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企業倫理論 の視座

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研究論文

企業倫理論 の視座

小 島 大 徳

アブス トラク ト

本稿では、企業倫理 を今一度整理 し、新 たな視点を提示す ることを 目的 とす る。企業経 営 を考 える上で、 「社会」の意味を じっ く りと検討す る必要がある。 この ことは、企業経 営の幹 とな りつつあるコーポ レー ト・ガバナ ンスだけではな く、企業の社会的責任 (CSR) や企業倫理においても、共通の課題 である。そ こで、今までの企業倫理論の議論 をま とめ、

これか らの学問的な発展 を望みつつ、本論 を論 じている。

今までの株式会社‑の牽制や抑制、あるいは指導な どの議論は、制度 自体 を根本的に変 えなけれ ば、限界があると考 えなけれ ばな らない。そのため、今までの株式会社の機能 を 中心に語 られてきた株式会社論ではな く、新 しい会社制度の創設 を視野に入れた議論が活 発 となること‑の基礎理論 を提供す る。

1.概要 と目的

企業不祥事が多発 し、企業経営者の倫理性 が 問われ るなか、学問の世界で も、企業論理論 の 確立に向けて、あ りとあ らゆる方面か ら研究が な されてい る。 もちろん、企業倫理 に関す る研 究は、企業経営が大規模化 し多様化 してい るな かで論 じられてきたわけであるが、特に最近、

企業倫理の確立が 目指 され、注 目が集 め られて いるのである。このような傾向は、21世紀に入っ てか ら顕著 となってい る。

企業倫理は、株式会社 の発展 とともに展開 さ れてきた ことに特徴 を見出す ことができる。つ ま り、会社が出資者 と経営者の未分離状態 にあ るときは、企業経営者 の倫理性 を問 うだけで良 く、犯罪行為が行われて も企業経営者 を罰すれ ば良いのであった。 しか し、株式会社が高度化 す ると、出資者 と経営者の分離が起 こ り、企業 の責任主体が明確ではな くなる。それにつれて、

執行の主体 も明確 にはな らず、倫理 を求 め られ る主体が何処にあるのかは判然 としない。また、

責任主体が明確 にな らないのな らば、経営に当 た る経営者 のモ ラルが低下す るのは人 として当 然 であることになる。一方、企業不祥事の多発 は、社会 システムの中で捉 え、解決 を促 さなけ れ ばいけない とい う論が出て くる。 この社会 シ ステムの中で企業倫理 を とらえる方法は、時 と して経営者の 自制 を促す効果を持 ち合わせ るが、

制限 とい う側面を持つ ことになる。

この よ うに、人 としての責任 、社会 システム の制限、 とい う2つの方法によって企業倫理が 捉 え られ ることが多い。 このよ うに展開 され る 企業倫理 を今一度整理 し、新たな視点 を提示す ることが本稿 の 目的である。企業経営 を考 える 上 で、 「会社」や 「社会」 の意味 を じっ くりと 検討す る必要がある。 このことは、企業経営の 幹 とな りつつあるコーポ レー ト・ガバナ ンスだ けではな く、企業の社会的責任 (CSR)や企業 倫理 において も、共通の課題である。 この機会 に、今までの企業倫理論の議論 をま とめ、これ か らの学問的な発展 を望みつつ、若干の思いを 記 していきたい。

(2)

図1 2つの企業原理

第1の企 業原理

第2の企 業原理

(出所)筆者作成。

利潤活動

法令遵守

2.

企 業 原 理 と企 業 倫 理

2.1企業原理 と企業 目的

企業経営において企業倫理論 を検討す る場合 に、企業活動の根本的原理、つま り企業原理 を はっき りと確認 してお く必要がある。本来な ら ば、倫理は人の主に内心的事象 を扱 う分野であ るか ら、企業の存立的基盤 と経営事象 の両側 面 か ら検討 を始 めなけれ ば、行 き詰 ることになろ うo ここでの検討 は、民主資本主義経済体制 で あることを前提 とす ることを最初 に明 らかに し てお こ う。

