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制度面からみる木質バイオマス発電の展開過程についての考察

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【論 説】

制度面からみる木質バイオマス発電の 展開過程についての考察

小 川 沙 有 里  

序  言

 木質バイオマスは,その燃焼熱を発電用,あるいは熱電併給用に利用する ことができ,それが木質バイオマス発電である.この発電の燃料となる木質 バイオマスを最近の林業経済の分野では,製材工場等残材,リサイクル木材,

未利用木材,の三つに大別している.本稿は,木質バイオマス発電が始まる 1960年代以降の日本において,このように三区分される燃料のうち,時代が 移りゆくにしたがって,どれがその中心的役割を担ってきたかに注目しつつ,

木質バイオマス発電に対する法制面について整理する.

 こうした視点に立つと,日本における木質バイオマス発電の展開過程は,(1)

「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(略称RPS法)

の公布以前,(2)RPS法の公布以降,(3)「電気事業者による再生可能エネルギー 電気の調達に関する特別措置法」(略称FIT法)の施行以降,の3つの期間に 整理できる.本稿では,まず各期の特質を述べ,2012年7月からはじまる第 3期における課題を考える.

 木質バイオマス発電は,森林や林業に直結した発電,あるいはそれに関わ りが深いものであることを連想させるが,従来は森林整備や林業に直接関係 するものではなかった.しかし,未利用木材を燃料とする発電施設計画が全

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国各地で次々と立案される第3期に至ると,木質バイオマス発電は森林整備 や地域経済の問題と直結するようになった.本稿の目的は,木質バイオマス 発電をめぐるこの新しい動きを検討することである.

1 木質バイオマス発電の展開過程

 日本の木質バイオマス発電の展開過程は,支援や規制の法制度の面からみ て,1960年代から2001年までを第1期,2002年から2011年までを第2期,

2012年から現在以降を第3期,と整理できる.第1期から第2期への移行を 画するのは,2002年公布のRPS法である.第2期から第3期への移行を画す るのは,2012年施行のFIT法である.これらの法律は,いずれも再生可能エ ネルギーによる発電の普及・促進を目的とするものである.したがって,そ のなかのひとつに数えられる木質バイオマス発電についても同じことがいえ る.

 各時期にとくに注目された,あるいは注目される燃料の中心は,順に一般 木材等,リサイクル木材,未利用木材である.林野庁による最近の分類に従っ ていえば,一般木材等とは,製材端材や輸入木材,ならびに稲わら・もみ殻 に由来するバイオマスのことをいう.なお,輸入される木質バイオマスも一 般木材等に分類される.リサイクル木材とは,建設廃材に由来するバイオマ スを指す.これに対し未利用木材とは,森林にある林地残材や間伐材であって,

かつ林野庁(2012)のガイドラインに従って未利用であることが確認できたも のに由来するバイオマスのことである.

1. 1 第1期(1960年代~2001年)の特徴:電力自給による経費節減

 NEDOと通称される新エネルギー・産業技術開発機構(2010)は,日本でもっ とも早く運転を開始した木質バイオマス発電として,1960年の王子製紙日南 工場(宮崎県に所在し,1960年当時は日本パルプ工業日南工場)を挙げている.二 番目に早いのは兵庫パルプ谷川工場で,オイルショック(第1次石油危機)が

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日本を襲った1973年秋から1年後にあたる1974年9月に運転を開始している.

両者ともに,黒液という可燃性のパルプ廃液による発電と木質バイオマスを 利用する発電設備である.

 このオイルショック以来,省石油・省資源が官民挙げての合言葉となった 社会的風潮のもとでは,木質バイオマス専焼の自家発電を取り入れることで,

一般電気事業者からの買電に伴う料金支払額を節約しようとすることは,木 質バイオマスという燃料が手元にある事業者であれば,自然な流れであった.

