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環境管理会計 に関する一考察

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「環境管理会計 に関する一考察」 1

環境管理会計 に関する一考察

一 非制 度会計 的ア プ ローチ と実践 に関 す る考察一

神奈川大学大学院 経営学研究科 博士後期課程

高 瀬 智 幸

(目 次)

第1章 環境問題 と環境会計

第2章 環境会計の定義 第3章 環境会計 の実践

第4章 環境会計情報のデ ィスクロージャー 5章 環境会計 の展望

(2)

2 研究年報 第5

第1章 環境 問題 と環境会計

1‑1.環境 問題 の深刻化 と環境会 計

世界的な環境問題 の深刻化 に伴 い、様 々な方面か らの同問題 に対す る関心が高 まって いる。環境問題へ の取 り組み は、生活者 ・消費者 とい う個人単位 の活動 に留 まらない。

地方 自治体や国家の活動 も盛 んであ り、法規制の制定 も進め られている。 さらには、国 際的な環境保全規格の制定 と認証取得の増加 に見 られるような、国家 を越 えた動 きも見

られるようになっている

上述の外的要因は、社会的存在 としての企業 にとって無視 し得 る ものではな くなって きている。 また、営利主体 とい う企業の本質的なあ り方か らして も、 グ リー ン ・コンシ ューマーに代表 される環境意識の高 い購買者 の動 向は軽視 し得 ない。個 人のみ な らず、

地方 自治体 や国家、あるいは企業等 の顧客や取引先 の動 向 も、企業の経営活動 に大 きな 影響 を与 える。企業外部 の利害関係者の多 くが環境問題 に対 して高い意識 を持つ ように なった今 日、企業が環境 問題 を重視す ることは事実上不可能 とな りつつある。 ゆえに、

企業はなんらかの対応、す なわち環境保全活動の実施 を要求 されている。

かつて筆者 は柳 田仁 (神奈川大学)教授 と共 に、企業の環境問題 に関す る意識調査 を 行 った (注1)。1996年か ら1997年 にかけて行 われた調査結果の詳細 は別稿 にて述べ てい るが、企業側の感想 として非常 に興味深かった点が2点ある。その第1点 は、「我 々は製 造業ではないので、公害問題 とは関係 のない業種 である」 とい うもの。そ して、第2点 は 「国外企業 との取引 を行 っていないので、環境問題へ の配慮 を特別必要だ とは感 じて いない」 とい うものであった。

環境問題 は、公害問題 ではない。かつて きわめて深刻 な問題 と認識 され、社会的に も 高い関心 を集めた公害問題 は、特定の企業が特定の地域 において、特定の形態で発生 さ せ た環境問題である。同問題 では、環境 に対す るマイナス影響 (以下、環境負荷 と称す る)が、結果的に特定の地域 に留 まった。 しか し、今 日取 り上げ られている環境問題 は、

製造業のみが環境負荷発生源ではない。業種 ・業態 ・規模 を問わず、全 ての企業が問題 の源 とな り得 る ものである。企業のみな らず、個人か ら国家 に至 るまで、 どの単位 に属 してい ようと環境負荷 を発生 させ得 る。そ して、その影響範 囲は特定地域 に留 まる とは 限 らない。 しか し、5年前 の調査 において、環境 問題 を公害問題 と同一視 し、 自社が製 造業ではない とい う理由か ら環境問題‑取 り組 む必要はない と回答 した企業が存在 した

ことは事実である。

また、「国外企業 との取引が ないため、環境 問題 に対す る配慮 は必要 ない」 とい う考 えを示 した企業 に関 して、営利主体 とい う本質論 か らすれば、「営利 に関係 ない活動 は 行 わない」 とい う、既存 の論理 に沿 った行動 と捉 えることもで きる。 しか し、企業 は社 会的な存在 で もある。ゆえに、社会がその存在 を許 さな くなった時、存続が許 されな く

なる。す なわち、営利活動 の継続 も不可能 になるとい う指摘がで きる。

さらには、営利主体 とい う本質論 か ら考 えて も、企業の環境保全活動 に対す る取 り組

(3)

環境管理会計 に関す る一考察3

みは必須 とな りつつある。前述 したように、企業外部の利害関係者の多 くが、程度の差 こそあれ環境問題 に関心 を抱いている。 また、国内企業やその他 の組織が、国際的な環 境保全規格 であるISO14001の認証取得 を、す さま じい勢いで進 めている。 日本 は今や、

同規格 の認証取得サイ ト数世界最多国 となっている (注2)。確か にかつては、環境問題へ の取 り組み は、国外企業、特 に欧州企業 との取引 に際 して無視 で きない要因であった。

しか し今 日では、国内企業 との取引 において も同様 の配慮が必要 となって きているので ある。

国内のみで経営活動 を展 開 している企業であった として も、環境問題への取 り組み を 無視で きない状況がで きあが りつつあ り、今 もそれは進展 し続 けている。そ して現実 に、

環境報告書 を発行す る企業の数 は年々増 え続 けている。 これは、企業が環境 関連情報 を 外部へ開示す ることの必要性やメ リッ トを認識 している とい うことの、端的な現 れ と捉

えることがで きるだろう。

1‑2.企 業の環境 問題 に対 す る取 り組 み と環境 会計

企業が環境問題 に取 り組 む際 に影響 を及 ぼす外部要因 として、前述 した ような法規制 やISO14000シ リーズ ・環境JIS等の規格、生活者 ・消費者の環境意識の高 ま り等が挙 げ られる。 この他 、金融機関のエ コファン ドの展 開によって、資金調達 における有用性 も 認識 されるようになった。株式等の資金調達手段がすたれた とは言わないが、バ ブル経 済崩壊以前 ほ どの活況は、今 はない。エ コファン ドは金融機 関の貸 し渋 り等、資金調達 面で苦境 に立 た されている企業 にとって、重要 な資金調達手段 と認識 される可能性が高

い。

一方、企業 に環境保全活動 を実施 させ る内部要因、す なわち自発 的に環境保全活動 を 実施 させ る要因であるが、企業は閉鎖 された存在 ではな く、外部 とのや りと りを通 じて 営利活動 を実施 している点 を考慮す る必要がある。企業が外部の動向 を無視 で きない以 上、前述の外部要因はその まま内部要因に影響 を与 える。 ただ し、内部要因 として捉 え た場合、「営利主体」 とい う企業の本質 に係 わる部分 に直結す る事象 ほ ど、重大 な もの として認識 される傾向が見 られる。

企業の環境保全活動 は、営利主体 としての企業 に十分 な利点 を与 える。場合 によって は、活動の有無が企業存続 を左右す るまでになっている。である以上、環境保全活動 を より効率的に展 開す る上で、内部の経営意思決定 に有用 な関連情報の作成 を要求す る動 きが発生す る。 さらに、 よ り適切 な意思決定 と、 さらなる効率化 を目指す ことで、作成 情報の精微化 を指向す ることになる。す なわち、情報の精教化 は、外部 の情報利用者の みな らず、企業内部か らの要求で もあるとい うことである。

