九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
重度・重複障害児の発達援助技法の開発
進, 一鷹
https://doi.org/10.11501/3100001
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(教育心理学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第7章 発達援助技法による指導前後の比較
12事例を対象として発達援助技法を適用して指導した結果を姿勢、 認知領域、 操作面、
操作行動という視点からíTab1e 1 指導前後の比較J表を作成した。 指導前は指導開始時 を指し指導後は指導終了時を指す。 姿勢欄には、 自分で姿勢を変換できなくても、 支持し てその姿勢をとらせれば、 その後は自分でその姿勢を維持できるものも含めている。
指導期間は6か月 から3年6か月までの範囲にわたっている。 次に、 姿勢、 認知領域、 操作 面、 操作行動の面について検討する。
姿勢については、 指導前に背臥位の姿勢であったものが8事例、 その8事例すべてに姿勢 の変化が見られる。 背臥位の姿勢から側臥位の姿勢に変化したものは、 5事例である。 後の 3事例はさ らに座位の姿勢まで変化している。 側臥位の姿勢から座位の姿勢に変化したのは、
l事例である。 事例9.12は、 最初から座位の姿勢を保持できたので、 姿勢上は変化はない。
事例10は、 背持たれに持たれた椅子座位の姿勢から上体を垂直にした座位の姿勢に変化し
。た
認知領域は背臥位の姿勢ではそれぞれの身体部位が独立して機能しているが、 姿勢が側 臥位の姿勢、 座位の姿勢になれば2つの身体部位が協応して機能するようになった(事例3,
4,5,8)。 指導前は背臥位の姿勢では足、 口が優位な認識領域である(事例1,2,3,5)。 指 導後も背臥位の姿勢であれば足、 口が優位な認識領域であるが、 指導によって姿勢が側臥 位の姿勢や座位の姿勢になれば、 目と手という 2 つの身体部位が優位な認知領域になった (事例3.4,5,8)。
操作面は背臥位の姿勢や側臥位の姿勢で操作するときは、 操作面は床面であるが、 座位 の姿勢で操作するとき は操作面は机上面である(事例1"'-' 12)。
操作行動については、 す べての事例において、 指導前よりも指導後の方が一層高次な操 作行動をとれるようになった。 事例1, 2,3は、 背臥位の姿勢での行動も変化し、 側臥位の姿 勢で操作する行動が発現した。 事例4,5は、 側臥位の姿勢での 目と手の協応が可能になった。
事例6,7,8は、 机座位の姿勢で上体を垂直に起こすことが可能になった。 事例9.10,11は、
机座位の姿勢で目と手を協応させ操作することが可能になった。 事例12は、 溝に沿ってブ ロック ・ スライドスイッチ(教材一覧表Fig.11)の取っ手を滑らせることが可能になった。
指導前に机座位がとれた事例12においても、 机上面を利用して取ってをすべらせるなど、
操作行動の改善がなさ れた。
噌1ム戸川U
結論としては、 すでに指導する以前から机座位が可能な事例を除いて、 すべての事例に おいて、 姿勢、 認知領域、 操作面、 操作行動が改善されたと言える。 細かな変化の過程に ついての検討は、 それぞれの事例について検討する第8章にゆずることにする。
つ心Fhd
Table 1指導前後の比較
指 導 前 指 導 後
事例番号 指導期間 知童援WH支法
姿勢 認知買域 操作面 操作行動 姿勢 認知領域 操作面 操作行動
事例1 l年8か月 背臥位 口 呼吸音を変化させる 1. 2. 仰即、位 足 足(床面) 背臥位:
口 口 ①口でカミカミスイッチ(教材一覧
手 手(床面) 表Fiι1)を噛む
②足でフレキシプルスイッチ(教材 一覧表Fig. 3)をける
仰庖人位:
プロック・スライドスイッチ(教材 一覧表fiι11)の取っ手を手前に引 く
事例2 11か月 背臥位 足 足(床面) 足に力を入れ床に押しつ 1. 仰臥位 足 足(床面) 背臥位:
ける 口 口 ①重心を移動させて足でフレキシプ
ルスイッチ(教材一覧表Fiι3)を ける
②操作中に足の先から頭の先まで力 を入れ一本の棒のように伸ばす 仰臥位:手で支え横向きの姿勢を保つ
事例3 8か月 背臥位 口 口 ①手で玩具を口に持って 1. 2. 側臥位 足 足(床面) 制服:
足 足(床面) いく 口 口 ①口でアルミ泊カミカミスイッチ(
②足で小豆をける 目と手 目と手(床面) 教材一覧表Fig. 2)を噛む
②足でポールをける
③足でスライドスイッチ(教材一覧 表Fig.4)をける
④和紙回転スイッチ(教材ー質表 Fig.5)をける
仰民人位:
①手で横回転式スイッチ(教材一覧 表fig.6)を動かす
②目でみながら手で光回転式スイッ チ(教材一覧表Fig.8)
事例4 l年9か月 背臥位 口 口 風船をなめる 1. 2. 側臥位 口 口 ①フレキシプルスイッチ(教材一覧
目と手 目と手(床面) 表fig.3)に手を伸ばし目で見なが ら操作する
②弁庫式回転スイッチ(教材一覧表 Fig. 5)に手を伸ばしチャイムを鳴 らす
丹、u「hd
指 導 前 指 導 後
事例番号 指導期間 箔童援E力技法
姿勢 認知領域 操作面 操作行動 姿勢 認筑頗域 操作面 操作行動
事例5 1年8か月 背臥位 足 足(床面) 小豆をける 1. 2. 倒臥位 目と手 目と手(床面) ⑪ヒ操作スイッチ(教材一覧表Fig
.7)に手を伸ばし見ながら操作する
②リングベル・スライドスイッチ(
教材一覧表Fig. 10)やプロック・ス ライドスイッチ(教材一覧表Fig.11 )を溝に沿って引き寄せる
事例6 2年8か月 背臥位 口 口 風船をなめる 1. 3. 前起こし 口 口 ①則合で背中を触られると上体を起
背中 背中 こす
@瀕で頬押しスイッチ(教材一覧表 Fig. 12)を押す
事例7 8か月 背臥位 口 口 手にリングベルを持って 3. 前起こし 口 口 ①尉Gで背中を触られると上体を起
手 口でなめる 背中 背中 こす
②淫直の缶押しスイッチ(教材一覧 表fig. 14)の底辺をなめ角柱をなめ 上体を起こす
事例8 10か月 背臥位 口 口 ①手で丸棒を持つてなめ 2.5. 机座位 口 口 q滞lの面にあるフレキシプルスイッ
手 手( 床) る 目と手 目と手(札上面) チ(教材一覧表Fig. 3)をなめる
②右横のタンパリンを左 ②上体を垂直に起こし手に小豆を持
手で叩く って落とす
事例9 6か月 机座位 口 口 一口お握りを持って食べ 5. 机座位 目と手 目と手(相L上面) ピカピカスイッチ(教材一覧表fig.