すなわち,1980年代の事例として,1980年に愛知県蒲郡市の住建産業株式会 社(現・株式会社ウッドワン,2002年10月に住建産業より社名変更)の蒲郡工場,

1981年に三重県一志郡美杉村(現・津市美杉町)の信栄木材株式会社,1985年 に広島県府中町の株式会社シンコー府中工場,1987年に広島県廿日市市の 住建産業株式会社・本社工場,1989年には同じ市内にある同社の串戸工場 が,それぞれ木質バイオマス発電の運転を開始している(株式会社ウッドワン,

2012,26頁).

 こうして木質バイオマス発電は徐々に普及しはじめるが,その初期を代表 したといえる合板メーカーの株式会社ウッドワンの場合,製品の原料は,同 社がニュージーランドに保有する同国の国有林(68,000ha)である.したがっ て,製品生産の際の副産物である木屑が,自家発電の燃料として活用されて はいるものの,その木屑は国内の森林や林業とは何ら関係がない.また,第 1期の木質バイオマス発電の例として,発電出力がより小規模な設備もある.

広島市の菅野製材株式会社の場合がそれで,木屑ボイラー2基,木材乾燥室,

自家発電プラント(400kW)の組み合わせからなる木屑発電プラント(林野庁 委託調査報告書,1981,695―698頁)を稼働させていた.ラワン材を主に扱って いたから,小規模な製材所とはいえ,国内の林業とはやはり結びつかない.

 ただし,第1期の木質バイオマス発電のなかに,発電所近辺の地域の林業 と結びついていたものがなかったわけではない.上述の信栄木材株式会社の 場合がそれである.三重県の旧・一志郡美杉村にある個人経営の製材所で,

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主に周辺地域のスギ材を扱っていた.スギの製材に伴って発生する鋸屑を耐 火レンガ造りの円筒形の炉に投入して不完全燃焼させ,その際に発生する木 質ガスを内燃機関に導いて発電を行う.発生電力で製材所が必要とする電力 を自給し,余熱も木材乾燥などに活用するコージェネレーションシステムで ある(清水ほか,1988;室田,1993,135―144頁).

 バイオマス発電全体のなかにおける木質バイオマス発電をみてみると,

2001年頃までは,施設件数においても,発電出力の全国合計についても,他 のバイオマス発電,すなわち黒液発電,ごみ発電に比べればそれらのわずか 半分にも満たない程度であった.

 この第1期に木質バイオマス発電を開始した事業者は,上述の例にも示さ れるように主として製材所や合板工場であり,発電のための燃料は主に端材 やおが屑であった.つまり,当該事業の主産物の生産にともなって必然的に 発生する副産物である.これの使い道として,畜舎の敷料などとして高く売 れるような場合は別であるとして,それをほとんど無料の自給燃料として木 質バイオマス発電設備で活用できたのである.

 制度面からは,第1期の終盤近くまでは,木質バイオマス発電に特別の政 策的支援があったわけではない.しかし,1997年に制定された「新エネルギー 利用等の促進に関する特別措置法」は,中長期的なエネルギーの安定供給の 確保や,地球温暖化問題への積極的な対応という観点から,新エネルギーの 導入を加速化するため,その利用等に関する基本指針の策定・公表,新エネ ルギー利用等を行う事業者に対する金融上の支援措置等を定めた.そこでの 新エネルギーは,最近の用語である再生可能エネルギーに対応しており,木 質バイオマスも新エネルギーのひとつであった.

1. 2  第2期(2002~2011年)の特徴:ダイオキシン規制などをクリアしての 事業展開

 新エネルギー等(再生可能エネルギーとほぼ同義)に関し,その普及を上述の

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1997年制定の特別措置法の範囲を超えて進めようとする動きは,2002年公布 のRPS法に結実した.この法律が定める制度をRPS制度ともいい,そのもと で木質バイオマス発電の普及が加速する.

 とはいえ,この法律のみが2002年以降の木質バイオマス発電の普及を進め たわけではない.法制度面からみると,RPS法を含む次の3つの法律が木質 バイオマス発電への取り組みを後押しした.

