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発達障害乳幼児の夜間睡眠における眼球運動と発達指数の関係

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Academic year: 2021

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(1)

発達障害乳幼児の夜間睡眠における眼球運動と発達指数の関係

芝 垣 正 光

1)

発達障害乳幼児の夜間睡眠ポリグラフから、REM睡眠中に生起する眼球運動量と発達指数(DQ) の関係を調べた。被験児は男子 16名、女子 11 名計27名で、その生活年齢は 4 ヶ月 ~1 歳 9 ヶ月 (0 ‑11ヶ月16名、 l歳11名)、発達指数 (DQ)の平均と標準偏差 (SD)は54.8と19.1で、あった。

その結果、 REM睡眠中にREMを伴った20秒期間の割合 (%EM20)が大きい者はDQが高かった。

さらに、 %EM20が大きい者はREM睡眠の出現割合が多かった。このことは、 %EM20は発達障 害乳幼児のDQと関係しており、 %EM20が発達障害乳幼児の発達障害の水準と関係しているこ

とが示唆された。

Key words ;発達障害乳幼児、夜間睡眠、眼球運動、発達指数

1.はじめに

健康な成人であれば、一夜に4‑5回くらいREM (rapid eye movement)睡眠が起こる。 REM睡眠の 一回の持続時間は約20分くらいである。一夜で全 睡眠時間の約20%の割合でREM睡眠が起こる。健 康な乳幼児では、 REM睡眠は成人に比べて多く一 夜に15‑20回くらい起こる。一回の持続時間は成 人に比べて短く約15分くらいである。一日で全睡 眠時間の約30‑40%の割合でREM睡眠が起こると いわれている。

とのREM睡眠中では、名前の由来となっている 急速眼球運動 (REM)が起こる。 REM睡眠で人を 覚醒させると、「夢を見ていた」と報告があり(大 熊、 1994)、この夢見の内容とREMの関係も調べら れてきた。これらは健康な成人の報告であり、子ど もについての報告 (Espie& Tweedie, 1991; Espie, 

Paul, McFie, Amos, Hamilton, McColl, Tarassenko, 

& Pardey, 1998)、さらに発達障害児についての報 告はこれまでに非常に少ない (DiomediCuratolo,  Scalise, Placidi, Catretto, & Gigli, 1999; Shibagaki & 

Sawata, 2004)。とのような状況の中で、 Feinberg ( 1968)は知的障害者の夜間睡眠中のREM睡眠中に おけるREM出現割合とWPPSIの得点に、正の相聞 があることを報告した。つまり、 REMの出現割合 の多い者はWPPSIの得点が高かった。しかし、この 報告における被験者の年齢が17.6‑59.8歳であり、

子どもでの報告は彼の報告以後なされていなし1

)名古屋産業大学

‑19‑

そこで本報告では、発達障害乳幼児の夜間睡眠ポ リグラフを検討し、 REM睡眠中に生起する眼球運 動の出現割合と発達指数 (DevelopmentalQuotient:  DQ)の関係を調べることを目的とした。

11.方法 1 .被験児

対象児は27名(男子16名、女子11名)の発達障 害乳幼児で、概要を表 lに示した。対象児の夜間睡

1 各被験者の生活年齢及び発達指数

Subject  Sex  Age  Developmental  Quotient  H.K.  4mo.  36  R.S.  6mo.  74  H.M.  6mo.  88  T.K.  M.  6mo.  75  K.H.  M.  6mo.  48  Y.T.  7mo.  48  K.S.  8mo.  79  R.T.  8mo.  42  Y.Y.  9mo.  42  Y.S.  10mo.  46  K.K.  10mo.  68  Ke.K.  11mo.  86  K.I.  11mo.  56  Y.I.  11mo.  16  K.Y.  11mo.  57  Y.H.  11mo.  60  S.E.  1yr.  62  S.U.  1yr.  36  Y.T.  1yr.1mo.  35  K.T.  1yr.2mo.  42  K.Y.  1yr.3mo.  60  M.K.  1yr.4mo.  67  T.A.  1yr.4mo.  67  Y.Y.  1yr.6mo.  57  M.T  1yr.6mo.  79  T.I.  1yr.7mo.  30  M.H.  1yr.9mo.  23 

M=54.8;  SD=19.1  Note.Thedevelopmental quotient was obtained by the Tsumori  Inage questionnaire for infants and children (1979). 