手 る 18)を見て手で叩く
事例10 11か月 机座位(背も 口と手 口 手に鏡を持つてなめる 4.5. 机座位 目と手 目と手(机上面) 目で見ながら手で溝に沿ってプロッ
たれに背中を ク・スライドスイッチ(教材一質表
持たれる) Fig. 11)の取っ手をすべらせる
事例11 3年6か月 仰臥位 目と手 手元 手に縫いぐるみを持って 4.5. 机座位 目と手 目と手(机上面) 目で見ながら手で溝に沿ってプロッ
揺らして遊ぶ ク・スライドスイッチ(教材一覧表
Fig.11)の取っ手をすべらせる
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Fhd 「hd
指 導 前 指 導 後
事例番号 指導滞澗 発達援慰鼓法
姿勢 認定瀕媛 操作面 操作行動 姿勢 認賀頗域 操作面 操作行動
事例12 l年8か月 机座位 目と手 目と手(机 一口サイズのお渥りを皿 4.5.6. 机座位 目と手 目と手(机上面) 目で見ながら手で溝に沿ってプロッ
上面) の中からとって食べる ク・スライドスイッチ(教材一覧表
Fig.11)の取っ手をすべらせる
第8章 事象の系譜発見法による事例研究
第7章では、 指導前後を比較して発達援助技法の有効'性について検討した。 本章では、 事 例ごとに発達援助技法を適用した結果を報告し、 個々の事例の行動変容について考察する。
事例は12事例である。
第1節 事例の記述法
本研究が発達援助技法を開発しそれを実際の現場に適用して重度・重複障害児の発達と その行動について検討することを目的としているために、 その性格上、 ここでは通常の事 例研究では見られない項目をいくつか設定した。 例えば、 指導経過の中での「発達援助技 法の選択」や「指導条件の要素」の項目がそれに当たる。 r発達援助技法の選択」では、
発達援助技法の選択理由とその行動目標について記述した。 また、 「指導条件の要素Jで は、 どの姿勢でどの認知領域に対してどう いう教材で指導を行ったかという要素を列挙し た。 それに よってある程度指導の状況が予測できるようにした。
事例 は、 事例紹介、 指導開始時の状況、 問題の整理と行動目標、 指導経過、 考察という 順で、 以下のように整理した。
事例0:題名 1.事例紹介
1.生年月日、 指導開始年齢、 指導場所、 指導期間、 指導回数。
2.生育歴
II.指導開始時の行動状況 III.問題の整理と行動目標
指導開始時の行動状況の資料に基づいて本児の問題を整理し、 全体的な行動目標を決定 する。 この行動目標は、 発達援助技法の中の行動目標から子供の実態、に即して選択したも のである。 具体的な指導場面での行動目標 は、 下位の行動目標の項で示す。
IV.指導経過
指導経過は発達援助技法を適用したとき の指導の経過である。 指導経過は、 発達援助技 法の選択、 下位の行動目標、 指導手続き、 経過の)1債で記述した。 なお、 下位の行動目標が 2つ、 または、 それ以上あるときは、 その目標ごとに指導手続き、 経過を記述した。
具体的には以下の順序で記述していった。
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1.小見出し(指導期間) 1)発達援助技法の選択
「問題の整理と行動目標」、 または、 前述の指導結果に基づいて具体的な発達援助技法 を選択する。
2)指導条件の要素
前もって指導状況が予測できるように、 姿勢、 認知領域、 教材、 操作行動など指導に関 与する要素を簡単に示す。
3)下位の行動目標(その1)
ここの下位の行動目標は、 子供の実態、に即して発達援助技法の下位の行動目標から選択 した行動目標である。
(1)指導手続き (2)指導経過
4)下位の行動目標(その2) (1 )指導手続き
(2)指導経過
2.小見出し(指導期間) 以下、 上記と同様。
V.考察
発達援助技法に よる指導経過に基づいて重度・重複障害児に行動変容について具体的に 考察する。
第2節 事例
次に研究事例一覧表(第6章)の順序で個々の事例を提供し検討する。
事例1 :外界との関わりが極めて乏しい重度・重複障害幼児の操作行動の促進 1.事例紹介
1. 生年月日:1989年12月31日生(女児)、 指導開始年齢: 2歳4か月、 指導場所:K大学教育学 部障害児教室プレイルーム、 指導期間:1年8か月、 指導回数:毎週1回2時間。
2.生育歴
生下時体重1. 830go 39週満期出産。 低体重のため体重が2.000g以上になるまで17日間哨
司t'「同υ
育器を使用。 1990年2月27日の時点で体重2.520g。生後1か月、 笑いがある。生後3、 4か月、
オルゴールの音で笑顔が表出。 両親が目つきや目の動きがおかしいと感じる。生後6、 7か 月になっても首が座らない。 オルゴールを見つめるが、 手を伸ばすことはない。 医学診断 はF10ppy infant (筋緊張低下児:中間重度型脊髄性筋萎縮症)である。
健康面:本児は経官(鼻腔)栄養と口を通しての食事との併用であるが、 体調の悪いと きは経官(鼻腔)栄養のみになる。 夏は体温調節が不十分で食べ物を食べなくなるなどの 理由でl、 2か月程度入院する(母親の陳述)。 冬は体調が比較的良いという ことであった が、 1992年10月から12月 上旬まで入院した。 肺炎を併発し一時呼吸困難となり集中治療室 で治療を受けた。
11.指導開始時の行動状況(1992年4月 )
姿勢:本幼児は、 日常目を閉じ手足を内側にヲ|っ込め背臥位の姿勢で静止している。 手足 を自発的に動かすことはほとんどない。 支持座位の姿勢を とらせても、 支持している手を 放すと、 全身の力を抜いた状態で体が前方に倒れ折り重なるようになる。 視覚:プレイル ー ムに入室するときは目を開けるが、 そ れ以外のときは軽く目を閉じている。 聴覚:玩具や人 の声に対する反応は観察されないが、 意図的に自分で呼吸音を変化させる。 母子関係: 母 親が体を揺らしてあや してやれば笑顔、が現れる。日常生活:食事は経官(鼻腔)栄養を併用。
但し、 体調がよくないときは、 経官(鼻腔)栄養のみである。 口は渇き気味である。
II1.問題の整理と行動目標
手足を引っ込め目も閉じじっーとして動かない背臥位の姿勢で いる、 口は乾燥気味であ る、 呼吸音を聞くなど、 行動水準が極めて初期の段階にあるので、 最初から口や足を使っ て操作行動を促進する ことは困難であると考えられる。 小豆の触れ合う音など聴覚刺激や、
背中や足などの触刺激を中心として関わり、 外界の刺激の受容とその拡大を図る。 次に、
口や足での操作行動の出現を促す。 背臥位の姿勢で外界への向か う志向体制ができれば、
側臥位の姿勢でも指導する ことを考えてみる。
したがって、 行動目標は、 背臥位の姿勢では聴覚刺激の種類と受容範囲を拡大する、 触 覚刺激の種類と受容範囲を拡大する、 口(歯)で操作する、 足で操作する( 以上、 発達援 助技法1)、 側臥位の姿勢では目で見ながら操作する(発達援助技法2)という行動になる。
IV.指導経過
し刺激の種類と受容範囲の拡大と運動の自発(1992年5月�7月) 1)発達援助技法の選択
no Fhd
極めて外界との関わりが乏しいので、 聴覚刺激や触覚刺激の受容範囲を拡大し、 口や足 の運動が出現するように働きかけ外界への志向体制を高めることが指導の具体的な目標 と なる。 したがって、 下位の行動目標は、 発達援助技法lの下位の行動目標1)と2)の項目にな る。
2)指導条件の要素