企業の環境関連情報の作成 ・開示 に関 して、「よ り詳細 な ・よ り正確 な ・よ り有用 な」

情報 を求める欲求が企業の内外 か ら高 まった結果、環境会計 とい う技法 に対す る関心が 強 まっている。環境会計 を導入 ・実施 し、関連情報 を開示 している企業 は、現時点では

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4 研究年報 5

それほ ど多 くはない。 しか し、環境会計 に関心 を示す企業が数多 く存在す ることも事実 である (注3)。環境会計 は、企業の環境 関連情報作成 ツール として、その有用性 を認知 さ れて きていると捉 えることがで きるだろう。

しか し、 ここで一つの問題 を指摘 で きる。それは、「環境会計 とは何 か」 とい う、最 も根元的な問いに対す る明確 な答 えが、現時点では存在 しない とい うことである。そこ で本稿では、筆者の考 える環境会計のあ り方 を述べ、その考 え方 に基づいて企業 ・組織 が実践 している環境会計技法の代表例 を分類す る。さらに、外部への情報開示 に際 して、

整備 されなければな らない条件等 を考察 した上で、今後の展望 を述べ ることとしたい。

第2章 環境会計 の定 義

2‑ 1.管理会計 的手法 によ る環境会計 の構築

前章で も述べたが、現時点 において一般 に認め られた、確 たる環境会計 の定義 は存在 しない。そこで、本章では本稿 において扱 う環境会計 の定義 を挙 げることとす る。

企業 を営利主体 と位置づ けた場合、既存の考 え方 として 「費用最小 ・効果最大」 とい う一つの 目標が設定 されている。 この場合の効果 とは、基本的 に経済的効果 を意味 して いる。 しか し、環境保全活動 を経営活動 に包含 した場合、効果 を経済的な ものに限定す ることは問題である。

それゆえに、環境保全活動 を経営活動 に包含 した企業では、「効果」 に経済的効果 と 環境保全効果 とい う2つの効果 を含める必要がある。 この場合、それぞれの効果 に費用 を対応 させ ることによって、費用対効果の最大効率化 を目指す とい う方向性 を模索する ことになる。 このことか ら、環境会計 もまた、環境 コス トと環境保全効果 ・環境経済効 果 とい う3要素 を包含 した形で構築する必要がある。

また、既存 の会計 システムに対 して環境会計 をどの ように位置づけるか も、構築 に際 して考慮 してお く必要がある。例 えば、既存 の会計 システムに環境会計 を包含す る とい う方向性 を選択 した場合、貨幣数値化 とい う点が問題 となる。環境 関連 の諸情報 には、

貨幣数値化が困難 もしくは不可能な ものが多 く含 まれているか らである。

さらに、費用 をどの ように捉 え、情報化す るか とい う点 も問題 となるであろ う。す な わち、費用 は基本的に、経済的効果 を生 じさせ るために費消 された経営資源の額 とされ ている点である。 この点 を厳密 に遵守 した場合、環境 コス トの大部分が損失 として処理 される恐れが指摘で きる。 この場合、費用 として認め られる環境 コス トは、経済的効果 を発生 させ る環境保全活動か ら生 じた コス トで、かつその効果 との関係 を明確 に把握で きるものに限定 されるだろう。

これ らの諸点 を考慮すれば、環境会計 は管理会計 的な考 え方 を用いて構築 ・実践 して い くことが望 ま しい と考 え られる。本稿 では環境会計 を、「企業 の環境保全活動 の情報 化」 をよ り正確 に、適切 な形で行 うツール と位置づけている。それは、既存の会計 シス テムに包含す る形ではな く、独立 した情報作成 ツール として構築 ・実施す ることによっ

(5)

「環境管理会計に関する一考察」 5 て可能 になると筆者は考 える。

2‑2.

本稿 にお ける環境会計 の定義

前節 にて、環境会計 は管理会計的な方法論 にて構築す ることが望 ま しい とい うことを、

貨幣数値化 とい う側面か ら述べ た。 しか しそれだけに限 らず、環境会計 にはよ り高い柔 軟性が求め られる。 なぜ な らば、環境問題 は非常 に多様性 に富 んでお り、統一的な技法 を用いた情報作成が きわめて困難 なためである。

環境会計 は、企業等の業種 ・業態 ・規模 に応 じて、多種多様 な情報 を扱 わなければな らない。 よって、統一的な技法 を厳密 に適用す る よ りも、遵守すべ き条件 を明確化 し、

それ らを満た していれば環境会計 の構築 ・実施が な されている と認 める とい う考 え方の 方が、 よ り現実 に即 しているもの と考 えられる。

この考 え方は、他者間の比較可能性 を無視 している とい う指摘 を受けるであろ う し か し、実例か ら見 る限 り、環境会計情報 は 自社 内の時系列比較 は ともか く、他者間の比 較可能性 を有 している とは言い難い。その理 由 として、業種 ・業態 ・規模 に応 じて発生 する環境負荷の内容 ・量が大 きく異 な り、負荷 に対処 した結果 として生 じるコス ト ・効 果 も企業等 ごとに大 きく異 なることが挙 げ られる。 また、比較可能性 を確保す るため に 必要 な条件が整 えられていない とい う点 も指摘で きる。 これ らに関する諸点は後述す る が、情報化 の対象 となる事象の多様性 を考慮すれば、上述の考 え方 に沿 った方法論が望 ましい と筆者 は考 える。上述の諸点 を踏 まえた上で、以下 に、筆者の考 える環境会計の 定義 を挙 げる。

筆者の考 える環境会計の定義 とは、以下の ようなものである。

・企業の環境保全活動 を情報化するツールである

・貨幣数値情報 を中心 とするが、貨幣数値情報のみにとらわれない

・活動 によって生 じた費用 は最低限把握す る

・活動 によって生 じた効果 を測定 ・把握 し、費用 と対応 させ る

・効果 は 「環境保全効果」 と 「環境経済効果」 に分類 して把握す る

これ らの内容 を満 た していれば、環境会計 として認める もの とす る。

なお、上記の 「環境経済効果」 とい う呼称 は、「環境保全活動 によって得 られた経済 的効果」 を意味す る もの とす る。以下 に 「環境経 済効果」 とい う用語 を用 いる場合 は、

この意味 にて用 い られている もの とす る。そ して、上記の 「環境保全効果」 とい う呼称 は、一般的に環境パ フオ⊥マ ンス と呼ばれているものである。環境負荷の削減値 、天然 資源消費量の削減値 に代表 される ものであるが、環境問題解決のための教育等 といった 活動 によって得 られた効果 も、環境保全効果 に含 まれる。以下、「環境保全効果」 とい

