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公開シンポジウム参加者からのリアクション

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Academic year: 2021

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公開シンポジウム参加者からのリアクション

大澤  紗都(法学部政治学科) 

今回、『シンポジウム「図書館・文書館の国際動向 2017」』にて、講師の先生方に第83回 国際図書館連盟年次大会や台湾図書館研修 2017 についてお話し頂きました。そのお話の中 では海外の図書館について触れることが多々ありました。今回以外の機会でも毎回、海外の 図書館を紹介して頂く度に、私は日本と海外の図書館の違いについて三つのことを感じます。

それは、①図書館員の図書館員としての自覚、②利用者の図書館に対する期待、③社会(自 治体等)における図書館の価値の捉え方です。この 3 点について述べていきたいと思います。 

まず、①図書館員の図書館員としての自覚です。日本の図書館員は、司書資格を取得せず に働いている方も多いということもあり、図書館員というよりも、アルバイトや自治体職員 という自覚の方が大きいのではないかと考えます。それに対して、今回、中村先生にご紹介 頂いたフィリピンやイランの図書館では、戦争下といった困難な状況で図書館の資料を守ろ うとするなど、図書館員が図書館員の自覚を持って働いているように感じました。図書館員 がその自覚を持っていないとしたら、日本の図書館は戦争下等の困難な状況に立ち会った場 合、どのような対応をとるのだろうかと思いました。 

次に、②利用者の図書館に対する期待についてです。今回、台湾図書館研修 2017 の報告 の中でお話頂いた台湾の図書館は、利用者のニーズを大いに実現しているように感じました。

そして、利用者のニーズという点から日本の図書館を見た場合、日本の利用者には図書館に そこまでさせる期待はあるのだろうかと思いました。日本の利用者は図書館に限定的なステ レオタイプのサービスしか欲していないように感じます。サービスは利用者の期待によって 成長する面もあるように思い、サービスの違いは、利用者の期待の違いでもあるのではない かと考えました。 

最後に、③社会(自治体等)における図書館の価値の捉え方についてです。ご紹介頂いた 海外の図書館と日本の図書館を比べると、割かれている財源の大きさに違いを感じます。紹 介されるような図書館だからということもあるかもしれませんが、明らかに日本よりも海外 のほうが多くの資金が図書館に使われているように思います。また、私は最近、就活のため、

県庁や市役所の採用説明会に参加しており、その中で、その地域の図書館員についてお話し て頂く機会が何度かありました。そこでは、図書館員を専門職ではなくゼネラリストの 1 つ と捉えている自治体や、図書館員の待遇が良くない自治体が多いように感じました。財源の 割かれ方や職員の立ち位置から社会が図書館の価値を見ると、日本社会において図書館の価 値がまだ十分に認められていないように思いました。 

日本の図書館が遅れていると言われる原因は図書館そのものだけではなく、図書館員、利 用者、社会もその一端を担っているのだと思います。そして、図書館が発展するためには、

その全てが変わる必要があるのではないかと考えます。三者が一体となって日本の図書館の 成長のため、互いに働きかけ合うことを期待します。 

   

水上  茉依子(文学部文学科日本文学専修) 

  今回の講演を聞いて 2 点気になる点があった。この 2 点から図書館の施設としての今後に

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公開シンポジウム記録 

‐ 83 ‐ ついて考察していきたいと思う。 

1 点目は COCKBRUN の図書館についてである。ドローンで撮影された図書館の紹介動 画を見て、環境に配慮した明るい建物である上に、電気自動車の充電所などがあり最新の技 術が集約されていることから、従来の図書館とは全く違うと感じた。建物自体が魅力的であ り、この空間に実際に行ってみたいとも思った。その一方で、コレクションにこだわって評 価されるような図書館ではないのかとも思った。紹介されていたのはあくまでも建物として の特徴であり、コレクションに関する強みや蔵書数については特に紹介が無かったことが気 がかりであった。 

2 点目は台湾の図書館について、最近リニューアルした図書館が多く、その中でも積極的 に電子媒体を取り入れていたことが印象に残った。今日ではデジタル化が進んでいるため、

電子媒体が使える施設があるのは便利だと思った。しかし、傾向として新しい図書館では従 来のコレクションよりも電子媒体の導入が優先されているようにも感じ、たくさんの資料を すでに持っているのにも関わらず図書館が電子媒体を積極的に取り入れる意味はどこにある のかとも思った。 