姿勢は背臥位である。 認知領域は耳、 口、 足である。教材は聴覚に関しては小豆など、
触覚に関しては人の手などである。
3)下位の行動目標
聴覚刺激や触覚刺激の受容範囲を拡大し、 自発行動や操作行動の出現を促進し、 外界へ の志向体制を高める。
(1)指導手続き
聴覚刺激としては、 小豆の振れる音や紙のこすれる音を聞かせる。 触覚刺激としては人 の手、 小豆などで足に 触覚刺激を与える。 これらの刺激を通して口や足の自発的な行動の 発現を促しそれを操作行動へと高めていくように働きかける。
(2)経過
1992年5月、 お盆にのせた小豆の振れる音や紙のこすれる音などを聞いて、 口、 足、 肩、
手の一部を連続してピクッピクッと動かす行動も 出現した。 学習の開始後1か月自には、 リ ングベルなどの一部の楽器音、 風船のこする音、 紙をこする音、 人の声にも口元に笑いの 表情を示すなどの行動も出現した。 6月には、 触れば号|っ込めていた足も、 躍、 足の外側部、
膝の外側など床面と接している足の部分であれば、 人の手や小豆などをける行動が出現し た。 7月には、 指導者が足への働きかけを行っていると足だけでなく口も上下に動かす行動 が出現した。 そごで、 風船で口を触ったところ、 唇を突き出して風船の表面を口で触る、
歯で風船の結び目を噛む行動が出現し、 唾液がでできて乾燥した口も湿ってきた。
2.口や足による操作行動の促進(1993年9月---...-2月) 1)発達援助技法 の選択
足や口を動かす自発的な行動が出現したので、 口で噛んでチャイムを鳴らす、 足でお盆 の中のあずきをけるなど、 口や足の操作行動を促進するように働きかける。 下位の行動目 標は、 発達援助技法1の下位の行動目標4)と6)の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は背臥位である。 認知領域は、 口、 足である。 教材は、 口についてはカミカミスイ
nHU Fhu
ッチ(教材一覧表Fig.1)、 足についてはお盆に入れた小豆で、ある。
:3)下位の行動目標(その1)
歯でカミカミスイッチを噛んでチャイムを鳴らす。
(1)指導手続き
口の運動が出現したとき、 カミカミスイッチを本児の歯 と歯の聞に持っていき、 歯でス イッチを噛むように働 きかける。
(3)経過
1992年9月より、 口の運動が自発するようになったので、 カミカミスイッチを鳴らす学習 に移った。 本児が口を動かしているとき、 歯の聞にスイッチを持っていった。 歯で噛めば チャイムの音がするので、 不思議そうに一瞬口の動きを止め様子をうかがっていたが、 再 び噛んでチャイムを鳴らした。 10月には、 チャイムを鳴らすときは、 連続して鳴らしては 休むという行動を繰り返し、 自分でリズムをとってチャイムを鳴らした。 鳴らしている途 中で、 ときにニコッと笑顔を見せることもあった。 しかし、 目は以前として閉じたままで あった。
4)下位の行動目標(その2)
足でお盆に入った小豆をけって音をだす。
(1)指導手続き
お盆の中にあずきをしきつめ、 そこに本児の足を持っていく。 本児が自発的にけらない ときは、 あずきの振れる音を聞かせるなどして足でける行動の発現を促す。
(3)経過
1992年10月、 相変わらず、 本児は足を引っ込め膝を外側に開いた姿勢をしていた。 そこ で、 指導者がお盆のあずきの上に本児の足をのせ本児の足を動かし小豆の振れる音を聞か せた。 すると、 5秒ほど経過して急に足を動かし小豆をけった。 この働きかけを継続してい ると、 足をすぐに動かしてけるようになった。 12月には、 けるときには背中や頚にも力を 入れ足を伸展させてける動きも出現した。
1993年のし2月には、 次のような自発的な行動が観察された。 背中にも力が入り背中を 床に押しつける、 頭の先から足の先端までを一本の棒のように伸ばす背伸びの行動が出現 した。 背臥位の姿勢のとき、 足を引っ込めるのではなく、 足を伸展させたままでいる。 さ
らに、 1992年の12月には閉じていた目も開け鏡を提示すれば、 それを注視した。
3.側臥位の姿勢での手の操作行動(1993年4月'""'-'12月)
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1)発達援助技法の選択
上記の働きかけを通して、 背伸びの行動が出現し背筋に力が入り身体全体の運動が活発 化したので、 側臥位の姿勢で手でフレキシプルスイッチを押す行動、 いわゆる手で操作す る行動の出現 するように働きかける。 したがって、 下位の行動目標は、 発達援助技法2の下 位の行動目標2)の(1)項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は側臥位である。 認知領域は口、 目、 手である。教材はフレキシプルスイッチ(教 材一覧表Fig.3)である。
3)下位の行動目標
フレキシプルスイッチに手を伸ばしチャイムを鳴らす。
(1)指導手続 き
指導者が支持して側臥位の姿勢にする。 本児の手をフレキシプルスイッチの上にのせ、
本児が自分でチャイムを鳴らすようするに働きかける。
(2)経過
指導の経過は、 側臥位の姿勢を維持する学習の段階と側臥位の姿勢で手でチャイムを鳴 らす学習の段階の2段階に分かれた。
1993年4月、 本児の腰と背中を支え側臥位の姿勢をとらせた。指導者が支えている手を離 すと、 前後のどちかの方向へ姿勢を崩した。 しかし、 側臥位の姿勢でも身体の横軸が床面 と垂直になるように姿勢を整え、 指導者が腰を前後に動かせば、 垂直の姿勢よりやや前方 に傾いた姿勢で本児が自分の側臥位の姿勢を維持する動きが出現した。その姿勢のとき前 後にわずかに動かすと、 右側臥位であれば、 左足を伸展させその動きにあわせて自分でバ ランスをとる行動が出現した。 側臥位の姿勢を維持する学習を継続したところ、 9月には、
側臥位の姿勢にすると自力でその姿勢を維持したので、 本児の胸の20cm前方にフレキシプ ルスイッチを提示した。 背臥位の姿勢で目を開けていた本児も側臥位の姿勢にすると目を 閉じた。 スイッチを提示しても目を閉じているため自分で手を伸ばさなかった。 指導者が 本児の手を持ってスイッチにのせ、 手を揺らす、 手に触って触覚刺激を与えるなどの働き かけをして、 本児がチャイムを鳴らすのを待っていると、 5秒程度して自分で手をわずかに 動かしてチャイムを鳴らした。 この学習を継続していると、 12月には、 スイッチに手をの せると、 手を動かしてチャイムを鳴らした。 頭を前方に傾け、 目を開け手元を見ることも あった。 学習の途中で右側臥位であれば左足の裏を床につけ床をけって側臥位の姿勢を維
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持する行動も出現した。
これらの学習では、 直接目指した課題の目的以外にも、 次のような行動の変化があった。
側臥位の姿勢を支持が なくても自分で支持できる、 目を開け外界の刺激を受容する、 背筋 がしっかりする、 足の裏で床をけるなどの行動が発現した。
V.考察
外界との関わりが極めて乏しい 重度・重複障害児に対して発達援助技法を適用して指導 したところ、 側臥位の姿勢で 操作する行動も発現したので 、 その経過について考察する。
1.初期段階にある重度・重複障害児の外界への関わりと行動の拡大
本児は、 外界との関わりが 極めて乏しく外界を遮断した状態にあった。 そのため、 最初 の課題は、 外界の刺激の種類や受容の範囲を拡大し運動の自発を図ることであった。 聴覚 刺激として、 小豆の振れる音、 紙のこすれる音、 母親の声など、 触覚刺激として、 人の手、
