ、前後に歩行の第一歩が踏み出され る。
この時期区分は以下検討の対象にする一っの事 例に即して行ったものであり、それゆえ固定的な ものではなく、今後変更される可能性がある。
以上の時期区分の各々の特徴を、K児(1980 年8月生まれ、女児)の誕生から1才までの具体 的な生育史からまとめてみる。
一65一
月 (週)
1 (5vの
2
(10w)
3
(1 4w)
4
(18W)
5
(23vの
6 −
(27w)
7
(3 lvの
8
(36w)
主な姿勢
仰臥位
〜〜〜〜
ダツコ
(仰臥位)
〜〜〜〜
坐
位
薯・つかまり立ち
〜
表 K−Aの成長過程
近づぐ人をジッと みつめる
表情・声など
鷲霧農たり醐錨
をあけて笑顔 に
軟い声が出てくる 布かけ「バー」に声をともなった笑顔
に
運 動 発 達
立て抱き好む
指しゃぶり
ガラガラ持たせると声をあげながら振 る
ひきおこして声かけに声と笑顔でこた える 1
イナイイナイバーに笑顔 人見知り(特定の人・場所に)
仰臥位で顔をみせただけで笑顔に 大人の話し声に動作中止する(授乳
中など) 1
仰臥位でガラガラに笑声をあげる マソマソ ヴエー 坐位でからだゆすられてあやされて笑
顔 i
一人で遊んでいる部屋にMが入ってい くと手足バタバタ
口とんがらせブー フー
坐位でイナイナイバーに期待の表情、
はじける笑顔
坐位で後ろから声かけに左右に振りか
える。
人見知り バイバイ(声と動作)にニ
ッコリ
坐位でやりとb多様になる※
抱かれようと両手差し出してくる
人見知り (後追い 甘 え
大きな声、かけあ いが長く続く
ダッターダッター
おむつはずすと手 足活発に
おもちゃを口に入 れる
両手打ち合わせ
坐位
坐位安定
(紙、ヒ:Fなどに 熱中)
坐位から伏臥位に 後ろヘズリ這い
坐位からズリ這い 伏臥位から坐位 葡 旬
っかまり立ち、坐 位のぐりかえし 伝い歩き
発達段階
回転軸 二可逆操 作期(9
〜12W)
回転軸 三可逆操 作期(17
〜20W)
示性数 一可逆躁作 期(2 4W)
示性数 二可逆操 作期(36樋
生 活 大勢の大 人の中で 生活
↓ ↑
親子3人
(日中は
主にMと
二人)
」L
↑ 叔母など 複数の大 人の中で
↓↑
親子3人
↓
↑
保育園
一66一
月 (週》 主な姿勢 陣・ことばなど 運 動 発 達 発達段階 生 活
バイバイに手が出かかる
9
ことばかけに動作でこたえる(ゴロソなど)
自分の要求に声出して大人を呼ぶ
葡 指さし マンマ、パンパ凶
Aンマ、ンマーなど
1
旬 声のやりとリ ア 「メンメ」に「コ 一アー、アババ、 マッタ」という表
●
パチパチなど自分 情
の方から 「じょうずじょう 坐位一伏臥位一仰
つ ず」と手をたたぐ 臥位くり返す 保
とうれしそうにす
か
る。「マソマ」 「ブー ま
遊んでいるオモチ
ブー」をまねる 示性数
O形成期 育
り
ヤ渡そうとするが 閧 出すとひっこ
(発達の
エ動力の
立 める
咜メ 2階から⑮の音がするとそちら
発生) 園
ち 一 士 をみる⑭が顔を出したとたん笑 戸
「1本橋コチ・コチ・」でから だをぐねらせ、 クスグルと声を あげて笑う
話しかけるように
「アーア」「マソ
マ」
タオルなどで顔をかく し「イナイナイ 10
(6月)
バー」に顔を出す。 くり返えすとおか しそうに笑う。
ハンカチ等おとすので「メッ」といっ てひろってもすぐおとし、おちた方の ぞく、また、 「メッ」 とテープルをた
たぐと、おもしろいとばかり笑いなが
らマネてたたく。 身体コソトロール
「イタダキマス」 と興味の持続
「ゴチソウサマ」
に手合わせる
「アッアッ」「ア 一アー」と呼びか けるように
指さしつっ「アッ
「チ・ウダイ」に アツ」 レ弥バ{」「イ 示性数
渡す タダキマス」「ネ 三可逆操
ソネ」「ゴロン」 作期
の声かけに動作 11 1人立ち
eーブル、 イスをはさんで(づかまり
立ち) 「イナイナイバー」に笑顔全 身で楽しむ
一67一
