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傷つけられた女の話

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傷つけられた女の話

著者 スウィフト ジョナサン, 田中 光夫

雑誌名 主流

号 40

ページ 68‑79

発行年 1979‑03‑25

権利 同志社大学英文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014929

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傷 つ け ら れ た 女 の 話

ジョナサン・スウィブト 作 回 中 光

は じ め に

この小品は,スウィフトの手になる最初のアイルランド問題関係の著述 と言われているが,書かれた年は正確には伝わっていない.おそらく1707 年頃であろうと言われているが確証はない.この小品はどういうわけかス

ウィフトの存命中に刊行されず, 1746年に,ロンドンのグーパーと言う出 版屋によって始めて世に出た.周年ジョージ・フオークナーによって,ス

ウィフト著作集の第八巻に組み入れられている.

この作品は,ある婦人から一人の紳士へあてた手紙と,その返事から成 り立っている.恋人に裏切られ,酷使され,なおかつそれに耐えねばなら ぬ婦人の悶々とした繰り言に託して,スウィフトはアイルランドに対する 芙本国の虐待の酷烈さを訴える.ここでは,裏切られた婦人がアイルラン ドであり,その不実な恋人がイングランドを象徴している.更に,スウィ フトは,不実な男の今一人の恋人と言う形で,スコy トランドを登場させ,

この三者の関係をアレゴリカルに明示している.1707年の5月,イングラ ンドはスコットランドと合体したが,この事実も,ここでは不実な恋人と,

その今一人の恋人と,つまり傷つけられた当の婦人のライバルとの結婚の 約定という形で言及されている.アイルランドを出し抜いて行われた,イ

ングランドとスコットランドの結合は,スウィフトにとっては極めて不快 であったと想像される.

この小品は,以後,彼の生涯の多くの時闘を費して書かれ続けた一連の

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傷つけられた女の話

アイルランドもののトップを切るものとして重要であるだけでなく,その 類推の妙といい,調刺の冴えといい,短いながらも傑作と呼ばれるに足る だけの長所を持っている.彼のアイルランドものの多くは,後年に於て書 かれた『控えめな提案jJ

(A Modest P r o p o s a

りを除けば,間接的調刺の 色彩を持つ殆んど唯一のアイルランド関係作品と言ってよく,更に,

w

控 え目な提案』がアイルランドを表に出して繰り広げられていることを思え ば,純粋な意味での間接的調刺の唯一の例とも言えるものである点で,一 読に値いするであろう.

なお,底本として用いたのは

TheP r o s e  W  r i t i n g s  o f  J o n a t h a n  S w i j t

,  Vol.  9

Irish Tracts : 1720‑1723 and Sermons

, "  

ed. Herbert Davis 

(Oxford: Basil Blackwell, 1968), pp. 3‑12である.

傷 つ け ら れ た 女 の 話

一ーその身の上を語る手紙とその返事一一 一一様.

私は恋人の不貞と不親切の為に,全くうちくだかれてしまった者ですが9

私の不幸の数々をありのままにてらいなく書いてみたいと存じます.それ は欺舗に満ちた世の男どもをあまり信用しないようにという,信じやすい 乙女達への警告として有益であろうと思うゆえでございます.

近所の紳士が二人の恋人をもっておりまして,それがさる婦人と私なの ですが,彼は私達二人ともに対して恋人らしく, もっともな愛を装ってお りました.私達三人の家は互いに近く,彼の家は私の家と川ひとつ隔てて 立っており,私の競争者とは古いこわれた壁によって隔てられておりまし た.でも,この紳士が私に対してどんなひどい扱いをしたかということの 詳細にふれます前に,まず,私と私の競争者との正しく公平な性格の紹介

をいたしたいと思います.