風船、 小豆などで、 刺激の種類や受容範囲を拡大する学習を行った。 その結果、 当該身体 部位以外にも口、 足 、 肩、 手などの身体部位を動かすという行動が発現した。 これは、 外 界へ関わる志向体制が変化したために、 その刺激に対応した身体部位だけでなく、 それ以 外の身体部位にも行動の変化が現れたと考えられる。 自発的な行動が発現したので、 その 行動を基礎にして外界への働きかけ、 いわゆる操作行動の拡大を図ることが可能になった。
一般には、 重度・重複障害児と言っても口や足に自発行動が存在 するので、 その自発行動 を手がかりに指導することが可能である。 しかし、 本児のように、 外界への関わり極めて 乏しい 重度・重複障害児も存在し、 このような子供たちには外界の刺激の種類や受容範囲 の拡大を目指す指導から指導を開始する必要がある。
2.刺激受容と外界ヘ向かう姿勢づくり
本児は側臥位にしてもその姿勢を維持でき たが、 それは、 背臥位の姿勢で背中を床面に 押しつける、 背伸びをする、 目を開けるなど、 外界への志向体制ができたためであると考 えられる。 中でも背伸びの行動が出現したことは、 側臥位の姿勢にとって意味があった。
本児は床面に自分の背中を押しつけ、 頭から足の先まで背伸びをすることによって、 グニ ャグニャであった身体をひとつの棒状の塊として身体全体を支える姿勢に変えていった。
そのために、 側臥位の姿勢で多少前傾した姿勢をとらせても前方に倒れず側臥位の姿勢を 維持できたと考えられる。 一般に側臥位の姿勢は重力から解放されているように考えられ ているが、 本児の行動を観察していると、 本児は上体を前後すると足を伸展させバランス を維持した。抗重力姿勢としては、 座位、 立位などの姿勢が考えられている(北原・松井,
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1979 )が、 側臥位の姿勢も床面に接している身体部位が多いとは言え、 本児の行動を見れ ば、 一種の抗重力姿勢と考えられる。 そのために、 足だけでなく体幹を前後に動かして上 体のバランスを維持しなければならなかった。 自分で側臥位の姿勢が維持できると、 手を スイッチの上にのせても手を離すことなく、 手をスイッチにのせていた。 背臥位の姿勢は 床面が 姿勢を支え るが、 側臥位の姿勢になって始めて自分で 姿勢を作って外界と対峠する ことになる。 その意味 では、 側臥位の姿勢で 操作するということは、 姿勢だけの問題では なく、 姿勢を含め外界ヘ向か う志向体制の問題であると考えられる。 そのために側臥位の 姿勢が維持できる時期になれば、 背臥位の姿勢でもリズムをとってチャイムを鳴らす、 笑 顔を見せる、 背中を床面に押しつける、 頭から足の先までを一本の棒のように伸ばす、 足 を伸展させる、 目を開けるなどの行動 が発現したと考えられる。 このような自己活動の変 化が起こったことは、 単に 行動目標が達成できたという以上に外界との関わりにおいて一 層大きな意味を持っていると考えられる。
事例2:動きの乏しい重度・重複障害幼児の外界の刺激の受容と足の操作行動の促進 1.事例紹介
1.生年月日:1990年8月16 日(男児)、 指導開始年齢:2歳6か月、 指導場所:K大学教育学部障 害児研究室プレイルーム、 指導期間:11か月、 指導回数:毎週1回2時間。
2.生育歴
生下時体重3.766g。 吸引分娩で出産するが、 腹圧不全のた め腹式帝王切開。 新生児仮死。
哨育器を28日使用。 その後、 S病院で週l回ボイタ法の訓練。 妹出産のため6か月訓練を休む。
現在、 1992年5月、 M療護園でボパース法とグループ保育のため週1回通園。 医学診断(母子 手帳より) :新生児仮死、 低酸素性虚血症脳症、 ビタミンk欠乏症に よる頭蓋内出欠。
1I.指導開始時の行動状況(1993年4月)
姿勢:姿勢は背臥位で、ある。 上体を起こしたときは、 頚が座っていないので前方に倒れる。
視覚:眼球は澄んできれいであるが、 玩具を提示しても注視、 追視をすることはない。 聴覚
:常時顔は少し左側を向いている。 音がしてもその方向に定位することはないが、 小豆の振 れる音や紙のこする音にはま ばたきが見られる。 手足:手は軽く握り内側に引っ込めている。
足は屈曲させ外側に開き床に押しつけている。 特に膝の外側、 躍、 足の裏の外側部には力 を入れ、 手で触ると押し返してくる。 口:経官(鼻腔)栄養で口は乾燥した状態である。 し かし、 足を触れば口を動かすこともある。 呼吸: íゼーゼー」という音や、 吸い込むときに
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は「クークーjという音をさせる。 日常生活:全面介助。 食事は経官(鼻腔)栄養でミルク を主体としているが、 ときにはミルクのパンがゆ(固形部分なし)の状態で口からの栄養 摂取も併用している。 水分は味下が微弱なためにむせることがあるため経官(鼻腔)で与 えている。
III.問題の整理と行動目標
本児は、 背臥位の姿勢で運動を起こしていないように見えるが、 足を触ってみると押し つける力があり、 背面 の刺激を受容し その方向に身体を押しつけ、 自らの運動を止めてい ると考えら れる。 特に膝の外側、 躍、 足の裏の外側部には力を入れ手で触ると押し返して くる。 したがって、 触覚刺激、 特に足の触覚刺激を通して自発行動の出現を促し、 足でけ るなど操作行動を高めていく必要がある。 足での操作行動が高まり口の運動が自発すれば、
口で風船をなめ るなど、 口で外界への関わる 行動も出現すると考えられる。 また、 本児の 行動の状況を観察しながら、 注視、 追視などの行動や側臥位や座位の姿勢の維持について
も検討していく。
したがって、 行動目標は、 背臥位の姿勢で触覚刺激の種類と受容範囲を拡大する、 足で 操作する(以上、 発達援助技法1)という行動になる。
IV.指導経過
1.足の触覚刺激の受容範囲の拡大と足の操作行動の出現(1993年5月'"'-'12月) 1) 発達援助技法の選択
本児は足を床面に押しつけ足の運動を止めているので、 足への触覚刺激を与え刺激の受 容範囲を拡大し足の操作行動の発現を促す。 したがって、 下位の行動目標は、 発達援助技 法lの下位の行動目標2)と7)の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は背臥位である。 認知領域は足である。 教材は人の手と小豆である。
3)下位の行動目標(その1)
人の手で足を触る。 触覚刺激を受容 することによって外界ヘ向 かう志向体制を高める。
(1 )指導の手続き
一定の姿勢で床面に身体を押しつけ身体の動きを止めているので、 特に足を中心にして 手で触り刺激の受容範囲を拡大し足の運動を引き出す。 足の運動が出現すればお盆に入っ た小豆を足元に置き足で、小豆をけるように働きかける。
(2)経過
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1993年5月----7月、 指導者の手で本児の後頭部、 肩、 背中、 足などを触った。 後頭部、 肩、
背中を触ったときは、 呼吸音が変化する、 口をわずかに動かすなど、 触覚刺激を受容して いる様子はうかがえたが、 それが足や口の運動へとは結びついていかなかった。 しかし、