まず、企業の存立理 由は、一人ひ とりでは為 し得ない経済的発展お よび経済的受益のために、

市民社会が会社 とい う存在 を認 めた ところか ら 始 まる。つま り、一人では経済規模 の拡大 と経 営の多様化 に限界 を生 じることか ら、社団の必 要 を認識 し、法人 を作 り上げた ところにまで遡 るのである。そ こで、第1の企業原理は、営利 性 にあるとい うのが、経営学における共通の認 識である。

また、会社制度の確立によって、会社 は資本 主義社会 において、主役 の座 を確立 したのであ るが、会社の規模 が大き くなると、当初予定 し なかった負 の影響が次第に露わにな り、規模 も 大 きくなったのである。つま り、会社 は営利活 動 を行 うだけではな く、社会性 も持 ち合わせ 、 適正な社会 を作 り上げる義務 を有す るべ きだ と い うのである。そ こで、第2の企業原理 は、社 会性 にあるとい うのが、経営学 にお ける共通の

基礎 的営利性

基礎 的社会性

認識 である。

これ らの第1の企業原理 と第2の企業原理は、

実際の会社 の経営行動‑ と導かれた ところの利 潤活動お よび法令遵守 と極 めて密接 な繋が りが ある。

2.2市民社会 と企業経営活動

市民社会 は、企業 を存立 させ るために、 2つ の企業原理である利潤活動 と法令遵守 を、制度 のなかに込めた。 まず、法令遵守については、

企業存立の根拠 として、企業の設立要件 な どの 準則主義的要件 を規定 しつつ、企業の経営要件 な どの活動範 囲の画定を行 ってい る。 この こと は、市民社会が設立を行 ったのであるか ら、人 としての 自由の範囲外 に存在す ることは皆無で あると認 めなけれ ばな らない。ただ、企業の倫 理性 を担保す るために、 自主規則遵守や社会規 則遵守 を行 うことは、なん らの妨げ もない。つ ま り、 自己で 自己の 自律 を行 うことは、市民社 会の一員 と欲す るかぎ り、極 めて正 当化 され る 事象 として評価す るべ きである し、評価 され よ

うと努力す ることを賞賛す るべ きである。

また、利潤活動 については、高度経済成長 を 行 うために、市民社会の構成員である一人ひ と りが為す事ができない団体 としての利益 を受 け つつ、企業経営の 自由を享受す る。 このことは、

市民社会が経済的利益 を最大限に受益す るため に設立 したのであるか ら、人の 自由 と同様の権 利 を認 める必要がある。ただ、人の 自由 と企業 の 自由が対立 した ときに、高度 な企業社会責任

(3)

図2市民社会か らの利潤活動 と法令遵守の要求 と対立

社会への利益配分

(出所)筆者作成。

利潤活動

利潤活動

図3利潤活動 と法令遵守の方程式

法令遵守

法令遵守

(出所)筆者作成。

が生まれ る余地が多分 にある。つま り、人の 自 由 と企業の 自由は、時代によってその範 囲が拡 大 した り縮小 した りす る傾 向が強いため、裁判 やADRによる調整機能の多様化 が求め、探求 さ れ ることになろ う。

この段階においては、市民社会か ら授権 を受 けた企業は、利潤活動 と法令遵守は、協調 関係 にある。 なぜな らば、市民社会か らの直接的授 権 を受 けているため、市民社会による各種の監 視 ・牽制機能 を企業に対 して直接的に発揮す る ことができるか らである。 しか し、企業活動が 高度化す ると、逆機能が徐 々に現れて くること になる。それが、高利益の獲得 と倫理性 の確 立 とい う2つの事象である。経済システムが確 立 し、グローバル に展 開す るよ うになると、企業 は 自己のなかで、企業原理の矛盾 と対立に苛ま れ るのである。 なぜ な らば、市民社会は、企業 の存在理 由 としての究極 の 目的 として、社会‑