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先方の彼女の容姿については,背が高くやせていて,まるで姿がよろし くありません.ぷさいくな上に,顔色も悪い.その息は臭しその他,色 々ないやなにおいがします.それらは,生来の身持ちの悪さゆえにいっそ う耐えがたいものになっているのです. と申しますのは,彼女はいつも不 潔で,かゆみの絶えたことがないのです.他の性質につきましては,彼女 は善行,正直,誠実,礼儀などの点で一度も良い評判を取ったことがござ いません. もっとも,彼女の教育の程度を思えば,何も不思議はないので ございます.彼女の話すことといえば,ガミガミ言うことと,にくまれロ をきくことだけなのです.以上,おしなべて申しますと,彼女は貧乏で乞 食ぜんとしており,行く先々でこそどろ暮しをして,かろうじてささやか なたつきを得ているのであります.彼女にぞっこん執心の紳士につきまし ては,彼女は彼に消しがたい憎しみをいだいております.彼女は面とむか つて彼をののしり,誰の前でも彼に悪態をつきます.彼女の家によく悪漢,

泥棒,スリのたぐいが来るのですが,彼らにかの紳士の雌鳥をうばわぜ,

穀物や家畜をさらわせ,ありとあらゆる悪事を行わせているのも彼女なの でございます.彼女はこれらの悪党どもの先頭をきってやって来て,彼が 頭の先から足の先まで痛みを覚えるまで殴り蹴ってから,自分の仕掛けた 難儀の故に,金を払うよう強要したということでございます.ある時など,

一群のならず者どもを伴って,かの紳士の家に押し入り,何もかもそこに ある物をメチャメチャにひっくり返し,家に火をかけたりしました. と, 同時に,彼女は彼の召使どもの間で多くの嘘をつきまして,その結果仲間 同士の喧嘩となり,その為に彼の哀れな執事は頭を殴られたのでありまし た.私はもちろん,このへん一帯の人間は,その原因は彼女にあったに違 いないと思っているのでございます.彼女の人格といいますと,つまると ころは彼女は私どもとは別個の宗旨の人で,もっとも卑しく,また毒のあ る長老派でありまして,英国国教会には常に憎悪の念をいだいているので ございましょう.でも,はっきり申しますと,これは私ども常に教えられ

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ているところですが,結婚ともなれば,肉体とともに精神の方も完全に結 合するのでなければならないのでございますまいか.

さて,これから私自身の性格を,少しばかりお話しいたしましょう.謙 遜と真実をむねとしながら.

私は悲しみと虐待ゆえに青白くやせ細るようになるまでというものは,

このあたりでも並ぶ者のない顔立ちをしていると言われたものでございま す.今でも私は相当美しく,不細工な所など何もないつもりでございます.

けれども,今や私を見る人々は,私がかつては相当な器量よしであったな どとは到底認めないのです. と中しますのは,ずいぶんと変りはてた姿に なった上に,不注意とそれから著物がない為に私はいつも群衆にもみくち ゃにされて,普段着でうろついているからでございます.このようなこと に加えて,夜、は大層豊かな家に生れましたが,私が今耐えております抑圧 の下で,そのことは全く無意味になっておりまして,それが私の不幸の数 々の原因となっているのでございます.

数年前のことでしたが9 かの紳士が私の容姿かあるいは財産に好き心を いだきまして,私に言い寄りました.私は当時,若年でしかも愚かでござ いましたので,いともたやすく受入れてしまいました.彼が私に非常に優 しくしてくれそうに思えましたのと,彼の話しぶりがひどく魅惑的であり ましたことなど手伝って,私の貞操と徳はたわいもないすばやさで破れて しまいました.そして,語るもはずかしいことでございますが,またこの ようなきびしい反省を起こさせる問題を,これ以上くどくどしく繰返さな いために,このことだけを申します.私は信じやすい処女達に対して用い られる常套の手段でもって,なかば力づくで,そしてなかば私の同意によ って,結婚の厳粛な誓いの後で台無しにされてしまったのでございます.

彼は一旦私をものにしてしまうや,幸運すぎる恋人の役を演じ,あらゆ る場合に権威を示そうと気取り,征服者よろしく振舞うようになりました.