う用語 はこの意味 にて用 い られるもの とする。

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6 研 究年報 第5

上記の条件 に基づいた、本稿 における環境会計の骨格 となるのは、以下の3点である。

①環境 コス トの可能 な限 り正確 な把握

⑦ 「効果」 を経済的効果 と環境保全効果 に二分 し、それぞれを可能な限 り正確 に把握

③環境 コス トを2つの効果それぞれに対応 させ た書式 を作成

外部‑ の情報 開示 を目的 としないのであれば、上記 の3点 を踏 まえていれば環境会計 の構築 ・実施がなされていると判断 してよい と考 える。

環境保全活動 とい う 「活動」 を実施す る以上、そ こにはコス トと活動 の結果 (効果) が生 じる。ゆえに(Dの コス トの算定は必須 である。環境 コス トをどの ように定義づける かは、今 なお議論 の余地があ り、明確 な定義付 けはなされていない。本稿 における環境 コス トとは、「環境保全活動 によって発生 した経営資源の消費額」 を指 す もの とす る。

ゆえに、環境 コス トは基本的に、活動 ごとに分類把握す ることとなる

次 に② の、環境保全活動 によって生 じた効果の測定 ・把握 を行 うことで、情報有用性 を高 め る こ とが可能 となる。 そ して(参の 「費用 と効 果」 を対応 させ把握す る こ とで、

「費用最小化 ・効果最大化」 を追求す る。 これは既存 の考 え方 を環境会計 に適用す るこ とで、環境保全活動 の効率化 を図る とい うものである。 この ことによって、環境問題解 決 と企業内意思決定 に有用性 を発揮 し、 さらには外部情報利用者 に も有用 な情報の提供 が可能になる もの と考 え られる。

2‑ 3.環境会計 の構築 ・運用 上求 め られ る必 須条件

上記の定義、要素 に基づ く環境会計 の構築 ・運用 にあたって、守 らなければな らない と筆者が考 える必須条件が存在す る。 これは、環境会計が複数の 目的 を同時 に達成 しな ければな らない ことを考慮 した結果である。 ここで言 う複数の 目的 とは、環境会計が環 境問題解決のためのツールであると同時 に、営利主体 としての企業 に有用 な情報 を提供 す るツールで もあるとい う意味である。

ただ し、複数の 目的 を同時 に達成す るとして も、優先順位が必要 となる。なぜ な らば、

複数の 目的のいずれか を優先 しなければな らない状況 におかれた場合、意思決定者が適 切 な判断 を下せ ないか らである。 よって、本稿 における環境会計では、その構築 ・運用

に際 して以下の条件 を満 た している必要がある もの とす る。

①環境 コス ト管理 ツール として環境会計 を用 いる場合、環境 コス ト削減 によって環境保 全効果の減少や環境負荷 の増大があってはな らない

②環境経済効果 を優先 した結果、環境保全効果の減少 あるいは環境負荷 の増大 を引 き起 こしてはならない

③貨幣数値化 にこだわった結果、歪み を含 んだ情報 を作成 し、情報利用者の判 断 を誤 ら せ るようなことがあってはならない

④企業の規模 と活動量 を示す数値 を並記 しなければな らない

筆者 は基本的に、環境会計が企業の環境問題解決 に対す る取 り組み を縮小 ・停滞 ・停

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環境管理会計 に関す る一考察7

止 させ るようなツールであってはな らない と考 える。ゆえに、経済的利益獲得への貢献 よりも環境問題解決への貢献 を優先する。 この考 えに基づ き、上述の条件 を提示 した。

ただ し、前述 した ように、環境会計 は環境問題 の解決 と、企業の経済的な発展 ・存続 を両立 させ る上で有用 なツールでなければな らない。現状 において、経済的利益 のみの 最大化 を望 むことは論外 である。 しか し、企業 に対 して、経済的に不可能 な環境保全活 動 を実施す るよう要求す るこ ともで きない。 よって、「企業が 自社 の能力 における実施 可能な範囲内で、最大限の環境保全活動 を実施す る」 ことを前提 とする。その上で、関 連活動 を適切 な形 で情報化す るツールであることを環境会計 は要求 される と筆者 は考 え

る。

これは、環境会計 に多面的な能力 を持 たせ ることで、企業側 に対 して継続利用 に値す るツールである と認識 させ る必要があるためである。 この点 を配慮することは、環境会 計が一時的に使用 されるツールに留 まらず、継続利用 され定着す ることにつ なが ると筆 者は考 える。

第3章 環境会 計 の実践 3‑ 1.環境会計 の分類

本章では既存の環境会計技法 を、筆者の視点 をもとに分類 し紹介す る。 この分類 を簡 潔 にまとめると、以下の ように示す ことがで きる。 なお、② 以下の技法 は、基本的に環 境 コス トの算定 を実施 している もの とす る。

①環境 コス ト計算 中心型

②環境保全効果重視型

③環境経済効果重視型

④環境保全効果 ・環境経済効果統合型

⑤ 関連情報統一性重視型

上記の分類 は基本 的に、環境会計が扱 う情報の、詳細化 の進展度合いに応 じた もので ある。筆者 は、環境会計 の基本 は環境 コス トの算定である と考 えている。そ して、次の 段階 として、環境 関連効果が環境会計 システムの中に包含 されてい く。ただ し、環境保 全効果 と環境経済効果のいずれ を先 に環境会計 システムに包含す るかは、情報作成者が いずれの情報 を重視 しているかで異 なる。 ゆえに、 ここでは便宜上順序 を設定 したが、

② と③ の詳細化進展度 に関 して基本 的に優劣 はない。そ して、両効果 を包含 し、個別 に 環境 コス トと対応 させ る段階 にまで到達 した形態が④ である。 なお、⑤ は特殊 な形態で あるため、最後 に位置づけた。本章の分類基準か ら言 えば、④ 以前 の段 階に位置す る場 合 もある。

本章では上記の分類 に基づ き、理論 と実例 の検証 を行 うことによって、いずれの方法 論 を採用す ることが望 ましいかを考察 してい くこととす る。

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8 研 究年報 5

3‑ 2.環 境 コス ト計算 中心型

3‑2.に該 当す る環境会計 では、基本 的に環境保全活動 か ら生 じるコス トのみ を把 握 ・算定す る。効果 に関 しては環境保全効果 ・環境経済効果のいずれ も、環境会計 の書 式内において扱 わない。 これは最 も構築 ・実施が容易 な形態 と言 えるが、本稿 において は導入段 階 もしくは内部 目的を主 とした環境 コス ト管理 ツール として位置づけ られる