の利益配分 と規範的企業であることを求めるか らである。

規範的企業分

企 業不祥事 の虞 が強 い

‑ 収益低下の虞 が強 い

2.3企業経営における利潤活動 と法令遵守

企業原理の2つである利潤活動 と法令遵守の 狭 間で、企業活動は行われてい る。 もちろん、

企業原理は、それぞれが存在意義 と存立理 由の 2つを持つのであるか ら、 どち らの原理 も大切 に しなが ら企業活動 を行 うべきである。 しか し、

この両者 は多 くの場合 に、二律背反す る本来的 矛盾の関係 にある。

企業活動が高度化す ると、利潤活動 と法令遵 守の対立が起 こるのである。企業経営において、

利潤活動の方が法令遵守 よ りも重 きを置いてい る場合 は、企業不祥事の虞が強 くなる。一方、

法令遵守の方が利潤活動 よ りも重 きを置いてい る場合 は、収益低下の虞が強 くなる。 この どち らの場合 も、市民社会か らの企業‑の要求 を満 たす ことができない ことになるばか りか、企業 の存立にも関わることである。つま り、利潤活 動 と法令遵守 とが、企業に とってバ ランス良 く 認識 され、経営を行 っていけることが、最高度

(4)

図4企業倫理の内容 と性格

(出所)筆者作成。

自主規則遵守 法令遵守

に企業 目的を達成 できている姿であると考 え ら れ よ う。

3.企 業 倫 理 と企 業 経 営活 動

3.1企業倫理の概要

企業倫理 には、法令遵守、 自律規則遵守、社 会規則遵守の3段階が存在す る。 まず、法令遵 守は、企業が法人格を与えられ、社団化 しつつ、

営利活動 を行 うための、存立的基盤 となる企業 法制度 を守 ることが最低限の規則である。つ ま り、企業の存在の根拠であ り、そこでは、「存立」

とい うキー ワー ドが強調 され ることになろ う。

また、 自主規則遵守は、企業 自体の組織 を独 自の色 に染 め、企業 目的を達成す るために全社 的に守 るべ き規則である。つま り、企業の 自律 の依拠 であ り、そ こでは、 「自尊」 とい うキー ワー ドが強調 され ることになろ う。

そ して、社会規則遵守は、社会の一員 として 認 め られ、企業が社会 に根 ざした経営活動 を行 うための基盤 を確立す るために、社会の暗黙 の 要求 に応 えるための、内心的規則である。つ ま り、企業が人た る存在 に同化す る欲求であ り、

そ こでは、 「尊敬」 とい うキー ワー ドが強調 さ れ ることになろ う。

これ らの考察は、客観的な検討であ り、企業 倫理論 は、企業 を対象 としてい るため、企業か

ら見た企業倫理の考察が必要 とされ る。

自律の依拠 一一一一一‑ 自尊

3.2企業倫理の性格 と内容

これまで、企業倫理について、法令遵守、 自 主規則遵守、社会規則遵守の3つに分 けて、大 まかに論 じてきた。 ここでは、 これ ら企業倫理 の3つの領域 について、性格や特徴的性質 を詳 しく検討す ることにす る。 まず、法令順守は、

企業が企業の基盤 の前提 となる法律や上場規則 を遵守す ることである。そ こでは、企業は この 分野を絶対的遵守規定 として捉 える必要があ り、

強制 としての性格 を有す る。 これは、企業側か らみ ると、規律性 の としての性質 を有 している と観念 され るのである。また、 自主規則遵守は、

企業が 自主的に策定 した社会規則な どを自ら遵 守す ることである。そ こでは、企業は、 この分 野 を自主的策定 ・遵守 として とらえる必要があ り、 自主 としての性格 を有す る。 これ は、企業 側か らみ ると、 自律性 としての性質 を有 してい る と観念 され るのである。そ して、社会規則遵 守は、企業が社会の中で人 として生き様 を求め、

人 となるべ く社会の規則 を守 ることである。そ こでは、企業は この分野 を社会的要求の実現 と して捉 える必要があ り、理想 としての性格 を有 す る。 これ は、企業側か らみ ると、不可視性 を 有 してい ると観念 され るのである。

3.3制度的企業倫理論 と哲学的企業倫理論

企業倫理の考察方法は、おおむね、制度的企 業倫理論 と哲学的企業倫理論 の2つに分 けるこ とができる。 まず、制度的企業倫理論は、社会 システムのなかで 自由と規律の調整 を行いつつ、

(5)