7月には、 足を触れば足をけるという足の大きな 運動が出現した。 本児の足を触ってみると、
本児は、 股の外側、 膝の外側、 鍾、 親指のつけ根の部分、 足の裏の外側部の5つの身体部位 に力を入れていた。 筋肉が張ったような感じの力の入れ方で、 もみほぐすように 500g程度 の圧をかけて10----2D秒触っていると、 上記のような足でける運動が出現した。 しかし、 同 一箇所を続けて触っていればその行動も消失するので、 本児の行動を観察しながら、 股の 外側、 膝の外側、 躍、 親指のつけ根の部分、 足の裏の外側 部を順を追って触っていって足 の運動の発現を促した。 すると、 片足でけったり両足をあげてけったり足のさまざまな運 動が出現した。 足でけるときは、 肘を床から挙げ、 目を見開き、 表情は真剣な表情とった。
4)下位の行動目標(その2)
足でフレキシプルスイッチ(教材一覧表Fig.3)をけって鳴らす。
(1 )指導手 続き
フレキシプルスイッチを本児の足元に提示する。 足の運動が出現しないときは、 前述の 要領で足を触って足の運動を引き出す。
(2)経過
前述の指導で足の運動が引き出されていたため、 1993年9月、 10月には比較的スムースに 足をスイッチに 伸ばしてチャイムを鳴らした。 ここで注目すべきこととしては、 身体全体 の重心を調節する、 スイッチと足との位置関係で足の使い方を変化させける行動が発現し たことである。
それらの行動を列挙すると次のようになる。
①両足を伸展させているとき、 両足の親指のつけ根のところにスイッチを提示すれば、 両 足で挟み、 または、 片方の足を外側から内側に回旋させスイッチを押した。 重心は両足と 背中で調節した。
②片方の足を伸展させもう片方の足を屈曲させているとき、 伸展している足の親指のつけ 根にスイッチを提示すれば、 足を外側から回旋させけった。 屈曲している足の先に提示す れば、 足を伸展させてけった。 重心は片足と背中で調節した。
③両足を屈曲させているとき、 片方の足を伸展させスイッチを探し、 足の先で一度スイッ チを触り、 それから足を引っ込め、 次iこ足を伸展させスイッチをけった。 背中や支持足に
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重心を移動させ足でけった。
④両足を屈曲させているとき、 片方の足を 伸展させスイッチを探し、 足の先で一度スイッ チを触り、 それから、 両足を号|っ込め、 両足を同時に、 また、 交互に伸展させスイッチを けった。 両足を引っ込めたときは、 両肘を挙げ手を内側に入れ、 重心を頭と背中に移動さ せてけった。
音をチャイムではなく具用電子ブザー(松下電工製)に取り替え、 スイッチを足元に提 示したときは、 足をスイッチに押しつけたままじっとして動きを止めて30秒"-'1分程度聞い ていた。 足の操作が活発になれば、 口をもぐもぐさせる、 舌の先を少し突き出す、 ごくっ と唾液を飲み込む、 目を見開き「アーアー」という声をだす、 笑顔を見せるなどの行動も
出現した。
2.口の触覚刺激の受容範囲の拡大と口の運動 の自発(1993年11月"-'12月) 1)発達援助技法の選択
前述の指導で口の動きが出現したので、 口の受容の範囲を拡大し口の運動が自発するよ うにする。 したがって 、 下位の行動目標は、 発達援助技法1の下位の行動目標3)の項目にな る。
2)指導条件の要素
姿勢は背臥位の姿勢である。 認知領域は口である。 教材は風船である。
3)下位の行動目標
風船を舌や唇でなめる。 風船の結び目を歯で噛む。
(1)指導手続き
口の動きが出現したとき、 風船を口に提示し舌で風船をなめる、 歯で噛むなどの行動が 出現するように働きかける。
(2)経過
足でける学習を継続していると、 口を動かす、 唾液を飲み込む動きがでてきたので、 19 93年11月より風船をなめる、 噛む指導を行った。 足でける運動が止むと口の動きも止まっ たので、 足でける指導と並行して唇を風船で触る指導をした。 風船を唇につけたり離した りして2�3分持続して関わっていると、 さらに唾液がでてき て他の身体の動きを止め口だ けを動かした。 口の活動が活発になれば、 足を触らなくても、 自発的に口を動かして唇で 風船に触り、 舌の先をだして風船になめた。 しかし、 風船の結び目を歯で噛むなどの行動 は出現しなかった。
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1993年12月より、 床面に沿って頭の先から足の先まで力を入れ一本の棒のように背伸び をする、 人の動きを目で追視する、 「アーアー」という声をだす、 表情がでるなど行動に 変化があった。 側臥位の姿勢にすると、 右側臥位であれば左手で床面を押しつけ側臥位の 姿勢を2r-.J3分維持すること ができた。 さらに、 椅子座位の姿勢をとらせ頚を支えれば、 椅 子座位の姿勢も5r-.J6分維持できた。
3.椅子座位の姿勢と足の操作行動(1994年1月r-.J2月) 1)発達援助技法の選択
頚を支えれば椅子座位の姿勢 が維持できたので、 椅子座位の姿勢で足で円盤スイッチ (教材一覧表Fig.16)をけってパイブラランプを見る学習をする。 したがって、 下位の行 動目標は、 発達援助技法4の下位の行動目標的の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は椅子座位の姿勢である。 認知領域は足と目である。 教材は円盤スイッチ(教材一 覧表Fig.16)である。
3)下位の行動目標
目で足元を見 て足でパイプラランプをつける。
(1 )指導手続き
定頚が困難なために椅子座位の姿勢で頚を支え支持椅子座位の姿勢にする。 円盤スイッ チを本児の前方30cmの位置に提示し本児の片方の足を円盤スイッチの上にの せる。
(2)経過
1994年1月、 指導者が本児の足をスイッチまで持っていき足の裏でスイッチを押しパイプ ラランプをつけた。 パイプラランプがついてもすぐにその方向に視線を向けることはなく、
20"'"'30秒程度経過して頚を回転させそれを見 た。 しかし、 2"'-'3秒すると視線がそれた。 ま た、 20"'-'30秒程度経過して頚を回転させそれを見るという行動を繰り返した。 足は踏み込 んだままでスイッチから離すことはなかった。 この課題は本児にとってはレベルが高かっ たようで、 それ以上の行動の展開は見られなかった。 しかし、 2月には、 本児を椅子座位に したことによっていくつかの行動上の変化 が見られたので、 それを列挙する。
①頚がゆっくり回転して周囲を見回す行動が出現した。
②背中に力を入れ背筋を縦方向へ伸ばそうとする行動が出現した。
③唾液が盛んにで て口からよだれが流れた。
④表情が真剣なひきしまった表情になった。
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⑤足で床面を踏みつける行動が出現した。
V.考察
動きの乏しい重度・重複障害児に対して発達援助技法を適用して指導したところ、 側臥 位の姿勢を維持する行動も発現したので、 その経過について考察する。
1.背臥位の姿勢と床面