まず,彼は私どもの家族の管理について,あら捜しをいたしました.なる

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程,私の家族は無知で無学な者達の集りで,決して最上とはいえないので ございます. と申しますのは,私ども当時は世間のことをほとんど存じま せんでした.私は彼に従って彼の生活のやり方に合わせることに同意いた しました.彼の執事が,私どもの家族を支配することを認め,その執事が 指図できる副執事を自由に雇うことにも同意いたしました.ところが,私 の愛人はそれだけで済ませるどころか,何人かの古い召使や小作人を追い 出し,その代りに彼の家から他の連中を補充などいたしたのでございます.

こういった連中がひどく散慢で道理をわきまえなくなったものですから,

平安などはあ弓たものではございまぜん.私が聞く話といえば,絶えず喧 嘩のことだけ,それも私どもにはどうすることも出来ませんのに,あの人 はすべて私が悪いのだと申しております.そして,ことあるごとに,私ど もの身内を遠ざけ,その代りに彼が他にどうにも使いものにならないよう な連中や,彼の部下どもを私に与えつづけたのでございます.恋心に負け,

ゴタゴタや争いをさける為もあって,私は彼の横領的行為をすべて甘んじ て受け,抵抗することは無駄とさとりまして,私の新しい召使どもの機嫌 をとって,彼らを私の利益の方へと引きつけることこそ最上の策と思いま した.私は自分の食卓から最上の食物を彼らに与え,新しい小作人達に私 の所有地の極上の場所をあてがい,彼らをおしなべてしごく親切に扱いま したので,彼らは彼らの主人と私を同程度に愛するようになりました.時 がたちますうち,私の古い召使達は,彼の選んだ者以外には私の囲りに一 人もいなくなり,小作人も一人,二人を除いて皆彼の選択による者のみに なりました.でも,幸いなことに,私は寵しい扱いゆえに,彼らの大部分 を自分の側に引き入れることが出来たのでございます. ところが,彼がこ のことに気づきますと,たちまち語調が変りました.そして,私に関して 問う人がありますと,彼は私が彼の家族の古くからの扶養者であり,彼が 自分の用事を処理する為に今の位置に置いたのだ,などと申すのでござい ます. しかも,彼はその言葉どおりの態度で私に臨み始め,次第に,態患

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さを欠く行為を私に示すようになったのでございます.私は彼がある朝ひ どく厳粛な調子でぶった一席を,終生忘れることはないでございましょう.

彼は,私がいかに被から大なる恩を受けているかを語りました.彼の手下 の多くを私の為によこしもしたし,私に作法などを教えもした, というの でございます.そして,私を養うのに,私の{直打の十倍もの犠牲を払った,

だから私が呪われるか,火あぶりにされるか,海の底に沈むかすれば, ど んなに故にとって良かったであろう,彼が負担した金額のいくらかでも払 い戻す為に,私が出来るだけ生活を切りつめるのは当然至極のことだ,今 後,彼の言葉はあらゆる場合,私にとって絶対であると思え,私が盗人や 強盗にそなえて,見張りの者を雇っておいて,彼が時たま私の挙動をさぐ る為に差向けた彼のえり抜きの監督,警官,その他には給料を払うべきだ,

これらの費用を私がより良〈負担しうるように,私の小作人達は,彼らの 商品すべてをJffを渡って彼の町の市場へ運び、入れ,川の両岸で通行税を払 い,それらの商品のすべてを半値で売るべきだなどと申したのでございま す.さらに,私達が卑しい種類の人間なので,私達が手をつけた物には,

彼は手を触れぬ,又,彼の身内の者達を雇う仕事が必要だから,私達はす べての原料を加工せずに,彼の市場に送らねばならぬ,例えば, ミルクは 牛から搾りたてのものを,チーズやパターに加工ぜずに送り,麦は麦穂、の ままで,草は刈ったままで,羊毛は羊からつみ取ったままで送らねばなら ない,そして果物は,私達の汚い手の触れたものを,彼が食べることのな いように,枝になったままでもって来なくてはならぬ, もし,小作人が運 ぶ途中でたとえパンとチーズをひと切れでも食べたとしたら,あるいは彼 の靴下を直す為の琉毛糸を一インチでも取ったなら,彼はその荷を残らず 没収する,そして,私達の間の川には,一群の悪党どもが巣くっていて,