 1)建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(略称:建設リサイクル法)

 2000年に「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律 第104号)が制定された.この法律は,建設工事の際の分別解体,建設廃棄物 のリサイクル・減量化を促進し,資源の有効利用と廃棄物の適正処理を図る ことを目的とする法律で,建設リサイクル法とも略称される.詳細は省略す るが,これは「対象建設工事」と定義される床面積や工事請負代金の基準を 満たす建設工事の受注者に対して,工事現場における解体工事の施工の技術 上の管理をつかさどる技術管理者を選任することを義務づけている.それと ともに当該建築物に使用されているコンクリート,木材などの特定建設資材 を分別解体等により現場で分別し,そのことによって生じた特定建設資材廃 棄物は,原則として再資源化しなければならない,と定めている.

 これにより建設発生木材は再資源化のためチップ化施設へと流通すること になり,2000年には再利用率38%であったのが,早くも2002年には61%へ 急上昇した.この結果,まとまった量の木屑チップが確保しやすくなった.

このことが,木質バイオマス発電への取り組みを促す要因となった.

 2)ダイオキシン類対策特別措置法および改正廃棄物処理法

 1999年に「ダイオキシン類対策特別措置法」(平成11年法律第105号)が制 定された.その一方で「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律 第137号,略称:廃棄物処理法)の一部改正がなされた.この改正廃棄物処理法

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は2002年12月1日に施行されたが,これはその日までにダイオキシン類対 策特別措置法に基づく排出基準がクリアされるべきことを意味した.この基 準は,家庭用焼却炉を含め,すべての焼却炉に関し,空気取り入れ口及び煙 突の先端以外に焼却炉設備内と外気が接することなく,燃焼室において発生 するガスの温度が800℃以上の状態で廃棄物を焼却できるもの,などの条件 からなっていた.この厳しい規制が,産業廃棄物処理業者の統廃合を進め,

生き残った業者の間に,規制をクリアするための費用上昇分を,一般木材等 やリサイクル木材の焼却発電による売電収入でまかなおうとする動きを生じ させた.

 3)電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法

 2002年6月に公布されたRPS法は,2003年4月から全面施行された.こ のRPS法は,内外の経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切 な供給を確保し,また,環境の保全に資するため,電気事業者の供給する電 気の量のうち一定割合以上を,風力,バイオマス等の新エネルギーから得ら れる電気としなければならないとしたものである.この法律における電気事 業者とは,一般電気事業者,特定電気事業者,特定規模電気事業者のいずれ かである.電気事業者は,その義務を履行するに際して,①自ら発電する,

②他から新エネルギー等電気を購入する,または③他から新エネルギー等電 気相当量(RPS)を購入する,のいずれかを選択できる.これにより,新エネ ルギー等発電事業者が,電気事業者との取引により収入を得るための環境が 整備された.

 これらの三法は,リサイクル木材による木質バイオマス発電の普及を制度 面で後押しした.そうした発電所の具体的な事例については,伊東(2012), 大谷(2012),小川(2013,2014),渡部(2012a, b)などに詳しいので,本稿で は繰り返さない.

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1. 3 第3期(2012年以降)の特徴:FIT法による未利用木材燃焼発電の優遇  RPS法の下で新エネルギー等による発電が一定の社会的認知を得たが,そ れだけでは十分な普及をみるには至らなかった.このため,東日本大震災を 経て,促進策をさらに強めるべく,2011年8月にはFIT法が公布された.こ の法律は,再生可能エネルギーによる電気を一定期間にわたって全量固定価 格で買い取ることを電気事業者に義務づけたものである.この法律のいう電 気事業者は,RPS法の場合と同様で,一般電気事業者のほか,特定電気事業者,

特定規模電気事業者(新電力)を含む(以下,3つの事業者をあわせて電気事業者 という).

 2012年7月に施行されたFIT法は,太陽光,風力,水力,地熱,バイオマ スの5つからなる再生可能エネルギー(RPS法における新エネルギー等とほぼ同義)

を用いた発電者が発電した電気を,電気事業者に,一定の期間・価格で買い 取ることを義務づけている.このため,再生可能エネルギーによる発電に取 り組む事業者にとっては,設備投資など,必要なコストの回収の見込みを立 てやすくなり,新規の取り組みが促進されるようになった.木質バイオマス 発電はバイオマス発電に分類されるから,もちろんこの制度の適用対象であ る.