(2)

2 指標聞における相関係数

(N)  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  1.  Age 

2.  Sleep period time  3.  Total sleep time  4.  No.Stage REM  5.  Average Stage 

REM length  6.  A verage Stage 

REM cycle length  7.  % Stage W  8.  % Stage 1  9.  % Stage 2  10.  % Stage 3  11.  % Stage 4  12.  % Stage 3 and 4  13.  % Stage REM  14.  EM20 

15.  % EM20  16.  EM density  17.  00 

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27  ‑26  ‑41*  13  ‑20  ‑42*  ‑002  14  ‑25  ‑28  ‑42*  24  16 28 ‑42'30 73 84"

46 11 45' ‑22  ‑21  ‑03  ‑15 

‑41'  ‑01 32 20 ‑09  ‑02  ‑05 

18 ‑09 40' ‑17  ‑09  04  ‑05 

06  ‑09  08 14 14 10 ‑01  26  ‑53"  ‑38  36  ‑08 11 14

72'

76 84"

04  49 59 25  30  39 21

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• ** p <0.01 

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眠脳波記録時における生活年齢の範囲は4ヶ月か らl歳9月であった (4ヶ月一11ヶ月16名、 l歳 11名)。津守・稲毛の乳幼児精神発達質問紙による 発達指数 (DQ)の平均と標準偏差 (SD)は54.8と

19.1であった。

2.方法

披験児は入院時における検査のーっとして、夜間 睡眠脳波記録検査を受けた。被験児は睡眠に影響を 与えるような投薬を受けていない。脳波記録は、睡 眠導入剤を使用せずに各児の病室(温度25‑26度、 湿度50‑70%)で授乳、あるいは夕食 (18時前後) 後から翌朝自然覚醒するまで連続記録された。脳波 記録と同時に各児の様子を詳しく知るために、眼 球運動、心電図、呼吸曲線、オトガイ筋電図が記 録された。なお、紙送り速度は15mm/秒、脳波記 録は時定数を0.3秒、増幅感度を5mm/50μVとし て行った。覚醒、睡眠段階1‑4 (non‑REM; NREM  睡眠)、 REM睡 眠 は20秒 ご と にRechtschaffenand  Kalesの マ ニ ュ ア ル (1968)にしたがって分類さ れた。 REM睡眠中にREMを伴った20秒期闘を、全 睡眠時間で除したした値 (%EM20)、DQおよび睡 眠パラメータの関係をピアソンの相関係数で求め た。それらは睡眠期間時間(夜に眠り始めてから翌 朝自然覚醒するまでの時間)、全睡眠時間(睡眠期 間時聞から中途覚醒時聞を引いた時間)、 REM睡眠 の出現回数、 REM睡眠持続時間、 REM睡眠出現サ

イクルの平均時間、 (REM睡眠の始まりから、次の REM睡眠の始まりまでの時間)、中途覚醒時間(睡 眠期間時間中に覚醒した時間の総和)、睡眠段階、

1, 2,3,4およびREM睡眠が睡眠期間時間あるい は全睡眠時聞に占める割合である。

III. 結果

図1はREM睡眠中におけるREMを伴った20秒期間 の割合 (%EM20)とDQの関係を示している。表2 は年齢、睡眠パラメータとDQの関係を示している。%

EM20とDQの関係をピアソンの相関係数でもとめ、

有意性の検定の結果、有意差があり、この%EM20が 大きい者はDQが高かった (r=0.39p<0.05)。

100 

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10  15  20  25  30 

Percent eye movement activity 

1 00に対してプロットされた%EM20 

図2はこの%EM20とREM睡眠の出現割合の関係 を示している。 %EM20とREM睡眠の関係者Eピアソ ンの相関係数で求め、有意性の検定の結果、有意差

‑20‑

(3)

があり、この%EM20が大きい者はREM睡眠の出現 割合も多い者が多かった (r=0.76p<O.O 1) (表2)。

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10  15  20  25  Percent eye movement activity 

図2 REM睡眠の出現割合に対してプロットされた%EM20

図3はEM20と年齢の関係を示している。 EM20 と年齢の関係をピアソンの相関係数で求め、有意性 の検定の結果、有意差があり、このEM20が小さく なると年齢が高くなっていた (r=‑0.50p<O.O 1) (表

2)

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Eye movement activity 

3 年齢に対してプロットされたEM20

図4はEM20と睡眠期間時間の関係を示してい る。 EM20と睡眠期間時間の関係をピアソンの相関 係数で求め、有意性の検定の結果、有意差があり、

このEM20が大きくなると睡眠期間時聞が多くなっ ていた (r=0.65p0.01)(表2)。

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図 4 睡眠期間時間に対してプロットされたEM20

30 

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図5はEM20と全睡眠時間の関係を示している。

EM20と全睡眠時間の関係をピアソンの相関係数で 求め、有意性の検定の結果、このEM20が大きくな ると全睡眠時間が多くなっていた (r=0.70p<O.O 1)  (表2)

800  700  600 

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100 

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2

・ ・ . . ・.  . 