3‑2.に該当す る環境会計か ら作成 された情報 に関 して、情報 開示 目的に適用す るこ とがで きないわけではない。ただ しその場合 は、環境保全活動の実施事実 に客観性 を与 える裏付 け情報 ・追加情報 として用 いるべ きである。環境保全活動の良否 ・優劣 の判断 材料 として開示すべ きではない。 なぜ な らば、業種 ・業態 ・規模 に応 じて、環境 コス ト の発生額が異 なるか らである。 また、対応す る効果が示 されないため、情報利用者 はコ ス トの有効活用度 を判断で きない。ただ し、総 コス トに占める環境 コス トの比率 も合 わ せて開示 した場合は、ある程度 までだが積極性 を判断す ることが可能であろう

3‑2.の代表例 としては、 ドイツ連邦環境省 お よび同環境庁編 『環境原価計算 ガイ ド ブ ック』が提唱 している、「環境原価計算」が挙 げ られる (注4)

「環境原価計算」 は環境 コス ト管理 ツールであ り、かつ環境負荷削減 ツールである と位置づけ られている。 同技 法では、既存 の会計 システム内の原価計算 に手 を加 え、各計算場所か ら環境 コス トを抽 出 ・算定す る。 ゆえに、原価場所 ご との環境 コス ト算定、環境 コス トの発生源 の把握、

製品ごとの環境 コス ト算定が可能である。

「環境原価計算」 は、既存 の会計 システム利用 による実施容易性、 コス ト管理 ツール としての経済的利益増大 に対す る貢献、環境 コス トの発生源特定 による環境 コス トの管 理等 の利点 を有す る。具体例 として、環境 コス トが多額 に含 まれる製品の生産停止や縮 小、プロセスの改善や使用原材料の見直 しによる環境 コス トと環境負荷の削減 といった、

経営意思決定 における役立 ちが挙 げ られる。この他、部門別環境 コス ト集計 を行 うため、

部 門責任者の業績評価 に利用可能であるとい う利点 も指摘で きる。

ただ し、「環境原価計算」 は、環境保全効果 ・環境経済効果 を扱 わない。 ゆえに、効 果は環境 コス トの減少か ら、資源やエネルギーの消費量の減少 を把握す るとい うような、

間接的な形で しか認識で きない。

環境 コス ト中心型 の環境会計 を実施 している企業 としては、「日本 たば こ産業㈱」が 挙 げ られる。同社の環境会計 は、開示情報か ら見 る限 り環境 コス ト計算 に徹 している。

効果 に関 しては、「算定方法が確立 されていないため開示 しない」 としている。 なお、

同社 は環境負荷 に関す る情報 を、環境報告書 の中で開示 している。ただ し環境会計 とは 完全 に別個 に開示 されてお り、環境 コス トとの対応関係 も兄 いだせ ない。

3‑ 3.環境保全効果重視型

環境保全効果重視型の環境会計 は、環境保全効果関連の情報 を、実数値 もしくは記述 とい う形態で作成す る。 この型 の環境会計では、貨幣数値化等 の情報 の変換 を行 わない

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環境管理会計 に関す る一考察9

ため、比較的実施が容易 とい う利点 を有す る。 この ことは、技法か ら生 じる情報の歪み が少 ない分、比較的高い正確性が保持 される とい うことで もある。 また、環境意識の高 い外部情報利用者の要求 を満足 させ るような、情報の作成 ・開示が可能であることも指 摘で きる。

その反面で、環境問題 に関心の薄い企業 ・経営者 には、必要性 を認識 しづ らい とい う 欠点 も挙 げ られる。 これは、経済面の効果情報 を含 まないため、導入誘 因 と しての力が 弱い とい う意味である。加 えて、環境 コス トに経営者の関心が偏 った場合、効果の減少 を省みない環境 コス ト削減が実施 される恐れがある。 この ことは、結果 として環境保全 活動の縮小 を招 きかねない。

3‑3.の具体例 としては、「㈱大林組」が挙 げ られる。同社 の環境会計 が扱 う効果関 連の情報 は、環境保全効果が中心である。情報形態 としては、数量 ・記述形式の両方 を 用 いている。環境経済効果 は、環境保全 関連工事 を受註 した場合 に、 これを 「環境 ビジ ネス」 とし、その受注額 を環境経済効果 として示 している。 これ以外 の環境経済効果項 目は存在 しない。 なお、 この場合の受注額全 て を環境経済効果 に含めることを、適切 と 考 えて よいか、 とい う疑問は残 る。 しか し、算定可能性 を重視 し、技法か ら生 じる歪み

を極力排 した方法論 の一つ として、同社 のや り方 は評価 で きるだろ う。 なお大林組 は、

環境保全効果 ・環境経済効果、いずれの効果 も、環境 コス トとの対応 関係 は示 していな

い。

3‑ 4.環境経済効 果重視 型

3‑4.に該当す る環境会計 では、環境経済効果 を貨幣数値 にて把握 ・算定す る。ゆえ に、環境 コス トと環境経済効果 を比較す ることで、環境保全活動か ら生 じた利益 (もし くは損失)額の算定が容易である とい う利点 を有す る。 これは、営利主体 としての企業 を重視す る投資家 ・債権者 に対 して、高い有用性 を持つ情報 を作成 ・提供 で きる とい う ことである。 また、経済的利益 を示すため、企業 ・経営者 とって強い導入誘 因を持つ形 態 とも言 える。

ただ し、基本的に環境保全効果情報 を含 まないため、環境問題解決 に対す る貢献度合 いを直接的には示せ ない とい う欠点 も持つ。また、環境経済効果の計算 には見込み額等、

暖味 な数値 を利用せ ざるを得 ない場合が多い。 この ことか ら、程度の差 こそあれ、技法 か ら生 じる情報の歪み を免れ得 ない とい う問題点がある

3‑4.の代表例 の1つ 目は、「日本 アイ ・ビー ・エ ム㈱」 の環境会計 である。 同社 は 基本的 に、経営意思決定情報作成 ツール として 自社 の環境会計 を位置づけている。環境 経済効果 は基本的 に 「節約効果 (‑環境 コス トの削減値)」 として把握 している。 これ は、米国における 「環境 コス ト‑罰金 ・過料 ・税金」 とい う状況 を反映 している と考 え られる。

同社 にとって環境 コス トとは、法規制 を越 えた環境負荷 を外部へ放 出 した結果生 じる ものである。ゆえに、環境 コス トの削減 は自社の環境負荷発生量 を法規制内に抑 えた結

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10 研究年報 第5号

果 と考 える。すなわち、環境 コス トの削減 は、環境保全効果の達成 と自社 の経済的利益 獲得の両方 に貢献 している と考 えるわけである。同社 の2000年度版環境報告書 に記載 さ れた環境会計情報では、環境経済効果 と環境 コス トが並記 されている。 ただ し、両者の 明確 な対応関係 は示 されていない。 また、環境負荷情報 は、環境会計 とは別個 に開示 さ れている。