表1企業か らみた企業倫理 の詳細内容

細 目 内容 企 業か らみた性格 特 徴 的性 質

企業倫理 社会規則遵守 企業が社会 のなかで人 として 社会的要求の実現 不可視性 の生 き様 を求 め、人 となるべく社会の規則 を守 ること○ 〔理想〕

自主規則遵守 企業が 自主的 に策定 した社会 自主的策定 .遵守 自主性 規則 な どを自ら遵守す ることo 〔自主〕

法令遵守 企業 が企業 の存立基盤 の前提 絶対的遵守規定 規律性

(出所)筆者作成O

5

制度的企業倫理論 と哲学的企業倫理論

(出所)筆者作成。

企業 の倫理 的立場 を明 らかに させ 、企業 の 自律 を促 そ うとす る考 え方 である。つま り、制度 的 企業倫理論 の 目的は、企業倫理 を確 立す るた め の社会 システムは如何 なる姿なのか を探求す る ことにな る。 そ して、企業倫理 を確立す る手段 としては、外部 に よる監視 ・監督体制 を通 じた 企業経営の 自律 を促す制度 の模 索 を続 けること

に焦点が集 ま るのである。

また、哲学的企業倫理論 は、人 と企業の関係 のなかで企業モ ラル の模 索 を行 いつつ、企業 を 人 として実在す るもの と捉 え、企業 と経営者 の 一体化 を促 そ うとす る考 え方 である。つ ま り、

哲学的企業論 の 目的は、企業倫理 を確 立す るた めの経営者倫理 は如何 なる姿なのかを探求す る ことになる。そ して、企業倫理 を確 立す る手段 としては、内部 による経営者教育 ・育成 と同視 した企業 としてのモ ラル の模 索 を続 けることに 焦点が集 ま るのであ る。

この両者 の存在 は、結局の ところ、企業経営

〔目的〕企業倫理を確立するための 社会システムは如何なる姿か。

〔手段〕外部による監視・監督体制 を通じた企業経営の自律を促す制 度の模索が行われる。

〔目的〕企業倫理を確立するための 経営者倫理は如何なる姿か。

〔手段〕内部による経営者教育・育 成と人と同視した企業としてのモラ ルの模索が行われる。

を如何 に捉 えるかに遡 る。 た とえば、法人擬制 説 的な考 え方 は、制度 的企業倫理論 との親和性 が強 いであろ うし、法人実在説 的な考 え方 は、

哲学的企業倫理論 との親和性 が強い ことになる。

また、近年 の コーポ レー ト・ガバナ ンス論や企 業社会責任論 について も同 じ検討 が加 え られ よ

う。 この よ うに考 える と、議論 が拡散す るであ ろ うか ら、 ここではその根本的立場 の相違 につ いて検討す ることを控 えよ う。 ただ、 この両者 の考 え方 の相違 は、企業倫理論 の多様化 を意味

してい る と指摘す ることはで きる。

4.企業システムと企業倫理論

4.1企業倫理論 の視座 と特徴

企業倫理論 は、既述の通 り、制度 的企業倫理 論 と哲学的企業倫理論 の2つ に分 けるこ とがで きるが、それぞれ の内容 を理解す るためには、

(6)

表2企業倫理 の視座 と特徴

企 業倫 理 の視 座 特徴

企業倫理論 制度的企業倫理論 〔意義〕

(1)社会システムの中に企業 を制度 として位置付 け、理論 を構築す る○

(2)システムの中の無機質な企業事態 を捉 え、経営者個人の倫理性 の確立を目指す ことになる○

(3)制度的企業倫理論は、経営者個人の倫理性 (経営者倫理)の確 立に向か うの と同時に、倫理を規則化 (倫理規則) して捉 えよ うと 努力 され るo

〔具体的事例〕

コーポ レー ト.ガバナンス原則、ⅠSO諸規則、国際的ガイ ドライン な ど

〔親和性のある研究分野〕

コーポ レー ト.ガバナンス論、法人擬制説 哲学的企業倫理論 〔意義〕

(1)企業を中心 として、企業 を取 り巻 く利害関係者 に与 える影響を 最 も重視 して理論 を構築す る○

(2)企業 自体 に倫理的価値観 を見出 し、経営者 と企業 を一体化す る ことを基本 とす るため、企業を倫理性の帰属主体 として捉 えるo (3)哲学的企業倫理論 は、企業の主体的役割 を個人の哲学的問題 に 結びつけ、個人倫理 と企業倫理の一体化を目指そ うと努力 される○