Eye movement activity 

5 全睡眠時間に対してプロットされたEM20

図6はEM20とREM睡眠の出現割合の関係を示し ている。 EM20とREM睡眠の出現割合の関係をピア ソンの相関係数で求め、有意性の検定の結果、有意 差があり、乙のEM20が大きくなると、 REM睡眠の 出現割合が多くなっていた (r=0.72p<O.O 1)  (表

2)

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6 REM睡眠の出現割合に対してプロッ卜されたEM20

まとめると、 %EM20とDQ REM睡眠の出現割 合の関係をピアソンの相関係数で求め、有意性の検 定の結果、有意性があり、乙の%EM20が大きい者 はDQが高く、 REM睡眠の出現割合が多かった。さ らに、 EM20と年齢、睡眠期間時間、全睡眠時間、

REM睡眠出現割合の関係をピアソンの相関係数で 求め、有意性の検定の結果、有意差があり、乙の EM20が小さくなると年齢が高くなり、大きくなる と睡眠期間時間、全睡眠時間、 REM睡眠の出現割 合が多くなっていた。

(4)

I V .

考察

これまでの報告によれば、 REMは新しい情報の学 習と記憶に関係していると言われている (Feinberg

1968)スペースシャトル打ち上げ直後の初期睡眠 機関におけるREMの増加が報告されており、それ は宇宙飛行士が新しい環境であるゼロGへの適応を 開始する学習過程を反映していると推測されている (大熊、 1991)。

本報告のREM出現割合がDQと関係していたこと は、次の仮説を示唆している。それは、睡眠中に 脳は認知機能に対して、重要な仕事を行っている (Feinberg, 1968)。この仕事は記憶と問題解決のよ うな認知面に対して、行われていると考えられる。

このような仕事の電気生理学的な付随物として測定 されたもの、本報告の%REM20は知的レベルの指 標を提供することが明らかにされた。少なくとも、

この%EM20は発達障害乳幼児のDQで示された認 知障害の程度によって変わっていた。もちろん、相 関からこの因果関係を推量することは、さらに検討 を必要とする。

謝辞

稿を終えるにあたり、被験児の子どもたちに感謝 いたします。終始ご指導いただきました愛知県コロ ニー研究所清野茂博部長に感謝いたします。また、

被験児をど紹介してくださった中央病院渡辺ー功、

袴田亨、原紀美子、熊谷俊幸、竹内達夫の諸先生に 感謝いたします。

円 ん つ 中

V.文献

Diomed ,i M., Curatolo, P., Scalise, A., Placid ,iF.,  Caretto, F., & Gigli, G. L. (1999) Sleep abnormali‑ ties in mentally retarded autistic su切ects:Down  s syndrome with mentally retardation and normal  subjects. Brain and Development, 21, 548‑553.  Espie, C. A., Paul, A.,  McFie,  ,.JAmos, P., Hamilton, D., 

McColl, J. H., Tarassenko,  ,L.& Pardey, J. (1998)  Sleep studies of adults with severe or profound  mental retardation and epilepsy. American Jour‑ nal on Mental Retardation, 103, 47‑59. 

Espie, C. A. & Tweedie, F.  M. (1991) Sleep patterns  and sleep problems amongst people with mental  handicap. Journal of Mental Deficiency Research, 

3525‑36. 

Feinberg, . 1(1968) Eye movement activity during  sleep and intellectual function in  mental retarda‑ tion. Science, 159, 1256. 

大 熊 輝 雄 (1994)睡眠研究発展の歴史、日本睡眠 学会(編入睡眠学ハンドブ、ック、朝倉書庖、2‑5.

Rechtschaen,A. & Kales, A. eds. (1968) A Manual  of Standardized Terminology, Techniques and  Scoring System for Human Su句ects.Washington, 

D.C., Public Service, U.S. Government Printing 

  ι 0

fice. 

Shibagaki, M. & Sawata, T. (2004) Relation between  polysomnographic measures during nocturnal  sleep and a quotient of behavioral development in  infants with developmental disabilities. Perceptual  and Motor Skills, 99, 429‑434. 

表 2 指標聞における相関係数 ( N )   1  2  3  4  5  6  7  8  9  1 0  1 1  1 2  1 3  1 4  1 5  1 6  1

参照

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