代表例の2つ 目は、「富士通㈱」 の環境会計である。同社の環境会計では環境経済効果 を重視 し、開示情報の全 てを貨幣数値化 している。 この点 において、同社 の環境会計 は 314.の代表例 と言 える。 しか しその一方で、見込額 ・推測値 とおぼ しき数値が多用 さ れている。 しか も、それ らの算定方法が開示 されていない。 これは正確性 において、大 きな問題 を抱 えている と言 わざるを得 ない。 なお、富士通 は情報開示 を重視 している傾 向が見 られ、近い将来 に環境保全効果 も含 めた環境会計 システムを構築する旨を示 して いる。

3‑5.環境保 全効果 ・環境経 済効果統合型

3‑5.に該当す る環境会計 は、環境 コス トに環境保全効果 ・環境経済効果の両方 を対 応 させて把握す る。作成書式 は基本的に、 コス トと効果 を並記す る形態 をとる。 この型 の環境会計 は、企業が環境 問題解決 と経済的利益 の獲得 とい う2つの 目的 を両立 させ る 上で、高い有用性 を持つ情報 を作成 ・提供す る とい う利点 を持つ。 また、環境意識の高 い外部の情報利用者 と、営利主体 としての企業情報 を欲す る情報利用者の、両方 を満足 させ る情報の作成が可能である。

しか し、他の技法 と比較 して、より多 くの労力 ・時間等 を要するとい う欠点 を有する。

また、3‑4.と同様 に、関連情報 を無理 に貨幣数値化 した場合、暖昧 さや歪みが増大す るとい う恐れ も否定で きない。情報利用者の判断 を誤 らせ るほ どの暖昧 さや歪みが認め られる場合 は、数量 ・記述等 の形態で情報作成 を行 う方が有用性 を損 なわず に済む と考 えられる。

3‑5.の代表例 の1つ 目は、「日本生活協 同組合連合会」 の環境会計 である。 同組織 の環境会計では、 コス トと両効果 を一つの書式の中に含めている。 しか も、環境保全効 果 と環境経済効果が同時 に発生す る活動 に関 しては、両効果 を同一の コス トに対応 させ ている点が特徴 的 と言 える。 さらに、環境 コス トと環境投資 を別枠で設定 している点 も 目を引 く。 この書式 は、「環境 コス トの資本化 (資産化)」の概念 を具体化 した もの と捉 えられる (注5)0

代表例 の2つ 目は、「ソニー

」 の環境会計 システムである。 ソニーの環境会計 も、1 っの書式 の中で環境 コス トと両効果 を扱 っている (注6)。 同社 は環境 コス トと環境効果

(保全効果 ・経済効果)の対応 を、可能な限 り精密 に行 うことを課題 として掲 げている。

実際、 これ までに作成 ・開示 された同社 の環境会計情報 は、 コス トと効果の対応 関係表 示 を明確 に指 向 してお り、詳細度 も高 い。 なお、環境経済効果 に関 しては、確実 な把

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環境管理会計 に関す る一考察11

握 ・算定 を行 える数値 (関連 コス ト削減額等) に対象 を限定 して開示 している

3‑6.関連情 報統一性重視型

3‑6.に該当す る環境会計 は、仝 関連情報の比較 ・合計 を可能 とす ることに主眼 を置 いている。具体 的な技法 としては、指数化 を用 いた理論 の提唱 と実践が成 されている

理論面 における代表例 としては、ルデ ィー ・ミュラー ・ヴェンクの提唱 した 「エ コロジ ー簿記」が挙 げ られる (注 7)0

エ コロジー簿記 は、環境負荷情報 を等価係数 を用 いて指数化す ることで、比較 と合計 値の算定 を可能に している。ゆえに、同技法か ら作成 された情報 は、他者 問比較が可能 となる。 しか し同技法 は、実施可能性 において問題 を抱 えている。エ コロジー簿記 は、

実施の前提条件 として環境負荷 ごとの重要度 (‑等価係数)設定が必須である。 この重 要度の設定 には、多大 な労力 ・時間 ・費用が必要 となる。 さらに、企業が 自社 に都合の 良い重要度設定 を行 った場合、開示情報 は宣伝広告以上の意味 を持たな くなる。ゆえに、

重要度 を誰が どの ように決定す るかが大 きな問題 となる。重要度の設定者 は基本 的に、

企業外部 に位置 し、かつ特定の企業 と直接 的な利害関係 を持 たず、それでいて専 門知識 を有す る とい う条件 を満 た している必要がある。 また、企業 ごとに異 なる重要度が設定 されて も、他者間比較可能性が失 われて しまう。 ゆえに、他者間比較可能性 を確保す る ためには、エ コロジー簿記 と重要度の両方が、国家 (あるいはそれ以上の)規模 の範囲 で統一的に使用 されなければな らない。 しか し、 これ らの条件 を全 て実現す ることは困 難である。

ちなみ に、エ コロジー簿記 は環境負荷測定 ツールである。環境 コス トの測定 も、環境 経済効果の測定 も行 わない。 ゆえに、同技法は環境負荷情報 を会計 的な技法 を用いて作 成す る ものであって、環境会計技法ではない と捉 えられている。 しか し、環境会計 の構 築 を考 えてい く上で、重要な方法論 の一つであることは間違 いない。

3‑6.に該当す る環境会計 を実施 している企業 としては、「宝酒造㈱」が挙げ られる。 同 社 は 「緑字決算書」 と称す る環境会計 システムを構築 ・運用 し、作成 された情報 を開示 している。同社 は緑字決算書の情報利用者 を、外部 の生活者である と明言 している。緑 字決算書では環境 コス ト ・環境保全効果 ・環境経済効果 とい う、本稿 における環境会計 の3要素全 てを指数化 している点が注 目される。

しか し、現時点では緑字決算書 を用 いている他 の企業が存在 しない。ゆえに、作成 さ れた情報 に関 して、時系列比較 は可能だが他社 間比較 は不可能である。 また、同社 は指 数計算 に用 い られる等価係数 (‑重要度)の設定 に関 して、具体的な情報 をほ とん ど開 示 していない。 ゆえに、指数計算 自体 と計算 された指数 に関 して、 これ らが正当な もの であるか否か を外部の情報利用者 は判断で きない。外部の生活者 を情報利用者である と 明言 している以上、同社 は少 な くとも、等価係数関連 の情報開示充実化 を実施す る必要 がある。

(12)