 電気事業者が再生可能エネルギーの発電者から買い取った電気は,送電網 を通じて一般消費者に供給される.そして,再生可能エネルギー電気を電気 事業者が買い取る費用は,電気を使用する一般消費者から,電気料金とあわ せて,賦課金のかたちで集められる.

 この制度に基づく電気の固定価格買取契約を締結し,電気事業者に電気を 販売するためには,それぞれの設備について,設置場所の地域を管轄する経 済産業局へ申請し,経済産業大臣の認定を受ける必要がある.発行される認 定通知書を添えて,電気事業者まで申し込まなければならない.こうして認 定を受けた設備をFIT認定設備という(深津,2013;安田,2014).

 FIT制度の下では,第 1 表にあるように買取価格の点で太陽光発電が著し

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く優遇されているが,木質バイオマス発電についてみると,未利用木材燃焼 発電にも高い単価,すなわち33.6円/kWh(税込み)が保証されている.この ために未利用木材燃焼発電に取り組もうとする事業者が一挙に全国各地に出 現している.

 こうした木質バイオマス発電の第3期の課題は,未利用木材,すなわち山 林に停滞している木質バイオマスを放置することなく利用することである.

収集・搬出しても素材としては価値が全くないかあるいは小さかったりする 木質バイオマスを発電燃料として付加価値をつけ,その一方で価値のある丸 太は加工原料として活用する仕組みを地域社会のなかにつくることである.

 これは,FIT制度が未利用木材燃焼発電からの買取価格を高水準に保つ,

すなわち上述のように33.6円/kWh(税込み)が維持されるという好条件の下 で可能になりうる.つまり,FIT制度は間伐を切り捨て間伐に終わらせるこ となく,搬出間伐を促進し,未利用木材燃焼発電に経済性を付与するように 第 1 表 FIT制度下のバイオマス発電と太陽光発電の買取価格(1kWhあたり;2013年度)

買取価格(円) 買取期間

バイオマス発電

メタン発酵ガス化発電 40.95

20年間 廃棄物(木質以外)発電 17.85

未利用木材燃焼発電 33.6 一般木材等燃焼発電 25.2 リサイクル木材燃焼発電 13.65

10kW以上 42 20年間

10kW未満 42 10年間

ダブル発電(10kW未満) 34 10年間 参照)小川(2014),89頁を参照して作成.なお,買取価格は調達価格ともいう.

備考) ダブル発電とは,太陽光発電と都市ガスによるコージェネレーションを組み合わせたシステ ムのこと.この場合のコージェネレーション設備は,天然ガスを用いた小型の燃料電池であ るのが普通である.太陽光発電単独の場合よりダブル発電による電気の買取価格が安いのは,

ダブル発電では非再生エネルギーであるガス(天然ガスなど)を部分的に使っているからで あることには注意しなければならない.

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機能しうる.

 しかし,現行のFIT制度の下では,輸入木質チップを燃料とする木質バイ オマス発電であっても,一般木材等による発電と同等のものとみなされ,電 力の買取価格は25.2円/kWh(税込み)である.これは未利用木材による場合 よりは低い価格設定であるものの,リサイクル木材による場合の13.65円/ kWh(税込み)より高価な買い取りとなっている.このため,木質チップを大量,

そして安価に輸入し,既存の石炭火力発電の設備を備えた事業所などで売電 そのものを目的として混焼発電,あるいは輸入バイオマス専焼の発電を行え ば,採算のよい事業となりうる.

 そのような木質バイオマス発電が日本各地の森林整備に全く結びつかない ことは明らかである.したがって,FIT制度が現状のままで適正に機能しう るのかについての検討は,今後おおいに議論すべき課題である.

2 木質バイオマス発電の件数・出力の推移と今後の展望  日本における木質バイオマス発電につき,発電施設の総数,発電出力合計 の歴史的推移をみると,次のようになる.