本児は背臥位の姿勢で全く動きがないか のように考えられるが、 それは見かけ上のこと で実際は背中を背面に押しつけ動きを止めているのである。 これは実際に足を触ってみる と、 押し返すような抵抗が足にあり、 また、 股の外側、 膝の外側、 撞、 足の裏の親指のつ け根、 足の裏の外側部などに筋肉が張った感じの力が入っていたなどから推測できる。 ま た、 それらの足の部分をもみほぐすように圧をかけて触覚刺激を与えると、 足の運動が出 現し、 スイッチを提示すれば、 重心を調節して両足であるいは片足でけった。 これは、 今 までの触覚刺激の状況が運動を止める方向に作用していたのが、 足の触覚刺激を与えるこ とによって、 触覚刺激の状況、 いわゆる外界の刺激受容の状況が変化し、 足でける方向に 運動が発現したと考えられる。
背臥位の姿勢での運動を考えてみると、 足でけ るとき、 重心を調節して足の動きを調節 していることである。 両足をあげるときは重心を背中に、 片足でけるときは背中と支持足 に、 両足をつけて回旋してけるときは背中と両足にというように床面を上手に利用して重 心を調節してけっている。 さらに、 床面に沿って頭の先から足の先まで力を入れて一本の 棒のように背伸びをするという行動が発現した。 これらの床面を利用した行動は、 次の側 臥位、 さらに座位の姿勢を形成する基礎的な要因のひとつと考えられる。 背臥位の姿勢の 意義について論議されることはないが、 その意味では、 背臥位の姿勢は、 床面を利用して、
身体全体に力を入れその力をまとめ、 背筋を作り、 重心の変化に対応したバランスの調節 をするという大きな意味を持っていると考えられる。 これは、 Affo1ter (1987)が健常児 で指摘したように、 重度・重複障害児も床面を利用して自分の身体の動かし方を学んでい ると言える。 したがって、 これらの行動が出現してくると、 側臥位の姿勢が自分でも維持 できるようになった。 さらに、 外界の刺激の状況と対応した形で行動が出現しているのは 注目すべきことである。 これは、 外界の情報を収集し、 処理し、 その情報を用いて行動の 選択を行った結果としての行動であると考えられる。 その意味では、 チャイムをズザーに 換えると、 足でける行動がスイッチに足を押しつけ静止した行動などは、 まさに 外界の変 化に対応した行動である。
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2.姿勢と外界への志向体制
背臥位の姿勢では、 足でける、 口を動かして唇や舌で風船に触る行動が発現してくると 同時に、 背伸びをする、 人の動きを目で追う、 発声が起こるなど、 外界へ向かう志向体制 に変化が起きた。 背臥位の姿勢だけでなく、 椅子座位姿勢をとったときも、 見回す、 背筋 を伸ばす、 唾液がでる、 表情がひきしまる、 足を床に踏みつけるなど、 外界ヘ向かう志向 体制が変化した。 これらの例は、 Wallon (1954,1956)やWerner and Wapner (1978)の言 う外界刺激の受容と姿勢を含め た外界への志向体制の関係を示唆するものである。 Wa110n よれば、 緊張は姿勢を作る原素材でそれは知覚的期待と'情緒的生活に結ひeついている。 い わゆる、 知覚と情緒を統合する機能として姿勢の意味を考えている。 Wa110nの緊張を含め 姿勢は、 Werner and Wapnerのいう感覚・緊張説(sensory-tonic theory)の感覚・緊張の 状態と同様のことを意味していると考えられる。 彼らは、 姿勢を変化させること によって 外界ヘ向かう志向体制 に変化 が置き、 また、 外界の刺激の受容の様相が変化すれば姿勢が 変化するというように、 外界の刺激受容と姿勢と が相互に影響すると考えた。 その意味で は、 外界の刺激の受容 だけでなく、 抗重力姿勢をとるということも重度・重複障害児の指 導では有効な方法のひとつとなると考えられる。
事例3:重度・重複障害幼児の姿勢と身体各部位 による操作 1.事例紹介
1.生年月日:1989年10月8日生(男児) 、 指導開始年齢:2歳7か月、 指導場所:国立S病院重心 病棟プレイルーム、 指導期間:8か月、 指導回数:毎週l回2時間。
2.生育歴:生下時体重1, 980g。核黄痘のため生後10日 目でS病院に入院。 生後6か月、 点頭 てんかん。 脳波にヒプスリトミヤが出現。 薬物投与で点頭てんかんに特有な発作は消失し たが、 1 日 数回全身をピクッと強直させる発作が続いている。 現在でも四肢のミオクロニ 一発作が見られるが、 発作時脳波では異常がないので、 非てんかん性の可能性が強い 。 医 学的診断は、 点頭てんかん、 低カルシュウム血症、 脳内出血による後遺症としての脳性ま ひ、 精神運動発達遅滞と筋の低緊張(atonic)を有する重症心身障害幼児。 聴力は、 1990 年10月の聴性誘発反応検査では110dBの聴力損失値で、 1991年10月の聴性誘発反応検査では 50'""'-'60dBの聴力損失値、 条件詮索反射聴力検査では平均聴力損失値が50'""'-'30dB 。
11.指導開始時の状況(1991年4月)
姿勢:姿勢は背臥位である。 側臥位にすると、 支えていればその姿勢をしばらく保ってい - 69 -
るが、 後ろ側へ反り返ろうとする運動もある。 支えるのをやめるとすぐに背臥位の姿勢に 戻る。 垂直に身体を起こ すと後ろ側に反り返ろうとして機嫌が悪くなる。 目:リングベルな
ど光沢のある ものが動いていれば、 一瞬視線を向けることがある。 耳:聴力検査の結果は 前述した。 小豆の振れる音や紙のこ すれる音にじっと聞き入ったり、 チャイムの音を間い てほほ笑んだりする行動がある。 手と足:背臥位の姿勢で、 足を曲げたり伸ばしたりして小 豆をける。 手は、 胸のところに引っ込め、 内側へ曲げた状態で、 手を軽く握りしめている。
リングベルなどの玩具を手に持たせると、 口に持っていき噛む。 日常生活:全面介助、 食事 はミキサ-食。
III.問題の整理と行動目標
本児は、 背臥位の姿勢では手で玩具を口に持っていく、 足で小豆をけるなどの行動が出 現しているので、 口や足を使った操作行動を高めることが可能である。 姿勢 は独力で寝返 ることはできないが、 支持されれば側臥位の姿勢 も可能である。 背臥位では玩具を持って 口に持っていくなどの行動が出現しているので、 側臥位の姿勢で固と手を使って操作する ことができると考えられる。 視聴覚については、 聴力検査の結果、 聴力の損失の疑いがあ るが、 聞いている音がある、 また目で注視する行動もあるので、 それらの感覚器官を使用
することも可能であると考えられる。 したがって、 行動目標は、 背臥位の姿勢では口(歯) でスイッチを操作する、 足で操作する(以上、 発達援助技法1)、 側臥位の姿勢では目で見 ながら操作する(発達援助技法2)という行動になる。
IV.指導経過
1.背臥位の姿勢で口や足で操作する学習(1991年5月"'"'9月) 1)発達援助技法の選択
口や足の自発行動があるので口や足の操作行動を伸ばすのが課題となる。 したがって、
下位の行動目標は、 発達援助技法lの下位の行動目標5) 、 9)、 10)、 11)の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢 は背臥位である。 認知領域は口、 足である。 教材は、 アルミ箔カミカミスイッチ (教材一覧表Fig.2)、 スライドスイッチ(教材一覧表Fig.4)、 糸車式回転スイッチ(教 材一一覧表Fig.5)、 横回転式スイッチ(教材一覧表Fig.5)である。
3)下位の行動目標(その1)
アルミ箔カミカミスイッチを噛んでチャイムを鳴らす。
(1 )指導手続き
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アルミ箔カミカミスイッチを本児の口に提示する。