12 研究年報 5

本章で列挙 した各種 の形態の中で、筆者が最 も望 ま しい と考 えるのは、3‑5.に該 当す る形態である。す なわち、環境 コス トと環境保全効果 ・環境経済効果 を、活動 もしくは 効果 ごとに測定 ・把握 し、両者 を対応表示す る書式 にて情報作成 を行 うとい う形態であ る。前章で述べ た、本稿 における環境会計 の定義の条件 を満 たすのが、 この3‑5.の形態 である。そ して、 これ を実践 している企業 ・組織が現実 に存在す ることか らも、その実 施 は十分 に可能であると考 えられる。

もっとも、現実 に環境会計 を導入 している企業の多 くは、程度 の差 こそあれ本稿 で挙 げた環境 コス ト ・環境保全効果 ・環境経済効果 とい う3要素 を意識 している。いずれか の要素 を包含 していない企業 で も、将来的 には3要素全 ての導入 を指向 している旨を示 している場合が多 い。 よって、現時点 において よ り重視すべ きこ とは、「コス トと効果 の対応 関係 の把握 と開示」 をどこまで詳細 に行 っているか とい う点であろ う。3要素の 包含 と共 に、 コス トと効果の対応 関係把纏の詳細化 を可能 な限 り進めてい くことが、実 務 における重要な課題であると筆者 は考 える。

第4章 環境会計情報 のデ ィス クロージ ャー 4‑ 1.外部へ の情報 開示 を考慮 した環境 会計

企業の環境会計導入誘因の中で も最 も強力 な もの として、外部への開示情報作成 ツー ル としての役立 ちが挙 げ られる。 この 目的に応 じた環境会計 の構築 ・導入 は、本稿 にお いて提唱 している、管理会計的な方法論 と相反す る ものではない。 しか し、本稿 におけ る環境会計 を情報 開示 目的 に用 いる場合 は、解決 しなければな らない諸点が存在す る。

す なわち、比較可能性の確保 に必要 な諸条件である。

環境保全活動の優劣 を評価 ・判断す る場合 は、単純 な数値比較 とい う手法 を用 いるべ きではない。 なぜ な ら、比較企業間の業種 ・業態 ・規模 の全 てが同様 とい う条件が満た されることなど、現実 にはあ り得 ないか らである。 しか し、特 に外部 の情報利用者の多 くは、企業間比較 に基づ く環境保全活動の優劣の判断 ・評価 を行 いたい と希望 している。

例 えば、環境意識 の高 い生活者 ・購買者 は、「環境保全活動 に取 り組み、効果 をあげ ている」企業 を高 く評価 し、実際の購買活動等 に反映 させ る。 また、一部の金融機 関は エ コファン ドとい う形で、環境保全活動 に積極 的な企業 に対す る融資 を行 っている。 こ れ らの外部 関係者が正確 な判断 を下すためには、企業が発表す る数値等の情報 だけでは 不十分である。ゆえに、企業が発表 した情報 を評価す るための、適切 な基準が必要 とな る。

4‑ 2.環境 関連情 報 の評価基準設定

環境 関連情報の評価基準 に関 して、一つの提案が可能であろ う。す なわち、業種 ・業 態別の環境指標 とで も呼ぶべ き基準 を作成す るとい うものである。形態 としては、中小 企業庁が作成 している原価指標 ・経営指標等の書式が参考 となるであろ う。ただ し、業

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「環境管理会計に関する一考察」 13

種 ・業態 ごとに取 り組 むべ き環境保全活動が異 なるため、 よ り多様性 に富 んだ もの とな る。

基準の設定主体 としては、環境庁や地方 自治体等 に代表 される公 的機 関、ISO14000シ リーズの認証取得認定 を行 っているような環境規格 の関連団体、そ してエ コ77ン ドを 実施 している金融機 関 とい う、3種の主体が考 えられる。

これ ら3主体 のいずれが環境 関連情報の評価基準設定者 になる として も、考慮 してお くべ き問題がある。その第1は、評価基準設定 自体 に も相 当なコス トを要す る とい うこ とである。第2は、設定者の能力 に関 して、実務 ・現場 の知識 と専 門的な知識 の両方 を 兼ね備 えていることが求め られる とい うことである。第3は、設定者の立場 に関 してで あるが、特定の企業 ・業種 と直接 的な利害関係 を持 たない ヒ ト ・組織 であることが望 ま

しい とい うことである。

一つの考 え方 として、環境 関連情報の評価基準設定主体 には地方 自治体がふ さわ しい とい う、福 岡克也 (立正大学)教授 の意見が挙 げ られる (注8)。福 岡教授 は学会発表の席 にて、地域 の生態環境 と企業 の実態 を確実 に把握で きる とい う視点か ら、地方 自治体 こ そが基準設定主体 に最 もふ さわ しい とい う考 え方 を示 された。筆者 も生活者の意向 を最

も反映 させ られる存在 として、可能 な らば地方 自治体が評価基準設定主体 となることは 望 ま しい と考 える。実際 に、数多 くの地方 自治体がISO14001の認証取得 を行 っている。

この ような現状 を見 る限 り、地方 自治体 の環境問題 に取 り組 む姿勢 は非常 に積極的にな って きていると言 えるだろう (注9)0

しか し、地方財政の窮迫が指摘 されている昨今 において、環境関連 に対す る地方 自治 体の取 り組みには限界があることも事実である。福 岡教授 はこの点 について、環境税等 の手段 によって関連諸作業 に要す る費用 をまかな うとい う考 え方 を提示 している。なお、

様 々な業種 ・業態 に通 した詳細 な評価基準 の設定 を行 うとなれば、膨大 な量の資料収集 と基準作成が必要 となる。 これが現実 に可能であるか とい う筆者の質問 に対 し、福 岡教 授 は 「十分可能である」 と回答 された。

筆者が基準設定主体 として最 も期待 しているのは、エ コファン ドを扱 っている金融機 関である。 これ らの金融機 関は、エ コファン ドに投資 した投資家 に対 して、融資先企業 の環境 関連情報 を示 さなければな らない。す なわち、融資先企業がエ コファン ドとい う 資金調達手段 を利用す るにふ さわ しい環境保全活動 を展 開 している とい うことを、投資 家 に対 して証明 しなければな らない とい うことである。それは環境報告書の発行 の有無 とい う程度の情報では不十分である。具体性 を持 ち、優劣 の評価が可能な情報でなけれ ばな らない。エ コファン ドを利用 したい と考 える企業が数多 く存在す る場合 は、比較 し た上で優劣 を評価 し、順位付 けを行 う必要が生 じるか らである。それ を可能 とす るため には、適切 な評価基準が必要 となる。 この場合の基準設定者 は、金融機関 自身か、金融 機関が適切 と認めた外部の第三者 となるであろう。

また、エ コファン ドに投資す る投資家 の全 てが、環境保全意識の高い生活者 ・購買者

(14)