  以上の 2 点から私は図書館の存在意義が徐々に変わってきていると感じた。図書館は単に 資料の提供にとどまらず、最新の技術を取り入れることによって、地域のコミュニケーショ ンや文化の発信の中心になりつつある。このことは、図書館の新しい存在意義を作ると同時 に図書館は資料を利用できる場所という認識を無くしていくのではないだろうか。さらに、

図書館の建物や機能面が強化されるあまり、コレクションなどの資料そのものへの関心が薄 れてきているようにも感じた。このままでは、建物が中心となって考えられ、利用者の目的 に応えられるようなコレクションでは無くなってしまうのではないだろうか。現代のニーズ に対応していくのも重要であるが、コレクションのこだわりは持ち続けるべきであると思った。 

   

K.S.(文学部文学科日本文学専修) 

今まで「アーカイブズ学」という学問を聞いたことがなかったため、古賀崇さんの米国ア ーキビスト協会(SAA)年次大会に関する報告が特に興味深かったです。学習院大学の大学 院でアーカイブズ学専攻が設立されていたと知り、驚きました。米国では様々な大学でアー キビスト教育のコースが設置されているようですが、日本ではアーカイブズ学自体の認知度 が低く、アーキビストの養成があまり進んでいないのではないかと感じました。組織や個人 の活動記録を保存し、アクセスできる体制を整備することは、後世の人々がそれまでの政策 を参考にしたり、見直したりする際に非常に役立つと考えられるため、学問や専門職として の重要性が日本でも更に認識されるべきだと思います。また、行政の活動記録を適切に保存・

公開することによって、人々が政治の内部を知ることができ、政治家の不祥事を防ぐことに 繋がるのではないかと考えました。SSA 年次大会で紹介されていた国立公文書記録管理局

(NARA)は、大統領の文書の保存・公開に取り組んでいるとのことで、SNS 上のメッセー ジも対象にしている点が徹底していると思いました。保存する価値のあるものを選別する能 力、古文書から電子資料まで幅広いメディアを適切に保存する能力、記録を整理する能力が、

アーキビストの専門性を支えていると感じました。また、後世のために様々なメディアを保 存・管理するという点が図書館司書と共通していると思いました。 

また、国際図書館連盟年次大会のセッションで紹介されたグリーンライブラリーや、台湾

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のグリーン建築図書館のお話を聞き、海外では環境に配慮した図書館がトレンドであること が分かりました。台湾では e-book の貸出が普及していることや、外国人に対するサービス が進んでいることを知り、非常に先進的だと思いました。外国人が利用しやすい環境を整え たり、海外の資料コーナーを充実させたりするなど、図書館も国際化を図る時代になってい ることを感じました。本日の講演を聞いて、海外の図書館や学問を参考に、日本も独自に発 展していく必要があると考えさせられました。 

   

長谷川  毅(松戸市立図書館) 

  今回のシンポジウムの第 83 回国際図書館連盟年次大会の参加報告の中で、デジタルテク ノロジーの進展における人々の関係性の変容に対するライブラリアンの役割として「コレク ション・マネジメント」からコミュニティに関わる「コネクション・マネジメント」という 変化について述べられていた。このことについて公共図書館の立場から、コミュニティに関 わる図書館のアプローチについて所感を述べたい。 

コミュニティに関わるライブラリアンの海外の事例は、『図書館雑誌』2018 年 2 月号にお いて「ALA が展開する『地域を変革する図書館』プロジェクト:地域とともに歩む図書館の 新たな役割―」1) でも紹介されている。アメリカ図書館協会と地域改革を専門とするコンサ ルタントのハーウッド・インスティチュートとの実証実験「Libraries  Transforming  Communities(地域を変革する図書館)」において、図書館を地域変革のリーダーにするプ ロジェクトとしてライブラリアンが地域に出て地域のファシリテーターとして活躍している そうである。 

こういった、今までのような受動的な図書館サービスから積極的にコミュニティに飛び込 み、コミュニティに寄り添い一緒になって考えるライブラリアン2) をコミュニティに組み込 まれたという意味で「エンベディッド・ライブラリアン」3)と呼び、今後のコミュニティに 関わる図書館サービスとしての可能性が期待されている4)。 