〔具体的事例〕

利害関係者論

〔親和性のある研究分野〕

(出所)筆者作成o

各 々を具体的 に検討す る必要 がある。

制度的企業倫理論 の意義 は、 (1)社会 システ ムの 中に企業 を制度 として位置付 け、理論 を構 築す ること、 (2)システムの中の無機 質な企 業 事態 を捉 え、経営者個人の倫理性 の確 立 を 目指 す ことにな るこ と、 (3)制度 的企業倫理論 は、

経営者個人の倫理性 (経営者倫理) の確 立に向 か うの と同時に、倫理 を規則化 (倫理規則) し て捉 えよ うと努力 され ること、の3つである。

この具体的事例 は、 コーポ レー ト・ガバナ ンス 原則、ISO諸規則 、国際的ガイ ドライ ンな どで あ り、親和性 のある研究分野は、コーポ レー ト・

ガバナ ンス論 、法人擬制説 な どであ る。

一方、哲学的企業倫理論 の意義 は、 (1)企 業 を中心 として、企業 を取 り巻 く利害関係者 に与 える影響 を最 も重視 して理論 を構築す ること、

(2)企業 自体 に倫理的価値観 を見出 し、経営者 と企業 を一体化す ることを基本 とす るため、企 業 を倫理性 の帰属主体 として捉 えるこ と、 (3) 哲学的企業倫理論 は、企業の主体的役割 を個 人

の哲学的問題 に結びつ け、個人倫理 と企業倫理 の一体化 を 目指そ うと努力 され るこ と、の3つ である。 この具体的事例 は、利害 関係者論 であ り、親和性 のあ る研 究分野 は、宗教 ・文化論、

経営者教育論 、法人実在説 なのである。

4.2企業倫理論の視座 と具体 的相違

制度的企業倫理論 は、まず基本的 に法人擬制 説 に立脚す る。 そ して、経営者 は、社会 システ ム として企業倫理 と人 としての個人倫理 を分 け て考 える。 また、従業員 は、企業 を高度 にシス テ ム化 され た創造物 である として捉 えるので、

従業員 と企業の関係 も、経営者 と企業の関係 と 同一である と捉 える。 なお、社会 は、社会 シス テ ムの 中の企業 を捉 えるので、利害 関係者 とし て認識せず 、社会全体 のなかの企業 としての役 割 と倫理 を認識す るのである。

一方 、哲学的企業倫理論 は、まず基本 的に法 人実在説 に立脚す る。 そ して、経営者 は、企業

(7)

表3企業倫理視座 と具体的相違

企 業 経 営者 従 業 員 社 会

制度的企業 法人擬制説 社会システムとしての 企業を高度 にシステム 社会システムの中の企 企業倫理 と人 としての 化 された創造物である 業を捉 えるので、利害 個人倫理 を分けて考え として捉 えるので、従 関係者 として認識せず、

倫理論 るo 業員 と企業の関係 も、経営者 と企業の関係 と同一であると捉えるo 社会全体のなかの企業認識するoとしての役割 と倫理 を

哲学的企業 法人実在説 企業 と経営者 を同化 さ 企業を倫理性 のある個 企業を中心 として倫理せて倫理を考える○ 体 として捉 えるので、企業 と従業員 とい う特 論 を構築す るために利害関係者 を細か く細分

(出所)筆者作成。

を倫理性 のある個体 として捉 えるので、企業 と 従業員 とい う特殊 な関係 を認識 しつつ、従業員 にも人の倫理 を求める。 なお、社会は、企業 を 中心 として倫理論 を構築す るために利害関係者 を細か く細分化 し、個 々にアプ ローチす ること を追求す るのである。