14 研 究年報 5

であるとは限 らない。環境保全活動 に取 り組 む企業 こそ、将来性 のある企業であると考 える投資家 も存在す るであろう。す なわち、営利主体 としての企業 に対 す る投資の一環 として、エ コファン ドに投資す る とい う層 も存在す る とい う見方である。 この ような投 資家 を満足 させ るためには、環境保全活動 によって得 られた経済的効果 も、開示情報 に 含 めなければな らない。本稿で提示 した環境会計 は、エ コファン ドによる融資 を受 けた い と考 える企業 と金融業者の両方 に対 して、直接的な有効性 を発揮す ると考 えられる

第5章 環境会 計の展望

環境会計 の今後の展望 として、特 に留意 しておか なければな らない と思われる諸点 を 挙 げてお く。

1は、環境会計技法の統一化 の可能性 である。環境会計 を内部意思決定情報作成 ツ ール として位置づ けるのであれば、統一化 とい う側面 をそれほ ど考慮す る必要 はない。

しか し、企業が環境会計情報 を開示 し、 自社 の責任解除 と広告宣伝 とい う2つの 目的の いずれか もしくは両方 を達成 しようとす るな らば、統一化へ向か うのは 自然 な流れ と言 える。統一化 は比較可能性 の確保 に大 きな力 を発揮す る

しか し、前述 した ように、環境問題 と企業 ・組織の環境保全活動 は、その質 ・量共 に 多種多様 である。ゆえに、一元化 された技法 によって情報化 を行 うことは、無理がある

技法 自体の統一化 か ら始 めるのではな く、業界 ごとの基準 ・目標値 ・平均値等 を設定 ・ 算定 し、それ らと比較可能 な情報 を作成す るとい う方向性 を追求す るべ きであろ う。技 法の統一化 は、その結果 として、業種等 に対 して設定 される基準 ご とになされるべ きで ある

2は、環境保全活動継続誘 因 としての環境会計情報作成 とい う、内部利用 における 環境会計 の役割である。 これは、環境会計 を外部 開示情報作成 ツール として導入す る企 業が比較的多 く見 られることに対す る、若干の危倶か らの指摘である。 この危供 は、公 害問題 と社会関連会計 とい う、過去の事例が実際 に示 して もいる。前述 した ように、公 害問題 と環境問題 を同一視すべ きではない。 しか しその ことに加 えて、社会関連会計 は 基本 的に企業の果たすべ き責任 を解除す るための手段 として提唱 され、企業の利益 に関 す る情報 を直接 的に内包 していなかった とい う点 を指摘 してお きたい。企業 は基本 的に 営利主体 である。ゆえに、その基本 目的に貢献す ると認識 されたツールな らば、継続的 に使用す る。 しか し、そ うでなければ、必要性 を感 じな くなった時点で使用 を中止する

ゆえに、環境会計 は営利主体 としての企業 に直接 的な有用性 を持つ ツールで もあるべ き だ と考 える。 このことか らも、環境会計 は環境 コス ト ・環境保全効果 ・環境経済効果 と い う3要素全てを包含 した ものであることが望 ま しい。

第3は、費用対効果の対応把握 の徹底 を今後 どこまで行 えるかである。情報有用性 を さらに向上 させ るためには、 この点 を徹底 させ ることが必要 と筆者 は考 える。本稿で と りあげた 日本生活協 同組合や ソニー等 は、既 にこの考 え方 を実践 している。 しか し、他

(15)

環境管理会計 に関する一考察15

の企業 ・組織が どこまで この方向性 を指 向す るか に関 しては、未知数である。ゆえに、

この点 に関 しては、今後 も注 目し続けてい く必要があると考 える

4は、情報の 「歪み

「暖昧 さ」をどこまで許容す るかに関す る問題である。例 えば、

環境経済効果の見込額 をどの ように算定す るか、 どの程度 まで認容す るか とい う点が指 摘で きる。他 にも、環境保全効果 を貨幣数値化 した場合が挙 げ られるだろ う。そ こには 必ず暖昧 さや、情報作成者 の主観等が含 まれる。 これ らの情報 は、経営意思決定 には有 用だが、外部への開示 に用 いる場合 には問題が生 じる可能性 を否定で きない。 この点 に 関 しては、内外で使 い分 けを行 う等の対応が必要 となるであろ う。例 えば外部への開示 に際 しては、作成情報の中の暖昧 さを多 く含 む部分 を除外す る とい うや り方が挙 げ られ る。暖昧 さを含 む情報 も外部へ開示す る場合 には、注記 を用 いる等 の方法 を用 いて、歪 みや暖昧 さが含 まれていることを明示する必要があるだろう

第5は、環境会計情報の開示 は結局、企業の意思表明 にす ぎない とい う視点 に関す る 指摘である。 これは比較可能性 の喪失 において顕著であ り、他社 間の正確 な比較 は事実 上不可能 に近い。仮 に比較 を可能 に したい と思 うな らば、本稿 で述べ た ような業種別基 準値 の設定が必要 となるであろ う。 さらに、発表 された情報 の正確性 を誰が保証す るか とい う問題 も生 じる。ゆえに、環境会計監査 とで も呼ぶべ き活動 と、その体制造 りの必 要性 を指摘す ることになる

環境負荷や環境保全効果 に関す る情報の監査 、いわゆる環境監査 は、既 にISO14000等 の環境 関連規格 の中に包含 されている。そ して、ISO14001の認証取得 を行 った企業 は、

実際 にこれ を行 っている。 しか し、環境会計監査 とい う領域 は、まだ確立 されていない。

環境会計情報の正確性、比較可能性 を確保す るため には、環境会計監査 とい う領域 の確 立 と実施が必要 となるであろう。他者 との比較可能性が事実上存在せず、 さらに基準値 が存在 していない。 さらに、正確性 を保証す る監査体制 も存在 しない。である以上、環 境会計情報 は企業側の意思表明 に留 まるとい うことを、情報利用者 は一つの事実 として 認識 しておかなければな らない。

上述 した諸点以外 に も、様 々な問題点が存在す る。 しか し、多 くの企業や組織が、環 境会計 を有用 な情報作成 ツール として認識 されていることは事実である。実際 に、環境 会計 を実践する企業等 の数 は増加 し続 けている。本稿では有用性 と実施可能性 を重視 し、

筆者の考 える環境会計 の定義 を提示 した。その上で環境会計 の実践例 ・理論 か ら諸技法 を比較 し、いずれの技法が最 も高い有用性 を持つか とい う考察 を行 った。筆者が提唱 し た考 え方が実際 に用い られるようになるか否かは、今の ところ未知数である。最終的に 環境会計が どの ような形で確立 されてい くか に関 しては、今後 の動 向を注視 し続 けてい

く必要があるだろう

(16)