月 数 主な姿勢 表情・ことばなど 運 動 動 作 発達段階 生 活 指さし=ほしいもの 「マンマ」といい
つつ指さす フトンの上で1入
遊びの相手になる様要求(チ・チチ・チ 立ち何度も試みる
したら「チョチチョチ」といってやる。 保
一 シーッ・カーテンにかぐれて顔を出すと
人 「イナイナイバー」 といってやるなど) 育
立 園
ち 動作のぐり返しな
、
どに笑声よぐ出る
「ハイ」「アイ」 といいながら渡してく
れるものを受けとらないと怒る テーブル等あがる 指さし=目にとまる物に指さしっっ、 だけでなぐおりる
「アッアッ」 「ネンネ」と大 1人立ち安定 きな声 ダッコされると 「アッアッ」 と ゴロソゴロンと寝 指さしっっ、そちらへ連れていぐよう要 返り連続
求 パイパイが上手に
↓12
人みしり…大勢の大人にかこまれ泣き出
す。⑭が立っだけで遊びを中 夏
断して泣いてっいてくる 休
連れていってほしい所へ⑲の髪をひっぱ み
って起こし両手を出 して抱けと要求 エプロンもって「
ハイハイ」(食物要 田
求) 舎
「○○にハイツて渡して」と指さすと相手 で
に渡し、顛を振り返って確認
おぶりひももっ
一次元形
ャ期
てハイツ エプロンもって マンマという。
気にいらぬ事嫌な 事に首横に振って 拒否
おむつをしようとす ネソネ、マンマ、
ると笑いながらハイ (モウモウ)パツ ハイで逃げる
ノく追いかけっこ=おむっする時以外にも、 後ろから声かけしな 歩 がら近づくとハイハイ で勢いよく逃げる
i9月) 1才1 帽子を渡し外へ行くよう要求
↑言葉の混乱(マン 歩行10〜15m石
マをパッパ、チャ 箱などひろい渡す。
チャをタッタ) 自分の行きたい所 保
行 ネンネナイナイ ワソ へどんどん歩く。 育
甘え;ひざの上にの
ワンチャッチャ。 園
りかかってぐ 絵本でマーマー
る。
(モーモ→ワンワソ
大人のもっているものほしがるQマネ
(化粧、ブラシ等使って 8月から)
一68一
月 数 主の姿勢 表情・ことばなど 運 動 動 作 発達段階 生 活 保育園の往復歩きた
「チュー」(小鳥) がる ヵンシャク…思い通りにならない、 しから
れた時などに
歩
タンスや階段にかく
oー」をしてやると何度もくり返す。
れて顔を出し「バー」
uパッパー」それにあわせて「イナイナイ
保育
絵本が好き「モーモ
[」「ニヤニヤ」「 園
ワソワソ」
絵本見ながら目・耳
行 ・腹などさわる
「ニューニュー」(牛
乳)
すわっている⑭の後ろから顔を出し「バー」
後ろを振り向くと逃げていく。
近所の子とベランダから「ババー」 「キワ チャーン」 「チャーチャソ」と呼びあう。
M 母親 生後2〜3ケ月ころまでは、日中でも眠ってい
る時間の方が長い。したがって目覚めている少な い時間にしっかり相手をすることによって睡眠一 覚醒を明確にする。まだ首がすわらず不安定なの で、仰臥位のままで上から直接声かけやほほえみ で、またガラガラkどを介して相手にすることが
多い。
K児の場合、1ヶ月半までは大勢の大人の中で の生活という人生の第1歩を踏み出し、抱かれる 機会も多かった。そのせいか、1ケ月を過ぎるこ ろには横抱きにされるよb、上半身を起こして向 かい合って抱かれる抱き方の方を好むようになっ た(そして次の時期には一層顕著になり、しかも、
ベットに横にされるのを極端に嫌がるようになっ
た)。
1ケ月半以降は、多くの時間母子2人きりの生 活にkる。日中目覚めている間は、日光浴、散歩 など。おむつをかえ、乳を飲み、生理的要求が満 たされて機嫌のよい時に、声かけしながらあやす と笑顔になる、ガラガラを目の上でゆっくり振り ながら声かけするとニッコリ笑う、お腹をなでる
⑤ 父親
と笑いながら手足をバタバタさせる(1ケ月半〜
2ケ月)などしはじめる。また生後1ケ月には「
ンー」「マー」など軟い声も出はじめ、2ケ月前 後になるとよく出るようになる。仰臥位の状態で 大人の働きかけに応じて、ほほえみや声、また手 足をバタバタさせる、ジッとみつめるなどの形で
こたえはじめる。