その連中が私の小作人達から荷物や舟を奪い取るので,彼は手下の船頭に 被らを守ることを命じましたが,その船頭のやり様は,かわいそうな小作 人達が略奪に遭うまで,遠く離れていることだったのでございます.船頭

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はその後で盗っ人どもに追いつき,盗まれた物を合法的な商品として,彼 の主人と被自身の所へ持ち込むのでした.でも, ~皮が私に課した何百とい う困難を,ここで繰返していては際限もございますまい.彼が私や家族を 抑圧して,それが彼の小僕に何んらかの利益となると想像しましたならば,

たといその利益が如何に小さいものでも,彼は一瞬のためらいもなくそれ を行うというのが,常のことでございます.これらのことどもが私を家庭 内であまりに卑小な,軽蔑さるべき地位に落としめましたので,私が最多 額の給料を払っている召使達でさえ,そして,もっと有益な骨地契約して いる借地人の多くでさえ,離れていってしまって,私の愛人のところに住 むようになりました.けれども,私は彼らに給料や賃貸料を払い続けねば なりません.その為に,私の収入の三分のーが彼の所有地の為に使われ,

残りの三分の一以上が通行税や市場に使われ,私の哀れな借地人達は貧窮 のどん底に沈みこんで,私の身分にふさわしく私を養うことも出来ず,私 を暖める衣服も見つけることが出来ず,彼ら自身の生きる為の必需品さえ 備えることが出来ない{立でございます.

私と愛人との間がこのような状態でありましたおりもおり,私ほ, ~皮が 私の競争者に対し,先頃から性急な結婚の申し込みを行って,ついには彼 らの間にある誤解が生じるに至ったという報せを受け取ったのでございま す.彼女は彼に悪罵をあびせ,彼との関係をすべて断っと脅迫いたしまし た.一方,彼の方はといいますと,私に対・する勝利に勇気を得てか,はた また,被女を私同様おとなしいあほうとみましてか,最初のうちは高飛車 に事を運ぼうと思いましたが,彼女が密かに私と同盟して,彼に当ろうと のもくろみがあると聞き知り,また私がそれを直ちに受け入れるのではな いかと,当然ながら疑い,設は非常に慌てたようでございました.この時 こそ,と私は思いました.寛大と愛の偉大な実例を示すべき好機ではない かと.それで,それ以上の考慮を払うこともな<,私は彼に申し送って,

彼と私のライバルとの間の雲行きがあやしいと聞いて,過去のすべてのい

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きさつにもかかわらず,又,彼を私に都合のL、ぃ何らかの条件に縛りつけ ることなしに,私は彼に味方をして彼女に対しよう,財布に一銭でもある 限り,質入れするベチコートー着でもある限りは,世間をも相手どろう,

と伝えたのでございます.私の主な小作人達も,この伝言を支持してくれ ました.そしてそれがあまりに力を発揮いたしまして,たちまち彼女は彼 に対し従順になりました.そしてその結果はと申しますと,彼らの間に結 婚の約定が結ばれ,式の為の礼服が購入され,あとは儀式を残すのみとい う運びにまでなりましたが,それが何日かの間,のびのびになっています のは,彼らがその結婚式を公式なものにしようとしているからなのでござ います.私の愛と,誠実と寛大さにむくいるのに,彼は彼の馬丁や召使い の裁縫婦の役目をおしつけたのでございます.さもなくぼ,私は飢えるば かりでございました. しかし,このような不幸な状態のただ中にありまし ても,私はこののぼせあがった男がかの不評判な女に自分で身をまかせて しまうのをみて,あわれみを覚えずにはおられません.と申しますのも,

彼女がいかに装おうと,ただいまこの瞬間にも, もし彼女がそう望めば,

ある大そうなお方の,そのお名前は伏せておきますが,情婦に喜んでなる だろうことは知れきっているのでございますから.私どもに関しては,私 のみならず,国中そう思っておりますが,彼は何かに取り濃かれておりま す.少なくとも,私どものうち何ぴとといえども,彼女が彼に魔法をつか ったか,又は一服盛ったのでなければ,いったい被女のどこが彼に気に入 ったのか,想像することすら出来ない次第でございます.