 第1期には,主業務の副産物としての木質バイオマスがある場合に,そ れを燃料として有効利用した発電を行えば経費節減ができる見通しのある事 業所において,徐々に取り組みが進み,施設総数も出力も増加していった.

2002年頃から,燃料が無料でなくとも,木質バイオマス発電で採算が見込め るような法制面での整備が進み,急速に発電施設の件数が全国的に増えていっ た.これが第2期である.これら第1期,第2期を通じて,2011年3月末ま でに,発電施設は127,出力合計は122万kWに達した(小川,2014).  その頃から関係者の間では,FIT法の成立とその行方を慎重に注視するよ うな動きが強まり,木質バイオマス発電の運転開始は,しばらくみられなく なった.既述の通り,FIT法の公布は2011年8月,施行は2012年7月であ り,この時期には木質バイオマス発電の事業化を構想している事業者の多く

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は,FIT制度の下で木材の分類(一般木材等,リサイクル木材,未利用木材)ごと に買取価格がどの水準に定まるかなどの点について様子をうかがっていたの ではないかと推察できる.

 安藤(2014,4頁)は,2013年4月末現在で「稼働している発電所(FIT以 前稼働分と沖縄県を除く)は,未利用材使用が岩手県の株式会社ウッティかわ い(5,800kW),福島県の株式会社グリーン発電会津(5,700kW),長野県の長野 森林資源利用事業協同組合(1,500kW),大分県の株式会社グリーン発電大分

(5,700kW),それ以外の燃料使用が高知県のイーレックス株式会社(29,500kW)

であり,合計5件(計4.8万kW)とまだ少ない」と分析している.

 これらが第3期の初期を示す例である.これらのうち,長野森林資源利用 事業協同組合は,すでに「いいづな お山の発電所」を1号機として2005年 4月から稼働させており,安藤が上記の文章で触れているのは,その1号機 ではなく2号機のことである.また,高知県のイーレックスについていうと,

2008年までは太平洋セメント株式会社が木質バイオマスを石炭と混焼する発 電設備を稼働させていたのであるが,セメント事業が不振となり,設備をそっ くりイーレックスに譲渡したものである.引き継いだ設備では,インドネシ アやマレーシアから輸入したPKSを燃焼する木質バイオマス発電所を動かす こととしたのである.ここで,PKSとはPalm Kernel Shell(パームヤシ殻)の ことである.

 本稿の定義では,第3期は2012年から始まる未完の期間である.この第3 期にどれだけの木質バイオマス発電所が稼働することになるかは未知数であ るが,バイオマス産業社会ネットワーク(2014)の『バイオマス白書2014』は,

上述の5例を含む全部で60件の既稼働・建設中・計画中の木質バイオマス発 電所があるとしている.これに対し,安藤(2014,5頁)は81件と推計している.

 この件数のくい違いは,後者が,実現可能かどうか,展望のはっきりしな い場合でも,計画をマスコミ等へ報道したものすべてを数え上げていること から生じている.また,後者は,運転開始予定年度は不明とはしながらも,

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福島県の飯館村,南相馬市,安達郡,双葉郡などに未利用木材を燃料とする 発電所の建設予定があることを挙げている.しかし,福島第一原発事故によ る放射能汚染を考えると,これらの地域で建設計画が進むとは考えにくい.

したがって,『バイオマス白書2014』の挙げている60件という事業計画数が 妥当と思われる.

3 未利用木材の意味と雇用増加の可能性

 第3期にすでに稼働しているか,今後において稼働に至るかする木質バイ オマス発電所の多くが,未利用木材燃焼発電所であるから,未利用木材の意 味を明確にしておくことは重要である.この点を論じた梶山(2013)を参考に すると,2,000万㎥あるとされている国内の未利用木材については,性質の異 なる次の二つに大別して論じることが重要である.すなわち,未利用木材は 林地残材と林内放置丸太の二つにわけてみる必要がある.

 まず,林地残材とは,「木材伐採現場では,枝条(細い木や枝葉の部分)など の林地残材が大量に発生するが,従来は用途がなく,林地に放置されていた.