(2)経過
1991年5月の時点では、 アルミ箔カミカミスイッチで唇に振れなければ口を開けなかった が、 6月の時点では眼前(30crn程度の位置)にスイッチを提示するだけで口を開けた。 口を 開けたとき、 スイッチを提示すると歯で噛んだ 。 噛んでいる途中で自分の手を口に持って いき、 スイッチを持って鳴らした。 眼前にスイッチを提示したままであれば、 口を開け、
スイッチが歯の聞にくるのを待っていた。 スイッチが口に振れると強く歯で噛んでチャイ ムを鳴らした。 本児はが歯で噛むときは、 頭と 足を床から5crn程度浮かし足は両足とも伸展 させ身体全体を弓な りの状態、にした。 7月には噛んでいる途中で背臥位の姿勢から側臥位の 姿勢になった。 背臥位の姿勢から、 頭を床から5crn程度持ち上げさらに足を床から20crn程度 持ち上げ、 背中を丸め、 頭を回転させて側臥位の姿勢になった。 その後は、 前屈した側臥 位の姿勢でスイッチを噛んでチャイムを鳴らした。
4)下位の行動目標(その2)
足を伸展させスライドスイッチを押してチャイムを鳴らす 。 (1 )指導手続き
本児の足元にスライドスイッチの教材を提示し足でスライドスイッチをすべらせチャイ ムを鳴らすように働きかける。
(2)経過
1991年6月、 歯で強く噛むときなど足を伸展させて上手にバランスをとっていたので、 足 で操作する学習を開始した。 背臥位の姿勢でいるとき、 指導者が本児の足をスライド板に のせその板を動かしてチャイムを鳴らせば、 本児は自分で足でスライド板をけってチャイ ムを鳴らした。 7月には、 足の裏をスイッチの板にのせ、 足を前後に押したり引いたりして 鳴らした。 そのとき、 手を床につけ上体のバランスを上手にとっていた。
5)下位の行動目標(その3)
足で糸車式回転スイッチを縦に回転させてチャイムを鳴らす 。 (1 )指導手続き
本児の足元に糸車式回転スイッチの教材を提示し、 指導者が糸車式回転スイッチの丸棒 まで本児の足を持っていき、 チャイムを鳴らすように働きかける。
(2 )経過
1992年6月、 指導者が本児の足を持ってチャイムを鳴らすように促したが、 指導者が手を
司1ムワt
離すと足を床面につけ、 自分で鳴らすことはできなかった。 しかし、 7月には、 両足をあげ、
丸棒に持っていき足で下にけってチャイムを鳴らした。 さらに9月には、 片足だけを丸棒に つけ上下に足を動かした り、 両足を上下に動かしたりしてチャイムを鳴らした。 そのとき は、 両手を床面につけて上体のバランスをとっていた。
6)下位の行動目標(その4)
足で横回転スイッチを回転させてチャイムを鳴らす。
(1 )指導手続き
本児の足元に横回転スイッチを提示し、 本児が足をスイッチの輸にのせたら横にスイッ チを回転してチャイムを鳴らすように働きかける。
(2 )経過
1991年7月 、 指導者が本児の足元に横回転スイッチを提示したところ、 本児は、 両手を横 ヘ広げ 、 上体のバランスをとって、 自分で両足を輪の位置に伸ばした。 ところが、 輪では なく支柱のところに足 がいった。 しかし、 本児は支柱を左右に横方向にけり、 輸を回転さ せてチャイムを鳴らした。 そのとき、 本児は、 手でバランスをとったが、 それを分類する と次の通りである。 ①両手を同時に上げ下げして、 ②両手を片方ずつ交互に上げ下げして、
さらに、 ③両手を床につけて、 身体の重心をとり、 足を動かしチャイムを鳴らした。 9月に は、 横回転スイッチを提示すると、 今度は上手に足を輸の上にのせることができた。 この 場合も、 本児は肘を伸展させ両手のひらを床につけバランスをとりチャイムを鳴らした。
2.側臥位で手で操作する学習(1991年10月,...._,12月) 1)発達援助技法の選択
側臥位の姿勢が可能である ので、 側臥位の姿勢で手で操作する 行動の発現を促す。 した がって、 下位の行動目標は、 発達援助技法2の下位の行動目標2)の(4)と(5)の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は側臥位である。 認知領域は目 、 手である。 教材は、 横回転スイッチ(教材一覧表 Fig.6)、 光回転スイッチ(教材一覧表Fig.8)である。
3)下位の行動目標(その1)
手で横回転スイッチの輸を回転させチャイムを鳴らす。
①指導手続き
側臥位の姿勢になったとき、 口に風船を持っていくと、 自分で手で風船を押さえ側臥位 の姿勢を維持する。 その本児の前方20cm程度の位置に光回転スイッチを提示し、 本児が手
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でスイッチの輪を回転させチャイムを鳴らすように働きかける。
②経過
1992年10月、 背臥位の姿勢でいるとき、 指導者が本児の口に風船をあてるとすぐに本児 は風船をなめた。 それと同時に、 本児は自分の手を口に持っていき手と口の聞に風船をは さみ、 10秒程度なめ、 それから頭を床面から5cm程度、 足を伸展させ床面から足先を20cm程 度持ち上げ、 肩を回転させて前屈した側臥位の姿勢になった。 側臥位の姿勢になったとき も、 風船をなめ続け側臥位の姿勢が維持した。 風船が手から外れても今度は指をなめ側臥 位の姿勢を維持した。 そこで、 右側臥位のときは、 指導者が本児の左手を援助して伸ばし 輸を握らせると、 本児は手を上下に動かして輪を回転させてチャイムを鳴らした。 このと き、 右手は口でなめていた。 右手が口から外れると、 姿勢を反らし背臥位の姿勢になった。
しかし、 12月には、 指導者が支持して側臥位の姿勢にすればその姿勢を維持した。 指導者 が本児の手を輪に持っていくと、 自分で手を上下しながらチャイムを鳴らした。 しかし、
自分で手を輪まで伸ばしてチャイムを鳴らすことはなかった。
4)下位の行動目標(その2)
手で光回転スイッチの輪を回転させパイプラランプをつける。
①指導手続き
側臥位の姿勢のとき、 本児の前方20cm程度の位置に光回転スイッチを提示し、 本児がス イッチの輸を回転させ前方のパイプラランプを見るように働きかける。
②経過
上記の指導と並行して、 1991年12月には側臥位の姿勢で光スイッチの輪を持ってパイプ ラランプを見る学習を行った。 指導者が光回転スイッチを提示しその輪を動かしパイブラ ランプをつけたり消したりしていると、 その方向に視線を向けた。 そこで、 本児の手を光 回転スイッチの輪に持っていくと、 本児は手を上下に動かした。 チャイムが鳴らないとき は、 一瞬その動きを止めた。 手を動かすときは視線はそれたがパイプラランプをつけたり 消したりしてする途中で視線がその方向に向きパイプラランプを見た。 そのときは、 反り 返えり側臥位から背臥位の姿勢になることはなかった。 しかし、 前述の課題と同様にこの 課題でも自分で手を輪の方向に伸ばすことはなかった。
V.考察
背臥位の姿勢で自発行動のある重度・重複障害児に対して、 発達援助技法を適用して指 導したところ、 側臥位の姿勢で目で見ながら手で操作する行動が発現したので、 その経過
円ぺUつi
について考察する。
1.姿勢の調節