私が,彼との親密な交りを自分から求めたことのないことは確かでござ いますし,私が他の申し込みを受けることも出来たということも立証でき ます.いや, もし私が尻軽になれば,泰然とお高く構えている人々も喜ん で受け入れるような,そんな申し込みがまいったことでございましょう.

でも悲しいことに,私,そんな邪念をいだいたこともございまぜん.私が 望むことと申せば,僅かな安らぎを得,この訳のわからぬ男の迫害から自

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由になり,彼が私にささやかな財産を私の利益になるように管理していく ことを許してくれること位でございます.その為には,私は毎年彼に相当 な額の,彼が抑圧によって得るものより,はるかに多い額の年金を支払う ことも辞さない覚悟でございます. と申しますのは,つまるところ,彼が 私と私の小作人達をあまり干しあげ過ぎますと,私ども,彼と自分らの為 にとっておくべき一銭もなくなることになり,そうなれば,彼が大損する ことに彼自ら気付くでございましょう.ああ,ほとんど忘れかけておりま したが,彼が私に課したことの中に,我慢のならぬ条項がございますので,

あなたにでも,あるいはどんな道理をわきまえたお方にでも,それが我慢 のなるものか,ならぬものか,聞いていただきましょう.私はあなたに前 にも申し上げましたが,古い契約で,私は彼と同じ執事をもつことに同意 いたし,その時,彼が正式な文書で示し,私も是認したように,彼と同じ やり方で,私の家庭や資産を切りまわすことに同意いたしました. ところ で,今や彼がこの約定に与えるのが適当だと思っている変更は,途方も無 いものでございます.と申しますのは,彼が自分の家庭で,将来に備えて 定めるにふさわしいと思うような体制は,どんなものであっても, もし彼 が望むならば,私の助言を問わず,又,私の方の理由も聞かす、に,私の家 庭に押しつけることが出来るなどと,勝手に考えているのでございます.

それで,いくら私が借地契約をいたしましても,また家政のために指示を 与えましでも,彼が好きな時に思うようにそれを取り消してしまえば,そ れでおしまいなのでございます.このことが,私を混乱と不安におとし入 れておりまして,私の召使達は,如何なる場合に私の意に従ってよいのか 弁えず,私の小作人達も,彼らの多くは善良でありますが,途方にくれて いる次第でございます.

どうやらこの憂うつな話題について,少し Lっこすぎましたようです.

でも,私の人生の幸福が,この一事にかかっていることを思って,どうか お許し下さい.しばらくこの問題を考えて頂きまして,私が思慮深さと,

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77  正義と,勇気と,名誉をもって,いかなる対策を講じて,かの不親切な不 貞な男から私が受けている難難と,厳格な行為から,私の自由と財産を守 っていけばよいかについて,あなたの最上の助言を頂きますことを,ひと えに願いあげる次第でございます.

3しこ 傷つけられた女への返信.

拝啓,お手紙を受け取り,逐一綿密に吟味いたしました.以後,ご自身 の安全の為に,どうなさればよいかについての私の意見を述べてみましょ う.ただ,まず次のことを述べることをお許し下さい.それは,かの紳士 があなたの恋敵とおこす,いかなるいさかいにおいても,あなたが被の肩 をもとうと申し出られたことは,言い訳の余地のない弱さそのものであっ たということです.あなたもよくご存知のように,彼女は彼がかつてあな たに対して行ったと同様のことを,彼女にもしようとたくらんでいはしな いかと,危倶し始めたのです. もしも,あなたに人並みの思慮深さがあれ ば,むしろあなたは,彼女と組んで,彼が少くとも何らかの納得のい〈条 件に応じるまで,彼にあたる方法を講じられるべきでありました. ところ が,あなたのかの婦人に対する克服し難い憎しみのゆえに,あなたの憤慨 があまりに激しすぎて,それがあなたの破滅の因となってしまいかねない 事になったのです. しかし,考えていただきたいことは,あなたの彼女に 対するこの嫌悪の情は,彼女があなたの敵対者になるずっと以前から芽ば えていて,あなたとあなたの家族にとって,その気持はかつては彼女を大 いに嫌っていた彼,すなわちあなたの恋人,に対する一種の追従のような ものになっていたということです.その時以来,彼女があなたの領分へ侵 入することによって,あなたが相当難儀なさったことは確かですが,かと いって,彼女はあなたを支配しようとしたり,あなたに指図しようなど としたことは,一度もなかったのです. ζう し て 今 や , あ な た は 新 し い