FITを契機に林地残材のバイオマス利用が進めば,森林資源の付加価値を大 きく底上げすることができる」(梶山,2013,9頁)と特徴づけられるものである.

 他方,林内放置丸太(以下,単に放置丸太)とは,「『未利用木材』には,た とえ製材や合板,製紙用に使える木であっても,路網が未整備であったり,

人材育成が間に合わなかったり,機械の整備が遅れているなどのため,間伐 しても運び出されないで切り捨てて林内に放置されている丸太も含まれてい る」(同上,9―10頁).

 以上のように,未利用木材を林地残材と放置丸太とに分けて考えるとき,

次の指摘が重要となる.すなわち,「放置丸太は本来,製材や合板・集成材に も使えるものもあり,運び出すにしてもバイオマスというよりは,その用途 に応じた利用がなされるべきである.ところが,放置丸太も林地残材も含め

『未利用木材』とされたため,未利用木材のバイオマス利用とは,一般には放

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置丸太を運び出して燃料として利用するものと理解されている」(同上,10頁).  参考までに,最近の薪ストーブを考えるとき,それによく用いられるホワ イトチップとは,丸太を砕いて作られる高級な木質燃料である.しかし,ストー ブのように屋内でわずかな木質燃料を燃やす場合とは異なり,木質バイオマ ス発電ではより大量の木質燃料を屋外で燃やすのが普通であり,その燃料と してホワイトチップのような高級品は不要である.むしろ資源の無駄遣いに ならないとも限らない.つまり,「発電所が丸太から作るホワイトチップを主 燃料とする場合,林地残材利用も進まず,資源の最適利用が阻害されるばか りでなく,バイオマス利用のチャンスを林業資本が活かせなくなる懸念があ る」(同上)のである.

 要するに,木質バイオマス発電における未利用木材の利用は,林地残材を 活用する場合に林業資本の利益となり,その存在基盤である地域社会の利益 にも貢献しうる.ここで林業資本とは,「森林所有者,森林組合,木材生産を 請け負う林業会社など.ただし,製紙会社や木材事業者と結びついた森林所 有者や林業会社は,木材需要者の利益を代表するので,林業資本とはみなさ れない」(同上,10頁,脚注).この点への注意は,木質バイオマス発電と森林 整備の今後の関係を考察する上で不可欠である.

 林業資本が未利用木材燃焼発電の担い手になるならば,発電事業による地 域雇用が直接に,また派生して拡大する可能性がある.大手企業の参入によ る大型の発電設備の建設や産廃処理業者と手を組んで広域にわたる燃料収集 を行う,という方式では,地域社会の内部に雇用を持続させることができない.

これとは反対に,域内の林業資本が設備投資を行って発電所を建て,経営す るならば,異なる展望が開けてくる.

 たとえば,林野庁(2012)は次のように述べている.すなわち,「木質バイ オマス,特に森林由来の間伐材など地域の未利用資源をエネルギーとして利 用することで,資源の収集や運搬,バイオマスエネルギー供給施設や利用施 設の管理・運営など,新しい産業と雇用が創られ,山村地域の活性化にも貢

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献します」というのである.この表現はまだ抽象的だが,農山村の現場で木 質バイオマス発電が実行される例の増加とともに,地域社会と木質バイオマ スとのつながりが様々なかたちで強まるであろう.

結  語

 日本の木質バイオマス発電は,1960年代から始まった.当初は,鋸屑など の廃棄物(一般木材)を自家発電の燃料に利用して電気代を節約する試みとし て,少数の製材所や製紙工場で導入された程度で,それに対する政策的な支 援はなかった.

 1990年代後半からのいわゆる環境問題への意識の高まりのなかで,行政の レベルでは新エネルギーと呼ばれ,やがて一般的に再生可能エネルギーと呼 ばれるようになる非化石燃料への社会的関心が徐々に強くなっていった.人々 の目につきやすいのは,屋外に設置される太陽電池パネルや風力発電装置で あるが,木質系の産業廃棄物も木質バイオマスという新しい名の下に注目さ れるようになった.