このよ うに、両者いずれかの考 え方 を とるか によって、企業の本質的捉 え方が異なって くる。

逆 をいえば、企業の捉 え方によって、企業倫理 の考 え方がまるで違 って くるのである。そのた め、コーポ レー ト・ガバナ ンスの議論 と同様 に、

企業倫理論 を突 き詰 めてい くと、 「企業 とは何 か」 とい う話 に行 き着 くことになることも、認 識 してお く必要がある。

4.3企業倫理 とコーポ レー ト ・ガバナンス

ここでの論か ら導 き出 され るのは、企業倫理 論 は情報開示 ・透明性 と極 めて親和性があるこ とである。 ここか らも う少 し突 っ込んで論 じる と、 (1)企業倫理論の基礎 は、情報開示 ・透 明 性 を基礎 となる、 (2)企業倫理論は、広義のコー ポ レー ト・ガバナ ンス論の範境に捉 えることが できる、の2つである。

まず、 (1) については、企業倫理 を発揮す る ために外部お よび内部 の監視 ・牽制が絶対的に 必要であることに基礎付 け られ る。つま り、人 たる倫理観 に全てを依存す るには、あま りに他 力本願 であ り、経営者職能 としての倫理 を持 ち

合わすためにも、組織や制度 としての倫理的能 力の発揮 を前提 としなければな らないのである。

その倫理的な制度 こそが、情報開示 ・透 明性 で ある。情報開示 とは、経営者 による会社情報の 積極的開示 を意味 し、透 明性 とは、利害関係者 が会社情報 にアクセスできることを意味す る。

これは、企業 とい う制度のなかにおいて、情報 開示 ・透明性 が根底 にあるか らこそ、 これは、

企業の倫理 を捉 えるに当た り制度論 をまず論 じ るべきであるとの筋 に繋がることになる。 この よ うに、企業倫理 こそ、情報開示 ・透明性 と絡 めて論 じ実践 していかなけれ ば、企業倫理の確 立 を 目指す ことは永久に不可能であろ う。

一方、 (2)については、制度的に企業倫理 を 考 えることが有効であるとい う前提 に立てば、

コーポ レー ト・ガバナ ンスの一部分 として企業 倫理が存在す ると基礎付 け られ る。つま り、今 日の会社制度 の統治お よび監視や牽制の役割 を 担 っているのが コーポ レー ト・ガバナ ンスなの であるか ら、 この コーポ レー ト・ガバナ ンスの 一部分 としての企業倫理 として位置付 けること も可能であることを導 く。 もちろん、両者 の必 要性お よび実践過程 は、別 々の過程 を辿 ってお り、明 日にも両者 を融合 して論 じることに、違 和感 を覚えなくもない。 しか し、コーポレー ト・

ガバナ ンス論 の出現理 由である企業不祥事‑の 対処の問題 と、企業倫理 にお ける経営者倫理の 欠如には共通点が多 く含 まれてお り、発生原 因 はほぼ同 じであることを認 めな くてはな らない。

(8)

図6コーポ レー ト ・ガバナ ンス と関連学問の関係

コーポレート

ガバナンスの体系 企業経営機構 情報開示 .透明

利害関係者論

コーポレート.ガバナ ンス論.利害関係者論企業倫理論 .

(出所)筆者作成。

この よ うに考 える と、今後の研 究 において、新 しい会社制度 を立 ち上 げる場合 に、 この両者 を 同時 に考 える とい う場面が現れ るであろ う。

5.

結論 と展望

今 日では、資本主義社会 の主役 である株式会 社 の制度疲 労が、徐 々に露見 してい る。すべ て の終わ りを精算す る世紀 で もあ り、新 たな始 ま りを創 出す る世紀 で もある21世紀 では、時代環 境 に合 わせ たプ レーヤー を創 造 していかなけれ ばな らない。 そ こで、現代 にお ける企業社会 に おいける3大 トピックである、 コー ポ レー ト ・ ガバナ ンス、企業倫理、CSRの視点か ら検討 し、