次に第2期としてここでは抱かれた姿勢を特に 抽出したカ\これは子ども自身が獲得する姿勢で はないし、一般化することは必ずしも適切でない。
ただK児の場合、第3期に入る前に次にみるよう な特徴があb、第1期とも区別する必要があると 考えられる。そのためにあえて取り出すこととす
る。
生後3ケ月を過ぎる頃から日中の睡眠時間が急 速に減少する(図参照)。目覚めている間、ベッ トに寝かせられるのを嫌がり、抱かれていると機 嫌がいい。この頃より笑顔や発声がかなり頻繁に 出はじめ、相手をしていても手ごたえがあb、働 きかけが相互的になってくる。しかも首がすわっ てくるので、仰臥位で上からあやすという関係だ
一69 一一
けでなぐ、抱いたり、支えて坐わらせるというよ うに姿勢の変化に伴なってあやし方に¥、変化が出 て《る。例えば、仰臥位のK児をひき起こし、そ のまま両手を持って支え、坐らせて「イナイナイ バー」と言いkがらそむけた顔を向かいあわせる
と笑顔になった。さらにひき起こしただけで笑顔
211111
磨
時間
一一。 @総睡眠時間
〉←一一一× 7:00〜21:00
の睡眠時間 昼 寝
10 20 30
図 睡眠時間の変化
40W
に左り、声もよく出した(0:3:3)。このよ うに、ガラガラなどおもちゃを介さず声かけや顔 の表情だけで笑顔になり声も出すようにkる。
第2期はダッコの時期としたが、抱き方は子ど もの身体発達とともに少しずつ変わる。この 期の最初の頃、すなわち、3ケ月前後では、首は すわりつつある瓜背はまだ丸ぐなったままで、
抱いてももたれかかるようk状態である。だから、
抱く者との問に身体的に間がなく、顔をごく間近 にみて声かけするカ\顔を見あわせることkく、
したがって表情など無視して声かけしたりからだ を揺ることが多い。しかし、鏡を介することによ って2人の間にある程度距離をおくことができる。
鏡を介してのやりとbは次のようにkされた。
2ケ月前後では鏡をみせても特に反応を示さkい が、3ケ月を過ぎる頃、K児を抱いて鏡の前にす わり、声かけで注意をうながすと、最初ジッと鏡 の方をみっめていたカ\まもkく笑声を伴なった 一70一
笑顔にkった(0:3:3)。その後、鏡の前に
立たせるだけで笑顔になり、グズっていて¥、鏡の 前に連れていぐと笑顔になった(0:3:25)。
K児の顔をみて直接あやして》・笑わkいのに、鏡 に映っているK児の方をみてあやすと、すぐ笑顔 になった(0:3:28)。
ここでK児は鏡の何に注目したのカ\すkわち 鏡の中の自分の姿力\あやしている大人の方力\
それらの一部kいし全部なのかを明らかにするこ とはできない。ただ、鏡によってできた空間を利 用して(もちろん、一方では直接抱き、声かけk
どもしているのでそれも何らかの作用をしている と思われる)やbとりをすることによって一層笑 顔をひき出すことが可能となると思われる。
また、3ケ月の後半頃からは人の声に対して興 味を示し、乳を飲むのを中断して話し声の方をジ
ッとみつめるなどの姿が時にみられるようになっ
た。
このように日中の多くを抱かれる(したがって 母子が一緒にいる時間が極めて長い)時期を経て、
第3期の坐位中心の生活に入る。K児の場合、生 後5ケ月前後と比較的早い。そして一旦坐位が安 定してくると、周囲の物への関心が強まる。ジッ
と坐ったまま、自分のまわりにあるものに取りく むことに集中する。2〜30分も1人で遊んでい ることもある・(雑誌、紙空ビンやビニール袋な ど)。この期の大人との交流は、物に集中して取 りくんでいるその間にフッと目があい、それが何 度か繰り返されることによって行われることに典 型的な形で現われる。この第3期については、次 節で詳しくみることにする。
次の第4期には、っかまり立ちするようになる
とともに葡旬という移動能力を獲得する。ハイハ
イや伝い歩きができだすと動きまわることが多く
なる。この頃よb、K児には保育園という家庭と
は異なった生活も加わる。人見知りもこaまでで
最も強い(生後4ケ月頃にも人や場面に対して一