16 研究年報 第5

○脚注

注1:柳 田仁 ・高瀬智 幸共稿 「企業政策 と環境保全 とに関す る一考察」神奈川大学経営 学部 『国際経営論 集』1998年3月、及 び、柳 田仁 ・高瀬智章共稿 「企業政策 と環 境保全 とに関す る一考察 (続)」神奈川大学経営学部 F国際経営論集』1999年3月 注2:2000年9月末現在 の、 日本 におけるISO14001認証取得件数 は4,471件 (総数)であ

る ((財)日本規格協 会 (環境管理規格審議委員会事務局)の調査結果 に基づ く)。

注3:筆者 は2000年8月29日に、滋賀県工業 セ ンター主催 の 「環境情報 開示 ・環境会計」 とい うセ ミナー を担 当 した。 同セ ミナーは滋賀県内の企業 を対象 と したISO14001 の認証取得促 進 を目的 とす るプログラムの一環 であ ったが、筆者 の担 当 したセ ミ ナーだけで も約90名の参加者があった。

注4:Bundesumweltministerium&Umweltbundesamt(Hrsg.):HandbuchUmweltbundesamt(ド イツ連邦環境省 お よび同環境庁 『環境原価計算ハ ン ドブ ック』、1996年)、柳 田仁

「環境保全 と原価削減 ‑ ドイツ環境庁編 「環境原価計算ハ ン ドブ ック」 を中心 と した考察

」神奈川大学 『神奈川大学創立七十周年記念論 文集』神奈 川大学創立 七十周年記念論文集編集発行実行委員会、1998年11月

注5:「環境 コス トの資本化」 とい う考 え方 は、阪智香 (関西学 院大学)先生 に よって 提唱 されている。 これは長期 に渡 って効果 を発揮 す る コス トを、効果 を発揮 し続 ける各期 間に配分 す る とい う考 え方である。 日本会計研 究学会第59回大会 (2000 年 開催 、於 ・明治大学 ) ・自由論題 報告 「環境 コス トの観 点か らみた環境会計

において、発表者 と して この考 え方 に関す る最新 の発表 をな された。 この方法論 は、活動 ご とに環境 関連 コス トと対応 す る効果 の測定 ・把握 を行 うとい う、本稿 の環境会計 に取 り入れる価値 のある考 え方である。

6:

ちなみ に、 ソニーの環境会計 システムでは、環境保全活動 か ら生 じる効果 を

「 1

環 境パ フ ォーマ ンスの改善 (環境負荷 の低 減)、2環境 リス クの回避、3環境保全活 動 によるコス トの節減」 と定義づ け、情報化 を行 ってい る。 この ように、 同社 で は本稿 における環境保全効果 と環境経済効果 の両効果 に対 して、環境保全効果 と い う単 一 の呼称 を用 いてい る。 しか し、 同社 の分類 にお ける1が本稿 にお ける環 境保全効果 に、3が環境経済効果 にその まま当ては まる と判 断で きる。2は事故等 が発生 した場合 に生ず るコス ト (訴訟 関連費用等)、危機 回避 コス トとして位置づ け られてい るが、1999年度の資料 に よれば、効果情報 は 「事故等 の発生 はなか っ た」 とい う記述形式で なされ、 コス トは訓練費用等 の総額が記 されている。

注7:ルデ ィー ・ミュラー ・ヴェ ンク著 、宮 崎修行訳 『環境指 向経営 のためのエ コロジ カルアカウンテ ィング』 中央経済社、1994年5月。他、同著者の著作 よ り。

注8:日本会計研 究学会第59回大会 (2000年 開催 、於 ・明治大学) 自由論題報告

「環 境計画 と環境監査」 における、発表者 と しての発言 よ り。

注9:神奈)け県環境科学 セ ンター企画調整部 の青 山尚巳氏の調査 によれば、2000年11月

(17)

環境管理会計 に関す る一考察17

30日現在の地方 自治体等 によるISO14001認証取得数 は、120件 となっている。 ち なみ に同年3月20日における認証取得件数 は71件であった。

○参考文献 (論文)

柳 田仁 ・高瀬智幸共稿 「企業政策 と環境保全 とに関す る一考察」神奈川大学経営学部

『国際経営論集』1998年3月

柳 田仁 ・高瀬智幸共稿 「企業政策 と環境保全 とに関す る一考察 (読)」神奈川大学経営 学部 『国際経営論集』1999年3月

柳 田仁 「環境保全 と原価削減‑ ドイツ環境庁編 「環境原価計算ハ ン ドブ ック」 を中心 と した考察

」神奈川大学創立七十周年記念論文集編集発行実行委員会 『神奈川大学 創立七十周年記念論文集』1998年11月

柳 田仁 「P.Rievelの相対 的個別費 ・補償貢献額計算 の環境保全原価計算へ の活用 ‑ C.Lange/R.Fischerの見解 を中心 と して

」神奈 川大学経営学部 『国際経営論集

2000年11月

(文献)

アルテ ュ‑ル ・ブラ ンシュヴ ァイク+ルデ ィー ・ミュラー .ヴェ ンク著 宮崎修行訳

『企業のエ コバ ランス ー環境会計 の理論 と実践‑』 白桃書房、1997年10月 ウ ド ・エル ンス ト ・ジモニス編著 宮崎修行訳 『ェ コノ ミ‑ とエ コロジー ー 「環境会

計」 による矛盾への挑戦‑』創成社、1996年4月

ルデ ィー ・ミュラー ・ヴェ ンク著、宮崎修行訳 『環境指 向経営 のためのエ コロジカルア カウンティング』中央経済社、1994年5月

河野正男著 『生態会計論』森山書店、1998年11月 木下照鼻 ・柳 田仁編著 『文化会計論』、1998年5月

平松一夫 ・谷 口 (阪)智香 訳 『カナダ勅許会計士協会 環境会計 一環境 コス トと環 境負債‑』東京経済情報出版、1995年4月

山上達人 ・菊谷正人編著 『環境会計 の現状 と課題』 同文舘、1995年4月

(その他の資料)

環境庁編 『環境会計 ガイ ドブ ック』環境庁、2000年3月

Bundesumweltministerium&Umweltbundesamt(Hrsg.):HandbuchUmweltbundesamt(ドイツ 連邦環境省お よび同環境庁 『環境原価計算ハ ン ドブ ック』、1996年)

日本企業各社の環境報告書 (社名 は略す。刊行報告書及 びインターネ ッ トホームページ) 日本会計研究学会特別委員会 『環境会計 の発展 と構築 一特別委員会報告‑』 日本会計

研究学会、2000年9月

(18)

18 研究年報 第5

日本会計研究学会 柑 本会計研 究学会第59回大会 研究報告要 旨集』日本会計研究学会、

20009

その他論文、文献、資料等

参照

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