 一般に,化石燃料系の発電に比べて再生可能エネルギーによる発電は割高 である.この状況に抗して電気の総供給量に占める再生可能エネルギー電気 の比率を一定割合以上に保つには,行政の支援が不可欠であり,これに踏み 込んだのが2002年公布・翌年施行のRPS法である.

 2002年から2011年までは,このRPS法のもとで木質バイオマス発電がほ ぼ全国に広まっていった時期である.その燃料としては,以前と同様に一般 木材も使われたが,建設リサイクル法によって建設廃材の分別収集が進む過 程で,リサイクル木材を産業廃棄物処理業者から購入して発電所を運転する 取り組みもみられるようになった.

 しかし,RPS制度では木質バイオマス発電を展開するにおいて限界のある ことが次第に明らかになってきた.一般木材等やリサイクル木材の発電用の 供給量はすでに頭打ちとなっている.そのような時期にあたり,未利用木材

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の活用を構想する事業者も登場してきている.とはいえ,山林にある未利用 木材の発電利用は,燃料の収集・搬出が高くつく.このため,未利用木材の 燃焼による電気を高価に買い取るFIT制度が導入された.これが森林の乱伐 ではなく,その整備に資するものとして運用されることが求められている.

 なお,最新の動きとして,「電気事業法等の一部を改正する法律」の法案が 2014年5月20日に衆議院で可決され,6月11日には参議院で可決された.6 月18日には,平成26年法律第72号として公布されている.

これは

 一 電気事業法の一部改正  二 商品先物取引法の一部改正

 三  電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法 の一部改正

の三つの法律に関わる改正で,特に一が重要である.一の主な内容は  「1  現在,一般電気事業者にしか認められていない家庭等への電気の供給

を自由化する.

  2  電気事業の類型を見直し,発電・送配電・小売の事業区分に応じた規 制体系へ移行する.

  3  一般送配電事業者に,受給バランス維持,送配電網の建設・保守,最 終保障サービス,離島のユニバーサルサービス等を義務付ける.」(経 済産業省,2014)

である.これが2016年から実施されることになった.

 上記の二,三の改正については,別な機会に論じるとして,この法改正に より,木質バイオマス発電は一般家庭にとって従来よりはるかに身近な存在 になる可能性がある.たとえば,一般家庭が,木質バイオマスによる発電者 から電気を調達する特定規模電気事業者(PPS)と契約を結び,直接にその事 業者から買電する,ということができるようになるのである.この場合,送 配電設備を持たないPPSであっても,従来の一般電気事業者(電力会社)に対

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応する一般送配電事業者の送配電設備を,利用料を支払って使うことができ るので,一般家庭への送配電に支障が生じることはない.

 これまでの電力地域独占体制は,大規模発電優先に傾いていた.この電力 小売全面自由化は,木質バイオマス発電をはじめとする分散して設置するこ とが可能な小規模発電を普及させるのに資するであろう.

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【参考ウェブサイト】

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  http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform004/

pdf/20140611_03.pdf(2014年6月30日最終確認)

(17)

林野庁(2012)「木質バイオマス発電・証明ガイドラインQ&A」(平成24年8月31日版)

  http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/pdf/hatudenriyougaidorainqa.pdfg(2014 年 6月13日最終確認)

(おがわ さゆり・同志社大学経済学部助教)

(18)

The Doshisha University Economic Review, Vol. 66 No. 3 Abstract

Sayuri OGAWA, Institutional Survey of the Development Process of Woody Biomass Power Generation

  The institutional development process of woody biomass power generation in Japan can be divided into three periods: (1) before the introduction of the renewable portfolio standards (RPS) scheme, (2) during the use of the RPS scheme, and (3) during the use of the feed-in tariff (FIT) scheme. This type of power generation, which mainly used general waste wood and recycled wood in periods (1) and (2), did not have a direct connection with forestry activities. However, unused wood- fuel power generation construction projects have been numerous in period (3) since 2012. This study investigates the possibility of the contribution of such power generation to the forestry economy of mountain regions.

参照

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