時期かなりきつい抵抗を示した)。家では、移動 能力の獲得によりかkりあちこちへ自由に動きま わるようになり、いわゆる「イタズラ」も激しく kってくる。母親などが同じ部屋にいると好きな ことを1人でしているのだが、立って隣りの部屋 へ行こうとするだけでも半ベソをかいて追いかけ てきたり、甘えてベッタリダッコされたがる、こ
ともしばしばみられるようになる。第3期に、1 人で部屋に放っておかれても、何かに熱中してい る間はまったく平気であったのと対照的である。
つまり、どんなに集中しているように見えてもい っさいを放り投げてっいてぐるのである。それで もしばらくすると、姿がみえている所や居間から 台所など見通しのっくところなら、それほどでも なくなる。
この頃は、声かけに対して動作で答える。「メ ンメ」に動作を止める(0:9:5)。 「ゴロン してごらん」にゴロノと寝返りをうつ(0:9:
7)Q 「イタダキマス」 「ゴチソウサマ」の声か けに手をあわせる(0:10:4)。
また、 「アーアー」と出した声に「アー一アー」
と答えてやると「アーアー」という、というよう に声のやりとりをいつまでもする(0:9:4)
「アーアー」など呼びかけるような声によるやり と9もこの期の特徴である。
「イナイナイパー」などK児の方からさかんに 求めるようになる。ハンカチやタオルkどで自分 の顔を隠すので、 「イナイナイ」 「パー」と声を かけてやるとうれしそうに何度もくり返し、笑声
をあげる(0:9:19)(0:10:4など)。
テーブルや椅子、カーテンなどにかくれてパーと いうように顔を出す。 「イナィナイパー」といい ながらのぞきこむように相手をすると、からだ全 体で楽しさを表現しながら何度も繰り返す(0:
10:23)。っかまり立ちの姿勢でのこのような やりとbがいろんなところで行われるようになる。
第5期は1人立ちから歩行を獲得しはじめる時
期である。生後10ケ月後半にできはじめた1人 立ちを、11ケ月前後になるといろんな場で試み るようになる。保育園の帰り道kどダッコを嫌が り(家から保育園までは10分弱、抱いて保育園 通い)、下におろすと立ってみようとする。少し 不安定なフトソの上はおもしろいらしぐ、畳の上 より好む。腰をフラフラさせながら立っていて、ゴロ
ンと倒れる。時には指さししたり、両手で積木を 持ちチ。チチ・チするなど余裕のあるところをみ せる(0:10:28)。
指さしもよく出る(0:11:20)。「アッァ ッ」とうるさいくらい声も出、指で話しをしてい ると思われるくらい頻繁に指さしをする。抱かれ て道を歩いていると、からだをあちこちに向け目 につくものを次々と指さしていく。家の中では指 さししてあちこちに連れていってもらうのがうれ
しい。
1才前後にたると、追いかけっこをよくする。
オムツをしようとすると笑いながら逃げる(1:
0:15)、後ろから声かけしながらソロソロ近 づいていくと勢いよく逃げていく(1:0:25)。
いずれもハイハイである。
1才1ケ月から2ケ月で歩行もかなりしっかり してくるが、特に歩行との関係では特別なやりとり はみられない。この頃から、少しずつことばの獲 得が顕著になりはじめ、交流は新しい形態へと移
っていく。
以上、大人との交流の変化について概観してき た。子どもは、姿勢や移動能力の獲得によってど んどん自分の世界を拡げていく。また手の操作性 などもその間に少しずつ巧緻性を増す。それと共 に、交流の内容も複雑になり豊かになる。何より も、子どもの側の能動性が増していく。初期の頃、
子どもは大人の働きかけに応えることが多かった 瓜それが相互的になるにしたがって長ぐ続くよ うになり、乳児期の後半には、子どもの側が先行 することも多くなる。それは最初、大人との交流
一71一
が他の生理的要求の充足とは異なる快的な状態を もたらすことを経験したこと、また子ど¥・が、自
らの諸能力・諸機能の獲得に伴kい、自ら求める ことができるようになったことによるものであろ
う。