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敵を自分で作ってしまわれたのです.あなたには,彼女が夫との信頼関係 において,あなたに成しうるあらゆる悪業を数えあげることも出来るでし ょう.しかしながら,あなたは何の挑発も受けておられないのだから,彼 女に真正面からの対決を望むことをしないで,しばらく静かに座し,沈黙 していらしたなら,その紳士は全くの恐怖から,あなたへの厳格な態度を 和らげるはめになったでしょう. あなたのこの心弱さを, あなたは寛大 などと言われますが,私はこの件にはもっと何かがあると疑っています.

つまるところ,私はあなたがおそらく囲りの何者かのよこしまな意見の為 に,そのような処置にでられたのだろうと,当然ながら思っているのです.

というのは,私の知るところでは,あなたが親切に接してこられた何人か の小作人や召使達は,圏中でも名うての折紙付きの悪党なのです.私はあ なたとあなたの競争者たるご婦人の聞に,ある点において特に大きな違い がある事を認めざるをえません.我と我が身を明け渡してしまったあなた は,他に守るべき何物もないと考え,それゆえあなたは最初あなたがその ために降伏することになったその条件さえ,今では主張なさらないのです.

あなたはよくご存じでしょうが,この数年来,あなたの恋敵は同じような ことを,しかも何の条件もなしにやって来たのです.いや,それどころか,

かの紳士は彼女を未婚のまま放置していて,そのくせ彼女に食費と住居費 を払わせたのです. ところが,たまたま,彼のところの執事が不在で,彼 の家庭も混乱していたとき,彼女は密かに逃げ出し,ある男に一晩おつき 合いしてやり,その次の日には,その男の白の前であっかましくもそれを 否定するという,町の女性達の聞でよく知られているトリ yクをつかった のです.でも,もう取り返しのつかないあなたの過去の失敗についてあな たを非難したところで,あとの祭りです.私は事実はあなたの述べられた 通りで,確かなものであることを知っています.それが公正に述べられて いることも.私は次のごとく助言します.あなたの小作人達を都合のつき 次第集め,以下の決定事項について彼らに同意を求めなさい.

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傷つけられた女の話 79  第一.あなたがかの紳士と同じ執事をもつべきことと,あなたの家庭を 伎との合意の方法でおさめるべきことを規定している昔の協定の範囲内の ことは別として,それを越えてあなたの家族も小作人達も,かの紳士に依 存しないこと.

第二.あなたが望まぬ限り,あなたの生産物を彼の市場に運ばないζと.

またそれをどこへなりとも運ぶことをさまたげられないようにすること.

第三.あなたが給料を払っている召使達は,あなたの家に住まわすこと.

違反者はその地位を失うべきこと.

第四.あなたが小作人とどんな借地契約をしようとも,それを無効にす る権限を彼に与えないこと.

もし,彼が以上の条項に同意するならば,あなたとして出来るだけ寛容 に,教区と郡に金銭的な寄進をなさるようおすすめします.私ははっきり

と断言いたしますが,彼の何人かの最も有能な小作人達や召使達は,あな たに対する主人の過酷な扱い方に反対しており,機会があれば喜んで残り の連中に自分らの間違いを確信させることでしょう.ただしこれもあなた の側に落度のない場合のことですが.もし,かの紳士がこれらの正当,か っ理にかなった申し出に不同意を示すなら,私にそれを知らせて下さい.

そうすれば,たぶん, もっと効果的な何らかの方策を考えるでありましょ

っ .

敬 具

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