本児は日常は背臥位の姿勢である。 指導者が側臥位の姿勢にすると、 反り返り背臥位の 姿勢になろうとする、 また、 垂直に身体を起こそうとしても後方へ反り返ろうする行動が 発現した。 アルミ箔カミカミスイッチでチャイムを鳴らしている途中で、 あるいは、 手と 口の聞に風船をはさみなめている途中で側臥位の姿勢になる、 手をなめて側臥位の姿勢が 維持する、 側臥位の姿勢を維持してパイプラランプを見るなど、 触覚刺激であっても視覚 刺激であっても身体の前面から刺激を受容し 始め ると、 前屈した側臥位の姿勢になって姿 勢自体も前面からの刺激を受容する構えになり、 反り返って背臥位の姿勢になることはな かった。Gese11,Thompson and Amatruda (1934)は、 「乳児の生命は子宮のなかで始ま る。
胎児は子宮壁 に姿勢として適応している。 出生後また物理環境に適応することを学ぶーベ ット、 床、 壁、 椅子、 机へと」と述べ、 外界と姿勢とが密接に関係していることを指摘し ている。 本児の場合、 側臥位の姿勢は、 背臥位の姿勢でいるときに背中を床面につけ受容 していた背中の触覚刺激がなくなることを意味した。 したがって、 側臥位に姿勢にすれば、
反り返る動きが発現した。 しかし、 それが口や目を通して前面からの刺激の受容ができれ ば反り返る動きはなくなり側臥位の姿勢を維持することができるよう になった。 彼らの用 語で言えば、 背臥位の姿勢は背面という外界への適応であり、 側臥位の姿勢は前面という 外界への適応で、あると言える。
2.手の役割
本児は、 足で操作するとき手でバランスをとった。 手でバランスをとるときは、 手を上 げ下げする、 手を床に押しつ けるという手の使い方であった。 また、 手で風船を持ちそれ を口にっけなめ、 あるいは手をなめ側臥位の姿勢を維持した。 中島(1986)によれば、 手 の役割には、 外側から自分の身体に触る、 バランスを調節する、 手を前に伸ばすという3つ の役割がある。 その分類によれば、 足で操作するとき手でバランスをとるのは、 バランス を調節するた めの手の使い方である。 しかし、 上記のように、 本児は、 手で風船を持ち口 でその 風船をなめ、 あるいは手をなめて側臥位の姿勢を維持した。 その手の使い方は、 バ ランスの調節というよ りも外界へ向か う姿勢を作るための手の使用であった。 その意味で は、 中島の言う3つの手の役割以外にも手の重要な役割があると言える。 手を通して外界に 対峠する姿勢ができたからこそ、 側臥位の姿勢のときに、 指導者が手を横回転スイッチや 光回転スイッチの輪に持 っていけば手を上下に動かして課題を遂行したと考えれる。 手を
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口に持っていくという、 何の意味もないような行動が実は重要な役割を担ってい たのであ る。 この事実は、 重度・重複障害児の微細な行動にも重要な意味 があり、 その指導では細 かな行動にも目を配る綴密な 指導が必要 であるということを示している。 同様な 事実 が健 常児についても報告されている(進, 1993b)。 いずれにしても、 外界に対峠するための姿 勢を作るために手が重要な役割を担っていたと考えられる。
事例4 定頚が困難な重度・重複障害児の姿勢と操作行動 1. 事例紹介
1.生年 月日:198 4年10月8 日(男児)、 指導開始年齢6 歳1 か月、 指導場所:国立S病院重症児 病棟プレイルーム、 指導期 間:1年9 か月、 指導回数:週l回2時間o
2.生育歴: 生下時体重3,068g。満期・正常分娩。1985年5 月(生 後7か月)発熱(40度)。
T小児科で風邪と診断されるが、 熱 が下がらないため、 K病院に転院、 細菌性髄膜炎と診断 される。1986年(2歳)と1988年(3歳)の問に3度髄膜炎を再発。 1985年5 月(生後7か月) で髄膜炎になる以前は座位が可能であったが、 その後寝たきりとなり玩具も握らなくなっ た。1989年2月(4 歳4 か月)S病院に入院。 医学的診断: 細菌性髄膜炎の後遺症。 痘直、 強 間IJなどの麻痩が有り。 麻痩のため 後弓反張の姿勢になる。
11.指導開始 時の状況(1990年10月"-'1991年2月)
姿勢:背臥位で、寝たきり である。 全身(四肢・体幹)にはジワッとした強い筋緊張がある。
寝返りなど自力での姿勢の変換は困難 である。 腹臥位の姿勢のときは、 両肘を内に引っ込 め、 顔、を横に向け、 床につけ、 頚を挙げることは できない。手足:手足は伸展位で、ある。 い つもは手を斜め下の方向へ伸展させ指を握りしめ閉じているが、 肘を屈曲させるときもあ る。 手を 開いて木球などを持たせてもすぐに手から離れる。 目:玩具や人の顔を注視しない
が、 人の動き を追視する。 人の動き を追視するときは、 後弓反張の姿勢になる。 耳:声かけ に対しては笑顔が見られる。 大豆、 紙のこする音、 チャイムの音に対しては振り向くこと はないが眼球 をその方向ヘ向ける。 口:風船を口のところに持っていけば、 口を 動かしてな
める行動が 発現する。 日常生活:食 事はミキサー食。 排尿・排便はおむつを使用。
III.問題の整理と行動目標
背臥位で寝たっきり で全身 に筋緊張の元進が見られる。口に風船を持っていけば、 口で なめる行動が出現するので、 口で操作する行動を形成する。 頚が座っていないので、 座位 での指導は困難であるが、 側臥位の姿勢であれば可能であると考えられる。 そこで、 側臥
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位の姿勢で手で操作する学習をする。 したがって、 行動目標は、 背臥位の姿勢では口(歯) で操作する(発達援助技法1)、 側臥位の姿勢では口で操作する(唇、 歯でスイッチを押す)、
目で見ながら操作する(以上、 発達援助技法2)という行動になる。
IV.指導経過
1.背臥位の姿勢での操作行動の促進(1991年4月"-'1991年10月) 1)発達援助技法の選択
指導者が口に風船を持っていけばなめる行動が出現するので、 背臥位の姿勢で口(歯) で操作する学習をする。 したがって、 下位の行動目標は、 発達援助技法lの下位の行動目標 的の項目になる。
2)指導条件の要素
姿勢は背臥位の姿勢である。 認知領域は口である。 教材はフレキシプルスイッチ(教材 一覧表Fig.3)である。
3)下位の行動目標
口でフレキシプルスイッチを押してチャイムを鳴ら す。
①指導手続き
風船で口の運動を促進した後、 口でフレキシプルスイチを押して鳴らすように働きかけ
る。
②経過
背臥位の姿勢のとき、 人の動きを追い後弓反張の姿勢にな った。 しかし、 日常は背臥位 の正常位(頭を正面に向けた姿勢)の姿勢でいる。
背臥位の正常位のとき、 正面30cmの位置にフレキシプルスイッチを提示した。 1991年 の 4月は、 フレキシプルスイッチを直接提示するだけでは注視、 追視の行動は発現しな かった。
5月には、 指導者が風船で口を触れば、 本児が舌や唇を突き出し、 風船の表面をなめたり、
風船の結び目を歯で噛んだりした。 その後、 フレキシプルスイッチを口に持っていくと、
口を上下に動かしてスイッチを押しチャイムを鳴らした。 口でチャイムを鳴らした後であ れば、 眼前30cmの位置にスイッチを提示すれば、 それを注視、 追視した。 7月には、 眼前3 Ocmの位置にフレキシプルスイッチを提示したとき、 スイッチを注視し、 口を開けたり閉め たりして口を動かす予測行動も出現した。 9月には、 フレキシプルスイッチを口に提示した とき、 スイッチが少し遠くにあれば、 頭をわずかに床面より持ち上げ、 舌や唇を突き出し スイッチを押して鳴らした。
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