新 たなポス ト株式会社 の姿 を模 索す るこ とが肝 要 となろ う。

株式会社 とい う存在 を、代 えることのない永 続 的な もの として認識 していたか ら、その制度 的な疲 労 を埋 めるために、数 々の理屈が生 まれ てきた。 それ は、 コーポ レー ト・ガバナ ンスで あ り、企業倫理 であ り、CSRで ある。 しか しな が ら、 この よ うな株式会社‑の牽制や抑制 、 あ るいは指導 をい くら行 った ところで、制度 自体 が変化 しないのであれ ば、限界がある と考 えな けれ ばな らない。 そのため、今 までの株 式会社 の機能 を中心 に語 られ てきた株式会社論 ではな く、新 しい会社制度 の創設 を視野 に入れた議 論 が活発 とな るこ とを切望 してい るのである。 そ して、 この よ うな役割 が、私た ちに寄せ られ て い るのではないか と、痛切 に感 じてい るので あ

る。

参考文献

菊地敏夫 ・平田光弘 ・厚東偉介編著 『企業の責任 ・ 統治 ・再生』文集堂,78‑95頁.

小島大徳[2008a]「市民社会論 と利害関係者論」

『国際経営 フォー ラム』第19号,神奈川大学 国際経営研究所,163‑186頁.

小島大徳[2008b]「コーポ レー ト・ガバナ ンス原 則 の隠れたる任務 と使命

『国際経営フォー ラム』第19号,神奈川大学国際経営研究所,

55‑77頁 .

小島大徳[2008C]「経営学 と株式会社論

『国際経 営論集』第35号,神奈川大学経営学部,13‑25 頁.

小島大徳[2008d]「コーポ レー ト・ガバナ ンス原 則論 とコー ポ レー ト・ガバナ ンス政策論」

『国際経営論集』第36号,神奈川大学経営学 部,63‑78頁 .

小島大徳[2008e]「自由の対立

『国際経営論集』

第36号,神奈川大学経営学部,119‑134頁.

小島大徳[2007

]

『市民社会 とコーポ レー ト・ガバ ナンス』文英堂.

小島大徳[2004]『世界のコーポ レー ト・ガバナン ス原則 一原則の体系化 と企業の実践‑』文鼻

.

小島 愛[2008]『医療 システム とコーポ レー ト・

ガバナンス』文最堂.

平田光弘[2008]『経営者 自己統治論』中央経済社.

図 2 市民社会か らの利潤活動 と法令遵守の要求 と対立 社 会 へ の 利 益 配 分 ( 出所)筆者作成。 利潤活動 利潤活動 図 3 利潤活動 と法令遵守の方程式法令遵守法令遵守 ( 出所)筆者作成。 が生まれ る余地が多分 にある。つま り、人の 自 由 と企業の 自由は、時代によってその範 囲が拡 大 した り縮小 した りす る傾 向が強いため、裁判 や ADR による調整機能の多様化 が求め、探求 さ れ ることになろ う。 この段階においては、市民社会か ら授権 を受 けた企業は、利潤活動
表 1 企業か らみた企業倫理 の詳細内容 細 目 内容 企 業か らみた性格 特 徴 的性 質 企業倫理 社会規則遵守 企業が社会 のなかで人 として 社会的要求の実現 不可視性の生 き様 を求 め、人 となるべく社会の規則 を守 ること○〔理想〕自主規則遵守 企業が 自主的 に策定 した社会 自主的策定 .遵守自主性規則 な どを自ら遵守す ることo 〔自主〕 法令遵守 企業 が企業 の存立基盤 の前提 絶対的遵守規定 規律性 ( 出所)筆者作成O 図 5 制度的企業倫理論 と哲学的企業倫理論 ( 出所
表 2 企業倫理 の視座 と特徴 企 業倫 理 の視 座 特徴 企業倫理論 制度的企業倫理論 〔 意義〕(1) 社会システムの中に企業 を制度 として位置付 け、理論 を構築する○(2)システムの中の無機質な企業事態 を捉 え、経営者個人の倫理性の確立を目指す ことになる○(3)制度的企業倫理論は、経営者個人の倫理性 (経営者倫理)の確立に向か うの と同時に、倫理を規則化 ( 倫理規則) して捉 えよ うと努力 され るo〔具体的事例〕コーポ レー ト.ガバナンス原則、ⅠSO諸規則、国際的ガイ ドラインな
表 3 企業倫理視座 と具体的相違
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