また、アメリカだけでなく、カナダにおける図書館とコミュニティが協働するコミュニテ ィ主導型図書館サービス5) を担うコミュニティ・デベロップメント・ライブラリアンも同じ ように地域に関わるライブラリアンと呼べるのではないか。いずれも地域の課題解決を支援 するために様々なネットワークの媒介者としてライブラリアンがコミュニティをエンパワー メントする役割を担っている。 

日本でも文部科学省「学びを通じた地域づくりに関する調査研究協力者会議」の中で“住 民の中に入り込み、住民や NPO 大学、企業等の様々な主体を結び付け、(中略)地域課題を

「学び」に練り上げ、課題解決につなげていく人材”6) として「学びのオーガナイザー」の 必要性が議論されており、社会教育主事が人材として想定されているが、地域に関わるライ ブラリアンにもその役割が期待されると考える。具体的な日本の実践例としては、紫波町立 図書館は、ライブラリアンが地域へ出て農業に関する情報を仲立ちに人と人をつなぎ地域の 活性化や農業振興などに役立っている 7)。また、川崎市立宮前図書館の認知症に関するサー ビスは、地域に出向き当事者や家族の話しを聞き、健康福祉担当部局等の関係機関と連携し、

超高齢化社会というコミュニティの課題に対する支援を行っている8) 

図書館による地域コミュニティへの支援は、海外のみならず日本の各地でも行われつつあ る。人口減少や高齢化の進展などの社会状況の変化に伴いコミュニティが衰退化する中、知

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公開シンポジウム記録 

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識や情報を基盤とし多様なネットワークを持つ図書館において、ライブラリアン自身が地域 コミュニティに出て行き、深く関わり、地域の課題に耳を傾け、解決のために人や情報のネ ットワークをつなぎ、つなぎ直し、地域の課題に即したサービスを実行することで、図書館 がより良い地域づくりのための社会保障の装置となる。そのことが、地域とともに歩む図書 館の「コミュニティ・エンゲージ」と「コネクション・マネジメント」であり、これからの 社会にとって図書館がますます重要な役割を担うのではないだろうか。 

 

___________________ 

1)豊田恭子「ALA が展開する『地域を変革する図書館』プロジェクト:地域とともに歩む図書館の新 たな役割―」『図書館雑誌』vol. 112,no. 2,2018,p. 98-100. 

2)山本順一『図書館概論:デジタル・ネットワーク社会に生きる市民の基礎知識』ミネルヴァ書房,

2015(講座・図書館情報学②),p. 216-222. 

3)山本順一「アメリカの公共図書館のひとつのイメージ:コミュニティに寄り添う図書館」『桃山学院 大学経済経営論集』第 56 巻第 3 号,2015,p.  13-35.「エンベディッド・ライブラリアン」につ いては p. 22-24。 

4)鎌田均・家禰淳一・常世田良・孫誌衒・中村恵信・志保田務「能動的図書館サービスモデル,エン ベディッド・ライブラリアンをめぐって:アメリカにおける展開と日本における同様事項の追究」

『図書館界』vol. 69,no. 2,2017,p. 118-124. 

5)吞海沙織「講演  超高齢社会と図書館」『図書館界』vol. 69,no. 1,2017,p. 9-10. 

6)学びを通じた地域づくりに関する調査研究協力者会議「人々の暮らしと社会の発展に貢献する持続 可能な社会教育システムの構築に向けて  論点の整理」文部科学省,2017,p. 15. 

7)「図書館調査研究レポート no. 15  地域活性化志向の公共図書館における経営に関する調査研究」

国立国会図書館,2014. 

8)「図書館調査研究レポート no. 16  超高齢社会と図書館:生きがいづくりから認知症支援まで〜」

国立国会図書館,2017. 

参照

関連したドキュメント

第2条

[r]

・コミュニティスペース MOKU にて「月曜日 も図書館へ行こう」を実施しているが、とり

・「中学生の職場体験学習」は、市内 2 中学 から 7 名の依頼があり、 図書館の仕事を理 解、体験し働くことの意義を習得して頂い た。

British Library, The National Archives (UK), Science Museum Library (London), Museum of Science and Industry, Victoria and Albert Museum, The National Portrait Gallery,

[r]

保健学類図書室 School of Health Science Library 【鶴間キャンパス】. 平成12年4月移転開館 338㎡

 角間キャンパス南地区に建 設が進められていた自然科学 系図書館と南福利施設が2月 いっぱいで完成し,4月(一